[#表紙(img/表紙.jpg)]
男子はじめて物語 セクスィ局部の巻
松井雪子
[#ここからゴシック体]
もくじ
はじめに〜局部探訪隊とは?
発見! 危ない尻ムービー
知られざるびーちくの世界
嗚呼、白パンの君を探せ!
おホモだちの君を探せ!
[#ここでゴシック体終わり]
[#扉(img/fig1.jpg)]
[#ここからゴシック体]
はじめに〜局部探訪隊とは
[#2字下げ]スクリーンの中にひそむ男子スタァのお宝(局部)を発掘&鑑賞する乙女の探訪隊である。
[#ここでゴシック体終わり]
理 念[#「理 念」はゴシック体]
[#2字下げ]スタァへの「愛」と「憧れ」と「野次馬根性」を武器に、局部探訪の三種の神器「ものさし」と「分度器」と「ルーペ」を持ち、動体視力を鍛え上げ、スタァのお宝を大胆におっぴろげ、知られざる世界に迫ります!
沿 革[#「沿 革」はゴシック体]
[#ここから改行天付き、折り返して3字下げ]
1999年 9月 ロマンスあゆみ※[#ハート白、unicode2661]と松井隊長が初対面、局部探訪隊発足![#「ロマンスあゆみ※と松井隊長が初対面、局部探訪隊発足!」はゴシック体]
2000年 CREA12月号『恋する映画!』「発見! 危ない尻ムービー」[#「「発見! 危ない尻ムービー」」はゴシック体]
2001年 CREA6月号『恋する映画!』「知られざるびーちくの世界」[#「「知られざるびーちくの世界」」はゴシック体]
2001年 CREA12月号『恋する映画!』「嗚呼、白パンの君を探せ!」[#「「嗚呼、白パンの君を探せ!」」はゴシック体]
2002年 CREA12月号『「恋する映画」決定的瞬間!!』
「おホモだちの君を探せ!」乙女はっちん、うらんが入隊。[#「「おホモだちの君を探せ!」乙女はっちん、うらんが入隊。」はゴシック体]
2003年 CREA12月号『恋する映画 踊る大事件簿』「男子はじめて物語」[#「「男子はじめて物語」」はゴシック体]
2004年 7月 単行本化にむけ発進。[#「単行本化にむけ発進。」はゴシック体]
2004年 CREA11月号『ドラマ&映画で旅する 愛しの韓国』
韓流特集号に出張探訪「韓国ドラマ&映画 純潔シーン虎の穴」[#「韓流特集号に出張探訪「韓国ドラマ&映画 純潔シーン虎の穴」」はゴシック体]
2004年 CREA12月号『創刊15周年スペシャル! 恋する映画』
「奥深き体毛ジャングルをゆく!」[#「「奥深き体毛ジャングルをゆく!」」はゴシック体]
2005年 CREA2月号『ココロのそこから犬が好き!』
犬特集号に出張探訪「犬映画で笑いと涙と感動を」[#「犬特集号に出張探訪「犬映画で笑いと涙と感動を」」はゴシック体]
2005年 CREA6月号『「噂のいい男」※[#○金、unicode328E]私生活ファイル 恋する映画!』
「イケメンさん、イキ顔拝見!」[#「「イケメンさん、イキ顔拝見!」」はゴシック体]
2005年 CREA12月号『愛と涙がいっぱい! 恋する映画』「オールスター! 裸の感謝祭」
オールカラーでスタァの裸を徹底分析する。[#「オールカラーでスタァの裸を徹底分析する。」はゴシック体]
2006年 CREA7月号『恋する映画 噂の真相100』
総集編「輝く局部の星を探せ☆局部探訪大すごろく!!」すごろくになる。ラブミーなおちん、クロえもんが入隊。[#「総集編「輝く局部の星を探せ☆局部探訪大すごろく!!」すごろくになる。ラブミーなおちん、クロえもんが入隊。」はゴシック体]
2006年 6月 描きおろし「純愛☆キスシーンでロマンティック力アップ」[#「描きおろし「純愛☆キスシーンでロマンティック力アップ」」はゴシック体]
[#ここで字下げ終わり]
[#挿絵(img/fig2.jpg)]
[#挿絵(img/fig3.jpg)]
男子はじめて物語
セクスィ局部の巻
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発見! 危ない尻ムービー[#「発見! 危ない尻ムービー」はゴシック体]
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40過ぎでもこの色気 1992年/リチャード・ギア(当時43歳)
[#漫画(img/manga1.jpg、横198×縦564)]
愛という名の疑惑
FINAL ANALYSIS 監督:フィル・ジョアノー 出演:リチャード・ギア/キム・ベイシンガー/ユマ・サーマン
リチャード・ギアが美人悪女姉妹に翻弄される精神分析医を演じるサスペンスドラマ。アイザック(ギア)は、患者(サーマン)の治療の一環として会ったその姉(ベイシンガー)と深い仲に。しかし、ある日彼女が夫殺しの容疑で逮捕される。アイザックは裁判で証言し無罪を勝ち取るが、やがて仕組まれたワナが明らかに……。「全身局部」のギア様の色気はやっぱり別格!?
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筋肉尻にセクスィはあるのか?
[#漫画(img/manga2.jpg、横199×縦563)]
12モンキーズ
12 MONKEYS 監督:テリー・ギリアム 出演:ブルース・ウィリス/マデリーン・ストウ/ブラッド・ピット
謎のウイルスによって人類の99%が滅亡した近未来から、原因究明のために1996年に送り込まれた囚人の男の活躍を描いたSFサスペンス。現代と未来を行き来するという異常な状況設定の中でも、主人公と現代の精神科医(ストウ)はちゃんと恋愛する。でも、尻シーンはセクスィとは関係ありませんでした。
まだキャリア上昇中だったブラピの怪しい演技も見もの!
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輝くスタァの白いシリ 『ダンス・ウィズ・ウルブズ』1990年/ケビン・コスナー(当時35歳)、『ロビン・フッド』1991年/(当時36歳)
[#漫画(img/manga3.jpg、横195×縦553)]
ダンス・ウィズ・ウルブズ/ロビン・フッド
DANCES WITH WOLVES 監督:ケビン・コスナー 出演:ケビン・コスナー/メアリー・マクドネル
南北戦争時代のフロンティアでインディアンと共に生きた元北軍中尉の数奇な運命を描く。アカデミー賞7部門受賞の名作。
ROBIN HOOD:PRINCE OF THIEVES 監督:ケビン・レイノルズ 出演:ケビン・コスナー/モーガン・フリーマン
幾度となく映画化された12世紀イギリスの英雄伝説。この年、偶然(?)P・バーギン主演の『ロビン・フッド』も公開された。
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2人の仲は今や遠い思い出 1992年/トム・クルーズ(当時30歳)
[#漫画(img/manga4.jpg、横199×縦553)]
遥かなる大地へ
FAR AND AWAY 監督:ロン・ハワード 出演:トム・クルーズ/ニコール・キッドマン
19世紀、ひょんなことから故郷アイルランドを離れ、新天地アメリカに向かうことになった貧しい小作人の若者と、地主の娘。70ミリフィルムで撮影された古き良きアメリカを舞台に、夢を追う2人の運命は、数奇な変転を重ねる。
松井さんの愛するスタァ、トムがニコールと新婚でまだ熱愛中だった時代の懐かしき逸品。着がえをのぞくニコールのまなざしもホンキです。
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登場早々、いきなり局部見せ 1999年/ケビン・スペイシー(当時40歳)
[#漫画(img/manga5.jpg、横194×縦554)]
私が愛したギャングスター
ORDINARY DECENT CRIMINAL 監督:サディウス・オサリバン 出演:ケビン・スペイシー/リンダ・フィオレンティーノ
黒覆面にヘルメット、バイクで銀行強盗に向かうギャング団のボスにして伝説的大泥棒のマイケル・リンチ。しかし家に戻ると2人の妻(?)を愛する優しいマイホームパパに……。実在したダブリンの強盗をモデルに、ルパン三世ばりのスタイリッシュな泥棒をスペイシーが熱演する。そのルパン三世の原作者、モンキー・パンチ氏もオススメしてました。
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老尻は死なず 2000年/当時平均65・5歳
[#漫画(img/manga6.jpg、横195×縦555)]
スペース・カウボーイ
SPACE COWBOYS 監督:クリント・イーストウッド 出演:クリント・イーストウッド/トミー・リー・ジョーンズ/ドナルド・サザーランド/ジェイムズ・ガーナー/ジェイムズ・クロムウェル
かつてNASA創成期に空軍の伝説的パイロット・チームとして鳴らしたが、宇宙への夢を断たれた4人の男。だが、ロシアの宇宙衛星に重大なトラブルが発生し、あまりに旧式な装置に対応できないNASAの依頼により、再び彼らに宇宙への出番が回ってきた──。まさに「宇宙の西部劇」。
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尻に秘められたスタァのフォース[#「尻に秘められたスタァのフォース」はゴシック体]
[#挿絵(img/fig4.jpg、横81×縦92、下寄せ)]
尻は、私の大好物な部位だ。
ぷりっとふくらんだ桃のようなものがいい。撫でたときにすべすべの手触りで、思わずかぶりつきたくなるような、汚れのない尻がいい。しかし、ルックスがいいだけじゃダメだ。尻相撲をしたら、相手を2メートル以上はじきとばすくらい、たくましくあってほしい。
などと、自分の好きな男子の尻のタイプを自覚している女子は、けっこう多いかと思う。無自覚であっても、「尻毛がボーボーだったらショックだわ」とか、「上向きの尻でも、ほっぺがニキビだらけなのはちょっと……」と、誰でも一度は、そこに思いをはせたことがあるだろう。
※[#○金、unicode328E]の好みをあげつらねるのは、女子として、致命傷をおいかねない蛮行だ。しかし、尻はそのすぐ裏側にあるにもかかわらず、目の前にぺろんと出ていたとしても、笑って指さして感想を言いあえるほど、気さくな局部だ。
ときどき私は、尻に問いかける。尻よ、おまえは、筋肉なのか、脂肪なのか、と。
ちまたには、だらしなく脂肪の塊と化した尻が多く流通している。てれ〜んと垂れた尻には、御主人さまにかわいがってもらえなくなった老犬の哀愁さえ感じる。
そう。尻とは、放っておくと歳とともに形が崩れ、ただの贅肉の塊となり、その魅力を失ってしまうデリケートゾーンなのだ。
しかしさすがにスタァたちの尻は、それぞれ個性的に、ジュースィに、スクリーンのなかにケツ集していた。
ブルース・ウィリスの尻は、ぷりっとたくましく、バネのように筋肉質。リチャード・ギアの尻は、柔らかく、しっとりなめらかな味わい。ケビン・スペイシーの尻は、いたずら坊主のようにクスっと笑いを誘ってくるし……。
と、探訪していくうちに、尻とその持ち主の個性が、意外なほど合致していることに気がついた。
これはいったいどういうことなのか。
察するに、尻とは「ストイックさ」のケツ晶なのではないだろうか。
スタァたちの尻を見ていると、あきらかに「自分らしさ」をデザインしているとしか思えない。オレのもつべき尻はこうだと、エクササイズやお手入れにはげんでいるように思える。
まるで自分の子どもに愛情を注ぐように、尻を育て上げていると断ずるのはいきすぎだろうか。
なぜスタァは、ここまで尻に神経を注ぐのか。
顔やしぐさや、きたえあげた筋肉などで、女子にセクスィビームをおくるのは、簡単だ。しかしセクスィ大王である※[#○金、unicode328E]をスクリーンにさらすのは反則であり、スタァにあるまじき行為だというプライドもあるだろう。さらに※[#○金、unicode328E]は、|迂闊(うかつ)にデザインできない。こういったジレンマが「美しい尻を見せたい」という情熱に、ケツ実するのではないか。
そもそも尻とは、その谷底に咲く小さな「菊」を守っている要塞なのだ。
いまにもガスが漏れそうなゆるい尻では、すぐに敵が分け入り、天下をとられてしまうおそれもある。
尻を見れば、その持ち主のフォースがわかる、と私は信じて疑わない。
美尻を持つ男子は、心身ともにたくましい、いい男の証明なのだ。
ちなみに犬と犬は、肛門を嗅ぎ合って挨拶をする。これは相手の状態や、強弱を見極めるためだ。うちの犬たちも、出くわした犬(人)のお尻をよく嗅いでいる。
男子の尻にも、犬の尻同様、持ち主のデータが匂っているといえるだろう。
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知られざるびーちくの世界[#「知られざるびーちくの世界」はゴシック体]
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筋肉は鍛えられてもびーちくは…… 1982年/シルベスター・スタローン(当時36歳)
[#漫画(img/manga7.jpg、横199×縦586)]
ランボー
FIRST BLOOD 監督:テッド・コッチェフ 出演:シルベスター・スタローン/リチャード・クレンナ
スタローンの大ヒットシリーズ第1作。ベトナム戦争中、特殊部隊で活躍した男ランボーがとある町に立ち寄るが、不審者として警察に屈辱的な扱いを受ける。怒りを爆発させたランボーはたった1人で警官隊と死闘を繰り広げるのだった。ベトナム帰還兵の孤独も描いたアクションロマンだが、続編はランボーの超人的ヒーローアクションになって男の哀愁度はダウン。
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ビーチだけにびーちくがたくさん 2000年/レオナルド・ディカプリオ(当時26歳)
[#漫画(img/manga8.jpg、横199×縦592)]
ザ・ビーチ
THE BEACH 監督:ダニー・ボイル 出演:レオナルド・ディカプリオ/ティルダ・スウィントン/ギヨーム・カネ
退屈な毎日から逃れてタイまでやってきたアメリカ人青年リチャードは、手に入れた地図から秘密の美しい孤島にたどり着く。「ビーチ」と呼ばれるその島では、さまざまな旅人たちが共同体を作って暮らしていた。快く迎え入れられたリチャードは解放的な気分を味わうが、次第に嫉妬や憎悪が対立を呼んで、思いがけない事態が……。ディカプリオ様、まだやせてます。
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美少年の美ーちく、ありがたや 1998年/ライアン・フィリップ(当時24歳)
[#漫画(img/manga9.jpg、横197×縦583)]
54〈フィフティ★フォー〉
54 監督:マーク・クリストファー 出演:ライアン・フィリップ/サルマ・ハエック/ネーヴ・キャンベル
70年代末、選ばれたものだけが入れるニューヨークのナイトライフの中心地、スタジオ「54」。憧れのディスコスタジオに入場を許された郊外の青年が、売れっ子バーテンダーとして上りつめていく。しかし、栄光のときは長くは続かなかった。若者の光と影にあわせ、華やかな時代の裏のむなしさが描き出されていく青春ドラマ。「おホモだち」要素もちょっぴり入ってお得。
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ベッドシーンだと相手があることなので…… 1997年/キアヌ・リーヴス(当時33歳)
[#漫画(img/manga10.jpg、横195×縦577)]
ディアボロス
THE DEVIL'S ADVOCATE 監督:テイラー・ハックフォード 出演:キアヌ・リーヴス/アル・パチーノ/シャーリーズ・セロン
ニューヨークの法律事務所を舞台に、パチーノの演じる悪魔が法曹界の大物になりすまして、若き弁護士・キアヌの魂を狙うという、訴訟大国アメリカでしか思いつけないオカルト作品。セロンは、次第に狂気に侵されていく、主人公の妻を演じている。ハリウッドきっての美貌を誇る彼女(しかも当時まだ22歳)の美ーちくが相手だとさすがのキアヌ様も苦しい!?
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リバーはこの作品で一躍アイドルに 1986年/リバー・フェニックス(当時16歳)
[#漫画(img/manga11.jpg、横197×縦583)]
スタンド・バイ・ミー
STAND BY ME 監督:ロブ・ライナー 出演:ウィル・ウィートン/リバー・フェニックス/コリー・フェルドマン/ジェリー・オコネル
スティーヴン・キングの短篇小説を映画化したノスタルジックな名品。それぞれに複雑な家庭環境を持つ4人の少年たち。森の中に汽車にはねられた死体が放置されているという噂を聞いた4人は、死体を見つけて町の英雄になろうと出発する。それは彼らにとってはじめての大冒険だった──。少年期ならではの友情と訣別が切なく染みます。同タイトルの主題歌も名曲。
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美ーちくの命は短くて 1991年/リバー・フェニックス(当時21歳)
[#漫画(img/manga12.jpg、横200×縦581)]
マイ・プライベート・アイダホ
MY OWN PRIVATE IDAHO 監督:ガス・ヴァン・サント 出演:リバー・フェニックス/キアヌ・リーヴス/ジェイムズ・ルッソ
男娼として体を売っているマイク(フェニックス)は、市長の息子だが家を出て男娼をしている美青年スコット(リーヴス)と親友になる。マイクはスコットとともに、故郷アイダホにいる兄を訪ねて、行方知れずの母親探しに出発するが、2人の運命は次第にすれ違って──。これまた、かなり濃ゆいおホモだち作品とも言えましょう。
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男のビーチクは、顔が命[#「男のビーチクは、顔が命」はゴシック体]
[#挿絵(img/fig5.jpg、横83×縦97、下寄せ)]
先日、中央線に乗っていたら、今井翼風の美青年が左隣のシートに座った。のどかな平日の午後だった。
美青年は、すぐにケータイのメールを打ち始めた。白魚のように美しい指だ。ケータイにむかってにやにやと微笑む目尻も若々しく、なかなかに青い果実とみた。その肩越しには、さんさんと陽が降りそそいでいる。と、おもむろに美青年は、薄手のGジャンを脱いだ。まさにそのとき。
シャツのボタンみっつあけの隙間から、メープルリーフ金貨のように輝くビーチクがチャリーンと麗しくのぞいたのだ。
おおっと! やっぱり太陽は北風よりエラかった。……ゴチになります。こころのなかで合掌したのち、遠くを眺めるふりをして、ありがたく探訪した。
透明感あるあんず色、それでいて野趣たっぷりの男らしい楕円形、舌を刺すチチ毛一本のえぐみもなく(たぶん)、なめらかなアフター、最高のマリアージュ・ビーチクだ。高級ぶどう狩り放題のようなすてきな時間をむさぼりながら、ふと自分に問うた。もしも美青年が、今井翼風でなかったら。果たしてこんな満腹感を得られただろうか、と。
ノン、ノン、ノン……。私はすぐに首を横にふった。
今井翼風だから「ありがたい」のだ。そしてすぐに、ある結論を得た。
『男のビーチクは、顔が命です』
そもそも男子のビーチクはどこがセクスィなの、という疑問もある。深い谷間の向こうの、豊かな丘に咲く女子の華麗なるビーチクには、そのセックスシンボル度において、足下にもおよばない。「とにかくおっぱいが好き」という男子があまたいるように、女子のおっぱいとは、格別なパーツなのだ。
それに比べて、男子のビーチクは存在感が薄い。見てうれしくなるのは、顔、雰囲気、希少性などとともに、セット鑑賞できたときぐらいではないだろうか。
「素敵」と1ミリも思わない男子の持ち物であったら、どんな美ーチクでも、メラニン色素が沈着した、ただのシミにすぎない。
てなことをつらつら思いつつ、乗り合わせている女子たちを見わたしても、私のようにビーチクを探訪している様子は、あまり見受けられなかった。
シャラポワのビーチクが「立ってる」の「立ってない」だのと、世間が騒然としたのは記憶に新しい。しかし男子のビーチクが見えたところで、誰も騒がない。
これは、いったいなぜなのか。
私は戦後民主主義教育における「幼児期のプールの時間」に、その原因があるとにらんでいる。そう、男子の水着には、胸あてがない。ビーチク丸出しだ。あれのおかげで、小さい頃に、「男子のビーチクは、秘所ではないんだ」という刷り込みが、子どもたちになされているのではないか。局部であるにもかかわらず、まるでひざ小僧のように、フツーに見慣れているのだ。
海岸で、プールで、グラビアで、町中で、氾濫している男子のビーチクたち。せっかくのお宝に、いまいち女子は無反応すぎやしないか。うっかりと見過ごしてはいまいか。常にロックオンする気になれば、スクリーンのなかのスタァたちにも、かぐわしいビーチクが、ちゃんとついていたことに気がつくであろう。
いまどきの男子は、温泉地や公衆浴場など、人前での入浴時に前を隠す傾向があるらしい。修学旅行で海パンをはいて入浴する男子さえ珍しくないという。こうした噂を聞き流してはいけない。男子が自分の裸に羞恥心を覚えるのは危険な兆候だ。
いつかビーチクも覆われてしまう日がやってくるかもしれない。ビーチクが秘所だと男子に気がつかれない今のうちに、ガッツリと探訪するべし。
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嗚呼、白パンの君を探せ![#「嗚呼、白パンの君を探せ!」はゴシック体]
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キッチュな青春映画の身支度シーンに局部が 1991年/ブラッド・ピット(当時28歳)
[#漫画(img/manga13.jpg、横192×縦586)]
ジョニー・スエード
JOHNNY SUEDE 監督:トム・ディチロ 出演:ブラッド・ピット/アリソン・モイア/キャサリン・キーナー/ニック・ケイヴ
ロカビリー歌手をめざす、巨大なリーゼントがトレードマークの青年ジョニー。ある日天から降ってきたスエードの靴を手に入れてから、彼のまわりにさまざまな事件が起こりはじめる。
ちょっと妄想入った青年をブレイク前夜のブラピ様が熱演するが、『12モンキーズ』といい、彼は意外と変な人の役が好きなのかも?
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渋谷系男女に人気の秘密は白パンにあり? 1998年/ヴィンセント・ギャロ(当時36歳)
[#漫画(img/manga14.jpg、横196×縦589)]
バッファロー'66
BUFFALO '66 監督:ヴィンセント・ギャロ 出演:ヴィンセント・ギャロ/クリスティーナ・リッチ/アンジェリカ・ヒューストン
マルチアーティスト・ギャロの監督デビュー作。脚本と音楽も自分で担当する大活躍ぶり。
刑務所を出て5年ぶりに故郷に帰るビリー(ギャロ)は両親に、仕事で遠くに行っていて、妻もいるとウソをついていた。通りすがりの少女レイラ(リッチ)を拉致してなんとか親をごまかした2人。だが、ビリーの孤独な内面を知ったレイラはその後も行動をともにする──。
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デブ・ハゲ・ヤセなんでもありのパンツ行進曲 1997年/ロバート・カーライル(当時36歳)
[#漫画(img/manga15.jpg、横194×縦586)]
フル・モンティ
THE FULL MONTY 監督:ピーター・カッタネオ 出演:ロバート・カーライル/トム・ウィルキンソン/マーク・アディ
イギリス北部、さびれた鉄鋼の町シェフィールドにて、半年も失業中の絶望的な男が4人。子どもの養育費のために「フル・モンティ(すっぽんぽん)」=男性ストリップで稼ぐことを思いついた。踊れない、妻に内緒、恥ずかしいと問題山積のストリッパーたちは成功できるのか? おっさん6人のかわいいパンツのおかげで(?)世界中でヒットした、心温まるコメディ。
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現代版「ロミジュリ」は、エッチあり!でした 1996年/レオナルド・ディカプリオ(当時22歳)
[#漫画(img/manga16.jpg、横197×縦592)]
ロミオ&ジュリエット
WILLIAM SHAKESPEARE'S ROMEO+JULIET 監督:バズ・ラーマン 出演:レオナルド・ディカプリオ/クレア・デーンズ/ジョン・レグイザモ
言わずと知れた古典を現代に移し替えた大胆な作品。セリフはほぼ原作どおり、だけどロミオはアロハを着て銃をぶっぱなし、アクションやミュージカルまで盛り込まれて、ラーマン監督の奇妙な世界観がてんこ盛り。でも、その中でシェイクスピアの言葉の美しさが際立つ。ディカプリオがもっともカッコいい作品、という意見も多いです。
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トム様の16年間ビフォーアフター 1999年/トム・クルーズ(当時37歳)、『卒業白書』1983年/(当時21歳)
[#漫画(img/manga17.jpg、横195×縦587)]
マグノリア
MAGNOLIA 監督:ポール・トーマス・アンダーソン 出演:ジェレミー・ブラックマン/トム・クルーズ/メリンダ・ディロン/フィリップ・シーモア・ホフマン/ジュリアン・ムーア
L.A.の郊外を舞台に、人気クイズ番組を通して知らぬ間につながりを持つ男女の人生模様が描かれる群像劇。トムはこれで3度目のゴールデン・グローブ賞を受賞。サントラも良い。
それにしてもアンダーソン監督って、『ブギーナイツ』といい、デカち〇にこだわりでもあるの!?
[#ここでゴシック体終わり]
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パンツすら80年代ぽい気がしてくる 1987年/マイケル・J・フォックス(当時26歳)
[#漫画(img/manga18.jpg、横196×縦587)]
摩天楼〈ニューヨーク〉はバラ色に
THE SECRET OF MY SUCCESS 監督:ハーバート・ロス 出演:マイケル・J・フォックス/ヘレン・スレイター
カンザスの田舎からニューヨークにやってきた青年があの手この手を使い大企業のトップに駆け上がるという、コミカルな青春サクセスストーリー。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でブレイクした直後だけあって、M・J・フォックスの軽快な演技もノリノリ。いやあ、80年代です。パンツシーンは、ニセ重役に化けるためエレベーターで着がえをするはめになったところ。
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白パンにひそむロマンの正体[#「白パンにひそむロマンの正体」はゴシック体]
[#挿絵(img/fig6.jpg、横86×縦88、下寄せ)]
もしもこの世にパンツが存在しなかったら。なんと味気なく、つまらない世の中だろう。
「生まれてくるなら、せめてパンツがある時代がいい」
と、私はせつに願う。
なぜなら、パンツにこそ、エロスとロマンが凝縮されているからだ。パンツを単なる布切れ一枚と思うなかれ。あのちっちゃな面積に、局部としての使命を十二分に背負っている。
だが、男子が女子のパンツを見て喜ぶ意味と、女子が男子のパンツを見て喜ぶ意味は、似て非なるものではないかと、かねがね思っていた。
例えば「スカートめくり」という行為。少年たちは、とんがりこーん状態の未成熟な股間を期待にふくらませ、女子の生パンツを見たいと願う。青年になっても、望遠レンズの大砲軍団でアイドルのパンチラを狙い、ヘアヌードよりもパンツをはいた清純アイドルのほうがぐっとくる、ときたもんだ。私の知る限り、男子のパンチラに女子が執着するといった逆パターンは、まずないのだ。
つまり男子は、女子の「パンツ姿、そのものが大好物」なのだろう。
女子のパンツのデザインの膨大さは、まさにその証明ではあるまいか。「勝負パンツ」&「本気パンツ」、そして昨今の「見せパン」という言葉(文化)にも、女子の「パンツは見せてナンボ」という戦略がうかがえる。
ショービジネスの聖地・ハリウッドをもってしても、男子のパンツの種類は、極めて少ない。やはり女子のように、ビミョーに股ぐりにレースがついていたり、かわいいおリボンがついていたりすることはなかった。
意外にも目をひいたのは、「白パン」だ。
セクスィ・スタァたちが、スクリーンのなかで堂々と身につけているではないか!!
しかし白のブリーフといえば、茶色いシミつきの白パンをはいていた、懐かしの超人「アホアホマン」(※[#○C、unicode24b8]松本人志)からもわかるように、反セクスィ、アホの象徴でもある。
なぜ、白パン? まがりなりにも数十億〜数百億円の製作費をつぎ込んで、こんなところにケチるはずはない。ハリウッドの一流スタイリストが「このカットは、このセクスィなパンツ姿でヨロ〜」と、ディレクターに依頼され、吟味・厳選された一枚であるはずだ。
スタァのまぶしいほどの白パンを探訪しているうちに、女子が男子パンツに求めているロマンの正体を突き止めた。
女子は、男子のパンツを通して、その向こうにひろがっている「未知なる|頂(いただき)」を妄想するのが好きなのだ。
そう確信するのは、私だけだろうか。
だって白パンは、私たちの想像をかきたてるように、やさしく股間をつつみこみ、その向こうの輪郭を、そっと教えてくれるではないか。ぴちぴちのブーメランパンツではあまりにも即物的で、ラッピング感覚に欠けるのだ。
さすがハリウッド。そんな女子のサガを熟知しているのだろう。
パンツの向こうの世界は、まさに百花繚乱。危険なアナコンダがひそむ熱帯ジャングルかもしれないし、妖精たちがロマンティックな詩をささやく夏の麦畑かもしれない。
白パンは、どんな妄想もできる、まっさらなキャンバスだ。
私はディカプリオの白パンに、一番好きな絵を描いた。
[#挿絵(img/fig7.jpg)]
おホモだちの君を探せ![#「おホモだちの君を探せ!」はゴシック体]
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[#ここからゴシック体]
美青年吸血鬼、お耽美の饗宴 1994年/トム・クルーズ(当時32歳)、ブラッド・ピット(当時31歳)
[#漫画(img/manga19.jpg、横195×縦621)]
インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
INTERVIEW WITH THE VAMPIRE 監督:ニール・ジョーダン 出演:トム・クルーズ/ブラッド・ピット/アントニオ・バンデラス/キルスティン・ダンスト/クリスチャン・スレーター
凄い豪華キャストなんだけど、原作者アン・ライスは当初、アメリカンなトム様はゴシックな雰囲気に合わない!と反対していたとか。しかし結局格調高いダークな映像美の出来栄えに大喜び。美青年吸血鬼たちが数百年間繰り広げる、お耽美でおホモな愛憎劇に浸りたい。撮影中にリバー・フェニックスが急逝、続編主役のアリーヤも事故死、という呪われ感もしびれます。
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大英帝国ではおホモも高尚 1987年/ヒュー・グラント(当時27歳)
[#漫画(img/manga20.jpg、横198×縦622)]
モーリス
MAURICE 監督:ジェイムズ・アイヴォリー 出演:ジェイムズ・ウィルビー/ヒュー・グラント/ルパート・グレイヴス
20世紀初頭のケンブリッジ大学。学生モーリス(ウィルビー)は偶然クライブ(グラント)と知り合い、2人は親友に。ギリシャの古典理想主義と同性愛を信奉するクライブにはじめは反発しながらも、愛を告白されたモーリスはやがて男同士のプラトニックな愛にのめり込んでいくが……。どハンサム英国青年、トラッドファッション、インテリ大学生、プラトニックとお耽美要素の大盛りにお腹一杯です。
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おホモだらけの愛憎劇 1998年/スティーヴン・フォン(当時24歳)
[#漫画(img/manga21.jpg、横194×縦626)]
美少年の恋
美少年之恋 監督:ヨン・ファン 出演:スティーヴン・フォン/ダニエル・ウー/テレンス・イン/ジェイソン・ツァン
香港の美男明星4人によるお耽美恋愛劇。同性愛者のジェット(フォン)とアチン(ツァン)は共同生活を送っている。ある日ジェットは街で知り合った美少年サム(ウー)に恋をするが、なかなか打ち明けられない。一方アチンは人気スターK.S.(イン)と出会ってときめく。しかし、サムを中心に4人の接点が明らかになり、やがて思わぬ悲劇が。「局部」的にはサムの「はい、あーん」シーンに悶絶!
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おホモテクは洋の東西を問わず 1993年/ジョン・ローン(当時41歳)
[#漫画(img/manga22.jpg、横198×縦632)]
M・バタフライ
M. BUTTERFLY 監督:デヴィッド・クローネンバーグ 出演:ジェレミー・アイアンズ/ジョン・ローン/バーバラ・ズコバ
大スキャンダルとなった、フランス外交官と中国人の愛人の数奇な愛の実話をもとに描かれる異色のメロドラマ。1964年北京で出会った外交官と京劇の舞台女優は運命的な恋に落ちるが、実は女優は国家機密を狙う女装のスパイだった……。女らしさとは何かを問いかけるかのようなジョン・ローンの妖しい女装は一見の価値あり。
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デビュー作・松田くんのモチ肌がきらめく 1999年/浅野忠信(当時26歳)、松田龍平(当時16歳)
[#漫画(img/manga23.jpg、横199×縦626)]
御法度
ごはっと 監督:大島渚 出演:松田龍平/ビートたけし/武田真治/浅野忠信/的場浩司/田口トモロヲ/トミーズ雅
厳しい規律「法度」で結束を固めてきた新撰組に美貌の少年が入隊したことから巻き起こる、「衆道」(=ホモ)の騒動を虚実織り交ぜて巨匠が描き出す。
1865年夏、新撰組に2人の腕の立つ若者が入隊した。下級武士田代(浅野)と美貌の少年加納(松田)だ。だが隊には田代と加納が衆道の関係だという噂が立つ。さらに、加納へ激しく思いを寄せる湯沢(田口)が殺されるという事件が起きて……。
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レオ様全裸で大暴れ 1995年/レオナルド・ディカプリオ(当時21歳)
[#漫画(img/manga24.jpg、横197×縦620)]
太陽と月に背いて
TOTAL ECLIPSE 監督:アニエスカ・ホランド 出演:レオナルド・ディカプリオ/デヴィッド・シューリス/ロマーヌ・ボーランジェ
19世紀フランス。流行詩人ヴェルレーヌは名声を手にし、美しい妻と暮らしていたが、彼の前に若く才能にあふれる詩人ランボーが現れる。ランボーの奔放な天才ぶりと美貌に魅入られていくヴェルレーヌ。妻との間で揺れ動く彼は次第に酒びたりになってゆき、やがて破滅が訪れる──。レオ様はキレイだが、あんまりフランス人ぽくない!?
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おホモだち。甘美にして耽美、禁断の美しき恋[#「おホモだち。甘美にして耽美、禁断の美しき恋」はゴシック体]
[#挿絵(img/fig8.jpg、横80×縦102、下寄せ)]
おホモだちカップルは、男子と男子である以前に、美しい薔薇と薔薇なのだ。
彼らがののしりあうときは、美しい棘で傷つけあい、エロいことをするときは、快楽の花びらが散り乱れ、肩を寄せあって木陰に寝そべるときは、空から祝福の光がさしこむ。
そう、おホモだちは、絶対的にお耽美なのだ。
おホモだちが美しいものだなんて、映画や漫画のなかだけの幻想ではないか、という思いもある。しかしそんな私も、おホモだちカップルがやっている小さな飲み屋は、どこか居心地がよく、悩みを朝まで親身になって聞いてくれて、ふろふき大根はおふくろの味に決まっている、などと幻想を抱かずにはいられない。
おホモだちの世界は、女子にとっては未知なる領域。ゆえに、みるみる想像がふくらんでいく。ある意味、ファンタジーに近いのかもしれない。
かくゆう私は、乙女中学時代に、おホモだち漫画を一度だけ描いたことがある。
おホモだち好きの友人へのクリスマスプレゼントだった。
彼女のリクエスト通りに、「外国の寄宿舎」、「金髪の目が大きな美少年たち」、「不幸な生い立ち」、「生傷」、「女子は一匹も出すな」、という設定を盛り込んで、売店で買った薄っぺらいノートに、愛と裏切りと罰を網羅し、さくさく描いた。
その漫画を読んだ友人は、「へへっ、ホモの真理をわかってるねぇ」と絶賛してくれたが、その真理とはいったいなんだったのか、私にはわからなかった。
おホモだち自体は、いいものだと思う。男女のカップルよりも、逆境を乗り越えたぶん、強く、きよらかな愛で結ばれている気がしないでもない。
しかしだ。それに惚れ込む女子の心理が、いまいち不思議だ。なぜおホモだちは、かくも女子のツボを刺激するのか。
そのツボを探すべく、スクリーンのなかのおホモだちを探訪してみた。
おホモだち映画の代表格といえば『モーリス』だろう。さすが寄宿学校の本場、英国式の厳かなテイストで、ヒュー・グラントが、華奢なからだを張っておホモだちの真髄を伝えてくれる。思わずうっとり……。
和式おホモだちだって、本場に劣らず美しかった。
『御法度』の松田龍平の吸いつくようなもち肌に、入れ食い状態の憂国の志士たち。ひそやかに進行する恋の行方を、息をひそめて見守ってしまった。
『太陽と月に背いて』のレオナルド・ディカプリオの略奪愛には目を見張るものがあった。ロマーヌ・ボーランジェから夫を奪うことは、どんないい女にとっても至難の業だろう。おホモだちならではの荒技を見せつけてくれる。
スクリーンを眺めながら、男女の恋愛映画を観ているときとは、あきらかに違う感情が生まれていることに、はたと気がついた。
男女がすったもんだする恋愛映画では、自分の「立ち位置」を決めて観ているように思える。男女のかけひきの展開に、自分ならこーする、あーする、などと、願望をかさねる楽しさがあるだろうし、ヒロインになりかわって、美男子をゴチになる醍醐味もあるだろう。
しかしおホモだちの恋愛映画は、それとはひと味違う。いくら胸を焦がしたところで、どんなにビューティな女子でも、おホモだちの恋愛対象には成り得ない。蚊帳の外から、おホモだちの美しい恋愛をあつーく見つめるだけなのだ。この狂おしいおあずけ状態に、妄想が刺激されて、耽美な世界を構築させるに違いない。
おホモだち映画には、観てる女子をM女にする魔力が潜んでいる。
嗚呼、なんと甘美で、禁断なるツボでございましょうか。
〈底 本〉文藝春秋 平成十八年七月十五日刊