(ぶんこ版)糸井重里の萬流コピー塾
〈底 本〉文春文庫 昭和六十三年三月十日刊
(C) Shigesato Itoi 2000
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目 次
今週のテーマは
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(ぶんこ版)糸井重里の萬流コピー塾
・当流の家元は糸井重里という。必ず名前を憶えるように。
・当流では見習、弟子、名取、師範の順で偉くなってゆく。
・どうすれば偉くなれるのか? それは、毎週、家元が宿題をだされますから、家元の目にとまるよう一所懸命コピーを書くことです。できのいいものには家元が松(5点)、竹(2点)、梅(1点)、毒(半点)の点を与える。
・1点とると見習になれる。3点以上点がたまると弟子にとり立てる。精進して10点以上たまれば家元より|萬名《まんみよう》が授けられ名取と認定。さらに|研鑽《けんさん》をつみ30点以上得点すると、ついに師範になることができる。
・家元は弟子以上の者に破門を命ずることがある。破門されると持ち点を3点減らす。
・でも、破門された者が再び梅(1点)以上の得点を得ると、減点をされた3点がたちどころにプラスになるので破門を恐れてはいけない。
こんなに得がある
・見習になると当流のシンボル「おじぞう君」マーク入りの見習バッジが与えられる。
・弟子になると弟子バッジの他に「おじぞう君」マーク入りTシャツ(季節によってはトレーナー)が与えられる。
・名取になると名取バッジと家元より|萬名《まんみよう》が授けられる。名取御免状は定期入れに入るから、改札駅員にチラッと見せることができる。
・師範になると師範バッジと、まだ作っていないが萬流師範の看板が授けられるはずである。
・送っても送っても没になる恵まれぬ塾生のために、「門前バッジ」或ハ「萬流御稽古帳」をさずけ、萬流福祉の一助とする。これは番頭の気まぐれでアレするだけだから、点にはならぬ。
――以上。
[#地付き]番頭より
《萬流制度及び得点》はやわかり表
《萬流家元制度》
(階 級)(得 点)(こんなに得がある)
師 範 30点以上 師範バッジと師範看板
名 取 10点以上 名取バッジと名取御免状
弟 子 3点以上 弟子バッジとTシャツ又はトレーナー
見 習 1点以上 見習バッジ
門 前 ご愛嬌 門前バッジか御稽古帳
《得点表》
松 5点
竹 2点
梅 1点
毒 半点
破門*マイナス3点
*但し、再び梅以上の得点を得るとマイナス3点がプラス3点になる。
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皆さんこんにちは。しかしそれにしても私が当塾の家元である糸井重里です。
今週からスタートした萬流コピー塾ではありますが、何が理由か、諸君からの投稿が一通もない。
世に読者参加の新連載は数多くあったものだが、どれも必ず第一回から堂々と投稿が掲載されておったものである。
家元の私も、そのような不思議だがありがたい事態を願っておったのではあるが、待っても待っても投稿は一通も来なかった。
業をにやした家元は、神秘を追求するのをやめにして、自らが講師をしている「広告学校」という別の塾の生徒五十名を相手に、現実的に「萬流コピー塾・見本版」をつくることにしたのである。
今週の第一回から、来々週の第三回までは、だから、読者諸君の投稿は載らぬ。
今週出した宿題の分が第四回に掲載されることになる。不思議も神秘も何もないリアリズムのシステムではあるが、許していただきたい。
さて、第一回目の依頼主は、巨人軍の監督であらせられる王貞治助監督、じゃないな、王さんは助監督だからエー卜……そうだそうだ藤田元司氏である。
この人のキャッチフレーズをつくるのである。
可愛らしさサミシサ
思えば、巨人軍の前監督には、「ミスター」「チョーさん」「燃える男」等々の呼び名があった。近頃では「いわゆるひとつの」などというわけのわからぬ別名まである。
前々監督だって「野沢のジイさん」とか「ドン」とか「黒幕」なんていう可愛らしいニックネームがあるではないか。
だが、現監督に、何があるか。「フジタカントク」と、これしかない。これでは、漢字をカタカナで読み替えてるだけじゃねぇか。あまりにサミシイのです。
で、生徒諸君には、彼のキャッチフレーズを、バシッとキメていただいてですね、もっと愛される、理解され親しまれる藤田像を生み出していただきたいのである。
と言ったら提出されたのが、これらのコピー。
悪い例から見てみよう。
・金山恭子の『球界の窓ぎわ族』
・湯瀬里佐の『ちゃっかりしんねり、居座っちゃおーっと』なんてのがありますが、このあたりは、あんまり良くない例。球場などで相手チームの応援席から聞こえてくるヤジにも、こういったものが多いが、いわゆるイジワルを、ナマにぶつけちゃうのは場を白けさせるだけで面白くもなんともない。
おふとりになっている方に、ブタとアダナをつけるようなものである。この次元にとどまっていては名コピーは生まれない。
問題は、その人物(商品)を表現する切り口なのだ。
しかし、それにしても、藤田監督の切り口というと「目立たない人」ということしか思いつかなかったのだろうか、「広告学校」の生徒諸君は……。
・松浦英子『よくお会いしますね』『ええ、監督ですからね』(梅)
・伊倉健之『知られるときが、やめるとき』(梅)
・阿部敏信『今、巨人軍にもれなくついてくる!』(竹)
などが、その代表例ではある。なかでは、阿部君の『もれなくついてくる!』というポジティブな姿勢が好ましい。
・樺島由美子『ベンチの押し花って、誰が言ったの』(竹) なんてのもあるけれど、ベンチの押し花を、バッドイメージでとらえる必要はない。『って誰が言ったの』を、思いきってとっちゃう。そうすると、深みのある可愛らしさとサミシサがでてくるでしょ。
王さんがらみの視点では、
・佐藤潔『王は、私の付き人です』(梅) というのがあったが、これよりも、
・須藤直子の『昨日、部下の王貞治からお中元をもらった』(竹) のほうがいい。須藤君のは、『部下の王君、お中元をありがとう』と直したら、さらによくなるのではないかと、家元は思う。
・宮本憲男『……グレてやる』(梅) というのは、変にエネルギーを感じるコピーだ。
一見フジタ風の人に
藤田さんが「とにかくツイてる」という切り口で書いたものもあって、
・船田紀明『巨人のツキ』(梅) というスローガン風のが単刀直入で目立ったけれど、
・島|聡《あきら》『原を入れたのは、俺だ』(松) には負ける。たしかに、あれが決定的なツキはじめであった。むかしはエースであったという情報も、捨てがたく、
・玉川芳信『いざとなったら投げますよ、私は』(竹) というのがシブイ。
しかし、トボけぶり、スケールなどからみて、
・岡部裕子『私が何をしたというのだ。何もしてないじゃないか』(松) というのが鋭い。これは、藤田監督以外の人物で一見フジタ風の人にならいくらでも流用できるコピーで、完成度も高い。やはり、藤田自身のコトバでコピーをつくる時に、主語は「私」であるだろうし、一見論理的風のレトリックを用いるほうが「らしい」。岡部裕子にはもうひとつ『私を評価するのはマスコミでもファンでもない。神だ』という傑作がある。
冒頭に、悪い例として掲げたコピーと、そんなにはちがったことを言ってるわけではない。しかし、明らかに程度が高いでしょ。今週トップは、当然岡部君ということになるね。
では、最後に、今週のコピーの判断の方法を伝授しておこう。
新聞紙一枚をひろげたくらいの大きさの紙に、あの藤田監督がニコーッと笑ってる写真があると思いねぇ。
そこに、書いたコピーを貼りつけてみる。
ちょっと離れてながめる。
これだけで、わかるのです。
難しいことは何もない。
次回は、よく売れてるのに買いにくい、あの「コンドーム」を課題商品として、授業を展開する予定です。
今週の宿題
あわて者で有名な出版社社長が、なにかの間違いで、夏目漱石の「坊っちゃん」を二百万部も印刷してしまったのだそうだ。
考えてもみたまえ、「坊っちゃん」なんて本は、世の中に腐るほどある。映画にもなってる。テレビドラマにもなってる。読んでない人まで読んだような気になっていて、あらためて買うとは思えない本だ。
「しかし、イトイさん。在庫で眠らしといて、年に千部ずつ売ればいいってもんじゃないんですよ。在庫にも税金がかかりますしねぇ。内容は本物の文学ですし、作者も偉人で有名人です。なんとか、二百万部、パーッと売れるような広告はないもんでしょうか」
ムリを承知で、引き受けることにした。
夏目漱石『坊っちゃん』(文庫版・定価300円)のキャッチフレーズをつくろう。余裕のある人は、ボディコピー(キャッチフレーズに続く簡単な文)も書いてくれてよい。媒体は、とりあえず新聞広告全10段とします。
では、家元は帰るぞ。
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だから皆さんこんにちは。しかしそれにしても私が家元の糸井重里です。
先週の週刊文春を買いそこなった皆さんはじめまして。あなたに悪気はなかったことは認めますから、これからは気をつけてください。
好評というコトバが、何のためにあるのか、この時まで私は知らなかった。よく儲かることよくモテることなどなどに飽き飽きしていた虚無的な私に、人生の目的を教えてくれたのは、読者よ、あなたでした。
とにかくいくぶんか好評であるということを宣伝して、開始をするのである。
「萬流コピー塾・見本版」の第二回の課題は、笑っちゃいけない「コンドーム」なのである。
しかしその前に、前回の「藤田監督」のキャッチフレーズに、ひとつ見落としがあった。
・上村研『顔は地味だが、オナラはくさい』(竹)
すいません上村君。このラジカルな名コピーを掲載せずに何が萬流じゃ、と、私も思うです。藤田さんも、これ、いいコピーだから気に入ってくれるといいんですけどねぇ……。これがもし『顔は地味だし、オナラもくさい』じゃ、内容としては同じなのだが、どーにもならない。諸君も、上村君に学びなさい。
コピーを鼻声で書く
さて、「コンドーム」である。
こういう、下半身に関係する商品のコピーは、一見、誰でも簡単にできるような気がするところがオトシアナなのである。
早い話が『あらいやん、あれつけてからよォン』だとか『ナマと同じね』だとか、コピーを鼻声で書けば出来たような気になれるわけである。要するに自己満足しやすいのだ。
こういうものほど、他人に共感させるのが難しい。
・金山恭子『離れたくないあの人だから、0.03mm離れます』 のように、薄さというメリットをキチンと書いているものもあるが、面白くも何ともないでしょ。もっとも現在雑誌広告なんかで見かけるプロのコピーは、その程度のものが多いですけどね。
同じことを言うのでも、
・徳村篤紀『つけなくて行ったが、同じ感触でした。不思議です』(梅) などのほうがマシ。しかし『つけな|いで《ヽヽ》行った……』にしたほうがよいでしょうな。
下半身もののテレ臭さを、乱暴さで突破しようとした人もいました。
・高橋明彦『買って、かぶせて、やりまくれ』(梅)
・芳賀ひろみ『「押したおせばどうにかなる」とオヤジは言うが』(梅)
たいしたものではないナ。
・島聡『このコンドームくれ! そうだ! コンドームだ!! 何だ!! 何か文句あんのか』(毒) なんてのは、もうヤケッパチ以外の何物でもないけれど、ここまで開きなおると読んでて快感がある。
実感もの、スナオものというのもあるが、答案を提出した「広告学校」の諸君があまりにも若いので、スナオに書くと若々しくなりすぎて、読み手になめられてしまうのだ。
・佐藤潔『今日は……デキる』(梅)
・板橋義也『つけてるうちに、興奮しちゃう』(梅)
・玉川芳信『おかげで、回数をこなしました』(梅)
・武藤靖人『よく見ると面白い形してるんです』(梅) なんてのじゃ、いじらしいけど、お客にバカにされちまいます。
あ、買う恥ずかしさをテーマにしたやつで味のあるコピーがあったぞ。
・那須英憲『「コンドームください」と言えない人は、「サックください」と言いませう』(竹) コンドームというコトバに特別に思い入れてしまうから言いにくくなるわけなのだから、他のふだん使わないコトバに言い替えればいいわけなのだ。これは、関東地方生まれの家元が、「ボボ」とか「まんじゅう」などと、わりに気軽に言えるのと同じことだ。
・吉竹雪江『わたしには、つける所がありません』(竹) は、なかなかのヒットである。当然のことだが、これは女性の作である。こう言われると、男は「俺にはつける所があるもんね」と、いわれなき優越感にひたることができる。なんでもないことがウレシイことに思えちゃうのです。男としての自覚やら、性的交渉時における責任感なんてものが生まれ、ついにはこの商品を購入しようという気にもなるのである。
「キレイだねぇ」
いわゆるプロっぽいものも紹介しておこう。
・河合幸江『彼女の海のサーフボード』(梅) 『あるがままのあなたが好きなの。女は、いつも、嘘つきさ』 なんてのが、それだ。こういうものは、大喜利で「キレイだねぇ」などとホメられちゃう答えと同じで、拍手はくるけど、ただそれだけなのね。
先週と今週来週は、読者からの投稿が期待できないので、「広告学校」の生徒と見本版をつくっているわけであるが、いざ本番になったら、きっとこんなのが届くんだろうなぁというものを見つけた。
・茂手木斉『この安心が、あなたをより素晴しい法悦境へといざないます』『避の用人。マッチ一本孤児のもと』
点は、やらないつもりだったが、一人でこんなにアホなものをふたつも作ったということがエライので、(梅) をひとつやる。
似たようなものだが、
・那須英憲『すいません持ってないんです、と言ったら、近藤さんはムッとした』 には、あまりのバカバカしさに(梅) をあげます。
・板橋義也『いいことしよう。いいものつけよう』(竹)
リズムで勝ったね。
・海老根祐子『おとーさん。もう私、兄弟は欲しくありません。6月19日、父の日のプレゼントに』(梅) は、あまりの無邪気さに。そんなお父さんが、いるとしたら怖いね。
で、今週のトップである。
・大野奈緒美『生んでどうするの?』(松)
これは、そのまま実際の広告に使える。当塾の雰囲気とは、ちょっとちがうかもしれないが、ウマイものはウマイ。文句なしの(松) であろう。
次回は、見本版の最終回。「ちくわぶ」の再評価をめざしてキャッチフレーズをつくる。
今週の宿題
どうもこれまで、いまいちマイナーっぽい商品や人物にばかり目を向けてきた、ような気がする。別段、そういうつもりはなかったのだが、そうなっちゃったのである。
そういうつもりはなかったという証拠に、ここでひとつ、大メジャーな商品に迫ってみようと思う。なーに、ビビることはない。
あの、駒場と本郷にある、なんつったっけ? エート「東京大学」の、キャッチフレーズを頼まれたと思いねぇ。むかし、橋本治君が『泣いてくれるなおっ母さん、背中のいちょうが泣いている』という名作を残したけれど、その後は鳴かず飛ばずである。媒体はポスター。
ひとつ、東大をなんとかしてやってくれたまえ。
では、家元は帰るぞ。
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皆さんこんにちは。ええい、私が家元の糸井重里です。
はじめてこの連載の存在に気がついたひと握りの大衆諸君、よろしくな。
本格的に萬流コピー塾が開かれる前の、ほんのつかの間の夢が、ここに消えてゆこうとしております。二回続いた「見本版」も、これで終り。「広告学校」(雑誌・広告批評主催)の生徒諸君、ごくろうであった。君たちは、現在たいしたことはないがゆえに前途有望な若者である。足りないのは、創意と工夫と努力と体力と知識と教養と魅力と美貌と金力と財形貯蓄と不動産だけではないか。恐れることは何もない。一層の精進を期待しておるぞ。
しかしその前に第二回「コンドーム」のこぼれ投稿を拾っておこう。
・白石勝『ぬけて溜るか』(梅)
・雨宮秀樹『親父はライカのケースにしてたっけ』(梅) の二点。両人は当塾の近所に仕事場を持つ「週刊文春」とかの編集者らしい。白石君の迂回的告白体は、新しいと思った。細くても愛があればよいではないか。雨宮君は、父親の創造性に感謝すべきであろう。
さて、第三回の課題は、「ちくわぶ」である。
ハンパじゃないぜ
家元が下々の暮らし向きなど調査せんとして、おでん屋などというところにおもむいたおりに、ふと小耳にはさみし言葉があったのじゃ。
「やっぱ、よォ、おでんのなかでも一等人気ねぇのって、ちくわぶだろーね。俺なんかよォ、ちくわぶなんてものがあること自体忘れそうになってるもんね」
と、ある若者が言った。
「いずれ、あれって、おでんのなかから消えてっちゃうんじゃないのォ」と、隣りのブスも言った。反対隣りのブタも「ふとっちゃうような気がして、好きくないッ」などと可愛い声を出しおった。
これほどバカにされてもなお人々の口に入ろうなどというケナゲな意志を持つ食物が、この地球上にまだ存在しているのだ。
私は、このケナゲさに心をうたれた。なんとかして「ちくわぶ」を、人気食物にしてやりたい。
この冬、「ちくわぶ」は逆襲したい。あのアホっぽい若者や、ブスやブタが、食べたい欲しいと思っても畏れ多くてオーダーできぬくらいの地位に、「ちくわぶ」を置いてやりたいのである。
そういう目的で、キャッチフレーズを書いてもらったのです。
ところが「広告学校」の生徒たちは、最初から逃げの姿勢でコピーを書いておる。
・大橋聖子『せめて、ボールペンのホルダーにいかがでしょうか』(梅)
・紺野光春『ちくわと間違えてお求めください』(梅) ……ええい情けない。こんなヒヨワな文句で「ちくわぶ」が救えるか。大橋、せめて、「せめて」を取ってくれ。紺野、ちくわと間違えても、おでん屋のオッサンが「それ、ちくわじゃないよ」とさしでがましく言ったらアウトじゃないか(泣)。
・樺島由美子『アレレ、チクワって言ったのに、チクワブが出てきちゃった』 だと?! おまえは、そんなに「ちくわぶ」が嫌いなのか(涙)。
これだけ冷たいコピーが続くと、こんな、なんでもないやつが暖く思えてくる。
・須藤直子『私のちくわぶ、どこいった? キミのちくわぶは、がんもの下だ!』(梅) やっと食べてもらえた気がする。
・谷山雅訂『はんぺんじゃないぜ!』(梅) これ、声に出してみないとわからない。つまり、「ハンパじゃないぜ!」の、ダジャレなのである。ま、勢いがあるから許す。
あ、犯罪的とさえ言えるコピーを発見したぞ。
・鈴木雅喜『おじさん、ちくわぶちょうだい。アー、無理に食わねえでもいいんだよ』(毒)
スケベなのもあるぞ。
・阿部敏信『おじさん、あたし食べてみない?』(梅)
・小野和恵『糸コンニャクとしたいな〜〜』(梅) というのもある。これを男が書くと「コンニャクとしたい」とやってしまうだろうが、切れ目を入れたりすることは手間がかかるので、手軽そうな糸コンニャクをねらったのであろう。女性ならではの発想といえる。
・板橋義也『ラストオーダーは、私を』(竹) は、寿司屋における梅しそ巻きの地位をねらったコピーである。現実的すぎるところが良し悪しではあるナ。
「ちくわぶ肌」?!
無理やりウソッパチをつくって、ドラマタイズして売ろうとしている悪い子たちもいた。しかし、どことなく可愛いから許しちゃうわ。
・玉川芳信『これは、あのおでんの中にあって、食べると幸福になるというちくわぶです』(梅)
・芳賀ひろみ『長寿村と呼ばれるこの地方では、昔から、ちくわぶを主食にしていたそうである』(梅) ……どこにそんな村がある?!
・山田真理『京子は、ねっとりと弾力のある、白い膚をしてゐた。かういふのを、俗に「ちくわぶ肌」と、言ふのだらうか。』(毒) まいった。山田君に、もうひとつ『ちくわぶや なにかなしうて なべのそこ』(梅) というのもあった。どちらも良いのだが、「ちくわぶ」の側に立って、もっと「ちくわぶ」を食べてほしいという気持になっていないのが残念である。だが、面白かった。
・天野弘子『ちくわぶを ほそく切ったらあら うどん』(梅) も、なんとかしたいという気はあるのだろうが、逃げ腰になっていることは否めない。
第一回で、晴れの(松) を獲得した
・岡部裕子は、『ちくわぶは、煮溶けて嬉しい、おでんのとろみ』(竹)を出してきた。明らかに、「ちくわぶ」の味方をしていることに読者諸君は気付かれたことと思う。しかし、まっとうすぎる弱さがあった。
こうなったらヤケだ。カタイことはヌキにして、とにかく笑っちゃったものを最後に紹介しておこう。
・下津佐勉『申しわけありませんが、私、所詮ちくわぶですし、メカニックな事はわかりません』(毒) ここまでナンセンスだと、ある種の愛情が湧いてくる。「メカニックな事は|よく《ヽヽ》わかりません」としたほうが味わい深いと、家元は考える。
コピーひとつで、商品の人気を高めるなんてことは、とても難しい。そんなことは、知っておる。しかし、その不可能に近い困難から逃げては、よいコピーは書けない。これが、今週の教訓である。
今週の宿題
「ハイライト」のキャッチフレーズをつくってくれたまえ。
かつては人気第一位であった煙草のブランドだ。これは、やればできそうな気がするだろう。
特に、「ハイライト」に青春の想い出を重ねられる新中年の皆さん、あなたが「セブンスター」に浮気し、「マイルドセブン」と腐れ縁的に結ばれた事情は、よくわかる。わかったうえで、お願いです。昔なじみの、「ハイライト」を、どうか返り咲きさしてやっておくんなさい。媒体は、新聞広告とする。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
そんなことを言われたって、私が家元の糸井重里である。
週刊文春の編集部にあった小さな郵便受けをぶっこわしてくれた読者諸君、よくもやってくれた。一人一人のハガキの力は弱いものだが、おおぜいの人間が出したたくさんのハガキの力は強い。
具体的に二千通のハガキが来たなどと書いてしまうと、諸君の気持がめげるといけないのであえてかくしておくが、とにかくだなぁ、番頭が八百屋からダンボールを四十円も払ってゆずってもらって、赤いマジックで〒の字を書いたりしているのを見るにつけ、心を痛めている私なのである。
のォ、番頭。
「いえいえこれしきの努力なくして番頭といえましょうか」
そうかそうか健気なやつよ。よしよし、少ないがこれは小遣いだ、帰りにあったかいものでも食べて行きなさい。
「家元、そろそろお稽古のほうを」
似て非なるもの
ではいよいよ、萬流コピー塾の、本番が開講になる。
宿題は、「さる出版社がちょっとした間違いで二百万部も刷ってしまった、夏目漱石の『坊っちゃん』(文庫版・300円)を売るコピー」であった。
やはり、誰もが似たようなことを考えるもので、ほとんど同じ、というコピーが数多くあった。
しかし、|同じ《ヽヽ》、と、|ほとんど同じ《ヽヽヽヽヽヽ》は明らかに異るのである。
問題は、この「ほとんど」の部分をどれだけうまく言えるかなのである。
例えば「週刊A日」で、「N顔絵塾」の塾長をなさっておられる山藤章二君より唐突に送られて来たコピー『お宅にある「坊っちゃん」はもう効きません。半年に一度はとりかえましょう』(竹) は、
『「坊っちゃん」は脱臭剤と同じです。
おたくのは効かなくなっていませんか』
などと、ほとんど同じである。しかし、山藤君のでは「脱臭剤」というコトバを使っておらないことに注目していただきたい。文脈から、坊っちゃんという本を脱臭剤とアナライズしていることは書かなくてもわかるからである。ここであえて「脱臭剤」というコトバを省略したのがセンスなのである。
・高島信『古池や蛙飛び込む水の音「坊っちゃん」』(梅) も、『古池や買って飛び込む水の音』とよく似ている。|もかし《ヽヽヽ》、後者のほうには、カワズをカッテに変えるという小細工がある。だが、この程度では、何のことはないのです。それよりもあえて「ボッチャン」という、読み手の側が想像している通りの言わずもがなの一言を添えたほうが、気持がよい。このあたりの奥義は、諸君にもおいおい理解されることであろう。
『坊っちゃんも嬢ちゃんもみんな買おう』というスタイルのものが、なんといっても一番多かった。
甘い!
なかでは、
・大坪浩一『「爺っ!!」「これでございますね?! 坊っちゃん」』(梅) が、マシであった。しかし、なにゆえにこんなにいくつも「!!」をつけるのであるか。肉屋の特売ではないのだぞ
・国分浩『保存本「坊っちゃん」「坊っちゃん」刊行77周年記念』(梅)
・田中節子『明治39年以来、中身に変更はありません』(梅) などは、似ているように見えるが、商売人として国分君の勝ち。ま、田中君のトラディショナルなアプローチも捨てがたい。
・山本恵久『「坊っちゃん」がこんなにたくさん店頭に並ぶのは今回限りです』(梅) も、無邪気であるがゆえに、イキオイがあってよかった。
・加藤秀広『今年度の共通一次に出ないと誰が言えるだろうか』(梅) は、単純明快な販売促進コピーである。この場合、「共通一次に出る」と言い切ってしまうとミもフタもない。
・宇敷恵子『教科書で宣伝してるから、いつもブームなんですって』(梅) は、前半はいい。しかし、「いつもブームなんですって」などと、突然他人ごとのように眺めているのでは困る。
『本作品の一部は優良教科書等に掲載されております』などと変えてやると生きてくると思うのだが。
・村上幸隆『がっきゅうぶんこ』(竹) のパワーを見よ。これだけのものが書けるのは、かなりの|手練《てだ》れかアホだ。
無闇にウケるってのでは、こんなのもあった。
・新地康人『貴方は漱石を何kg愛してますか。目方は多ければ多い程うれしいものです。二子山親方』(梅) 最後の二子山はいらない。また「貴方」とか「程」とかの漢字を不用意に使っているのはコピーのナンセンスな味にくらべて古臭い感じがするので、気をつけてほしい。
・小林幸弘『梶原一騎は素手で10冊割った』(梅) なんのことやらサッパリわからんが、同じ小林君が『あきらめなさい。これからは表紙は様々でも中身はみんな「坊っちゃん」の時代になります』というアンマリなやつを書いているので、おかしいから載せた。
雅子と漱石との関係
すこし、まともなスタイルのコピーを並べてみよう。
・加野典子『マドンナの日傘がまわる』(梅)
・鎌田真『出るクイは、打たれても出る』(梅)
・市戸万丈『俺は教師になってから殴った。それでも大変なことなんだ』(梅)
・田中和夫『書かんでもよか、読書感想文なんゾ(もっともらしい読書感想文を提出するよりは、「忘れました」と言ってぶんなぐられる方が男らしいが、ちゃーんと読まなきゃ男じゃない)』(梅) などというのが、正統的な作品である。
これらから、ちょっとズラしたところに、
・秋田佳紀『テレビや映画でおなじみの|あの《ヽヽ》「坊っちゃん」がついに本になりました』(梅) がある。「ついに」は「とうとう」のほうがよかないかい?
汚いやり方でまずまずのものとしては、
・くぼひろし『裏「坊っちゃん」入荷しました』(梅)
・並木けんじろー『子供は読んじゃいけません』(梅)
・吉田宣史『特典付文庫版「坊っちゃん」発売!(この「坊っちゃん」は今までの「坊っちゃん」と「坊っちゃん」が違います。(中略)1冊買ってもわからない人は2冊でも3冊でも買ってください。特典が2倍3倍になります……後略)』(梅) 並木君のは、これだけでは少しも面白くないのだが、弱々しい文字で「ポルノだと思わせれば子供は買う」と、あまりにも牧歌的な断り書きがあったので、ついほだされて(梅)をやってしまったわけだ。吉田君は、くどい。
・荒井博『巻末附録「祖父を語る」夏目雅子』(梅) は、夏目雅子もののなかでは、スッキリしていてよかった。夏目雅子は漱石が祖父であることは否定しているが、もっと追求してみようと家元は考えておる。ちなみに夏目房之介のほうは本当に文豪の孫なのだが、誰もそのことを書いてきていないのが無念ではあった。
さて、ヒット作を出そう。
・島聡『こんなすばらしい小説が芥川賞を取らなかったのは不思議だ』『ちかごろの漱石はつまらん、と父さんは言うけれど』は、二つで(竹)。島君、なかなかコンスタントに得点をあげておるね。
・斎藤省吾『今「坊っちゃん」を買うと心におつりが貯まります』(竹) 実は、これは並の上といった出来なのだが、「おつり」と「ボッチャン」の、音の響きの関係が、なんとも言いがたいノスタルジーを家元の尻のあたりに感じさせてくれたので、特別にはからってやったのである。
またヤケになってるやつがいた。
・図司勝英『御自由にお持ち帰り下さい(売るのは無理デス)』(毒) バカモノ!
・柳繁夫『窓ぎわの坊っちゃんくずし(限定二百万部)』(毒) 図々しさが怖かった。
さっきも出ていた加野典子の『赤シャツ あれはあれで良いヤツだった』は、不覚にも家元は「あれはあれで良いシャツだった」と読みちがえてしまった。「シャツ」のほうが面白かったのにねェ。運がいいから、もうひとつ(毒)をあげます。
組織票に期待する
毛色の変ったものをひとつ。
・重岡静枝『釈迦に説法ですが……(真言宗の寺院へ)。昭和五十九年に迎える弘法大師千百五十年御遠忌の記念品は、霊場四国にゆかりの夏目漱石の「坊っちゃん」を選んでください。この名作は日本人全員が読んだふりをしていますけれど、ほんとうは読んでいない人が遥かに多いのです。日本文学の|史《ママ》祖、空海のナウな贈物として、現代の「弘法清水」を噴出させて下さい』(竹) これは、もう、六十二歳の方だし、とにかく、こんなに珍しい切り口は他にないし、組織票を期待できるかもしれないという気にもなるので掲載するしかない。
・武田智司『牛丼350「坊っちゃん」300円 君の心は偏食してないかい?』(梅) を価格からのアプローチとして採ったのだが、恐しい報告がひがし京子君から届いていた。『本屋へ出かけたら、いろんな「坊っちゃん」がありました。ペラペラとめくってみて、ちょっと近眼の私は、活字がほど良い大きさの読み易そうな「坊っちゃん」を買いました。K談社文庫「坊っちゃん」160円です。はてはて、依頼主である有名な出版社社長のところの「坊っちゃん」は確か300円でしたよね(後略)』(梅)
わっはっは。
番頭、聞いたか。
「ハァ、これはなかなか厳粛な事実でございますね」
ところで文春文庫に「坊っちゃん」はあったかな。
「ハイ出版目録を調べてみますです。エート、あ、あった。そんなものはナイって書いてありますです」
やはり、まァ、それにしても文春文庫は良いのォ、今日はなんだかムシ暑いなワッハッハ。
では、今週の講義はやめー。
ま、いまさらこう言うのもナンであるが、第一回にしてはみんななかなか良いデキではあった。愉快愉快ワッハッハ……。
ムシ暑い!
今週の宿題
銭湯に行きたくなるようなコピーを考えてほしい。
近頃は、めっきり銭湯も減っちゃって、家に風呂のある人は行かなくなっちゃってるから、料金だって知らないのです。
銭湯も「家ブロ」とはちがったいいところがあるはずなのだ。
是非とも、このコピーを風呂屋に行って実感をリサーチして、書いていただきたい。この宿題のせいで、突然銭湯が繁昌してしまったりしたら、それはそれで面白いではないか。
私も番頭に交渉してもらって番台に座らせてもらうこと(調査としてである!)を考えておる。
では、家元は帰るぞ。
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まったくもって皆さんこんにちは。いやいや私が家元の糸井重里です。
人気というのは恐しいもので、先週あれほどだったものが、今週になったら、ガタッと二倍になっておる。油断してはいけないなぁとしみじみ思う乃木坂の夏ではあります。
読者諸君からの質問が多いので、特別に一度だけ答えておくが、「一枚のハガキにいくつもコピーをかいてもいいんですかあ」という問い合わせに、私は「かまわん」と答える。だがしかし、いくつも書くと読みにくい。読みにくいものを苦心して読んで選んでやるほどの人格者に、私が見えるかね。
ま、多くは語るまい。
まず家元は謝る
さて、今回の課題は「東大」であった。
実は宿題を出す時に、ちょっとした間違いがあったので訂正しておく。
かつて橋本治君が作った東大のコピーは「泣いてくれるな」ではなく『止めてくれるなおっ母さん』であった。本人から「あのねー……」と厳重な抗議があったので、謝罪してTシャツを送るものである。
さて、第一弾は、
・松浦ひとみ『野球もうまくなりました』(梅) である。なんだたいしたことないではないかと思う読者もいるかもしれぬが、この自称十六歳のひとみちゃんは、家元の元の大家さんの変装らしいのである。住所と姓と筆跡が、あのマツウラさんちの奥さんに相違ないと、私は見破ってしまったのである。元・大家といえば、家元よりも大きいではないか。だから(梅)をお中元してしまうのである。東大駒場の近所だから、どことなく東大に優しいということに注目したい。
しかし、だからといって、荒木ゆか『あとは出るだけ』などは採用しない。彼女は「こんどデートクラブを始めるから、家元も名誉会員にしたげるわン」などと色仕掛けでセマッておるが、私はその方面の誘惑には強いのだ。のォ、番頭。
「はい、本当に馬鹿者でございますね、馬鹿馬鹿!」
まぁ怒鳴らなくともよい。
・府越義博『赤いジュータンヘは赤い門からが近道です』(梅)
・岩崎雅紀『ええ、まあ、いちおう』(梅)
・羽田理恵子『おいでおいで。イイ種あるよ』(梅) と、ここいらがまぁまぁである。内容はわかるが、もう一歩、|味《ヽ》に欠ける。
・加野典子『来たいなら来い。どんとうけとめてやる』(梅)
・三好祐一『形に残る学問』(梅) のほうが、少し上である。連続入賞の加野君だが、これは、『どーだい、東大だい』などというものと、テーマは同じである。しかし、やはり表現の段階で『どーだい』(これ三十通ぐらいあったョ)よりも一日の長がある。精進して一層活躍していただきたい。
いわゆるヘタウマも多かったのだが、なかでは、
・岡宏『東京大学では、あなたの御意見御感想をお待ちしています。お気軽にご連絡下さい』(梅) が良かった。「います」は「おります」にしたほうがよい。東大にゴーマンさを見ている人は多かったが、ゴーマンさをインギンに変換して表現している点が鋭い。
・高橋宏昌『都民の皆様、地元の東大です』(梅) も、良い出来である。ヒントは先日の選挙運動であろう。なかなかのものだ。
とにかく、「商品」に負けちゃってるコピーが多すぎた。
いくらコトバで東大の悪口を言ったところで、書いた本人の品下った心情が見えかくれするだけである。
・岡田克巳『私は完璧な人間だ。但し包茎とゆーこと以外』(毒) くらいになると、品下るのそのまた下、が表われちゃって励ましてやりたくもなるのだが、『たかが受験秀才の墓場じゃないか』程度では点はもらえないと思っていただきたい。
コンプレックスがあるならあるで、モロに出してしまうと面白い。『でも結婚したい』などというのは素直かもしれないがセチがらくていけない。
こういうのが、いい。
・石塚圭一『東大生の使う文房具が、僕は好きだ』(梅)
・芳田香織『見学自由』(梅)
無手勝流に近いところで、
・松元一師『ぼくは行かなかったけどね、いいところじゃない?』(梅) 松元君のコピーなぞ、顔が見えるようである。
・座間克巳『その気になれば受かったんだ……パパが言ってた』(梅) は、晩酌ほのぼの風でセーフ。
もっと過激に素直なのがある。
・福里明彦『ホ――─ッ』(竹)
一年前に、田辺聖子さんのエッセイで読んだのだが、関西の人は京大ぐらいはちょっとしたコツで入れると思うくせに、東大になると無条件で感動しちゃうのだそうだ。福里君も、そういえば枚方市の方であった。
東大生の立場から書くというスタイルも目立った。
・岡田浩典『お父さん。夏休みには帰ります。でも、あの村の人たちの出迎えはヤメて下さい。ハズカシイです』(梅) 似たようなものも多かったが、これが一等カワイイ。
・高雄啓子『勉強のことはくせだから大目に見て欲しい』(竹) は、ヒットだ。
・根津芳樹『頭の良さは、後天性の異常ですので、入ってからでもなおります』(梅)は、高雄君に負ける。
・大木裕子『ヘイ彼女、学問しない? この一言が言えないの、ボク』(梅)
・佐々木光喜『ねえ、隣りの学生さんと呼んでいいんだよ。もっと』(梅) が、まぁまぁ。
・小林秀雄『そうさ俺たちゃ金の卵! 金卵(玉)と呼んでくださって結構です』(毒) 小林秀雄って、なんてバカなんだろう。
竹と梅の違い
まだ、ある。
・宇川拓水『泣いてくれるなおっ母さん、背中のボタンがとめにくい。うしろ前ですよ!』(毒) なんでこんなのが来ちゃうんだろう、面白いじゃねぇか。
・新戸雅章『生涯一東大生』(竹) これは、フロックじゃないとしたらかなりの達人ですよ。次回作に期待する。
ほとんど差別に近いんだけど、こういうのはどうじゃ。
・細田均『こないだ、わが家に東大卒の嫁さんが来た。明るくて働き者と、近所でも評判です』(竹) このコピーが(梅)でなくて(竹)であるということがわからないといかんのです。
「家元、いっそ松にしては……」
番頭はハガキの整理をしていなさい。
・名女川美代子『とうさん東大 ぼく東大 みんなそろってそれ東大』(梅) これ、なんとなく怖いなぁ。細田君のと裏表の関係ですね。それにしても、この、失礼だが、名女川という姓は、その、どうということではないが、なんとなく恥ずかしい。主婦の方らしいが、一日も早く旧姓に戻るよう努力をしてみては如何であろうか。
「それはちょっと差し出がましかありませんか、家元」
あ、番頭か、いやいやこれは失礼であった。
地味なポテンヒットも紹介しておこう。
・岡田寿彦『お母さん、東大に行っていい?』(梅)
・宇野佳秀『遠くのハーバードより近くの東大』(梅)
・大沢郁子(TODAY(とーだい)がだめでも いいTOMORROW(ともろう)』(梅)
どれも、ギリギリで点になっている。このくらい書けていれば選ばれるという基準点みたいなものだから、落ちた諸君も意を強くして臨んでほしいものである。
コピーと自己表現
他の大学と比較して書くというスタイルでは、
・楠本裕実『東大は東京の阪大です』(梅) というのが、わけがわからなくてつい拾われてしまった。よくある手だけれど、
・那須英憲『東京大学?! スケールが小さいね、と日大生が言うと、もっと世界に目を向けるべきだね、と亜細亜大生が笑った』(梅) が、残った。しかし、これがコピーかといえば、バカモノッと言うしかない。でも許しちゃうのです。
・小林牧朗『せっかくの苦労が日大になるのでは申しわけがない』(毒) 本人がこう思って書いているのではなく、あくまでも東大のコピー表現として書いているのだということを忘れると腹が立つ人も多いだろう。
・脇田成『さりげなくディスコで学生証をおとしてみる』(毒) には、「これは昔〈YOU〉に頼まれて作って糸井さんにほめられたものです」と添え書きがあった。同じネタで何度もほめられると思ったら大マチガイである。いつから東大生はそんな省エネ根性になったのだ。勉強しなおして法政にでも入りなさいッ!
ものすごく間違っていて、もう掲載するしかないやつをひとつ。
・清水秀子『喜びも悲しみも幾歳月』(梅) ……これ、誰もがやりたかったことなんだよね。なーんにも考えてないの。しかも、白地にブルーで、のんびりとカモメなんかが飛んでる灯台の絵まで描いてあるんだよね。そいで、このアイディア、実は、なんと、この一枚しかなかったわけよ。ここまでアレな人って、やっぱし珍しいんだろうなぁ。そう思ったら胸を打たれちゃって、点をあげました。
最後のトドメは、今週の最高年齢者に決めてもらいましょう。では、長老、七十三歳の年輪で一発!
・橋爪正人『あたまが悪うてうからない』(松) 「悪うて」の「う」が、スゴイ。紋切型の批判や、へつらい、上目づかいなどなどを、この「う」で、ぶっ飛ばしちゃう強いコピーである。東大関係者も、これを読むと、わけもなく襟を正すのである、たぶん。
今週の「テーマ」は、やさしいようで難しかったはずである。
コピーを書くということは、必ずしも自己を表現するということとイコールではないのだが、こういうテーマになると、つい自分が出ちまうものなのである。
「強いものにはコビないぞ!」などと歯をくいしばるのもよいが、その硬直した野党精神が、目を曇らせてしまっている場合がある。嫌いなら嫌いで、まったくかまわないのだが、それをどう伝えるかにアタマを使わないと、人は聞いても読んでもくれないのである。
今週の宿題
三週連続で、口説き文句というのを考える。一週目は、「とにかくデートにこぎつけるための口説き文句」。
番頭は、『おフクロがキトクなんです。デートしてください』というのを考えた。
私はむかし『必ず百メートル離れて歩きますから』と言って、うまくいったことがあった。(ところで女性塾生のことだが、いろいろ考えるとキリがないから、男の立場からでも女の立場からでも自由に勝手に書きなさい)諸君の英知に期待する。
第二週と三週は、追って、この欄で指示するから、あくまでも、「まずデート」に限って考えるように。
では、家元は帰るぞ。
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先程も言ったが、私が家元の糸井重里である。
では暑気払いにまず一キャッチ。『人間は夏には負けるが、秋に勝つ』……不調である。
家元にも好不調はあるのだが、同じ不調でも「美しき不調」であるというところが一般の民とちがうのである。この「美しき」こそが、家元の重みというものなのであって、駆け出しの諸君にはとうていはかり知れぬ境地なのだ。のォ、番頭。
「然り、然りでございます」
おォおォ健気なやつよ。少ないがこれは小遣いだ。帰りに麻布十番の浪花屋総本店で小倉アイスでも食べて行きなさい。
「古女房と豚児にも……」
通勤一時間半で溶けてしまうではないか。家族を気づかう心のゆとりがあるのなら、どうか私の肩をもんでおくれ。
「い、家元ォォ」
早く、そこを片して、開講の用意をしなさい。
「は、ただいま」
今週は厳しいゾ
だから開講である。
宿題は、専売公社の元・エースである「ハイライト」であった。
・諏訪克己『紫煙カムバック!』(梅) 同じものが他にもあったが、職業年齢欄に四十一歳・零細会社役員とあったので、この人に決めた。いずれ日本の税制について話し合ってみたい。ハッキリ言ってコピーはたいしたことない。どんなタバコだって紫煙は出るし映画「シェーン」の時代の人気銘柄はハイライトじゃなかったはずである。時間をごっちゃにするのはいけない。
同じノスタルジーなら、総論風に、
・岩瀬静『これはもうナツモクと呼んでやりたい』(梅) とするか、より正確に時代背景を書きこんで、
・松田晃『ふーっ、うまいっ! オジさんはなァ デモのあとのハイライトが一番好きだったんだ。ところで、おじょうちゃん 月4回で40万にならないかい』(梅) のようにしたほうがよい。それにしても松田君のコピーは、半分の長さにできると思う。作文でなくコピーなのだということをお忘れなく。
なつかしのハイライト、といったテーマは非常に多かった。
・藤原隆児『もう一度ハイライトにすれば、人生だってやりなおせる……かもしれない』(松) は秀逸。尤もネガティブな匂いのあるアプローチなので、誌上での笑いはとりにくいが、まことに優れたコピーである。
・柿沼徳治『ハイライトを喫っていた頃、僕はすこぶる健康だった』(竹) も鋭い。両者とも、ノスタルジーを描きながらも、「現在」の視点をハッキリ持っていることに注目してほしい。
残念ながら、
・岡部敦子『非行に走る登竜門』(梅) あたりでは、多くの人々に届かない。「現在」のハイライト環境を見失っているからである。厳しいだろ、今週は。(梅)はお中元がわりだ、とっておきたまえ。
、。に気を配れ
とは言うものの「現在」を取りちがえると、またまたヘンなことになる。これは若い諸君に多く見られた弱点ではあるが、まずハイライトは、落ちたりとはいえ、堂々第三位の売り上げをキープしているベストセラーであること。肉体労働をする人が喫っていることも少なくはないが、
・鹿島定彦『土方の基本』(毒) というほどでもない。ニコチンやタールはやや強いが、当時流行していた「ピース」「いこい」「しんせい」などに比べたら「フィルター付きの軽めの高級タバコ」だった。強い強いとばかり強調するとハイライトの歴史を歪めてしまう。この三点を、正確に把握したうえで、誇張なり飛躍なりをしないと、商品がみごとに浮かびあがってこないのである。
だから、そこらのあたりをキチッと押えないで書いたコピーは、どんどん落としてしまった。
一般にテレビ番組なぞに出たりしておるコピーライターは馬鹿のようにも見えるが、この程度の「商品の背景=歴史的社会的位置づけ」は、企画書にこそしないが、暗算で、軽く二〜三秒で済ませて机に向っているのである。遠まわしに言えば、馬鹿じゃできないのである。
「いよッ、萬流!」
番頭さんは、いつも気が利くねえ。
・小山聰『ハイライトはセブンスターを生み、そしてその子セブンスターはマイルドセブンをつくった。「ハイライトはマイルドセブンのおじいさんです」』(梅) も、筒井康隆先生の影響を受けたふうな、トボケた味があった。「――」やら「、」「。」の使い方が雑だったので少し整理した。句読点や記号をまったく考えずに使用する人が目立つ。どうせ短い文なのだから、どう使うかを吟味して、意識的に書いてもらいたいものだ。
「ハイ、まことに……その、通りで、えーと、ござんすね」
ツボにはまりさえすれば、
・鶴田雄彦『ニコニコ、チンチン、ハイライト』(梅) なんて調子のものでも、選ばれちまうのが世の中というものだ。鶴田君は出張先のホテルの絵葉書で出してきた。「すぐ書け良く書け」という当塾の方針を守っていてエライ。
では、ちょっと息ぬきに、おなじみのナンセンスものを紹介しよう。
・坂口雅美『マッチ吸うよりウマイゾ。オーイ……マッチ』(梅) 25歳の主婦である。
・水野明子『死んだじいさんが吸ってたっけ。わしゃまだ生きとるよ』(梅) 17歳の学生です。
・津寺利嗣雄『き、機長ッ、車輪が出ません!! うーむ、ハイライトだからな』(梅) ちくわぶの時にあったパターンだが、後追いでも、面白いものは面白い。
・浦野伸也『吸わせろよ、ハイライト! ダメよ、セブンスターが帰って来るわ』(梅) お色気もののなかでは、これが最も知的(?)であった。
・熊倉洋介『すったらしいヒト』(梅) こうして短くキメたのが、やはり週にひとつは欲しい。
例によって例のごとく、売ることをあきらめちゃう悪いコもいる。
・柴田喜久『すわないでもいいから買ってください』。むろん点はやらん。いや、まてよ、買ってくれと言ってるのか……(梅)をやるから、もう帰って寝なさい。
・土田寿江『「ハイライトはいりませんか。ハイライトを買ってください」クリスマスの夜だというのに、少女は家へ帰れませんでした』(梅) まったく、バカにしてェ!
肉体労働のイメージを表現したいなら、このようにする。
・小林みどり『ねーちゃんハイライトね、ワシッ。なに釣!! とっておきたまえキミッ ワハハハ』(梅) 続いて、
・鈴鹿頼子『耳の上のおしゃれに一本』(竹)
・鈴木恵一『ハイライトを吸っている人は、もらうたばこを選びません』(松) どうだ、なかなかすぐれておるだろう。
「うーむ、家元の指導のおかげでしょうな」
たぶん、そうだ。
「では、これなんかも、家元の指導のタマモノ?」
・山口正明『ワタシこれ吸わないとウンコが出ないんです』(梅) いや、この人は生まれつきの才能だけで書いておる。
勉強になったかな
では、ちょっと別の切り口で書いたやつ。
・金森真一『うまいし、安いし、そいでもってマルボロに似てる』(梅) そういや、そうだ。
・宇川拓水『釣で家でも建ててくれ。ハイライト』(梅)
・角野敦『葬式代が浮くぜ!!』(梅)
・小関朋亜『ジャン・ギャバンのくわえたばこは、たしか、ハイライトだったよナ』(梅)
・金子真理『あおい(青色)・うまい(美味)・やすい(安値)――ハイライト』(梅) これは、ただ『うまい・やすい・あおい』でよかった。青いを最後にもってくるのがコツなのだ。
学生らしいやつをひとつ。
・八十川徹『ショートピースのWASH OUT感覚。それがハイライトです』 (梅) WASH OUT感覚というコトバの意味がわからない方は、近くのギャルにたずねたりして、仲良しになるキッカケにしてください。しかし当塾は親切であるナ。
お父さんの喫っていた……というテーマは多数あったのだが切れ味の良さで、これにした。
・武田加奈子『お父さんの指のにほひ』(梅) これは、19歳だから良いが、22歳かなんかで、『パパの……』だったりしたら倫理的にボツにしてしまうところであった。
落ちめイメージだが、これは拾えた。
・結城千明『窓際族? 後から出て来た言葉だろ』(梅)
弟子候補生から、深みのあるやつが届いた。
・加野典子『暇をつくった。一日君と過ごしたい』(梅) ただ、一般大衆には深みがキツすぎると思った。
東南アジア旅行の経験者は、こんなのを喜ぶかもしれぬ。
・森田真奈美『社長。煙草、安いよ。世界で一番、ハイライト』(梅)
投稿したのに、ちっとも自分のが出てこないとお嘆きの諸君。もしかすると、君のは『パンパカパーンッ 今週のハイライト』とか、『もっと光を。ハイ、ライト』とか『タバコをくれ、右のだ。ハイ、ライトですね』ではなかったかな? フフフフ。
わりと好きなのが、
・森哲也『タバコ 何買ってくるの、と聞くと、彼は「なんでもいいよ」と言って170円くれた』(竹)
では、最後に、うまかないけど効きめのある一発。
・富岡正紀『長い間、御愛煙ありがとうございました。今年をもちましてハイライトの生産を打ち切らせていただくことになりました』(竹) 本当は文末に「臨調」とあったけど、不要。
来週も、夏だぜ。
今週の宿題
前回は「とにかくデートにこぎつけるための口説き文句」だった。
今週は、その次の段階に進む。「とにかくヤル、でございますね」。いや、そう言ってはミもフタもないが、まあ、そうだ。
一昔前には『夜明けのコーヒーを二人で飲みたい』なんていうのがあったな。
「私、本当にコーヒーだけ飲んだこともございました」
非常識な男女だナ。しかし、それでもいいということにしよう。「とにかく一夜を共にするための口説き文句」が宿題。
「宿屋組合からも喜ばれますですね」
まあ、いろんな人が喜ぶであろうな。
「二人で徹マンをしよう、などはいかがでしょう」。
ハガキに書いて出しときなさい。
今週の宿題は、役に立つぞォ。
ふるって応募するように。
では、家元は帰るぞ。
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ほんとにまったくもう、私が家元の糸井重里である。週刊誌というものは、よく来るだけでなく、すぐ来るのだなあ。もう一週間経っちゃった。
朝顔に、つるべとられてもらいたい。今週は、ちょっとハイクをしてしまった。「朝顔」から「もらい」までは、他人の句に乗せてもらった。こういうのをヒッチハイクというのだ。便利な世の中になったものである。
「我と来て遊べや親のないスズキ。こんなのでもよろしゅうございますか」
オッ、番頭さんも、のみこみが早いねぇ。古い毛やカワズとびこむ水の音。これは、ほとんど他人に迷惑をかけないヒッチハイクです。
「さっそく、今週のテーマにお話が移りましたでございますね。古い毛とか、カワズとか、よく銭湯にとびこみますものねえ」
いったい、うちの番頭は、どういう銭湯に行っておるのじゃ?
目的を明確に
ま、よい。今週の課題は、「銭湯に行きたくなるコピー」である。
宿題を出す時に、「たぶん」とは思っていたのだが、「行きたくなる」とわざわざ断っておいても、まだ「銭湯のスケッチ」にとどまっているものが多い。
コピーライティングには、いつも、なんらかの目的というものがあるのだ。
例えば、
・高雄啓子『男湯には椅子があると知った日、私の中に科学する心が生まれた』 というコピーは、銭湯のある側面を鋭く描き出してはいるが、厳しく言うとコピーになっていないのである。うまく添削してあげたいのだが、他人のを完成させるのは困難なので、『男湯には椅子がある。女湯にはない。考えてみようね、おじょうちゃん』とでもしておこう。
風呂屋に「行く」という行動を目的とするのが、最も理想的なのだが、現在、なかなかコピーで「行動」にまで至らせるのは難しい。せめて、「行ってもいいかな」と感じさせようくらいの獲得目標を頭に置いて書いてみてほしい。高雄君には、(梅)をあげます。
高雄君ほどコらなくとも、コピーは書ける。つぼにはまればこの程度の素直さでもいいのだ。
・桑原勝『銭湯は進化しつつあります。その目でお確かめ下さい』(梅)
・坂本英雄『トルコはスッキリ。銭湯はサッパリ』(梅) ただ、坂本はたいしたものでもないのに掲せろ掲せろとうるさいので、以後気をつけるように。他にも、「家元はテレビに出すぎである。あんなに忙しいのに全部のハガキに目を通しているはずがない」などと疑り深いことをわざわざ書いて印象を悪くしている者もあったな。不心得者め! 今週なんか四千枚のハガキを丸一日がかりで読んで目を悪くしたんだぞ。
「番頭も、でございます」
そうだそうだ。萬流は意味もなくイバる以外は、意味もなく誠であることをムネとしているのである。つまらん不信感を抱いているヒマがあったら、もっと他のものを抱きなさい。あ、話がそれてしまった。
行動を喚起する
・菊猛『煙突の下です』(竹)
・斎藤博之『キャサリン、ここがフロ屋だ』(竹) の二作は、シンプルで強い。同じように楽々書いたものでも、
・加藤恵一『今銭湯は沸いている』(梅)
・沼尻由起子『システムは簡単です』(梅) は、ほんの少しおちる。
・川原暢『君は小便をしたか!』(毒) は、困ったものだが、やはり「行動」を喚起するという目的を忘れていないのがたいしたものである。
「小便をしなかったやつがいるだろうか……なんてのも多かったけど、それよりグッと上を行ってるわけでございますですね」
そうです。
多かったものといえば、『銭湯を知らない子供たち』とか、『先頭で銭湯』というのも何十枚とあった。そのへんのダジャレコピーでは、
・津寺利嗣雄『あ、銭湯だっ。バンダーイ。バンダーイ』(梅) というのが、林家三平的なヌケのよさがあってよかった。
・諏訪克己『銭湯と平和。日本に生まれてよかった』(梅) も、着地がうまいので、セーフ。
「番台モノも、多数ございましたね」
少し並べてみようか。
・長塚隆『今日はだれが坐ってんのかな? おばんだい』(梅) 運よくすべりこみですな、これも。
・永田竜也『君は番台に座る日をあきらめたのか?!』(梅) 永田君の十四歳の情熱が書かせた。
・窪田浩幸『番台階級をなくせ』(梅) 考え方が面白い。ただ、銭湯組合かなんかがスポンサーで、こういうコピーを出せるかどうか、そのへんも考慮できると、一層の飛躍が期待できる。
・大浦章郎『一カ月に一日以内欠湯の方に番台正座一時間のペナルティを科します』(梅) まわりくどいが、順法闘争風のレトリックがよかった。
・田村光広『つり銭はまちがえずにゆっくりと数えましょう』(梅) も。『まちがえぬよう』としたほうが、よいと思う。
・花田理智子『代がかわって恥ずかしい』(竹) うまい。広告になっていたら、もっとよいのは窪田君と同様。
・林幸治『さっぱりした後は気持ちのいいものですね』(梅) は、ちっともうまくはない。素直だからといって点をやるというほどでもない。しかし、彼の家は銭湯で、しかも人手不足なので「ぜひともイトイさんに番台に座ってもらいたい」のだそうだ。十五歳の受験生の魂の叫びを、私は評価したい。よしよし、なんとか都合をつけて私が座ってあげるからね。
「私も、ひとつここはボランティアとして……」
忙しいけれど、まあ、人助けということで、ね。
正統派のヒット作
N塾塾長は、コンスタントに点を稼いでいる。
・山藤章二『そこのお父さん!! 浴槽洗わないでいいんですよ、銭湯は!!』(梅) 臨場感が買えるのだが、才能豊かな塾生だけに、もっと踏みこんで、こういったお父さんに「行きたい」という気にさせるようなところまで至ってほしかった。山藤君のもうひとつのコピー『もし富士山が見えなかったら、入場料はお返しします』は、某大新聞社の腕ききも同じアプローチで書いてきた。点は、なし。
プロの風呂というテーマのなかでは、
・関根雅人『ご家庭では、だせない湯加減です』(梅) をとった。
炭火焙煎の珈琲とかいうのがあるが、
・永山太一『民芸まきだき』(梅) は、面白かった。漢字で『本格|薪焚《まきだ》き』としたほうが、わかりやすかろう。
どうせ嘘だが、
・小林牧朗『冷し銭湯はじめました』(梅) や、
・岡田克巳『木曜スペシャル・大発見!? 女湯につながる前人未踏のクスリ風呂の中のトンネル』(梅) も笑える。
アレの大小に関するものも多いが、
・山本展也『だっ、誰だそんなとこでインド象洗ってるのは』(梅) には負ける。もうひとつ選ぶとすれば、
・福島裕明『タマには自信を持てるんだ!』(梅) であろうか。
・山下茂『たまにはパンツの流行を確かめにいくのもいい』(梅) 消極的ではある。
・石井信之『家風呂つぶせば、もう一部屋増やせますよ』(梅) よりも、
・宮田延晴『みんなのうち風呂』(竹) が上。
・木下修『大衆浴場と呼べるのは銭湯だけです。類似品にご注意下さい』(梅) は、前半のみで十分。
・安達照雄『サラリーマン銭湯です。会社のお帰りにどうぞ』(竹)
・田中孝治『いつもさんも、たまにはさんも、みんないい気持』(竹)
・伏見学『暑さ寒さも、風呂屋まで』(竹) この三人は、正統派のヒット作。実用に耐えるコピーだ。ややおちるけど、
・冨久富男『気分は、モヘンジョダロ』(梅) も捨てがたい魅力がある。
ヘンなのは、
・伊丹一代『おことばですが、私の父は「ふろに行く」と家をでたきり3年間帰らない』(毒)
・宇川拓水『渇しても、銭湯の水は飲まず』(毒)
・中西正美『元祖秘宝館』(毒) あたりだろう。
(竹)がどっさり
まいっちゃったのは、
・藤永邦治『ぼくの妙子がいつも言う。銭湯じゃこんなことできないけど、アタシやっぱり銭湯が好きよ』(梅) って、何やっとるんじゃ。
・野口幾代『今夜はなにしに入ろうかなぁ』(梅)
も、わからんが、いい。
・難波寿史『家で一風呂浴びてからの銭湯も何ともいえず良いものです。風呂あがりの一風呂』(梅) の根性は見上げたものであった。
地味だが、
・志田弘『大の字につかる』(梅)
・和仁勉『事件は夕刊、巷談は銭湯』(梅)
・大副洵『ハダカ ハズカシクナイ 日本人』(梅) などもしぶとく残った。
男湯と女湯の別れを書いたのも多いが、
・木谷成二『あなたはあちら』(梅) が秀逸。
私の好みなのは、
・矢澤正『おいさん、おせなを流しましょう』(竹)
ある意味で、すべて言えてる。
・横山伝四郎『先生、流しましょう。えっ、君は誰だっけ』(竹) も、同じく。ありゃ、この人、七十七歳だって。この年齢になると、これはもうドキュメントなんでしょうな。
今週は、とうとう(松)がなかった。
・口透『脱衣場で議員バッジを拾った。どうせ拾うなら萬流のバッジがいい』も、やっぱりせいいっぱい甘くしても(竹)どまりであろう。
毎月十数枚くれる塾生、今回は三十一通も届けにきた塾生、残念だが、外れた。問題は、質である。『おいさん、おせなを流しましょう』でいいのです。意気ごみ過剰の塾生は、あらためて初心にかえることをおすすめいたします。
今週は、「描写」以上に「目的」を意識しろ、
と厳しいことを言った。現実を面白く描くのも悪くはないが、それだけでは破格の川柳と同じなのである。萬流コピーは、「訴える力」を持たねばならぬ。心して書かれよ。
あいかわらず手本を示せの声がうるさい。一行一千万円の家元に気安く言うな。とはいえ、ま、一発。
『恋人を、あたために』
この(松)具合がわかるのは、番頭だけであろうか。
「いやッ、松! 松でございますねぇ……」
今週の宿題
三週連続の人間関係シリーズ。第一週の「とにかくデートに誘う口説き文句」、第二週の「とにかく共に一夜をすごす名セリフ」に続いて、なぜか、あの赤字で悩む「国鉄のキャッチフレーズ」をつくってあげることにした。
ちっとも人間関係シリーズでないとお怒りの塾生も少数おられるとは存じますが、単なる気まぐれから、こういうことになったので。許せ。
色気ものが続くと、こう唐突に硬派がやってみたくなるのじゃ。
「私も、先般の入院以来、そのキモチよくわかりますです。硬さがなつかしくて……」。番頭さんも苦労が多いねえ。
では、家元は帰るぞ。
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ふつつかですが家元の糸井重里です。
昼間はゲートボールをやって、夕方からは巨人の負けたナイターを観戦して、夜は萬流の孤独な講義をやる。風邪気味で、頭は痛いし鼻水は出る。
まぶしいぜ! ジジむさい青春。
「家元、ずいぶん今日はリアリズムで登場でございますね」
あ、番頭さんか、あーたもここに座って柿ピーでも食べながら鼻をすすりなさい。
ポリポリ、ズズー、チーン、クシャクシャ、うじうじ……。
「しかし、なんでございますねぇ、今週のハガキじゃ、ずいぶん家元はモテておりましたですねぇ。『オレ、イトイを知ってるんだ』とか『僕は糸井重里の弟子なんだ』とか、ねぇ。よございますねぇ、おモテで」
全投稿の五分の一は、そのあたりのものであった。私は、その、糸井重里であるはずなのに、ちっともナンというか、アレなのは、何故なのだろうか。
ポリポリ、ズルズズーッ、チーンチーン、ヘーックショイ、クシャクシャ、ポイ、うじうじ。
「いつまでもこうしていても詮もございませんから、始めることにいたしましょうか」
ポリポリ。番頭さん、猿股の横から、おもしろいものが飛び出してるよ。
「あっ、恐縮でございます」
実際は陳腐な言葉が
始める。
「とにかくデートにこぎつけるための口説き文句」が宿題であった。この「とにかく」の部分を利用して、とにかく書いたアタマのいい塾生がいた。
・桜井まさみ『ピッポッパ もしもし「アリスデートクラブ」ですか? 私、白石と申しますが、若い女の子を一人……』(毒) これは私のオリエンテーションを取り違えたふりをして、うまく立ちまわった例。
確かに、これでとにかくデートはできる。
・佐藤洋子『やっだ! 今日はタダよ』(毒) も、ずるくてうまい。桜井は、同じ手口で別の視点から『だって、俺たち夫婦じゃないか』(梅) も出してきた。期待できる十八歳である。
おんなじ「とにかく」でも、
・望月誠『おばあちゃん、手をお引きします』(梅) となると、ややほほえましくなる。こうなると、デートとは何なのかについて考えたくもなるが、それについてC調なことを言ってる者もいた。
・鈴木雅章『アメリカじゃさあ、デートって、とても気軽なものなんだよねえ』(梅) 新しぶっていてアナクロなところが面白い。
もっと哲学的なのは、
・小栗善一『デートって、ナニするの?』(梅) 六十二歳という年齢を巧みに利用して勝利。
・前田雅治『やっぱり、二人っきりで会うための口実は「デート」にしとくのがいいんじゃない』(梅)
・光永貴之『別行動でもいいからさァ』(梅) なんてのを読んでると、「とにかく」というコトバの重みを、あらためてヒシヒシと感じてしまう。
「役に立つ。実用になる。そういうのは少のうございましたですね」
そうなの。女性からのハガキを読むと、本当に実用的なセリフって『可愛いね、きみ。モデルやってみない?』とか、カッコイイ車で近づいて『ねえ、お茶飲もうよ』だったりするらしい。
「結局私はこの手に何度もひっかかりました、なんて書いてありましたですね」
城田瑞枝とか、橋本佳子とか、少しは男を選びなさい。
「やっぱり、これからのギャルには口説かれ上手になっていただきとうございますね」
しかし番頭さん、こういうのもあるんだよ。
・加野典子『番頭はん、うちは破門されても本望どすえ』 さて、点はどうする?
「梅でございましょう。いいコピーだなぁ、まったく」
じゃ、これは?
・川田真理子『萬流コピー塾の番頭です』 これは少し趣きがちがうけど。
「他人に私の名声を利用されるのは……しかし、梅を」
この人、番頭の顔を知ってる人はほとんどいないので誰でも使えますって言ってるよ。
「顔の知られている文春というトコロでは、まったくダメなんでございますがねぇ、わたくし」
少し、実用方面に移ってみよう。どんなにヘンに思えても、使ったら案外うまく行きそうだというやつを。
・池谷和洋『はじめまして、池谷です』 これは穴だった。ちょっと甘いが、(松)をやる。
似たようだが、
・横溝保男『ごめんください。デートしてください』(梅) は、池谷に比べると、情熱が薄い。
・笠原昌英『すいませーん、僕おひまなんですけど』(梅)
・星野朝昭『すみません。僕、渋谷駅前でナンパをしてる者なんだけど、あなた、ひっかかりません』(梅) も、まぁ、できてる。星野のは『ひっかかってください』と、素直に言ったほうがよかろう。
とんでもないので好きなのは、
・沼尻隆『(ガメラと呼ばれていたころ)オレの背中に乗って一緒に空を飛ばないかい』(毒) であった。
でた! 破門第一号
やはり、実用の基本は、相手の興味をひくこと、悪いやつじゃないと感じさせること、考えさせたり悩ませたりしないこと、の三点であろう。その意味では「ひょうきんネタ」は、効果があるはずなのである。
・堀田能成『この近くに、めずらしいドライバーを売っている店があるんです。いっしょに行きませんか』(梅)
・児玉誠一郎『うちにゴジラいるんだけど、よかったら見にこない?』(梅)
・門田陽『ヘイ彼女、おいらの家に牛でも見にこないかい』(梅) といった手もある。
・田村直己『俺のイ、イセキでとばさないか!』(梅) も、使えそうではある。
しかし、
・冨士栄秀也『そこらで(ジャイアント)馬場の話でも』(竹) の、シンプルでアホらしい力強さ、知的でアクティブな姿勢には立ちうちできまい。
・伊勢文博『二人でなめネコブームについて話しあってみませんか』(梅) も新鮮だが、相手にアタマを使わせすぎる。『そこらで馬場の話でも』、いいなぁ、これ。
ついでだから、まわりくどいけど面白いのを一発。
・小林茂樹『ぼくがかの有名なウルトラマンのヌイグルミ俳優の古谷敏です。ぼくのセクシーな下半身を憶えておいででしょうか』(毒) 小林ってやつは、だいたいアホなのだ。
あの
・小林秀雄は、『老いも若きもおりまぜて、はっ、踊ろじゃないか』というので挑戦してきた。
小林秀雄を破門第一号とする。
実用になりそうなものを続ける。
・草柳功『だめじゃないか明菜ちゃん、こんなとこ歩いてちゃ』(梅) なるほどね。
・門松幸太郎『それではまず、企画書の第一頁をご覧下さい……』(梅) も、ま、いいか。
山口正明のはこれに似ていたが、『君の彼からの委任状とハンコ』なんかを加えたために、長ったらしくなって、相手に考えさせてしまいそうなので、ダメ。
・室野久枝『私、同じ団地です。傘に入れて下さい』(梅) はいかにも実用。
・山田美枝子『門限八時なの、皆さんお先に。山田君、送って!』(梅) になると、超実用だが、これを男のセリフにしたほうが面白い。
・日高聡『ワタシ ニホンゴ ワカリマセン。デモ ニホンノジョセイ トテモ シンセツデス』(梅) きっとおそらく、これも実用。
・加藤秀広『ひとつはなしのたねに』(梅) のジミさも捨てがたい。
「勢い」でガンバルものも、あった。
・平間正弘『さ、メシ食いにいこ』(梅) や、
・岡田浩司『時間だ、行こう』(梅) も良いが、
・新地康人『アニやってんだ。行くゾ』(竹) のほうが効果的である。失敗しても、スッと冗談に移れるし、聞いてないふりがしにくい。
・上村洋一『来いよ この野郎』(梅) は、意表をついた。
脅迫ネタも多かったが、
・並木謙二狼(名前を変えたな)『神社の境内で待つ。手前ェも女なら一人で来い』(梅) のムードは新鮮であった。
『CIAに追われてる』とか『警察のものですが…』『おがむぞこのヤロー』『地震の前に』みたいなのは、みんなボツ。考えなくてもできるからね。
・中村剛『NOと言ったらお歳暮を送りますよ』(梅) は、セーフ。
・中村卓『権利とか自由では納得できません』(梅) ハナからフラれてるのがおかしいね。
・中島従道『私の、コンニャクに、なって下さい』(毒) 極端に非実用的なので、逆転勝ちするかもしれない。
・山本信三郎『大正生まれですって、じょっじょう(御冗談の意)。昭和でしょう、奥さん。お手をどうぞ』(梅) 六十九歳の「|私《ヽ》コピー」ではあるな。
皆ガンバッたね
わかる人にしかわからないのが、
・金子真理『拝啓、麗子さん。僕のシークレットブーツもすっかり足に馴染みました。秋の公園通りでも、二人で歩きませんか』(梅) だが、とにかく長い。
実体験風の、
・妻鹿年季子『仲よしになると、旅行の時「彼におみやげなんか買っちゃおうかなあ」などと言えますよ』(梅) も、長い。
・長嶺良春『デートは健康にいいぞ!』(梅) の、ナウなテーマ性と、時代錯誤の(森田健作風)口調は、買えた。
ペーソス漂うのが、
・高橋修『是非、シラフの私をみて下さい』(梅)
別の意味で悲しいのが、
・河野八重子『僕、今、見合い写真の束に追いかけられているんです』 ちっとも良くないが(梅)を進呈する。「どうせボツだからもう住所は書かない。意地で出しているだけ……」と書いてあったので、ちょっとからかってみたのだ。
今回は、他にも面白いものがたくさんあった。この宿題を出すキッカケは、「ねぇ、よかったら郵便番号教えて!」という使い古された口説き文句を、いかにもうれしそうに使用しているアホな青年どもを見て、その知恵のなさにあきれたことにある。だってこういうことは、自分で考えて、自分で失敗しなきゃつまんないじゃないの。金も顔もアテにできない塾生諸君が、無料の知恵と勇気を湯水のごとくに使わずして、どうする。
今週落ちた人は、気にしないでください。どれも、それなりにガンバッていた。
今週の宿題
ふたつある。どっちを選んでもよい。アナログ式表示の腕時計またはデジタル式表示の腕時計である。
どっちのコピーでもよいが、必ず、「デジタル」とか「アナログ」とか、キチンとハガキに書いておくこと。
コピーとして作りやすいのは、アナログのほうだから、デジタルのほうが点を取りやすいと思うと親切に教えておく(と、アナログのほうがトクするかもしれない)。あ、番頭が、すっかり寝こんじまってる。もう朝である。鼻かんで、寝よう。
では、家元は帰るぞ。
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さしあたってひとつ、その、私が家元の糸井重里である。
ここにあるのは、ハガキではあるが、諸君の目には見えぬ。しかし現実にゴマンとあるのだ。いや、悪かった。ゴマンは少々おおげさである。
誌面でとりあげられぬハガキのほうが、とりあげられるものよりも圧倒的に多いのは、言うまでもない。ゴマンが比喩でないとすれば、ヨンマンキューセンくらいの塾生たちの熱情のかけらが、「ボツ、でございますか」「うむ」といったやりとりのなかで処分されていってしまうのである。
例えばたまたま目の前にある一枚に、『かわいいんだろうね、君の寝顔』と書いてある。今週発表する答案のボツ分である。別に、悪いコピーだとは言わない。考えた本人も、今週こそ点をもらえるかナ、などと内心期待しつつ投函したものなのであろう。しかし、やっぱり残念ながらボツなのだ。
だいたいほとんどすべてのハガキが、肉親恋人親友仲間あたりの目から見たら「いいじゃないの」とか「おっもしろいわッ」とか言われちゃう程度の良さを持ってはいるのだ。
しかし、点はなかなかもらえない。ひと頃流行したボウリングとはわけがちがうのだ。近所のボウリング場でアベレージ180くらいの活躍をしていても、全国数十万人の拍手はもらえないものなのである。
厳しいといえば厳しい。採点の基準が不明瞭であるといえば、これまた確かにその通りではある。
だからこそ塾生諸君、励んでくれたまえ。ボツとお点をもらえるコピーとの、紙一重の紙を、何回かに一度ずつでも破っていただきたいのである。
「今週はずいぶんといわゆる熱心でございますね、家元」
ああ、最近は、「まぁまぁ」のハガキの山が高くなってきてね、黙って落すのがつらくってサ。
「おいたわしゅうございます。では、そろそろ教場の方へ……」
宗薫先生の作品は
というわけで、先回の「デート篇」に続いて「一夜を共にするための口説き文句」について稽古を始める。
一夜を共にすることが、必ずしも「ヤル」ことを意味してはいないのは、断るまでもないと思っていたが、大多数の塾生がそのことのみに焦点をしぼってきたようである。
「ハガキに、『題・ヤル』などと書いてきたご老人もございました」
しょーがねーなー。ま、そういうものだろうな、実際「一夜を共にすること」の国民的意識は……。
・斉藤泰徳『宗薫センセイのブンガクについて共同研究してみよう』(梅) は、さすが会社社長の作。社長の肩書きをカケ算すると、ずいぶん効きそうなコピーではあるが、あえて『宗薫センセイ』などと言わずに『カワカミのブンショーに、ちょっと気になる個所があるんだよ』とカッコつけたほうが良いと思う。
しかし、まったく、油断もスキもありゃしないとはこのことで、
・川上宗薫『朝メシもっていったよね』(竹) と、本人からのハガキが届いていた。「メシ」を誘ってOKされたら、これを言うということだろう。まことに、実用的実践的というより他はない。難くせをつけるなら、文字で読むと意味がとりにくいので、『「朝メシも」って、言ったよね』としてほしかった。とまれ、作家の“その時”の表情・肉声も伝わってきそうな直筆ではある。
さて、実用に使えるかもしれない、というコピーをもう少し探してみよう。
・新井裕子『ここなら安心だよ』(梅) とにかく、安心らしいから、ついフラフラって行ってしまいそうだ。
・佐藤ひろみ『そろそろすずしくなったし……』(梅) そうだねえ……。
・西野祐子『あの……覚悟はできてます』(梅)
・中島多津子『今夜は時計をはずしてきたの』(梅) そーかそーか……。
「女性が書いたとわかると、何を言われても口説かれてるなあ、と。じゃ、行っちゃおうって気になるでございますね」
実は、そうなんだよ。女性は、うなずくだけでどんな名文句より効果を出しちまうんで困るのだ。
「男の、実用が欲しゅうございますねえ」
・中村孝一『ナァに、ただの曲り角さ』(梅) この人は渋谷区本町の住人らしいから、百軒店の旅館街のあたりでこんなことを言ってるのだろうな。
・高沢康則『今夜の話は大切だから、朝までかかるよ』(梅) だって。ヤボな気もするけど、オフィスラブなんかに向いてそうだ。
古典的なのが、
・秋葉冴『俺、眠くなっちゃったよ』(梅) 十七歳でこんなことやってるのか?!
・渡辺康二『こわい話なんかしないから』(竹) うまいこと言うなぁ、まったく。
勢いで押しちゃうのが、
・森三千代『サァッ、おしっこしてきて、ネルかっ!!』(梅)
不気味に真に迫ってるのは、
・雨宮秀樹『いま裕子を帰したら、ぼくら友達になっちゃうと思うんだ』(竹) この人のウマサは、相手を何げなく呼び捨てにしている部分にある。『君を』じゃなくて、『裕子を』と書いているセンスには、並々ならぬものを感じた。
相手の逃げ道も作る
・塩入康司『若い女性のひとり寝は危ないから今夜はぼくが一緒にいるよ』(梅) は、こんなに長くしないで、『危ないよ』にしたら、もっと実用的になったのではないか。「どうして?」と聞き返されたほうが、その後どうにでもつなげられて、ふくらむでしょう? 「ぼくみたいなやつがいるから」とか、「いや、ただそう思って」とか、ね。
さあ、「実用にもなる」を紹介しておくぞ。
・ミカメマサヒコ『飽きたらセブンイレブンに行けばいいじゃない』(梅) そんな気もする。
・池田ちか子『昼間は愛嬌、夜は度胸って知らないの?』(梅) 本当は「度胸」などについて考えさせるのは損なのだ。
それよりも、
・青野智『オレ、五百円硬貨を持ってるんだぞ! 見たければ、オレについて来いよ!!』(梅) といったズレ方で、「何をするのかわからない」状態にもっていったほうがいいのである。
相手の不安、恐怖、過剰な期待などを、こっちからススンでコトバにしてしまうと、ますます心理的に追いつめることになってしまうのだ。こっそりと|放屁《ほうひ》した人に向って、「この匂い、ぼくはかえって好きだな」などと言うようなものである。
しかし、そのへんを考えていなくても、面白いものは面白い。
・大野あけみ『お願いです。ぼくに何もしないと誓ってください』(梅)
・伊岐見一敏『SEXよりいやらしい事なんて、数えられないくらいあるんだよ』(梅) そうかもしれない。
・冨士栄秀也『君が入れたっていいんだよ』(梅) 大胆なやつだぜ。
・北川和則『人生、経験だ! そうじゃないでしょうか? そういうことで手をうとう』(梅) 一所懸命さが、よく表現されていて心を打たれる女性もいるかもしれないと思った。
だが、やはり、どこかに、相手の「逃げ道=そのつもりじゃなかったのに……」をつくってやる、流行の「気くばり」が欲しいものなのだ。
そういう意味で、
・堀田能成『こうやって君を見ていると、死んだおじいちゃんを思い出す。よくぼくをまくらもとによんで昔話を一ばんじゅうきかせてくれたよ』(梅) とか、
・万城目充『ルイ王朝風というのはつまり、あっ、このホテルに入ればわかる』(梅) など、アホらしいとばかりは言えぬスルドサがある。
相手が、ある程度その気であることがわかっていたら何を言っても大丈夫なのかもしれぬ。極端になると、
・江淵真人『ええ仕事しまっせ』(毒) とか、
・小林秀雄『帰るって。何考えているんだこのど助平が』(梅) などという……あ、小林秀雄は破門したのに、またこんなのを出してる。そんなにすぐに復帰させたくないから、点はやらない。
スリルのあるのは、
・森口恵司『ものは相談なんだけど、終電に間にあわないように……一緒に飲まないか』(竹) いかにも試用済ってコピーだなあ。
スリルといえば、ひどいやつ。
・井恒雄『あすこのホテルのビデオ俺が写ってるんだって。二人で見に行かない』(梅) 危険な賭けでしょ? もうひとつ、
・岡崎敏彦『あなたは松田聖子のような人だ。僕は松田聖子とヤリたい』(毒) これでもついて行くってヒトがいたら、すごいね。
では、少し上級を。
・三上祐一『ぼくはどこまでいっても紳士なんだ。たとえ服を脱いだとしても、それはそれで紳士なんだ』(梅)
・市毛悦子『シンデレラはね、夜遊びをして幸せの道を開いたんだよ』(竹) 市毛悦子は、他の数通もうまかった。今後がおおいに期待できるが、ここでホメられた塾生は、みんなそろってスランプにおちいるという歴史もあるので注意されたい。島君、岡部君、加野君、ガンバレ。
「平凡」で意表を衝く
さーて、ヘンなのも出しちゃうぞ。
・上松治『ドドメ色のドドメってどんな色だろう。太陽が黄色く見えるキイロってどんな黄色なんだろう』(梅)
・丸山真司『はっきり言って僕にはムリです。さようなら』(毒) そう言われると、ひきとめたくなっちまう。
・石川さち子『田中角栄に怒りを感じてるボクが悪人に見えるかい?』(梅)
今週の教訓と称して、
・笠原孝文『門前は入口まで、家元は根元まで』 を書いてきた。むろん得点はない。
どうせだったら、
・後藤晃『マン流は頭やない。腰や、腰を使うんや』(梅) をとる。いちおう宿題をやっているからだ。
それにしても、大穴だったのは、いや、そういう意味じゃなく、
・羽根田慈子『愛してる』(松) ではあった。他に、これが一通もなかったのだ。同じのがひとつでもあれば、「落としたかもしれませんですね」だったが、(松)になってしまった。
萬流は、萬流にして萬流に非ず。
「萬流とは何ぞや、をわかったつもりになっていると萬流を小さくしてしまうのでございますね」。まるで禅問答だが、その通りなのだ。『愛してる』
今週の宿題
今週の宿題は、少々いつもとちがう。コピーではなく、アイディアの宿題である。
某テレビ局から、「天気予報の視聴率を上げたい」
と頼まれてしまった。
天気そのものを面白くするわけにはいかないが、天気予報番組をチャーミングに変えることならできそうだ。テレビ局の連中には考えもつかないような、アイディアを送ってくれ。
「簡潔に記してくださいまし。読むのが苦労でございますから」
そうね。あんまりくどくど書かずに、全国の塾生に「負けた」と思わせるようなアイディアを提出してください。
では、家元は帰るぞ。
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クスッ、フッフッフ、あ、私が家元の糸井重里である。
「どうしたんでございますか、家元、思い出し笑いなんかなすって」
いやなに番頭さん、こうして無理やり思い出し笑いをしているとね、その原因があるような気になるからおかしいじゃないか。
「すると、何にも思い出さずに思い出し笑いをしていたのでございますか?!」
そういうわけだ、うらやましいか。
まったく実に、私はヒマと金のかからぬ遊びを考えるのがうまい。塾生諸君も他にすることがなかったらやってみなさい。
「いえ家元、塾の皆さんには宿題が毎週ございますから、忙しゅうございます」
そういえばそうだった。半ば自棄になって何通も出してくる者も多いのう。
「ご熱心な方でございます」
そういう塾生は、自分のものが載っておらぬと残念であろうな。
「心中察するに余りあるものが……」
単なる『愛してます』みたいなのが(松)をもらったりすると立腹するのだろうな。
「いえいえ、皆さん心の広い方でございますからして」
そうか、それはよかった。細く長く楽しむ萬流、この気持でゆきたいものである。
「前回の、遠方より遅れて到着したハガキ、お目を通していただけましたでございますか?」
見たが、たいしたものはなかった。
「かっくん」
ずいぶん古いギャグだね、可愛いから番頭さんに、新しく作った(餅)をあげよう。
「お点……は?」
字で描いた餅だから、腹のたしにはならぬ。0点です。
「では、お稽古のほうにまいりましょう。モグモグ」
ボツの傾向と対策
苦悩するハムレット、国鉄が課題ではあった。
多くの人が赤字にちなんで「赤」と「黒」の二文字をコピーに入れておった。『ふるさとに線路は続く』なども多かった。『いつもの朝のいつものあの娘』みたいなのも多かったし、『無愛想なのは悪気があるからじゃない』も、『後にゃ日の丸がついてるんだ』も、たーんと来たけれど、いやあ、時局のせいだろうか、『国鉄には領空侵犯も撃墜もありません』の圧倒的な数には負ける。時事川柳じゃないのだから、少しは考えなさい。
はじめにこれだけ「ボツの傾向」を書いておくと、ほとんどの人が先を読む気がなくなってしまうのではないかと心配だが、多くの人と同じパターンでも、いいものはいい。おそるおそる、読み進めば、君のだって掲載されているかもしれません。
しょっぱなからこんなの見せちゃうと、気落ちしちまうかもしれないけど、
・日高聡『5年間地中で暮した地下鉄は、地上へ出て国鉄となり、1週間の短い命を精一杯鳴くのです』(毒)
「ひどいですな」
もっとひどいのを出しておこう。
・小林秀雄『隣りに住む国鉄職員は握りっ屁で小鳥を気絶させたことがある』(毒)
「小林秀雄君か?! まだ破門はとけませんね」
しかし、悪びれないやつだ。国鉄というものが、いかに市民の生活と身近であるかということがよくわかる。
「ということも言えるでございますね」
もう少し、変なのを見よう。
・松下康夫『今日私鉄で痴漢にあった。昨日の国鉄の人よりスケベだった』(毒)
・永井健三『名前に金玉がつくのは国鉄だけです』(毒) 漢字を分解して、『国が金を失う』と読んだ者は数名おったが、金玉を発見した永井さんのほうが男らしいともいえる。
変だけれど、カワイイのも出しておく。
・粕谷明子『新幹線て正面から見ると、けっこうかわいいのよね』(毒) このイージーさと、明るさは、学ぶべきであろう。
・斎藤正幸『赤羽線でチビッ子たちが 電車に酔わないように お互いに励ましあいながら うたを うたっていた』(梅) も、なかなか落としにくいものだった。
これらの「異端もの」にはどこか魅力がある。オーソドックスなものがあっての「異端」であることはたしかなのだが、やはりパワーがあるのだからしかたがない。自称名人や横丁の達人たちの批判は届いておるが、ここが封建的な家元制度の塾であることをお忘れなく。
もし、これらの(毒)がここに掲載されていなかったら、サミシーとは思わないかい?
では、ちょっと線路の曲がりをなおしましょうね。
泣き落しでせまる
赤字ネタから、行く。
・佐藤年信『あなたの知らないところで損してます』(梅) 赤字赤字と叫ぶより、ずっとリアリティがある。
・角野敦『今に、つぶれてやる……』(梅) の捨て身もなかなか迫力があった。『なんか文句あるか』では出せない訴求力がある。
これを、ソフィスティケートさせると、
・北川裕行『国鉄は過去を振り返りません』(竹) になる。このコピーは、なにか失敗した時の必殺技になる。こう言ったからって、そう簡単には周囲が許さないだろうけどね。
これでもだめなら、開きなおって、
・山村祐司『よおく分かりました。これからは儲けに走ります』(梅) ということになるのだネ。
だが、その儲け方のほうが難しいわけで、現状のまま泣きおとしを使う手もあるはずだ。
・前田修一『あなたの、|もう一乗り《ヽヽヽヽヽ》が国鉄の願い』(梅) ごはんを食べていて、「もう一口だから食べちまおう」なんて思う気持があるけれど、「もう一乗り」となると、ねえ……。
・鈴木康敬『タクシー一吐き¥5000の処、私共では、吐き放題・無料にてご奉仕中でございます』(梅) これも、わざわざ一吐きしに行く人もいないとは思うが。
どうも、本気で国鉄を救えると思っている「コピーライター」はいないようである。
あえて本気のふりをすると、こうなるのかな。
・平田智子『そうだ! 人類皆兄弟のジサマにたのもう』(梅) これは、妙に番頭さんが気に入っていたので、(梅)にした。
・河野康子『赤線を国民の力でよみがえらせよう』(梅) と、これも番頭が強く推していたが、何故だろう。
わからぬことをいつまでも考えているヒマもないので、塾生諸君の苦心の作を並べよう。
・海原瑞『戦後、買出しでお世話申し上げました、あの、国鉄です』(梅) 斜陽貴族の雰囲気さえ漂うではないか。
・津寺利嗣雄『朝、国鉄がつぶれると、あなたは会社へ行けない。夕方、国鉄がつぶれると、あなたは家へ帰れない』(梅) 津寺君、コンスタントに稼いでおるね。このコピーを読んでいると、日本国民がいかに家と会社を大事に考えているかがわかる。
日本全国を網羅している国鉄、という視点はたくさんあったが、中ではこれが秀逸であった。
・楠本明彦『野ツボの横でも走ります!』(竹) 具体的にビジュアルが浮かぶのが強い。「どうだ私鉄にマネができるか」とでも言いたそうな得意顔が、ここにはある。絵が浮かぶのが、もうひとつ。
・西尾卓矢『便器の下に大地が見える』(梅) マイナスイメージをプラスにひっくりかえす、冒険作。
一方、観念的だが面白いものとして、
・宮崎泰『乗った人には善行感を、降りた人には爽快感を』(梅) がある。いわゆる考えオチだが、高校生にしてはスルドイではないか。
そういえば、豊田市の杜若高校のある教室では、萬流の宿題を授業のテーマにしているらしい。出来のほうはたいしたことないが、感心な教育者もいるものだ。
・金塚安弘『どこで降りても駅前です』(梅) 似た発想は多かったが、これが一番スッキリしていた。
・土田寿江『別れろ切れろは民間のときに言う言葉。いまの国鉄には、いっそ死ねと言って下さい』(梅)
「婦系図」に只乗りしたな。
国鉄のキャッチフレーズに只乗りした塾生もいた。
・粟津和美『悪い日でも、旅立て!』(梅) みんなの知ってるコトバに乗っかると、効率は良いのである(が、あんまりみんながやらぬように)。
まともなものを少々。
・山野卓『少年少女よ、家出には往復切符が便利だぞ』(竹) 『だぞ』のうまさに、(竹)をやる。『です』じゃ、この優しい感じは出ない。
・毛呂一『人恋しくなったとき』(梅) この手は、わりに簡単に思いつくのだが、アイディアを文字に「整理」するセンスがとてもすぐれていたので、合格した。
しゃれててイジワルなのが、
・柿沼徳治『お静かに御乗車下さい、運転手が目を覚します』(梅)
不気味に素直な、
・岩田隆幸『山があれば穴をあけ 川があれば橋をかけ つねに直進する 一徹なこの乗り物が好きだ』(梅) なんだか、うなずいちゃうでしょ。
素直といえば、
・細谷すなお『高峰先輩、応援してます!』(餅) というのがあったが、このコは、単に東洋英和女学院の後輩であるということらしい。
生活のリアリズム
こうなればいいのに、という企画コピーもあった。
・神田幸久『洋風・和風……そして中華列車はじめました!!』(梅) パチンコ狂には、
・浅沼聖一『3番の自動販売機では、次は0777が買えます』(梅) なんてのもあった。安全をテーマにしていて、しかも「空」に目をやらない豪の者は、
・横山浩行『あのダンプが当り負け! こんな安全な乗り物がほかにある?!』(梅)
今週の、一等賞は、「パンパカパーンでございますね」。これだ。
・鈴本忠之『苦しくてもやっていけるんですよ、奥さん』(松)
景気のいい感じがないのは、テーマのせいでしかたがない。番頭さんのをお見せよ。「ハ、『私には買えない車でございます』というのを……ま、ロールスロイスよりも高いですし」
うまいものじゃないか。
では、おしまいは、このコピー。
・岡康信『萬流バッジは郵便列車でやってくる』(梅) 東京都内の場合は違うんじゃないかとも思うけど、この人、北海道だからね。岡君のところへは、あえて特別に宅急便で送ります。
今週の宿題
今週の宿題は、右の写真(小さいがポスターだと思え)に、キャッチフレーズを一発つけるというもの。どういう立場で、何の(誰の)広告をしようがかまわぬ。広告主とキャッチを一本。とどうじゃ、簡単であろう。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
なんやかやいうたかて、私が家元の糸井重里である。
「家元ォ! いま風呂に入ってよく洗ってきましたから」
番頭さん、唐突に洗うの洗わないのと言ったって、わかりはしないよ。
「ですから、さっきドブに落ちたんでございます、私」
しかし、いまどき、夜中にドブに落ちるなどという珍しい人がいるとは思わなかった。
ドブに、落ちる。
よい響きだ。ありそうでいてなかなかあるものではない。ドブに、落ちる……やっぱり当塾の番頭は並の人間じゃない。
ドブに、落ちる。うーむ。これは行為としてのアンティークではある。少々臭いが、なかなかたいしたものである。番頭がドブに落ちたので、今週は何かよいことがあるのではないだろうか。
今夜は徹夜で、この講義をやって、そのまま私は広島へ行くのである。妹は嫁に行くわ、私は広島に行くわじゃ、まったくあわただしくてかなわぬ。
「ではいっそ、お稽古を」
アナログって何?
そうだ。今週は、二種類の腕時計のコピーであったな。デジタルとアナログ、どっちかを選んでコピーを書けということであったが、デジタルはともかく、アナログの何たるかがわからぬ塾生もかなりおった。
「それは無理からぬことでございましょう」
うむ、こんなコピーもあるくらいだからな。それにしても番頭さん、まだちょっと香るねぇ。
「ドブでございますから、やはり……(恥)」
しかたないか(笑)。
・小林牧明『デジタルさえなければ「アナログ」なんちゅうニックネームはつかんかったのに』(梅) まことに、その通りではある。
ところで、今週は喜ばしいニュースがある。毎回毎回どっさりハガキをくれるのに、なかなか掲載されなかった「おしいッ」の岡田寿彦君が、ついに陽の目を見た。
・岡田寿彦『5分のかたちはケーキのひときれ』(梅) まだまだ詰めの甘さは感じられるが、ケーキのことだけにこちらも甘くしよう。アナログ式の気分をとらえておる。
そういえば、すぐスネるほうの常連、河野八重子君が、また、デートの宿題で出した悪例『君の郵便番号教えて』について、「電話番号のまちがいではないか」と指摘してきた。
「いかがとりはからいましょう」
番頭さんのほうから個人的に説明しといてくれ。
そういえば、宿題の他にいろんなことが書いてあるハガキが多くて、読むのに時間がかかってしゃーない。
「でも読んでおりますねえ、イチイチ」
赤ん坊が生まれて、それがおじぞう君に似てる、とか。自分の名前は変っていて自慢だから、せめて名前だけでも載せろとか、渋谷の化粧品店に勤めていてヒマだから寄れとか。
「レオタードもあるそうでございますね」
ついつい読んじゃって、まったく、面白いし困っちゃうし、困ったぞ。デジタルから、とにかく順に読んでいこうぜ。
・中村比呂志『「時は消えゆくものだ」と教えてくれた君』(梅) さりげないが、よくできている。似ているが、
・寺崎芳之『お母さん、今うつった数字はどこへいったの』(梅) なども、なかなかである。
・中田諭志『クッソー! あと何分か考えてたら一分すぎてしもた』(梅) などは、残り時間をいちいち計算せねばならぬデジタルの欠点を、よく表現している。
「しかし、これではアナログの宣伝になってしまいますですね」
そう、よく気がついたね、番頭さん。今週は、そういう敵を利するかたちのコピーがとても多かったのである。本人は「デジ」とか「アナ」とか指定しているけれど、逆コピーになっているのだ。そのへんは目をつぶって読むしかないね。
・白石トシ『エッ! まだ説明書持ち歩いてるの?』(梅) 六十歳のリアリティがあるが、実をいうと私も、この感じはわかるのだ。
歳といえば、
・門松幸太郎『お年だけに針の重さがこたえたのでしょう。おしい方です』(梅) というのも面白かった。これはアナログの時計のデメリット(簡単にいえば弱点)を誇張しているデジタル用のコピーだ。
『おしい方です』といえば、
・松浦英子『発信音でお通夜の固い空気もなごみます』(竹) などは、愉快である。
素直でキマっているのは、
・木下修『時刻、もろ出し』(竹)
・藤山章子『いま・いま・いま……』(竹)
そして。
・加藤恵一『はっきりさんで、りちぎくん』(竹)
・小松裕一『僕は時計に使います』(梅) などがあった。
「このへんは、できそうでいて、なかなかできるものじゃありませんですね」
デジタル時計の性質をうまくとらえておる。
・成田力『時のまばたき』(梅) なんかも、地味だが捨てがたい。今回は、わりに正面から書いたものに当りがあった。
・山崎久美子『おまえの情のうすーいとこが好きや』(梅) もうまい。
水準が上ってきた
「777が揃ったらどうのこうのという、パチンコものが多ございましたね」
多すぎて、読んでて飽きた。
・窪田浩幸『少し遅れるので分解したら、部品がかなり余った』(毒) は笑った。
・木下修『その昔、ジェームズ・ボンドが自慢げに持っていた』(梅) も、おかしい。昔は価値があった、ということも皆が気付いてはいたようだが、これがいちばんピンとくる。
「木下君は2通もお点をもらいました」
あらま、本当だ。
デジタルの機能をじっと見つめていても、いいのができる。
・皆川則之『4時20分。あと80分で5時です』(梅)
「あと何分、というのはずいぶんありましたが、皆川君のが鼻の差で抜いておりましたですね」
・鈴木康敬『あなたは、核シェルターの中で昼と夜を区別する自信をお持ちですか?』(梅) も、するどい。アナログには絶対に無理だもんね。
デジタル式時計の、風俗的な現在位置をよく表現している2通を紹介しよう。
・堀田篤子『名古屋の中学生100人に聞いてみたところ、デジタルはカッコエーということです』(竹)
・中尾弘『巨人軍の石渡です。ナウいフィーリングのデジタル、おすすめします』(梅)
萬流の塾生も、こんな地点にまで来てしまった。恐しいことである。
デジタルのとどめに、
・持永昌也『父の形見のデジタルウォッチ』(毒) なんちゅう性格しとるのじゃ。でも、やはり、何度も楽しめる。
アナログもいいのがたくさんあった。同巧多数ではあるが、
・市川武『時には針供養をして下さい』(梅)
「そういえば、アナクロとアナログの駄洒落も多かったでございます」
ハリのある人生、というのもめちゃくちゃ多かった。
・万城目充『もし、教会の時計がデジタルだったら、それでも人々は、神を信仰しただろうか』(梅) この、「もし」というのは「苦しい時の|もし《ヽヽ》頼り」といってナ、便利な方法なのじゃ。
アナログの格をテーマにしているのは、他に、
・伊賀洋昭『直木賞で頂戴しました』(梅) 思わず作家かと思ったら、先生であった。地味ではあるが、
・渡辺真理子『正装したい時計』(梅)
・内島恵子『「落ちついたね」と、オバは私のウデをみた』(梅) なども、ま、運よく及第点になった。
シモに落として、
・瀬能勝『俺はとにかくアナが好きだ』(毒) というもの。こういうレントゲン技師がいるというのも、考えものである。
・口真也『さあ、針に合わせて足を開いて! そう、それでいいんだよ』(毒) まぁたしかに、デジタルではできないことではある。
単にバカバカしいのは、
・加藤秀広『若いころは百分の一秒までよみとったものだ』(毒)
・門田陽『苦節二十年。なんとか、長針の動きは見破った』(毒)
・三好裕一『時計はその針の動きを見れば新鮮さがわかります。おっ! こいつはイ勢がいいね!』(毒) などが光っていた。しかし、アホである。
・小林智恵美『僕、知りあいに、NHKテレビの時報やってるやつがいるんですよ』(梅) 同じことに気付いていたのが、3通他。わりかし上手に決まっていたのが、
・連城紀三郎『長針外して南国気分』(竹) やはり、わりかしではあるが、
・若林肇『もう|すこし《ヽヽヽ》君を待とう』(竹) なども、アナログ気分をよく出している。
商品研究が足らん
おや、番頭さん、そのハガキは?
「いえ、その……」
・梅原是之『この角度、想い出すなあ』
「これに、(梅)点をあげとうございます」
四十七歳の会社員……。
「いえ、その実感があって……」
じや、そうしよう。
今回は、どうも、塾生諸君の商品研究の足りなさが目立ったので、ひとつ注意をしておくことにする。
まず、アナログの時計を、イコール手巻き時計と錯覚している者が多かったということ。「時を刻む音」が「コチコチ」と聞こえたりするのはあくまでも「手巻き」あるいは「自動巻き」の特徴なのであって、アナログの特徴なのではない。現在、アナログ式の時計でも、国産の場合、ほとんどが、電池で動く方式のクォーツなのである。
それと、時計が右に廻るものであることは確かなのだが、左に廻る時計を「あり得ない」と考えている者も数多くいた。左廻りも、商品として売っているのだ(むろん、一種のジョーク商品としてではあるが、O社のSというものがそれだ)。
世の中は、進んでいる人のアタマの中よりも、進んでいたりするから、怖いのである。油断めさるなオノオノガタ。
知り合い、よその編集者、同業者、有名人などのコピーが、「じゃんじゃんボツになっておりますですね」。それは、意外と塾生全体のレベルが向上している、という現実を忘れているためであると思う。掲載されてないけどイイのが、あと五十通はあるんだもんね。
「ブルルル、なんまいだなんまいだ」
だから、五十枚だって言ったろう、番頭さん。
今週の宿題
今週は、すっごくシンプルである。懐中電灯のコピーを作っていただく。できることなら、国民一人に一個、とにかく、みんなが懐中電灯を持って歩いたりするように、するどいコピーを作ってほしい。
「それさえあれば、私もドブに落ちずにすんだのでございます」
番頭さん、あなた、もう一度お風呂に入っていらっしゃい。まだ少し、ぷーんとくるから。
「朝湯でございますね」
そうです。もうドブに落ちないように、ね(眠)。
では、家元は帰るぞ。
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しまった。私が家元の糸井重里である。
我が萬流コピー塾の名もいよいよ高く、塾生諸君も誇りと|驕《おご》りの「萬生活」をおくっていることと思い、誠に慶賀の至りではある。
「でございますね、家元」
あ、番頭さん、今週はドブにも落ちずに頑張っているね。とはいえ、実に、その、困ったことになった。
「は、その、困ったことそのとは?」
合理的な合の手をありがとう。そのは、例の収賄が露見してしまったことだよ。
「私めが、娘の小学校のPTA副会長夫人から、萬流の件なにとぞよろしくと、子持ちししゃもを頂戴したあの……」
いや、あれはまだバレておらぬ。
「では、いつも行くスナック美々庵の由起ちゃんに、番頭権をちらつかせて水割りを濃いめにつくっていただいたことでございますか」
それも、秘密にしてあるし、これからも永遠に隠しておくつもりだ。
「すると……家元の」
そうだ。文藝春秋の後楽園のボックスシート券をもらって、無邪気に野球なんか観ちまったろう。実は、あのチケットの裏に鉛筆書きで、「梅を、よろしく」と書いてあったのだ。
「社の、内部の者の贈賄と考えられますでございますね」
うむ、それはいずれ司直の裁きに我が身をゆだねるということにする。しかし、困ったことそののほうは、司直も日直もありゃしない、えらいタイヘンな問題なのだ。
「そ、それは?」
当塾の人気が沸騰しておるのは、番頭さんもよくわかっておる通りだが、評判が評判を呼び、今週はじめてこの塾に参加してみようという気になった読者も少なからずおるはずである。
「そういうことは考えられますでございます」
しかし、今週は、(泣)あまりにも、つまらないのだ。
「存じあげております」
塾生諸君が悪いとは言わぬ。宿題が悪かったとも、口が裂けても言わぬ。しかし、事実、まったく面白くないのである。
「たまには、そういう週も……」
いや、その玉庭がいかん。
「はじめから、つまらないと宣言しておいたほうがようございましょうねぇ」
うん、とにかく、ハガキを読んでいて一度も笑わなかった週というのは初めてだからねぇ。掲載作品が少ないので、仕方なくこの朝礼を長々とやっておるのだよ。
「いっそ、朝礼だけで早退なされてはいかがでございましょう」
バカバカ、それでは丸一日かかってハガキを読んだ努力が無駄になっちまうじゃないか。
「ではあらためて、初めての皆さまには、あまり面白くないとお伝えしたうえで、お稽古をいたしましょう」
家元の心塾生知らず
とにかく、宿題は「天気予報番組の視聴率をあげるアイディア」であった。
視聴率をあげる、ということはとても難しいものなのだが、素直に考えると「番組を面白くする」ということになるだろう。
いつもだと、コピーが宿題になっていたから、コトバのニュアンスとか、言霊の漂い具合に採点の比重がかかってくる。しかし、アイディアにはコトバのセンスはあまり関係がないので、普段企画会議などの席でバンバン発言をして周囲に一目置かれているけれど、いまいちコトバの感覚に欠けるビジネスマン諸君の作品に期待したわけである。
つまりは、こういう、ニュアンスの不自由な人々に得点の機会を与えてみたいなどと、要らざる家元心をおこしたのではあった。
「家元のお心は、実の父や母よりも広く深く暖かいのでございますね」
広いが、締まりもよいことを忘れずにね。
では、とりあえず、拾っていこうではないか。
まず、タレントの人気におんぶするというタイプが、かなり多かった。三浦百恵さん、長島茂雄さん、富士山爆発でおなじみの相楽さん、聖子ちゃん、明菜ちゃんなどに混って、やんごとなきお方の「玉音天気予報」などというものまであった。
あえてタレントものから選ぶとすると、
・小林幸弘『ラッシャー木村さんに「お天気キムちゃん」になっていただく。前の日に百葉箱をのぞいているキムちゃんの姿などもうつす』(毒)
同じく、
・岡田克巳『(前略)しかし、ラッシャー木村先生のラッシングパワーも最近は衰え気味なので予想がハズれる場合もありうる。その時は寺西勇がどこからともなく現われ二人で大暴れしてゴマかす』(毒) ということになろうか。
露骨に実用的な人物としては、
・大鳥一『バックに、団体のトップ(池田大作さんや田中角栄さん)の近況を流す』(毒) というのがあった。「角ちゃんのゲタ投げ予報」については同巧超多数につき、割愛。
オリジナリティ不足
多かったアイディアの三等賞は、なんといっても、「ピチピチギャル予報」や「ヌード天気予報」であった。
晴れたらバストを見せるとか、ヌードを日本列島に見たてるとか、あまりに常識的な非常識である。なかでは、
・山口正明『日本地図のかわりに女の子のカラダを使ってもらうと、ちょーどあのへんに尼崎市がきて、嬉しい』(毒) が、正直すぎて愛らしかった。
外れたら一枚脱ぐ、という「野球拳方式」も多数あった。これも、あえて探して、
・高井一郎『いきなり、脱ぐ』(毒) の超簡潔さを買う。
天気予報を賭けにして、「天気トトカルチョ」をやるというものが、多数アイディアのナンバー2。これは、探しても、掲載したくなるのはなかった。似たようだが、
・日吉孝直『予報を書いたサイコロで女性キャスターがツボ振りをし、予報と違った目が出た場合、予報官が針でツツいて天気目を変える、壼振り天気予報』(毒) が、少しいい。
そして、同巧第一位は、「高視聴率番組に便乗する」というもの。なかでも「おしん」が多かった。見るべきものはない。同じ「おしん」発想なら、
・舛谷隆直『予報官が自分の家から放送する。生活をかけて予想しているという悲壮感が見る者の心に感動を呼び「おしん」を凌駕する番組となる。奥さんが台所で野菜を刻んでいるなどの演出も試みたい』(梅) を選ぶ。
オリジナリティのあるものを少し並べよう。
・藤本和洋『天気図の下方海上にいつも台風を発生させておく』(毒) たしかに台風の時は視るもんな。
「サギではございますね」
・海原瑞『局で独自にリューマチ患者と契約。絶対に当る。当れば視聴率はあがる』(毒)
「これも多かったのに、どこがオリジナリティなんでございますか」
そのリューマチ患者を、自分の姉と明記している点である。
・石崎雅紀『雨の日の気象庁の傘立ての状況をつぶさに報告する』(梅) なるほどね。
・水野明子『頭と眉を剃った五人の男。一人が天気について声をひそめて話す。あとの四人はそれを耳をそばだてて熱心に聞いているが、時々可笑しそうに笑う。視聴者もつりこまれる』(梅)
既にある番組のバリエーションを考えた塾生もいた。
・門田陽『ヤン坊マー坊の背広姿をお見せする。お嫁さんも紹介する』(毒) 見たくない気もする。
・妻鹿年季子『天気予報がはずれたためにおきた悲喜劇を広く募集し映画化する』(梅) も、あんまり観る気にはなれないが。
ひどいのになると、
・岡本元嗣『雨の日に「私は天気予報を見ませんでした!」と黄色地に黒い大きな文字で染めぬいた傘を街頭で傘がなくて困っている人にくばる』(毒) なんてのもある。
もっとひどいのは、
・川原暢『全国の家の天井をとりはずす』(毒)とか、
・冨士栄秀也『国民を全て農民にする』(毒) などというもの。天井のあるホワイトカラーが、天気予報の敵なのかもしれないな。だが、最も悪どいのは、
・小林茂樹『あの小林秀雄に天気予報官になってもらい、もしハズレた場合は「そうさオレたちゃお天気屋さ、はっ、なに考えてんだこのド助平が」などと言ってもらう』(毒) ではあろう。若山英雅も同意見。
では、当の小林秀雄はといえば『土一揆をおこす』『雨天の場合中止とし希少価値を漂わす』『天気予報を義務教育にする』『気象衛星「ひまわり」が枯れてしまったと、うそをつく』『「犯された私」などというタイトルにかえる。愛染恭子の天気予報にする』などと、あいかわらず元気である。まとめて、お駄賃として(松)をやることにするが、くれぐれも慢心せぬようにナ。
倦まずたゆまず、ね
それにしても、初期の頃の優秀な塾生が、長いスランプにおちいっているのは気になる。小林秀雄の天をも恐れぬ馬力を見習いなさい。ついでだが、吉永小百合君、ヒマな午後くらいはあるであろう。出してみなさい。山藤章二君も、休んではいかん。
続けよう。
・平井伸郎『番組中に突然ライトが落ちて来たり、各地からの現在の天気の中継中に原住民(?)や毒蛇が襲ってきたり、毎日なにかのハプニングを演出する』(梅)
これは、見るね。
・堀田能成『前衛天気予報。イルミネーションけばけばしい天気図をバックに喪服の女。いっきに筆で「くもり」と書く。その瞬間、ドーンと六尺玉が夜空をかざる』(梅)
それにしても、しかし、何故現在の天気予報番組というのはあんなにつまらんのであろうか。予算がないとか、毎日のことだから粗末なおそうざい風になっちゃう、などという考え方もあるだろうが、やり方によっては天気番組で局全体のイメージアップさえできると思うのである。
ひょっとすると、天気というものも紙幣のデザインなどと同じように、共同体の規範に関する大切なもので、あだやおろそかに面白くなんかすると日本国中がアナーキーでパッパラパーになっちゃう恐れがあるのかもしれない。
いずれにせよ、本日より、萬流塾では、天気のことは一切「禁忌」とする。心しておかれたい。
今週の宿題
唐突でわるいけど、公衆便所はキレイであってほしいものである。
「家元、何か悪い思い出でもおありでございますか」
いや、特にはないが、そのほうがいいと思ってサ。
で、全国の公衆便所(とにかく不特定の人が利用するすべてのトイレ)に、ステッカーを貼ることにした。そこに、名コピーを大書したい。
「くっつけるな、とかでございますね」
ま、そうだ。誰が読んでも、キレイに利用したくなるような一行を考えて送ってほしい。
では、家元は帰るぞ。
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ま、このォ、私が家元の糸井重里である。物情騒然諸物価高騰の咋今ではあるが、はたして日本や家元の運命はどないになっていくねんやろかと心配するにはおよばない。
「本当に、あのドブ板は、修理してあるように見えたけど、ただセロテープでとめてあっただけなんだから、もう」
おや番頭さん、またドブにでも落ちたんじゃないだろうね。
「いえ、それが、落ちたのでございますよ。世の中にドブがあるかぎり、ドブに落ちる人間もいるわけでございますからして、私が個人的に二度落ちても何の不思議もございません」
また番頭がドブに落ちた。
一度目は愉快な事件としてニュースになったけれど、こうひっきりなしに落ちていては面白くない、ということもなく、やはり、おかしい。
また、番頭はドブに落ちたのである。誠に、珍しい人だ。
いやぁ、まったく、ついに十月十二日が来てしまった。と、白々しく書いてはいるけれど、本当はまだである。諸君も知っての通り、雑誌の発売日と締切日の間には、χ日間ほどのタイムラグがあるわけで、そういう当然のことを平気で言えるのは、萬流くらいのものである。
「そういえば、家元は十二月に放送されるゲートボールの番組でも、まるで九月中旬のようなTシャツ姿でございましたものねえ」
番頭さんも、他所のことは平気で言うんだね。
「それはもう、他山の石ならドブに落としても惜しくはない、という諺もあるわけでございまして」
そうか、他山の石と一緒に自分もドブに落ちたのか。天晴れ天晴れ!
しかし、判決はどうなったのかなぁ。みんなそれを知ってて読んでいるわけだもんな。いいなぁ。うらやましいなぁ。
「うらやむくらいなら|屁《へ》をするな、という諺もございます。お稽古をいたしましょう」
まるで私が屁をしたようではないか、自分なんかドブ臭いくせに。
切り口は色々ある
いやはや、政治がからむと難しい。これが今週の最大の教訓ではあろう。
明らかに「田中角栄」と思われる写真があった。そいつをポスターに見立てて、キャッチフレーズをつけ、広告主名を記せ、という宿題だったわけだ。
塾生の、ほとんどすべてが、この「写真」の「意味」に足をすくわれたように思う。
よいか、この「写真」は、たしかに「田中角栄」という人物を撮影したものなのだが、そのことだけを表現しているわけではないのである。「目つき」「口元の表情」「服装」などなど、さまざまな言葉にならないコトバが、この写真のなかにはこめられているはずなのである。
「つまり、田中角栄でない、ひとりのおじさんと考えてコピーをつけてもいいわけだったのでございますね」
そうなの。
「ここに田中角栄の写真がある、と、文章で書いてあるのではなかったのでございますからして……」
でもね、そういうビジュアル言語には、みんな馴れてないのでした。
むろん、田中角栄である、と考えるのは悪くないのだけれど、萬流の塾生ならば、もうちょっとタテヨコナナメと、切り口をいろいろにして考えてくれたほうがよかった。
ま、ぶつぶつ言ってないでハガキを見ていこう。
まずは、政治ネタであると決めつけて、ありきたりの風刺に走った、新聞記者風のものを見てみよう。
・井上嗣実『虫さされに。〈キンカン〉』(餅)
・後藤淳一『パパ、昔はカクさんより黄門さんの方が強かったんだよね?〈全国水戸黄門ファンクラブ〉』(餅)
・庵崎米香『そういやあ、昔、三角大福てえのがあったとさ。〈中村屋・和菓子〉』(餅) などというものだ。これらは、それなりに面白い。面白いと思おうとすれば面白いのだが、そう思わなければ、なんでもない。
書いた人の、その人ならではの「感じ」が伝わってこないのである。要するに、よくあるような「風刺」や「時事マンガ」のパターンに、どっぷり浸ってしまっているのだ。だから、書いた人、写真の人、読む人、という三者の距離感が見えてこない。あまりにも高みの見物、単なる小うるさい一言居士、なのである。
政治、風刺をねらっていても、うまくできているものもある。笑いはとれないが、
・花岡邦彦『この秋がすぎると、あなたは新聞に呼びすてで出るかもしれない。〈自動車保険会社〉』(梅) などには、読み手を安全圏に座らせておかない鋭さがある。もうひとつ、マジメなのでは、
・秋田邦夫『10月12日は投票反省日です。〈総理府〉』(竹) がある。(餅)と比べると、よい。
画文一体をめざす
しかし、萬流には王道はない。どこに転ぶかわからぬエネルギーこそが、誉めたたえられるのだ。
「ここは新聞の投書欄ではないでございますからね」
こんなのが堂々と点をもらっちゃうのです。
・甲峰沢徹『よしや。〈吉屋信子著作保存会〉』(毒)
・河野良武『この顔思って、もう一我慢。〈不二ラテックス〉』(毒)
・吉浦徹『少年よ、これがタイガーマスクの正体なんだ。〈新日本プロレス〉』(毒)
どうだ、ひどいものだろう。今週は、そういうのばっかり、ヒイキしちゃうのだ。
みんなが白だの黒だの正義だのと騒いでいる時に、平気でわけのわからんことを言っている塾生は、やはりたいしたものだ。
・西尾卓矢『すげかえ前はこの顔だったの。〈三原順子〉』(毒)
・小林茂樹『これに似たものにかぶせてください。〈岡本理研ゴム〉』(毒)
・橋本光司『このように首のない方でも、十分、締められます。〈日本ネクタイ協会〉』(毒) いわゆる風刺よりも、ススンデルと思うのです。
もっと続けちゃおっと。わからない人もいるかもしれないが、
・藤原ゆきえ『この美しい肖像画をお求めになれる、今が最後の機会です。〈フランクリン・ミント株式会社〉』(竹) 写真とコピーが、ブアッと一度に一緒になって飛びこんでくるであろう。それが、欲しいのだ。文字だけで完結させようとすると、この効果は出ない。写真とコピーがうまく結びついている|だけ《ヽヽ》っていうのもありました。
・村上幸隆『アマンドって、どこ。〈アマンド〉』(竹) と字があんまりうまくマッチしているので、さらに深いところまで読者にイメージさせてしまうのだ。村上君、ラッキーなのか、|手練《てだれ》なのか、今後を見守ってみたい。
・稲垣高志『おいしいですよ明太子。〈博多辛子明太子振興会〉』(梅) も、同様。アマンドは(竹)で、明太子は(梅)です。イメージの拡がりが、前者の方がずっと大きいからである。
・松元浩一『田中さん。そんな罪で裁かれるあんたは、まだ幸せだ! 〈白仁天〉』(梅) も、よくできてはいるが、ポスターにするコピーじゃない。文字だけで閉じちゃってるでしょう?
坂章一『蜂にさされたらションベン塗っとけ。〈日本民間医療研究所〉』(梅) は、「蜂」を出して平凡になっちまうところを、うまく写真の「顔」で救っている。ねっ、少し、わかってきたでしょ。
では、うまいのを一発紹介してみよう。
・上松治『アホゆうもんがアホじゃ! 〈阪神タイガース〉』(松)
この素晴しさを感じとれない塾生は、勉強不足か、勉強のしすぎである。
では、かわいそうだから、勉強不足か勉強しすぎの人にもわかる作品を一発。
・菅原健一『十年前「飛行機買うんだ」と言って僕から五億円借りて行ったこの方、至急連絡乞う。〈菅原健一〉』(松) 惜しむらくは、上松君に比べるとやはり写真が生きていない。
写真を見ながら、以下のコピーを読んでみてほしい。
・和久井丘『すき、きらいは、いけましぇん。〈3年2組給食係〉』(梅)
・窪田浩幸『スゲサト! バカやってないで早く帰ってこいや。〈オヤジ〉』(毒)
・加藤秀広『賀正。〈田中角栄〉』(梅)
・亀村真一『オイッ、ときめいてるかっ!!〈仁丹〉』(梅)
・南野なん『ボク、ほしガキ隊のカッちゃんです。(不明)』(梅)
・並木謙二狼『わしも脱ぐ。キミも脱げ。〈にっかつ〉』(梅) ……少しは、今週のお稽古の雰囲気がつかめたろうか。
えっ?! つかめない。では再び、つかみやすいものを見せよう。
・東郁之介『よい子のみなさーん。みんなが好きなパンダをもらってきてくれたのは、このおじさんですよー。〈田中角栄後援会〉』(竹) 同巧多数のパンダものでは、これがいちばんだった。
中味の濃い講義だろ
同巧といえば、こんなのも多かった。
・佐藤一夫『こんな先生方が、アナタを欲しがってます。〈愛人バンク〉』(梅)
掲載されやすいという噂の、萬流ネタも多かったが、みんな落した。かろうじて、
・岡康信『松があるだろ、松が。岡君には松をやりたまえ、松を。〈岡康信〉』(毒) が残った。
川上宗薫君は落とせても、どうしても落とせないのがあいつ。
・小林秀雄『俺が社会の窓だ。〈YKKのズボンのファスナー〉』(毒)
まったく、どこまでもくいさがってくるやつだ。
あ、こういうのもあった。
・田中健『ぼくののらないけど、とどいてないのかナ?〈田中角栄〉』(梅) 届いてましたー。
ついでだから、
・川村武郎『10月12日は西舞鶴高校文化祭です。〈西舞鶴高校文化祭実行委員会〉』(毒) も載せちゃえ。
今週は、親切心を起こしすぎたために、家元は疲れた。
「お点の基準をなんとか理解してもらおうと思ったのでございますね」
うん、でも、あせるこたなかった。あの河野八重子君だってわかってくれそうになってるんだもの。要するに、「文字のみ」で考えようとしちゃダメってこと。
「開かれたコピーを、ということでございますね」
そう。難しいけどね。
ところで、遅刻分の「天気予報番組」は、外国からの分も含めて点になるものはなかった。報告しておく。
今週の宿題
バナナである。番頭の幼少時には、祭りの時にしか食べさせてもらえなかったという、あのバナナである。小学一年生の家元は、ミツマメのなかに輪切りで入っていたバナナを食べて「僕はこのオイシイモノを十個ぐらい食べてみたい」と叫び、父親の涙をさそったという。
しかし、そのバナナも、いまでは家畜のエサ、果物カゴの重石、とまでいわれているのが現実である。
バナナにコピーを与え給え。書いてる本人までが、果物屋に急ぎたくなるような、強力なコピーを書いてやってくれ。
では、家元は帰るぞ。
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おっとっとーい、私が家元の糸井重里である。今年はサンマが豊漁で、まことにもって目出たいことであると思いきや、大根が高い。実に、高い安いは時の運、目くじら立てるほどのことでもあるまいが、大根おろしに向う箸に勢いがなくなる、そんな自分に腹が立つ。
テレビを鑑賞していたら、農大生が繁華街で大根踊りというものを披露しておる光景に出合った。この時代に、バンカラを気取ることは、さして難しいとは思わぬが、大根を持って踊るということは、なまなかな硬派気どりの若者に出来ることではない。爽快であった。
「朝礼の最中ではございますが、家元」
番頭さんか、何だい。
「抗議のハガキが、これ、こんなに」
ナニナニ……。
「家元は左廻りのアナログ時計を知らぬといって塾生たちに〈商品研究が足らぬ〉と叱っておきながら24時間表示のアナログ式の存在に気付いておらぬ、と、そういう意見でございます」
わっはっは、まるで鬼の首でもとったような得意顔が見えるようじゃ。喝! これでよいか。
「喝! でございますか?」
その通り。家元というのは、戦後の先生や、話のわかる上司なんかじゃないのだ。
「しかし、お言葉ではございますが、喝と思うな思えば負けよ、という歌もございます」
だから、「喝」と言われた塾生が、それを喝だと思ったら負けになってしまうということだよ。
「では、そのように取りはからうことにいたします」
ったく、萬流の奥深さを、ちっともわかってくんないんだから、みんな。稽古に移るぞ。
怪しい感じに注目
テーマは、「懐中電灯」である。前々から、どうも懐中電灯というやつは怪しい存在だとは思っていたが、コピーを募ってみたら、やっぱり想像以上に怪しいやつだということがわかった。
なくてはならぬ商品、というイメージがありながら、実際になくて困った経験というものがあまりない。台風が近づいて来たりすると、懐中電灯を用意しておこうなどと思ってはみるのだが、イザこれが必要な事態になったらどう活用するのかがわからない。
企業の側も、わざわざファッショナブルにしてみても、たいして儲からないと思っているせいか、ごくごく静かに「5年前とは少し違って見えるかしらん」みたいな商品を作っている。
しかし、決して市場から姿を消したりはしない。おかしなものが、あるものだ。
そのあたりの怪しい感じに、ほとんどの塾生は気付いていたらしく、今回は変化球で勝負に出たコピーがやたら目立った。
まずは、直球勝負のものから見ていくことにする。
「暗い場所」は、現実に、まだ「ある」のだという発想から、必要を説いたもの。
・北川裕行『これがなくっちゃ大変だよと、向島団地西5号棟42の9の7のBに住む僕の先輩は言った』(梅) そうだろうなあと思う。似ているが、
・長谷川伸子『長距離通勤のみなさん、日の出も遅くなりましたよ』(梅)
・梅田龍夫『私、これ持たないと帰れない所に住んでしまいました』(梅)
・青野智『夜、懐中電灯を持たない中大生は家へ帰れません』(梅) なども、うまい。
梅田、青野両君は、私的な体験から書いているらしい。まだあるぞ。
・久保敬『街灯は、所詮、自治体の道楽です』(梅) は、妙にリアリティがある。
・船山満『懐中電灯を手に小用にいく、そんな屋敷に私は住みたい』(梅) ここまではいずれも社会とか行政という言葉をひきずり出しそうなコピーだ。これを茶化して裏返しにすると、
・高井一郎『今度、六本木のディスコに行くんだけど、夜だし地下にあるってゆうし懐中電灯もってった方がいいかなあ』(梅) となる。
次に、懐中電灯を使っている「人」が、まだ「いる」ということをヒントにしたコピー。
・津寺利嗣雄『警官に尋問されたら、即座にお見せください。あと30分は話し相手になってくれます』(梅) 同じく警官ネタで、
・久野慎太郎『えいっ眩し返しっ!』(梅) おまわりさんに照らされると腹が立ちますねと添え書きがあった。
しかし、警官だって、こういうヤツがいるから油断はできないのだ。
・小越敏『出かけよう屋根裏へ』(梅)
懐中電灯の必要な「人」は、まだいる。
・門田陽『兄さん、きょうは母さんを捜しに行こうか』(梅) 不気味だねぇ。もひとつ。
・福田篤史『おじいちゃんが死んでないか、毎晩調べてあげよう。懐中電灯』(梅) だってさ。
「家元! これも、必要な人でございますう!」
なんだ突然。
・川名ゆかり『スチュワーデスの必需品』だって?
「(梅)をさしあげましょう。これは勉強になりましたから」
他の塾生が絶対に怒るが、(梅)をやろう。
「川名君、必ず日航のバッジの上に萬流バッジをつけて下さいませよ」
今週は、少女マンガ家がいっぱい送ってきたのに、スチュワーデスばっかりヒイキしてしまった。いずれ番頭は石をぶつけられるであろう。
とうとう名取誕生!
続ける。
・北山大『あなただけにソッと教えます。自動販売機の裏を探してごらんなさい』(竹) この手のものは、なかなかありそうであるもんじゃない。ついつい誘われるではないか。
そして、もうひとつ。
・前田雅治『奈良の新薬師寺の本堂では、ありがたい仏さまを見るのに、これを1ツ20円で貸しているのを、きみは知っているか』(梅) うーむ。
では、一般的な直球を。
・八神聖『懐中電灯が活躍するとき、パパはヒーローになる』(梅)
・飯塚憲子『外見はシンプルだが、構造はバカらしい』(梅) まことに憎めない。
変化球っぽいけど、意外とオーソドックスなコピーとしては、
・玉井恭史『あなたは暗闇でそれが夫だといいきれますか?』(竹) がある。
さて、次の集団に移るためのつなぎに、
・室井溶子『平凡な生活をしているので蒲団の中でしか使い道がない』(梅) がある。
そうなのだ。今回は、みんなベッドへ、お蒲団へと、考えが行っちまったんだ。だから、そのあたりのものは厳しく選んだ。
・篠直樹『僕の性格を逆にしてしまう恐しい兵器』(梅)
・宮田延晴『明るいこけし』(竹)
・宮崎英一郎『私、表向きは五十代の管理職ですが……日比谷公園で使ってます』(梅)
・窪田浩幸『妻を照らせばモチ明り』(梅) などが、下半身を照らすアイディアのなかでは秀逸。決め手としては、平凡だが、
・那須英憲『どれどれ、おじさんに見せてごらん』(梅) ということになるか。
・植田覚『善悪両用』(松) は、地味だがすごい。
・関野正顯『真夜中に急にお金を御用立てたい、あなたに』(梅) をはるかに見下している感じだ。
さて、一気に(毒)を並べる。
・窪田浩幸『よどばし電灯へ行けば安い』(毒)
・岡田真『川口浩がゆく』(毒) は、同巧あり。わからない人はテレビ好きの友人にたずねなさい。
・織田和夫『お仏壇のご先祖様に向って、懐中電灯をペンライトのように振ったら、一家の心が一つになった』(毒) は、新鮮だった。
・鈴木康敬『人形の冠に懐中電灯がつけられるのは「明月」だけのオリジナルです』(毒) も笑った。実に、快調だ。
・岩田隆幸『ちょうちん作りの歴史が生きる小田原の懐中電灯』(毒) うー、たまらん。
・中本恒子『私はやくざですが、懐中電灯は市販の、ごく一般的な物を使っています』(毒)
まだまだあるぞ。
・小林牧朗『三度のメシより懐中電灯が好きだった彼……押し入れの中で死んでいました』(毒)
・松下康夫『わしらのイナカじや、祝い事があると必ず懐中電灯行列をやるんじゃ』(毒)
・中田稔『メリー・ポピンズの鞄の中にも懐中電灯が入ってると思う。何故って、あの人はそういう人だよ。きっと』(毒)
・青原昭彦『新体操に、懐中電灯ダンス加わりました』(毒) ……ああ(毒)ばっかり団子にしたら疲れた。
おっと、
・小林秀雄『今までの検便では物足りないとお思いの貴兄に。まるごと一本入ります』(毒)
「あのォですね、小林君はこれまでのお点が、3毒・1松・1破門で合計9.5。ですからこの毒点で10点になりますです」
しまった。これで小林君は名取になってしまった。いまさら点を減らすわけにはいかないし、ええい、名取第一号も、小林秀雄じゃ、バカバカ。
普通の優秀作で口なおし。
・柿沼徳治『誰か目を照らしているがまぶしくない。遠い声がした。「ご臨終です」』(竹)
・久保敏『民間レベルで宇宙人と交信する日のために』(梅) は民間レベルという言葉が生きている。
・安増久美『母が言う。護身術習うより、これで自分の顔をよくお見せ』(梅) は、同巧もあったが、これが残った。
落すにしのびない!
一度読むと面白いが、二度目で落ちて、再び拾われた怖いコピーがあった。
・小林茂樹『なに?! うちの娘をくれだと?! 懐中電灯のくせして大胆なことを言うやつだ』(竹) 現代の民話ですね、これは。
・三好祐一『フフフ……俺にコレを持たせて生きて帰れたヤツはいないんだぜ! と兄は何かに憑かれたように僕に光を当てた』(梅) も、懐中電灯の魔性をよく表現しておる。
素朴だが、
・海原瑞『懐中時計は、わかる。しかし懐中汁粉と電灯の名付親は、どんな人だったのだろう』(梅) なども残った。
ミもフタもないけどケッ作。
・佐藤年信『おーい! あれどこだ。シェーバーの電池がなくなったんだけど』(竹)
「非常用電池倉庫ということでございますね、なるほど」
エンディングはSF味で。
・森田辰巳『遂に太陽が燃えつきたあとも、数十億の懐中電灯が世界を照らしていた』(松) やっぱり、ずいぶんと怪しい商品だったねぇ。
今週は、落とすにしのびないものが多かった。この調子で頑張ってくれたまえ。
話を下半身に持って行くのはかまわぬが、下げただけではダメ。下げてなお味をつける努力を忘れては「同巧多数」になってしまうのである。
今週の宿題
333メートル、という数字を見てすぐに「東京タワー」を想起する人は、かなりの通ではあろう。宿題は、観光名所「東京タワー」である。
具体的な会社が儲かっちゃって、ちょっと口惜しいかもしれないが、この古くて新しい塔のコピーをつくってください。
「あれ、まだあったんでございますか?」
ホレ、文春ビルからでも見えるじゃないか。
「あ、ほんに……」
では、家元は帰るぞ。
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あいむふぁいんさんきゅ、私が家元の糸井重里である。
米国の|紐育《ニユーヨーク》という都市に、第三の波の視察に行き、帰国してみればハガキの山。摩天楼も高いが、ハガキの山も高い。アー、なんちゅうかその、でぃすいずあ、エー、
「家元、すっかりおやつれになられて」
いぇい、あいむそぉたいあど、れっつごぉ、バントー!
「おいたわしゅうございます。何をお話になっているのか、私めにはさっぱりわけがわかりません」
どうやら番頭には第三の波が理解できぬようなので、いつものやり方で行くことにする。
「家元、その、財産の並というものは、例えば、郵便貯金とか、簡易保険とかでございますか」
どうやら番頭には、米国の青年達に大流行している「さぁふいん」のことが理解できぬようなのである。いぇい。
「家元は、きっと凡人にはわからない何かをつかんで帰国したのでございましょう。では、とにかく、お稽古を」
あっ、いま、ハッと我に還ってしまったぞ。ここはどこだ? 臭いぞ。
「便所に関するハガキがございますので、多少……」
そうだそうだ。宿題を出してあったのだった。いやいや、失礼した。すっかり頭がボケてしまいました。
新入塾生が張りきる
公衆便所に貼るステッカーのコピーを募集したのであった。
しかし、まぁ、|下《しも》ネタになると突然塾生諸君も張り切るのだねぇ。五千から六千はあるようだ。
「丁稚に後ほど数を確認させておきます」
それにしても、|下《しも》の得意な人間が多いな。
「やはり、第三の波とやらでございましょう」
はっ? 番頭さん、あなたは何を言ってるんだ。
「ですから、第三の波、と……」
私の知らないコトバを使うんじゃありません。まったく、家元に恥をかかせる気じゃないだろうな。
「いえ、その……」
だから、まずは、
・斉藤正幸『住んでる人の身にもなってください』(梅) である。同じ斉藤姓の、
・斉藤貴司『寝る人の身になって使いましょう』(梅) と、どちらがいいか考えてみる。
正幸の「身に|も《ヽ》」の部分は、ちょっと弱い。こういう時には、バカになりきったほうが効果があるのだ。
続ける。汚さないで、と同情を買うというスタイルでは、
・織田和夫『このトイレ、じつは昨夜から寝たきりで、動けないのでございます』(梅) や、
・滝沢晃『私、皆様のお流れで暮しております』(梅) などがあるが、
・関口隆哉『便器も人の子』(竹) というくらい簡潔なほうがスルドイし、永持ちする。
便器の立場から書いたもののうちでは、
・斉藤三左子『よう来たなあ。まぁすわれ』(梅) がいい味だ。あっ、また斉藤?! 斉藤一族というのは、便器から進化した人類なのであろうか。怖いのは、
・宮本裕子『あなたのだから、嫌なのです』(毒) どこかに、くっついてもよいうんこがあるのかもしれない。
・田代英明『お嬢さん。そこのたわしで洗ってください』(梅) というのは、実に合理的な直接訴求である。この、万が一くっつけても大丈夫という、尻の穴の大きな態度が、人々に安心感をもたらし、くっつけさせない結果につながるのではなかろうか。ミソは、「お嬢さん」の呼びかけ。「お父さん」や「お婆さん」では逆効果であろう。
清掃する人の立場を実名入りで訴えたのも数通あった。
・菊田資士『私は、58歳の主婦パートです。最近リュウマチで清掃が大変です。お願い致します。イタタタタァ』(梅) などだが、
・村上美佐緒『ここの掃除は、10年前から、このおばばがやっとります。何をこびりつかしても、わての腕にかかったらいちころだす。それが、ぷろへしょなるゆうもんだす』(毒) なんていう挑発的なのもあった。これじゃ、くっつけてみたくなっちゃうではないか。
脅迫的なものも多かったな。
・舛本宏『トイレをよごすと便器があなたをなめる!』(竹) はおかしい。
・金丸万砂子『アッ! 汚しやがって……そのままの格好でオモテへ出ろィ!』(梅) なども、『○○組経営の便所です』などよりも、イメージが具体的でよい。
とぼけているが、実際には効果的と思われるのが、
・今津博『特に、天井をよごさぬように』(竹) である。これで床のことも言えてるのである。
しかし、「虫のくったセピア色の紙に毛筆で書きましょう」という添え書きのある、
・長谷川普美子『便器の呪い』(松) がいちばんすごみがあった。体言止めも、こういう風に使うとピタッとキマる。「便器の呪いがかかります」なんて書いたらぐっと落ちるでしょ。
はるばるロンドンから、
・竹中博幸『妹が公衆便所と呼ばれている私には、公衆便所を汚す人を許せない』(松) という傑作が届いた。ま、本当は、これは、ステッカーにして貼るというよりは落書きの名文句だと思うけどね。他の塾生のも、ほとんどがそうだから、大目に見ることにする。
常連組も頑張った
いつも沢山書いてくる
・小林牧朗は、『君は通りすがりかもしれんが、私は常連なのだよ』(梅) を掲載。小林牧朗は、もう少し「通りすがり気分」で書いたほうがよいと助言しておく。
同じく常連の
・津寺利嗣雄は『お宅でなさる要領で』(梅) というマトモなのが残った。
宛名書きのスタンプまで作ってる
・窪田浩幸は、『社長、一つ模範を』(竹) が当り! 「一つ」はひらがなのほうが、よかねーかい? 加藤恵一、海原瑞、共にファウルフライでアウト。次打席に期待したい。
そういえば、野球にちなんだものも多数あった。たいしたことはない。
・葎迫照夫『巨人軍の山倉です。和式だとついサインを出してしまいます』(毒) だってサ、困ったもんだ。
「和式だと、つい、つかんでセカンドに投げたくなってしまうのではないでしょうかねぇ」
番頭さんも、なかなか思慮深い。ついでだから、古典的な落書きを紹介しておこう。と、思ったが、やめた。どれも、うまいけど、イキイキしてない。
・森三千代『便器でターバンを洗うインド人を私は知っている』(毒) なんてのを掲せたほうがタメになる。
小林秀雄もいたし、河野洋平なんてのもいたけれど、こんどは森三千代かい。ヘェ、ハタチ、ねえ……。
ジャーン。
・小林秀雄『書を捨てよ、町へ出よう! だが、町へ出てまでクソするな』(毒) 『便は異なもの味なもの』(毒) 『私の人生を、私は糞の量で測ってきた』(毒) と、また得点してしまった。
晴れて名取になった彼には、家元の「井」の字を授け、「小林井秀雄」の萬名を与えた。
『おっ、いけねぇ。ケツの穴落しちまった』(毒) も追加で入れる。今週も計2点か。
乱暴者を少し。
・佐々木良一『何しに来た、帰れ』(毒)
・増岡洋介『てめぇ、何年糞してやんでぇ!!』(毒)
・大関宏之『ただで、できるんだ。文句を言うな』(毒) ……あぁこのあたりのは、他の塾生に悪影響を与えそうだなぁ。
では、口なおしに、
・久保田一洋『努力』(餅)
・山田美枝子『「運子の部屋」へようこそ』(梅)
・宇野由美子『流し素麺始めました』(梅) などをどうぞ。
いつも遊びたいのが、こういう、超シンプルなやつ。
・中村卓『よーそろー』(梅)
ご参考までに、というハガキもずいぶんあったが、安倍隆典は、むかし大学の寮の便所で『大を小でといて筆でかいた』という黄色い字を見たとのこと。
「お稽古帳と門前バッジを送りますです」
ついでだが、番頭さんは、十年ほど前、伊勢丹デパートのトイレで、『ウンコは伊勢丹で。お買物は三越で』という落書きを見たという。
実は、家元も、まったく同じ落書きを三越で見たのであった。トルコの便所に『クソまでするな』と書いてあったという情報もあるが、実はこれは私がいま考えたものである。ごめんね。
・大島玲子『糞災の無い明るい世の中』(梅) あたりは、まともだが、良い。
・川本正美『トイレットペーパーのしんは次の人のために残しておきましょう』(梅) に関しては、そのまた次の人のことが疑問として残る。
・本間洋兵『便所にサケを呼びもどそう』(梅) と、
・岡田浩司『トイレに鮭を呼び戻そう』(梅) は、まったく同じテーマだが字の選び方では、本間君のほうがイマっぽい。
ほんとは邪道なのだが、説明を読んでから、ついナルホドと思って選んでしまったのが、
・宇川拓水『このトイレは一年に一度しか清掃しません』(梅) だ。
「そうか、それにしてはキレイだな。これは心してかからねば」と利用者は思うに違いない、だってサ。
『落書き』が多かった
もうひとつだけ、載せよう。
・森賢一郎『脱糞すれど非道はせず』(梅) こういうドーンとしたのも悪くない。
全般に今回は快調で、落とすにしのびないものも多数残ってはいるが、全国の公衆便所に、現実にステッカーとして貼りたくなるようなものが少なかった。どうしても、落書きになってしまうのは、面白いけど困ったものだ。
私自身としては、『正糞』などと、赤い丸のなかに堂々と書いてあったらどうかなどとも思うのだが。
「逆は、邪糞でございましょうねぇ」
『曲糞』とか、ね。
「汚糞、なども……」
あ、そうね。『逸糞禁止』とかも……ああ、今回はどうもキレが悪い。
今週の宿題
難しいかやさしいかわからん宿題である。
「女」のコピーを書いてくれ。
「女はいかに大切か」でも「女性の偉大さ」でも「女を愛せ」でも、いろんな角度から考えるがよろしい。
「では、『安斎の影に女あり』と」
なんだそりゃ。
「安斎という同僚が窓際に机を持っておりまして、その影に川田範子という女性が……」
ま、それはとりあえず没だね。
「やっぱり……」
では、家元は帰るぞ。
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ま、なんちゅうかねぇ森繁久弥ですが、私が家元の糸井重里である。
急な話で、そもそも戸惑うこととは思うが、十一月十日を、〈|御萬《ぎよまん》の日〉とする。この日は塾生諸君は、おおいにくつろいでいただき「萬」にちなんだ数々の事を行なって|寿《ことほ》いでくれ。
「家元、なにを寿ぐのでございますか」
番頭さんには初耳かもしれないが、実はこの日は私の誕生日だ。例年のごとくに、豪華|絢爛《けんらん》の酒池肉林大宴会を催してもかまわないのではあるが、これも何度もやっているうちには飽きてしまった。
「昨年までは、そのような……」
うん、飽きてしまった。
「どなた様方がご出席になっていたのでございます」
忘れた。忘れてしまったよ、ワッハッハ。
「酒池も肉林も、せめて本年度まではお続けになったほうが」
いや、飽きた。本年からは広く一般の塾生たちと、共に、この日を寿ぎたい。
「酒池は? 肉林は?」
止めだてはせぬ。無礼講じゃ、勝手にやれ。休日にしてやるからな。
「しかし会社や学校のある塾生は、休日にしてやると家元に言われましても、ちょっと……」
ええい。|萬心《まんごころ》薄き者よ、去れ。去って平日の世界に行けい。とにかく、十一月十日は〈御萬の日〉じゃ。誰も祝わぬというなら私は一人で薄暗く祝ってやるからそう思え。覚悟はよいな。
「はい。覚悟いたしました。お稽古に移りましょう」
そうだね、そうしようか。
一行エッセイは危険
まずは、
・中本恒子『ジャスコに宿題が並んでいたので、私笑っちゃいました』(竹) 楽屋ウケをねらったにはちがいないのだが、そのクサミがない。本当に笑っちゃったのだろう、と思わせるところでトクをしたね。
そう。つまり、今週は「バナナ」がテーマであった。まずは、思い出のバナナを語ったコピーから紹介していこう。
「ハイライト」の時もそうだったが、売れていた頃、人気があった時代のことを書くというスタイルには、おとし穴がある。それは、広告コピーというよりは短いエッセイになっちまうという危険性だ。
これも、うまくツボにはまれば、十分に広告にはなる。「食うのをやめていた」休火山的な購買者が、もどってくる可能性もあるし、一度獲得した知名度を利用するというのは効率のいいやり方ではある。
しかし、これはあくまでも一行エッセイとしての完成度あってのことである。その点、
・笠原昌英『給食に出た日、こいつはよくろうかで死んでたっけな』(梅) などは、危い橋を渡ってはいるがインパクトのあるコピーになっている。
・吉川潔『「バナナ、あんまり好きじゃない」。あのころ、ちょっとキザな台詞だった』(梅) は、笠原君のものに比べると平板。すっと流し読みできちゃう。
・菅次郎『お元気ですか、おにいちゃん。サチコは今でもバナナが好きです』(梅) も、童謡に題材をとった思い出もの。
「浮世時節の流れを感じますですね。サチコさんは、もうきっと中年の人妻でございましょうに、バナナを、ねぇ……」
サッちゃんものは多かった。しかし、このテーマでサッちゃんを出すのは素直すぎるね。私は、もっと別のことを考えているが言わない。
思い出のように見えて、実は現在、というのもあるぞ。
・五十嵐徹『バナナがとりもつ親族会議』(梅) いい観察をしとるねぇ。親族会議というものの、現在の位置と意味が、実によく見えてくる。この感じで描かれたバナナは、他にもある。
・高橋正人『はた日の前のばん、35歳独身のつのださんがバナナを一山200円で買って、「おみやげだ」と町田のスナックに入って行った。ぼくには、なにも言えない』(梅) コピーになってはいない。萬流だから許されるものだ。これじゃますます売れなくなっちゃうもんね。もうひとつ、
・石橋一大『ばななをたべたくてたまんないけどおかあさんがたかいからだめだってかってくれません』(梅) いつの時代のことかと思うが、石橋君は、七歳なのである。石橋家の家風に口出しをする気はない。
・田中孝治『鈴木、同じ房のバナナを食べた仲じゃないか』(梅) も、田中君が十九歳であることで納得がいく。
・菅谷充『さらばラバウル』(梅) などとは、バナナ観がちがうのだ。貴重品だった時代を知らぬ若者が多いのには、家元も驚いている。もう何がなんだかわからないけれど、古い人といっても「上には上」で、
・宮林光三『|新高《にいたか》バナナキャラメル30粒入箱を持ったことないダロ、ザマァ見ろ!(イイトコの子)』(餅) なんてのを読んでると、ついスイマセンなどと謝っちまう。宮林君は六十四歳だという。お達者で。
軽くてイージーに思えるけれど、不思議に感動的だったのが、
・宮城聰『遠足に。素手で』(梅) 妙に味わいがある。
妙に、といえば、なぜか選ばれちまうのが、このあたり。
・上松治『オマエ、バナナ食っただろ。あら、臭う? ゴメンナサイ』(梅)
同じようだが、
・榎本時雄『あなた、食後に一本お付けしましょうか。うん、たのむ』(竹) まぁ、スジは通っている。が、
・秋田良夫『我家には、中畑清のサイン入りバナナがある』(梅) とか、
・小林井秀雄『カサッ……カサカサカサッ……バナナの横ばいでした』(毒)
『おっと、何か踏んじまったが糞じゃなくてよかったぜ』(竹) あたりになると、萬心なくしては理解不能であろう。
・川原暢『バナナの房であなたの背中をたたくとジャイアント馬場に抱かれた気分になります』(梅) や、
・不破秀介『房から一本だけちぎり取る時の人買いになったような気分が好きだ』(竹) などが、意外にまともに思えるのは、どちらも「気分」というコトバを上手に使って比喩をわかりやすくしているからであろう。
|萬心《まんごころ》の昂揚に励め
諸君のダーイ好きな|下《しも》ネタも案の定、いっぱい来ましたよ。しかし、あんまり掲載しない。「むける」の「むけない」の、「なめる」の「くわえる」のと、いくら考えついても、それだけじゃ面白くもなんともない。どうせ下げるなら、
・関邦夫『バナナは、いいなァ。俺なんか八万かかった』(竹) ぐらいまでいかなくちゃ。
・船山満『あなたのバナナを食べてる写真、高く買います』(梅) や、
・木場田修治『さあ、もう一度目を閉じて食べてごらん』(梅) くらいでもいい。
いっそ、できるかぎり芸をなくして、
・前平芳久『息子をよろしく』(梅) みたいに書いてしまうと、気持がいい。
正攻法を、少し並べてみる。
・岡島典子『昔の気品をそのままに……限定販売“復刻版バナナ”』(梅)
・白井勝也『バナナとタマゴが、この立派な日本を作ったのだ! この恩を忘れてはいけない』(梅)
・星野美智子『青は待てい! 黄色は食え! 黒は好きにせい!』(梅)
・三好祐一『彼の日本での成功は、若き日のキウイ君やマンゴ君の憧れであった』(梅)
・岡田克巳『バナナ号泣! 50年ぶり兄サツマイモと劇的対面』(梅)
・加藤成二『バナナは南洋のトウフだ』(梅)
もう少し、続ける。
・津寺利嗣雄『心を野菜にして、出なおす覚悟です』(竹) は、なかなかうまい。
・滝沢晃『過去は聞かずに、メロンと呼んで』(梅) も、同巧はあったが、手短かにまとめていてよかった。
・酒井智章『お供物の王様』(梅) 酒井君は、僧侶でトクをした。
「職業でトクするシリーズとしては、これなぞいかがでございましょう」
・浅坂直人『おっ、ひと山三百円か、よしっ』 うーむ、やはり点は無理だな。この伊勢ノ海部屋の力士には(餅)をやる。
・安岡広美『ちぎってはなげ、ちぎってはなげ……|猿《あいつ》はついて来た』(梅) は、面白い。この、絵が浮かんでくる、というのは、ひとつの目安である。
・伊藤朗『お中元では貰えなかった。お歳暮では部長に送ろう』(毒) まちがっても実行せぬよう。
また、わかりにくい面白さというやつを。
・高岡誠司『ラミネートチューブになりました』(梅)
・青野智『山の上にある中大の学生は、コロがらないバナナがドあいすきです』(梅) わからない人は、わからないのをいいことにして、近所のギャルに質問したりして遊びなさい。
こっちは、古いスタイルを利用したやつ。
・大橋且明『最初は私たちも嫌いでした。でもがまんして食べるうち、大好きになり、今ではこんなにりっぱな身体になりました。パオーッ。(アフリカ象一同)』(梅) 一回しか楽しめないんだ、こういうコったやつは。
・田中保志『ほらソ連の国旗に金づちと一緒に描いてあるあれですよ、閣下』(梅) にしても同様。
・山口正明『おふたりのゴージャスな夜に気品をそえる宝石の果実バナナ』(松) のほうが、実は数段ソフィスティケートされているということに気付かれたい。この(松)は、またまた多くの反論を呼びそうだなあ。山口君、これからも頑張らなくちゃダメだよ。
出たッ、破門第二号
それはそうと、二人目の破門が出た。
・城田瑞枝『群馬の子はね、バナナをもらえば何でもするの』 である。破門じゃ破門じゃ!
・明田珠美子『そそりたつ果実』(竹) は久々のヒット。
・市毛悦子『「決して、この障子をあけてはなりません」と女は言った。ソォーッとのぞいてみると、そこにはバナナを頬張った一匹の美しい猿がいた』(梅) は、おまけとして掲載しておく。おまけついでに、
・小林井秀雄『菜のはにあいたらよろしくね』
バナナの不人気は、どうも、|安い《ヽヽ》ことにあるらしい。医師であるところの藤原清子君から、いかにバナナはすぐれた栄養果実かということについてのハガキが届いている。
何の欠点もなく、安いから好かれないなどというモノも、現代は存在する時代なのである。やっぱり、ボードリヤールなんか読み返してみようかなあと思わせた今週ではあった。
今週の宿題
どうも近所のシロという雑種犬の尻尾のフリがやけにいいなと思っていたら、私にコピーをつくってほしいということらしいじゃないか。ヤツには、一行一千万円も支払う能力はないから、私ではなく萬流の塾生に頼んでやることにした。シロの人気が高まるような、(全国の雑種がよろこぶような)キャッチフレーズをお願いする。
「『雑誌はシロ。雑種は週刊文春』というのは……」
番頭さん、もう寝なさい。目が赤くてウナギのようだよ。
「家元こそ、字を間違えてぇ」
では家元は帰るぞ。
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やあれんそうらん、私が家元の糸井重里である。
言うまいと思えど今日は寒かった。あったかい部屋で寒さについて言うのはなかなか度胸のいることではある。
「そういえば、過去のことになりますが、今年の一月頃は寒うございました。私なぞは、セーターの上にオーバーコートを着ておりましたでございます」
いやいや番頭さん、昨年の一月だって寒かったよ。私はマフラーを巻いていた。
「はい、それは寒うございました。そういう意味では、一昨年でございましたか、あれは忘れもしない一月、半袖のシャツで外出しようと思いましたが、寒くて寒くて、やはり厚着をしなおしたおぼえがございます」
いやぁ、それは寒かったね。
「お話は変りますが、今年の夏、あれは暑かったでございます」
もういい。
「去年の夏に、暑さ寒さも彼岸までというコトバを憶えまして、二度ばかり彼岸を迎えたもので、もう暑さも寒さもないユートピアが来るのではないかと思っておりましたが、やはり今年の夏も暑かったでございます」
今夜の番頭は、やけに昂揚している。
「わりばしを名刺で切る、という超能力を身につけたせいでございましょう」
フフフッ、私だってできるもんね。今年の暮は、二人であっちこっちでわりばし切ってウケようね。
「もう、日本中のわりばしを、切って切って切りまくる所存でございます」
急いで悪いが、稽古にうつる。
まず、バナナの遅着分。採用は、なし。出した本人も、既にわかっているとは思ったが報告しておく。
パリから、夫が考えたコピーを送ってきた人妻は「妻として、夫の才能を信じてついて来てよかったと思っております」と付記してきたが、老婆心ながら、「才能以外のものを信じてあげなはれ」と言っておく。
ストラスブールから国元に国際電話をかけて宿題を問いあわせる但田麻利子君、ハガキ一枚にキュウキュウとしておる苦塾生諸君には、そのことは内証にしておきなさい。
「毎週、毎週、飛行機で戻って来て週刊文春を買ってはすぐ帰るという方は、おられませんな。何故でございましょう」
昂揚してるねぇ、番頭さん。
誰もが考えた怪獣物
さて、「東京タワー」だ。
ハガキの三割は、「ゴジラが壊した」とか「モスラがまゆをつくった」というものだった。それをつまらぬとは言わぬが、みんながたまたま同じネタで書いていた、ということを知っておいてくれたまえ。しかしそれでも、残るものは残る。
・北岡一『怪獣ホイホイ』(竹) これより少し落ちるが、
・小亀俊郎『怪獣のマタタビ』 には(梅)をやる。怪獣のアイディアを「生かす」ことが重要なのである。
・上田逸夫『僕はゴジラの赤ちゃんを飼っているのですが、おもちゃを与えるのは何歳頃がよいのでしょうか』(梅)
・本間安利『「東京タワーに行ってモスラのことを口にしたら絶交だからね!!」と若い子ブリッ子の彼女が言った』(梅) ちょっと長いけど、ね。
続いて多かったのが、「おのぼりさんの東京タワー」という切り口。江戸っ子は昇らないというけれど、それがどうして自慢になるのか、よくわからない。
「家元は、お生まれが……」
うむ、そうかもしれぬな。ではいっそ、地方の時代という角度から把えた「東京タワー」を並べてみることにしよう。
・鈴木康敬『400メートル以上の超高層ビルに囲まれた東京タワーは、前橋タワーとなって静かに余生を送った』(梅)
・松浦準『東京タワーよヨコハマにおいで(横浜になんでもかんでも呼ぶ会)』(梅) ううむ、そういう考えもある。しかし一方では、
・新清子『九州の人はかしこいから塔など作りません』(梅) という人もいるから政治は難しい。
東京にある、ということを強調して書いたものとしては、
・高橋宏治『東京ディズニーランド、東京国際空港などありますが、本当に東京にあるのは東京タワーだけです』(梅) とか、
・山本信明『足の裏にも東京見物を!』(梅) などがあるが、
・山崎恵子『「今夜こそ退治してやる!」東京ドンキホーテは、東京タワーを見上げて、こぶしをふるうのでした』(梅) の、「東京ドンキホーテ」というのは感心してしまった。
「むかし、東京ビートルズというのもありましたし、東京糸井重里事務所というのもございますね」
知っとるよォ、そんなこと。
安易にババを出すな
江戸っ子とか地方出身とかのことを、めちゃめちゃに超えちまってるのがこれだった。
・梅田龍夫『俺なんかナウいじゃん。だからもう逃げるように見てきちゃった』(竹)
・北川裕行『港区の切り札』(梅) とか、
・安増久美『そんなことサンシャインの誤解です。あたし港区生まれを鼻にかけたことなんかありません』(梅) みたいに、一気にローカルにしてしまう方法も、あった。ここまでやると、シブイ人気者になるかもしれない。
「世代的ローカル」とでもいうのだろう。これなんかは、この三十五歳の人にしか思いつかないだろうなぁ。
・六城雅和『お父さんが羽田闘争に行った時、団結小屋だったんだって』(梅)
形態、形状などから発想したものにも、なかなか面白いのがあった。
・佐藤まゆみ『で、親方ぁー、セメントはいつ流すんですかい?』(梅) や、
・安宅士郎『見てると障子紙をはりたくなる』(梅) などもわかるし、
・窪田浩幸『ジャックの鉄の木』(梅) も簡潔。簡潔といえば、
・津寺利嗣雄『お塔さん』(竹) が優れている。
・佐藤進の『よくわかった。まぁ坐れ』(梅) も、なかなか味がある。「立ちっぱなし」にひっかけて書いてきたのも多かったが、これが一番だった。
・小林井秀雄(萬名)からは、比較的まともなものを選ぶ。『出るくいも大きすぎれば打たれない』(梅) 名取の小林井は、リズムの良さでトクをしている。最近塾生のコピーがやたらと長くなる傾向があるので、名取は、短くキレ良くキメて範をたれてもらいたい。
以前、「苦しい時の“もし”頼り」について教えたが、「いざとなったらババを出す」というのも教えておく。
ちょっとコピーがわかってくると、『おばぁちゃんでも使えます』とか、『おばぁちゃんは、○○と間違えた』などというのを書くようになってくる。
今回も、それが目立ちはじめている。ババを出すなとは言わないが、これはきわめて安易なやり方であることを忘れないでほしい。
では、いいのを羅列しちゃおう。
「おうっ!」
昂揚してるね、番頭さん。
・市川尚『東京タワーを塗りかえる大計画が岡本太郎氏の手で着々と進められている』(梅)
・伊岐見一敏『ここには手錠なんかも売ってます』(竹) 東京タワーの無政府的な美学を、よく表現している。
・佐藤こうせい『厳冬期の南西壁は、まだルートが、ない』(梅) 省アイディアで、大効果。
・川村武郎『これが中山律子で有名なタワーボール、で有名なえーっと、何だっけ』(梅)
・上松治『まことに高い所から僭越ではございますが……』(梅)
・望月秀城『東京で、いちばん早く雨が降るところ』(梅)
・加藤恵一『のぼる利口に、みる利口』(梅) 素直だねぇ。
・加藤順一『たっけえ〜』(梅) この二人は兄弟ではない(為念)
・小川正広『惜譲。まだお客は来ます』(梅) 「惜譲」だけのほうが面白い。
・船山満『来たる五月五日、端午の節句には、一万びきのこいのぼりを放流いたします』(竹) ホラでは、これがよかった。
・清水建司『生涯一タワー!!』(梅) 簡にして、潔。
だいたい、塾生全体のレベルがあがっているから、短くて強いものが残りやすい。するめじゃないけど、何度もおいしいのは、シンプルなものである場合が多い。
・清水美紀子『あんたに、あげる』(梅) そういわれると困るでしょ、あんなもの。これで、あらためてあの存在感が見えてくるわけ。
同じ存在感でも、
・片原泰志『バカヤロー。お前がそんなとこにボケーっとつっ立っているから、テレビ東京の試験に落ちたじゃないか。どうしてくれるんだヨ。エッ』(梅) 長いんだけどね。東京タワーの存在感と、「作者=人間」のアホらしさが、でてる。
他人が考えないことで、他人をセットクするのが、ま、一番の近道。完成度は高くないが、上田君のやつは、
・上田逸夫『「一個」じゃかるすぎる。「一本」じゃ倒れそう。数えるもんじゃなかろうが』(梅) これをもっと考えこんでいけば(竹)以上になるはず。
楽しみを発見する
ミもフタもないけど、ズバッと核心をついているのが出てくる。
・大河原康『てっぺんまでいかせろや、ねえちゃん』(竹)
かなり危険なところで勝負しているのが、
・堀田能成『高木東六です。東京タワーなしでは生きていけません』(毒) 落ちても当然なのに、生きのびたのは家元の|萬心《まんごころ》による。
まともなのも。
・速水恵介『都心に雷が落ちないのは、誰のおかげだと思ってるんだ』(梅) 良いが、イバらないで書いたほうが、この場合、もっと良い。
最後に、
・宮城聰『見のがして下さい。もう建てませんから』(梅) でしめる。
塾生ぜんぶが(毒)ねらいに走ってはいかん。走ってもよいが、休む余裕を持ってほしい。
「東京タワー」という宿題は、「気恥かしさ」とは何かを考えるよい機会であったように思う。
「全国区の古くからの人気者」というものは、何故か「気恥かしい」。これを「しっしっ」と追いはらっていては、楽しみが減るわけで、再生させて楽しむというのが萬心に通じるのである。「東京タワー」は、正面から昇ったりしても面白くないかもしれないが、話材としては「宝の山」なのだ。そのあたりを、もっと理解してくれ。
家元は、『話すために昇る』。
今週の宿題
爆発的大ヒット映画「E.T.」人気に便乗して、大量に作った「E.T.Tシャツ」が、大量に余っているらしい。ワハハ、おっと笑っちゃいけねぇ。
これ、なんとか売れないもんでしょうかねぇと、相談に来た人がいた。
この人、ケチで、値段は1500円以下にはしたくないのだそうだ。いいキャッチフレーズがつけば売れないこともないような気がするので、ひとつ、塾生諸君、難問に挑戦してみてください。
「私、それ、欲しいです」
番頭さんはスコヤカだねぇ。
では、家元は帰るぞ。
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ちょっと油断をしておると、私が家元の糸井重里である。
先日、関西方面に旅行をしてきたのだが、そこで驚くべき事実を知ったのであった。
「な、なんでございますか。まさか、関西の人々はみんな名刺でわりばしを叩き切れるとか、そういった超能力を持っているのではございませんでしょうねえ……」
番頭さん、あなたは、ちょっと他人と違った珍しい芸当を身につけたもので、それを言いふらしたくて仕方がないようだねぇ。
「いえいえ、ただ少々、自慢をしているだけでございまして。今年いっぱいでこの話題はやめにする所存でございます」
あなたも、わりあいにくどい人だ。ま、二度もドブに落ちるという快挙を成しとげた人だから仕方もないが。
「昨日なぞは、愚息と共にドブ板の修理をして一日を棒にふりましたでございます」
その話ももういいです。関西の話を続ける。あちらの方面では、萬流のことを「芽流」と呼んでおる人が多いのだよ。
「ははあ、それはまたどうして?」
わからん。とにかく、萬はなじみにくいので、「芽」を代入しているとのことだ。
「すると、おまんじゅうなどのことも、おめじゅう、と」
うむ、そうかもしれない。
「関西方面の方々に、そういう勝手なことはせぬよう、よく注意しておきますです」
そうしてください、ぜひ、ね。
それはそうと、近頃は、塾生諸君も、だいぶんいらだってきておるな。
「掲載されぬ不満が、ウラミになって当方にぶつけられておりますです」
力か運か、どちらかがないから没になる。これは大自然の法則なのである。怒って花実が咲くものならば、乞食も明日は大富豪じゃ。点もひとつのハゲミではあるが、ハゲミのみを目的にするのは萬流の道に外れる。
「まあ、運動会のパン食い競走でも、勝った負けたでウラミを買うこともございますから」
とにかく、せこいことを言わずに、楽しく稽古をしたいものである。
「共感」を「作る」
さて、今週のテーマは、「女」である。
はっきり言って、これは難しい。難しいがゆえに、大穴が出ることもあるわけだ。
「い、家元。大穴だなどと……フッフ」
番頭はほうっておいて続ける。
今週のテーマの「女」には、読む人に、どう思って欲しいか、何をしてもらいたいのかという目的が明確でないという難しさがあるのだ。
「女を売るわけではございませんしねぇ」
これは、一般の広告コピーでいうと「ファッション」や「化粧品」のコピーづくりと似ている。ある種の共感を生みだすことが、そのまま広告になっている、という独自のジャンルなのである。
かつて家元の書いた『君に、クラクラ』などというコピーもそんな一例ではあったわけだ。「女」についてのアフォリズムを宿題にしたつもりはないけれど、うまく出来てさえいればそれでもかまわない。「女」とは何か? という質問をしたのではないが、その答えを考えて書いてきても、やはりかまわない。
しかし、できることならば、「女」が自分で思わずつぶやいてみたくなるような、「女」を輝かせるようなワン・コピーがつくってもらえたらよかった。
つまり、「女」という「企業」の「スローガン」として考えてくれたらよかったんじゃないかと想うのである、家元は。やはり、家元がかつてパルコ用につくったコピーだけれど『僕の君は、世界一』なんて感じのがあったらうれしかったけどね。ま、無理か。
今週は講義が長かったが、いよいよ塾生諸君の作品を見ていくことにする。名取は、
・小林井秀雄『ちょっと待てよ。女が神だというところから始めなければ』と書いてきたが、惜しい! 「始め」て、どう書くのだ? いつもの調子の『とび出すエロ本には、君っ……君の力が必要なんだ』(梅) のほうが良かった。毎度のことながら小林井の「テーマ」を反射させる「道具だて(=今回はとび出すエロ本)」の新鮮さには感心させられる。わりあいと多かったのは、男の「やりたい」対象として見るというもの。週刊文春の品格を落として恐縮だが、いちばんロコツなのが、
・児島道郎『おめこ様』(梅) ある意味では民俗学的雰囲気があるので、あえて選んだ。
・丸山公忠『女は、女に不自由しない分だけ、男よりえらい!』(梅)
・伊藤直史『掃いて捨てる程いるのがオンナなら私はゴミ箱になりたい』(梅) なども、同傾向。
この類いの発想でありながら同巧多数で没になったものとしては、『凹』、『穴があったら入りたい』などがある。
・宮崎英一郎『毎朝、新聞受けに入ってればなぁ』(梅)
・菅原健一『シュールレアリスムに徹して観察すると、僕の好きなものはみんな女に見える』(梅) なんかは、憎めなくていい。
短くスッキリ、ね
多いといえば、キリもなく多かったのが「産む」という視点。本人にしてみれば自分だけの発想なのだろうが、「産む」は、「女」の定義みたいなもの。よほどうまい言い方を考えないと面白くならない。だが、それでも残るのはある。
・志水健二『アンドレ・ザ・ジャイアントは私が生んだ』(梅)
・冨士栄秀也『コウノトリに家を教えたのは、お母さんなんだ』(梅)
・浅沼利郎『松田君のお母さんは、山崎君のお母さん』(梅) なかなかコワイ発想である。
全部を総合しちまって、うまいのを書いたのが、
・石橋昭彦『人類の黒幕』(松) であった。
それでは、いい味のものを、ずらずらっと並べる。よく見習うように。
・明田珠美子『おばあちゃんは、好きでもない人と、60年もつれそっています』(梅)
・矢ヶ崎嘉毅『正確な女はカレンダーの役目もします』(梅)
・伊賀洋昭『母から生まれ、妻をめとり、娘三人。女子高勤続二十五年。それでもわかりません』(梅) すごいリアリティ。
・甲藤孝裕『ぼよよーん』(梅)
・荒井汎『掃除機や、洗濯機や炊飯器は、全てコレから進化したものである』(竹)
・田代英明『意外なからくり』(竹) 竹ねらい、と本人が書いている通りになってしまったぜ。
・安藤吉孝『生きる資本主義』(松) うまい! 使える。
・山口正明『女さえ全滅すれば出版界は岩波の天下だ』(梅)
・荒川邦夫『大小をしゃがんだ後で考える』(梅) 同巧あり。
・川端美樹『大事にしてね』(梅)
・田村セツコ『うっふん』(梅) 同巧あり。
・中村卓『かしこ』(梅)。 他に、なかったな。
・後藤晃『ほけんがかり』(梅)
・口隆男『おかえりなさい』(梅)
・渡辺匡『ようできてまんなぁ』(梅) ……などはどれも、短くてすっきりキマッている。
長々と書くより、こっちのほうが難しいのだ。セフティバントのようなものだと思いたまえ。
ようし、今週は、やたらと数多く掲載してやるゾォ!
・吉浦徹『どんなイイ女でも神風さんなら口説けそうな気がする』(毒)
・入江一郎『山男は趣味だが、|海女《あま》は職業である』(梅)
・黒木悟『女がアホやから、俺がモテへん』(梅)
・窪田真理『女と言っても、外人モデルばかりではないのです』(梅)
・森田辰巳『女の顔は白紙の履歴書』(梅)
・生田千春『ラーマと全温度チアーのCMにかかせない存在』(竹)
・加藤元茂『燃える女は火曜日に、燃えない女は金曜日に出して下さい』(梅)
・筑場敬子『女上手は生き上手』(梅)
・新屋健志『ええい、なんでそんなにまがりくねっておるのだ』(梅)
・松本音博『そのむかし太陽であった北風』(梅)
・伊藤修一『天使豹変す』(梅)
・斉藤泰徳『どこへでも平気で自転車を置いちゃう人のことでしょう?』(梅) ああ読みにくいだろうなぁ、こんだけ並べると。
今週は51本載せたゾ
でも続けて行っちゃうぞ。
・新見光夫『家元へのお歳暮はこれにしよう』(毒) 番頭さんの分も、これ、でいいですって。
・岡田浩司『ギャル3 ババ7』(梅)
・若山朝子『人間猫』(梅)
・万城目充『優子、なんだその態度は! パチン。なにすんのよっ、バシ! バシ!! グスン、僕のはほんの冗談だったのに』(梅)
・万城目政枝『ホラ、おっぱい』(梅) この二人は孫と祖母の関係らしい。
ふーッ、ひと休み。
・浅井『女を絶やしたらあかん。肩がふれているだけでいい』(梅) 浅井のおじいちゃん、元気そうですね。
・佐藤康生『僕はもう何も彼女にあげるものがない。しかし、彼女にはまだ山ほどある』(梅)
・小林牧朗『ナイフで切ったように、股が割れた』(毒)
・津寺利嗣雄『母はやさしかったが、姉はこわかった。これでチャラだ』(毒) 津寺君は、あと半点で名取だ。わざと今週は(毒)にしたぞ。
・小鳥居布佐子『おんなもすけべしたい』(竹)
・門脇直樹『ホンモノはカネではかえません』(松) なにを青臭い、と思う人は、このコピーの読みが浅い。勉強が足らん。ところで、
・田中孝治『そういうことは、川上宗薫先生に聞いて下さい』(餅) というのがあったが、当の先生は、
・川上宗薫『糸井、出る幕あんのかよう。宗薫』 という|わけのわからんもの《ヽヽヽヽヽヽヽヽヽ》を送ってきたので、そのまま掲げておく。
今週の宿題
家元も大好きな「ゲートボール」。これを広く国民にすすめるキャッチフレーズをくださいまし。
今回は特別に、「関西ゲートボールクラブ」(家元がオリジナルで作った)のTシャツを一名に進呈する。
「いちまい、でございますかぁ」
力より運だな、これは……。
では、家元は帰るぞ。
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ちわーッす、私が家元の糸井重里である。
先般の「御萬の日」には、出前のストリップやら、毒だみの花束、切り干し大根の煮つけ、カラオケの歌詞カード付き割り箸セット等々、有難うよ。
「私、最近、モテてモテて困っておりますです。つい今しがたも、店に色紙を飾りたい、とかいう女子大生が訪問してまいりまして、『忍耐そして妻を愛せよ』と、したためてまいった次第でございます」
しかし番頭さん、女子大生が|店《ヽ》というのは、どういうものなのだろう。
「そういうヘンな商売ではない、と存じます」
|そういう《ヽヽヽヽ》ったって、何も言っちゃいないよ。女子大生といえば、店というより学校だろう。
「フッフッフ。家元ォ。|妬《や》いているのでございますね。家元妬くほど番頭モテもせず、というではありませんか。フッフッフッフ……。しかし、モテるなぁ、ホントに、この頃。フフフ」
今週も番頭が異様な熱気をもっているようなので、早いとこ稽古に入ることにする。
「いえ、もう少し雑談をして、それからお稽古に」
いや、稽古にうつる。
今回は新方式で採点
雑種犬シロの人気を高めるコピーというのが課題であった。
今週は、相好をくずして稽古ができる。塾生諸君の作品が、総じて、出来が良いからである。
常連も、見学者も、休みがちの塾生も、みんな良かった。
こう言っちゃミもフタもないが、極端なことを言うと、落とすのがない。つまらないものでも、それなりの味わいがあるのである。
「生類あわれみの令」の影響はいまでも町民の深層に残っているのであろうか。どのコピーも、雑種のシロを応援する気分がある。ヒネクレた言い方をしているのも、ブラックなやつもあったが、おおむね「シロを嫌っていない」というところでは、一致しているのだ。
こういう週は、せっかくだからキビシクする。
いつもだと「萬流」ならではの選び方で、「広告」としては適当でないものまで同じようにホメているが、今回にかぎっては「そのコピーが、広告になっているか否か」について○×△で採点する。松・竹・梅・毒の他に、本来の「コピー」の力が問われるわけだ。いずれ、|遠い《ヽヽ》将来は、毒以外についてはすべて○になることが望ましい。
まずは、畜犬業の、
・石川越子『血統書付のペットを売っているわが家の飼犬は雑種です』(梅) ○。事実で訴求するという正攻法ではあった。
シロの庶民性を、いろんな角度から書いたものが多かったのだが、やはり「犬を読む」ことに優れたものが残る。
・吉沢岩男『彼のいいところは、ものを良く噛んで食べるところです』(梅) △。
・橋本光司『この前のキャラメル、まだ覚えてたのか』(梅) △。
・川村敬一『一吠えした後の一パイ、庶民の喜びっつうのかな』(梅) △。
・佐藤良明『持ち帰った給食のパンをいつも残さずたべたっけ』(梅) △。
・大庭範子『庶犬』(梅) ○。
・高木信子・丹治亘博『無印良犬』(梅) ○。ただし、同巧多数。抽選で、この二人にした。
・加野典子『ふっふ、無頼の徒さ』(梅) ○。
・井口順子『せめてお名前を……シロです』(梅) ○。
・三好祐一『ヘイ! ねぇちゃん、パンツが見えてるぜ』(梅) ×。
・中西昌人『腹が減るなら、ついてきな』(梅) ○。これはあくまでも、シロ自身のセリフと考えないとつまらない。
・岩本なおみ『ダンボールに生まれ、ダンボールに死ぬ一生』(梅) △。
・皆川則之『「小銭じゃ動かん」と言いながら、シロは片目をつぶった』(梅) △。
・加藤秀広『何に生まれるかより、どう生きるかだと思うね』(梅) ○。
・北川和則『エヘヘヘ、どうもどうも』(梅) ×。同巧あり。
・手塚功『うれしいシロです』(梅) ○。省エネで得点。
・渡辺匡『シロが、脱いだ』(毒) ○。そうだ。脱げば人気があがるのだ、たぶん。
・小林井秀雄『遠吠えするかわりに、でけぇ声で笑っていたら追い出されちゃった』(竹) ×。名取は疲れることを知らない。
・津寺利嗣雄『生きる』(梅) ○。あっ、津寺が名取になっちまった。名取第二号の津寺にも、家元の「里」を与えて、津寺利嗣雄里という萬名を授ける。喜びなさい。
・高橋一裕『帰るか夕日だ』(松) ○。「自由犬」だとか「庶民犬」だとか「悪友犬」「渡世犬」などというイメージが、ここに全部入っている。
こうして読んでいくと、「フーテンの寅さん」の人気の秘密がわかるような気がしてくる。○×△印については、要するに、「エッセイ」と「コピー」の違いを示したものだと思ってくれればよいわけで、(松)は、好エッセイであり良コピーであるということになる。あくまでも、広告の課題は「人気を高める」という依頼なのだから、それを尊重してほしいことはほしい。
ポジショニング
雑種は「ハーフ」である、という発想も多かったが、これだけが残った。
・関野正顯『君ンちの雑種と僕ンちの雑種をかけあわせて、|複雑《ヽヽ》にしてみないか』(梅) △ 。
・伊藤慶幸『ホリが深いと思ったら、混血なんだね、シロは』(梅) △。
さて、続いて「黒い笑い」を数点。正直に告白すると、これらを掲載はするが、家元は、あまり好きではない。これは単なる家元の好みの問題である。
・磯部恭広『白い非常食』(梅) ×。
・赤川祥夫『おっと、また|轢《ひ》いてしまったィ。今日は、白犬の異常発生かなァ』(梅) ×。
・小林牧朗『タイヤ血だらけ、シロハエだらけ』(梅) ×。他にも、多数「非常食」という発想のものはあった。現役の保健所勤務の狂犬病予防員もいて、
・中田克平『つぶす手間は、どれでもいっしょヨ』(餅) × を送ってきた。この手の中では、
・川村敬一『国立の医学部へ行った奴もいましたよ』(竹) △ が、すぐれていたように思う。人間の側にも多少の「痛み」がないと、ちょっとやりきれないのだ。川村は二本入った。
それでは、雑種の「立場」をテーマにしたものを見てみよう。いわゆる「ポジショニング」という考え方で、商品の位置を確かめることを、プロもよくする。
・岩井裕之『飼いやすい。捨てやすい』(梅) △。
・船山満『表情がわれたら雑種はつとまらん』(竹) △。
・飯島美紀子『「うちじゃ飼えないって言ったでしょ! パパは犬がキライなのよ!」ってママが。シロはパパのこと好きなのに……』(梅) ○。これは、『だけど、シロはパパが好きなんだ』と短くできる。
・門田陽『ぼ、ぼくぅ大きくなったら土佐犬になりたいと思います。パチパチパチ』(梅) ○。
・(不明・奈良の人らしい)『あ、犬が庭を歩いてる。そこのいぬ〜。ママにしかられるよ〜』(梅) △。
・五島忍『朝帰りのおみやげに』(梅) △。よく出来てはいる。
・山口正明『ああ〜だめっ。だめですったら。シロが起きますよ』(毒) △。何をやってるんだ、山口の近所では。
続いて、塾生の大好きな「そういうこと」関係。
・川村裕之『よく見ろ、|くちべに《ヽヽヽヽ》じゃあねーぞ!』(梅) ×。
・酒井真一『春先に賭けてます』(梅) △。
・宮崎英一郎『まかり間違って正常位を発見しそうな……雑種はそんな可能性を秘めています』(梅) △。
・藤原保夫『性的先進犬』(竹)○。ちょっと甘いかな?
・宮崎智勝『マルチーズを抱いた時の彼の眼は、まるで野獣のようだった』(竹) △。
・上松治『シロは上方のりおの腰マネが得意です』(梅) △。
このへんまでは、ふつうの「そういうこと」だが、こういうのもあった。
・川崎稔『シロ、いい名だ。今夜、どうかな』(毒) ×。川崎というコトバには、いずれにせよ何か怪しいものがあるな。
血統にテーマをもっていったコピーも、ずいぶんあった。
・佐藤年信『月に向って“息子をよろしく”と吠えている父に“母さんは?”なんて言えるでしょうか』(梅) △ は、ちょっとコリすぎかな。
・高橋滋『ふしだらな母は、血統書を持っている』(梅) △。
・高雄啓子『「ボーイ ミーツ ガール……ただ、それだけの話だよ」ママはそう言って小さくうなった』(竹) ○。
・柿沼徳治『シロはパンダを産む夢を抱いて、クロに嫁いだ』(梅) ○。
破門が解けた!
破門した城田は、いけしゃあしゃあと、「清らか」なのを送ってきた。
・城田瑞枝『みんな、おんなじ、神様の子ども』(梅) ○。破門が解けてしまったではないか。
では、その他のなかから、目立ったコピーを。
・花岡邦彦『マユ毛を書いたら、凛々しくなった』(梅) ○。
・小野寺裕『おかげさまで電柱はこんなに大きくなりました』(梅) △。小林井も同巧で出してきたが、一般塾生を優先した。参考までに、小林井の落ちたのから一点紹介しておく。
・『俺、犬のくせに糞踏んだことがあるんだぜ』。下ネタの王者だな!
最後に、よくわからんが、なんだかいいってやつ。女子短大生という職業も薬味になっているのかもしれぬが、
・河口洋乃『お前の尻尾が行くなという』(竹) △。とにかく、なんとなく、いろんなことを想像させる。
今週は、松竹梅毒プラス○×△で点をつけたが、勉強になったろうか。
セミプロの作には、やたらと○が多いのだが、それが梅や毒にならぬことが問題である。
いずれ、そのあたりのこともわかってくるとは思うのだが、「いいコピー」を出してもちっとも掲載されないと嘆いている「自信家」諸君、タメになったろう。
今週の宿題
あけましておめでとう、とか、謹賀新年には、もう飽きた。かといって、エトにちなんで『今年もがんばりまチュウ』なぞはいかにも面白くない。
今週は、「来年の年賀状に書くコトバ」を宿題にする。
家元は、今年は『もち』と大書して済ませてしまった。番頭さんはどうかね。
「やはり『忍耐そして妻を愛せよ新年』でございましょうか」
いやぁ、深すぎて……。
「では、『松竹梅酒』では?」
イージーだねぇ。もう少し考えるようにね。
「家元、まだ妬いてるんでございますか」
では、家元は帰るぞ。
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ケホン、ケホケホゴホン、うー、私が家元の糸井重里である。
追いだしたはずの風邪が、再び挑戦してきよって、のどのあたりが戦場になっておるのだ。
懲りもせずに大阪京都などを訪れたのが悪かった。関東の菌は退治したが、関西のエゲツナイ菌がバトンタッチしたのだ。
バイ菌の世界では、東も西も実に仲が良い。これは人間も見習うべきであろう。もうちょっとすると私は名古屋に行く予定になっておるのだが、あの地方のカゼはまた別なのであろうか。
巷では「念力でエイズを治した」とさえ噂される家元ではある。七色の風邪をひきまくって冬の夜空にハタメイてやろうと思っているのだ。
「家元、今週はずいぶんオツムのかげんがお悪いようでございますね」
いやいや番頭さん、手ぶらの御見舞をありがとう。ひまなんだったら、この電動回転ベッドの見学でもしていかないかい。
「いやぁ、珍しいですな。ここが、こんなふうになっているのでございますね」
うん、このへんは、フフ、こんなふうに。
「な、なんと、まぁ、こんなぐあいになっているとは?!」
すごいものだろう、ンでこれなんか、こんなになってるんだから、あんな時なんてこんなんなっちゃうんだぞォ。
「うおう、こんなにィ!」
コトバだけでふざけるのはやめよう。ハガキの山だけが目の前にあり、カゼひきの家元と、単なる健康体の番頭がいる。他に何があるわけでもない。
「気をとりなおして、お稽古をいたしましょうね」
ゴホンゴホン、ガー、ペッ。
高齢塾生が頑張る
ともかく「E.T.Tシャツ」を、なんとか売る。これがテーマであった。
面白いなぁ、と思ったのは、「どうしてE.T.のTシャツを安売りしなきゃならないんでしょうか」という疑問がなかったことであった。ひとりくらいはいらっしゃると読んでいたんすけどねぇ。
「ということは、現時点でE.T.のマークのついたTシャツを着るというのは、みんなが恥ずかしいと思っていて誰も着ていない……」
いやいや、そう簡単に捨てられないのがTシャツというものだ。他人に見られたら何と言い訳をしようかなどと思いながら、家の中で着たりしているにちがいないのだよ、みんな。
「じゃ、仮に、私の前でE.T.のTシャツを着ている女性がいたとしたら、その方は私を他人と思っていない……」
あるいは、人間と思ってない、ということかもしれないな。
「そういえば、私の女房、パジャマがわりにE.T.Tシャツを着とりますです。あ、いや、あれは女房じゃなかったかな」
ともかく、ハガキを見よう。
・藤谷信夫『経帷子ではもう古い』(梅) この『もう古い』というのが効いてるね。|香《や》具|師《し》やなんかのセンスに近いものがある。このやり方だと、白黒テレビなんかでも『絵のないラジオで我慢をするかい?』なんて言えちゃうわけだ。とぼけて売るのは、さすが六十一歳だね。
高齢の塾生が、今週は頑張っておる。
・金田茂夫『そいつが今脱いだヤツわしが|買《こ》うたる』(梅) よく通信販売などにある「匂いつき」の発想ね。ほんとにエッチな六十二歳ではあった。逆に、中学一年生は、同じようなことをまったく逆に言ってきた。
・木下愛津子『まだサラよ』(梅) このコもエッチね。
番頭さん、同巧多数ってやつを発表しておくれ。
「ハイッ、まずは……、
・太田清子『いいティーシャツです』といったダジャレものが60〜70通ございました」
特別にいいダジャレはなかったね。
「ハイ」
それから、どんなのが多かった?
「パートがくるから、いまのうちに買っておこうという発想で、やはり50通ほど」
ああ、それも多かった。なかでは、
・柴田道子『今なら、・続・新、三枚のワッペンがついてます』(梅) というのがよかったな。
着ている人がひき立つ、というのも多かったろう。
「ハイ、48、49、50、51、52、53、54枚ございました。これは、なかなかのものがございましたね」
・三好祐一『面接にコレを着てきたら、私は迷わず採りますよ』(梅) 面接という季節ネタとの組み合わせがよかった。似た発想を、こんなふうにすることもできる。
・不破秀介『ヤクザの兄が申しますには、「E.T.Tシャツ着た奴だけは殴る気がしねぇ」そうでございます』(梅) 要するに、みんながみんなE.T.なんかは恥ずかしいと思っているいま、これを着ている人は「大物」に見えるのだね。これを意識的にやると、
・岡田浩典『憎めないひとになる』(梅) や、
・渡部一彦『親和力』(梅) という売り文句になるわけだ。
・ほりきかずこ『ワイシャツの下にすけて見えるE.T.の文字が、あなたを噂の人にしてくれる』(梅) や、
・久野慎太郎『ペアルックなら、もう、お二人の噂でもちきり』(梅) なども同様の視点。
・島田昌夫『今、着せれば、迷子になってもすぐわかる』(梅) と、
・大平俊明『街に出ればアウトロー気分』(梅) も残しとこうか。
同巧を避けるには
「他に多かったものといえば、下着にする、とか、使い道を変える。それに、ど根性ガエルもの(平面ガエルという、マンガの発想)。似た人に売る、洗濯すれば落ちる、などでございますね」
同巧多数の整理をしていても、あまり面白くないなぁ。
「塾生への親切として、やってはみました」
では、再びよいものを選んでいこう。
・岡部敦子『当直の夜、白衣の下に着るとあたたかですよ』(梅) この、あまりに個人的なリアリティがよい。岡部君は看護婦である。
・宮城聡『いつまでも君のコロモに』(梅) も、なかなかプロッぽい。同じく、うまくキマったのが、
・明田珠美子『そっとかくまって』(梅)
ちっとも(竹)が出ないとお嘆きの貴兄に、
・御子柴丈志『父ちゃんの子供じぶんにゃ何でも着たぞ!!』(竹) と、
・江原伸行『E.T.ブームは私たちひとりひとりの責任です』(竹) を贈る。
御子柴君の勢い、江原君の渋さ、を味わってくれたまえ。
・佐藤一夫『裏返して着れば、ほら、君も|T《ヽ》塚|ヨ《ヽ》ットスクール生』(梅) なるほど。
・菅谷充『オホーツクの貢物―根室漁協推薦』(梅) すがや君、本業のマンガも好調だねぇ。
・柿沼徳治『去年の松茸? いえいえ、頂戴します。おい、お返しにあれを』(梅) 前半を、簡潔にする工夫があると、もっとよかった。
・田口健司『今、二枚以上お買い上げの方に、E.T.の交尾中の写真をさし上げています』(毒) そんなもん、要るか!?
・伊岐見一敏『三千円で買った奴に、自慢しようぜ』(梅) いるんだよ、こういう人が。
・平野妙子『行きがかり上一枚持っている私は、この宿題がでた時から姉に笑われ続けた』(梅) コピーにはなってないけど、おかしかった。
小林井秀雄『これがくそみそだ』(毒) 今回は、この程度。
・秋葉武郎『カリアゲ君 三歩アルイタラ 二歩サガッテマスカ』(梅) 『三歩アルイテ二歩サガレ』でよいのではないか。
・堀田能成『そういえば、地下室の姉が着ていました』(梅) は怖い。
・堀井和正『「人の噂も七十五日」と兄はジョーズのTシャツを着て言った』(梅) この二点が、どことなく似てんのがおもしろかったわ。
実用的なのが、
・三谷行夫『エデンの東Tシャツ 二○○○円。卒業Tシャツ 一八○○円。E.T.Tシャツ 一五〇〇円』(梅) というもの。
実用的に見えて実用的でないのが、
・竹本健三『葬式の日に、明るいコーディネート。指の図の下に○○家と書いて御使用ください』(梅) ホントにやったらオカシイけどね。
・カネガエテツロウ『大島渚だって、まだアレ着てんだぜ』(毒) 大島サンのアレは、仕事の都合で着てるんだから、そーゆーこと言うんじゃありませんッ。
変に正しくておかしいのが、
・小林幸弘『お金がなくて「自転車」まで手をだせなかった、という私の決断はやはり正しかったようだ』(毒) 手をだせなかったことの、どこが決断なんだ。
でも、こういうことっていっぱいあるんだよね。ぶらさがり健康器とか、深海鮫エキスとか、カルチェサントスの時計とかさ。
ひらきなおってるのが、
・川原暢『あの程度の映画に感激したあなたに、この程度のTシャツを』(梅) ビートたけし風というべきか。
もう、全然まったくわけがわからないのだが、
・森永浩一郎『わぁ〜ん! 俺は無罪だぁ!!』(困) というのがある。なんだこりゃ?
・冨澤淳『今、君の肌に贈る。じっくり寝かせた一年物E.T.Tシャツ』(梅) は、さすが焼鳥屋さんの発想。
・高山普慶『クシャミ3回、シャツ1枚』(梅) も、さすが薬屋さんの発想。
宇宙規模の発想を!
では、今週唯ひとつの(松)をショーカイするぜ。
・山田丹生『武装したE.T.に出くわしたら身の潔白を証明できますか』(松) これはスゴイ。ついでに、林真理子Tシャツも着ておいたほうがいいなどと言おうとした馬鹿者も近所にいたが、そんなことを言うやつは番頭が許さないそうである。
「許しません。ドブに落としてやりますです」
と、今週は、これでおしまい。
なんかアッケなかったと思うであろう。そうだ。アッケなかった。
何故ならば、今回は、似たものが多すぎたこと、それと、発想が全体に小粒だったことなどが特徴であった。
やりやすそうな宿題のほうが、やりにくいものなのである。
やっぱり、やりにくそうな商品が課題になっていたほうが、コピーが生まれるまでにマサツ感があって飛躍しやすいようだ。家元が風邪をひいていたことも何らかの影響をあたえているかもしれない。
今週の宿題
むかしながらの、あの、コロッケのコピーが宿題。いま風のカニコロッケだの、クリームコロッケだのではなく、ただのコロッケに限る。
「私、それ、かなり好物でございます。コロッケなくして日本の現在はございませんでしたし、コロッケなしにメンチカツの登場もありませんでございましたし……」
番頭さんも、風邪をひかないようにね。塾生諸君も、風邪などひかぬように。
では、家元は帰るぞ。
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そうでしょッ、私が家元の糸井重里である。
ようかんと、墓石と、「2001年宇宙の旅」という映画に登場するモノは似ている。
「突然、何をおっしゃるのでございますか、家元」
う、番頭さんかい。あなたは、この「2001年宇宙の旅」という映画を見ていないんだっけね。
「はい、|畏《おそ》れながら……」
だから、ここで言う「2001年宇宙の旅」に登場するモノ、というのも知らないはずだ。
「も少し説明をしていただきませんと」
だから、ようかんや墓石に似たものなのだ。
「わ、わかりました」
故・三遊亭円生と埴谷雄高は似ている。
「その、ハニヤさんという方は、どんな方なのか……」
つまり、故・三遊亭円生に似た人なのです。
「なるほど……」
さらに、東ケニアに棲む野生動物「コニャニスカン」は真言宗の仏壇によく似ている。
「これは、皆目、見当がつきません」
さもあらん、私にもわからないのだからな。
「家元、今週は、何を教えようとしてこのようなお話をなさっておられるのでございますか」
このような話を聞いていると、どういうわけか「ようかんが食べたくなる」という人が、必ずいるということなのである。これが、謎と神秘に満ちた「萬流コピー奥義」のひとつなので、ここにそれとなく伝授しておこうと思ったのだ。
「奥、過ぎやしませんでございましょうか」
よいのだ。こういう、わけもわからんほど奥深いことを、私もたまには言ってみたかったのである。
「じゃお稽古しながら、ようかんでもいただきましょうか」
うむ、望むところである。
今週は出来がよいゾ
さて、宿題は「ゲートボール」であった。
いま、私の手元に「ゲートボール入門」という本があるのだが、出版社名は書かない。自分の不親切さを楽しむだけのゆとりが、いまの私にはあるからである。
この本のなかには、「体験記」がある。この「体験記」のタイトルが、もう、あきれるほど今回の「模範コピー」になっちまっているので驚くのだ。
『生命のあるかぎり、やり続けたい』
『入梅どきになると出る腰痛が治った』
『中年の体に戻ったと言われて』
『物事の判断力がよみがえった』
『夫婦和合に役立つゲートボール』
『兄弟よりも親しい友人が十人以上も』
等々、(梅)や(竹)になりそうなコピーがふんだんに並んでいる。
さすが、体験に裏打ちされたコピーは強い。これらに伍してゆくには萬流塾生諸君もちょっと苦戦するかもしれない。
では、萬流コピー塾の作品はどうか。
・熊野雅紀『うちのおじいちゃんは、この頃、なにかというと“ないす”とか“どんまい”とかいいます』(竹) なんだ、うまいじゃないか。
・箟雅明『土曜日の朝、ぼくはあの人たちのカチンで目がさめる』(梅) あの人たち、という愛憎なかばする表現が効果的である。
・米川民佳子『アイコ76歳』(梅) ないすっ!
・松村典子『おシゲちゃん、かわったのは苗字だけなんだね』(梅) ないすないす。
さすがは私の塾生たちじゃ。
さらに、探してみる。
・大塚清夫『日本には、村の数だけアテネがある』(梅)
・上田逸夫『これにうつつをぬかして親の死に目にあえなかったやつはいない』(竹)
・冨士栄秀也『飽きるか、死ぬか』(松) なんて、みんなうまいんだ。
しかし、ここで読者は気付くはずだ。塾生たちの「ゲートボール」に対するクールな視線に。最初に並べた「体験記」の見出しコピーが、「入信後」の視点で書かれていたのに対して、塾生たちのアプローチは、すべて異教徒の視点からのものばかりなのである。
もう少し続ける。
・口隆男『息子の嫁と|門玉《もんたま》したい』(毒) バカッ!
・稲葉稔『スポーツの後に』(梅) いいじゃない。
・中新田育子『オデンのタネには欠かせませんっ!』(毒) 実に(毒)らしい(毒)だったな。
・宮崎滋『ぱこーん』(梅)
・隈田正樹『怒濤の後片付け』(梅) よくわからんが、わかる。
・田尻典夫『茶色い歓声』(梅)
・秋葉武郎『わしらのたくらみ』(松) 渋味、深味があって、印象に残る名コピーであった。このまま大胆なコピーとして実用にも使える。要するに、老人を「笑う」だけでは、まだ若い! のである。大友克洋の名劇画「童夢」を|髣髴《ほうふつ》とさせるキャッチフレーズであった。すごい。しかも、これは、「体験者」には絶対に書けない。秋葉君は期待の新星である(可能性もある)。
・橋本光司『土踏まずの快楽』(梅) これは、「知ってる感じ」で入った。
・山下洋輔『ゲーテベーレと呼んでけれい!』(梅) 家元は、これには大笑いした。かつて、こういう“江戸弁”という喋り方をしてピアニストの山下洋輔さんたちと遊んでいたことがあったからだ。そして名前を見たら、山下洋輔(職業|江戸っ子《エデツケ》)とあった。不覚であった。家元、これを恥じて山下君を「仁王」に任命する。
「家元、またそんな新しいものを……」
だって、塾の前に「仁王」がいたらカッコイーじゃないか。「萬慶作」とか言っちゃってさ。
街の声を採集したら
続ける。
津寺利嗣雄里『江戸最末期に生まれたこのスポーツは、当時“ええじゃないか運動”と呼ばれていた』(毒) 新名取は、好調とは言えないが、まあなんとか及第。小林井名取は、今回絶不調につき座敷牢に閉じこめた。
・前田雅治『公式戦においては、「じじい、くたばれ」というヤジは禁止されました』(毒)
・高橋一裕『タマと笑えばタン切れる』(竹) 効果を明確に出しているところがよい。
・川村敬一『家の留守番が一番いやじゃ』(竹) これは創作ではなく、街の声を採集したものらしい。この手は、おおいに用いてよい。
・今出公志『昼下りの上手』(梅) よくあるダジャレものから拾った。
今回は、門や玉、棒、などにひっかけたダジャレが多かったが、たいしたものはない。
・大橋且明『ボールを打つ。また一つ煩悩が消えてゆく』(梅) このあたりは、広告を意識しておるな。
では、その類いを。
・早来はるこ『思索球』(梅)
・中島従道『エキサイティングリーグ』(梅)
・野島嘉人『槌音高く』(梅)
・安増久美『シューズがお揃いになったらもう恋』(梅)
・宮林光三『野外鹿鳴館』(梅) ちょっと誇大広告かなとも思うが、まぁ。
・許斐真也『ぜっけんが、なうい』(梅)
・佐藤達哉『新しいおさななじみができそうだ』(梅)
・小澤航『彼女はG.B.焼け』(梅)
・石川正尚『いきがひ』(梅)
・山本久美子『テニスコートの石ころよりゲートコートの花となれ』(梅)
こんなところでござんしょうかねぇ。
じゃ、また毛色の変ったのを。
・小林茂樹『ゲートボールで、おじいちゃんの非行が直った』(梅)
もっとすごいのを。
・楠本明彦『ボールがゲートを通過するたびに、「旅順陥落!」「上海占領!」、「真珠湾大破!」と叫びながら、夕闇の中、その老人はひとり練習に励んでいた』(梅) ねっ、こわいでしょ。この、もっと強いやつ。怖いよ。
・河野良武『日やけした俳人は二人も大陸で殺した彼』(梅) こんなのをマジメくさった先生から言われたらやだろうなと思うけど、ねぇ……。十八歳なんだよナ。
では、明るく。
・坂章一『婆さんや、お昼はハンバーガーにしよう』(梅)
・渡辺康二『おぢいさんは公園へゲートボールに。おばあさんは空地へゲートボールに行きました』(梅)
・中田克平『今日は、せんべい五枚も握ったぜ』(梅)
・宇川拓水『なあ、ばあさんや。もし、ワシがチャンプになったらどうするね?』……あ、やめた。ま、いいや、(梅)だ。
・榎吉平之助『ローバの休日』(梅)
以上、平和路線であった。
七十歳という、そっちの立場の塾生からも来ている。
・山本信三郎『はい、孫は嫁に返しました』(梅) なるほどね。
これを、逆の視線でとらえると、こうなるのだろう。
・室橋雅彦『ウチのジッチャン笑えるんだね』(竹)
場所のイメージを、音でとらえてみると、こうなる。
・佐藤信正『木の響き、人の声』(梅)
ところで、話は変るが、千葉県立|匝瑳《そうさ》高校では、立派な国語教師のイキなはからいでクラスの黒板に「今週の宿題」が書かれている由。一方では、就職試験の面接で「尊敬する人物は?」と聞かれ、即座に家元の名をあげ|諭《さと》されてしまったという不愉快な話題もあった。
名取は涙で書け!
さっき座敷牢に入れた小林井名取が、涙でコピーを書いている。
小林井秀雄『夏を身にまとったおばぁさん』(梅) やればやれるじゃないか。
・普川宏『飽きた方には地雷もあります』(梅) 悪いなぁ。
・井上嗣実『秘密だけど、週に一度は弔い合戦が味わえるぞ』(梅) これも悪いなぁ。『飽きるか、死ぬか』には負けてるね。
・窪田浩幸『無芸退職した人に』(梅) さすがは宛名をスタンプにしてるだけのことはあるが、『人に』の部分を『ボクも』としたら、もっといいと思った。
のどかでかわいいのは、
・浅井『雀の子、そこのいとくれ』(梅)
しぶく、うまかったのが、
・佐々木利一『心の格闘技』(梅)
・松崎直太『少年老いやすく、すぐにゲートボールをやるようになる』(梅)
・松田弘『初めて誘われた日。さびしかった』(梅) これは、『初めて誘われた日は、なんだかさびしかったけど』と、ポジティブにしたかった。
・宮沢正幸『お出かけ前に口紅を』(梅) ギリギリでセーフ。
・清水幹夫『むかし、共白髪。いま、共ゲートボール』(梅) ここいらへんが、最も安全圏で実用的なのかもしれない。
・日高聡『練習中に水を飲んじゃいかん。漏らしてしまう』(毒)
以上である。
今週の宿題
これは難しいぞ。「近所の喫茶店のコピー」なのだ。
塾生それぞれの「近所」なのだから、家元も番頭も、他の塾生も、どんな店なのか知らない。それでも、伝えようというのだから、簡単じゃない。なのに、選ばれる、というコピーがきっとあるはずだ。
「暴走族は、ヤクザが追い出しました。喫茶ピットイン。これ、うちの近所でございまして」
ふーん。
「コーヒーは、違いのわかるアレです。なんてのが多そうですね」
そう書くと、減るから大丈夫。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
うおっと、そいつぁオイラにゃ合点がいかねぇが、私が家元の糸井重里である。
「てってってっ、てぇへんだあぁ。家元の親分、てぇへんでござんす」
何が大変なんでぇ、番頭の勝吉。この暮の気ぜわしい時に、おめぇの「てぇへんだぁ」を聞いてると、締切に間に合わなかったような気分になっちまうじゃねぇか。まったく……。
「そ、それが、ほんとにてぇへんなんで。家元の親分も知っての通り、雑誌界にゃ年末進行てぇ、古いしきたりがあるんでございますんでござんす。そいつが、この萬流の前に立ちはだかっておりやして、押しても引いてもビクともしやせんでございますでござんす」
そうか、年末進行か。どれどれ、ちょっと様子を見てみよう。
ガラガラ(戸を開ける音)
おっとーい! いたいた。いやがった。
「ワッハッハ。わしが年末進行だぞ。どうだ怖いだろう。まいったか」
「やいやい、怖いじゃねぇかでございます」
番頭、ひるむな。技をつかえ。
「そ、そうでございます。ええい、御歳暮だぞ」
「どっこい、御歳暮返しだ!」
うむむ、手強い。では、書きとばしだ! ビヤーッ。
「どうだ、うちの家元にはこの手があるんだぞ。畏れいったか、年末進行めッ」
しかしそれにしても、これだけ極端な楽屋オチでスタートすると、収めるのにかえって苦労をするな。
「なにせ、年末進行のやつには、バックに年の瀬がついておりますからねでございます」
いやいや、負けてはおられぬ。こちらには、塾生から寄せられた数千幾余の、来年の年賀状がある。
「うまいッ。うまくお稽古に結びつけましたね。さすがは日本一いいカゲンな司会者と評判をとる家元、するどいッ」
というわけで、よくわからんうちに稽古に突入することになったのである。
「自分らしさ」を表現
心を新たにして、昭和五十九年、つまり1984年の年賀状に何を書くかについて考えてみよう。
今回は、選ぶのが難しかった。|いかにも《ヽヽヽヽ》上手にできているのも多かったが、それよりも「個人的には深いイミがある」といったものに当りがあったように思う。
早い話が、普段バカばっかし言ってるような男が、年賀状にかぎって『謹賀新年』などと書くと、そのほうがヘタに考えたものよりおもしろいということになってしまうのだ。
萬流のお稽古は、よくよその雑誌にあるような「そのまま使えるネズミの図案集」などとは異る。名作をそのまま引用してウケようなどと思ってもダメで、最終的に「自分らしい」しかも「相手によろこばれる」ものを、オリジナルで考えるのが|萬心《まんごころ》あふれる正しい年賀状といえよう。
では、まず、ラジカルなやつからいこう。
・本村洋介『あとで電話するけんね!』(梅) そんなら出すなと言えないところが、年賀状の不思議さなのだなぁ。
・新屋健志『顔、忘れちやったけど……今年もよろしく』(梅) 『忘れちゃった』|からこそ《ヽヽヽヽ》出すという気もするし……。
・広田留美子『以下同文』(梅) これも、妙にナットク。ただしこれ、同巧多数。広田君は運がよかった。
・樫原辰郎『関東の方では、あけましてお萬でとうと言うんだそうだ』(梅) 昨今の萬事情を早速ネタにしているな。
非常に単純なコピーだが「そこを買ってほしい」という気持で書いているもの。
・田中宏和『おれは、出したからな』(梅) 本人の言う通りだ。出したか出さないかは、後々のもめごとの原因にもなる。しかし、出すタイミングもかなり重要である。
・門田陽『おれ若いから早目に出しちゃった』(梅) この場合、早目のほうが好まれると思う。
すごいのがあったぞ。
・|十万萬千代《じゆうまんまちよ》(本名である)『知り合いのおばあさんのところに来た三通の年賀状のうち二通は暮れに死んだ人からのものだった』(毒) こんなコト、年賀状に書くなッ。コワイじゃないかッ。
・山口正明『コンロのおなべにおぞうにがはいってます。あたためて下さい。おせちとミカンはテーブルの上。タバコの火に気をつけてね。じゃあ行ってきます。P.S.あけましておめでとう。今年もよろしくね』(竹) 創作もののなかでは山口君の好調がめだった。
おっと、何かをくにゅっと踏んだような気がしたが「名取」のバッジだった。山口君もついに今週で目出たくも名取第三号となりました。よかった。
一方、スーパーリアリズムからいくつか選んでみる。
・河野八重子『今年は萬流をやめることに致しました。先生、番頭さんの御多幸をお祈り致します』(梅) モンクの多いので有名な河野君ならではの技。
・新見光夫『今年は必ず返します』(梅) ただこれだけ。なんかブラックな香りでしょ。
では、超マチガイのコピー。
・花岡邦彦『十月十日生れ』(毒) よいか、花岡君はじめ同巧作の諸君。「トツキトーカ」が本当としたら、元旦製造の人類は、十一月十日に誕生するのだよ。
ついでだが、十一月十日は、家元生誕記念の「御萬の日」だったね。
「い、家元ォ! お言葉ではございますが、最新医学では元旦にタマが当るとやっぱり十月十日にはじけることになっておりますのですよ……」
だからさ、まあさ、アハハハ……。
類似作を比較すると
続けます。
・杉本憲市『これでおしまいにしようや……』(梅) いやいややってる麻雀の時みたいな感じ。
もっと、ずらずらっと並べてみよう。
・奈岡九介『文春』(梅) 同巧多数。社内では古典らしい。
・黒木悟『再使用可。両面とも鉛筆にてしたためました』(竹) 年賀状のスタンプ省略に気付いたのはこの一枚だけだった。
・松川信之『|生正月《なましようがつ》』(竹)
・船山満『初詣、富士山、除夜の鐘、どーせテレビで済ましてんだろ、ホレ、年越しハガキだよ』(梅) ふたつ並ぶと松川君の勝ち。
・城田瑞枝『冷蔵庫、久しぶりににぎやかです』(梅)
・臼杵貴俊『我が家のご馳走、見に来ませんか』(梅) 「見に」のおかげで、臼杵君の勝ち。
・小越敏『オレは、ねずみ男だ』(梅) 家元も、そうだ。
・前田敏哉『お年玉に注意しましょう』(梅) なんかおかしい。
・市原雅子『ごめんね』(梅) 新年早々、けなげである。
・中島多津子『姫始めは私と』(梅) そうか、おぼえておく。
・上田智『緊縛〆飾り』(梅) 新宿に住んでいると発想がこんなんなっちゃうのかねぇ。
小林井秀雄『僕の前に道はない。僕の後には道は出来たが、どうも怪しい』(梅) うむ。
津寺利嗣雄里『うひひ、ほーら、もうこんなに正月になってるじゃないか。いやーん』
『たばこのかいおき、ね』
『今年から字が大きくなって読みやすくなりました』
『寿楽よ〜ん』とまとめて、(松)をやる。名取になった津寺君は、進境いちじるしい。
・森賢一郎『夢で会いましょう』 と、これは、ただ掲載しただけ。となりに、同じ住所の、
・ 森秀子『祈願受胎』(梅) を掲げると、「そうか……」と思う。
なんか地味だがカワイイものとしては、
・楠本明彦『律義な父は、今日もせっせと日曜大工に励んでいます』(梅) なんてのがある。
・岩本なおみ『君には多くの中の一枚かもしれないが、ぼくはこれ一枚きりなんだ』(梅) も、カワイイね。
・万城目政枝『ふうーっ』(梅) 七十歳ならではと思ったら、
・羽生俊治『御慶! 今年は松で通る』(梅) の、七十七歳がひかえていた。他に数名の七十代の塾生がおられ、みんなやたらとイキオイがいい。(餅)をやるわけにもいかないので、のどにつかえぬ(梅)にした。
めげたらアカン!
その一方では、
・松浦翼『フンギャー』(梅) これは、生後四カ月と二十三日目の作者のコピーを母が代筆したもの。職業は無職とのこと。そりゃそうだ。
・谷俊彦『当院は、なんと、一月一日の当番医になってしまいました。谷歯科医院』(梅) 長崎市の皆さん、おぼえておいてくださいね。
・北山大『8四』(梅)
・鈴末ひでとし『おぞう煮のトロミをピチャピチャ舐める。と、キミを思い出す。課長』(毒) 役職名は不要です。
・餘吾英幸『一緒に書きたかったんや』(竹) なんとなく(竹)。
・安達孝『一富士 二高尾 三那須野 分譲中』(梅) いわゆる、うまい。
・織田和夫『元日の朝日が昇ると、そこは累々たるイノシシの屍の山だった』(竹) このあたりのものに、どうも点が甘いかな?
・小平洋康『小学生の頃「今年もよろしく」って書かないと不安だった』(梅) これ、現在のこととして書ければ(松)だった。
・飯田久『バカだなあ、年賀状ぐらいで涙見せるなよ』(竹)
・明田珠美子『あ〜けた あけた な〜にがあけた』(梅) 明田君しか書けない強みであった。
・浅野みき『「謹賀新年」同巧多数。私が残った』(梅) ずるいけど、たしかにそうだった。
・梅田龍夫『昨年は御厚情をいただいた気がしません。本年はよろしく』(梅) 本当に書いてみたくなるね。
・藤原ゆきえ『九千転び萬起き!』(松) 家元の心を代弁してくれたので特別に(松)を贈る。ま、とっておきたまえ。
とかく、くじけがちな塾生諸君。ハッキリ言うが、名取や高得点者たちは、単にセンスがいいだけでなく、いつでも新しいコピーを出そうと努力もしておる。多く出すことばかりが良いのではない。何よりもめげぬことが大切である。なにげなく書いたものが、ヒョイとうまくいくこともある。
・安藤吉孝『きのうのサザンは最高でしたね』(竹) ホラね。
毎週、ひとつでも出すクセをつけようではないか。
・北垣享『あ 来年につづく』(竹) ネッ。
今週の宿題
かつて、文庫本の「坊っちゃん」を宿題にだしたことがあったけど、今度は、某出版社、何を間違えたのか「マルクス全集」を刷りすぎたという。
没後百年をあてこんで企画したら、印刷が遅れていま頃になって本ができたというのだが、値引きは覚悟しているとのこと。
「難しいでございますね。私、ケインズなら少しは自信あるんでございますが」
とにかく、やるしかないな。やればできる、萬流ならば。
では、家元は帰るぞ。
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《出席者》
糸井重里(当流家元)
山下洋輔(ピアニスト)
山藤章二(イラストレーター)
川上宗薫(作家)
南 伸坊(イラストレーター)
宮坂久美子(文化放送ミスDJ)
外は師走の風が吹いているが、家元の詰め居る小座敷には、めでたや新春の湯気が立っている。
たまさか、弟子、見習、門前を集い、大輪の白菊とみまごうふぐ刺しを前に、清酒松竹梅をくみ交し、ふぐの毒に舌先をいらいつつ、萬流錬成の一場を公開し、六萬有余の塾生に奥義の一端を開陳するものである。
山藤章二 南さんはハガキ出したことあるの?
南伸坊 いや、電話でアレしたらボツんなっちゃって。
山下洋輔 しっかし、萬流っていまだに分かんねぇなぁ。
川上宗薫 分からんねぇ。
山下 川柳じゃないし、洒落じゃいかんのでしょう? といって山頭火というわけにはいかないんだろうし……。
家元 |新玉《あらたま》ってみなさん、ようこそ。私が家元の糸井重里です。
なにをゴチャゴチャゆうとるのですか。
山藤 それにしても、家元は駄洒落に冷たいですねえ。
家元 いや、駄洒落に冷たいのはね、単に多いからなのです。
山藤 じゃ、駄洒落でいくのは賢明な策じゃないですね。
南 他の塾生の考えそうなことを考えてちゃダメなわけだ。「銭湯―番台―見える」っていうのはダメなのね。
家元 そうそう。
川上 となると、ひねらなきゃいけないんだろうね。
家元 ひねればいいとも限らない。
山藤 ふーむ、そうか、要するに家元の生理現象なんだ。そのときの生理に合えばいい、それだけなんだ。
家元 さすが似顔絵塾の塾長だけあってスルドイ指摘ですね。ま、これが家元制度の奥深いところです。
南 規則性はないんですか、その生理ってのに。
家元 その生理は、見えざる力によって動かされておる。
川上 おれ、このごろ昔の悪い夢を見ているようでね。若いころ、懸賞小説に応募するたびに一次選考に落ちたんだ。あれに戻ったような気がしてさ。今度は(竹)ぐらいはいけそうだゾ、なんてまわりのやつに話しちゃったあと落ちると、特にね……。
山下 山藤さんは毎回だしてんですか。
山藤 いや。まだ三回、で、三打席二安打。
家元 山藤さんはうまいからね、わざと厳しくしてます。
川上 おれなんかヘタだから、お情けで入れてもらったと思ってるんだ。
家元「一夜を共にする」のときの『朝メシもっていったよね』はなかなかの出来でしたよ。
山下 ぼくの場合は、笑いで攻めたの。「ゲートボール」で『ゲーテベーレと呼んでけれい!』っていう路線なら糸井さんは絶対笑うと思っていた。
川上(隣りの美女に)あなたも出したことあんの?
宮坂久美子 いえ、あのぉ……。
家元 あッ、川上先生、あんまり肩を寄せあわないで下さい。彼女は文化放送の花なのです。手折ってはなりませぬ。
山藤 座敷に入ってきた時から、その席の配置、気になっていたんだ。
川上 君のバッジは「門前」だねえ。
宮坂 ええ、さっき番頭さんがこっそりと……。
南 あッ、ずるい。僕なんか何もないんだから……。
家元 なにしろ階級制度の厳しい組織ですからね。
山藤 そうです、私なんか緑色の「弟子」バッジ。宗薫さんは赤い「見習」バッジ。だから私よりズーッと下座でしょう。
山下 ぼくは「仁王」だから外に立ってなきゃいけないの?
南 ぼくはどうすればいいの?
家元 ほら、よく「仁王」の前にゴザ敷いて座っているじゃない。
南 乞食だよ、それじゃ。ひどいや!
川上(宮坂嬢に肩を寄せて)あなた大学生なんだって?
宮坂 ええ、学習院の二年生なんです。
川上 真面目な話、おれ学習院の女子大生って一人も知らないんだ。
一同 アハハハハ……。
山藤 真面目なのかなあ、それ。
家元 コピーになってるね。
山下『学習院女子大生をまだ知らぬ』。うーむ。いい。
家元 その前に『真面目な話』をつけて下さい。
山下 会話ってのはコピーになるんですか?
家元 もちろん、上手に使えば。
番頭 みなさん方のウォームアップができたところで、そろそろお稽古を。
家元 では、このふぐ屋の入口に貼る呼び込みのポスターを作りましょうか。
川上 考えようとすると白くなっちゃうんだ、頭の中が。
山藤 少し時間ください。
番頭 どうぞ、どうぞ。
宮坂 鉛筆もいただけますか。
家元 何でも差し上げます。よかったら番頭の体でも……。
一同(考える)
川上 出来たぞッ。
番頭 や、一番乗り!
川上『ふぐもいろいろ』。真面目なんだね、おれは。
家元(毒)ねらいでもいいよ。
南 ウフッ、『裏ふぐあり』。
川上 いいね。あなた、なんでハガキ出さないの。
南 電話でしゃべっているうちに恥しくなっちゃって……。
家元 ……ええと、私は下町風に、『河豚ホルモン始めました』。よその店で捨てた皮や内臓を持ってきてね……。
山藤 じゃ、同じポイントで、『安楽死賛助店』。
山下 ウハーッ、すごいや。
家元 家元なら選びそうだというのを自分で考えました。『うちの河豚はかわいいですよ』
南 ハハ、ハハ、ハハ……。とんかつ屋の看板みたいだ。
家元 結構おもしろいでしょ、作ってみると。
山藤 では、ふぐ刺しをテーマに、『限りなく透明に近い美味』。
番頭 知性を感じますね。
家元 ぼくは村上を感じます。ハハハハ……。
番頭 あのぉ、私もひとつ。『鉄砲よりうまいミサイルふぐ』
家元 ハハハハ、バカみたい。
山藤『カワブタ(河豚)ヤスナリ、あれは祖父です』
家元 こりゃ、すごいや。何か山藤さんのあたりには立ちこめるものが感じられるなァ。
山下 うーん、ダメだ、こりゃかなわん。酒でも飲んで……。(鉛筆を置く)ウグ、ウグ、ウグ……。
川上 (宮坂嬢に)考えてる?
宮坂 ええ、一所懸命考えてるんですけど……。
家元 早くやる方法はあるんだよ。何でもいいから一つ、紙に書いちゃうの。で、それじゃないのを考える……。たとえば『温泉ふぐ芸者』ってのを考えたらそれをすぐ書いちゃって、別のこと考えるんです。
南 じゃ、ダサイやつをひとつ。『死ぬほどうまい!』えい、続いて、『しびれるぜ』。
山下 裕次郎ばりだな。
家元 となると、その横に、『いかす味』。
山下『真っ赤に錆びたふぐ』
一同 アハハハ。
南『ふぐの活き造り』
川上『七転八倒のうまさ』
山藤『らくだの馬さん御用達』
家元 いやぁ、すごいじゃない。
宮坂 あのぉ、これ。(と紙を渡す)
番頭 お嬢ができました、ご静聴下さい。(一同シーンとなる)『一緒に食べようね』
一同(拍手)おー、すばらしい、さすがだなぁ。
山藤 心中物だと気がつかない人には、よさがわからないね。
南 ではこんなのをひとつ、『それじゃフグをご一緒しなさい。失礼のないように』。
川上『山下洋輔はふぐの肝を食って弾くのだ』。あのピアノの弾き方はどうみても……。
山下 もうやけっぱちだ。『立ったままじゃ帰さねぇ』
山藤 口説きを兼ねたコピーで、『ふぐ刺しで恋占いしよう』。愛してる、愛してない、愛してる、愛してないって、一枚ずつ食べてゆくの。
川上『傑物は最後の一枚』
番頭 なるほど、最後の一枚は遠慮の固りですからねえ。
南『ふぐなんか食い飽きたい』。ちょっと貧乏くさいかな。
家元 じゃ、貧乏路線をもう一パツ。これは真面目ですよ、わりと。『五度目くらいからは皆さんウチにおいでです』
南 ハハハハ……。
家元 南にだけうけてる……。
山下 あそうか、最初は安い店しか行けないし、緊張してて味なんかわかんないもんね。
山藤 安全性を強調して、『年賀ハガキで切手シートも当ったことがない店』。
川上 じゃあね、『さあ、肩から力を抜いて』。
家元 ほう、いいねえ。
山藤 ズバリ、『白い贅沢』。
番頭 きれいですね!
家元 うふっ、これは? 『昔うちのおじいちゃんなんか、毎日ふぐ食ってたんだぞぉ』
南 ハハハ、それは、ぼくのネタじゃないか。
家元 そう、南のネタ。『おばあちゃんなんか嫁ぐ前は毎日ふぐ食べてたんだぞぉ』、ハハハッ。
南『ふぐなんて食ったもん、知らないけど』、ハハハ。いくつでもできちゃうよ。
山下『一緒に皿まで食ってもいいんだぜ』
家元 それ、すごい。音がする。
川上『泣くのは食べてからにしようぜ』
家元 色ものはガ然強い。じゃあ、こんなのは? 『お前なあ、処女で、しかもふぐも食っていないっていったら人間じゃねえぞ』
南『なにを脹れてるんだ』
川上『フギュ、食ベメスカ?』
山藤 さすが元英語教師!
家元 外人モノってときどきあるね。『ワタシ、ホントノガイジンデス、ムナゲモアリマス』なんて。
南 胸毛は古い。いまは抜いているやつもいるんだから……。
家元 近藤真彦!
宮坂 キャーッ、イヤ。
川上 タモリは薄そうだね。
南 |多毛《ヽヽ》とは思えない。
一同 (しらける)
誰でもできる萬流トレーニング
宮坂 あのぉ、いいですか、聞いても。(一同、耳をすます)
家元 ハ、ハイ。
宮坂 糸井さんは、コピーを考えるとき、本当は、すっごく考えるんですか?
家元 いや、あまり考えない。できてからあとで考えます。それが|当り《ヽヽ》か|はずれ《ヽヽヽ》かをね。そっちの方の時間が百倍ちかくかかるんだ。ただ、個性によって、入口は色々あるけどね。
山下 山藤さんはどういう特徴があるの?
家元 えーとね、じっくり頭をつかってて、しかもポンと膝を叩かせるキレがあるのね。たとえば、『お宅にある「坊っちゃん」はもう効きません。半年に一度はとりかえましょう』というのを送って来たの。同じようなコピーがあったんだけど、山藤さんの方がずっといい。『「坊っちゃん」は脱臭剤と同じです。おたくのは効かなくなっていませんか』と比べると、脱臭剤という言葉を省略したのがセンスである、と家元はこのとき申しております。
川上 おれね、ものすごく自信があったのは「一夜を共にする」に出した『……な……』っていうやつだったの。これは無視されちゃった。
家元 いや、無視したんじゃなくてね、あの時(松)をとった『愛してる』と同列なんですよ。
川上 そうか……。
家元 要するに、一対一で向きあったとき「ほんとにほんとだな」っていう部分があって……。川上さんの特徴は、おおぜいの人に語りかけるんじゃなくて、『朝メシもっていったよね』や『……な……』みたいに、一対一で勝負する強さがあるのね。
山藤 それと、『……な……』で口説いている実績にやっかみがあるわけですよ、ハハハ……。
家元 それもあるね、フフフッ。同じように、突然、山藤さんだけに厳しくするわけ。才能豊かな塾生だけに、もっと踏み込んでやれって、ね。
山藤 アハハハ……。でも私も塾長としては非常によくわかるの。似顔絵塾でも、レベルの高い人にはそれ以上のものを求めるからね。
家元「選ぶ」ということはなんて苦しいことなんだろう。
山藤 うーん、ほんとにきついね。ところで、コピーライターに英才教育って効くかなァ。
家元 効かないんじゃない。
山下 でも、訓練はできるんでしょ、遊びながらでも。
家元 あそうだ、昔、山下さんと謎解きをやったでしょ、何々とかけて何と解くっていうの。あれ面白かったね。
山下 落語家のとはちょっとちがうんだよね。
家元 たとえば、ひれ酒とかけて未亡人と解く。その心は、バナナには猿がよく似合います。
山藤 アハハハ。
家元 やってる本人にもぜんぜんわかんないの、もう。
南 難しいよね。自信だけでやるしかない。
家元 要するに、音楽的な言葉遊びなんですよ。なんとなしに響き合っているとか、わざと不協和音を入れるみたいな……。
山下 ビールとかけて障子と解く。心は?
家元 えー、熱海では評判です。
山下 それは繋がりすぎだよ。
家元 できるだけバラバラで、かつ全体では納得できるってのが面白い。飲み屋でこんな遊びをしていると、酔っぱらいが立ち聞きしてね、まざろう、まざろうとするの。
南 まざれないよね、それは。
家元 そんで、無理やり解いちゃったりすんのね。その人、あとで悪酔いしたと思うんだ。もっとカゲキなのはいきなり「その心」に行っちゃうの。
南 ねえ、いきなり「心」っていうのはどういうの。
家元「コップとかけて」といったらさ、「真っ赤になって唸ります」ってやるの。
川上 ハハハ……。こりゃダメだ。でも面白いねえ。
家元 萬流には、こういうニュアンスも多少はあるんですよ。「雑種犬シロ」のとき、『帰るか夕日だ』というのを選んだんだけど、これは「シロとかけて、帰るか夕日だ、と解く」といったようなもんなんです。
南 人の話を聞いてないで駄洒落ばっかり考えている人もいるよね。
家元 でも数うつなら駄洒落がいちばんだね。
山藤 |名《ヽ》洒落より|駄《ヽ》がいいね。
家元 駄洒落は早くないとダメだね。話題がポンポン先に行っちゃってるのに、「さっきの話だけどさあ……」なんて。
山藤 そういう人生ってあるよね、タイミングを逸しちゃって。
南 権力で盛り返そうとする人いるよ。
川上 いるいる。
家元 ぼくの知り合いの中小企業の人とバス旅行いったの。うしろの方で楽しく騒いでいたんですよ。社長は一番前に座ってて誰にも相手をしてもらえないの。そしたら、社長さん、「ガイドさん、マイクを貸してくれんかのぉ」ってマイクを取るや、「みんなッ、もっと和気あいあいとやれッ」……。
一同 ハハハハ。
家元 シーンとしちゃった。それまでは楽しくやってたのに。「和気あいあい」という言葉があんなに新鮮に聞こえたの初めてだ。
番頭 ひとりだけ|わき《ヽヽ》から漏れていたんでございますね。
山藤 わき漏れなし、ハハハ。
家元 使い古された言葉でも、今使うと面白い、ということがあるね。
宮坂 あのぉ、川上先生はいつおつくりになるんですか……。
川上 ひょこっとできるんだよ。『……な……』っていうのはね、夜中にふと目が覚めたとき。あ、こりゃ絶対間違いないと思って、すぐ書きとめといたの。
家元『朝メシもっていったよね』というのはお使いになったんですか、実際に。
川上 いや、それはないな。ぼくは、普通は「な?」とか「めしも食おうよ」っていうんです。
番頭 なるほど、先生のコピーには使用感がございますねえ。
川上 それじゃコンドームを洗って使ってるみたいだね。
一同 アハハハ。
家元 川上先生の場合、存在にコピーが含まれているんです、歩くコピー。『歩く川上宗薫』
一同 ハハハハハ……。
山下 (宮坂嬢に)あなた、「一夜を共にする」で、どれを言われたら、その気になりますか。
宮坂 うーん、そうですねえ。(考える)あのぉ、コレ。『飽きたらセブンイレブンに行けばいいじゃない』
一同 なーるほどぉ……。
宮坂 それから、『人生、経験だ! そうじゃないでしょうか? そういうことで手をうとう』。反対に、こういうのはダメなんです。
家元 それではダメなのを仁王が発表します。
山下『ルイ王朝風というのはつまり、あっ、このホテルに入ればわかる』だって。
宮坂 それから、コレ。
山下『若い女性のひとり寝は危ないから今夜はぼくが一緒にいるよ』
宮坂『宗薫センセイのブンガクについて共同研究してみよう』は、まあまあ。
山藤 やっぱり「歩く川上宗薫」だ。
山下 本人が共同研究できるんだもんなぁ、いいよなぁ……。
宮坂 これも可愛いなあ、『シンデレラはね、夜遊びをして幸せの道を開いたんだよ』。
山下 行為か言葉か、ということもあるよね。『ルイ王朝』のときだって、何もいわないでそっと肩を押してすっとホテルに入った方が強いとか。
宮坂 うふっ……そうかもしれない。
番頭 WAOOH!
家元 番頭さん、高揚してるね。この人は、頭では相当アナーキーなこと考えてるけど、股間に倫理が宿ってるもんだから、自然、悶えちゃうんです。みなさん、失礼しました。
宮坂 えーと、これが一番好きです。
山下 あ、やはりこれ? 『愛してる』(松)だって。
番頭 やはり家元の慧眼でございますね。
家元 いや、ちょっと違うんだよ、番頭さん。ゲームとしてやるのと実際とがゴッチャになっているんだ。
山下 コピーを実際の場面にあてはめるというのは邪道なんじゃないのかなあ。言葉のもつ広がりと現実とは違うからね。その言葉を実際に口にするというのは、それはもうパフォーマンスだと思うんだ。
南 実際は、何もいわないでそっと肩を押した方が勝つんだもんねぇ。
山藤 実践している者はコピー塾には入らない……。
一同 アハハハ。
川上 それにさ、コピーってのは、いつも笑えるってものじゃないよね。萬流は面白すぎるんだよ。出題の趣旨から外れたものにかぎって、また面白い。どうなっているのかしら。
家元 たとえばゲートボールをはやらせようと本気で思うとするでしょ。そうすると『生命のあるかぎり、やり続けたい』みたいな、要するにバンザイしたのを選ぶことになってしまうんです。ところが全面肯定しているコピーには誰も目を止めない。それより多少ひっかき傷を残す言葉の方が目にとまるんです。『これにうつつをぬかして親の死に目にあえなかったやつはいない』なんていうのでも、どっかにひっかかるでしょ。
番頭「死に目」っていう言葉はずいぶん強い言葉ですもの。
家元 そこでひっかかってくれれば、「そうかゲートボールってものがあったのか」で、第一段階はクリアできるわけね。
山下 じゃ、萬流のページ全体でゲートボールが浮き上るという……。
家元 わたしとしては、なるべくそうしたい、コホン。
山藤 なるほど、マジメ派の人にとっては、すべてのコピーが中核をとらえてないと気に食わないんだろうね。
女将 それではみなさん、別室にちり鍋の用意をしましたので、そちらへどうぞ。
一同 おう! (ゾロゾロ移動)
南 別室あります、なんて怪しい感じがいいね。
宮坂 ああ、わたし、おなか、一杯みたい。
川上 寝たくなったら別室もありますよ。
山藤 ぼくはコピー書いて、二日間寝かせるの。二日目に面白いやつを出すんだ。
山下 さすがプロだ。
南『|ふつか《ヽヽヽ》ものですがよろしく』
一同 ハハハハハ。
女将 さあみなさん、お雑炊つくりますからお鍋の中のもの、みんな召し上って下さい。
一同 ハーイ。
家元 じゃ、このへんで、新年をコトホいで、ねずみ君のコピーでも作るか。
一同 えーッ、そりゃ大変だ。(考える)
家元 ねずみを売るわけにもいかないから、ねずみにいいキャッチフレーズをつけてみよう。
一同 (ぶつぶついいながらお稽古帳に鉛筆をはしらせる)
山下 ハーイ、できました。『色の名前になっているのはおれとキツネだけだ』
南 カバがいるんじゃない。
番頭 あれは|樺《ヽ》色です。
山下『ブタの大きさでなくて、ほんとによかったですね』
一同 ハハハ、なんだ、それは?
家元 (考えてる)難しいなぁ。
山藤 またできました。『義賊』。『尻尾は錐の鞘に使えます』という落語ネタもあるね。
家元 じゃ、『おたくの猫ちゃんにおひとつ』。
山下『万匹集って電気を起します』
川上 出来たッ!『ネズミ千匹』
山下 きャー、これはすごい。
一同 アハハハハ。
川上 (宮坂さんに)分かるかね?
宮坂 ………。
家元 それはスゴイ。毎年使えますよ、ソレ。『ウシ千匹』とかさ、ハハハハ。
山藤 えーと、『キュウリまではいいけど、ネズミはやめましょう――微笑』。
山下 たはーッ。
家元 来年は、『ネズミまではいいけどウシはやめましょう』。
一同 ハハハハ。
南『ナスまではいいが……』
山藤『タツまではいいけど……』。どんな構造してるんだ。
山下 ネズミ、難しいなァ。
山藤 |寝ずみ《ヽヽヽ》考えてもダメ、か。
一同 ハハハハ。
川上 はい、できました。『みんな安心しな、ネズミの子ぐらいだよ』
山藤 処女の口説き文句に使えるね、それ。『怖くないよ、ネズミの子ぐらいだよ』って。
家元『触ってごらん、ネズミの子ぐらいだよ』。ハハハ。
山藤 よけい気持悪がるよ。
家元『硬くなったよ、触ってごらん』。他人事みたいにね。
南『触ってごらん、うんこだよ』っていうのがあったね。
家元『舐めるんじゃねえ、クソだぞ』
一同 ハハハハハ。
家元 クソ関係って、おれほんとは得意なんだ。塾生には叱ってばかりいるけど。
南 じゃあ、『ネズミの糞よりウシの糞』。来年ね。
家元 どんな課題でもクソを混ぜればいい。これを《助け糞の法則》という。ハハハハ。
番頭 困ったことです。ネズミやらずにクソばっかし。もう出しきりましたか。
一同 ハーイ。
家元 (宮坂さんに)できた?
宮坂 できない。(うつむく)
一同 うわー、かわいい。
山藤 受け身だからいけないのよ。攻めなきゃ。
家元 そーです。自分で作っちゃったら、人はあとからついてくる。
川上 コピーっていうのは競輪でいう“トップびき”みたいなところがなきゃいけないのかもしれないね。
家元 うん。受ける風の分量で評価されているところがありますね。十周回るうちの九周半をトップで走っていることが大事で、最終的にはゴール直前で抜かれてもいいんだと思う。
山藤 抜かれる一瞬前がおれのゴールだ!
番頭 然り! 家元、塾長のすばらしい結論がでたところで、本日は、
めでたし、めでたし。
[#改ページ]
あいやしばらく、私が家元の糸井重里である。
諸君にこの苦労をわかってくれというつもりは毛頭ないが、毎週の書き出しの数文字には悩まされる。今回も、この「あいやしばらく」に至るまでに数枚の原稿用紙をゴミ箱に捨ててしまった。
まず、「でへへへへ」と書いた。それで三枚ほど書きすすめたのだが、やはり「でへへへ」で始めたものは、どうしても「でへへへ」的なのである。これは気分が悪いのでやめた。
次に「全体トマレ」と書いたが、なんだか総選挙後の雰囲気を妙にひきずっているようで、やめにした。これは、早く気付いたので、原稿用紙一枚分の徒労ですんだ。
続いて、「バーッキャロー」というのも書いたのだが、知っての通り、この原稿を書いてから印刷され諸君の目に触れるまでには若干の時間がある。その時間のうちに、私が世間からキューダンされたり、刑事事件を起こしてキンシン中という状態になっている場合だってないわけではない。世の中が「とにかく、あのイトイてぇのは太いやろうだ」などと言っている時に、「バーッキャロー」などと叫びつつ登場すると盗っ人猛々しいとのそしりを受けかねないので、それもやめにした。
こうなると、「すいません」と、つい始めたくなるものなのだが、「すいません」と言いたい気持が、私の胸の裡に、まったくないので、今回は見送った。
そして「あいやしばらく」がここに晴れて印刷されたのであった。
「毎週、家元のご苦心を目のあたりにしている私なぞは、おいたわしゅうございまして、めっきり食欲も落ちました」
お、最近敬語に乱れを生じていると評判の番頭さん、メシを食いながらそういうことを言うものじゃありません。
「でございますから、私、もう、おいたわしくておいたわしくて、家元がおやつれになっちゃってやがるんで、その……」
あなたは、その、今週の課題でも食べて寝ていなさい。先回の座談会の「まとめ」で疲れているんだから。
まずは新名取から
さて、お待ちかねの、「コロッケ」である。こういう宿題の時には、ハガキが三割増しになる。本当に塾生諸君は「コロッケ」が好きのようだ。
家元も、コピーを選びながら「ああ、コロッケが食べたい」と、下腹から突きあげる欲望にさいなまれた。そして、いま目出たく「食った」ところである。
食う前には、どのコピーも上手に思えたけど、いったん食っちゃって欲望が満たされると、突然キビシくなっちゃうんです。覚悟してくださいね。
では、今回は、名取たちのものから行く。
筆頭は、先週なりたてのホヤホヤ名取、山口正明改め山口井正明である。
『コロッケだった。何もかも』(梅) 一番はじめに出すには、ちょっとダシの濃すぎるコピーだったな。
続いて、あいつ。
津寺利嗣雄里『食卓の実話』(梅) まいったなぁ、名取になると、こういうのがジャンジャンできちゃうんだから。
箸休めに、こういうのも掲せておく。
小林井秀雄『なぜ前バリに使われないのか?』(毒)
これら三名取は、他にも数通点に値いする作品を書いてきたが、とりあえずひとつずつにした。
四人目の名取が誕生
今回は、いつもだったら当然掲載されるようないいコピーがずいぶん落ちてしまった。残念なので、氏名のみ最後に掲げて、それらの諸君にはすべて(梅)をプレゼントする。
・石川さち子『コロッケに肉を入れてくれと言うのは政治家に正直や清潔を求めるに等しい――店主』(梅) うむ。
・渡部一彦『ジャガカツと何故言わぬ』(梅)
・上松治『ジャガタラしいやつ』(梅) あ、待てよ……上松君も、これで10点だ。名取第四号が、こんなに地味に誕生してよいのだろうか。
しかし、10点だもんな。上松君には、「重」の字を授け、「上松重治」の名を与える。なんか新日本文学みたいな名前になっちまった。これからも励みなさい。
続ける。
・井上信治『おれの顔にソースぬるつもりか!』(梅) ギャグになりやすいね。
・安藤吉孝『おじいちゃん! あたしがまとめて買いますから、ちびちび買うのやめて下さいっ』(梅) 安藤君、急上昇。
・工藤葉月『食べる小判』(梅) 小判ものは「畑」とか「肉」とかあったが、最も素直なこれに軍配があがった。
・新清子『耕ちゃんと私、ケンちゃん|家《ち》のコロッケの常連でした。いま耕ちゃんは共産党の親分になりケンちゃんはコロッケを揚げています』(梅) これは実はノンフィクションなのである。耕ちゃんの姓は「上田」。一種の特ダネ賞であった。
・明田珠美子『テーブルのさめたコロッケをみて、つい何も盗らずに、出てきてしまった』(梅) 明田君、着実に稼いでおる。
・菊間秀夫『フジヤマ、ゲイシャ、コロッケ』(梅)
・餘吾英幸『欲しがりませんカツなんて』(梅)
・金井智『おっ、トンカツの匂いがついてる』(梅)
このへんは、みんなの作りやすかったところだ。
萬心は奥深いんだよ
・安宅士郎『「こんなうまいもの食ったことがない」と、兄貴の言葉が、一層家庭の雰囲気を重くした』(梅)
・黒木悟『揚げたてで顔をひっかけば凶器としても使えます』(梅)
・小林茂樹『彼ったらね、いきなり熱いものをあたしの口の中に入れてくるの』(梅)
・大庭範子『裏庭から掘り出した古い壼の中には、先祖が作ったらしいコロッケがぎっしりと入っていました』(梅)
・小林牧朗『ゴザを敷いてるあの方に、歳の暮れのお供えもの』(梅) と、ここいらの五作あたりは、かなりのすれっからしの作。
|萬心《まんごころ》の何たるかを知りつつある塾生ではあろうが、これもこのあたりで満足していてはいけない。
こういうのまで書けるようにならなくちゃね。
・伊岐見一敏『落しても、食える』(松)
ねっ、|手練《てだれ》にない、強烈な素直さが、心に波紋をひろげるでしょう。コロッケという商品が、バーンと「立つ」のである、こういういいコピーによって。
では、再びふつうに良い作品。
・岩田隆幸『ハシで穴をあければ、もうキミのもの』(梅)
・奥村修『フタを開けたらごはんの上で脱皮していた』(梅) これは、上に「べんとうの」と、入れたほうがよさそうだ。
・門田陽『何考えてんの、かあちゃんがもらうよ』(梅) もうちょっとで(竹)をやるところだった。門田君も、好調だ。
・岡田真『このあみの上に並んでいるやつじゃなくて、次にあげるやつ下さい』(梅)
・中本恒子『珍味! 山口梅太郎作』(竹) これ、どっかの肉屋さん、実際に貼り紙に大書するといいですよ。
・平井伸郎『肉屋から八百屋への挑戦状』(梅) これは大書したりするとカドがたつ。
・竹中博幸『新妻の、2ケ買う事のほこらしさ』(梅) 新妻ネタは多かった。これについては、わざと「4ケ」にしてヒッカカリをつくったほうが印象は強くなるよ。
・平田昌子『相互保温のため、ふところに入れてお持ち帰り下さい』(梅) このテーマも多かったが、「相互保温」のひと言が効いている。
・吉賀光彦『ブルドックもイカリも、ワシがオシメをかえてやった』(梅) なるほど。
・加野典子『二枚焼きトースターはコロッケを焼くことで、からくもその命脈を保っている』(梅) 加野君、ごぶさた!
・清水美紀子『私は、コロッケを縦でも、横でも、一口で食べられます。もってくれば、見せて差し上げます』(毒) そんなとんでもないことをしてくれなくてもよい。
・早瀬民子『味の決め手は新聞紙』(梅) 同巧あり。
・伊藤和彦『ただならいくらでも食ってやる!』(梅) そうか。
・山崎恵子『ソォーッと布巾をめくると、洋皿は牧場だった。コロッケが二頭、のんびりキャベツをはんでいる』(梅)
では、おしまいは、家元のいちばん笑ったやつ。
・平岡清美『こんばんは、俵型コロッケです』(竹)
もうひとつだけ強迫されて。
・万城目政枝『一つ おまけ』(梅)
では、惜しかった人のリスト。
小田淳一、斉藤泰徳、柿沼徳治、前田治行、川村敬一、角野敦、井上信治、秋田良夫、長塚隆、小川克子、森素雄、渡辺康二、小谷秀穂、柴田正子、那須英憲、和田学、中島従道、森山浩二、山本信三郎、赤木成維子、宮林光三、山口公子、松崎直太、宇治川たか子、柴田喜久、石井良枝、伊藤秋彦、岡村宏史、渡辺匡、山富史朗
以上の諸君にはすべて(梅)をやることにした。追って番頭から通知があることであろう。待ってなさい。
ついでに、漫画家いしかわじゅん氏のハガキから。
『尻尾まで、芋』
うむ……。(梅)を進呈する。「うちのコロッケは」とつけたほうが、よかったみたい。
今週の宿題
いつも人気の薄い商品の応援ばかりしているが、今回はちょっとちがうぞ。
えーい、聞いておどろくなよ、「パンダ」だ。
そうだ、あの「人寄せパンダ」という言葉のもとになった、パンダである。上野の動物園にパンダを見にいらっしやいな、というテーマでコピーを書いてくれ。どうだ、書き易いだろう。
「パー券買ってくれよ、なんてのはいかがでございましょう」
それだったら『パン券あります』くらいのほうが地味だけどいいかもしれないね。それにしても、もう少し考えたまえ。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
ゼッコーチョオオ、私が家元の糸井重里である。
お星様お星様、お願いがあります。家元に権力とお金と快楽を与えてください。それから、蛮勇と怪力と巨人軍の優勝と、エート、エート、上州名物焼まんじゅうと、あといろいろといまは思い出せないけれど欲しがっているものをすべて与えて「つりはいらねえ」と言ってくださいね。そして、エート……。
「家元! 家元!」
あ、番頭さん(ドキッ)ずっとそこにいたの?
「むろんでございます」
じゃ、いまお星様にお願いしてたの、聞いてたわけ?
「もちろん、でございます。家元があんなふうに地味にああいうことをしているとは、番頭の私も知りませんでした。もっと、うちの家元はゴーホーライラクなブワーッとした方かと思っておりましたでございます」
このことは、萬流の塾生たちには、くれぐれも内証にしておくようにね。
「誰にも言いません。言ったが最後、萬流の時の勢いは逆ターボ大噴射といった感じで失速し、ついには消滅という事態にもなりかねませんから」
ふふふふ、番頭と、私だけの秘密だよ。
「ふふふふ、まことに……」
読者諸君のノゾキ見趣味を満足させたところで、一気にお稽古に入る。
来週はいっそ発禁覚悟で「家元ポルノ」でもやってやろうかとも思っておる。
「家元と、私が……でございますかぁ?」
バカモノ! そこまでサービスする気はない。
実用になるヨロコビ
さて、「近所の喫茶店」のコピーである。
今回も、「近所の」という三文字に踊らされて、「近所」ということをコンセプト(概念。転じて、広告用語としてはアイディアの核になるテーマのことを言うようになっている)にした塾生が多かった。「パジャマ姿で」とか、「怒鳴れば家に聞こえます」とか、である。
そういうことを問題にしていたのではない。
要するに、有名な××などという喫茶店ではなく、任意の、全国的には名前も知られていないような「とある喫茶店」のコピーを書いてほしかったのだ。
これがうまくいくと、諸君のコピーが即座に「実用」に使えるではないか。この、「実用」になるヨロコビを、塾生諸君に味わってもらおうという親切な|萬心《まんごころ》で出した宿題だったのです。
実は、家元も、行きつけの「原宿・レオン」という喫茶店のコピーを無料で頼まれたことがあって、『従業員がよく奥の椅子に腰かけてレオンのコーヒーをしみじみと味わっております』というような(正確には忘れた)コピーを書いてやったことがあった。
ところが、なんと、一行一千万円の噂さえある家元のコピーが、没になってしまったのであった。もったいないやら口惜しいやらで、バカモノ、レオンの店長! いつか使えよ、なのである。お願い! 使ってね、なのだ。
「おいたわしゅうございます」
それではとにかく、その、実用になりそうな「実在の店」をとりあげたものから見ていこう。
・万城目充『ゆったりとしたスペース、豊富なメニュー! 漫画や雑誌がどっさり!! だから潰れました』(梅) これには、中央区新川の「珈琲館」というスタンプが押してあった。
・平岡清美『浩宮様御学友御用達店』(梅) なんとかして立派に見せようという心意気を買う。
・河野芳樹『実を粉にしていれたコーヒーです』(梅) 中野の「サムシン・エルス」のマスターが代筆した由。実用の始まり。
・若生良一『大作コーヒーのマスターはモルモン教徒にぱんのヘタをなげつけた』(梅) ちっとも広告にはならぬが、おもしろかった。話の種になる。
・石塚圭一『アレに見えるは徳間音工のカレンダーじやないか』(毒) 家元んとこの前の前の助手と同姓同名だが、どのみちバカなやつではある。ガンバレ。
・大沢郁子『10年前の郷ひろみ来店の熱狂ぶりが今もありありと壁の額にのこる店』(梅) わかるなぁ。
・加野典子『カタギの客お断り!』(梅) 大阪西成区に、ほんとに、キッサ「極道」ってあるんだと書いてはあるが、本当かなぁ。本人、自信たっぷりだけど。
・船山満『文学、音楽、芸術……ああ、スケベしたい』(梅) これは、名曲喫茶らんぶる(高田馬場)のためのコピーらしい。
・南賀文隆『日本最西北端の喫茶店』(竹) 石川県珠洲市という土地がもう“日本最西北端”なのだという。なるほどねぇ。
・冨澤淳『珈琲に倫理を』(梅) あんだけ倫理が流行したんだから、いいかもしれない。東銀座の「ブラジレイロ」のためのコピーだという。
・鈴本康敬『惜しいあの方、美味しい珈琲』(竹) これは、青山斎場(つまり葬儀場)の前にある喫茶店「ウエスト」用。家元の事務所のすぐそばでもある。
・諏訪克己『トルコ帰りに骨休め』(梅) 吉原の近くの「大門」という店。実際にこんな貼り紙があると「つい」ということもありそうだ。
「つまり、コーヒーを飲んでいて、貼り紙を読んで……|つい《ヽヽ》でございますね。フッフッフ」
「ここ」の店のを作れ
・山田丹生『焼きたてで、ぎざぎざのパン切りナイフさえまだ刃がたたぬふくよかなパンを抱きしめてママが帰ってきた』(梅) ちっともコピーになっていないが、「ふくよかな」の使い方がうまかった。神戸の「エフ」という店らしい。
・塩野豊『いつだって、そこに行けばケンカができる』(梅) 他の人にも言えることだが、こういう場合、「そこ」ではなくて「ここ」、「行けば」じゃなくて「来れば」と書く。そうでなきゃ広告にならないじゃないか。
・城田瑞枝『痛快! トイレ鏡張り!』(梅) 青学の近所に、あるらしい。下半身を映すのはいかがなものか、と、城田君は言っておる。
「そうでございましょう」
・乾みさこ『「青べか物語」のむかしから、「ディズニーランド」の今日まで、笑顔で、がんばってきました』(梅) むろん、浦安駅前。喫茶「水車」。
番外で、こういう|通信《ヽヽ》もあった。
・長浜要悟『私の島には最近オープンしたスナック喫茶“入船”というのが一軒あるきりですが、その店のママは出戻りのくせに若くてスタイルも良くてチチも大きくて美人で、島中の男がパーになっとります』。特別に(梅)をやる。
こんなところが、実在もの。
では一般の優秀作を。
・越馬正治『表向きは、喫茶店です』(梅) なんだか、行ってみたくなる。
・谷川道雄『落着けます。客はいません』(梅) うむ。
・吉沢岩男『えらそうにしてるわりにゃあ だれでも入れる店』(梅) 多いんだよね、これって。
・宮崎茂『新しい家内がきました』(竹) なんとなく行っちゃう。
・大橋純子『この町のニオイ袋』(梅) きれいに決まったね。
・黒木悟『モーニングサービスはガラス越しの女子校生の群れ』(梅) 通だねぇ、この人。
・前田益尚『歌舞伎町でウェイトレスがパンツをはいているのはココだけ!!』(竹) これはこれで、たしかに売り物ですよね。
・森田征『町内サミット会場』(梅) ご近所もののなかから。
・渡辺真理子『ウチのサラダは近所の畑から持ってくる』(梅) これは広告になる。
・高山普慶『マメ お見せ致します』(竹) おっと、もう少しで(松)をくっつけそうになっちまったい。
・松永光弘『娘はしばらくは嫁にやりません。店主』(梅) 多かった「看板娘もの」のうちから、ひとつ。
・平良誠『AT HOMEな三ちゃん喫茶店です』(梅)
・山口正人『あの店には、ルドルフ殿下とゴーダ伯爵のサイン色紙がある』(梅) 「あの」が、「うちの」になってたら(竹)だったんだけどねぇ。
・吉田泰清『自動ドアが外からしか開かないゴキブリホイホイ喫茶を私は知っている』(毒) こんなので宣伝になるか?!
・奈岡九介『ババァ笑うな』(梅) これを貼り出したら、絶対に客が増えると思う。好きだ。
・村川幸子『急募 もう一名美人女子大生(このふだをはずすと、どっと客がくるのです)』(梅) すごい深慮遠謀。
・若林建『ゴキブリはクモが退治しました』(梅) コワイ。
・北川裕行『すでに一〇〇組のカップルを破滅に導きました』(梅)+(毒) 深みのある作だ。
・重兼芳子『お尻が洗えるトイレ付き』(梅) まったくの実用向き。あっ、この塾生、ブンガク関係の人だ!
津寺利嗣雄里『宅急便もやってるぞ』(梅) 名取も実用もので入っているな。
小林井秀雄『そのマスターは、頭突きでコーヒーを沸かす』(毒) 久々の小林井の(毒)。
名取に特権を与える
ところで、名取は特権的に「自分の住所は省略してよい」。これは、名取寸前の冨士栄君の提案を受け容れた。
・いしかわじゅん『お父さん、ごめんなさい』(梅) 個室喫茶のコピー。マンガ界からの、期待の新星である。
・内田滋子『ここのマスター、スナック芸大全をみんなやってくれるんだぜ!』(梅) スナック芸大全とは、いわずとしれた家元の著書。こんな店があると、私がよろこぶ。
・百江和昭『葉書、置いてます』(竹) いわゆる萬流のゴマスリものであるが、その次元をつきぬけている。このような店が増えることを、家元は星に願っているのである。
今回は、塾生諸君、口を揃えて「難しかった」と言っておった。いざ実際に効果をねらおうと思うと、無貴任になれないものなのです。しかし、こういった課題がスイスイできるようになると、カラオケ名人以上の地位を、ご近所で得ることができるので、せいぜい精進していただきたい。
今週の宿題
もうホントに難しいのだが、「禁煙」をすすめるコピーを宿題にする。私と番頭はつい先日も禁煙の勝負をして、互いにすぐ負けてしまった。
このコピーがうまく書けたら、全国で数人位の愛煙家にタバコをやめさせることぐらいはできるのではなかろうか、と私は思う。
「『オエッ』というのは、どうでございますか」
さすがにうまいね、番頭さんは。
「私、自分のコピーに訴えられて、タバコがまずくなりました」
すごいすごい。
では、家元は帰るぞ。
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わっはっはっはっはっはっはっはっ、私が家元の糸井重里である。
古いスーパーヒーローもののビデオを観ながらハガキを読んでいたら無性に高笑いしたくなってしまった。
「うーむ、家元! 今日のところはこれで引きあげるが、この次は必ずやおまえを滅ぼしてやるでございます」
なにッ、番頭血迷ったか。この萬流本部上空に毎夜出没するという怪しい円盤を操っているのは、さては……。
「ヌフフフフフ、わっはっは、気が付くのが少し遅かったようだな、イエモトキッド。我がバントー星人は全地球人を、その、えーと、なんつーかその、わっはっはでございます」
笑ってごまかすな、バントー星人。地球人をどうしたいというのだ?
「それはその、えーと……ハガキの整理を手伝わせたいのでございますのだ」
わっはっは、バントー星人君、私と意見が合うじゃないか。我々はぁ、ここにぃ、共闘のぉ意志を持ってぇ、ま、やろうではないか。
「遊んでいてもラチがあきませんものねぇ。今週は正月休みがはさまってやれやれハガキが少ないわいと思っていたら……」
第二弾が、どっと着いて、やっぱりずいぶんの量になっちゃったもんね。それにしても、今回は難しい出題だと思っていたのに、塾生諸君がよくくいさがっているので驚いた。
「さようでございます。有名人塾生の皆さんも油断しておられるとバーシバシ落とされてしまいますでございます」
常識から二段階飛ぶ
とにかく、「マルクス全集」のコピー、順に見ていこう。
はなからこういう塾生もいる。困ったものだが、面白かったので。
・山崎節郎『難しいので次』(梅) しかし、こればっかりじゃ稽古にならない。
・笠原教『さて、寝るとすっか。かあちゃん、読んでくれ』(梅)
・尾山望『とにかく買え、読んだことにしてやる』(梅)
・三好妙『どや、にいちゃん、誰も持ってへんで』(梅)
・江原伸行『好きな人はまた格別ですからなぁ、これは。ワッハッハッ』(竹)
と、このあたりを続けて読むと、『枕を高くして寝たい方に』とか、『漬物の|重石《おもし》はこれが一番』などというものを提出した塾生は、「むむっ、俺のは落ちたな」と納得しかかる。
・井上透『あのう、私、あれの日に読むと、とっても量が少なくてすむんです』(梅) などというオカルティックなのが出てくると、『早漏がなおる』などがあまりに常識的に見えてくる。
常識的なのが悪いとは言わぬが、要するに「そーゆー手の冗談」は、しょっちゅう聞いてるだろ。だから弱いのだ。
それに比べると、次のような無政府主義者たちのインボーかと思われるようなコピーのほうが、ずっと出来がよい。
・木村立哉『未発表原稿「マルクスの少女ハイジ」含む』(梅)
・植田覚『はがきに「マス全集送れ」と書いてお送り下さい。サイズは必ず書いて下さい』(梅) 植田君のは、『サイズをお忘れなく』と、軽くマトメたほうが力強い。
・滝口文一『機動戦士マルクス』(竹)
・松島宏『マルクス一万弱』(梅)
少し理屈を言う。
今回の宿題に関しては、ほとんどの塾生諸君が同じコンセプトを立てて考えていた。
つまりそれは「私(それぞれの作者)には難しくてよくわからない。だから縁がない。そして、縁がなくてもまったくかまわないと思っている」といったようなことだったと思う。
あとは、そのことをどう表現に結びつけるかである。これを、『漬物の重石に』とか『睡眠薬がわりに』とか書いた人々は、コンセプトが出来た段階からその次の飛躍ができていないのである。
『機動戦士マルクス』も、やはり言いたいことは同じだ。しかし、これには|新しい《ヽヽヽ》顔があるのだ。新しい顔でパッと目をひいて、コンセプトを一気にのみこませる。
テーマにばかり気をとられている諸君には「単なるゴロあわせ」としか思えぬであろうが、その単なるゴロあわせがツボにはまると、たいしたパワーを持つものなのである。
これが、名取クラスになるとさらにもうひとひねり加えたりする。そのひとひねりのおかげで大爆発はしにくくなるのだが、確実に点をもらう実力とは、こういうものなのだ。
津寺利嗣雄里『告白手記「夫の目を盗んでマルキシズムに溺れた私」』(梅)
『とにかくガンジーは腹がへる。マルクスにしなさい』(竹)
小林井秀雄『アフター・マルクスは、やさしくね!』(梅) 小林井、苦手の課題によくついてきた。
山口井正明『労働者諸君!! 買う権利を行使せよ』(梅) 山口井名取のものは、また別の角度から書いているが、批評と宣伝が一緒になっていて、さすがである。
もっと楽々と、こういうのでも点はもらえる。
・早瀬民子『右や左のダンナ様ぁー』(梅)
・平井謙男『マルクスは吉野家より20年早く生まれた』(梅)
・佐々木英悦『御引出物の大革命』(梅) そりゃたしかに革命ではあろうな。
小百合さんに頼む?
もっとわけもわからず直滑降みたいなのもあるぞ。
・近圭子『団地の話題』(梅) こんなコピーが、特大ゴシック体でどかあんと印刷されていたりしたら、さぞかし目をひくであろうなぁ。
続いて、知性派といいますか、マルクスの内容を意識しつつ書いたものを少し。
・高屋均『課長も恐れる、襖の下張り』(梅)
・嶋本雅之『政治犯として出所したいあなたに』(梅)
・高村忠夫『今回に限りダンピングするが、本書の主張を否定するつもりはない!!』(梅)
・新清子『ばーちゃんが何で買うの? ばーちゃんにだって「彼」があったのよ』(梅)
・加藤秀広『三ページ進んで二ページさがる』(竹) この場合はレーニンさんのような気もするが。
・奈岡九介『こんなときバカねぇ……そんなこと書いてあるわけないでしょう』(竹)
・片岡博『理論を大幅に変更してみました』(梅) 面白いけど、それはしょっちゅうやってたことよ。
ここいらへんは、どうもドッと沸かないな。やはり大衆商品でないと「通りすがりの人まで魅きつける」ようなコピーは書きにくいのであろう。
ハガキの他に、原稿用紙に長々と書いたものも来ていた。秘書がどうの立候補がこうのと、まるで小説みたいなことが書いてあって、
「我家の門松は、セイフーチェーン桜上水店のそれよりも、でかい松と竹によって構築されていることをお忘れなく。なお梅は庭に六本あるよ」
などと、力の入らぬ脅迫まで添えている。こういう力の入らなさは痔持ちに特有のものである。十本以上もあるコピーも、どうもいただけぬ。
「選挙中の、吉永小百合さんの、呼びかけがよみがえった。『みなさん、大好きなノサカアキユキさんを、どうぞよろしくおねがいします』家元先生、ノサカの代りにマルクスを入れる、これできまり。松うたがいなし』
何を言っておるのだ。ノサカの代りにマルクスを入れたところで(梅)もやれぬ。こういうことを言っている人にコピーライターは無理だ。小説家ぐらいがせいぜいであろう。しかし、最後に捨てゼリフのように書いてあった、
『色魔マルクス!』
は、『団地の話題』と同様の使い方で効果をあげぬこともないと思われたので、(梅)をひとつだけ与えることにする。
「よろしゅうございましたね、野坂先生」
あらっ、よそのページからのお客さんだったのか。そういうことは早く言ってくれなくちゃ。では(梅)に(お茶菓子)をつけてやろう。
「またまた新しいお点でございますかぁ」
そうだ。(お茶菓子)は十個で(梅)に相当する。
サア、一気に行くゾ
思わぬところで手間どってしまった。稽古を続けよう。
・武村和人『私に途方をくれた』(梅)
・外山秀樹『部屋に迫力』(梅) 簡にして潔である。
・斉藤茂市『徳川家康下取り致します』(梅)
・高沢敬済『こんなに早くお届けできるとは思いませんでした。没後二百年記念』(梅)
・小針洋三『きのうも、ホイチョイプロの人が買ってったんですよ』(梅)
・堀江克彦『|他人《ひと》のマルクスより、自分のマルクスが可愛い』(梅)
・三宅悠子『汚し、アンダーライン引き等のサービスいたします』(竹)
・伊藤義幸『右を見て いやもう一度右左』(梅)
・宇川拓水『舌をかんで「ス」と発音すると間違いです』(梅)
・戸田正彦『たまには恋のない世界に浸ってみませんか』(竹)
こうしてずっと読んでいくと、なんか、今週の課題は飽きるねぇ。自分で出した宿題だったけどさ。
・藤原ゆきえ『母は寝る前に黒酢を飲みながらマルクス全集を読んでいます。偉大です!!』(梅)
・高谷尚志『親指と人さし指で|マル《ヽヽ》サインをつくって下さい。黙っていても「マルクス全集」がお求めになれます』(梅)
難しかったなぁ……。
・中嶋俊平『金で解決できないものなんて、ろくでもないですよね』(竹) ということなのか、そうでないのかわからぬが、こういう週は早く過ぎるにこしたことはない。
「わっはっはっ。イエモトキッド どうやら正月疲れのようでございますだな!」
いつまでも遊んでるんじゃありませんよ、バントー星人!
今週の宿題
やきいも、である。
いわゆるオトメたちばかりか、幼児、老人、働き盛りのビジネスマンまで、やきいも買いに走らせるようなコピーを作ってくれ。
同巧多数の罠をうまくかいくぐって、みごとに(松)を射とめてもらいたい。
「今週は(松)なしでございましたものね」
家元としては、全員に(松)をやりたいくらいの気持はあるのだ。「やきいも」はチャンスだぞ。何万通でも読んでやる!!
「うっ、イエモトキッド。パワーアップ光線がまぶしゅうございます」
わっはっはっはっはっ。
では、家元は帰るぞ。
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浪花さておき、私が家元の糸井重里である。
もくもくもくもく……。 なな、なんだなん の くもく いう って 、 怪しげな は どうなっ のだ 番 ! 番頭はどこ !
「いやぁ、家元! 登場を少しでもカッコよく演出しようと、ない知恵を ましてゴホンゴホン、ドライアイスの煙をたいてみたのですが、どう 量が多すぎたようでご います。フーッ、フーッ」
文字が見えなくなるほど煙を出しては演出にならぬではないか。 だ残っ おるぞ。 ントに困った忠義者である。
「あー、やっと煙を払いました。一時はどうなることかと心配いたしました。校閲の担当者が怒っておりましたし、編集長は空欄を文字で埋めようといたしますし、そりゃあたいへんなことでございました」
もう二度とこんな馬鹿なことはしないようにね。
このところ塾生諸君の実力が ぐん向上してきて(まだ換気扇を回しといてくれよ)家元としてはよろこばしいかぎりなのではあるが、新規に入塾してくる人々にとってはつらいことであろうな。
「水準というものが、三メートルぐらいアップしてきております。しかし、平均点の上昇にかかわりなく残るものは残り、落ちるものは落ちるという原則は変っておりませぬ」
そうだ。つまり、水準が上ったということは、ボツの質が上ったということであるからな。おそれることはない。
「もうコワくないでございます」
七難隠す短いコピー
では、パンダ見物勧誘のコピーを見ていこうか。
あらかじめ、多かったものをあげておくと、『白黒ショー』とか、『白黒はっきりしろ』といった毛の色にちなんだものが第一位。
なかなか妊娠しないことに関して書いてきたのが、次点。
それと、『商売繁盛、笹持ってこい』という季節ネタも多かった。
同じネタでも、
・竹端満枝『十日ゑびすの後の笹は私達におねがいします』(梅) と、積極的に書くとよい。
さらに、白黒をテーマにした場合でも、ここまで書くとやっぱり強い。
・花城茂『カラーフィルムで撮ってください。お尻の辺りの黄ばみも写ります』(竹) ねっ!
それでは、ビシッと短くキメたやつを並べますだよ。
・堀江克彦『昭和史のお年玉』(梅) なるほど。
・大橋祥哲『おきゃんな公務員』(梅) そうだな。
・柿沼徳治『毛配りのすすめ』(梅) 時流ネタですな。
・滝口文一『上野竹人形』(梅) 文字|面《づら》のみでも勝負ができる。
・藤井貴子『動くおにぎり』(梅) 南伸坊は歩くおにぎりであるが……。
・渡部一彦『国家畜』(梅) ん。
・土田寿江『深窓の令獣』(梅)
・花岡邦彦『萬獣の王』(梅)
コピーの短いのは七難かくす。じーいいっと見ていたら欠点もでてくるはずだが、こういうふうに短いと、アラを探すより先に妙にナットクしてしまう。
逆に長いもの。
・新井裕美『晩年中国へ渡った力道山は、徹夜あけにミッキーマウスの帽子をかぶり、黒いブラジャーをして山東省の原野をかけまわった』(梅) おもしろいけれど、多くの人に、いっきに伝える力は弱くなる。
いっそ、ものすごい|通《つう》好みも紹介しておく。
堀江克彦『私は早野凡平の弟です』(梅) 堀江君、二本目。
城靖『レオポンはどこへ行った』(毒) これはせめて『レオポンの分まで頑張ります』とでもしてほしかった。
冨澤淳『パンダにタコ絡む、新幹線ストップ』(毒) 冨澤君、自己申告どおり(毒)だった。
こういったヘンなのも、めげずに出してもらわぬと、こちらもさみしいのである。
では、視線を広く行きわたらせて、あらたに選んでいく。
山口井正明『悪い言葉を教えないで下さい。例・けんこまだらけ』(梅) こんな貼り紙、九官鳥の鳥舎によく貼ってある。おかげで九官鳥の人気が落ちないんだもんね。名取快調。
上松重治『今日もお母さんは迎えに来ませんでした』(梅) 名取になってからのコピーが難しいのは、他の世界でも似たようなものだろう。
それにしては萬流の名取諸君は図々しいのか、実力があるのか、大胆に挑戦者ダマシイを忘れずに書いてくる。
小林井秀雄『汚なくないよ、パンダのウンコだもん』(梅) あいかわらずの下ネタだが、たしかに(梅)以上のものだ。
なにより今週一番勢いづいていたのがこの人。落せないのが何枚もあるのだ。
津寺利嗣雄里『オッ、すばやい動き!! たちくらみですね』
『凄い目つきで待ってます』
『おとーさん、あれじゃー子供できないよねー』
『一頭は正直パンダ、一頭は嘘つきパンダです。質問は、どちらか一頭に一回しかできません』
『前略 日本製のファスナーにしたら、毛の巻き込みや地肌へのかみつきがなくなって、朝晩すこやかに過ごせるようになりました』
と、ぜんぶまとめて(松)ということにする。
パンダ愛してますか
一般常連も負けるな。
・小林牧朗『チチ キトク パンダ ミニイケ』(梅)
・海原瑞『つぅれてぇーにぃげてよぉー』(梅)
・窪田浩幸『パンダも清純派から実力派に変りました』(梅)
・船山満『よし、オレがはらませてやる』(毒)
どうもとびぬけたのがないな。
・田代英明『パンダよ。女子大生になぁーれ』(梅) これはヘンに力強いなぁ。よく読んだら弟の作ったものだって……。
・|葎迫《むぐらさこ》照夫『僕はパンダを見た事がありません。既に見た方、どなたか文通して下さい』(梅) 文通というのはイイね。
・鈴木康敬『リンリン・ランラン、留園。ホァンホァン、フェイフェイ、動物園』(梅) これもアナクロでおかしいですな。
・蔵方透『日本語、少しわかるようになりました』(梅) 同巧の宇川拓水君にも(梅)を。
・城田瑞枝『いつまでもくれると思うな代わりのパンダ』(竹) これはイイね。
同じく……、
・黒木悟『天然ものはこれが見納めかもしれません』(梅) も、広告になっている。
オットーイ、きついのがあったね。
・市川尚『友好使節を装った巧みなる亡命者』(竹) それにしちゃ長生きしないから不思議。
・本橋昭二『脅しじゃないぞぉ。俺はもう2匹殺してるんだぜぇ。日本政府』(梅) こういうことを言いだす人も出てきちゃう。
まじめに考えてる塾生もいるのだぞ。
・佐藤敏彦『パンダは銀座線。ディズニーランドは東西線。ここが思案の地下鉄・日本橋駅』(梅)
・青野智『汽車の時間まで』(梅) これも、正統派コピー。
・安達孝『私の会社のパンダは結婚してすぐ子供ができた』(梅)
・那須英憲『くみちゃんは「タヌキ」と言われるとおこるけど、「パンダ」と言われるとニッコリする』(梅)
一億総パンダの時代を、一億総萬流の二人が書いたのだな。
・加藤成二『ワアー、ヤダー、生きてる』(梅) 簡単にできた。
簡単でうまくツボにはまったのが、これ。
・遠藤始『わてがパンダやでぇ、ササや、ササや、ササ買うてこい』(竹) この塾生、年末のカラオケ合戦の時、このコピーを思いついたんじゃないかしらん。
・谷岡洋『パンは与えないで下さい。この動物はしゃれがききません』(梅)
・西之入俊哉『パンダ脱走! 恐怖の帝都』(梅) これらは、まったく無責任にパンダを見ているところが、結果的にうまくいっている。
思うに、この今回の課題、塾生諸君には、あまり愛されていないようである。
動物の宿題は、前に雑種犬・シロというのがあったが、あの時のコピーは、総じてあたたかかったように記憶しておる。
「パンダなんて、みんな嫌いなんでございますよ、きっと」
おや、番頭さんも、やっぱり。
「私は、ああいう生殖能力のうすい動物には三くだり半をたたきつけてやればいいと思っておりました」
いや、そうはいっても、回数じたいが少ないのだし……。
「少ないのは誰だって同じでございますッ!」
番頭がなぜか機嫌を悪くしてしまった。
稽古を続けよう。
・倉上みのる『おれなんか、糸井重里がパンダ観てるとこ見たぜ』(梅) そういえば、おれなんか糸井重里だけど、娘のあんだとパンダ見てるとこ見られたような気がしたぜ。
今も凄いんだぞォ
パンダの人気がずいぶん落ちているように諸君は思っているかもしれないが、マスコミに登場する回数こそ減ってはいるものの、やっぱりあのあたりたいした混雑をしているのである。
・島田昌夫『見えたら消えないうちに、お願いごとをします』(梅) というくらいなのだ。島田君、よくめげずに頑張ったね。
・松崎直太『ねそべる擬態語』(梅) つまり、ゴロゴロというコトバの生物的表現ということであるな。
・浜田彰大『今年はニュー・メディアを勉強して、動物園のニュー・リーダーの地位をかためます』(松) ちょっと難しいけど、今週は、これを本(松)にする。
珍しくパンダに好意的なのをひとつ選んでおく。
・大庭範子『熱を出して寝ていると、氷のうを替えてくれそうな気がします』(梅) うん。
これもおまけだ。
・柴田喜久『うんこをしても悪びれない』(梅) うんこをして悪びれる動物というのも、なかなか愛らしいと、家元は思う。
今週の宿題
『春の日本観光ポスター』をつくることになった。
外国の人々に、『にっぽんにいらっしゃい』と訴えるようなコピーを作ってくれ。絵柄や写真を添えてくれてもいい。
「フジヤマ、フンカ、えーとえーと……」
苦しんでるねぇ、番頭さん。なにも英語で作ろうと思わなくていいんだよ。できるだけ簡単な日本語のほうが良いとは思うが、そのへんは、ま、適当に。
「萬国日本の春。できました」
まぁ、そんなもんかね……。塾生諸君に期待しておる。
では、家元は帰るぞ。
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このたびはどうも、私が家元の糸井重里である。
番頭と私が、近づいた萬行(まんぎょう。萬心をもってする旅行を、こう呼ぶものなり)についての計画を練っているところに不気味な荷物が届いた。
「家元、こ、これはたまりません。荷をほどいたら、もう臭くて臭くて……」
なかみは何なのだろう。その手でしらべてみてくれ、ぬかみそをかきまぜるときのようにして。
「その手、と申しますと?」
番頭さんの身体についてる二本の腕の先のことだよ。
「こ、これは、こうした臭いものをかきまぜるためにあるものではございません。もっとその、やわらかな、ふくよかな、ぐにゃっとしてるかと思えば意外に内側から弾ねかえすような感じもあったりする、いやーんとかも言ったりするけど、何だこのどこがいやなんだ、バカバカだっていやなんだもん……とかなんとかそういうものに触れるためにあるものでございます」
わかっているから、早くしなさい
「はい。腐ったカレーがビニール袋に詰められておりまして、その中には、えーと、新巻鮭の頭と、ニンニクと、えーとえーと、にんじん、空缶、ふきん、もちのカケラ……などが入っております」
萬流に対するイヤガラセにしてはまことに芸がない。かつて私が『ヘンタイよいこ新聞』というものを発行していた時にも、〈恥ずかしい根っ子の会〉と称するやからが、数々のボーガイを仕掛けてきたが、ひょっとするとあの時の残党の仕業かも知れぬな。
いずれにせよ、イヤガラセをすることでしか自己の存在証明をできぬ者共が世の中にはおるということだ。無視してやるしかないな。
「でも、家元ォ! ニオイが残って、無視はできても無嗅ができませぬ」
じゃ、今日の稽古は表の公園でやることにしよう。
宗薫先生、破門さる
「禁煙をすすめるコピーが、宿題でございました。私の『オエッ』という作があまりにうまくできましたもので、塾生の皆さん、それに負けじとずいぶん張り切ったようでございます」
この分だと、ハガキが「萬」の数に至ることも有り得ないことではないな。
「いやでございますね。私、たまには家に帰って愚妻や豚児の顔も見とうございます。ハガキばっかし見てるんだもん」
|痴《し》れ者め! ハガキあっての萬流ではないか。愚や豚に会いたかったら、その愚や豚を郵便で送らせなさい。都内なら一日で着く。
「ハハァ、萬心を忘れた私が悪うございました」
悪いとは言わないけれど、手が臭いな。えー、それはともかく、禁煙というのは難しいものである。
「おォ!」
こぶしを振りあげるナって。今回多かったのは、「愛でタバコをやめさせる」というコンセプトが第一位。『私のためにやめて』といったやつで、これで成功した実例が多いそうだ。
「そうですね」
だが、|愛より強い《ヽヽヽヽヽ》タバコを喫っているやつはやめられないのだ。
何だ、その目は。
次に多かったのが、『大人になったらやめよう』というもの。これは既に常識的なコピーになってしまったので、点はやりにくい。最初にレオナルド熊が言った時は面白かったけどね。
禁煙するとお金がたまるというのも多数。これには選ぶべきものがあったな。
・中川宗樹『タバコをやめてグアムヘ行こう』(梅) 一年にマイルドセブン360箱と計算すると、73000円。具体的なのがよかった。しかし……、
・鈴木鳴彦『喫煙で死んだためしは少ない。禁煙で金を貯めた話も少ない』(毒) こっちのほうが真実に近いようにも思う。この人、六十歳。総じて老塾生は、禁煙を明るくあきらめている人が多かった。
・川上宗薫『みんなで喫えばこわくないってば』 何を考えておるのだ。久々に(破門)を申しつける。
・藤谷信夫『煙草を吸わぬ御陰で、父は倒れてからも、寝たっきりでもう二十年余り生きております』(毒) この人も、六十一歳。喫えとすすめてるとしか思えないだろ。
・竹内卓二『飲む打つ買ってもタバコは吸うな』(毒) これも、六十五歳の人。喫煙ひとつが、他の道楽みっつ分だってんだから、つい喫いたくなっちゃうよ。
これは、キツイよ。
・西之入俊哉『タバコなんか喫ってるから「|来年《ヽヽ》二月下旬に単行本になる」の間違いに気づかないのだ』(梅) 番頭さんッ!
「はい。萬流コピー塾の単行本は、|今年《ヽヽ》の三月に発売と、あらためて訂正するでございます。それもこれも、タバコのせいでございます」
こらこら、また手をひらひらさせるッ。臭いってば。
では、アフォリズム風。
・熊谷良『結局、私の人生は一本の煙管なのだろうか』(梅) そうかもしれないが、ちがうような気も、すぐにしてくる。
・草川康之『|警察《サツ》で出す、|草煙《ヤニ》一本で、|親分《オヤ》不孝(極道歌留多より)』(梅) まぁいいけど、注釈やルビが多すぎる。
名取が二名誕生した
じゃ、うまいの、行くよ。
・角田文善『ぼくらの肺はタンポンだ』(竹) 怖いね。
・船山満『血を煙で洗う』(竹) あっ、名取誕生だ。船山君には、家元の重を与えて、船山|満重《まんじゆう》という名を授ける。
・宮川禎一『たばこをたつと たつものたった』(梅) これはマイホームのことだそうだ。
・武田洋子『たばこをやめると、ももひきもやめられます』(竹) 嘘と思えば嘘、本当と思えば本当だと思う。うまく書けた。
小林井秀雄『ぎょう虫が死んでいた!!』(竹) 初代名取、もうちょっとで(松)になるところ。
津寺利嗣雄里『口の中でハムスターを飼ってみると、よくわかる』(梅) あいかわらず健闘しておるな。
上松重治『やめないと、警察を呼びますわよ』(梅) 「禁煙法」なんかできたら、日本のアル・カポネなんか生まれちゃうね。
山口井正明『デキル男のライフワーク』(竹) しれっとしたところがよい。名取連は、さすがではあるな。
・冨士栄秀也『吸わない人も、止めなさい』(毒) あと半点で足踏みしていた冨士栄君、ついに10点。冨士栄|秀井也《ひでいや》として、つまり、家元の井の字を与える。
さぁ、ずらずらっと並べるぞ。
・伊藤作子『「乱行」の味を先生に聞かされてから煙の味があまりにチンケで』(梅) すげぇ。
・森田弘美『ヤニ臭い人、ごっくんしてあげない』(梅) すげぇ。
・小林江美『木村先輩は80km/hで運転中、口から火のついたタバコを落とし、あわてて探して電柱に激突して死んだ』(梅) これも、すげぇ。
・大橋聖子『うちの父はタバコを吸わない』(梅) これ、父って、専売公社に勤めて三十四年って人なんだってサ。他にも、身内ものではないけれど、
『専売公社の人は人前でしか喫わない』ってのもあった。
・林貞男『愛煙家のみなさーん、タバコの葉の生産地では、葉にウンコをかけていましたよ』(梅) 同巧の柳君と有安君にも、今回は特に(梅)をやる。
・山野克人『男とタバコが一晩中同じ部屋にいて何もなかったなんて、とーさんは信じるもんか』(毒) 捨てるには惜しいコピーだったのだ。
・石井徹也『医学生には、死体解剖実習以後煙草をやめる者が多い止めたくない奴は……大抵小児科医か米屋になる』(梅) 石井君、それはそうと、テンとマルはキチンと打ってくれ。
・川村敬一『因果関係究明なんてやめろ!! こわいじゃねぇか』(梅) これは当然ガンの話だが、まさか他のこともあるんじゃないだろうね。
・田代英明『僕が禁煙したのに、君の乳房たばこくさいね』(毒) うーむ、謎ではあるな。
・小和田正樹『俺と間接キスしてるやつ相当いるね。(ある浮浪者より)』(竹) この視点はフレッシュだったね。
・|葎迫《むぐらさこ》照夫『ホテル火災の時、つい、煙を深く吸い込んでしまったんです。あの人は』(梅) あり得る。
・松村繁樹『喫煙は満員電車で』(竹) これも、発想がいい。ただし、顔にドスが効いてる方はご遠慮くださいとのこと。
・窪田浩幸『周囲に奇跡を見せるため』(梅) いいけど、他人ごとっぽい感じは否めない。
老・若に認識の差が
若い人たちの今回のコピーは、みんな「禁煙は簡単にできること」みたいな軽さがあるのだ。それに比して、お年寄は「禁煙はムリである」という発想をしておる。どっちでも、効かない。まことに萬道とは難しいものではある。
では、ハシ休め。
・新井裕美『ベラ星人の地球侵略に対し地球防衛軍は禁煙で対抗するしかなかった』(梅)
・大庭範子『セブン……ブン、文春ください!』(梅)
・小林牧朗『一服したら、テンパイしているのがバレちゃった』(梅)
ハイ、続けますよ。
「難しいものでございますねぇ。スパーッ」
わざわざ「スパーッ」と喋りながらタバコを喫わないでください、番頭さん。
・鈴木康敬『父は肺ガンで、兄はタバコの煙をかけた、かけないで、刺されて死にました』(梅) 肺ガンの父にタバコの煙をかけたのが兄だったらもっとこわい話ですね。
・乾みさこ『なぁに、2本目に火をつけるのをちょっとばかり、延ばしゃいいんだ』(梅) ちょっとばかり、数十年ね。
・長塚隆『もし、やめられても、吸っている人に向ってイヤな顔したり、セキばらいをしたりするような人にはなりたくありません。ん?! あー、そうだよっ吉原! おメーの事だよ!! 先に本社に行きやがったおメーの事よ!!! クソ!!!』(梅) なんだこりゃ。
・内田滋子『|あなた《ヽヽヽ》の子を、産むのだから』(梅) とか、
・小倉伊都子『お腹の子も望んでおります』(梅) みたいなのが、ま、いわゆる説得力はいちばんあるみたいではあった。
スパーッ。
今週の宿題
難しいのを承知で出す。「子供たちに、ベンキョーをすすめるコピー」禁煙の稽古の余韻が残っているうちに、取り組んでいただきたい。
「『これは国民全部が必ず受ける刑なんだよ』というのは?」
すすめるという意味では弱いけど、まぁいいんじゃないの。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
[#地付き]上杉清文
じつは、このあいだ、「日本と米国が関係をするのは何のためだと思われますか。どんなことでも結構ですから、その理由をお書きください」、というアンケートを、日米両国民を対象にして、集計してみたのである。
その結果、回答者の9割近くが、
「娯楽のため」「本能によるもの」「欲望のおもむくまま」「排泄欲の満足」「種族保存」「子供のため」「愛の確認」
といった意見を寄せてくれた。
こうした答えは、大雑把にいって、つぎの3つに分類できる。
関係をするのは、ようするに、「楽しいから、ついしてしまうのである」、というもの。
関係をするのは、つまり、「愛情の証しであり、日米間の絆をさらに強めるためである」、というもの。
関係をするのは、との両方である、というもの。
そして、日米両国民の回答のなかでの占める割合は、つぎのとおりであった
日本 26・7% 25・8% 47・5%
米国 39・8% 21・3% 38・9%
ここでは、日本と米国が関係をすることは両国間の愛情の証しだと考えない人は、日本人より米国人のほうにやや多く、愛がなくとも関係はできるという考えかたが、一般的にいって、日本より米国に広く流行していることと関連して、もっと注目される必要があるだろう。
そして、このなかで、関係をすることは「本能によるものである」と答えた人は、
日本 12・4%
米国 13・4%
であった。
もっとも、関係をすることは「排泄欲の満足」のため|だけ《ヽヽ》だ、と答えた米国人は1・2%しかおらず、残りは、「生理的な快感と種族保存のため」だとか、「子孫繁栄と商売繁盛と排泄欲の満足」であるという風に、他の何らかの理由と結びつけて答えている。
一方の日本人の場合も、「子孫繁栄と娯楽のため」だとか、「子供のためと欲求不満解消のため」という具合に、やはり他の目的と結びつけているのが普通であるが、「欲望のおもむくまま」とか「とにかくやればいい」と答えた人が3・8%もいたのは、大いに気になるところである。
欲望がおもむくままに、とにかくやればいいという姿勢で日米関係を続けていったら、この先どんなことになってしまうのだろうか。現に、「欲望のみ。愛情なんて糞くらえ!」とか、「将来の展望はない。私の場合は、ただやってやってやりまくるのみ。リメンバー・ノー・モア・パール・ヒロシマ・ハーバー」などとまるでわけのわからない回答をした人もあるのだ。いったい、こんなことで本当にいいのだろうか、と背筋が寒くなり、風邪をひいていたことに気がつくという、笑えない一幕もあったのであった。
いや、失礼。先を続けるとしよう。
関係をすることは「愛情の証し」だと答えた人や、「愛の確認と娯楽の両方のため」だと答えた人のなかにも、|植民地《ヽヽヽ》を作ることを目的にあげた人が何人かいる。植民地を作るということがどういうことなのかを、こうした回答者がはっきり認識しているのかどうかということになると、それははなはだ疑わしいといった気がしないでもないが、とにかく一時の気まぐれにせよ、何にせよ、植民地問題もからめて関係することを目的にあげた人の数は、米国人14・5%、日本人14・4%であった。
そして、関係することを「娯楽のため」だと明確に断言した人は、米国人4・4%、日本人3・5%で、日本人のほうが数は少ないが、本来的にいえば、日本人のほうがはるかに自堕落でだらしのない快楽主義的な国民であるはずだから、これはたぶん、回答者が嘘をついているか、マジメに答えようとしていないかのどちらかであろうと思われる。こうした点がこの種のアンケートにはいつもつきまとう厄介な問題である、といっていえないことはないのだが、いまさらそんなことをいっても、もう遅い。
そんなわけで、つぎに、こうしたアンケートにつきもののお楽しみのコーナーにいってみたいと思う。
じつは、アンケートの欄外に「ナマの声をお聞かせ下さい」という要望をつけ加えておいた。
そして、つぎのような「ナマの声」が寄せられたわけである。
関係をすることはあたりまえだ、という米国人の意見
「いらいらを解消するために、とにかくやっている。何か文句あるか」
「肉食動物的本能+種族保存本能+フジヤマ・ゲーシャガール的興味。どうしてもやりたいと思う」
「植民地を産む。オーガズムに達した時は、やはり何ともいえません。一種のリクリエーションです。スシ、テンプラも好き」
「精液がたまるから」
「本能だ。排泄作用と同様に、日本と関係をもつことは必要である」
「ショーグン。ニンジャ。カブキ。オオオク。ウタマロ。とても楽しい。どうしてか、まだわからない。でも、したい」
「スポーツと同じです。だから、愛がなくても正常な関係は続けられると思う。あまり深く考えないほうがお互いのためなんじゃないかな」
「ストレス解消。義務。民主主義ネ」
「またいつか戦争をするかもしれない。その時の準備体操みたいなものね。イエース。シェイプ・アップよ。パフォーマンスといってもいいかな? いいとも! あ、ははははは」
関係することはあたりまえだ、という日本人の意見
「日本人としての欲求を満たすため」
「種の保存。米国人の欲望に答えるため。精神的に深いつながりがあれば、体格の差や肉体的ハンディなどはどうでもいいと思うのですが、やはり米国人の強引さには負けてしまいます」
「米国人の欲望処理のためです。何といっても日本は植民地ですからね、いまだに」
「すべてを忘れ、頭の中を空っぽにするため」
「金髪女に踏みにじられたい」
「あの、太さと長さには、かないません」
「関係を続けていないと、精神的に崩壊してしまいそうな気がします」
「中年になってからは、わずらわしくて、早く眠りたいとしばしば思う。だが、義務だから、いたしかたない」
「米国人は何といってもガイジンのカガミです。むずかしいことは知りませんが」
「ほとんど気持よくつき合えるのは、世界広しといえども、米国人しかいません」
関係をすることは愛情の証しと娯楽の両方のためだという米国人の意見
「わたしたちの場合は排泄行為も愛の表現です」
「日本人とはいつまでたっても他人どうし。しかし、心のふれ合い、信頼、尊敬の念などによって、国境も人種差別も何とか超えられるものです。日米関係はそれを確認し合うものだと思う」
「エゴイスティックではない愛の表現は、生活のリズムであり、アートである。関係が途絶えた時にはおそらく両国間の老化が進み、地球は滅亡するだろう。これは自然のことだといえるのではないか」
「米国人だけでは生きていけないし、協力して生活を営むためには、やはり何らかのスキンシップが必要であると思う。しかし、関係をすることだけが人生だとか、国際親善だとか思わない。地球にはもっと重いものがある。それは人間の生命だ」
「好きだから、健康だから、お世話をしたい。面倒みたい。それが地球の長生きにつながる」
「占領時は、植民地を作ることに懸命であったが、いまでは日本人が関係をすることの喜びを知り、両国間の愛の絆が強くなったような気がする」
「好きな国の人と、好きな時に、好きなだけ関係をしていられたら、やはり最高です」
関係をすることは愛情の証しと娯楽の両方のためだという日本人の意見
「現代の世界はさまざまなストレスを抱えて生きています。心の許せる誰かの暖かい愛情に包まれて、強い腕のなかで、力いっぱい抱きしめられて、何もかも忘れて自由を楽しみたいと思うのは、トーゼンのことだと思うのです。でも、時々、力強く抱きしめられすぎて、骨が折れそうになったりして、それがちょっと困ります。何しろ、相手はヤバン、いやガイジンですから、気持が通じないことがあったとしても、それはしかたがないことだと思います。でも、関係をした日の翌朝などは、気のせいか肌にも張りがあり、お化粧の|のり《ヽヽ》もよくなるような気がします。精神的にも幸せな気分になり、カリフォルニアが玄関までやって来たようなハッピーな錯覚にとらわれてしまいます。こんなわたしのことを、マゾだとか卑屈だとか非難する人もいないわけではないのですが、わたしは、はっきりいって、米国人が好きなのです。嘉永6年6月3日の午後5時にマッカーサーさんの艦隊が浦賀沖に停泊してから、何だかそういうことになってしまったような気がします。よくわかりませんが、いったいどこに、問題があったのでしょうか」
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ランランラン、わたしが家元の糸井重里である。
札幌はススキ野のあたりの萬気はすごかった。
北海道を|萬行《まんぎよう》中の私と番頭は、数えきれないほど多くの人々に声をかけられたのであった。
「まことに。『家元ォ、いいコいますよ』とか、『萬浴はいかがですか』とか、ずいぶん声援が飛んでおりましたでございます」
番頭が袖をひかれて、雪道で転んだのは、幸い中の不幸であったな。
「私、腰が弱いもので。ついフラフラとしてしまいまして」
中島みゆき嬢のカセットテープを聴きながら雪道で転ぶ中年というのは、女ごころを刺激するものらしい。
「女ごころを刺激いたしましたでございましょうか」
いや、具体的には何もなかったが、なんとなくそんな気がした。中島みゆきのカセットテープを聴きながら雪道ですべって転んだ中年男が、女ごころを刺激しなかったとしたら、ただ単にカワイソーなだけじゃないか。
「なぐさめ、でございますね」
きっと、来週到着のハガキには番頭を励ます女ごころの筆の跡が、そこここに発見できるにちがいない。
「私、そのへんについては、多少、自信がございます。以前ドブに落ちました際にも、あたたかいお言葉を、女性の塾生の方々からたくさんちょうだいいたしました。こんどは、雪でございますから、もう少し美しいイメージでございますし……」
うむ、実に、うつ……えーと、えーと。
「うつ、くしい」
そうだな。そう思う人もいるかもしれないな。
こんなのが「同巧」だ
始める。
今週の課題は、「やきいも」であった。誰もがやきいもを買いに走り出したくなるようなコピーを書け、というものだった。
「同巧多数のワナをうまくかいくぐって(松)をとれ、とのご注意もございましたね」
そう。同巧多数のなかに混じってしまうと、浮かびあがれないからね。みんなが考えているようなことというのは、つまり、いま現在みんなが考えていることなのです。であるから、それをいまさらくり返して言ってみても、商品のイメージを活性化することはできないわけだ。
「美人に、『やーい、美人!』と言いはやすようなものでございますね」
いやいや、その場合『やーい』がくっついてるから、ちょっとちがう。
「美人に、『美しいですね』というようなものでございましょうか」
そうかもしれない。ともかく、やきいもの同巧多数を並べてみよう。そのほうがよくわかる。
・『皮もおいしい』
・『無添加自然食品』
・『イモは、いもを食わない』
・『老いも若きも』
・『ホッカホカだよ』
・『九里四里うまい』
・『新聞紙(軍手)も味のうち』
・『ビタミンCが豊富』
・『上の口でも下の口でも』
といったところだ。
ま、これもレトリックしだいではイキてくるのだが、このレベルのコピーでは萬門より入り弟子となる、というわけにはいかない。
「おなら関係は、あんまり多過ぎて、よほどでないとダメでございました」
では、同巧多数のワナを、どうにかかいくぐったものを見ていこう。まず、|下《しも》ネタから。
・加藤雄一郎『パクッと割れば男女兼用』(梅) 知恵の勝利。
・諏訪克己『どんなに太くても驚かない娘に育ってほしい』(梅) 広告になってる。
・柿沼徳治『頬張ると噛めない。私の悪い癖』(梅) 噛めるほうが悪いような気もするが……。
柿沼君、ついに名取! 萬名は柿沼井徳治とする。
・堀田能成『うちの姉は、おしぼりでキレイにしてからでないと食べません』(梅) ヘーえ。
・角野敦『ズルイワ。ヤキイモってコレのことなの?』(梅) 変な臨場感があるねぇ。
・那須英憲『「ヒ口シ、いいだろ」「すいません先輩、おれさっきいも食いました」』(梅) ダブル・下ネタであるな。
下といえば下、というもの。
・長谷川普美子『ノーパン石焼きイモ あけみ』(梅)
・堀江克彦『どうしてこんなに、どうして君をたべるとこんなにきもちがいいんだ』(梅) ひらがなの使い方と、くりかえしの効果がよかった。
・中村直『こいつめぇ、温かそうな身体をしやがって。泣け! わめけ! グェッヘッヘッヘッ、今ひんむいてやるからな』(梅) この人、職業が|鍼灸師《しんきゆうし》なんだって。まいったナ。
・加野典子『くわえヤキイモの似合う女、そんな女に私はなりたい』(梅) 加野君らしい作品。
簡単そうに見える下ネタでも、これくらいの水準でないと掲載されない。
同じ下でも、今回は前と後とありましたので、ここでは主に前の下の関係を紹介しました。私の応援している石川誠壱君(芸能人)は、落ちた。テレビ局より萬流は厳しいのだ。
他にない視点に価値
続いて、意外なアプローチのものを並べる。他人の思いつかない事実というのは、それだけで価値がある。
・入沢絵美『ヤキイモの皮は捨てないで下さい。庭にまけば野鳥観察ができます』(梅) ちなみに冬場はヒヨドリ、ムクドリ、オナガなどがよくきて食べますとのこと。
・鶴田雄彦『ダイエタリーファイバーの作用で、健全な、とぐろをまいたウンコがでます』(梅) いま話題になりかけの健康法をサッととりいれたのがよい。
次は、本当かどうか知らぬが……。
・神田善彦『二宮君は、いもの乳で育ったので、やきいもを育ての親と呼ぶ』(梅)
やきいも屋さんをうまく書いているのも多かった。
・星野光重『「坊や大きくなったなあ」「おじさんはかわらないね」』(梅)
・南雲丈博『ビジターのくせに、おまけをねだるなんて』(竹) 正論である。
・斉藤信也『三代目栄太郎謹製くりまさり』(梅) コロッケの時の二番せんじだが、『くりまさり』のネーミングがよかった。
・末吉雄一郎『この石の中から、いもが取れたらさしあげまっせ。フフフフフ』(梅) あり得る。
・黒田隆之『頼まれて買いに来た人や百グラムいくらと聞く人には売らない』(梅) 寿司屋みたいなおっさんだなぁ。
・鈴本康敬『本物のヤクザが、一本一本、真心こめて焼きを入れたイモです』(梅) 快調。
・中村嘉夫『ねぇ旦那、安くしておきますよ。ゆんべ畑が丸焼けになりやしてね』(梅) 泣きバイというやつですね。
・宮沢正幸『吉良邸をうかがう四十八人目の男は、焼き芋屋に化けていた』(梅) そいで、屋台が惜しくて討入りできなかったのでしょうね。
・小林幸弘『石焼きの名人は、できのよくないやきいもは、地面にたたきつけて割ってしまう』(梅) 劇画っぽいね。
・田淵虹二『二級技能焼士募集中!!』(竹) ありそうで笑った。
では、客側から書いたもの。
・窪田浩幸『走れ、弟』(竹) たった三文字。短いのは優遇する。またまた新名取。これも、窪田井浩幸の萬名を授ける。
・鈴木直樹『断食の身ですので、もう一本おまけしてください』(梅) かわいい。
・谷宏『パパ、このあたりはやきいも屋さん来ないね』(梅) へんに心に残るコピーだ。
さ、おまちかねのガスもの。
・坂入誠幸『風上に廻り込むなんざ通だねー』(梅)
・清水幹夫『呉越同臭』(梅)
・井上宣男『ぶっ飛ばせ! ケツのホコリ』(梅) 男らしい!
・滝沢範六『プップップップッー三時です』(梅) 明るい!
・柳木マリ『|後《あと》のことより、常に|現在《いま》が大切なのさ』(梅)
・明田珠美子『プッとやったら、彼女が笑った。もう婚約間近だ』(梅) 結婚とは、何なのだろうね。
・伊東志津江『君ねぇ、誤解を解くということは窓を開けるって事じゃないんだよ』(竹) いい味を出しておる。
・久保寺靖彦『いも自体はくさくない』(松) 出た! ついに(松)出たぞ。拍手ッ!!
毛色の変ったやつを
では、名取連の作。津寺君は、圧倒的に強かったが、毛色の変ったのを掲載する。
津寺利嗣雄里『そして、戒厳令は終った』(竹)
上松重治『「石や〜きイモ〜」これがわてのハントの手口ですねん』(竹) 上松君も好調。
小林井秀雄『だーれ、椅子に置いたのは! 中に入っちゃったじゃない』(梅) もうひとついこう。
『糞をする前に、まぁイモでも食うか』(梅)
山口井正明『とことん食え、そして忘れろ』(梅)
では、佳作を一気に。
・金森泰樹『ヤザワ、これ、ダイスキ、よろしく』(梅)
・餘吾英幸『新発売よりうまい』(梅) 両方、簡単で力強い。
・蔵方透『花束の次に』(竹) 上手にキマッた。
・竹本健三『春になったら、大学イモになるからね。しばらく会えなくなるよ』(梅) うまい。
・正岡智之『ニつに割ったら湯気と身が落ちた』(竹) 落ちて行く身について行く湯気。これはもう俳句の世界ではないか。
・岩崎雅紀『ホオばると、ハグキが熱い』(梅)
・小林茂樹『芸能人がやきいもやってるのは、もう常識だよ』(梅) そうだったのか……。
・後藤秋彦『奥様、あちらのベンチの|男性《かた》からです』(松) やった。これはイイ。
・野田哲也『では、やきいも屋は帰るぞ』(梅) 同巧多数だが、野田君がラッキー賞。
落とすにしのびないものが、まだまだ多かったが、ツキがなかったとあきらめてくれ。
小林猫吉君、川上駄菓子君、ていねいな「やきいも知識」を教えてくれて感謝する。川手輝夫君、(松)と法政大学の卒業証書となんか交換するものか。キショーカチが全然ちがうではないか。
ついでだが、ハガキの余白に脅迫や泣き言を書くのは得策ではない。せめて書くなら誘惑とか、ワイロ、色仕掛けなどにしなさい。それが萬心というものである。
今週の宿題
塾生諸君には悪いが、私は巨人が好きだ。嫌いな人がいてもかまわない。本当だ。
で、巨人軍の新監督であるところの「王貞治」さん(この敬称も、家元の趣味だ)のキャッチフレーズをお願いするのだ。前の藤田監督には、いいのがいっぱいできた。今度も頑張ってくれ。
「王さんは、大きいらしゅうございますねぇ。うらやましい」
野球を知らない元野球担当の番頭でも、王さんのコピーなら作れるらしい。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
いえぃっ! 私が家元の糸井重里である。
「はぁいっ! 私めが番頭でございます」
しかし番頭さん、あちこちの雑誌に萬流に似た企画が顔を出しておるな。
「そのへんの類似品と萬塾では、番頭の器量がちがいます。さらに言えば家元の器量もでございます。いい意味で」
だいたい見渡したところで、ごく軽く感想を述べるのだが、萬流のスゴミは、ボツの厚みであるということがわかる。
単なる視点の裏返し、ウィットと誤解した無邪気な皮肉。こういったものは、だいたい当塾では浮かばれない。こうした作品は、ボツの海底に沈んでいるのが現状である。その、上の上くらいのところに、「萬的普通ボツ」といったものがドーンと広がっておるのである。この、ごく並のボツが、よその「掲載作品」に相当する。
「家元、今週は強気でございますね」
うん。だって、塾生たちのハガキの水準の高さに感心しているところに、丁稚の集めた類似企画を読んだもんだからさ、あまりにも差があるんで、つい。
「いまいち恵まれていない塾生の皆さんが、よそに投稿してその成果を報告してくると面白うございますねえ」
番頭さんこそ、ずいぶん挑戦的なことを言うじゃないか。
「盛りあがっている時にテングにならないようでは、本当の|萬心《まんごころ》はわかりません」
おたがいに、なんかよくわからないけれど闘争心に燃えているな。
「理由は、あります。塾の先生が受験をひかえた生徒たちにモノスゴイ|檄《げき》をとばしているところを、いましがたテレビのニュースで観たからでございます」
ああ、そうか。雰囲気が感染しちゃったのである。
しかし、ともかく、このところの塾生のレベル向上にはめざましいものがある。家元の知り合いのプロのコピーライターたちも、「こりゃ、うかうかできないぞ」とか言って笑っているけれど、その口もとはかなり引きつっておる。コピー書きを職業にしようという塾生も多少おるかもしれぬが、何より驚異なのは、広告の「受け手」がこんなにも磨かれているということである。
これから紹介していく優れたコピーを書いているのが、シロートであるということが、つくづくオソロシイのだ。
プロの諸君、および、自信満々の投稿家の諸君、もっとアセったほうが身のためであるぞ。
キ真面目さだけでは
今週は、外国の人々にすすめる「春の日本観光旅行」のキャッチフレーズである。
まったく|萬心《まんごころ》なしに、これを考えると、まともに外国人にだけ訴求するものになってしまう。しかし、この場で(日本の萬流コピー塾で)読むということを考えあわせるのが、当然の萬心というものではある。
・重兼芳子『肉じゃがニラレバいため不二の山』(梅) なるほど純文学の技法が生きておる。『フジヤマ・ゲイシャ・スキヤキ』がもちろん同巧多数で来ておるが、その差は歴然であろう。
・小倉二三雄『桜と富士をコダックでとろう』(梅) と並べたものもあった。これも同巧多数ではあったが、まぁ、とりあえず。
・花岡邦彦『富士に白アリ クロードチアリ』(梅) 不思議な魅力があるよ。よそだと落ちるヨ。
・小針洋三『日本には、東洋の神秘、東洋のインキ、東洋の陶器の三大企業があります』(梅)
以上が、名詞を並べたもの。
続いて、最も多かった「日本の婦女子の貞操観念の柔軟さ」を売り物にしたコピー。
・松田正志『あなたの国の有名人と義兄弟になってみませんか』(梅) ハッキりあらんどろんと書かないところに深みがある。
・中嶌常視『きみのはフトイ、だから遊びにこい』(梅)
・佐々木亮一『こちらでお召しあがりになりますか、お持ち帰りになりますか』(梅) 六本木ギャルのアップのポスターで、とのこと。
・滝本慶三『島田陽子がいっぱい』(竹) 日本人ならだまされないが……。
・片岡博『やり放題』(毒) 国辱もののコピーでありながら、否定しきれないのだ。
・平岡清美『日本の女子大生は「あとくされ」がありません』(梅) リアルぅ!
・金田茂夫『不沈空母のウタマロガールは、あなたのミサイルを丸呑みします』(梅) 実は、『やり放題』よりもこっちのほうがえげつないと思う。
・柴田喜久『ああ、もっとめちゃくちゃにして』(松) 「家畜人ヤプー」を一行で言い切った。
・竹本健三『青い目のうちに』(梅) これも、なかなか……。
・岩崎雅紀『エヘラヘラヘラ春こそ日本』(梅) こうして並べると、東南アジア買春ツアーのおっさんたちに『恥』なんてコピーをぶつけるよりも、これらのほうがずっとボディに効くと思えてくる。
ついに師範が誕生!!
「野坂先生の『アメリカひじき』にならいまして、『アメリカわかめ』というのを、私めも考えました」
厳密には『ニッポンわかめ』だとも思うが、上出来である。
では、少し性を離れよう。
山口井正明『日本のショービジネスの実力を観て帰ってほしいですね――田原俊彦』(梅)
小林井秀雄『旅のマスはかき捨て』(竹)
津寺利嗣雄里『カメラ・ラジカセ・パソコンが、三割・四割・五割引き!!』(竹)
ジャジャジャジャーン。
今週、ついに小林井秀雄30点、津寺利嗣雄里31点に達したため、両者共、萬流初の師範に昇格した。
(毒)や(破門)の積み重ねでここまで点を仲ばした小林井、そして毎週かなり水準の高いコピーばかりを20通も送り続けた津寺、この二名の新師範の誕生は、萬流の歴史の一ページに永遠に刻みこまれる重要な出来事ではあろう。
「おめでとうございます」
この二名を追う立場の新進の名取諸君! これを機に一層の精進をしなさいね。
「師範の看板と、黄金色に輝く師範バッジは、現在制作過程にあります。しばらくお待ちください」
いやぁめでたいめでたい。
師範のごく簡単な経歴
萬名 小林井秀雄(小林秀雄)昭和38年生れ、東京在住。専修大学二年生。
中学時代にフォーク・グループ「股間節」を結成。このたび広告学校入試に合格、はやくも人気者になる。
ひとこと――「自爆だぁ!」
※
萬名 津寺利嗣雄里(津寺利嗣雄) 昭和30年生れ、東京在住。
独協大学一年生を三回務め、二年進級と同時に自分で卒業式を挙行。現在、律義な勤め人として活躍中。
ひとこと――「近頃、女子美のマキちゃんが好きだ」
めでたがってばかりいないで稽古を続けよう。
・森雅明『日本車乗り放題』(梅) これ、次のと……
・滝本慶三『うちのトヨタが御迷惑をおかけしております』(梅) ふたつ並べてみました。
・戸田直美『たこ、食いねぇ』(梅) こういう教養ものを、15歳が書くんだからねぇ。
・鈴木雅章『よし、君には西川口をあげよう』(梅) 似たようなものはあったが、地名でこれ。
・高橋一裕『ごはんじゃぱんじゃ』(梅) 味のあるテキサスヒットというべきか。
・鈴木正人『出玉! 絶好調!』(梅) なるほどねぇ。
・小倉伊都子『ハロー、ももひきの脱げる季節となりました』(梅) とぼけてるねぇ。
しかし、最高にとぼけているのは、これだろう。
・大橋純子『皆が日本に来てくれることを希望します』(竹) ついそのまま英訳したくなっちまうじゃないか。
・門田陽『シピーン、カムバック』(梅) バカモノ!
・渡辺康二『ニュースの遅い国の皆さんへ、日本の鎖国は解けました。今、春です』(梅)
・岡崎大介『歓迎、鬼畜米英』(竹) おそれいりました。
・花田生治『ヘイ、カモン! あん時ゃ世話なりましたのォ。――農協ツアー一同より』(梅)
ではほんの少々、マジなやつ。
・田村義明『ノドにやさしいニッポンの花粉』(梅) うまい。
・佐藤敏彦『キャッシュカードを忘れても、貴方のパスポートでサラ金全国ネットワークが楽しい旅をお助けします』(竹)
・小島智也『その翌日のその後』(竹) うーむ……。
・菊間秀夫『10ドルの夜景を見てみませんか?』(竹)
みんな、ホントにうまい。
・小林猫吉『ドライブ中は別として、トラブルはすべて「酔ってました」の一言でOK』(梅)
続いてスゴイの行くわよッ。
・鈴木修二『イルカ捕りのシーズンです。とめにきて下さい』(松) ねッ!?
では、蛇足じみて面白いのをひとつ。
・鈴木鳴彦『うちの家内はおみせするほどのものでもありませんが……』(梅)
萬流文化論の成果は
こうして掲載されたコピーを見ていくと、いくつかの共通点があることに気付く。
どれも、国際大国日本なんて意識がまったくないこと。
萬心のない人ならば「こんなことを外国の方々に知らせてはイカン」と思うような現実について、まったく鷹揚に構えていること。
アイロニーの毒が、他者にばかりでなく自分にまで及んでいること……などである。
「コロッケ」や「やきいも」といった課題の得意な塾生が、同時に、こうした「ニッポン論」ともいえるハードなテーマにも強いという事実には、まったく驚いてしまう。
むやみに感心する週であったが、次回はいかなることになるであろうか。
「ところで、前回の、やきいも、遅着分が200通ございました」
あえて選ぶものはなかった。
「わかりました」
今週の宿題
出るか出るかと待っていた者も多かったようだ。ついに出すことにした。
なにかと話題の「女子大生」がテーマである。
何の関係もない人まで、どういうわけか女子大生に腹を立てておる。
「私、うらみも関係もございませんが、あのムチムチを見ると、ついバッカモノッと叫んでしまうのでございます、ムラムラッとして」
今回は、なるべく、女子大生の立場から書いてみようではないか。ご両親も心配しておられることだし。
では、家元は帰るぞ。
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あ、そうか。私が家元の糸井重里である。
「かつてない早い登場でございますが、私が番頭でございます」
そんなに急いでどうするのだ、何かあったのか番頭さん。
「先日、家元に頼まれました例のもの、とうとう手に入れたのでございます。一刻も早くお見せしようとぞんじまして。ハアハア」
おお、あの、1984年始まって以来のスーパースター、三浦和義氏のサイン入り色紙が、もう手に入ったのか。
「ハイ、英文字の筆記体も流れるように、カズヨシミウラ・ウィズ・ラブ」
素晴らしい! 欲しかったんだよね、これ。早く、早く袋から出しなさい。なんと、フルハムロードのロゴタイプとやしの木の絵まで描いてくれたのか、あの方は……。感激だなぁ。
「家元にお喜びいただけて、幸いでございます。さらに、ほれ、座右の銘が大書されております」
ふーむ、『疑惑の銃弾』か。
これ、本当に、あの方の直筆?
「は、それはもちろん。私がそんなことで嘘をつく必要はございませんし、そんな偽物のサインを私が書きましても一文の得にもなりませんし、だいたい、こんな色紙やマジックインキを私がさっき買いに行ったという証拠もございませんし、だいいち、私、フルハムロードという英文字のつづり方もわかりませんし(声をつまらせる)、それに、家元は何の権利があって私をそんなふうに罪人のように問いつめるので(泣)ご、ざ、います、か」
いやいや、問いつめたわけじゃないが、番頭さんの机の上のメモ帳に、同じサインがずいぶんたくさん書いてあったからさ。
「そ、それは、単なる偶然でございます。それに、このやしの木の絵があまりにもみすぼらしいということも、私が家元にかくれてオジのパーティに出席したことも、この色紙とは何の関係もござ(泣)いません!」
わかりました、わかりました。番頭さんの疑惑は、いま確かに晴れた、と。でも、この色紙、あと5〜6枚欲しいので、三浦さん、もしこの頁を読んでおられましたら、萬流コピー塾に送っていただけませんか。わたしが一枚記念にもらって、残りは塾生たちにプレゼントしたいので。
「お稽古にしましょう! ずいぶん誌面を無駄にしてしまいましたし、こんなことは萬流とは……」
あなたの長ゼリフが原因だったんだけどなぁ
案外むずかしいダロ
今週の課題は、「子供にベンキョーをすすめる」コピーを書く、というものであった,
「無理な注文でございましたねぇ。常連の塾生たちも、ハガキのスミに、こんな宿題ムツカシスギル、と書いておりました」
それを承知で出した宿題じゃ。ともかく、ましなのを選んでいくしかないな。
師範は、どうかな?
津寺利嗣雄里『そーか、そんなに父さんのカラオケが聞きたいんだな?』(梅)
小林井秀雄『勉強しないと、こたつをにするぞ!』(梅)
ムツカシくってもなんとかしちゃうのだ。どちらかといえば、理の利嗣雄里、感の小林井、といった作法があるとは思っていたが、これなぞ典型的だな。
さて、みんながあきらめつつ考えたコピーを、ずらずらっと並べる。
・杉浦範茂『お父さんを見なさい。週一問の宿題をやってるだけだから、いまだに、見習にもしてもらえない』(梅) おめでとうございます。ついに! です。
・堀江克彦『勉強――それは衝撃のライブ・パフォーマンス』(梅) 古館伊知郎アナみたい。
・奥野喜久雄『命綱切るからやってみな!』(梅) 宇宙遊泳のテレビ観ながら書いたのかしらん。
・中野研一『ベンキョーしないと、サラ金へ行って入学金借りて来ますよ』(梅) なるほど。
・河野正『飛雄馬よ、東大野球部を救うのだ』(梅) ネタの古さが感動的。
・見沢諭『教官、わたし……わたし、勉強してみせます!』(梅) これ、わからない塾生は、「スチュワーデス物語」というテレビドラマを観なさい。いま、一番、おもしろい番組ですよォ。
・中静哲三『クリニックが病院だとは知らず、出血多量で死んだ人を私は知っている』(梅)
・高瀬雅文『母さんは信じますヨ、お前が力でスプーンを曲げたんじゃないってこと。だからべンキョーもしてネ』(梅) これも、ある種の時事ネタですね。
・山本良太『あ、勉強しない子が車にひかれてる』(梅) 初めて掲載される人の典型的なコピー。単なるオドシなんだけど、どことなくとぼけている。
・渡辺明彦『モチ肌は学究肌のともだちだ』(梅) そうだったのか。そんな気も少し、する。
・藤井雅幸『はじめまして、このクラスを担任することになりましたスタン・ハンセンです』(梅) プロレスファン以外には通じないかもしれないが、ハンセンの狂暴性と知的な雰囲気をうまく利用した。これが、もっとクレージーな「T・Jシン」だと『はじめまして』なんて言わないもの、な。
・三平幸子『ビニ本で見える真実くらいで満足するナ! もっと勉強して奥を究めなさい』(梅) これは、ビニ本というのがちょっと古い気がする。
・津和野智聡『ぼくが勉強すると雪がふるからうれしいです』(梅) こっちは、何も新しいことを書いてないけど、新しい。雪というのは、自然現象でなくて今年のニュースなのだ。
破門にめげぬ宗薫氏
・竹中博幸『勉強しない子を、父さんは認知しない』(梅) いつも英国からの投稿をありがとうよ、竹中君。しかし……
・亀海昌次『したくないのなら、別れるしかない』(竹) のほうが、味わい深い。
・田中宏和『ぼくが勉強しない日の夢には、必ず南伸坊がでてくる』(梅) 人選が新鮮である。
・浅井『山城新吾さんが山本陽子さんにすすめたらしいですね、子供でもないのに』(梅) まったくようわからんものだが、六十一歳の塾生が書くと、不気味にそれらしくなっちゃう。
・川上宗薫『ガキども、よく聞け。確かに文法的には「私は入門した」はアクチブで「私は破門された」はパッシブだ。だが、後者の第一人称の姿勢を見るがいい。パッシブどころか、アクチブを越え、今や、アクスボマー並に過激なのである』(毒) この塾生は、破門されたことを、まったく反省しておらぬ。その過激さを評価して、破門を解かないでやることにした。……な……。
・箟雅明『おいこら、おめーらよってたかって「ベンキョーをすすめるコピー」なんか作りやがって、命が惜しくねえのかよー』(毒) 今週の塾全体の気分をよく出しておる。
読んでいてお気付きではあろうが、一人として「本気」でコピーを書いていないのが、実に、面白くてしかたがない。
「萬心のみの綱渡りでございますね」
・浅野みき『子供の体って以上が水なんです。水に勉強しろったって無理です』(梅) 子供のカラダの水分について、どうして知っているのだろう?
・小倉二三雄『まず、やる、宿題』(餅) あんまりイージーで、あんまり同巧が多かったので、点はやらない。
・宮崎智勝『同巧多数になりてえかっ』(梅) 漁夫の利、でした。
・持永昌也『その若いピチピチした脳ミソに、ヒッヒッヒッ』(梅) あれ〜、おやめくださいッ。
上松重治『お稽古のハガキ一枚に、何度も辞書を引かねばならないのは、トーサンだけで充分だよ』(梅) 名取、充分という字については調べたか?
船山満重『ひとがらも履歴書にかけるんだったらねぇー』(梅) 萬流のハガキには、わりとあらわれるんだよね、人柄も。
・黒木悟『野球ばっかりしてていいのか。広岡と武上のどこが違うと思う』(梅) 好調の黒木君だ。手際のいい人選をしている。長島、とかいう名を思い浮かべちゃうと、壁に当ってしまう。
・井上栄治『ちゃんと勉強やんないと、父ちゃん、父兄参観日に教室でうんこしちゃうぞ!』(梅) すごい脅迫!
窪田井浩幸『耕せ脳作物』(梅) 新名取、キレイにキメた。
今週は(松)はなし
・田名部登志『どうもこのノートは鉛の筆をブチ込んでもらいたいらしいぜ』(梅) いつもの週の(梅)の水準って、このくらいだったような気がする。
・山崎美穂『ぜんぜん覚えてなかったことを、あとで思い出そうとしたが、ダメだった』(梅) 素直に書いて、うまくいった。
・口泰寿『一個か、一山か』(梅) よくできてはいるんだけど、勉強することによって「一山」になっちゃう可能性が高くなる、と、塾生諸君は思っているような気がするのだ。
・藤井貴子『私は親ですが、子供には絶対負けたくないので勉強はすすめません』(竹) これこそが、秀才を育てる道?!
・織田和夫『ネェ、ここんとこおしえてって耳もとでささやかれる声がどんなにキモチいいか、キミにもおしえてあげたいなァ』(梅) おしえてっ、おしえてっ。
・佐藤敏彦『毎晩は無理でも、一晩おきには、やらなければダメョ。ネェ、お父さん』(梅) 学校の先生だって、一晩おきくらいにはしているんだろうな、きっと。
・関口金男『さわやかドカベン太郎だ!』(梅) ああ、頭は選ばないのに、カラダが選んじゃったよ、このコピー。
・中西由美子『出来の悪い子ほどかわいいというのはお母さんの悪いジョーダンです』(梅)
・堀川敬二『教科書には銭が埋まっとるんや! ホレホレ!』(梅) やっぱり、古典はよくできとるですなぁ。
「それでは私、お先に帰らせていただきます」
それはいいけど、番頭のいない教場で『では、家元は帰るぞ』というのはサミシイではないか。
「ま、たまには……」
そうか。じゃバイバイ。
「実は、今週に限り塾生の皆さんのハガキを、家元には内証で、目かくししてクジビキで選んで(萬当てゲーム方式)並べてみようとぞんじます。
これで、単に萬運の良い方にゴマをすると同時に、萬流の一般的水準をお知らせすることができるわけでございます。
では、お静かにごらんくださいまし」
・松本直『「ベンキョウ」というコトバを漢字で書いてみな』
・大内茂子『「若い時あんなに勉強しなけりゃよかった」という人には、まだ会ったことがない』
・広川敏郎『ひろしちゃん、お勉強しないとおまわりさんに叱られるわよ』
・明吉加代子『国語、算数、理科は社会への窓』
・島崎英雄『隣の桂ちゃんはオール5です』
・小泉勝巳『さゆりちゃんは、あんな女子大生になりたくないもんねー』
・加賀谷信一『この世とあの世の境いには試練と言う名が待つといふ』
・五十嵐久雄『お父さんは発起人(はっきにん)を代表してと言って|嗤《わら》われた』
・畠中健『金が欲しいのか? 名誉が欲しいのか? それとも女がほしいか? 学ベ! すべてが手に入る』
・伊藤作子『最近体で渡るのにも肩書きは要るから』
・稲塚Q馬『勉今日して明日ぶそれが人生だ』
・三輪卓男『一つ 子供は「|遊《あそび》」を本分とすべし』
・岩波徳和『本年より「萬流」には高卒程度の学力が必要です』
・金子秀明『勉強はUターン禁止の一方通行』
・麻生早苗『きっとE.T.もがんばってる!』
・山埜井武夫『こんなコピーしか出来ないパパよりえらくなるために!』
・滑川克哉『お父さんがいつも行っているタノシイ所につれていってやるからな!!』
・森治子『お父さんには内証だけど偏差値上ったら保険金の受取人、お前にするからね(母)』
・平井伸郎『勉強しなくていいから、あそこのオジサンにサービスして来なさい』
・蜂谷忠太郎『何に刺激されたのか、このところ父さん、勉強勉強と騒ぎ始めた』
・鈴木健一『一番でなくていいせめて二番になれ』
・橋本典子『おべんきょ しなくちゃ おとなになって いいことできないっ』
・小林隆『おやじと同じ会社に入って、おやじをこきつかおうよ!』
・佐伯典夫『ガリ勉は、人の上に人を作り、人の下に人を作る』
・三浦博孝『四年間のお休みがあるのョ がんばってネ』
・村木克栄『学生証一枚でお手当に差がでるのよ』
・中島百合子『しっかり学問をススメていたら、お札になれるかもしれないよ』
今週の宿題
最近は、観葉植物の鉢を室内に置く人が多い。その反面、金魚鉢を置く人がめっきり減っている。「一家に一鉢、金魚鉢」というテーマで、みんなに金魚を飼わせるコピーを、作っていただきたい。
「同巧多数予想をして遊びましょうか、家元」
うん、『キンギョ○○とお思いでしょうが』とかさ。
「○○キンギョの憩いに、なんてのとか……」
いろいろ、あるんだろうな。
「キン○○じゃねえぜ、とか」
では、番頭は帰るぞ。
「これを言ってみたかったのでございます」
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ドンチューノー? 私が家元の糸井重里である。郷ひろみではない。沢田研二でもない。ヤックンでもフックンでもモックンでも泉重千代でも是川銀蔵でもなければマイケル・ジャクソンでもなく、もちろんアダチ竜光でもない。
「家元、家元ッ!」
で霧のとんべぇでもヘーゲルでも浅田彰でも石井関男でもなく、当然高橋春男でもないのであって、ミヤコ蝶々であるということも、その……。
「家元、いくら先週号で私がたくさんしゃべったからといって、そんなに誌面をむだにするような長ゼリフを言わなくってもよろしいではございませんか」
いや、悪かった悪かった。はじめに郷ひろみではない、と言い出したらつい勢いがついてしまってな。
「それにしても、私、わからないお名前がいくつかございました。後ほどお教えいただけませんでございましょうか」
いいともォ! 読んでいる塾生から問い合わせなんかが来た時に番頭が知らないと困るからな。私が恥ずかしい。
「白石勝ッ! 雨宮秀樹ッ! 明円一郎ッ!」
ええい、意地を張るのはやめなさい。そんなことを言うなら名女川勝彦などといういやらしい名前を出しちゃうぞ。
「二人だけでこんな夜更けにふざけていても読者に嫌われるだけでございます。お稽古にいたしましょう」
それもそうである。
塾生は巨人嫌いか
巨人軍の新監督「王貞治」さんが課題であった。
私は正直言って巨人が好きだ。好きな巨人の監督である王さんも好きだ。毎日毎日報知新聞を熟読してからじっと目を閉じ、ああ今日も一日巨人軍の人々が元気で練習できますようにと祈りつつ仕事を始める人間なのだ。
「しかし、萬流の塾生の皆さんは、あまり巨人や王さんをお好きではないようでございますねぇ」
そうなのだ。その、私は好きだが塾生諸君は嫌い、という課題についてお稽古しちゃうのはとてもつらいのである。
「私、野球のことは何にもわかりませんので、その強味で思いっきりお手伝いさせていただきますです。まず、このあたりは良いコピーでございましょう」
・長沢美和子『パパ OさんってHなの?』(梅) ただ単に英語に弱い人みたいな気もするけどなぁ。
・竹本健三『その人の背中には、酸素と水素の元素記号が読みとれました』(梅) これも、だ。
「家元には、王さんは神さまみたいなもので、なかなか萬心が湧いてこないのでございますね。では続いて私がビシビシと選んでまいりましょう」
・竹中博幸『娘・三発 一本足打法』(梅)
・楠本明彦『朗読の達人』(梅)
・谷口知二『ギョロッ』(梅) これは同巧あり。
・寺田雅『私は中畑の言葉が理解できる!』(梅)
番頭にばかりまかせてはいられない。今回の課題によせられたコピーには、大きくわけて四つの流れがあった。
王さんはマジメすぎて面白くないというテーマのもの。
王さんのCMの演技に関するもの。
王さんはでかい(らしい)という、宿題の時の番頭発言にヒントを得たもの。
王さんは超がつくほど偉大なので、その「超」のあたりが面白いというもの。
以上であった。むろんそれ以外の発想もあったのだが、とにかく多かったのはこの四種類だ。
あの、塾長までが、ヘンにマジメなコピーを送ってきておる。
・山藤章二『貴男って、|人格者《ヽヽヽ》なのねェ、サヨナラ……』(餅) これもまた人格者のつくりそうなコピーになってしまっているわけです。
では、の分類にはいるものを並べてみよう。
・宇川拓水『監督一年目の抱負ですか? ありきたりですが、やはり火気使用後の後始末と命綱着用の徹底ですね』(梅)
・前田治行『監督になっても、つまらない番組は正々堂々と批判します』(梅)
・長塚隆『王の……王なんか……、えーと……えーい「中畑のバカーッ」これならいくらでも言える』(梅)
・楠田尚美『歯を粉にして働いた|男《ひと》』(梅)
・升川喜義『世界の名監督シリーズ 第一回配本 王貞治』(竹)
・糸賀千代『この目の下のクマが目に入らぬか!』(梅)
・中島孝康『勝利のコツは、親孝行です』(梅)
・小林幸弘『私は、上にすけべがつくほどまじめだ。すけべまじめ王貞治です』(竹)
・中島隆司『「テメェ、ぶっ殺したろか!!」「王さん、まぁ、まぁ、ゲームなんですから」』(梅)
・高丘勘三郎『三人の娘の名に「理」の字をつけた王監督が、管|理《ヽ》野球を嫌うだろうか!?』(梅)
・筑場敬子『やらせます』(竹)
・渡辺匡『練習中、王監督に厳しく見つめられすぎて、火傷した選手がいる』(梅)
・佐藤年信『長島さんに“ハッピーかい?”と聞かれたが、私には返す言葉がなかった』(竹)
・後藤昇『不思議と私のモノマネをする人はいない』(梅)
・奈岡九介『一+一、これが王だ』(梅) 同巧あり。
そして、にも関連するが、
・山田丹生『インスタントでも残さず食べる』(竹) などというのもある。
CMパロディに佳作
王さんがマジメにやってくれるからこそ優勝が期待できる、などと巨人ファンの家元はつい考えるのだが、塾生諸君は、そのマジメさをついからかってやりたくなるものらしい。
「フマジメだったら、また、それをからかうのでございましょうね」
きっと、な。
では、CMがらみのコピー。
・近藤彰宏『ひろみ君、カレーのことは任せたよ』(梅)
・佐藤昌子『オロナミンCが小さな巨人なら、巨人は大きなオロナミンCです』(竹)
・持田康晴『飲む、打つ、勝つ、王野球!』(梅) 飲むというのは、缶入りの栄養食、とのこと。
・外山秀樹『今花開く中国4000年の技 読売野球三昧』(梅)
・若林健『いまさら芸名だなんて言えねーよなぁ』(梅)
・成川勉『目標V756!!』(梅) 西川のりおのギャグで「田中角栄に懲役4億年」というのがあったけど、あれには笑った。
・青野智『前歯がイイね、今度の監督。16、17日は宮崎へ』(梅) これはクルマのCMのパロディ。
の「でっかい」関係も、数は多かったが、厳選した。
・高松和也『巨根性』(竹) きょこんじょう、と読むのだろう。
・矢ケ崎嘉毅『「カントク、太いですね」「中畑、それは太腿だよ」「ですから太い、と」「ウム」』(梅) ウム、が良いね。
上松重治『熟男O』(梅)
五月みどりが熟女B、中森明菜が少女A、と、言わずもなだが……。
・森田辰巳『王自身』(竹)
続いて偉大すぎるという視点で笑うもの。
・山明久『ウチの水道管、もう二回も破裂しました。王さんからガンバるようにいってください』(竹) 時を得てヒット!
・市川尚『グラブの煮汁をウチの子に飲ませたい』(梅)
・片岡博『親戚だったらすごい』(竹) スナオで力がある。
・藤原ゆきえ『密林の王者シュヴァイツァーの次に尊敬する人です』(梅) ターザンと間違えてるような気もするけど。
・海野誠『選手時代の年収は、あの三浦氏が妻にかけた保険金とほぼ同額だった』(竹) どっちもスゴいなぁ……。
・高谷尚志『中学生の頃、Oh! といういやらしい雑誌があって、僕は王選手の本とまちがえたふりして立ち読みしました。ありがとうございました』(梅) 礼儀正しさに好感がもてた。
では、その他の鋭いコピーを見よう。
・高谷尚志『坊や、見たかい。約束の代打逆転満塁監督ホームランだよ』(松) あ、高谷君は、連続ヒットだ。
・深町行夫『「シマ」はヤマドリです』(毒) バカモノ! 面白いじゃないか。
・仲西宏之『ボクもいつかは、めがねをかけます』(毒) これも!
・森賢一郎『王さんのアイディア』(梅) しぶい!
・渋谷元『この日本刀は、もう必要経費で落とせないんだなぁ』(竹) タイムリーヒット。
・船山満重『和室ならどこでも似合います。王貞治原色カレンダー』(梅)
・市丸啓太『白骨死体になっても一目でわかる』(梅)
・依田圭一郎『新監督なんて、マスコミの魔女狩りですよ。証拠があるんですか!』(竹)
・鹿児島俊光『BIGIは私の登録商標です』(梅) これ、わかんない塾生は近所のギャルに聞いてください。
小林井師範特集じゃ
さて、今週は津寺師範が病気なので、小林井師範特集をします。
小林井秀雄『つけ麺大王貞治』
『王貞冬発売』
『王のふりみて我がふりなおせ』
『手の血管なら誰にも負けない』
『川上の赤バット、木下の青バット、王貞治の隠れ天狗』
『王貞治です。おさると呼んで下さい』
『こらっ、君達! 捕まえたありを逃がしなさい』
『今だから話すが、ブスは嫌いだ!』
『私が野球界の文部省唱歌です』
とにかく、合わせて(松)。
まったく、この師範は、天才なのか、単なる○○なのかわからない。彼だけの、直感、彼ならではの手触りのようなものが、確かにある。
家元の私も、彼から学ぶところは大きい。
今週は、塾生諸君ではなく、私にとって難しい課題ではあった。もうじき(そうでもないか)プロ野球の開幕だ。巨人も、巨人以外のチームも、ガンバッて、良い試合を見せてほしいものである。
「開膜、というコトバは、春を感じさせますですねぇ……」
字を間違うなッ!
今週の宿題
いよいよ、と思った塾生も少なくないことであろう。
「週刊文春」のキャッチフレーズをつくってみよう。これは、簡単なようで難しい。
「銃弾ネタと、萬流ネタに集中するような気がいたします」
集中しても、よいものはよい。しかし、狭き門になるであろうな、そのあたりのテーマで書くと……。
「編集長賞というのを設けて、何かプレゼントをしてもらいましょう。萬流の|得《ヽ》とは別に」
白石「うん、いいよ」
そりゃあよかった。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
毎週毎週ハガキの山に囲まれて、六本木のカフェバーに行くひまもない乃木坂女子短大の家元こと糸井重里でーす。
「いやいやながら家元につきあっているうちに、すっかり女らしさが失われたと評判の、紀尾井町女子大の番頭でーす」
今週は、私たちピチピチの女子大生男が、いまや世界的な流行のきざしを見せている萬流コピー塾に突撃して、その極意を皆さまにバッチリお教えしちゃおうと思いまーす。
「では、まいりましょ」
さて、私と番ちゃんが立っているのが、萬塾の正門前、ちょっと失礼して……ト。
「こんばんはー! 入塾したいんですけどォ」
「ハイハイ、私が番頭です」
「私はァ、コピーのォ、勉強ォ……」
「ハイハイ、では、ずずっと奥へどうぞ」
「わァ! 素敵なお部屋ですね。それに、番頭さんが、すっごいハンサムで、ちょっと、私あがっております」
「いやいや、それほどでも」
何を番頭は、一人芝居をしておるのだ。
「では、続いて洋楽情報のコーナーでーす。今週はおまちかねのビデオがどっさり到着しましたよー」
もうやめなさい。言いだしっぺの私が悪かった。
「いやぁ家元、女子大生男ごっこというのは、むつかしゅうございますねぇ」
狼男やネズミ男にくらべて、女子大生男というのは歴史が浅いからな。
しかしそれにしても、今週のハガキは特別に多かったな。たまには流行に便乗してみるものだ。とにかく、女子大生というものについては一家言ある人が多いらしい。
「皆さん、女子大生を嫌ってらっしゃいますでございますねぇ。私の嫌いと、ちょっと方向はちがうようでございますが」
その、嫌いぶりを、ひとつひとつ見ていこうではないか。
「では、お稽古のコーナーでーす」
「真面目」な宗薫先生
早速だが、現在破門中の者が、萬流用の宛名スタンプまで作って応募してきておるな。
・川上宗薫『くどいようだが、真面目な話、東大、学習院てとこ、オレ、まだなのよね』(梅) 今週のハガキのなかで、わざわざ「真面目な話」と書くくらい真面目な取り組み方をしているという点では、この方が一番ではなかろうか。
「東大、学習院の方々、意あるところをくみとって、川上先生のエジキになって欲しいものでございますねぇ」
エジキ、というコトバが気になるが、ま、川上君の破門も晴れてとけたことだし、日本文学の発展のために、積極的に体当りをする女子大生がいても私はまったくかまわない。
しかし、川上君のような塾生は少数派であって、他の人々はもっとコワイよ。
・室橋雅彦『生きかえるといけないから頭をよくつぶしておけ』(梅) だとか……、
・小島智也『ごく一部のまともな人達を引きあいに出して私達を諭じるのはやめてください』(梅) だとか、
・新井裕美『ブッ殺してやりたい。殺してやりたい。やりたい』(梅) なんてぐあいに、どうして荒々しいものもあるのである。
「私の思想に近いものも、感じられますですねぇ」
師範や名取連は、どうかな。
小林井秀雄『こら、そこの女! フェラフェラ笑うな』(梅) 小林井らしいな。
津寺利嗣雄里『シャイで、ニートで、センシブルなマー君は、ブリリアントなセンスであたしをエスコートしてくれるので、お父さんも安心してください』(梅) 津寺らしいな。
船山満重『マンションだって、住めば都よ』(竹) 船山君、好調。
上松重治『職業に貴賤はない、と厳格な父に教えられたものですから』(梅) などというところだが、他の名取は、名取にしてはもひとつパワーがないので落としてしまった。
・黒木悟『いやだーア、今週はみんな、ウソばっかり』(梅) のような実力ある弟子に急迫されておるぞよ。
・阿部敏信『わたしたち女子大生はあなたたち女子大生が大嫌いです』(松) 早々と、(松)じゃ。
・後藤秋彦『こらっ斉藤慶子、気ィ持たせんと はよー脱げ』(竹) そうだった、斉藤慶子は女子大生だったんだ。
・宮本佳樹『お父さんの親心はオジサンの下心です』(梅) とか、
・大口裕子『我が家では、おもてなし用に使用しています』(梅) とか、
・山本晴雄『母といっしょに、牛を洗っている姉は、まだ冬休みです』(梅) とか、
・越智洋『妹は卒論のテーマを「〈ブルバキ数学原論〉における〈実一変数〉なんとか」にしたらしい。べつにぼくは妹が何をしてもいいと思ってる』(梅) などのように、家庭内女子大生に目を向けたのも面白かった。
久々にアサッテの方向をむいているのも来ていた。
・中野晶博『新橋税務署法人税課の山田啓子さんは三十二歳なのに女子大生で通用する』(毒) 中野君は税務署員だという。バッジをやるから、払った税金の1%でも返してくれぇ!
女子大生って何だ?
そろそろ、ごく一部の塾生諸君が心待ちにしている、そのへんのネタをひろいだしてみよう。
・高橋一裕『一部のために、二部はどうなる』(梅) という意見もあるが、とにかく、並べる。
・三好祐一『オレをスケベにさせたヤツ』(梅)
・平井伸郎『生き馬のタマを抜く勢い』(梅)
・持田康晴『正直いって私たちは軽薄です。でも早漏よりはいいと思います』(梅)
・吉賀光彦『尺八同好会の私は迷惑しています』(梅)
・村井初江『さらに着脱がカンタンになりました』(梅)
・斉藤茂市『セミヌード』(梅) 短いのは貴重だ。
・加藤順一『まいどまいどのおさそいに、イヤよイヤよでスッポンポンのポン』(梅)
・宇川拓水『バイト一発』(梅) などなど、ま、たいしたことはない。
・久谷浩憲『私にひと柱を打ち込んで。そしたらおさまるかも』(梅) というのは、さすがに怖い。
しかし、どれよりも大胆だったのは、
・神田善彦『カメのエサ』(竹) であった。
説明不能なのだが、
・堀田能成『そうだ、女子大生を呼ぼう』(梅) というのも、良い味を出していた。
そういえば、次のもなかなかコクのある作品であった。
・熊野雅紀『所在なくて、女子大生、と書いてみる』(梅)
・中川久史『僕の友達の内藤君は「女子大生」という文字をオナペットにしています』(梅) とも、またちがうようである。
「ところで、家元は女子大生はお好きでございますか」
私は、人間を肩書きで見ないようにしておるからナ。お好きもあればお嫌いもある。
女子大生というコトバには、年齢が二十歳くらいのいちおう経済的に安定した家庭の女性、という意味が含まれていて、ざっとそれをひと口で言おうとすると「若いオンナ」ということになってしまうのではある。大学にいようがいるまいが、「若いオンナ」というのは注目を浴びるものなのだ。
「ただ、昔の女子大生は、ウッソーとかカワイイッとか言わなかったんでございましょ」
そのぶん、栄養も良くないから体格も悪かった。大差ない。
・宮林光三『長生きはしてみるもんじゃ』(竹) ホラ、こういう証言もあるだろう。絶対量が増えてることに関係してるんだね、なにもかも。
なんてったって……、
・添田昌弘『日本中の女子大生をつなげると火星までとどきます』(梅) というくらいだもの。
・青木道夫『君、女子大生? と聞いて、嫌な顔をする子はいない』(梅) という報告もある。
・明田珠美子『どんなに混んでても、じっくり診てもらえるの』(梅) といった得もあるらしいな。
・西原延彦『生活感がでたらこの商売も終りね』(竹)
しかし、
・長谷川裕美『実録女子大生の夜――おこたでみかん』(梅) というのも嘘ではないらしいので、ややこしい。
多角的な視点に感心
どうせややこしいなら、いっそややこしいままで、
・織田和夫『ワタシンち、父の提案で「女子大生八百屋」って名づけました』(梅) みたいに乱暴につき進んでしまうのもいいかもしれない。
・加藤恵一『青春の運用』(竹) (松)にちょっと足りないものがあるが、視点が新鮮だった。
・山本信三郎『「らっきょう」ならば「花らっきょう」』(竹) どうしてこういう発想ができるんだろう。さすがの七十歳。
・城田瑞枝『“私も女子大生”元気にスクーリングに通う、佐藤トメさん(69)』(梅) そうなんだっ、若くない場合もあった。
・平田和泉『この町に大学は無いが、女子高生が頑張って穴埋めしている』(梅) であるとか、
・三室治野『まだ、見ぬ、ホンモノ』(梅) などというのも、出題時には考えもつかなかったな。
・長塚隆『日本経済の使い走り』(梅) は、使い勝手のよさそうなコピーだったな。
・森島桂子『鼻をすすりながら臭いにおいを発している女子大生も、あたたかい目で見てほしい』(毒) そんなもん、女子大生であろうとなかろうと、あたたかい目なんかで見られるか!?
しかし、そう言っても、
・渡辺匡『どう言われたってグレないところが、長所のひとつです』(松) という不思議な現実があるので、安心だ。
そういえば、あんなにグレない人達というのはいないな。中学高校生はもとよりサラリーマンだって主婦だってなにかとグレたがるのに。いちばん安定した日本人というのが、女子大生なのかもしれぬ。
「あ、家元、もう一枚ハガキが落ちておりました。『番頭さんを大切にしたいわ』ですって」
ボツの山から拾い出すなッ!
今週の宿題
ロスアンゼルスで開かれるオリンピックには、どうも、キャッチフレーズというものが見当らない。作り忘れているのか、なくてもいいと思っているのかは知らないけれど、あっても邪魔になるわけではないし、いっそ萬流コピー塾でつくってみようということになった。
「ロス五輪の書」
番頭さん、早いねぇ。
よくわからんが、早いねぇ。
塾生諸君は、早いばかりでない良いコピーを送ってくれたまえ。
では、家元は帰るぞ。
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アジャパー、私が家元の糸井重里である。
たえず社会の動向に目を向けているのが週刊誌というものなのであるが、そこに連載されている我が萬流コピー塾とて例外ではない。
今週はいわゆるホットで新鮮、熱くてフレッシュな情報からスタートすることにした。
まず、最新の世界情勢としては、フルシチョフ首相の死を報じたい。あの人はニュース映画などでは、やたらに男と抱擁をしておったが、とにかく彼の死によって世界情勢は重大な局面を迎えるにちがいない。番頭のほうからは、どうだ?
「私、やはりインドのネール首相が上野動物園にゾウをくださったことを、是非ともお知らせしとうございます」
そうそう、それも世界情勢に新たなる疑惑の一頁を書き加える事件ではある。
「そして、国内では、ちょっと暗いニュースではございますが、千葉大のチフス菌バナナ事件というのがございます」
ほう、それは初耳だ。後ほど詳しく教えてくれ。国内社会の明るいニュースといえば、某チョコレート会社の、ミドリガメが当る大懸賞だな。封筒に入ったミドリガメが郵送されてくるらしい。
「芸能関係では、美空ひばりさんの結婚のニュースも、早々と届いております」
ほうっ! 相手は誰なのだ。
「日活のマイトガイ小林旭さんでございます」
いやぁ、番頭もさすがに地獄耳天国尻というだけあって、世間の動きには敏感だ。
「いえいえ、昨今の科学の日進月歩ぶりには、とても追いつきません。そうこうしているうちにソ連あたりが世界初の人工衛星など打ち上げかねない勢いでございますから……」
まさか。21世紀の夢と呼ばれている人工衛星、そんなに簡単に上ってよいはずはない。
「それもそうではございますが、私、もし仮に打ちあげられましたら、スプートニクという名前をつけとうございます」
うむ、なかなか人工衛星らしい良い名前だ。
「では今週の時事問題はこれくらいで切りあげまして、お稽古のほうに……」
売春防止法が国会で可決されそうだから、急ごう。
「本気」だから面白い
今週は、「一家に一鉢、金魚鉢」という課題であった。
いつもとちがっていたのは、塾生諸君がかなり本気で「金魚を飼うことをススメていた」ということである。
「コピーを考えているうちに自分でも金魚を飼いたくなったのでございましょうか」
あるいは、あまりに長い冬に飽きて、春を待ち望む心が、金魚への好意となってフツフツと湧き起ってきたのであろう。
まずは、二人の師範の元気なところから。
津寺利嗣雄里『トホホ、また金魚に生まれちまった』(梅)
小林井秀雄『いけねえ、勃起したらおぼれそうになっちまった』(毒) 両師範とも、他にも多数の佳作があった。
では、最近ヒイキしてくれないと嘆いている名取連のもの。
山口井正明『金魚がコケない手スリつき』(梅) 山口井は赤木さん(女)にフラれそうとのこと。元気がないらしい。
「赤木のアマも今宵かぎり……」
番頭も、クールだねぇ。
船山満重『あの娘の名前で泳ぎます』(竹) 良い良い。
上松重治『引っ越しの際には、小物入れとしてご使用下さい』(梅) リアリティはあるが、鉢よりも、中の金魚中心で書いて欲しかった。
次の作品は、掲載をためらったのだが、当人がスポーツ店経営という立場の塾生でもあり、一応真面目な意味で選んだ。
柿沼井徳治『ウチの金魚は餌なしで氷の下で泳ぎ続けている。ガンバレ、ウエムラ!!』(梅)
ハガキの消印は2月26日である。植村さんは、本当に「氷面下の英雄」であったような気がする。
他の名取は、今回も見送り。
さて、今週は出来のイイのが多いから、ゆっくりと噛みしめて読むようにね。
・堀田能成『三浦さん その金魚ばち どうなさるんですか。(ひつこいひつこいレポーター)』(竹) おもしろいじゃないか。
・箟雅明『オーパ! 普及版』(竹) わかりやすいじゃないか。
・小林茂樹『深夜、家族が寝静まってから、金魚鉢の水をチビチビと飲む。これがワテのかくれた楽しみですねん』(竹) アイディアはおもしろいが長い!
・藤谷信夫『川に金魚を呼び戻す運動には反対しよう』(梅) 私もそう思った。
・市丸徹也『はずかしいからみないでね』(梅) うん、わかった。
・高瀬雅文『部屋の両隅に置けばステレオ効果が楽しめます』(梅) 古くて新しい。
・小島智也『父は、金魚を飼うことで母に抵抗を示した』(竹) シブイねぇ。
・亀海昌次『ふんをする花ばな』(松) おっと、簡単に(松)をとられちまった。今週は、とにかくみんなイイんだもん、勢いがついちゃうよ。
謙虚でありたいが……
「百作くらいは選べる感じでございますね。類似企画の雑誌に分けてやりたいぐらいございます」
エバろうぜエバろうぜ!!
・河野正『自分のフンで新体操をする金魚がいたっていいじゃないか』(梅) フンの長さで書いたのは多かったが、これが一番新鮮だった。
・陣内弘之『君のダイバーズウォッチは宝の持ちぐされになっていないか?』(毒)
・河野正『ごめんなさい。今夜は金魚にごはんをあげなくちゃいけない日なの』(梅) そーか。
・高谷尚志『今年も、税務署員が選ぶ「好感の持てるペット」で1の座に輝きました』(竹) 時宜を得た快作。
・鈴木浩二郎『|刑事《デカ》長、当分の間、泳がせておきましょう』(梅) 高校生もなかなかのものだ。
突然、気のぬけるようなやつ。
・増岡幸一『友人に勧められて』(梅) いわゆる大穴であった。もうひとつ、ある……。
・南雲丈博『――今週の結論 玄関がせまいのは、理由にならないと思った(川崎徹風)』(梅) 本人かと思ってしまった。このあたりのヌケた味が出てくるのも、今週が豊作であった証拠である。しばらく、この後はオーソドックスなのを続ける。
・細野嗣雄『金魚を飼う、水を飼う』(梅) なるほどナウイ。
・平彰彦『ハンディを背負ったこの鮒たちをやさしく見守ってほしい。作りだしたのは我々人間なのだから』(梅) 日本の金魚はまだいいが、家元は中国でトンデモナイ姿の「銘品」を見てしまった。あれには驚いた。
・花岡邦彦『部屋の乾燥を防ぐ』(梅) 花岡君、慎重になってきた。就職おめでとう。
・平沼智子『上に置くなよ、テレビの!! 見えねえじゃねえか(出目金)』(梅) そう言えば、そうだな。
・久野慎太郎『こいつは一人でキンギョ鉢をつき破ってしまう奴だ』(梅) 「ジョーズ」を観た人なら、わかる味わいである。
・秋葉武郎『暮しに暮しを』(梅) ちょっと考えすぎかな。と、ま、まともなのを並べたつもり。
・田沼信子『語りかけるあなたではなく、答えようとしない金魚が異常なだけだ』(梅) 似ているが……。
・宮崎智勝『ただいまー……ただいま……ただいま……ただいまあっ! ただいまああ!』(梅) というのもいい。それに続けるには、これかな。
・門田陽『妹は嫁ぎ、弟は恋をし、僕は金魚の世話をする』(梅) 萬流でもやって頑張れよ。
・連城紀三郎『くわえるんだよ、オラ』(梅) 萬流でもやって気をまぎらわしてくれ。
・五嶋健『高級志向の貴方、特製24金魚を!』(梅) 中学生だから甘くしてやったのだ。
わぁ。まだまだあるなぁ。全部掲載できるかなぁ。なんとかしよう。
・山富史朗『金魚は夜中の二時頃鳴きます。本当です』(梅)
小井沼玉樹『金魚鉢にパンツをはかせたら、脇から金魚がはみ出てた』(梅)
・田代英明『金魚の|方《ほう》からは、御主人様のお姿は見えない仕掛けになっております』(梅)
・田中可南子『ウチは、これ位から始めます。クルーガーキンギョ』(梅) 同巧あり。
・鈴木正人『つわ、富山の金魚売りだす。年1回、減った分だけ補給すます』(梅)
・利田浩一『風呂の残り湯で育ててやれば、親近感も増してくる』(梅) それ以上親近感を追求しないように、ね。
考えすぎてもダメね
まぁ、とてつもなく図々しいのがあったわ。
・浅野みき『うふふふ、あと1点で弟子だワ、うふふふ』(梅) うふふふ、ひっかかったわ。
・明田珠美子『のら猫ホイホイ』(梅) 明田君の足踏みの原因は、「考える人」になってしまったことだ。残念である。
・陣内弘之『わたしがヤナギヤキンギョローだ』(梅) 陣内君、労少なくして、二点掲載成る。
・阿部敏信『「こいつう、死んだふりしゃーがって」とは、人間ポンプ渡辺さんの決まり文句ではある』(梅) 記憶力にお点。
・海原瑞『只今清掃中。お隣りを御使用下さい』(梅) 熱心の海原君、おひさしぶりね。
・山田丹生『金魚鉢の|縁《へり》を見たくらいで悟った気になるんじゃねえ』(梅) 自己採点通りだった。
それではトドメの一作。
・奥林浩之『二十八の命を絶ったいわく付きの呪いの鉢』(松) ネガティヴで、理屈っぽいともいえるが、やはり考えるならこのくらいのところまで追いこまないといけない。『のら猫ホイホイ』と、これとの差は相当にあると思う。
お、番頭さんもできた?
「はい。『大和郡山市の皆さん、萬流コピー塾につけ届けをくださいまし』という……その、ホンネで書きまして。で、うまく行ったら次の宿題を「特殊浴場」ということにしまして、その……次をまた考えて……」
本気だからコワイ。
今週の宿題
単刀直入、マッチである。マッチの失地回復をはかる名コピーを考えてくれ。これは、広き門であるだけに、かえって難しいということを覚悟して書くように。安いものだから、現物を前にして考えるとよいと思う。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
全国一億四千万の萬流ファンの皆さん、お待たせいたしました。私が家元の糸井重里です。
あの悲惨のうえにも悲惨を極めた太古地球の支配者、ジュラ紀の王者として君臨していたゴジラの日本来迎から、早や二十有余年の歳月が流れようとしております一千九百八十四年。
淫風吹き|荒《すさ》び湯煙轟轟とたちのぼるここ熱海の地を、いま正に、東海大地震もさながらに揺さぶり、阿鼻叫喚の逆説的楽園を建設せんとして、萬流一行が、一歩また一歩と伝説的とも謂える地響きをたて、時には鼻汁をすすりながら進軍しつつあります。
超巨大な芋虫とも見まがうばかりの勇姿を陽光に輝かせ、あの神国日本が世界に誇る準音速鉄道馬車、新幹線こだま号が、いま、ただいま、近代建築の基幹を文字通り支えるコンクリート製プラットホームを|掠《かす》めるように、あたかも地上すれすれを力強く滑空するロケット機のように入ってまいりました。
十四号車と黒々と大書された扉が自動的に開かれ、続々と萬流の強者が舞い降りるように、ホームを踏みしめています。
おっと、筆頭は、昭和の糞付き重戦車、小林井秀雄。続いて短文の散弾銃、津寺利嗣雄里が髪を風になびかせて登場します。
「そして、番頭界の大睾丸こと、バントー仮面でございます」
おうっと、週刊文春社の全権大使として必殺の肛門絞め、南半球の顔役・雨宮秀樹副編集長が何やら凶暴な鞄を抱えて現れた。
後は史上空前の嵐を呼ぶ太股を持つ明円一郎記者、その右にはコンボイの数十トントラックで運ぶに|相応《ふさわ》しいほどの大量のハガキの山を軽々と運ぶ、雪国の荒法師、丁稚のハタ坊が続きます。
総勢、一、二、三、四、五、六、おうっと、しんがりに登場いたしました……文案の無政府主義者、歩く団塊、家元の糸井重里だ。
どんよりと不吉に曇った上空を|睥睨《へいげい》し、周囲の淫風を吹き飛ばす雷嗚にも似た雄叫びを、萬団は、いま、一千九百八十四年の遅い冬、熱海の町に過激に響かせたのです。
「家元、何度も辞書をひきながら何を書いておられるのでございますか」
おうっと、番頭が、ビールに手をかけた。
「今週のお稽古は、両師範と一緒に、熱海で行なっております」
師範が選んだコピー
「では、師範の二人、この、萬の数に若干欠けるハガキの山から、自分の好ましいと思った作品を選んでください」
今週の課題は、あるまいことか、世紀末の良心、週に一度の福音の文字軍団、週刊文春がとりあげられるのであります。
小林井「私は、これとこれ」
津寺「私は、これとこれを選びました」
おうっと、試合開始後、早や八時間、遂に四枚のハガキが萬苦の末、机上に並べられた。
小林井選出の二枚だ。
・陣内弘之『僕の友人はコンクリートミキサー車とバキュームカーの交通事故のとばっちりをくい、糞固まって死んだ。しかしそれは意図的なにおいがする。文春さん、疑惑をはらしてください』(竹) 家元、(竹)をつけた。
・松下康夫『ポスト、現代、新潮と私の人生暗かった』(梅) おうっと、これは過激な挑戦広告だ。
津寺、二枚のハガキを置いた。
小林井秀雄『匂いをかいでみたが、どうやら私の思い違いだったようだ』(竹) 家元、疑惑の(竹)を貼った。
・小林牧朗『リンゴを飲みこむと歯ぐきがいりませんね。ちょっとかしこい文春人』(梅) おっと、ここで、今回の特別賞が早くも決定した。
陣内弘之に、“疑惑”の安倍次長賞(黒いセーターをよく洗って贈るらしい)、そして、小林牧朗に坂元ベテラン記者賞が与えられた。
「師範の二人に選考をまかせますと、一泊二日では終らないようになってしまいます。今回は、側で勉強させることにして、いつものように私がお手伝いして家元が選ぶというスタイルでまいりましょう」
そうか。では、小林井と津寺は、お座敷ストリップのことなどあきらめて、この横で稽古を見ておるように。
まず、挑発に乗ってやって、こういうものを。
・花岡邦彦『載せれるもんなら載せてみろ。オマンコ』(餅) 載せてやったが点はやらない。
アノネタやコノネタは、いくらでもあるので、そうでないのを一気に拾っていく。
・依田圭一郎『昨日あなたの歯ブラシと「短歌」の切り抜きを捨てたわ』(梅)
・十万萬千代『亭主とは十七年しか続かなかったのに、週刊文春とは二十五年続いている』(梅) これには、敬意を表して高田新入社員賞が付く。
賞はまだまだあるゾ
・野田孝寛『文春にティッシュはいらない』(梅) これ、「よくわからないけど……」というコメントと共に神作美人アルバイト賞が贈られる。
・仲西宏之『慣れれば、手乗り文春にもなります』(梅)
・横山秀『夏はアイスで!!』(毒) しかし、石坂凸版印刷営業部員賞が出た。
・安楽はるみ『わたしは「タンマ君」が好きです』(梅) そうかそうか、よしよし。
・重兼芳子『ハチ公の前でこれを持って立っているのが私です』(梅) どんな商売かと思った。
・堀川敬二『最近の文春の勢いはとどまるところを知らず、高校生文春はおろか、下は中学生文春、上は主婦文春にまで波及し、いまや、小学生文春にまでおよぼうとしている』(梅)
さっきの野田君に反対するようで悪いが、
・戸田義人『僕は「にっかつの広告」でティッシュを用意し、「淑女の雑誌から」でいってしまいます』(梅) これは、小泉超美人応接係賞になった。
さて白石編集長賞は、これだ!
船山満重『「週刊交春」今週号は、わざとまちがえてみました』(梅) こういうことを、実際にやれる度量の広い方だと、私は思う。やる……きっと。彼なら、やると思う。思う。
販売促進路線でアプローチしたものも、かなりあった。
山口井正明『四冊入荷三冊販売』(梅) 書店も愛読してるわけ。
・松下良胤『1000円出せば、黙って5冊』(梅) そりゃ、ね。
・藤堂悟『文春を読み始めてからというもの病気ひとつしたことございません』(梅) そういう人もいると思う。
逆に、裏コピーには、こんなのがあった。
・小倉二三雄『記事は大きく、お詫びは小さい』(梅) 事実。
・鈴木健一『俺は二○○円の週刊文春と二三〇円の週刊文春の違いが分らない男である』(梅)
・滝敦弘『時には買って損をしたと思うときがありますが、そのときがほんとうの週刊文春なのです』(梅) キツイねぇ。
では、戻ってみる。
・市川尚『めくるたび、ページがかわる』(竹) するどい!
・川上宗薫『和田誠がゼン面的にカバーしている週刊誌』(梅) そういや、そうだ。
それでは、いよいよ……。
・海野誠『遠い親戚より疑惑の他人』(竹) ぴたっと、きたね。
・川手輝夫『ぬいた後の気持ちよさ』(梅)
・古谷野雅見『私どもは単なる一週刊誌にすぎませんし、デタラメな記事を書いてるなんておっしゃる方は、だいたい貴方こんな失礼な話、無いじゃありませんか』(梅)
・高瀬雅文『疑う余地のない疑惑、という言葉に論理的な矛盾は無い』(梅) なぜか佐野校正部員賞がついた。
・水野政幸『セーターを着た狙撃手』(竹) 水野君はクリーニング店経営。庄野組合委員長賞を獲得した。
・亀海昌次『笑う白石』(竹)
この人、絶好調。「そういや、よく笑っていることがある」と、雨宮副編集長賞に決定した。
・神田千世美『三浦と金平の共通点は“ラ”です』(梅) よくそこまで調査したものである。
・吉川峯子『私が逆取材された週刊文春です』(梅) シンプルね。
・山田丹生『各誌の皆さん、編集長が豪邸を建てると申しております』(梅) バカモノ、現代では豪邸の三つや四つ、小学生だって持ってる時代だぞ。
「幼稚園児だって五つや六つ。ところで、私もひとつできました。『白石編集長は勝』という、まことに真実をついた作で……」
はい、そうですね。
・神田洋一郎『疑惑の家元制度の解明に花柳幻舟が乗り出す』(梅) 嘘だーい、嘘だーい。
では、そのあたりのもの。
・小幡稔『読者に階級をつけているのはうちだけです』(梅)
・石原正雄『週刊井文春里』(梅) ラクしてもうけたね。
・鈴木正人『よみびとかずしらず』(松) 実用にもなりそうだ。
・小林幸弘『師範、名取の方々は資産を公開してほしい』(毒)
二人の師範は、「恥ずかしいから拒否する」と言っておる。
窪田井浩幸『切り取られた3ページ』(梅) そんなことをせずに単行本を買いなさい。
そして熱海の夜が……
そういえば、津寺のはどこだ。
津寺利嗣雄里『疑惑の簡略「糸萬|ピ《ヽ》」』(梅) 投書のネタをコピーにしたな。
もう少し、掲載できるな。師範、探してみなさい。
・並木謙二郎『あなたは、二百円で、文春と同じものが作れますか』(梅) うーむ。
・奈須田若仁『藝がないので読みやすい』(梅) 同巧多数ではあるが、参考までに。
・前田雅治『ほぼ、週に一度のペースですが、これの大好きな妻は、次回が待ちきれず罪のない私につらくあたります』(梅) 同情します。
・石川正尚『KIOSKのオバさんに200円だして「あれ」といったら「これ」くれた』(梅) 「あれ」と言って指させば「これ」をくれるに決まってる。
最後はこれだ。
・南なみ『なんてったって表紙の日付が飾りでないからね!』(梅) 塾生なら、意味はわかっておるだろうね。それでは、風雲急を告げる熱海よりの稽古中継を終る。
今週の宿題
今回の宿題はスリッパである。日本名物ともいえるスリッパのすばらしさを再認識させるようなコピーがほしい。色、柄、素材についてはまかせる。スリッパが買いたくなるようなひと言を考えてくれ。宿題名を必ず書くように。
先週予告したように、「スリッパ」のコピーは紀伊國屋ホールで開かれる萬流大会会場で発表する。その有様は4月19日号でお知らせする。
では、家元は帰るぞ。
[#改ページ]
シ――ン。私が家元の糸井重里である。
シ――ン。
シ――ン。シ――ン。シン。
静かだ。
コッパーンッ。
「ししおどしの音が、静けさという白い布に、タバコの焼けこげのように残りましたねでございます」
再び、シ――ン。
シ――ン。シ――ン。ン――。
番頭さんや。ところで、萬流の単行本のほうは売れておるかね。
シ――ン。
「それは、もう、えらい勢いで。いまもこの庭先を運搬用のトラックが通るところでございます」
グオーン。ゴゴゴゴゴォ。
「ただいまのは、10トン車でございます」
シ――ン。シ――ン。
コッパーンッ。
グオロロロ、ブィィーン。
「いまのは丁稚が、トラックの口真似をしながら、風呂敷包みを持って配本に行くところでございます。あっ、くにやろ! 猫が一匹、単行本をくわえて走り去りました」
シ――ン。
シ――ン。シ――ン。ン――。
静かだ。
「番頭さん、愛してるわ」
な、なんだ? いまの声は。
「あんまり静かなので、番頭さん愛してるわ、と自分で言ってみたのでございます。少し、|虚《むな》しゅうございました」
シ――ン。
喧騒のまっただなかでこの誌面に目をやっている塾生も多いと思うが、当塾は、ここにひとときの静けさをプレゼントした。
シ――ン。
「では、そろそろお稽古にまいりましょうか」
うむ。それは良い考えだ。このままシーンシーンとやってると、どこでやめていいのかわからなくなってしまうからな。
「まことに……」
コッパーンッ。
難問をものともせず
課題は、ロス五輪のキャッチフレーズであった。
全体を通しての傾向だが、どうも、ロス五輪ムードというものが沸き立つには、まだ時期が早いらしく、みんなかなりクールに書いてきているようだった。
「いざ開会して、テレビ中継なんかが始まると、けっこう夢中になるんでございますが……」
始まる前から興奮するってものではないのだな、やっぱし。そのへんが、プロ野球の開幕とのちがいかもしれぬ。
「家元は、日本シリーズが終ったとたんに、翌年の開幕ゲームのことを考えておられましたものね」
時々、私は、自分が日本のプロ野球界を支えている偉大なる小石ではないかと思うことがあるよ。
では、案の定、の|疑惑《ヽヽ》がらみのものを拾ってみようか。
けっこう多かったけれど、むちゃくちゃ無邪気なこれ一作だけを掲載する。
・長谷川裕美『ロス→疑惑→三浦→百恵→子供→カレーライス→エスビー→瀬古→オリンピック』(梅) これひとつで、いいと思わんかね、他の諸君。
他に多かったのは、黒岩選手の「プレッシャー事件」に関連したもの、ロスアンゼルスのケチケチ運営もの等々、約8通りほどに分類できた。
しかし、萬流コピー塾は、同巧多数について解説する説明会ではないので、あまりそのへんをしつこく取りあげない。
ただ、同巧多数が多く出たということは、ロス五輪の情報が少ないということを意味しているのであって、やはりこうした「遠い課題」は、「やきいも」や「コロッケ」のような「近い課題」に比べて難しいということがよくわかる。
だが、それにしては、みな良く健闘したと思う。
特に|称《たた》えたいのは、依田圭一郎君のカタメ撃ちである。見よ、その作品群を。
・依田圭一郎『一般市民の傷害事件で、日本選手団、無念の出場停止』
『さぁ、ここで聖火に物言いがつきました』
『ここ広大なアメリカ大陸では毎日のようにどこかの州でオリンピックが行なわれています』
『萩本欽一ヒューマンスペシャル「もう一つのオリンピック」』
『猛、六本しめじじゃ!』……これだけ合わせて(松)にする。ひとつの方法論だけで攻めているとはいえ、たいしたものである。最後の「六本しめじ」は、忍者武芸帳が出典である。念の為。依田君には、一気に名取まで駆け抜けてもらいたいものだ。
師範・名取を脅かす
では、名取連のもの。
柿沼井徳治『成績次第でスポーツ店の秋の仕入れが決まる』(梅) 本当なのかもしれない。
山口井正明『健全な肉体に健全な精神が宿ればまるもうけである』(梅)
上松重治『欲しがりませんタマまでは』(梅)
冨士栄秀井也『他の国の人々が黒岩を見習ってくれるといいんだが』(梅)
船山満重『ボブ・ディランは地下室でロス五輪音頭の唄い込みにはいりました』(梅) ロス五輪音頭を題材にしたものは多かったが、さすが満重名取のものが一番良かった。
師範の二人。
小林井秀雄『名勝負、さばいて50年』(毒)
津寺利嗣雄里『終われば、君は学生で、僕は兵隊で』(竹)
最近は、意識的に(毒)を減らして(梅)扱いするようにしているので、小林井のように堂々と(毒)をもらえるという人はやはり貴重な才能なのであろう。
依田君の他に、今回好調だったのは陣内君。
・陣内弘之『「では金メダルを取った瀬古さんに話を伺います」「だからね僕はヘルプ ヘルプ ポリスって叫んだわけですよ」』
『今年から父兄と選手の昼食は別々になりました』
『勝って悔いなし 負けて体育教師』
『「ねぇ、ちょっと君、オリンピックとか好きなほう?」「ええ好きですけど」「やっぱりィー、じゃあここにいいもんがあるんだ。この券持ってると日本中のオリンピックが3割引きになるんだよ」「えー、ほんとですかぁ」』合わせて(松)。最後の作は薄井雄二君もほとんど同じだったので、彼には(梅)をやる。
今週は少人数をヒイキしすぎて、誌面がたりなくなっちまった。ゴメンよ、だだーっと行くぜ!
・村本政彦『あっ、その話はヤメテチョ……二度と思い出したくないんだワ』(梅) 名古屋ネタ。
・皆川則之『……………そしてより安く』(竹)
・雨宮秀樹『メダルをお持ち帰りの節は、実費をいただきます』(梅) あ、近所の人だ。
・田中裕美子『現地時間の本場』(梅) この人のハガキ、どうして自分の名前を書きまちがっているんだろ。16歳、学生……??
・宇川拓水『二月二十九日 オリンピックが近い事を知った』(梅) 宇川君、あと一点だ。
そういえば、山田丹生君は先週名取になったんだった。萬名は、山井田丹生とする。
さて、続けよう。
・石原拓美『ロス・五輪 ロミ・山田 ジョイントコンサート』(毒) ロミ山田の偉力であった。
・中島啓之『仏教徒が力一杯駆けている様は楽しい』(毒) これ、なんだか好きだなあ。
・吉田保史『「日本じゃ今瀬古は2位だがな、ロスではもう1位になってるころさ」と父は時差を計算してこう言った』(梅) もう少し整理できる。
・阿部達也『中畑がんばれ』(毒) 気の迷いで点をやった。
・岡崎幸子『どこでやろうと、私は出ません』(梅) 私も……。
・島田昌夫『対外人戦だけ見る』(毒) 私も、よ。
・宮崎智勝『もしかしたら増田明美と結婚するのは、あなたかも知れない』(毒) いいや、お前に決まっとる。拍手で祝うぞ。
・加藤秀広『「カッフォーニァ」農協の人々は練習熱心だ』(梅)
・渋村直正『弱い日本 そんなに出しては 恥をかく』(梅)
・田淵虹二『オリンピックくらいタバコを吸いながらゆっくりやりたいものだ』(梅) 新しい考え方ではある。
カヘ・バーで使おう
さぁて、(毒)気の多い今週だが、あとはどれを残そうかな。いっそ、今回は歪んだまま突っ走ってやれ。
・垣東徹治『ロスが五輪なら洗剤は無リンです』(毒) 完全にダジャレ。その中ではトップかな。
・藤谷信夫『国鉄運賃の値上りで、ロスまでの旅費の工面がつかなくなった』(竹) ……ねぇ。
・常山英明『その男は、空に飛んで行ったまま3秒間も戻って来ない』(竹) うまい。
・片岡博多『キタザワ、ユメです』(梅) パロディは、みんなうまいんだよナ。
・大橋祥哲『プラス二輪で暖かい、マイナス二輪は気持ちいい』(梅) よくわかんないけど、さ。
・白原光一『突然思い出したがイーグルスはどうしたっ!』(竹) ロスとキャラクターのイーグルサムと、両方にひっかかるのが面白かった。
・加藤典子『国境にスポーツはない』(梅) もひとつ深くできそうなんだけどなぁ。
・神田善彦『ロサンゼルスは、スポーツマンシップに乗っとられてしまいました』(梅) というのがあるが、
・杉浦範茂『ショーハイよりショーバイ』(梅) という見方もある。
単純なんだけど残したいのは、
・亀海昌次『ブレザー・ツアー』(梅) この人、掲載4回目で、もう名取だッ! 重亀海昌次という、読みにくい萬名を授ける。最近、糸萬ピ“第二の波”を感じるな。
・筑場敬子『「ロスオンピ」と呼んで下さい』(梅) これ、ちょっと無理があるね。
・高森富夫『東京の頃の赤ちゃんが、走り、泳ぎます』(竹) 84マイナス64イコール……あら、ホンに。
・小野里誠『スタートは、いつもいっしょだった』(梅) 『だった』より『なんだ』のほうが良いであろう。
・瀬能勝『オリンピック村に年貢米を要求した御代官様がいたかどうかは、不明である』(毒)
以上でやめとこう。今回のコピーは記憶しておいて、開会後に冗談として使用すると、絶対ウケるから、せいぜい「まぁ面白い方」なんてモテちゃってくれ。
今週の宿題
知っての通り「糸井重里の萬流コピー塾」は、単行本になった。売れ行きが良い(と思う)ので新しく刷ったものについては、「帯」のコピーを次々と変えるつもりである。その、帯(腰巻き)用のコピーを宿題にする。むろん、最優秀作品は実用として使う。現在のコピーは、現物を見て知りなさい。ここでは教えてやんない。
「プレゼントも、またまた用意いたしますです」
では、家元は帰るぞ。
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その前日、私が家元の糸井重里である。
番頭は、額に氷のうをのせ、体温計を数本口にくわえ、ここに横たわっておる。
「申しわけもございません、家元。昨夜から原因不明の高熱で、思考能力もなにも失われ、私、お稽古をお手伝いすることができません」
思考能力以外に、いったい何が失われたのだろうか。
「つまり、立つ力とか硬くなる力とか、行く力とかそういったモロモロのものと、モテる力、世のため人のためになる力などでございます」
そんなもの、以前からなかったじゃないか。熱は、どうだ?
「ハイ、只今、摂氏七千度あたりのところをさまよっております」
どれどれ、煙草の火をつけてみよう。おおっ! 点火した。
「先程から、近所の主婦たちが、いれかわりたちかわり私の身体のうえにやかんを乗せていくので困ります」
すべて沸騰しておるな。動くとこぼれるぞ。それでは、アレだな、明日の「笑っていいとも!」にポスター貼りに行く仕事も無理かもしれぬな。
「こ、このやかんさえどかしてもらえたら……」
そのうち近所の主婦が、とりにくるんじゃないかしらん。
「それが、一人ずつ自分の家のだけを持って帰るのでございます。しかも、噂をききつけた隣町の会社のOLたちが、業務用の特別でっかいやかんを持ってまたいれかわりたちかわり……」
じゃ、「笑っていいとも!」はどうしようか。
「ウフフ、ここに、名案が」
あっ、名案が動き出したぞ。
「番頭ロボット・オメカワ2号でございます。すべての用事は、このオメカワ2号が私の代理で責任を持って行ないます」
そうか、どことなく番頭さんに似たロボットだな。では、遠慮なくこのオメカワ2号をこきつかうぞ。
「そうしてくださいませ。私、ここでひたすらにお湯を沸かしておりますから」
じゃ、オメカワ2号、稽古にしようかね。
「ハイ、それがよろしゅうございましょう」
おお、喋り方も番頭にそっくりだ。
絶滅の危機感に着目
さて、課題はマッチなのだが、せっかくだからとあたりを見回して一箱てのひらにでも乗せてじっとその重さを味わって失われゆくものへのイツクシミの念を呼びさまそうなどと思ってはみたのだが、
「悪文でございますね」
番頭は静かに寝ていなさい。
「お湯のチンチン沸きたつ音がうるさくて」
うるさくても、余計なアイのテを入れないでくれ。とにかく、その、マッチがない。
というのは嘘で、はじめっから、マッチがないのを知っていた。表現の都合上、探してみたがなかったとしたほうが本当くさいと思っただけだ。
いやはや、1980年代のうちにはもしかするとマッチというものは珍奇なる品物としてマニアだけのものになってしまうのかもしれないな。
今週は、そうしたキンパク感のあるものから選んでいこう。
・山口普史『今でも徳用マッチをお使いの方、至急用途をお知らせ下さい』(梅) たしかに、知りたい。
・北川裕行『操作手順は箱に書いてあります』(梅) まんざら嘘とも言えない気がするな。
・福岡伸雄『おじさんの家へおいで、マッチの写真を見せてあげよう』(梅)
・田川景一『最近、自分は一体何であったのか、よく悩むことがあります』(梅)
・萩原千史『大切にして下さる方にお譲りします。二年前購入。新品同様』(梅) これと、ちょっと似たものとしては、
・河野正『僕の友人のS君は、デートの最中にマッチを落としたと大騒ぎしたら一発でふられました』(梅) であるとか、
山口井正明『アレッ、一本足りんぞ』(梅) などがあるが、萩原君のは「時」が変っていることを示しているし、河野君、山口井君のは「人」が変っているのを表現しているので、内容がまったくちがうわけだ。
しかし、滅びゆくマッチという視点のなかでは、
重亀海昌次『そっと忘れてほしい。眠いのだ』(竹) が群を抜いていると思う。
何が同巧かを考えて
やたらと多かった検便の思い出だが、厳撰した。
・堀江克彦『検便未遂常習犯』(梅) をひとつ残した。しかし、このテーマで書いた塾生諸君はソンをした。次のような大ケッ作があったからだ。
・小島智也『いいかげんに検便のことは忘れろ』(竹)
同巧多数のチャンピオンは、「マッチ売りの少女」ネタであろう。しかしこれは、マッチを擦ってなにやらを見せるという商売そのものがアイディアなので、それをもう一度ひっくりかえすのは難しい。手を出さぬほうが良いのである。なかではひとつだけ残った。
・原崎敦子『マッチ売りの少女の本名「永山むめ」』(梅)
続きましては、「マッチ一本火事の元」という名作によりかかったもの。これはパロディとしていじくれるので、わりに楽に挑戦できる分野だった。
・市川尚『放火に手を貸したマッチは良心の呵責にたえられず、ひとり静かに焼身自殺をとげた』(梅) まぁまぁ、だな。
・浅坂直人『ひと箱300(平方メートル)』(竹) ある意味で時事ネタだ。ひとつには、アノ事件、もうひとつは力士の浅坂君が大阪場所の最中にこれを投稿してきたということ。成績が心配であるが、よかったら知らせてください。
・奥林浩之『僕の擦ったマッチが街を真っ赤に染めた。青春の思い出だ』(毒) しゃあしゃあと(村上春樹調です)なんて書いてるけど、ねぇ……。
・小幡稔『クイズ・マッチ棒百本に聞きました。答えは六つ、「人間に、マッチ一本火事の元と言われて、あなたはどう思いますか」』(梅) 長いのはなるべく短くするように努力せよ。
百円ライターという競合商品と比べるのもあった。
・白原光一『1円ライター』(梅) このオオザッパさには感心しました。
しかし、「その他」が、やっぱり面白い。
・宇川拓水『小ささの尺度』(梅) おっと新名取誕生だ。萬名は、宇里川拓水とする。
上松重治『飛雄馬クンは、マッチの火をじっと見つめている、そんな子でしたねぇ』(梅)
船山満重『炎をけすと、ため息がひとつ逃げた』(梅)
津寺利嗣雄里『ゼア・イズ・ア・マッチ・ニア・ザ・センコー・オン・ザ・ブツダン』(梅)
小林井秀雄『元気がないようなので、添え木をして試みた』(梅) などなどが、名取、師範作。
・山口普史『このマッチを持っていらっしゃる方が必ずしも当店にお見えになった、というわけではありません』(竹) 山口君、二作掲載。このコピーは、是非ああいう所のマッチに印刷してほしいものである。
・野田孝寛『鼻で楽しむ温泉めぐり』(梅) 匂いでせめた。
・阿部敏信『孫の指』(松) これは、マッチを火をつける以外の用途で使う時には、そのまま実用になる。「おい、ちょっと耳掃除するから孫の指とっちくれ」とか、ね。れれれ、阿部君はこの(松)で14点か。では、阿井部敏信という萬名を授けよう。
・青野智『マッチの瞬間芸。頭に火傷したM・ジャクソン』(竹) 新しい、いまだけウケるスナック芸だ。ところで、スナック芸というのは、家元の造語であるから、忘れぬように。
・依田圭一郎『つけたマッチのもえさしで、おかまの意地と書いてみる』(毒) 敬意をこめて、(毒)をやる。依田君、絶好調。
・東輝明『聖火ランナーのポケットに一箱』(竹) 笑える。
・沢田みき『この春、TDAでは、マッチサービスをはじめます。大空の一服をビジネスにお役立て下さい』(毒) TDAの皆さん、本気で検討なんかしないでくださいよ。アノことだけでも笑われたんだから。
・瀬尾昌代『マッチ一本で隠せます』(毒) 男とマッチ棒の関係は多数あったが、これはわかったようでわからぬ。だが、とてもイヤラシイので載せてみた。
・鈴木正人『店のマッチで地図をつくる。われら新宿人』(梅) つい先日、家元一行は、新宿歌舞伎町に、特に名を秘す人々と萬究に行ったのであった。どの店に行ったのかは憶えているが、それ以上はどうしても思い出せない。
・助川徳郎『頭金0円あとは月づき1円の20回ばらいとたいへんお求めやすくなっています』(梅) 助川君は11歳だって。たぶんまだコドモだろうと思うね。
(松)にすると光る
・村松千尋『硫黄ポッキー』(梅) 簡潔だからいい。
・重地輝雄『我々は、鍋物界のマッチです。(えのきだけ)』(毒) えのきだけがテーマじゃないんだけどナ。
・山田美幸『五十三次のつぎは四十八手ね』(梅) 『つぎは』とひらがなにしたデリカシーが好ましい。見習ってほしいものだ。
・清水靖恵『うちの祖父はマッチで煙草に火をつけていましたが、擦りすぎによる過労で死にました』(毒) 何ゴトも、過ぎるのはいけないんだろうな。
・成田譲『父は仲の悪い三人兄弟を前に、おもむろに三本のマッチ棒を取り出した』(梅) できのいいコントみたいだ。
・伊原義幸『燃えるゴミ』(毒)
・二宮文彦『あなたはマッチ一本を、何メートル放り投げることができますか』(松) ちょっとヘンなモノだが、(松)をやるとグッとよく見えてくるコピーなので、あえてそうした。
最後に、クイズ風。
・藤井雅幸『レントゲンはレントゲンが発見し、太宰治全集は太宰治が作りました。さて、マッチは誰が発明したのでしょう?』(梅)
「マッチ! あ、近藤真彦!」
番頭さんは寝ていなさいって言ったろう。ホントにィ……。
今週の宿題
かつてはアパート経営が夢であった家元は、番頭の「一緒にソロバン塾をやりましょうよォ」という誘いをふりきって、老後の目標を「温泉旅館の主人」と決めたのである。
それにしては、もひとつ、温泉というものの人気がパッとしない。家元が温泉旅館をやる頃には、もっと温泉人気が盛りあがってくれていたほうが有難い。
で、塾生諸君に、「温泉に行こう」というコピーを考えさせてあげる。ジーサンバーサンばかりでなく、たくさんの人に温泉ってステキ! と思わせるようなキャッチフレーズを作ってくれ。たのんだぞ。
では、家元は帰るぞ。
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謹啓 きょうこのごろの春です。待ちに待った萬流大会がきてしまった。新宿・紀伊國屋ホールを埋めつくした塾生諸君、ご苦労様。切符が売り切れて来られなかった塾生も、誌面の都合で面白いところははぶいたが、それでも充分堪能できるであろう、と思う。
番頭 塾生のみなさん、こんばんは。
北海道室蘭から来るはずの平沢康太郎さん、いらしてますかぁ?(「来てまぁす!」の声、会場拍手)。
福岡の井形笙子さん、いますかぁ(「はぁい」、拍手)。
まだまだ佐賀市ですとか、青森県下北郡東通村宇野牛字水上の越善専一郎さん(「はい」)。わざわざ新宿区の……あ、これは地元だ、アハハ。他にも仙台、山口、敦賀市……ずいぶん遠くからいらしてますね。ご苦労様です。
遅れましたが、私が|萬流《まんりゆう》の番頭でございます(拍手)。
《萬流大会次第》
一、南伸坊先生の基礎講義
「萬流の歴史など」
一、尾克彦先生の特別講義
「アイデンティティについて」
一、コント赤信号先生の演習
以上、お蔭様をもちまして、つつがなく進行いたしました。
突然ではございますが、今日の佳き日にあたり、先般、お股方面にとても痛い思いをされた愛染恭子先生に対し、お家元から感謝状の贈呈がございます。
では、家元、どうぞ静々とおでまし下さいませ。
家元 感謝状。愛染恭子殿。
だから貴殿は、萬流コピー塾塾生の、薄々気づいているとは思うが福祉と、つまり厚生といったようなことに、多大なる尽力をしたわけで、本当に感謝しておる。
なお、この感謝に関する質問は受けつけない。
昭和五十九年三月萬日。
萬流コピー塾家元、糸井重里
愛染恭子 どうもありがとうございます……(と不可解な笑顔。会場からは盛大な拍手)
番頭 私にはよく分かりませんが家元がとても感謝をされているということだけは皆様にもおわかりいただけたと存じます。
さて、あんまり愉しんでばかりおりますとお稽古の時間がなくなります。家元、教場の方へお越し下さい。
お稽古開始
ごくひとにぎりのヒマ人諸君こんばんは。私が家元の糸井重里である。
本日はめでたい萬流大会ではあるが、その前にちょっと注意を与えておかないと|萬心《まんごころ》の足りない塾生が失敗をするおそれがある。番頭さんの方から“注意”をすこし読みあげてもらいたいもんだな。
「私もその危惧が、一瞬灰色の頭脳をよぎりました。ではその一、場内でタン、ツバなどをはいてはいけません」
おお、それは大切なことだ。ではその二はなんだ。
「紀伊國屋ホールの手洗いは、なぜか男子用と女子用にわかれておりますので、男性は必ず男子用を、女性はどちらかといえば女子用をご使用願いたい」
郷に入れば郷に従えだな。これを守れぬ者は、どうなるのだろう。
「特に罪にはなりませんので間違えた場合は、素直に謝罪すればよろしいのではないでしょうか。そして注意その三、どうしてもやむを得ない場合以外は、せきばらいをしたり私語をしたりするのはやめていただきとうございます」
うむ、わかるような気がするが、もうすこし理由を説明しなさい。
「この実演は、ご承知の通り誌上に再録されることになっております。その際、家元の萬心あふれるお稽古の間に、エヘンとかゲヘンという活字が混りこんでしまいますと、ここに参集することができませんでした全国の一億四千万名弱の塾生に迷惑がかかるばかりでなく、エヘン、ゲヘン、ゴホン等の活字がもったいない。そのまた印刷インクがもったいない……」
もうわかりました。
というわけで、以上三点をよく守っていただきたい。
「番頭に対する声援などは、せきばらいとは異りますので、念の為」
わかりました。口がヒマになったら、声でもかけてやって下さい。
「私、男は嫌いでございますので……」
たぶん、そうだろうと思った。「では、そろそろ……お時間もありませんので」
このテーブルに積んだのがだいたい一週間分のハガキの分量である。
で、この山の中からまあまあ良いものをこのくらい(四、五百枚)別にする。大変なんだ、ここまでが。そして、何度も何度も、砂金を採るようにふるい落していくと、ま、このくらい残るわけ。これが大体五十枚くらい。それを本日ご披露しましょうね。
あ、そうだ、スリッパの現物はなかったかな。
「これこれ、丁稚のハタ坊、買ってきたスリッパ持ってらっしゃい」
エバレエバレ番頭さん、ときどき無理にエバらないとな、萬流は。
山口井名取 あのォ、ぼく大阪から持ってきたんですけど……。
家元 えらい!! 山口井は最近赤木春江という女の子にふられたんだよな。
山口井 いえ、キヨミです。
家元 うん、それにしても偉いやつだ。何かに取り立ててやりたいものだな。
ま、とりあえずいくか。
スリッパという存在が、いつも踏みつけられているとか、陽の当る場所にでられなくて「可哀そうである」ということを核にしたものが非常に多かった。
が、中には拾えるものがある。
たとえばこの人、七十四歳の画家のコピー。
・豊田一男『体全体に人間の秘密がしみこんでいるんだ』(梅) 『秘密がしみこんでいる』という言葉の使い心地に不思議なものを感じました。
・中村嘉夫『実際はしぶきが邪魔で何も見えるものではありません』(毒) (会場シーン)これ、意味がよくわからないのだが、番頭さん、解釈してくれ。
「えーと、女性トイレのスリッパさんが上の方を見たんだけど、しぶきしか見えなかったという『虫の目パースペクティブ』の限界が赤裸々に描出され……」
私は下ネタは嫌いなのですが、手に残ってしまうのだ。
「結局、家元ォ、お好きなんですね」
いや、だから|手《ヽ》が好きなんじゃないかと思うんだ。
宇里川拓水『偉いのは相撲部屋のスリッパです』(梅) うん。
「あっ、会場からコピーが届きました。野坂昭如見習からのものです」
野坂見習 まだあるんです。
家元 ほう、それじゃ後ほど読んで、よかったら取り立ててあげよう(会場、笑)。
とりあえずこっちを片づけてっと。あれ、さっそく師範だ。
小林井秀雄『私がこんな姿でいるのも修業のためだ』(梅) 小林井師範の無限の明るさを感じさせるな。
続いて、広告の原点ともいえる、物そのものの形にヒントを得たものから選んでみよう。
・福岡伸雄『走るスリッパ宗兄弟』(梅) この人は最近のしてきた人で、宗兄弟の絵まで描いてある。
山藤章二弟子 家元!
家元 おっ、萬流弟子にしてN顔塾の塾長さんではないか。
山藤 その人ね、私の塾のレギュラーで絵がうまいんですよ。
家元 じゃあ、こっちでも名取になるのかな|癪《しやく》なやつだ(笑)。
・田畑保行『ハリセンからスリッパヘこれが文化だ――チャンバラトリオ』(梅)
・堀田能成『頭に取り付けて十七条の憲法を公布したのはだあれ?』(梅) 番頭さん、スリッパを頭の上にのせてごらんよ。
「こうでございますか、それともこうして……」
実際やると似てない。文字で書くと、それ以外考えられないという形になるところが、このコピーの面白いところ。これが言葉の恐しさであります。
船山満里『スリッパをぬきにしてローハイドは語れない』(梅) 番頭にやらしてみよう。
ローレン、ローレン、ローレン、やァッ!
「ぱこっ!」
こりゃだめだ。昔のスリッパはもっといい音がしたのにね。
続いて、これは今回から突然ガバガバ出してきた「軽チャーっぽい」人。東京・練馬区の橋本治君。ところがねえ、何とか選んでからかってやろうと思ったんだけど、ゼーンブ没。無理やり選んだのがこれだ。
・橋本治『ペタペタするのは楽しいな』(梅) (会場爆笑)彼が笑いながらこういうこと言うと、まあ、面白いわけです。
さあ、また師範だ。
津寺利嗣雄里『前進あるのみ』(梅) ほう、ウケませんね、ライブ向きじゃないんですね。
あ、また宇里川君だ。
宇里川拓水『どうして、おとーさんのスリッパは毛がフサフサしてるのに、アタシのはツルツルなの?』(梅) これ番頭さんには受けていた。
・吉野淳子『頭の上にもってくるとうさぎになれる』(梅)
番頭さん、ではうさぎになってくれないか。
「(スリッパを頭の上に立てて)ふさふさしたうさぎ。これ、でございますね」
私にはタヌキのように見えるのだが……。『頭の上にもってくるとタヌキになれる』(笑)
さて、次は萬流の塾生が一番得意な風俗ネタ。
いくぜ。最近好調の塾生、
・依田圭一郎『義姉さんの白いスリッパに夜中、俺のをさしてみる』(毒) (会場爆笑)この「姉」の字が「母」だと暗いものになります。それに「義」の字がないとアウトですね。「夜中」も「昼下がり」にするとかえって暗くなっちゃう。不思議でしょ、言葉って。
柿沼井徳治『アーラ奥様、また学校の呼び出し?』(梅) 人生のキャリアを感じますね。
山口井正明『川の字に揃える』(梅) 三つを揃える。この気色の悪さが最後まで残るのが山口井の本領だね。
・大口裕子『単身赴任のおとーさんへ。皆で寄せ書きしたスリッパ持っていってね!!』(梅) これは二十六歳の主婦なんだけど、冗談で書いているのか本気なのか分らないところが怖い。
・渡辺匡『あいつら、もうスリッパ交換までイッたんだって』(梅) 相当イッてるな、これは。
「Hくらいはイッてますね」
次はいわゆる名作と呼ばれやすいタイプのものです。
・矢ヶ崎嘉毅『坂井のアパートには二歩あるく為のスリッパがある』(会場パチパチパチ)これは(松)だね、うまい。同じ着想のものも多くあったんだけど、これだけ歯切れがよくて、|今《ヽ》が見えてくるものはこれ一本だったね。
・原田里花『私、インスタントコーヒー伯爵です。もちろん城では、スリッパはいてます』(梅)
・加藤幸作『自己主張のできない入院患者の僕は、せめてスリッパとねまきに気をつかって、看護婦さんの気をひくしかなかった。嗚呼』(梅) 「嗚呼」は余計です。
・渡邊ひとみ『母さんそれは誤解だよ。ボクはスリッパでそんなことしてないよ』(毒) (会場笑)いずれにせよ、してないというんだから許してやろう。
窪田井浩幸『金のない余暇がふえて、スリッパが忙しくなった』(梅) 理におちているが、なかなか上手なコピーだ。
・杉田章『スリッパの中からくつ下がでてくる家にいくのはもういやだ!』(梅) 分かる。
・村山三男『スリッパは便所のはじまり締めくくり――実篤』(竹) 竹中直人に読ませたい。
・筑場敬子『来客用に「御手洗」と書いてあってもいいじゃないか』(梅) 「大会に出席するにあたり、度胸だめしに萬流トレーナーにバッジを2コつけて新宿の街を歩いてみようと思っております」と書いてあるな。いるかい! あッいました。「みんなおきれいですねえ、来てらっしゃる方は」(会場爆笑)
さて、これは読みたくないのだが、どうしても選びたい。じゃ、行くよッ。
・小沢誠一郎『お父さんのスリッパにも白いものが目立ちはじめました』(梅) (会場爆笑)困ったもんだ、でも受けるんだからしようがない。
・口隆男『田中好子は偉い。スーリッパ! スーリッパ! スリッパ! スリッパ! バンザーイ! バンザーイ!』(梅) (会場爆笑)林家三平が東京タワーから中継しているわけじゃないんだけどなあ。
次のはもっとひどいよ。
・湯浅康弘『民さんはスリッパが好きだ――野菊の墓より』(梅) どーしても落せない。
・長塚隆『ジュリーです。ほくろの位置でスリッパの左右までわかります』(毒) (会場爆笑)ジュリーが聞いたら怒るぜ。
・佐藤敏彦『コンドームを忘れた時、スリッパを代用すると女性が危険です』(毒) (会場爆笑)学校の先生なんだって。
あれーぇ、また小林井だ。
小林井秀雄『不定期の登板に備え、ブルペンで投げ込んでいます』 まだあるぞ。
『虫とりかごに入れといたら、スイカを食べたよかわいいな〜』(会場爆笑)
『私が|和同開珎《わどうかいほう》だが、それを譲ってくれないかね?』(爆笑) オレ、もう読むのイヤ。(突然)
野坂(壇上に詰寄って)さっきのおれのコピー返してくれよ。
「あらっ、どうかいたしましたか?」
野坂 もう一ぺん考え直す!
「せっかくこんなにどっさりお作りになったのに……」
野坂 だめだめ。返してくれよ。
家元 なかなかいいですよ。これなら五万票は堅い(拍手)。(押し問答のすえ残念そうに、番頭が野坂見習にコピーを返す)小説家としては優れた方なんだが……。
さて、次はスリッパで物語を作る人も多くなってきている。
・高山普慶『ペッタン ペッタン あっ スリッパの鬼太郎がやってくる』(梅)
また山口井だ。
山口井正明『先生、急患です。よし、ジェットスリッパを用意しろ!』(梅) (会場爆笑)
次もさっき出た依田君だ。読み方が難しいな。暴走族風に読まないといけないんだ。
・依田圭一郎『メチャいじくったパッスリじゃん』(竹) (会場爆笑)やっぱり受けるなァ。
・左座裕三『トイレ担当が長い私は、春の人事で異動がない場合、転職にふみきる』(梅) スリッパのことを書いとらんじゃないか。でも面白い。
・竹本健三『病院のユウレイは、ペタッ、ペタッと音をさせるので、足があるのがわかる』(梅) 素直だが気持がわるい。
・鈴木修二『透明人間も、ついこれは、はいてしまいます』(梅) 前のと似てる。
船山満重『夜更けに こんなとこまでついてきちゃいけないよ』(竹) (会場爆笑)どう考えていいか分からないんだ。
デンポー デンポー
「あれ、丁稚のハタ坊が……」
丁稚 祝電でーす。
家元 ほー、これが大会当夜、番頭が読み忘れた祝電だな。なになに、
「巨人軍の江川卓です ぼくは野球をやっているのでお伺いできませんが 萬流コピー塾の一層のご発展をお祈りします 四月六日七日 後楽園でお会いしましょう 江川卓」。
うれしいなあ、家宝にしよう。
とまあ、これで優秀作品は終りなんだけど、“話のタネに”というものを少し出してみましょうか。これはただ読んだだけじゃわからないよ。
・花岡邦彦『スリッパどころではない。私は「オマンの花ちゃん」と社内で呼ばれているのだから』(餅)「週刊文春」をテーマにしたとき『やい、載せられるものなら載せてみろ。オマンコ』ってのが載ってたでしょ。あれを書いたのがこの花岡なんだ。いるかな、花岡。あ、いた、いたよ(笑)。馬鹿だね、載せるんだよ、うちは。
「しかり! 揺がぬ萬流でございます」
あれを載せたお蔭で、花岡は入社したばかりの社内でえれえことになったんだってさ。『スリッパどころではない……』っていうのは、だから実話なんだ(会場爆笑)。
続いて、七十九歳の塾生からのものです。
・本橋清臣『病院へ見に行った』(梅) ほんとに行ったんじゃないかと思うと……ね。
・中沢宏『母は発情期を迎えたスリッパに避妊のしかたを教えていた』(毒) 一緒にこんな絵が描いてありそれが良かった。
・遠山久美子『葉桜にスリッパ咲かす花川戸』(餅) 何を思ったのか、ハガキにスリッパ状の布キレを張りつけて、おまけに色エンピツで絵まで描いてある。本人が愉しければそれでいいんだ。おれなんか、おれなんか……。でも、破門されないだけマシだ。
破門経験者のを読みます。世田谷区成城の五十九歳、小説家。
・川上宗薫『素足にスリッパ、浴衣の襟もとゆるめたマイケル・ジャクソンは、ホテルオークラ新館のロビイにぴったりだぜ』(梅) マイケルを出したところに工夫があります。マイケルっていうだけで女の子たちは「えッ、マイケル?!」。そこヘポッとスリッパをはさみ込む。何かもうそれだけでできたような気がする。コツというには余りにも簡単な技術ですがね。
今日だって、愛染恭子先生をお呼びしたのは、愛染恭子っていうと、「あ、じゃ行こう!」無意識に足が向いてしまう。で、「ほー、萬流っていうのをやっているのか。愛染先生も来ているし、何だかいいものらしい。でも、帰ろう」こういうふうになるわけですね。アハハハ。
・高瀬雅文『トマソン選手は最初スリッパの使用法を知らずに、単なるトマソン物体として|それ《ヽヽ》を捉えた』(梅)
「これは赤瀬川原平つまり尾克彦先生がいらっしゃるということを知っている犯人の仕業でございますね」
ま、私から簡単に解説いたしましょう。「あるんだけども、何のためにあるかわからない物」、たとえば、昔巨人軍にトマソンという方がいましたが、他の選手は「トマソンがいるな、何でいるのかな? 夏暑いから風を起すためかな、でもそうじゃないだろうな」と思っていた。そういうものをトマソン物体といいます。詳しくは雑誌「写真時代」を読むしかないな。
「次は京都・上七軒の芸妓さん。お若いかたですね」
・竹端満枝『男性のヌードの柄があれば、足を入れて歩いた時の感触をあじわいたい』(梅) えー、こんなところでハガキ選びは終りにしようかな。
せっかくだから、師範、名取に何か聞きたいことがあるなら、この場で聞きなさい。
塾生 山口井名取はどんなふうに作っているんですか。
「それでは山口井名取、マイクがありますからそれで。ハタ坊、マイク、マイク! あ、前行く」
山口井 宿題がでるとそのものの絵を描いたり、何でできているかを考えて、二、三日で五、六十本作り、その中からいいものを二十本ぐらい出します。
塾生 小林井師範はどうやって作るんですかぁ。
小林井師範 えっと、まず何もアイデアが浮ばなかったら、とにかくそのものにクソを踏ませることにしてます。スリッパなら、「これで名実共にクソを踏んだわけだ」というのをとりあえず作る。そうするとなぜかたくさんできたような気になって、あとはどんどんできます。それだけです(拍手)。
野坂見習 ちょっと家元に訊ねたいことがあるんだ。いささか僕にわかんないところがあるのはね、虫かごの中に入れたらスイカを食べてかわいいとか、夜更けてこんなとこまでついてきちゃいけないよっていうのは、僕は優れていると思ったんだけど、あれはスリッパを売るために、どういう役に立つんですか(パチパチ)。
「あれま、いきなり直撃弾を落してきましたね」
野坂 床の汚れを足につけないためとか、逆に靴下の汚れを床につけないというスリッパの目的を認識した上でのコピーは、これまでに発表されてないと思うんです。
みんなのコピーを見ていると、ひたすら気持悪いんですよ。おれ、今晩、夜中に便所行かれないよ、スリッパがあとついてくるんじゃないかと思って(笑)。それだとスリッパを買う意欲が薄れるじゃないですか。
家元 ふむ、ふむ。
野坂 今日のコピーをみていると、スリッパをおとしめようとしているとしか思えなかったわけだ。ぼくはそういうのと一緒に並びたくないから、ぼくの珠玉の作品を引き戻したんだ(笑)。
家元 なるほど、野坂見習の意見をつづめて言い直すと、今日のコピー群に「売る」ための力があるのか、またスリッパの効能や機能を強くうったえるコピーがないではないか、ということなんでしょうね。
このことは、萬流のみならず、広告界そのもので、しょっちゅう問題にされておることです。私自身の考えでは、「機能」や「メリット」を上手に表現するのも「現代広告」および「萬流」のひとつの方法であるということになる。今はこれ以上答えることはしない。いずれ塾生たちが各自感得しなければいけないことだと思うからです。
ま、そういっちゃミもフタもないからヒントをあげましょ。単行本(第一巻)のP260〜P271をよっく読んでごらん。ためになることが書いてあるよ。
塾生 小林井師範が「女」のコピーのとき『とび出すエロ本には、君っ……君の力が必要なんだ』というのを作られましたが、あのときはどういうことを考えて作ったんですか。
小林井師範 前から「とび出すエロ本」があったらぼく自身が嬉しいと思っていたもんで。
塾生 お点の基準は?
家元 やっぱり爆発力ですね。会場でワッといくものは(竹)に近いものです。もうひとつ、陰に隠れた、私のプロ意識があって、やられたなと思ったときには(竹)をつけちゃいますね。これは説明しにくい部分なんだけど、まあ、こんなところで我慢しなさい。
塾生 家元は、ハガキを読むのに何時間かけるんですか。
家元 どんなに根をつめても最低八時間以上かかります。ごく最近、番頭さんに半分ぐらいにしぼってもらえるようになりました。同巧のものを別に|括《くく》ってもらっているからです。まことに目の疲れる仕事ではありますが、番頭が落した中から、さっきの『メチャいじくったパッスリじゃん』みたいな面白いコピーを拾い出すのがとても|愉《たの》しいんです。それだけが心の支えであります。
今週の宿題
大会当夜、わずか十分間でコピーを作らせたが、塾生の力量いまだ至らずたいした作品は生れなかった。そこで同じテーマを宿題にして改めてコピーをもとめる。
ランドセルである。最近はランドセルをしょわない小学生がいるという。できることなら中学生はいうにおよばずビジネスマンにいたるまで、皆にしょって欲しい。
では、家元は帰るぞ。
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坊っちゃん
・鳥井和昌『“坊っちゃん”を見ただけの人へ』
・柴田邦彦『「坊っちゃん」と呼ばれなかった坊っちゃんと、「坊っちゃん」になれなかった嬢ちゃんへ』
・五十嵐弘幸『たまには はみだす |先生《ひと》 がいい』
・吉浦幸子『彼との出会いは早い方がいい』
・安斎美樹『漱石は「坊っちゃん」を三千回読み返した!!』
・片岡伸行『昔のこと・夢・みますか・坊っちゃん』
・宮林光三『あ〜ラ「坊っちゃん」 お久しぶりネ』
・笠原孝文『日本文学のA定食 「坊っちゃん」』
・橋由彦『非行にはしる前に、ガリ勉にはしる前に、机の前でこの一冊』
・近藤久晴『知ってるけど、知らないの』
・白木理恵『僕は この本を読んで胸囲を3センチ厚くした』
・河村浩志『先生、読みましたか?』
・並木けんじろー『今年の縁起ものは 夏目漱石の「坊っちやん」です――御贈答にどうぞ』
・石橋秀義『ちょっと見ないうちに、ずい分大きくなって』
・高橋ひとみ『惚れちゃうよなぁ、こういう男に』
・中島和男『おれは林太郎ほど「坊っちゃん」ではない。金之助』
・田中洋文『アラレちゃんがライバルです!――坊っちゃん』
・金子秀重『口紅と漱石――ハンドバッグに「坊っちゃん」』
・大森輝男『君、何度目? 初めて読んだのは小学校五年生。二度目は高校生だった。そして今、赤シャツそっくりの上司がいる』
・浅沼みどり『前略、坊っちゃんを読むたび先生を思い出します……』
・吉岡愛弓『ごめんね……いや、良いんだよ。覚えていてくれたなら』
・藤井昌則『再読のススメ。斜めに読まずに縦に読んで下さい』
・山口雅之『今日おもいきって彼のうしろに立った、愛読書は「坊っちゃん」だった』
・湊滋雄『あの頃の事、なつかしいわね、フ・フ・フ……せんせッ』
・種谷信一『笑える古典 少ないよ』
・国広勝彦『いい小説はおトクです』
・井上一之『ありがとう「坊っちゃん」 お礼にもう一冊』
・脇田成『明治の教師は 教頭を殴った!』
・西田勝一『私は、「坊っちゃん」の本名を知らない』
・多和田肇『二冊あっても まだ足りぬ』
・金田幸司『漱石を助けて下さい』
・小野寺伸二『10冊読んだら いい夢 見えた』
・田村雄司『坊っちゃん、きよはね、そんな坊っちゃんが好きなんですヨ』
・加野典子『夢鉄砲坊っちゃん 22光景』
・丹羽圭子『見かけた時は なつかしかった。読んでみると あたらしかった』
・梓沢雅治『知名度ばかり先行しちゃって、僕も反省してます――坊っちゃん』
・国分浩『不倫が生んだ「坊っちゃん」』
・松浦英子『はじめての方でも、無理なくお肌になじみます』
・内島恵子『あらためて買いたいはずかしさカナ』
・田原久美子『一度読んだって? で、裏は読んだのかい』
・葦生子『三度読んだら「坊っちゃん」なじみ』
・森谷あゆみ『ボクが変ったのかナ? 彼が変ったのかナ?』
・三上徹『戸塚先生、あとはまかせてください』
東 京 大 学
・浅野弘『メザセ東大精子から』
・金丸隆『鼻にかけているのは、メガネだけです』
・吉永千陽子『好きな|娘《コ》のお母さんとも仲良くなれちゃう』
・永森衛『マンションも、車も、お手当も十分にやっとるつもりだ。その上、東大にいれてというのかっ』
・伊藤朗『「合格したよ」と電話をすれば、がんこ親父も正座する』
・山口善郎『いちょうのしおりをはさみます私の青春の1ページ』
・大関宏之『学外で、気軽に人に向って、四年間「バカ」と言えないことだけは、覚悟して下さい』
・高沢康則『やせたソクラテスになったら、ハラがへった』
・川村広『無視するか、無視されるか、それが……東大だ』
・水野明子『大学を聞かれたとたん歯茎が笑う』
・小川健宏『ノーベル賞の数で京大に負け、大きさでは日大にまけ、授業料の安さでは東京神学大学にまけている。そんなハンパ大学に愛の手を』
・高田寿子『なにも、恥かしがることはない。僕はガンバッタ! と、力の限り叫びたい』
・K・松尾『父は東大出身のおかまです』
・丘あざみ『東京に大学はたくさんありますが東京大学はウチだけです』
・名取裕男『ヤスはロンに「ユー、ハーバード?」ときいてしまった』
・内藤曠『祖父はあこがれた。父はあきらめた。孫はついに……三代の門』
・伊藤洋子『入った時から大きな安心』
・くぼひろし『赤門もあればバカモンもいます』
・高木秋男『ほんの出来心で、きてくれたらいい』
・谷尾進『都会で学ぼう。教養課程も23区内』
・山泉進『料金格安、設備良好、環境絶佳、日当最高』
・田原久美子『どうしちゃおうか、日本の将来』
・近江達『「ノーベル賞?」「もらえません。本学は、つねに、賞を差しあげる側ですから」』
・宮坂貢『私は、流れぬ流行だよ。ワッハハハ!』
・宇野佳秀『東大闘争から15年。元服です』
・清水朋子『あなたの税金、みんなの母校』
・梅内林太郎『人間の値打ちって紙と鉛筆で決まっちゃいます……だから東京大学』
・多田佳生『○か×か。△はどこいった!』
・高尾俊朗『さあ、サー、サァー、金か女か。どっちも、どっちも』
・竹本浩子『私、東大出身です。出るとこ、出ましょうか?』
・日原広一『もって生まれた頭蓋骨。反省してます|尾骨《びていこつ》』
・松田正人『息子を入れると気持がいいんです』
・中西真人『大好きです、私も18、やっと御返事もらえます?』
・大塚康純『どっからでも、かかってきなさい』
・栗本数一『ワ・タ・シ・モ・ハ・イ・リ・タ・イ……ピポ・ピポ・ピポ……』
・内島恵子『おいしいものを食べてます』
・山木泉『税金は納めるばかりが脳じゃない使ってみないか浴びる程!』
・田向りえ『ママは仲良し』
・平尾仁『安心しろ!! 屁もすりゃあ、ハナもたれる』
・伊藤映『全国にたったひとつで、ゴメン』
・山田美穂子『米俵一俵の重さ感じています』
・廣瀬高男『一家に一人、東京大学』
・武居宏治『|東《トー》チャンとでも呼んで貰おうか!』
・岸洋子『忘れちゃいやよ、ビンボー・ヒロイズム』
・本田堅人『もまれて、でかい』
ハイライト
・木田茂夫『和田誠さん。長持ちデザイン、ありがとう。(あのパッケージ・デザインは、今をときめく和田誠さん、だそうです)』
・保坂りよ子『私のブタさんは、毎日、30円も太ります』
・林敏幸『キムチの後のハイライト、他のたばこには絶対まねができません』
・今井義人『結局、頼れるのはマリファナよりもこれでした。さすがの一服、ちょうだいいたします』
・関直美『もらいたばこ防衛策』
・音田真子『焦げたフィルターの味では今でも第一位です』
・天野佳治『俺がその気になりゃ、ライターの1個や2個、尻振ってついてくらあ』
・井原和洋『さあ〜〜〜〜て、一服すっか』
・川原暢『わたし、ワイロの下限です』
・金子雅子『あなたと同期努力家ハイライトです』
・横田寿生『お願いです。一本一本頬擦りするのだけは、やめて下さい』
・宇野佳秀『ホームステイ中のサムが言いました。「ホトンド、洋モク!」』
・馬場民助『1本で男になれる』
・船田晶子『わたし、濃いひとが好き』
・河合透『タバコがお吸物なら煙は吹き出物と言えよう。やはり、ハイライトとは言え』
・竹内俊『口からハイライトの煙、下から屁、遠慮のない奴だ、旧友』
・糸田直樹『あなた、先に風呂になさいますそれともハイライト?』
・高橋仁志『「ハイライト」には、発音しない gh が、書いてありません。その分、お安くなっております』
・里居正裕『やっぱりお前でなきゃ、おれの震えが止まらない』
・清水とみ子『笑いたければ笑いなさい。おじさんは「生活」をしているんだ』
・鈴木和子『口紅をつけてもめだたない』
・佐治義陽『のめ全国の喫煙者!』
・中村恵一『カサブランカ発最終飛行機、ハイライトをくわえてボガードはみつめていた。男だな――』
・緒方典子『熱くなるまで吸って……』
・魚津高広『いけないわ、おじさま、ましてハイライトなんて。……ああ、いい……』
・片岡伸行『父にかくれて母がすってたハイライト。今私が』
・高木昌幸『タンポンには用いないで下さい。ヒモがありません』
・下村直子『わたしと、ハイライトは、深密なコーサイをしている。つまり、デキているのだ』
・佐藤利浩『パパはずーっとハイライト。で、家が建ちました。めでたし、めでたし』
・原田淳『――今、弱体ヤクルトを支えるのは、背番号8のカンピースや野菜児マイルドではない。ましてや3発KOの坊っちゃまキャスターでもない。八重樫の味』
・馬面慶司『僕んちはアパートの2階です。窓をあけて|煙草《こいつ》をすいます。それで今日が終ります』
・中牟田康『つめたくして、悪かったネ。僕は、今日から、ハイライト』
・大竹久美子『30円分の使いみちを考えるのは少し楽しいです』
・中尾弘『貴男、|おさしみ《ヽヽヽヽ》御上手ね。ひょっとして、煙草はハイライト?』
・新居信彦『このムラ焼けがたまない』
・中村佳代『財を成してもハイライト、これ管鮑の交わり』
・渡辺サチコ『マイルドセブンを吸っている人とハイライトを吸っている人の寿命は同じです!』
銭 湯
・前和之『ほっとあわー』
・小野寺伸二『よそ行きのオチンチンがほしかった』
・斎藤博之『大きい風呂に入って、大きい事、例えば、世界征服など考える』
・高雄啓子『2、3のケースについて「医者に診せる前に銭湯に行った処、解決しました」という報告が寄せられている』
・伊集院秀行『女湯のお湯は、翌日、男湯で使っています』
・高橋麻子『お銭で身売りしてしまう。いけないお風呂なのね。わたし』
・渡辺ミユキ『お前はそこに居なさい。父さんは深い方で泳いでくるから』
・中村満『タイルにキンタマひっつけてじいちゃんはのんびりとヒゲをそる』
・前田良輔『ビールの味の素』
・南賀文隆『コラー。そこの娘。おとこ風呂を|勝手《ヽヽ》にのぞくな!』
・桑原正光『コンクリート一枚のむこうに、ちぶさがたくさん並んでるんだ』
・神野昌代『外食の日は外風呂と決めています』
・小野正芳『ぼくは中3日のローテーション』
・秋田研太郎『人間の大小なんて、たかが、タオル一枚で隠れるものなんだよ。銭湯へ来て見給え』
・新地康人『今日、フロ屋で担任に会った。「勝った」もう何も言わせねえぞ』
・池田智子『女体しゃぶしゃぶ祭りっ!!』
・宇川拓水『間仕切りがスルスルーと上って、ハイ、ご対面』
・村上美佐緒『アイツの使った桶、そっと触れてみる。ああ、男の友情』
・阿部敏信『コーヒー牛乳のうまい店』
・細野嗣雄『映倫の人でしょ、黒いタオル使っているのは』
・島清子『ボディ、丸洗い。一回たったの240円』
・日比野誓治『僕は父とはいった。弟は母とはいった。……バカヤロ』
・神保裕子『ゆらゆらしたい』
・中村卓『湯気からちがうねえ、本物は』
・菊地真美『お一人様何曲でも』
・岩田光弘『鬼だなぁおまえ。銭湯イカネェのか』
・新戸雅章『ひとりじゃ落ちないアカもある』
・佐久間礼『出かけると思うとオックウですが、家族から逃れると考えれば、ね』
・泉信一郎『湯ざめが恐くて銭湯に行けるか!』
・高嶋美由紀『百、数えたら出るからね』
・清水朋子『どうしても女湯に入れない僕は、とっても内気な大学生です』
・小野寺多恵『裸のつき合いが、その場限りというのが、いいんだよねえ』
・杉田真弓『洗いたまえ 清めたまえ――お賽銭は番台へ――』
・中田喜久男『できるのは平泳ぎまでです』
・赤木威維子『ナンマイダ……わたしゃお迎えまで通いますヨ』
・田村和之『隠すべきか、見せるべきか、それが問題だ――ストリッパーの入浴』
・南伸坊『ひょっとすると、見れるかも知れませんから』
・川突邦裕『壱萬円札で御支払の場合 三分ほどお待たせしております。浴場店主』
・柏原弘幸『番台の若奥さんに、ぼくは、わざと、見せた』
・小林茂樹『ぼくの知り合いのケンちゃんは、なぜか番台で「ぼ、ぼく初めてなんです」と、ふるえる手で五千円札を出してしまいました』
・榎吉平之助『ゆう子「脱いで良かった……」。番台のおやじ「もっと自分を大切にしろよ」。』
・岡田寿彦『いいか、あの風呂屋の煙突のような人間になるんだぞ』
デートにこぎつける
・小林隆『僕のほんとうの姿は、30分たたないとわかりません』
・宮林光三『ボク 探偵気どりで尾行しちゃいたいナ』
・九萬八『手相、人相、四柱推命、星占い。あらゆるデータから貴方の運命を知ってしまいました……。興味ありませんか?』
・丸尾秀直『お勤め前の玄関でお待ちしています。駅までご一緒させて下さい』
・万城目充『みんな幸せそうに嫁いでいった。やっぱり僕って安全人間』
・大室俊三『女のコの社内情報ってバカにできないのヨ……知りたい?』
・加治真『ゆうべ、君とデートするようにと月に言われました。帰ったら、今晩星に聞いてみて下さい』
・高橋栄『お母様にも喜んでいただいております』
・高澤雅昌『貴女の恥しい部分を拾いました。ぜひ引取りに来てください』
・柿沼徳治『夢の中で、大変失礼なことをしてしまいました。お会いして是非お詫びしたいのですが』
・植田さとる『君って、デートなんかキライッてタイプね』
・家村浩明『安全パイです。振ってもアタリません……』
・中川裕史『昔は、お医者さんごっこだってしたじゃないか。ねえ、ミヨちゃん』
・川上魏『おれ、ガマンの毒で死にそうなんだ』
・芦田法幸『地球が揺れます。ほんの9秒支えてください』
・川原暢『ヨットとヴィラもスポーツカーも豪邸も僕にはまだ買える可能性があります』
・真田稜子『あなた色に一〇〇パーセント』
・永山太一『堂々と公園のベンチに座りたい』
・高木楠生『ミイラになっても待ってます』
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・豊田ひとみ『なんにもしません。なんでもします』
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・大鳥一『わたくし動物園の飼育係ですが、おりいってお話しがあるんですが』
・須藤朋子『タコヤキいっしょにたべようね』
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・村松広大『僕の横にあなたの太い影がないと寂しくて』
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・福田郁生『ぼくも、えーと、大きいんですよ』
・関口はる奈『毎度おなじみの私どす。チリ紙と交換に、デートです』
・竹中邦治『おらあ青山なんか詳しいべ』
・川鍋辰雄『きみの魅力はハイといえる素直さだっていうじゃない』
・小林牧朗『僕のお腹の子の母親は君なんだ』
・石川正尚『歩き疲れたらオンブしてあげますヨ!』
・小倉千代子『もしもし、アタシ、お風呂入って髪も洗ったのよォ』
・山本尚『なんだったらボクがハイヒールはいてもいいんですけど』
・折竹孫七『君に会える日まで、ボクは鼻をかまない』
・諸岡達一『茶飲み友達の予約しておきませんか』
・高井孝平『学校で手をあわせておがむぞ、このやろう』
・高津一郎『耐えてみないか、|明日《あした》のために』
一夜を共にする口説き文句
・毛呂一『ボクのは、ビタミンE入りなんです』
・川上宗薫『……な……』
・北村薫『今宵、宗薫ぶってみないか』
・西尾美貴子『今……おまえにすいみん薬を飲ませたい気分ダヨ』
・岡部裕子『低血圧だから、夜がイイわ』
・羽田理恵子『朝刊が来たら、新聞屋のおにいさんと帰ります』
・内山健郎『おねがいします。いっしょうけんめい、がんばります』
・三好祐一『こう見えても、ぼくは精神年齢ひくい方ですし、ヘンな心配はしないでください』
・岩田隆幸『今夜は両親を二人っきりにしてあげよう』
・北嶋一彦『お父さんには、私のほうから、ようくあやまっておくから』
・藤本春美『集合時間は守れよ。いいか、今晩11時だゾ! 余裕をもって家を出ることっ』
・佐野泰雄『寝て下さい。でないと女房に笑われます』
・常見邦雄『パンダさんだって……するらしい』
・渡辺明子『だからおねえさんにまかせなさい』
・玉井由紀子『君は逆さから見ても美しい顔だろーね、きっと……』
・佐々木良一『後悔なら、後からすればいいじゃないか』
・伊藤秋彦『僕は人間じゃない。マシンだ』
・葎迫照夫『「世界平和」なんて叫ぶより、先ず二人の出来る事から始めようよ』
・今出公志『言うことを、聞かないのは、女房一人で、たくさんだ』
・大江克明『ボク。マインドはさぁーふぁーだけど、|身体《からだ》は公務員です』
・野村小百合『夕ぐれ族なんて今どき古い……。あけぼの族になろうじゃないか!』
・鎌田真『男と女の間には、やっていい事と、やらなくてはならない事があります』
・山下茂『君を浩宮様の花嫁にはさせない!!』
・松田達也『ぼっ、僕の目をみてくれ、何がしたいか君にもわかるだろ』
・中島美登利『とにかくツバつけちゃおっと、ぺとっ』
・田村肇『今日のデートの反省会をしようよ』
・小林令子『ゴミなら出してあげるからサー』
・古賀敏夫『朝になれは、僕の誠実さがわかります』
・臼杵貴俊『大丈夫、心配いらんよ、わしは毎日ピルを飲んどるんだヨ』
・雨宮秀樹『すいませーん、ちょっとオ○○コ貸して下さい』
・神崎俊『ゴールは見えてきたぜ! いっしょにブッチギロウぜ!』
・島聡『すぐ済みますから』
・蕪木敬一『勇気とは、今夜みたいな時に出すものだよ、君』
・清水洋子『サザエさんも、やってるんだゾ』
・星進『母さんが言ってた。「父さんは腕ずくで私を奪った」って』
・菅原健一『ほーれ、開いてごらん』
・盛万里子『結構、人間はさァ、コレ好きだったりするんだよ、アレよりは……』
・塙千恵子『何が足りないといったって、Cが足りないのよネ! 私』
・増岡幸一『お願いします。絶対パンツ脱ぎませんから……はいてないんです』
・屋山弘『ぼくは|JIS《ジス》マークの審査員なんだ。今夜、キミの調べてあげるから……』
・鈴木康則『ぼく、夜光人間なんだ、きれいだぜ』
・高木泰宏『ぼくが君だったら、今日は絶対帰らないと思う』
・根本正枝『あ! 今日第二土曜日じゃんか。電車休みだよ――。君、帰れる?』
国 鉄
・津寺利嗣雄『どこか遠くへ行きたい――国鉄総裁』
・山本宰『走る火の玉 国鉄だあ』
・安達孝『私達はまじめにやっています――国鉄垂水駅』
・永澤吉晃『君の街は遠いけど ぼくはおやすみキスをしたい』
・幸村佳則『ぷらっと ホーム』
・宇陀亜輝『民営に嫁いでも、どうせ苦労するんだし……。このまま気楽に走ってますワァ』
・土谷圭三『信頼されてます。国鉄の遅延証明!』
・安藤吉孝『誰もいない始発電車で 僕たちは愛しあった』
・永山太一『かけ落ち運んで百余年』
・田島千代『揺れるトイレに、テクニックはいりません』
・桜井国宏『「なーんちゃっておじさん」あれも国鉄が創った文化なのです』
・楊俊泰『「お父さん、金田って国鉄でなにやってたの?」「ベンチに座ってた」』
・中里光男『田園調布を走りたい』
・上山精司『私は、国鉄があったから東京に出てこられた。いまが、幸せかどうかはともかく』
・田村肇『「もうこうなれば糸井君にコピーをたのむしかないね」と語った国鉄総裁は、根本的に間題をはきちがえていた――国鉄労組』
・栗原裕『赤字は一番、モラルは二番、三時にお風呂のいい職場』
・吉田保史『知ってる地名。知らない味わい』
・くぼひろし『いざとなったら「ダイヤ」も売りに出す覚悟です』
・高橋滋『日本の動脈炎』
・斎田春海『もうすぐ駅員はすべてロボット化されます。安心してご利用ください』
・松元一師『予感。あの娘と……。高校生の社交場』
・岡田弘毅『いま抽選で駅が当ります』
・島光勝美『「もうひと駅いかが?」「すまないねえ」「ううん、いいの……」』
・林千代一『私も国鉄を推せんします――スチーブンソン』
・島田昌夫『球界にもどりたい』
・高橋栄『おもいつめたら、夜行でおいで』
・永山太一『原価割ってのご奉仕』
・山本展也『あなたのことをゆっくり忘れるために。帰りは汽車にします』
・岡本元嗣『K〈OKUと呼んで下さい』
・藤井裕子『息子はキセルを、おじいちゃんはタバコを止めると言っとります』
・伊藤修一『国鉄は駅弁を生み、駅弁は大学を生んだ』
・高雄啓子『「飛べば赦して貰えるのでしょうか」在来線はそう言い残して滑走路に向った』
・斎藤素子『高崎線の過激なビートに慣れた身体には、小田急のノリなどものたりない』
・前島昭臣『通勤ラッシュがなければ 僕は生れなかった』
・雨宮秀樹『飛び込むなら、やっぱり、国鉄』
・水野明子『私の夫は国鉄職員ですけど……いい人ですよ』
・苅田慎一『もう一度、新橋からやりなおします』
・川口和宏『お父さん、毎日楽しそうね!! ――ちかん追放キャンペーン』
・平沼晴美『乗せるからには尽します』
・後藤晃『あら、おかしな人ねェ、のってもいいのよ』
・鈴木康敬『お召列車の技術とサービスが、あなたをお待ち申し上げております』
・持永昌也『終電を門限に』
・内藤勝之『国鉄沿線に家を買ったのが、父の自慢だ』
アナログ・デジタル時計
〈デジタル〉
・長塚郁子『家庭の柱時計になるまで、精進、精進』
・中川正『見て のとおりです』
・大副洵『算数の時間から、時計の読み方が消えた』
・石川順一『イヤ……駄目そんなとこいじっちゃ……ア…アラームが鳴っちゃうじゃない』
・熊木洋子『「なんじ(何時)の気持は変りませんね」「はい、60分間変らないことを誓います」』
・高橋伸夫『彼女 来る 来ない 二進法』
・舟木啓介『お父さんは、成績を上げなさいとやさしく言って、計算機付き時計を試験日の朝くれた』
・室井溶子『高島平ではねじ式のデジタル時計を売っております』
・野間純利『「オーイ、今何時」「530!」』
・山根恵理『私って単純だから、今だけで精一杯なの。許してね』
・外山秀樹『オーイ!! デジタルの砂時計があるぞ』
・多田登己男『田舎ではデジタルの事を神様って呼んでます』
・小栗善一『読むのに時間かかるな、アッ反対だ』
・仲井間宗孝『当社のワリバシはデジタル時計がついてます』
・新名寛『伝書鳩みてえに 番号つけて歩いているよ』
・米村剛『老眼鏡を使うようになった。そして、こいつに変えた』
・松田晃『きっと小人さんがカンバンを変えてるのヨ、ヨッちやん』
・高山勝寛『ママー、とけいさんは59までしかしらないんだね!』
・宮田延晴『おじいちゃん、ほら、おしんの時にでるでしょ』
〈アナログ〉
・多田佳生『止まっていても 時計の風格』
・吉柴康雄『「アナログは輪廻だ」と坊主はいった』
・長嶺良春『よい子は針を捨てません』
・山崎久美子『お父さんは、休日になると時計を針のあるのに変えます』
・成田力『ユリ・ゲラーがデジタルを止めたという話を聞かない』
・赤井橋和広『未来、あります。過去、あります』
・中尾美登利『長針が短針に重なる度に、見てはいけないものを見てしまったような気持になるワタシです』
・久保敬『特殊な教養がないと使えません』
・坂井千代『この角度がないと10時10分とはいえません』
・坂田元玄『形で読む』
・坂章一『お時間ですよの時 アナログは3秒位得みたい』
・伊賀洋昭『「女の子はセツナ的ではいけない」ってお父さんが買ってくれたの』
・大野登美子『ベッドで デジタルは ならさないで』
・三上名保子『近頃、ちょっと売りだしているデジタルって奴あ、俺の弟だ。よろしくな』
・杉浦範茂『デジタルには、体位がない』
・木村江里『そのとき強い衝撃のため あなたの殺害された時刻でぴたりと針がとまります』
・鈴木雅章『ウッ………………。プハーッ、ハー、ハー。やったぜ、2分半』
・若林頼房『僕、実は短針のヒモなんです――長針談』
・岩城泰『短針「あなたってせっかちね」長針「秒針がせかすんだ」』
・野間純利『どうもいやなんだデジタルって、タクシーのメーターみたいでサ』
天気予報の視聴率アップ
・横田通男『何の説明もなく、気象庁のおじさんが「明日は晴れ(くもり、あめ)!」と力強く言う』
・新内秀一『「恋愛天気予報」として、結婚希望者、恋人募集者の顔写真を画面にうつす』
・細野嗣雄『PL学園の生徒が太陽とか雲を人文字で描く』
・原田裕介『エイズ患者をアナウンサーにする。台風の上陸などよりも、患者が日一日と変貌していく様子が話題をよぶ』
・伏見学『赤貧天気予報――制作費が少ないのを逆手にとり、みじめなまでに貧乏に徹し、視聴者の同情を買って見てもらう』
・本間安利『予報のあとに決って「文句あっか!?」と視聴者を脅す“文句あっかおじさん”を登場させる。はずれたときは、色っぽく「ねえ、ゆ・る・し・て」とあやまる“ゆるしておねえさん”が登場。特に深夜には「このアタシのからだで……」という女性が登場する。男性視聴者は予報がはずれることを願うようになる』
・小野正二郎『天気の話はしない』
・兵頭大造『出だしの第一声がちがっていたり、メガネの型を変えたりして「まちがい捜し」をさせる』
・松本音博『有力政治家に「国民は法律の定めるところにより、天気予報を見る義務を負う法案」を提出させる』
・八木叡『天ノ岩戸を前にしたコントを毎回やり、予報が晴れの時は、天照大神が顔を出す(絶世の美女に限る)。もちろんアメノウズメノミコトのセミヌードは毎回登場』
・三浦和子『ヤン坊(中曾根康弘)とマー坊(石橋政嗣)の天気予報。二人が相反する予報を戦わせる(本人が無理なら人形を使う)』
・鶴岡精二『超ビキニまたは超ミニのギャル、若しくは樹木希林が「天気予報は当っている。天気の方が間違うこともある」という』
・市毛悦子『気象庁を“ちきしょう庁”に改名し、「おじさんは怒ってるんダゾー」とひと言添えてみる』
・市川明彦『新聞の番組欄に「脚本・橋田壽賀子」と記載してもらう』
・不破秀介『ホームドラマの幸せそうな家族団欒場面で、きまって天気予報番組が流れているようにする。きっといつの日か、天気予報観賞が幸せな家族の象徴にまで高められる』
・加藤恵一『用語を改める。風(フクノ)、台風(イエナガス)雪(ブッチギリ)、雨(ヌレ)、くもり(ハンパ)、晴(スッキリ)など。例えば「今日は朝からスッキリなので、まだヌレはありません。明日はハンパのあと、ブッチギリかもしれません」』
・山田美枝子『山田洋次監督に「予報官物語」という涙・涙の映画を作らせる。その主演俳優に天気予報をいわせる』
・今井智子『天気予報のキャスターを決めない。放送局内を歩いているタレントさんを急につかまえてお天気原稿を読み上げてもらう“タレントによる突然天気予報”』
・長谷川普美子『とても不幸な人を捜してきて、身の上話をさせながら天気予報をする。主婦の大好きな“他人の不幸”を売り物にする。「……で、父が行方不明になった翌年母が倒れ……神奈川は雨だっていうじゃないですか。しかも東京はくもりで……うっうっ……」と』
・沢田寛『5人の審判委員によって予報に物言いがつけられるようにする』
・下馬場浩『おしんを予報官にむかえて、みんなでいじめる』
・成子浩『ビートたけしと加賀美幸子(NHKアナ)を登場させる。たけしに言いたい放題の天気予報を言わせ、加賀美は「はい」とだけ答えるが、たけしが言い終ったら最後に「でも、はずれるかもしれませんね」と言い、ジ・エンド』
このポスターに広告主名と一キャッチを
・谷井誠『出前しまっせ〈中華料理・来々軒〉』
・阪井一雄『|あの日《ヽヽヽ》大丈夫ですか〈生理用品会社〉』
・石井由二『庭の鈴虫のやろう「倫理、倫理」と鳴きやがった〈文部省唱歌愛好会〉』
・桑原勝『旅行みたいなもんだから、サムソナイトを連れてゆく〈サムソナイト鞄〉』
・馬場利明『撃ちてし止まむ!!〈日本共産党〉』
・正田進『どうぞ御自由にお踏み下さいまし〈日本社会党〉』
・豊田ひとみ『騒ぎになる前に、こっそり返しておけばよかった……とは思いませんか?〈日本サラ金振興会〉』
・大平洋子『とにかく元気であればいい、おかあさんの願いです〈おかあさんの会〉』
・西田克憲『君は、サックス吹けますか? 〈坂田明トリオ〉』
・佐々木良一『この顔を、はがしてみるかね? 明智君〈怪人二十面相〉』
・増田耕一『トシちゃんから角さんまで〈ブロマイドのマルベル堂〉』
・小笠誠司『淋しい胸の内、うちあけたい人に〈子供電話相談室〉』
・山川純『金はいくらでも出す。誰かわしの大事な三毛子ちゃんを探してくれたまえ〈今度町内に越してきた者だが……〉』
・松下康夫『おじさんも横ズレがきらいだ〈日本生理用品普及会〉』
・森哲也『手はじめはこの人あたりで〈Y似顔絵塾長〉』
・竹柴清二『ろっきいどお、北海道〈全日空〉』
・西本一人『|気合《ヽヽ》じゃ〈日本リクルートセンター〉』
・水野明子『いかん、いかん、若いもんは、そんな助平なこと、やっちゃいかんよ〈全国青少年不純性行為防止委員会〉』
・藤原保夫『確かさよりも自信〈日本プロ野球審判団〉』
・堀田能成『カタコリがひどくなると、このように首がめり込みます〈全国あんまの会〉』
・高橋洋『この一着、この着こなし〈丸谷才一著「好きな背広」好評発売中〉』
・角野功『この人も、背中に二枚〈サロンパス〉』
・水野政彦『タロ、ジロ、そしてクロ!〈「南極物語」東宝〉』
・岡田寿彦『今度はムショ族で立候補します〈田中角栄〉』
・阿部秀一『憎まれるほど、強くなれ!〈代々木ゼミナール〉』
・北川裕行『届け物は、すみましたか?〈三越〉』
・魚返宏一『人知れず苦しんでいるあなたと話したい〈ひさや大黒堂〉』
・稲垣高志『覚えてますか? きっかけは文藝春秋です〈株式会社文藝春秋〉』
・加茂和巳『そりゃあ、黒いところもあるさ〈パンダ愛好会〉』
・石川さち子『ヒニンをしよう〈不二ラテックス〉』
・島田好美『おしょくじけんはこちら〈三越大食堂〉』
・吉柴康雄『もっと嫌って。もっと、もっと……〈SMマガジン〉』
・秋田佳紀『日本の首相は田中角栄ではありません〈中曾根康弘〉』
・入谷美千子『嘘も方言〈新潟県教育委員会〉』
・川上宗薫『国民みんなの自画像、どや〈一億総評論家時代を憂うるの会〉』
・臼井裕『こんにちは。新しい田中です。田中良也です〈日本姓名判断家協会〉』
・根津芳樹『私にゃ、よくわからん〈パルコ〉』
・塚田好久『こまかいお金でお願いします〈赤い羽根共同募金〉』
・浜田勇一郎『この先行き止り〈公安委員会〉』
懐 中 電 灯
・鈴木真紀子『おまわりさんが言った。「懐中電灯を拝見します」』
・成田力『「おっ、停電だ。母さん懐中電灯は?」「真理子の部屋でしょ」』
・小林敏明『ボクが神童と呼ばれたころ、よくコレでウルトラマンに変身したもんだっタ』
・河野洋平『汁粉を父に、時計を母に』
・東郁之介『こんなに進化しない商品も珍しい』
・五十嵐徹『ムッシュ・カルダン、まだ懐中電灯が残ってました』
・杉山真奈美『その一、歯医者さんごっこ』
・豊島毅『暗がりで、群馬県人と栃木県人の区別がつきますか?』
・工藤豊『懐中電灯始めました』
・鉾久紳一『お子様の情操教育に……松下電器の懐中電灯“影絵くん”』
・渡辺央『かかしが手にした懐中電灯に驚いたすずめは思わず「私は民間機だ!」と叫んだ』
・平野妙子『「おに〜さん、マッチ1本千円、どお?」そこでぼくはひそかに例のモノをとりだした』
・浅野美樹『貧乏人のストーブ』
・ゆくみえいし『フトンの中で見たわ、あなたの写真』
・楊俊泰『昔はこれ一つありゃ、町内中の人が本を読めたんだ』
・吉田耕太郎『非常時用だけを買おうなんて、あなた、料簡が狭い』
・新内秀一『僕の恋人は、のどチンコの影までかわゆい』
・飯塚淳『「すみません、回虫弁当下さい」「はい、懐中電灯ですね」』
・三枝宏子『嫁ぐ日に、そっと母が持たしてくれました』
・長尾敬介『もっとよく使ってくだ災難』
・太田順子『一点効果主義』
・連城紀三郎『俺はいらん。人間が出来とるから』
・斎藤素子『あたし、ここよ』
・広田留美子『新発売! 軽くもむだけで光は12時間。使い捨て懐中電灯』
・犀川浩美『あー、それワタシの懐中電灯よ。いいじゃないか、停電の時くらい』
・嵐田啓明『「モモ太郎さん、モモ太郎さん、お腰に付けたものはなんデスカ」「これはおばあさんの作った懐中電灯ですヨ」』
・中山清学『背中から照らすなんてきたネェぜ』
・佐々木良一『光で撫でても、痴漢にならない』
・中島透『腹の底まで明るくしてやる』
・徳田昌志『ひ、ひかりもん、にぎっちくれ』
・佐藤ひろみ『父様のおかずを皆で照らしてあげませう』
・三浦和子『滅多に使わないものを持っているのは、ゼイタクな気分だ』
・村瀬南保美『この女房、こいつが見つけてくれました』
・藤田健二『ね、あなた、覗くだけにして』
・内山喬雄『ライターをやめて、懐中電灯にしよう。「あなたもタバコがやめられる」』
・江森盛夫『ダレダ!! この一瞬を照らすため、警官になったボク』
・永田東洋坊『今、要らないようでも、お孫さんの代までには必ずお役に立つ日がありますぞ』
・中野ひろこ『懐中電灯を捜すための懐中電灯をもう一つご用意下さい』
・宮本学『御用だ御用だ御用だ』
・山崎富衛『週番司令殿懐中電灯が何かと不気味なのであります』
・関根晃『ラジオ付きはもう古い、今は、カンパンでできた懐中電灯』
・山根恵理『七曲り署のゴリさんは、いつも懐中電灯から乾電池をぬいて持ち歩く、やさしい刑事さんだ』
公衆便所にステッカーを貼る
・武井充『こらこら、トイレで暴れちゃいかん』
・植野寿幸『きれいな盛りつけが好きだ』
・飾磨正也『おどりながらしないこと』
・辰巳史子『ようこそ。ぼく、便器です』
・野口秀木『ボクの汗と涙で流します』
・佐藤一夫『おい。しまいにゃ、金とるぞ!!』
・講堂竜太『おしりはアナタの第2の顔 便器はアナタの第3の顔』
・大橋且明『ここは便器さんの食堂です』
・王井恭史『ここは秘密諜報部の入口である』
・青木幹司『ヘッドアップは次打者に迷惑です』
・杉浦範茂『高級な食事をしたからと言って高級なものが出る訳ではない。見せびらかすのは、お止しなさい』
・発田真人『うんこがじょうずに便器に入っていい気持ち ブイッ』
・松村繁樹『うんこは自分のパンツの中に!』
・松本芙蓉子『君がする。僕がする。糞留まる』
・佐藤政義『構えの歪みが、はずれの理由』
・岩尾るい子『幽霊がでますが何もしません』
・高橋滋『お元気なのは、わかりました。も少し尿線を細くして下さい』
・橋本光司『君の次は僕、僕の次は彼、彼の次はあなた』
・市川千晶『そーっとあたしのおくちにいれてえ』
・青原昭彦『汚ないトイレが好きな人は、便所バエと呼ばれます』
・柳田暁男『ノックするのはアッ! あの人だ……』
・西山六郎『命中し善いことしたと|一人《ひとり》もの』
・小松真知子『ボク、ここで着替えるんです。――スーパーマン――』
・鈴木忠之『唇を奪いたくなりそうな白い歯 頬ずりしたくなりそうな白い便器 そんな所が好きです』
・江連隆太郎『ニョロニョロ、ポトポト、サッサーのサァッサ。あー、人間だ』
・城田瑞枝『水? 出ないんだよ。悪いネ』
・中町泰子『わりと、どーでもいい性格みたいね、あなた』
・平本芳久『ハイ! チーズ』
・中田江利『しんけんにウンコのことだけ考えていれば、よけいなモノをかくひまは、ないはずだ』
・小針洋三『「これは、私が汚したのではない」と言い張っても、ひとは、今出て来たあなたを疑うものです』
・壱岐八郎『トイレ、とちる年かいな』
・浅沼聖一『洗浄液に濃硫酸を使っているのでハネると危険です』
・連城紀三郎『東京スポーツは流れません』
・遠藤征矢『ささ、どーぞもっと奥へ、遠いところ大へんだったでしょ。あらあら、そんなに汗かいて、ま、ゆっくりしてって下さいね。あ、これ粗紙ですが』
・大浦章郎『不要になったビニ本は右側に、バラ本は左側に整理しておいて下さい』
・宮田延晴『うんこから血液型がわかるようになりました。警察庁』
・今出公志『この便器は、一回の御使用に付五百円玉一ケ流れてきます。すばやくお取りください』
・中沢靖『男か女かハッキリ決めてから入って下さい』
・堀井隆『男便所のぞけます!』
・中山信明『病気の事もあるのでなるべくコンドームを使って下さい』
・若林肇『となりにも声かけ合ってきれいなトイレ』
・林ゆう子『汚すと、床がはずれます。 汚しましたね』
バ ナ ナ
・大沢郁子『僕に内緒で腐ったりして……』
・生熊裕美『月の落し子』
・西村俊郎『(お気付きですか?)バナナのカーブがちょっと変わりました』
・宮毅『一家に一房、仏壇の賑い』
・佐藤こうせい『生活に潤い。生けバナナ』
・門田陽『未だファンタに犯されていない権威ある果物、バナナ』
・濱田雅代『映画館でもまわりの人に気づかれません』
・加納大助『存在そのものが、トロピカルです』
・勝間巴絵『これからわたくしたちバナナは軍国主義にはしります』
・塩入康司『オヤジ達は子供にバナナを食べさせたくてエコノミックアニマルになったんだ』
・常見邦男『上品に今年の冬はおコタでバナナ』
・米木豊実『バナナを一回でむいたら技あり、ひとくちで食べたら曲者です』
・田村肇『私は知っている。鯉が年を取ると天に昇って竜になるように、バナナは年を取るとタクアンになってたれ下がるのです。私はそれを最近、風呂屋で発見した』
・加藤秀広『やっぱりバナナは左から三本目が一番うまい』
・藤士郎『両ハシカラオイシイノハバナナ、ナノダナ』
・宮田智昭『では、こうしましょう。これを、おいしく食べないで、おならは、ちゃんとする者が、犯人です』
・鈴木安成『ひとり夜更けにバナナを食えば何やら孤高のマントヒヒ』
・山崎富衛『セザンヌ、ルノワール、マチスも大好きだった』
・石崎雅紀『口の中ではんねり状にしてニーッと笑うと心地良い』
・伊藤昌介『バナナの実を程残して、土の中に埋めてみる。芽が出るかなあ!』
・相沢悟『食通のアダムさんはイブさんに見附からないようにバナナを隠すようになりました』
・沼田裕紀『パイやジュースにするとナウいと言い、そのままたべるとださいと言う。そんなバナナが私は好きだ』
・板倉健二『バナナとカレーライスのありがたさを知らないやつとは、酒飲みたくネーナ』
・田川和代『ボクとコンニャクのどこが悪い!』
・小笠誠司『輪切りにした断面に年輪を見るのは、ボクだけでしょうか』
・足立裕伸『兄貴をよろしく〈里芋〉』
・中田克平『フルーツ界広しと言えども、大道芸からポルノまでこなすのは私ぐらいのものです』
・末光一恵『のどごしの異物感』
・国原隆子『餅ほどのどにつかえない』
・村上裕子『“昔、うちはお金があり余っててごはんにまぜて食べた”とおじんは言った』
・石塚圭一『ガンつけながらバナナを食べてたヤクザを見た』
・関野正顕『少年サラダ』
・藤井智之『ワインのグラスの中に、きしめんのふりをしたバナナがいた』
・山野克人『おいしいバナナ、大好き、なら、きっと、うまいバナナさ。(西武のバナナ)「10本まとめて買ってやらぁ」と、豪快にお申しつけください。(安いバナナ)』
・沢田菜津子『生バナナ始めました』
・筑場敬子『さあ買った! 今日は観光ビザで着いたばかりのピチピチバナナが安いよ!』
・小原秀雄『バナナってファーストフードだったんだね』
・宮本靖『祖母はかたくなに|バラナ《ヽヽヽ》と発音する』
・星野朝昭『マイルドバナナエレクト新発売』
・魚津高広『私はひとふさのバナナで5日生きのびた。貧乏は敵だ』
・川崎敬子『一度逆からむいてみませんか』
東京タワー
・根津芳樹『和紙を貼ったら、アラ、|行燈《あんどん》だ』
・星野美智子『三歩上がって、二歩下がったら、頂上まで登るのにまる一日かかった』
・石橋昭彦『四面東京』
・綱田敬『私、テレビ東京の社員ですけど、あれ、東京タワーだったんですか。私はまた、てっきり社長の銅像だと思って……』
・不破秀介『コリャ、ユリ・ゲラー、これ曲げてみい』
・立川修『実は最大勃起時は1000メートルなんです』
・山藤章二『コ、コラッ、股下は計るなっ!!』
・利田浩一『見下ろせば、地主感覚』
・山田丹生『「ジャイアント馬場には持ち上げられない。自分が地面にめり込むだけだ」新日プロ入り記者会見でスーパーマンが放言!』
・西田克憲『建てる所を見逃がしたので、倒れる際はゼヒに』
・藏園邦明『東京タワーを目標に来た、飛んでる弟は、新宿で大きな石にころんでしまった』
・星進『七人の刑事より「ラーラー・ララララララララララー・ラーラー・ララララララララララー・シュビドゥビドゥ・ララララララララララー・ラーラ・ラーラ・ラーラ!」終り』
・都村麻子『地味ですが、私の肩書は世界タワー連合日本支部長です』
・津和野智聡『フロ屋がじゃまで見えない!!』
・田中健『「あんなもの、ツマラン」――小山タワーの証言――』
・伊吹和民『白状します。実は、根が生えてしまったのです。きっと芽を出し、花を咲かせます、許して下さい』
・中田稔『六本木ならよくて東京タワーならいけないのか。そういう考えには賛成できない』
・岡野和生『天皇さんに|会《お》うたら次は、東京タワーじゃのっ!』
・竹中邦夫『今、4時半だよ、影が八百屋に来ている』
・岡本元嗣『村長が「村のお土産に」と買って来た東京タワーの苗を、火の見|櫓《やぐら》の下に植えた』
・河野良武『頂上付近では、夢半ばに倒れた登塔者達の白骨ピースマークが涙をさそう』
・吉田泰清『あと三本も建ててみい、全東京に|蚊帳《かや》が吊れるで』
・芦田健一『「東京タワーヘ行こう」と朋子に言った。東京へ出て来て初めての女だった。19歳の、秋』
・吉浦徹『復活ゴジラは「久しぶりだな」とタバコに火をつけた』
・吉野太郎『僕は昨日担当の先生に「トルコに行きたいよぉ」って言ったら、先生は「君は童貞だからまず東京タワーからだね」っておっしゃいました』
・岩田隆幸『クギだって土がよければ大きく育つ』
・入江賢児『通天閣よりガラがいい』
・植田覚『私、東京に住んで30年になりますが、此の度「糸萬ピ」様のおかげにて、初めて東京タワーにのぼることが出来ました』
・鈴木桂子『東京タワーを東京塔と言わないのは、東京都と区別しにくいからではないと思う』
・四竈俊『あれだけ高いと落ちるまでに後悔するかもなあ……』
・小林幸子『東京タワーの歴史をみれば、人気というものが、いかにあてにならないものかが、君にだって理解できるだろう、近藤君』
・竹田典子『このボーナスで展望台へ登ろうよと坂本さんをさそったら「夢がなくなってしまうから」と淋し気な目で彼女は背中を向けた』
・南賀文隆『「あっ! 四角いくもの巣がみえる」と三歳になる娘が叫んだのは、自家用ヘリコプターでタワーの真上にさしかかったときである』
女
・吉柴康雄『その話は困る』
・今福和幸『胸、腰。足首』
・赤松正樹『おす鮭はゲンノウでぶち殺されてカンヅメ屋へ。めす鮭は真錦で包んで|孵化《ふか》場へ』
・土田隆『ベッピンでもブスでも、ムスメでもババアでも、女はみんな可愛ゆい』
・伊藤和彦『私、「伊藤小百合(17)高校生」と、改名します』
・田中真由美『女か……』
・林恭子『長女だが、寺はつぎたくない』
・裏光代『無事故無遅刻無欠勤、勤続六十五年。仍って茲に之を表彰する』
・近本徳子『男の毒』
・榎波須未子『中学の時の家庭科の先生は二言めには「女の腹は借り物」とおしえた』
・佐藤佳江『おバンです。よろしく』
・竹本健三『いつでも女体を見れる、さわれる』
・松熊昭生『殿方のひとしずくで赤子を作ってさしあげます』
・古田光太朗『いま、この横で目を光らせてます』
・米谷康弘『いつも陽気な姉キが、バス停で泣いていた』
・由井宏樹『うん、ちょっといろいろ忙しいのよね……』
・湯川芳枝『恥をしるほど損をする』
・潮田章二郎『あこがれ』
・松本麻由美『|出産所《しゆつさんどころ》』
・水島彩『ブスですがオカマじゃありません。オンナです』
・鍛治宏『学問の敵だ』
・福冨陽子『赤子もわめくおんにゃ〜おんにゃ〜』
・垣東徹二『女は喪主を志向する』
・谷口洋子『男のクスリ』
・鈴木和人『ナメと書いて女と読む。女はナメるものだったのである』
・徳武剛『堂々と女装が出来て、羨ましい』
・篠原正史『“クリープをいれないコーヒーなんて……(田伸介)女性のいない世の中よ(下重暁子)”というコマーシャルが忘れられない』
・鈴木光祥『松に女』
・柳田千秋『ブルマーをはいた少女は懐しいが、ブルマーをはいた女はいただけない』
・中村直『|嗚呼《ああ》! スカートの似合う奴』
・谷尾進『当ホモクラブには上・中・並・女がございます』
・高木一男『狼さん、気をつけて』
・長谷勝『おんなぬぎなさい』
・松元直義『おばあちゃんが、ふけたのは、おじいちゃん死んでから』
・福島則之『オッパイ飲んでアンネしな』
・水間佐智子『「30までにいい女になりたい――」私、大嫌いな言葉です』
・永井銀次『糸萬ピも終わるのか! 永遠のテーマが出てしまった』
・石松芳明『ロビンソンクルーソーもフライデイが女だったらなァと思ったそうな』
・岩井文男『先輩、美しい人を見ると前がふくらみませんか』
・皆川則之『私の給料では月1回です』
・橋本光司『父上、なぜ女性の自殺は「もったいない」のですか?』
・大島玲子『プロまではありません、アマです』
・梅田龍夫『討ち入りの時、山の返事に女と答えて切られてしまった末裔です。以来一族の禁句です』
・柚木崎寿久『男らしくない奴だな、お前は』
・山口吉浩『ウォーキングコンニャク』
・滝敦弘『結局は男と似たり寄ったりでしょう』
・高山普慶『最近ふと僕にも女らしさがあったらと思うことがある』
・太田正行『川俣軍司の女』
・川上宗薫『傍に寄るな、におう』
雑種犬シロ
・松本敏伸『シロに萬名を与える。「シロ井」』
・山野克人『りっぱな番犬』
・貴田昌子『競争と協調の犬』
・青木邦夫『シロは下町の必需品です』
・飯田久『唯一の欠点は、空巣にも協力しちゃうことなんだよなぁー』
・中村雅茂『苦学生犬』
・林紀一『綱吉様、政権をとってください。かしこ』
・岸下裕実『ぼくらは気さくな民間犬』
・坂本順彦『おいちゃんが犬小屋作ってあげようねトントントン』
・鈴木光祥『発・中が揃ったら呼んで下さい!』
・山口吉浩『抱き絞めたい』
・櫨場弘明『ぬりえ』
・永須徹也『けとばしたいほどかわいいやつ。けとばされても元気だよ』
・小高紳二郎『生活犬』
・米木豊実『これっきゃいぬ!』
・阿部晴美『ポチと呼んでもついて来る。タロと呼んでもついて来る』
・平岩茂『ちぎれるほど、尾をふったら、なんとか、食べれる。かもしれない』
・今橋憲昭『その目がいい、ともだちの目だ』
・比能信子『あなた好みに染まる犬』
・藤井康弘『「おまわり」というとシロは厳しい顔ですっくと直立して敬礼した』
・大橋純子『自由犬』
・岩瀬茂美『シロは生いたち黙して語らず』
・深瀬紳一『シロはいつも窓から見える風景を見ながら窓ガラスをなめていた』
・秋葉武郎『思い上がりがちな諸君のお供に』
・田中輝美『ファミリー写真の名脇役』
・貫和潔『白い犬って、いーいな〜、ホワイト&ホワイト』
・市川千晶『んー、舌びらめにはシロがあう』
・川崎敬子『粗食に耐えます』
・飯沼英二『アウトドアードッグ』
・田中武治『雑種のコピーを作ってください。血統書バッジをさしあげます』
・高山普慶『いかなる背番号制にも反対です』
・今井一『この地球に、犬てえもんがあらわれて何万年たつのか知んないけど、今だに純血だなんて奴、信じられるかよ、ナ』
・大野登美子『愛嬌のよさが飯のたね』
・奥松英幸『母さんや、シロの在野精神に今日は一本とられてしまったね。あははは』
・大橋祥哲『街の食物連鎖』
・大平俊明『オゥ、女泣かせの血統よ』
・成田由美子『拒んで拒んで拒んだけれどやっぱりダメだった先祖を許しておやり、ねー、シロ!』
・和田勝『ヘッヘッヘッ。ほな、つぎなにしまひょ』
・中新田育子『つま先立ちのほわいとえんじえる』
・武田智司『目指すは全電柱制覇だ。頑張れシロ!』
・金丸万砂子『シッポを振るとすぐ|媚《こ》びていると思われるのがつろうございます』
・角野功『キレがいいから紙いらず』
・嵐田啓明『しぜんたい』
・室井溶子『生きてさえいたらいいじゃないか! 死んじまったらおしまいなのだから』
・石橋一大『犬は、はずかしそうにうんちをするばあいがあるからかわいい』
・今津博『バターにそえて』
・土田寿江『温厚なシロは、怒ってもそっとかみつくだけです』
・松竹潤子『「血」より「情」』
・あらきけいいち『オレのフルネームは、アレキサンダー・ソクラテス・シロってんだ! よく覚えておけ』
E.T.Tシャツ
・小林克満『新・再・発売!』
・宇治川たか子『ビキニに自信のない方に』
・茂木庄吾『自分で着れば見ずに済む』
・渡辺恭子『開運E.T.Tシャツ』
・菊地亮一『湯気のむこうにぼんやりと』
・清水俊一『しゃべる山椒魚』
・中央一『迷ってますね。宇宙友情』
・近藤宗人『今よみがえる、倉庫のこやし!』
・井上浩司『三回も観たくせに……』
・高村弘子『収益の一部はめぐまれないE.T.のために役立てます』
・市川千晶『未来への遺産』
・阿部絹代『あわてるな、福袋には間に合う』
・荒本啓一『ブームは着て待て』
・田沼孝夫『目立つぜ!!』
・加藤順子『十年ぐらいたって、「俺の青春はこの映画から始まったんだ」なんて言うとシブイですぜ』
・星野美智子『着るナフタリン』
・舛本宏『E.T.の電話番号がついてくる』
・丸山公忠『このTシャツ、ココにもあるアソコにもあるというシロモノじゃない。新鮮なE.T.がそのまま貼りついてしまったという「ド根性E.T.」なのであ〜る』
・森賢一郎『E.T.Tシャツがみやげだといったら、家族は裸でまっていた』
・山崎恵子『わたしら山のもんは、熊よけに着ちょります』
・六城雅和『これ着て新宿駅にへたり込もう』
・今村恭子『オレのこと本当に好きならこれをきて六本木を歩いてみろ。どうだ! エッできないだろ!』
・市川武『何時迄書いても萬流Tシャツを貰えない塾生諸君!! コレを買うしかナイ』
・伊吹和民『破魔着』
・山科敦之『当店だって恥ずかしいんです!』
・西田克憲『「あの頃は若かった」とつぶやく小学生の弟に』
・平井伸郎『平気よ、もう誰もおぼえちゃいないから』
・飯島美紀子『ビタミンE入りTシャツ』
・石川さち子『私達も推薦します――宮沢喜一、研ナオコ、松島トモ子』
・伊藤朗『うしろ姿は、みな同じ』
・犀川浩美『まった来ったよ』
・岡田ひとみ『勇気ある決断・肝だめしの一着』
・平井謙男『助手席のシートにかければ恋人のいないあなた、もう淋しくなんかない』
・松田弘『私、テレビ局の人間ですが、あなただけにお教えします。もう一花咲きます』
・中野哲也『サンショウウオを、守ろう』
・杉浦範茂『二日酔いにコレ!!』
・大取喜想次『イヤッ、見ちゃ、いや』
・久米大『胸の上に試練!!』
・谷尾進『要らない五百円硬貨三枚で交換させていただきます』
・米木豊実『ミッキーマウスが古いと思う人は、着ないでください』
・松田健二郎『羞恥心を鍛える』
・岡田明宏『やっとルームランナーのカバーが出たか』
・清水美紀子『E.T.Tシャツを、そっとタンスの片すみにしのばせる。奥床しいネー』
・佐藤ひろみ『「オレ海に逃がしてやった」と和男が言うから笑ってしまった。善い事って真面目に聞くとなんか恥ずかしい』
・坂本順彦『西武の広岡です。若い人とのコミュニケーションが大事ですね。私は選手にプレゼントします』
・川崎稔『着れば正月』
・榎本時雄『当社は何枚売れるといくら儲かるという考えはしていません。一枚一五〇〇円です』
・菅原健一『E.T.Tシャツ今年もよろしく』
ゲートボール
・貴田昌子『テニスが大衆スポーツとなりはてた、今』
・高山淳『ゲートは若さの入口です』
・高木正人『シルバーシート廃止運動』
・田中伊織『ああ、お茶がうまい』
・谷田和也『何度読んでもわからない土のライン』
・貫和潔『「おっと、ゲートボールへ行く時間だぜ」と言って去っていった彼、……私はゲートボールが憎い』
・谷岡洋『これ程、|しわ《ヽヽ》の似合うスポーツも珍しい』
・外山孝史『どんな距離でもウッド一本』
・関田英紀『最初はみんなにバカにされたもんだ――ガリレオ・ガリレイ』
・末金信幸『ともに力尽きるまで』
・篠田賢司『肝心なのは土を読む事です』
・清水徹也『たたかいのあとのフォークダンスでときめき押え難し』
・島田二郎『進め一億木の玉だ!』
・椎名茂治『ネコの手も借りられるスポーツ』
・阪田篤俊『公園はたのしいな』
・阪田茜子『おばあちゃんの鹿鳴館』
・齎藤正規『道づれは、お前にきめたぜ……』
・坂入誠幸『三丁目なんかにゃ、負けやせん』
・佐藤証『統一ルール、それしきのことで流血の歴史は終わらない』
・佐伯晴男『嫁いびりもあきた 病院通いもやんなった そろそろ行ってみるか』
・佐藤巧『エース・ストライカーの太郎ちゃんとマネージャーのお梅さんは、絶対に、あやしい』
・河野洋平『3年前プロになるため家を出た父は、アッパースウィングとやらをマスターし、地位と名誉を得ているそうです』
・渡部高士『ワシがスティックの魔女お種じゃ、ワッハハハ……』
・吉田泰清『嫁が猫なで声で勧める』
・山根万里『広場がある、トイレがある』
・森昌正『オイ! 腰が曲がっとらん』
・村上たもつ『ふみつけて たたいてとばして ああそう快』
・宮下昌志聴『大根で玉ネギ転がしたのが起源です』
・丸藤豊『だるま落としの技がさえる』
・松島宏『少年隊大募集』
・松本正『人気絶頂、極楽の門』
・藤田朝子『ゲートボール接待』
・平田和泉『このゲートボール場は皆様への還元事業としてつくられたものです――貯金は農協へ』
・原田千世『えっ!! デートボールじゃねえのけえ』
・西沢えつ子『G.B.ボーイ』
・講堂竜太『――あなたは何故、ゲートボールをやるのですか?――と訊くと、彼は一言「球を打つのに理屈がいるのかい」と言って笑った。金歯が輝いてとてもまぶしかった』
・小林浩之『初心者は、鉄棒で練習して下さい』
・小松毅『シワをつたう汗が好きだ』
・桑田萬蔵『古諺に曰く「三つ児(三歳)の玉|戯《じや》れ百まで」』
・川名まこと『源蔵さんは、毎日7、8通のファンレターをもらう』
・加藤順子『新連載。熱血ゲートボールまんが「くぐらせの鷹」』
・角田正雄『やりこんでるね』
・笠原教『吉田重作は死んでもスティックを離しませんでした』
・椛島博規『ミニとペチコートでやってまーす。ゲーボーギャルズ平均年齢68歳』
・河津準一朗『ゲートボールは偏見を相手にするスポーツだ』
・大河平将朗『夢中になるのも淋しい』
・岡田弘毅『漢字に直さないこと』
・小野寺多恵『回春の門』
年賀状の言葉
・中村卓『今年も|手がき《ヽヽヽ》で、お○でとう』
・寄川美幸『「たま」「まめ」』
・高山淳『新年 石川さゆりさん』
・麻生裕香『ほら、ちがう自分がやってくる』
・吉田和正『挑戦しよう。そうしよう』
・武田ゆかり『ねずみより愛をこめて、チュウ』
・松浦孝二『遅くとも、「書かず」よりは、あたたかい』
・中町泰子『ボクン|家《ち》にお正月が来ました。今日あたり、君ん家にも行ってるんじゃないかな』
・北原妙子『脱狂瀾怒濤』
・萩原高明『夢の浮世ぢゃ ただ狂え』
・沢野弘幸『四十円は礼儀だけど、これから先は愛です』
・結城茂『覚えているか、餓島にも死臭に充ちた正月があったことを』
・川村武郎『こら!! あけたらしめろ』
・熊坂和広『青春最後のねずみ年』
・泉裕子『来年は年女です』
・向井より子『こい・いちねん』
・永盛康子『ふくみ笑いでむかえます』
・加藤元茂『止まれ』
・松尾和人『我賞、まとめて半年分の萬流塾の宿題があったら、西の果ての小生も今頃は師範じゃろうに! 発売が遅い!』
・白土勝康『おしんねん』
・豊田ひとみ『はじめの、はじらい』
・増田勉『私の年です、還暦です。甲子園』
・山口博美『萬幸』
・山本芳雄『共に築いた此の生活、妻よ今年も頼むよ』
・浅井のり子『腐っても一年』
・小沢武男『行った年 来た年』
・志賀久子『萬、小せえ、億でいこう、ナ』
・仁田和男『(−)生きた!』
・塩路信兼『始まり始まり』
・島田裕巳『天地|開闢《かいびやく》』
・杉本新『ね、ね、ね、いいことあるよネ』
・鈴木みほ『朝日に向ってありがとう』
・田中英恵『我家のワープロの初仕事です』
・田中けい子『あなたの精子は今年、保育園へ上がります』
・中野幸子『今年はあなたにだけ出しました』
・西岡孝和『また、きた』
・三田喜代司『今年は食べません!! タマ』
・森元麗子『今年こそ写真集がでるかもしれない』
・山本悦子『「三枚」「四枚」「五枚」』
・緒方文子『ライオンもオオカミも今日だけはメダカ。お口をそろえて、オ・メ・デ・ト・ウ』
・山田拡『残念でした。まだ生きてます』
・里見希世『イカにしてください』
・藤枝ゆう子『ねずみが一匹、ねずみが二匹、ねずみが三匹、倉から逃げた』
・木倉一紀『ジワジワと迫ってくる世界滅亡の日。あと15年、御互い頑張りましょう!!』
・小角愛『気持ちだけ、おめでたく|パチパチ《ヽヽヽヽ》』
・増本由香『「めでたいなあ、めでたいなあ」って、弁天様は、性生活までおめでたくなってしまった』
・赤木孝彰『萬流餅、二十個食べたらすぐ名取』
・金森真一『お歳暮、どうもありがとう。お中元もよろしくね』
・桑田萬蔵『金餓辛年』
・野勢高広『今時分、モウ済ましたんでしょーネ、フフッ』
・太田ナオミ『最近はお正月が来ても、一つ年よけいにならない所がおめでたく存じます』
・高木芳明『焼酎』
・鈴木健一『慶祝二審年』
・堀川伸一『欺瞞を排す。来年もよろしく。十二月二十二日』
・藤島秀憲『ずっとよろしく』
・石山佳秀『先に出した方が勝ち』
コ ロ ッ ケ
・菅谷充『さがさないで、わたしの肉を』
・大野あさみ『ソースかけてコッペパンにふたつはさむ、これは東町第二小学校のステータスシンボルだった』
・田宮一『政、里芋なんか食ってねえですこしはハイカラなもん食えや』
・吉田泰清『ふーふーはふはふ』
・山本淳也『ついでに買うな』
・宮田延晴『大衆賞』
・関川博行『主食にしている国もあるんだぞ』
・宮崎英一郎『死のうと思ったこともあります。でも、給食で私を待っている子供達の顔が浮かんできて……若かったんですね、きっと』
・持永昌也『一ケ、二ケ、三ケ、コロッケ!』
・坂本隆志『コロッケの“ツケ”がたまらなくおいしそう』
・佐藤ゆきこ『ぜんぜん宿題ができないので、コロッケを作ってみたけど、まだできない。でも、はがきに題を書いてしまったので送ります』
・村端隆明『これが私のリビドーです』
・松浦恭子『私もう、コロ中でコロコロしています』
・岡田克巳『追跡あの人は今……アンデルセンで働くコッペパン』
・栗原峰夫『毎月二十四日はコロッケの日です』
・木田道子『日本のおじゃががコロッケのべースには最適です』
・伊原義幸『民食』
・鷲尾徹『給食の力道山』
・大久保美智代『ジャガイモがいるんですか? お姑サマッ』
・中岡由美子『肉屋を父に、八百屋を母に』
・井手正登『コロッケは毎日でもよいが、女房はネー』
・秋田良夫『とうちゃんはなぁー、ぞうりぐらいのコロッケが食いたくて、一所懸命働いた。だから会社が3つも立ったんだ』
・松中みどり『じゃがいも冥利につきます』
・垣東徹治『父は「知らない」といった。母は「忘れた」といった』
・全『あのなつかしいちあきなおみ風コロッケはもうどこにも売っていないのだろうか』
・相川弘『監督、カニはセーフですよねっ?』
・新井裕美『ソースで顔を描く』
・カネガエテツロウ『肉小判』
・福山重博『うちでかんたんに作れるなんて、信じたくない』
・加藤秀広『ほふっ、ほふっほふっ』
・関直美『うー。ソースが身にしみる』
・宇治川たか子『飽きるのをあきらめる』
・久野潔『コロッケはん、油かげんどうどすか?』
・松本隆『祖母はしょう油をかけた。僕はそのまま食べた』
・小川克子『愛とコロッケの日び、――だんなの日記帳より』
・奥山葉月『私は「味の素」のカーニー夫人にいっつも白い目で見られています』
・盆子原秀明『君のバッグにそっとしのばせる。今年のメリークリスマス』
・平田美江『おじいさんが初めてたべた洋食』
・桜井昇『油小僧』
・高野祐爾『貴男が好きだ、と言ったのは私ではなくて、私の作ったコロッケだったのね』
・菊地英二『一人娘のカニクリームへ、パパはメンチとの結婚には反対です』
・多田葉子『ア! 50円玉がドブの中、とんだコロッケ損だ』
・不破秀介『買いたてのやつを頬張ろうとする僕に、彼女はハンドバッグに忍ばせていたソース瓶を黙って差し出した』
・西岡孝和『つぶせばポテサラ』
・上田和久『下北沢の立ち喰いそばには、2コ入っている』
近所の喫茶店
・立川修『洋式便所始めました(明大前喫茶ロダ)』
・加藤成二『女子大生未満お断わり』
・西裕『灰皿……五〇〇円』
・後藤由紀子『客がふえたのもバッチャのサーファーカットのお陰だなや』
・平野秀己『キリマンジャロを飲みたい人には隣りの店から出前をとってくれる』
・北村裕史『宿題を考える為に喫茶店にはいった、と書いてきたヤツは破門してやって下さい』
・梅田龍夫『コーヒーに茶柱を立てる気くばりが自慢です』
・八神聖『地場第三次産業の誉れ』
・遠藤剛『いつのまにか僕の田舎では、喫茶店の看板がカへバァと黒マジックで書き直してあった』
・原孝治『モーニング・サービスはウェイトレスがお早うとだけいいます』
・能戸和典『おしぼりが、大きいんだよね』
・土井康次『コラ! 客に便所の電気をつけさすな!!』
・岩城レイ子『ソーダ水の中を、貨物船が通りませんが、不思議とよくゆれます』
・渡辺康二『右の窓から波の音、左の窓から蹄の音、ワイドなサウンド効果をお楽しみ下さい』
・関根雅人『コーヒーのマズいウマいは、時の運』
・山本純ノ介『|丘自由《おかじゆう》より3分 役満連発 攤(打)餓鬼族 梵語』
・伊藤慶幸『「ボボ」の常識』
・石井信之『アパートのトイレって大便には不向きなんですよね』
・清水幹夫『濡れづにホテルに抜けられます――喫茶トンネル――』
・田中豊『葉書をもってらっしゃい、一緒に考えましょう』
・山口博美『泣くなっつーのこの子は! いまお客さんにピーナッツもらってやっから!』
・田中伊織『会社も家も大嫌いだい』
・村上知道『マスターには小指がありません』
・岸篤郎『少なくとも半径100Mではうちの珈琲が一番うまい』
・宗前正博『世界最強のモーニングコーヒーショップ・フジ』
・菊地敬一『モーニングサービスに電卓がつきます。ファイブシャドウ』
・有馬実世子『ボボ・ブラジルの店、喫茶ゴング』
・海東浩『わざわざ近くへ、ようこそ』
・松村典子『大正十五年の創業です。招き猫も女給さんも当時のままです。はい』
・広瀬道子『欽ドン見てからまた来るね』
・竹森一成『デイタイム、決心した主婦のために。ナイトサービス、決心がつかない貴方とともに』
・板垣正敏『当店では、ドリップに女性の下着を使用しています。ティールームいちご』
・久野弥栄『うば車はなるべく持ち込まぬように』
・高橋陽子『住宅喫茶』
・藤山章子『いつ手入れうけるかわからへんのやけんどナ。(ウサン)』
・大福誠『一杯250円。みんな、もと、取っている』
・平野元一『喫茶店といわれるのを嫌っているマスターのいる喫茶店らしき店があるんだが』
・中村雅樹『うちの学生が来るので、ワシら先生はマンガも読めん』
・根津真木『ママは店番、出前は社長』
・宮崎慎哉『握りコブシでこの一杯。喫茶スイス』
・岩瀬茂美『不意の御客様はお近くのサロンへ』
・鎌田房一『痔主用丸穴付椅子もおいてあります』
・松原憲一『セルフサービスに御協力を。ホットのお客様、まず中央のダルマストーブに豆炭を足して下さい。喫茶津軽』
・金森清久『遠くの公園よりも近くの喫茶店』
・斉藤優子『窓からたばこ屋が見える』
・林克昌『17時までは、ノータイム制』
・日高雄一郎『店名募集』
・横溝真子『あたりが出たらもう一杯』
マルクス全集
・大久保謙治『もう みんな読みました』
・橋本香代子『勉強、おやすみ、両用タイプ』
・欅谷修平『始めて装丁を白くしました』
・島田敏雄『愛読書は「マルクス全集」とサラッと書ける君がニクイ!』
・東ミヤ子『“お母様、マルクスがお安いんですって!”“すぐ、買ってらっしゃい”』
・相場祐一『男はみーんな経ファン』
・永井欣男『マルクスは働くのも忘れてこの本を書きました』
・中村嘉夫『本邦初の「です」「ます」調訳文』
・関口芳昭『誰にも読まれたくない日記は、誰もが読みたがらない本の余白につけよう』
・篠田賢司『|完全生訳《かんぜんなまやく》』
・河合伸子『今、30代におくる哀愁の書』
・河野洋平『マルクス家の家計簿をつけていた若きエンゲルは、おかげで後に主婦の友となった』
・曾根隆『うちのパパは僕が「マルクス!!」と叫ぶと、ヘルメットをかぶり、部屋中をかけまわります』
・明石昌宏『警部、誘拐犯は、これを参考にしたんじゃないでしょうか』
・竹部伸爾『東では駄目だった。西ではどうだろう』
・古田基純『我々のギャグより中味が濃いと、三兄弟も伯父貴を絶賛』
・土橋博雄『中小企業診断士協会推薦図書』
・江藤見登乃『ともみのお父さんは、マルクス全集をカーテンでかくしています』
・小檜山想『忘れかけていたガッツ――マルクス全集――』
・三宅順子『今に公社から無料配布されると思っている方、それは電話帳です』
・加藤正美『それにつけても読書はカール』
・田中孝治『巻末に、袋とじ「マルクスの秘密」がついています』
・川崎稔『お買上げの方、店頭にお名前を貼りだします』
・植松章『きょうから、きみは要注意人物』
・あんのよしと『なぜマルクスは妾腹の子をつくりながら、正妻ともめなかったのか? その極意は?? 偉人ちゃん事件を生み出す資本主義の社会と人間をずばり解明』
・中村光正『田中君や中曾根君は貧乏だったから』
・石山真知子『やっぱ、アタシみたいな器量良しがこんなの読むと、目立つかな』
・上石成彦『今までの「資本論」はまちがいでした』
・本間洋平『父は「マルクスはエライやっちゃ」といって、ショーチューを飲んでいる時が、一番イキイキしています』
・鶴岡精二『ワ! 世の中をマルクスるしあわせの本』
・いしかわじゅん『これはドイツ人が書いた不幸のマルクスです。1週間以内に20冊買わないと死んだヒトもいます』
・石井隆治『ホテルに聖書、家庭にマルクス』
・中山文人『マルクスの妻は町一番の美人だった』
・深澤孝一『なにかの役に立つだろう』
・伊藤治郎『マルクスを読んでもボクのくらしはかわらなかった。でも、世界はかわるのかもしれないと思った』
・岡田明宏『読まないヤツほど読めという』
・相沢悟『ロシアの悲劇 日本の喜劇』
・田中英恵『マルクスも認める私有財産』
・志波茂『カアちゃん、マルクス買う資本ちょうだい!』
・三宅英世『付録として文庫版の漫画によるダイジェスト、著名な章句の抜粋をもれなく進呈』
・トキカメ『“ノウミン”にシテやられたと、無念のホゾを噛んで居る人に贈る! この全集から|逆転《ヽヽ》のヒケツをさぐり出そう』
・西住徹『マルクス全集、重さ10キロ』
パ ン ダ
・神代義也『パンダに中国語で話しかけないで下さい』
・杉村明浩『私、最近の若いパンダです』
・丸山真澄『冬のある日「上野……パンダ……チャーシューメン」このコースは好ましい。夏のある日「上野……パンダ……冷し中華」このコースは好まれる』
・久野朱美『やってんだから見ないでよッ!』
・風間雄吉『よーく見るある、わたしのここはまた桃色あるよ』
・藤戸順子『丸めたらサッカーボールになっちゃった』
・浅川利道『私は本物』
・石井洋史『アイドルだった時代もすぎ今年からは演技派に変身』
・久江康裕『背中で泣いてるYKK』
・田中彬子『パンダ(萬朶)の桜 上野山』
・乾みさ子『竹林のひめごと』
・石原典明『ふけた可愛いさ』
・秡川隆幸『ブチッ、ブチじゃねえか、こんなに大きくなりゃあがって。さ、早く帰ろ』
・林貞男『「くずパン」です』
・大久保京子『コアラの前にパンダでおさらい』
・小谷秀穂『カメラの前で|性行為《ヽヽヽ》が出来るとは大した名優だ!』
・脇大輔『かわいさの正露丸』
・岡崎敏彦『オナニーはじめました』
・藤原健司『ゆうべも先妻が夢枕に立ちました』
・加藤善彦『剃ってみたいナ、パンダの毛』
・山下景子『さり気なく捨て子をするのには格好の場所です』
・新井陽一『一億人目の方に一晩お貸しします』
・高野博子『赤ちゃんは、タラコ細工だ!』
・岡本紀子『観る中華』
・斎藤省吾『四川風味の味わい』
・山本三七雄『嬉しいことに毎週金曜日、アニマルとしての生活がある』
・富沢清人『革命前、ナーンダと呼ばれていた』
・長谷川裕美『わたしたちは、田中先生がもらってきたパンダではありません!』
・土屋研二『抜毛差し上げています』
・繁田晃子『隠れヤクザのグラサン観音』
・目黒仁一『極楽とは何かを教えてくれます』
・林直樹『白黒逆にしてみました』
・石塚修『早く来ないと死んじゃうよ』
・遠藤剛『上野ドドンパパンダ』
・荻根茂子『見たい、会いたい、抱きたい、抱かれたい』
・鈴木道子『私より太ってるから好き』
・近藤隆『ナンダ』
・原田浩二『発情期、みんなが見ている、はずかしい』
・高木もめん『猫ころんでも、パンダは立たん、今年こそ!』
・鈴木鳴彦『見るならパンダ、抱くならパンマ』
・高勉『彼等を前に言葉は無力だ』
・小山滋『パンダと目の合った人には、浦安の遊園地の入場券をさしあげます』
・江口照夫『パンダのお尻の穴は何色か。白黒決めるのはあなた自身です、ハイ!』
・古矢香『拝啓、故郷では笹ばかり食べておりましたが、上野では、人を食って暮らしております』
・今井智子『白黒をはっきり知りたいその尻尾』
・酒井恵子『|白黒《パンダ》、したい』
・高倉栄治『棒でたたいてごらん』
・吉田円美『ニキニキニキニキニキのパンダ』
・深井恒雄『動く歩道を設置しました』
・遠藤敦子『パンダ舎の前で記念写真、あなたの肩にランランの手が……』
・有安けんじ『桃源郷に生きる』
・古賀実千代『みにくい白くまの子』
・林ゆう子『上野一番の嫌われモン』
・田口健司『コアラ来日直後にガキ産むぞ』
禁 煙
・野崎恵子『タバコで殴られ父重体!!』
・笹村哲子『あっ、レモンの恋にヤニが忍び寄る』
・白土かよ子『僕が男になったのは、仕方なく座った禁煙車だった』
・橋本香代子『物の置き場もないあなたの机の上に、灰皿一個分のスペースをつくる方法、教えます』
・川上映子『たばこの代りに私のくちびる』
・谷口貞一『子供に1号車をせがまれてナァー』
・小関順二『新婚一ケ月の妹曰く――煙草を吸うヒマがありません』
・岡田明宏『もっと空気を』
・渡辺さと子『ローン一杯の新築で壁のよごれを気にしたら、とても煙草のむ気になれない』
・川出正男『タバコ銭もらって禁煙してます。妻に内緒です』
・池田真理子『浮気って煙草の吸いがらから足がつくこともあるんですって!』
・渡辺由紀子『口が淋しくなったら、ハーモニカを吹こう』
・深澤龍介『ボクのお父さんは、タバコをやめて市議会議員になりました』
・小池忠康『夢で喫いましょう』
・富岡正紀『隣のお姉さんはボクがたばこを吸うと笑うんです』
・明吉加代子『歯のうら、部屋の壁、子供の頭』
・倉上みのる『これでも止めないつもりか、とKは胃袋を吐き出した』
・久野慎太郎『タバコもいいけどちくわもネ』
・坂入誠幸『モク姿・煙娘・ヤニっぽいね』
・土井宏之『ブチ、ブチ、ブチ、ブチ、ブチンッ(毛細血管の切れるギ音)』
・山下洋輔『ニコチンは いくら吸っても ラリれない』
・明石昌宏『恨みをこめて毎年贈っています』
・森本實『代用物、私のでよければお使いください(女性喫煙者に)』
・小出洋一『肺ガンの人は燃えにくい』
・藤本尚也『吸うとハゲます』
・柏田道夫『すったもんだ!』
・斉藤優子『まんじゅうがうまい』
・松丸伸次『文字よりも、ガンに冒された肺の写真を貼りなさい』
・松岡敏宏『オヌシに、ワシが切れるかな』
・萩尾昇『西風に負け、禁煙してしまった』
・松尾政信『当店では、お客様全員が一時間以上ノー喫煙の場合、全台いっせいにオール7となります』
・山本桃『好きです、タバコ嫌いな方。にあんにやん娘』
・内山喬雄『タバコ屋はタバコをすわない』
・高木俊明『禁煙がゲームになりました』
・太田康弘『タバコ代を私たちに――フロム・バングラデシュ』
・佐藤充彦『男「………」女「………ごまかさないで」』
・野村雅之『私、吸う人乗せません』
・高堂学『火傷、肺癌、火事、インポ』
・高村忠夫『ケムたがらず、まァ聞いて欲しい』
・日下直子『タバコをすう|男《ひと》はきらいだけど、すわない|男《ひと》は好きになれない』
・高島均『ターバコ|喫《の》みの、ケンボーショー煙草喫みの健忘症!! ウワァーイ』
・石井洋史『黒いハナクソ、黒いタン、煙草の匂いがついたクソ。白いハナクソ、澄んだタン、煙草をやめても臭いクソ』
・松尾隆志『阿蘇さんいわく、「マネすんな、アホ」』
・増山正之『私の田舎では「禁煙」とは、たき火をしてはいけないことだが』
・奈良崎京子『けむり、くさい』
・藤岡たみえ『結婚の条件 '85』
・助川徳是『たくわんくさいあくびをした女はラークをすっていた。夏目漱石』
や き い も
・岩間園子『冬の夜、ホットでやるビタミンC』
・飯田栄子『ダイエットはあしたッから!!』
・浅坂直人『見よ乾坤|一擲《いつてき》の丸焼け節』
・草川康之『焼きイモには青年の主張がある』
・小沢誠一郎『オカマはいいよなあ〜』
・安藤紀代『少女たちはそれをマフと呼んだ』
・蘇武由美子『我家では焼きいもを食べると「戦争体験者座談会」がはじまる』
・栄山勝巳『一瞬のためらい、それがうまさを倍加する』
・桑島法昭『通りがかったら窓から呼んで下さい。「フリオ!!」』
・藤井達巳『消防士さんたちは縁起をかついで、やきいものことを「けしいも」と呼びます』
・横山宏『やきいもを石亭風に配置いたしました――やきいも処「竜安寺」』
・篠崎哲夫『立ち話もなんだからちょっとやきいもでも食おうか』
・吉村陽一『ネーミング変わりました。マリー・アントワネットのため息とはじらい』
・星野高行『川越での通貨が、さつま芋の輪切りであったことよりも、「イトマンピ」というと黙って文春を差し出したキオスクのおばさんにビックリした』
・伊藤謙二『|実家《さと》のデザート』
・三条彰『あなたを待てば冷めてくる』
・島崎英雄『終電の30分後にもう一度まいります。合図は「火の用心」です。お待ちしております』
・遠田純『しあわせのハカリ売り』
・五十住真奈美『屁発∞』
・天野和仁『オーブレネリ、わたしのおイモはどこ』
・太田清子『さつまいもの姿焼き』
・川鍋裕子『完全調理済、ご主人のお弁当』
・大川雅生『オッ、股の間にはさむと、キクぜ』
・南潤一『餃子を食べると確実に口臭が残りますが、ヤキイモを食べても絶対に屁が出るとは限りません』
・内田貴『あの人の音』
・岡田加代子『プレゼント用にリボンをおかけいたします』
・今村淳『東京へ行ってもヤキイモを好きなヒトでいてね』
・大森孝『大丈夫、石坂さんもヘーきちです』
・岡崎大介『失敗した芋版買い取ります』
・坂口泰二郎『一人寝床で食ういもは、別れ涙の……。ムム、塩がついておったか』
・三木康『バターをぬったら入れてみよう』
・木村豊『やきいもと水を口に含んでぐちゃぐちゃやっていると、いも羊かんそっくりの味になるの知ってた?』
・佐々木道子『オッカア……オラも爵の字がほしい』
・植木俊幸『わぁ〜、おイモが立ってる』
・渡辺信子『夜のしのび買い』
・小林江美『ねちょイモ保険あり』
・北垣享『今、皮5枚一口で応募すれば抽選で匂い袋が当たるぞ!』
・西本一人『特典、やきいもでバチが当たる。ウチのはお地蔵さんを砕いた石で焼いています』
・高橋伸子『わぁ〜い、ごちそう様です。お茶入れてきますね』
・横田ヤスヒロ『こんばんは。プロヤキイモニュースです!』
・三浦進『母はつっかけで追いかけた。私はジョギングで追いかける』
・木部一成『もまずに食べれる』
・守谷みよ子『いもで解決できるのなら、そうしたい!』
・出路幸雄『当店のいもは白魚のような手で洗っております』
・岡村寿子『電柱の陰で待つ』
・野村雅之『臭い食いのオイドパット進呈中』
春の日本観光ポスター
・中山まさる『帰りのキップはテレビに出演して買って下さい』
・佐藤ゆきこ『迎人』
・浅野幸男『外人日刊アルバイトニュース』
・口隆男『税関で踏絵を踏んだ人は、福引き一回できます』
・松永光弘『「花見」を見物して、日本人を知ろう』
・今枝昭博『近日開幕!! パンダVSコアラの金網デスマッチ』
・洞口裕『あれから3年、生麦事件』
・若林健『ガイジンはガイコクヘ』
・津野久美子『選択問題・この2つの言葉でより春らしい言葉はどちら? 春スプリング』
・堀洋一『ドウモ ドウモ ニッポンッス』
・正岡智之『ダンナ、一度和式でウンコしてみろよ。やみつきだぜ。へッヘッ』
・江島民子『「ひねもす」を知らずして、日本を語るなかれ』
・黒尾光善『日本は、世界にくらべると|小さく《ヽヽヽ》、|短い《ヽヽ》、けれど|かたい《ヽヽヽ》!』
・前田雅治『春には、よけいなお世話のひとつもしたくなる国民です』
・石井孝明『日本で泊まるなら木屋旅館!』
・鶴田雅彦『キンツリが、エスコートします』
・安原利明『みかんが終わると夏みかんがおいしゅうなりました』
・浅見唯夫『真面目で、おいしい日本女性』
・山田剛良『娘が、期待して待っております』
・加藤正美『昔、「ハラキリ」と呼ばれた儀式は、今、「シュジツ」と名を変え、各地で行なわれています』
・北村裕史『どーせ、読めねェんだろ』
・夏秋啓子『来られるとはずかしいような気もするけど……』
・田辺隆『ソバ屋でカレーの食える国が他にあるか!』
・岩波徳和『俺の家があるぜ』
・福元みどり『外人さんへ、家の母が一度並んで写真を撮りたいと申しております』
・小野寺裕『青函トンネルは空手で掘り進んでいます』
・平銭隆利『日本人はパンツをはいています。おすもうさんはシッポを切りました』
・馬淵明子『皇居の衛兵は話しかけるとお返事します』
・松岡敏宏『タダでおいしい日本のお水』
・吉田幸治郎『ワシントンは桜の木を切りましたが、正直に言ったので叱られませんでした。裏の健一君も桜を切り正直に言いましたが、おやじにはったおされました、春の日本てそんなものです』
・岩崎史郎『ノーキョーに仕返ししませんか?』
・稲葉利彦『行こう! ゴジラのふるさとへ』
・山田順一『東洋の珍味……花子』
・菊地誠『ボクそっち行くから君こっちいらっしゃい、ね』
・田辺隆『春一番。日本女性はすぐ許す』
・加藤光博『新しい日本の習慣――春の七五三(ただし親のみ)』
・秋田省一『白黄ショーのアルバイト出来ます』
・森崎春菜『電話一本即融資、旅費に不自由しません。デンワは|四一九二《ヨイクニ》』
・鈴木桂子『春はあけぼの、次なんだっけ?』
・森谷あゆみ『お疲れでっしゃろ。ま、お|茶《ぶ》でもひとつ』
・竹内真理子『大和|撫子《なでしこ》冷凍保存してあります!』
・末吉雄一郎『名物、桜の下の立ち小便』
・藤森光明『春には全員芸者になってます』
・金城智子『トイレにちり紙おばさんはいませんよ、安心しなさい』
・望月久『サクラは食べ物ではありません』
・相沢国夫『春になると、新宿の歌舞伎町ではノーパン歌舞伎を上演いたします』
・大谷好勝『外人と呼ばれるチャンスです!』
子供にベンキョーをすすめる
・永井信男『君達から勉強取ったら給食しか残らないでしょ』
・大橋且明『勉強してるうちは、遊んでくらせるぜ』
・黒木明子『私、幼い頃から勉弱なもんで』
・藤川英雄『しまいには天神様に犯されるぞ!』
・後藤晃『エサやらんぞ』
・伊藤俊『子「さぁ、勉強始めるか」 一分後 子「あーぁねむいなあ、勉強できないのはおしいがねてしまえ」 父「こらぁなにやっとる。早く勉強始めろ!」 子「しかたない、さぁ勉強始めるか」 一分後 子「あーあねむいなあ、勉強できないのはおしいがねてしまえ」 父「こらぁなにやっとる。早く勉強せい!」……もう、きりがないなあ』
・大下利栄『パパ、おかげでさんすう4になったよ。あッそれポン!』
・衣川純代『お勉強しないと、ママ抱いてあげないわよ』
・棚辺恵子『いやなら働け!』
・三室治野『頭の裏の三角の所が、特に気持ちがいいんだよ』
・国枝節子『あれ? お前知らなかったの。英語が喋れなきゃ、プロレスラーにはなれないんだぜ』
・藤原清子『おまえ、家元の子に生まれたんだから、しっかり勉強せいや』
・外山美枝子『夜食はぬるめの粥がいい、食後は濃いめのお茶でいい』
・石山真知子『イグアナだって、勉強したからタモリになれたのよ』
・宮崎哲弥『ベンキョーばかしやってると背がのびないぞといわれていた僕も、今や身長50メートル、体重2万5千トンのおおらかさです』
・古沢健太郎『アントニオ猪木だってブラジルでランプの中で勉強して、エンズイ斬りをあみ出したんだぞ』
・岩瀬彰『なぜお父さんが同窓会に出たことがないのか、僕は知っている』
・三宅悠子『これはナイショなんだけどさあ、本当はみーんなやってるのよ。恥かしいことなんかちっともないのよ』
・佐藤昌子『私は子供のとき一生懸命お勉強しなかったので、学校の先生なんかになってしまいました』
・宮井尚子『おべんきょうすれば、みきちゃんとけっこんしてもいいって、ままがゆーんだ』
・金岡登志子『「ベンキョーしたい人、この胸、トーマレ」(ボインだけが自慢の小学校の先生)』
・林田ゆりか『ウルトラマンは3分しか地球にいられない事を悔んだ。もっと勉強しておけば、1時間でもいられる体がつくれたのにと』
・黒木成美『はいはいはい! 10問解けた人から好きな子を連れて保健室へ行きなさい』
・遠藤由美『跳び箱がなんだ! 逆上りがなんだ! 勉強で見返してやれ』
・西川真知子『ナナハン乗るんだって免許が要るんダゼ……暴走族』
・前田武士『君は東京大学養成ギブスをはめていますか』
・水谷清美『そんなに毛嫌いしないで。ベンキョーさんの身にもなってごらん。ベンキョーさんはどこへ出しても恥かしくない立派な方なんだから。ちょっとつきあってあげればいいじゃないの』
・樫原辰郎『君は、先生を殴りたくないのかい?』
・内山貞登『思い出してみよう、精子の頃のあの努力を』
・原賀出『マー君、幼稚園だけはちゃんとでておくれ。父(ラグビー日本一の某大学四年中退)母(ケンカ日本一の某高校二年中退)より』
・西村佳有『待てッ、帰るな家元、そこからわしのムスメに電話シロ』
・高橋栄『お父さんはお母さんがはじめてだから、お前の頭が悪かろうはずがない!』
巨人軍新監督王貞治さん
・外山孝史『バッキーの股間をみつめた俺がわるかった』
・冨田マサノリ『見出しが見やすい』
・三隅辰夫『王さんの悪口言ったら、本当に目がつぶれ口が裂けた』
・尾関勝亮『大リーグボール一号をホームランした男』
・佐藤茂明『しばらく見ねえうちに、ベンチに引っ込んじまったか』
・秋森尚『しっかし、芝居が固いね――』
・国久昇『高卒の出世頭』
・花岡達也『コツ、コツ、コツは靴の音? いや、努力の音だ!!』
・斎藤信也『サダの生一本っ!』
・山口正人『栄光の背番号1、そうです、中日の藤王デス!』
・渡辺康二郎『長ぐつをはいた監督は私だけです』
・西山昌夫『最近コマーシャルに少し演技が入って来たな』
・淡路昌雄『唯一の楽しみは森の中で歌うことです』
・深町亮子『ワタシは、王監督の歯に焼肉がはさまっているのを見た』
・吉川幸江『長島と加山雄三の見分けのつかないおばあちゃんも、「王選手だけはわかる」と言います』
・野口眞裕『良い子の皆さん、これでわかりましたね。僕の名前は|助《すけ》じゃないのよ』
・佐藤雅秀『三に1を足すと答えは王です』
・原口一仁『浪人は出来ないんだ。野球をやる息子はいないし、ソックリさんも出そうもないし』
・阿久津美都子『人が好いと、CMの出演、断わりきれないんだよね。――ナベサダ――』
・斎藤信也『客商売、客商売だってばさ』
・北田哲哉『みんな、苦労かけるんじゃないぞ』
・小杉英則『君は長島を見たついでに王も見たか!』
・石川登『オレは王陽明だっ!』
・松岡義視『私は王さんの子供の頃を見たことがありますが大きくありませんでした。これは本当です』
・加藤陽『まともすぎて、からかえません』
・阿部達也『泉重千代さんは「がんばってくださいね」といった』
・今村正宏『カラーテレビのCFで、うなづきながらしゃべっていらっしゃった姿が忘れられない』
・伊東志津江『球場ってのはね。中華鍋よ。カッセーカッセー、チンジャオロースー』
・森治巳『原を歯欠けにしてやる』
・鳥越成穂『一位から脱落しても、報道人さえ悪態つけない感じが何かある!!』
・清水靖恵『バットもいいけど、お尻が、いい』
・萩尾昇『一歳の我が子に、近くの白い犬の「ワンちゃん」と、あの偉大な「ワンちゃん」の違いをわからせるのも、子育てのひとつです』
・角田文善『パンティーラインが、ボールの縫い目に見えた』
・湯川千秋『そ〜ですね。うば捨て山軍団こと阪神の捨て身の戦法が恐いですね』
・杉田章『テメエらは、ガキころ、ガラス屋を連れていたか!』
・石井徹也『あの時ぼくら見てました』
・武田洋子『ただ一人、王貞治として生まれた男です』
・小林顕彦『長嶋さんは、「巨人軍は永遠に不滅です」なんて言って出てっちゃったけど、これが結構プレッシャーです』
・富田佑一『今年もまた萬流に明け王巨人日本一に終わる一年であった』
・森田昌彦『「監督のコピーがよけりゃ優勝できるっていうんなら楽なんですがねぇ」と、広岡は皮肉な笑みを浮かべたが、王はニッコリしただけだった』
女 子 大 生
・松田正志『おみぁさんとら女子大生の本場は名古屋だがね。なんちゅうても女子大小路ちゅうもんがあるぐらいだで』
・大久保京子『意志のスタイルとしてのJ.J.』
・田口功『女子大生のみなさん、秋田にお嫁に来てください。過去は問いません。――秋田県農協連合――』
・柳本マリ『チェーン振り回してた頃の方が、安上がりだったわね』
・兼澤忠『上に「女子大生」とつけられない職業はありません』
・嵐田啓明『うなずく集団』
・松本修『あの人は美人のくせに勉強ばかりしている。きっと大穴をねらっているんだ』
・村上存『「女子大生」と聞くと、すぐ腹やら何やら立てるんだから』
・志水健二『マイクハマーだ。俺にやらせろ』
・塚田好久『息子の嫁にしたいと話しかけ、サイズを聞きました』
・三浦洋『好ましくないけど、大変よい』
・田丸歌子『何があっても驚かない、強い父さん母さんに育って欲しい』
・岡本文一『郷里への女子大誘致に政治生命をかけます』
・西沢啓之『先日、女子大生にケンカを売ったらみんなからヒンシュクを買ってしまった』
・薄井雄二『割れてます』
・山本幸洋『アンケート症候群』
・増岡幸一『石を投げれば、女子大生に怒られる』
・峰岸和弘『かめのこわたし』
・塚本浩『おいしいでしょ、このカップヌードル。私がお湯を入れたのよ』
・佐治吉彦『体がほてって教養が身につかない』
・中村直『わたくし三つ指ついて腕立て伏せができます』
・伊藤秋彦『乾いた濡衣』
・石井良枝『多いのよ、私達がささえてる業界』
・平田卓哉『続・女子大生とぶつからずに歩く法』
・河合伸子『寮生である私は、門限及び外泊にきびし〜い当学寮において、いくらなんでもみだらな男女交際などありえないと信じてました。しかし、恋人のできた今、法の網の目をくぐるなどたやすいことです』
・山崎泰生『女子大にも卓球部があります』
・長澤宏信『私のパパ、ヒトのパパ』
・角満雄『時価』
・神作由実子『親の|スネ《ヽヽ》が見たい』
・泉水大樹『歩く感嘆詞』
・井上浩輔『肩書までは脱がないわ』
・鈴木恵子『床ずれあり』
・毎熊伊佐男『こら! 男。くやしかったら「テーマ」になってみろ!』
・神子島龍太郎『そういうイメージ、キッチリ避任します』
・竹中雪子『凹ばかり責めないで凸も責めて欲しい!!』
・青木みどり『えっ!! もう……?』
・寺村厚子『わたし、ホンモノです』
・宇津智永子『想い出の中の寿』
・岸あきら『愛人になれるかどうか心配です』
・久野富佐博『野球選手が一番チョロイ』
・早見裕美『どろ沼』
・加藤明彦『チーズ風味のしょうゆ味、食べてみなはれ!』
・寺坂毅『合格通知の来た夜に、父がお守りくれました』
・印南浩一『花嫁修業』
・滝川順子『十八の春、桜散る。毎年いま頃になると、「ああ学校へ入りたい」と切望します』
・小畑裕伸『私の、み・ぎ・て……』
・吉川雅章『え! やっぱり』
・古里郁生『湯出て!!』
・平林秀一『プ、プロだねえ』
一家に一鉢、金魚鉢
・楠本和佳子『いなくなってもあまり心の痛まない、|儚《はかな》いペットです』
・岡みどりこ『とうさんも、昔は天才モナカ使いとおそれられたもんだよ』
・奥村円『忘れられないの〜あの人が好きよ〜赤いベベ着てさあ〜海を見てたわ〜』
・蔵方透『鯉に疲れたら』
・大谷秀範『風流の道を極めると、おのずと金魚鉢が欲しくなる』
・山腰哲也『お天気の話がとぎれたら、金魚の話でも』
・萱沼功『春近し、父は、コタツと交換に質屋へいそぐ』
・山田祐史『朝、糞柱が立っていたらその日は何かいいことがあるでしょう』
・大関宏之『とび出した金魚いわく、金魚鉢は丸かった』
・杉田章『歌舞伎町の金魚は、のぞくとのけぞる』
・藤堂悟『おとうさん金魚は、ピラニアとワニの水槽に、生まれた子金魚をつきおとす。ときどき自分もすべっておちる』
・西川真知子『金魚の住めるきれいな海をかえして!』
・澤田憲孝『金魚の卵は、カズノコより旨い』
・竹内卓二『田中角栄はきたないお金で鯉を飼っているが、僕はきれいなお金で金魚を飼っています』
・柳井桂司『目を醒ましたら、金魚にごちそうしてあげて下さい。一日一善』
・杉本英生『金魚×ピラニア=キンピラ 挑戦しませんか?』
・黒田隆之『うんこがつながっているうちに祈りなさい。そうすれば願いがかないます』
・玄蕃典子『金魚屋さんの転職先が気になりませんか?』
・原田尚孝『この辺りでうちの金魚見かけませんでした?』
・岡本尚志『やすらぎの午後、レモンティーに金魚をうかべて……』
・磯部恭広『ウチの金魚は、夜遊びのしすぎで、色が黒い』
・吉村由美子『キンギョ水の中を貨物船が通る』
・吉田秀隆『家庭内魚業と呼んでください』
・伊原義幸『この朱色が……この朱色がど〜〜してもだせん……』
・菊野弘次郎『僕のを君のに入れてみないか』
・飯田久『タマはアロエの葉をかじり、金魚を爪で引っかけます。1DKにも自然の掟が生きてます』
・松浦準『全冷中初代会長・山下洋輔氏は、冷し金魚鉢ラーメンを考案されました』
・田中誠一『変な連想しないで下さい。キンギョバチで』
・鶴見縫子『金魚が一ぴき、金魚が二ひき、金魚が三びき、金魚が四ひき、金魚が五ひき。ボクンチお金持ちだね、お母さん』
・ 大黒喜裕『D.Jは金魚。皿をまわすのは貴方』
・鮫島さとか『水いっぱいの金魚鉢なら、ホラ、わたくしも内包しております』
・川村和佳子『同棲しちゃおか。ね、金さん』
・藤岡禮子『なあんだ、パパ! 赤いベベ着た可愛い金魚ってこのおばさんのこと?』
・金子勝『「ゆかり、おれのおたまじゃくしかってくれないか」「だって鉢がないもん」』
・森口昭子『亭主を殺して金魚をかおう!! ホンネホンネ』
・勝野恵子『金魚を見ていたら、やっとトイレに行きたくなりました……』
・阿南一徳『金魚は痔によい』
・里見のぞみ『部屋を金魚だらけにしてみる。華やかさで目がくらみそうだ』
・斉木小太郎『「俺14匹のるぜ」「俺なんか37匹だぜ」』
週 刊 文 春
・鈴木孝『アドルフに告ぐ。私が編集長の白石勝である』
・厚地好昭『中身が出てくるまでもどかしい読むクリームパン』
・横山藤江『また地味な週刊誌にもどりました』
・木村彩子『部数は落ちても心は錦』
・森慎介『立場を離れていえば、私も好きです。――三浦』
・小野寺裕『「最近、買ったその場で目を通しては『また落ちた』と嘆く人が多いのよ」キオスクオバサンの告白でした』
・渡辺ミユキ『売りきれちゃうから朝買っていくと、友達がひったくってスケベなとこを読みます』
・伊藤道子『「週刊宝石」の編集部にいる夫はかくれ文春です』
・桜田正人『吉永小百合は文春でしか脱がない』
・石塚修『駅の売店に文春を買いにいったら、「特大号だから20円足りない」と言われた。僕がポケットに手を入れていると、「その20円、思う存分使いなさい」とおばさんは文春を渡してくれた』
・小川雅弘『萬流は週刊文春の乗っ取りを企てています。文春の社長には秘密です』
・前平芳久『家元、ついに脱ぐ』
・重村郁夫『好評につき、当分の間「週刊文春」は毎日発売します。文藝春秋』
・阿奈井文彦『短歌・俳句のページもございます』
・山本勇『おとうさん、静かに読んでる分にはいいですが、トイレでウンウンうならないでください』
・大西圭子『売店で“銃弾ください”と言ったら、おばさんが文春をさし出した』
・間宮克美『“東大合格者名一挙掲載”などという紙面の無駄づかいはしないぞ!!』
・金塚悦子『師も走る木曜日』
・早川順『パパ! ママが「|文春婦人の会《ヽヽヽヽヽヽ》」に入りたいんだって』
・小形康子『父さんが酔ったいきおいで週刊文春買ってきた』
・豊田智男『神様、糸井様、三浦様』
・青池桂子『祖母(76歳)は白ポチャ丸眼鏡のあの人を見ながら「いい男だねえ」とつぶやいた』
・小檜山耕二『ドンドンヒャララードンヒャララー。シューカンブンシュンモアシタハツバイデース』
・鈴木洋三『エーン、家が火事で、どうかこの「週刊文春」を二○○円で買って下さい』
・宮下精一郎『七週間天下』
・山崎善次郎『拾ったお金で文春を買った人を、花泥棒と呼んでやってください』
・丹羽仁『趣味も度が過ぎると実益になる』
・小平洋康『近所の奥さんがすべて話してくれるので買わないですみます』
・森元聡『つい定期購読にしてしまった私は誰? ここは何処?』
・後藤英夫『オ、オレにかまうな。は、はやく文春を買いに行け』
・佐々木博之『活字ピクピク』
・渋村直正『この世には、二種類の人間がいる。立ち読みする奴と買うバカだ』
・小鳥居布佐子『おれにもマワせ!』
・中原和子『今年の立教大学法学部社会人コースの小論文は「小林秀雄の批評精神について」であった』
・花田栄治『黙れ! 文春』
・上浪春海『電車の中で「ポスト」や「現代」を読んでる人、あれはみんなサクラですヨ』
・高松和也『苦労と文春は金を払ってでも買え』
・和田規男『「阿部は次長だ!!」「又おとーさん大きな声だしてる……」「ほっといておやり……」』
・東輝明『もだえ苦しむ萬流中毒者。疑惑はよそ事』
・杉浦光伸『一頁、一円』
・金子博『僕は文春しか読まない。しかし微笑の愛読者である彼女の望んでいることがよくわかる』
ロ ス 五 輪
・坂入試幸『三波豊和でございます』
・佐藤裕則『「出たい!!」日本卓球協会』
・嶋田哲治『いよいよ最終回』
・田澤潤『ホップ スワップ ジャンプ!』
・山崎美穂『オリンピックと集金人は、忘れた頃にやってくる』
・河井邦夫『トンビがタカをうむ』
・下村武司『ピクチャーサーチでカール・ルイスの100m走を見ると、とても速い』
・白崎良成『キャステラ一番、アケミは二番、三時のおやつはイカンガー』
・川本清彦『ロス五輪テーマソング、五月みどりの「おひまなら来てよね」に決まる』
・青木紹吉『テレビ中継のロスオリンピックよりも、小学校の運動会のほうが迫力がある。第一にナマだし、しかもウチの子が参加しちょる!』
・加藤征也『日本からロス・プリモス、ロス・インディオス、南米からトリオ・ロス・パンチョス、そして地元米国からダイアナ・ロスも参加します』
・合田秀樹『汗をかくのだったら、うちのとうちゃんもまけない』
・松田文雄『銀ちゃん! 金が銅した』
・神津文光『メタルの厚さを〇・五ミリ薄くするとともに、加工の工程を一部省略しコスト・ダウンに成功しました』
・金丸秀男『増田明美“本番”』
・平沼浩『白、黒、黄色、もっこり、ぱっくり楽しいな』
・岡田久子『ミーシャーカムバック!!』
・室橋弐子『ロスのマッチ売りの少女は聖火であたたまったので、無事生きのびました』
・杉田直樹『ロスの駆けだおれ』
・山腰英紀『ロス五輪名物――米ソ対抗原爆投げ合戦』
・宮下精一郎『また、切手が一種類ふえます』
・佐藤春芳『五輪の輪に、身を焼く団地』
・三沢勝『私は山崎浩子にしか興味はない』
・石橋孝彦『いいか。そんなにケチると、みんなからロス五輪といわれるぞ』
・池永渉『糸井重里様へ あなたもロス五輪公認コピーライターになりませんか。オリンピック委員会より』
・赤松正樹『すべて渦巻く』
・西原延彦『友好と平和のマスターベーション』
・村山三男『日本人なら大きな声で「ノー・モア・黒岩!!」』
・関口哲平『入れ墨の選手は出場できません』
・久野富佐博『選手も入場料がいる』
・斉藤宏明『空っぽにしたい、ハリウッドのお風呂』
・草野寛『ロスアンゼルス。朝のうんこ。選手の一日が始まる』
・倉沢尚宏『「もしもし、あの〜しげる君いますか?」「あっしげるは今ロスなんですけど……」』
・疋田貴子『ロスっ晴れ』
・川口雅世『20数年生きてますと、実のところオリンピックも飽きました』
・吉沢岩男『黒人泳がしてみろ』
・三浦秀夫『参加することに異議ありませんか』
・野口稍素子『選手村のデザートはみかんです』
・原千秋『アメリカ人って黒人のことを言うのね』
・平良誠『ギブ・ミー・メダル』
・広江真樹『より!! より!! より!!』
・山根慎一郎『オリンピックは4年に1度聞かれますが、僕の高校では4年に1度、東大生がでます』
・村田欽哉『けッ地下鉄もねぇくせに』
・高橋源一『岸部シロー型オリンピック』
・村岡智明『私は、東京オリンピックの記念切手(しかもシートで)を持っている』
・白崎良成『カール・ルイスは軽い|いす《ヽヽ》ではない』
マ ッ チ
・井村万喜雄『神出鬼没、マッチ売りのオジサン』
・田尻勝男『トイレ喫煙者のために……水洗便所で流せるマッチ新発売!』
・野田秀樹『地球上に存在する全てのマッチで人類が50回滅びます』
・片村直樹『自然発火するくらいの積極さがあっていいと思う』
・鈴木満里子『すったぐらいではつきません(消防署認定用マッチ)』
・北島猪次『地獄から生還した人の証言、「マッチがいちばん喜ばれた」』
・尾又進『近藤はマッチ愛用者だが、マッチはコンドーム愛用者かな?』
・スーザン・リー『原宿に行ってきた証拠』
・井上裕博『その昔、尼ケ崎の伯母はマッチ一箱で10日は食べていけた。という』
・小川ひろし『電話番号欄付』
・座間克己『毎度ありがとう……バーロ! マッチただでよこすんじゃネェーヨ』
・久保達哉『最近何が恐いって、ライターで花火する子供』
・後藤秋彦『そうだ、僕は残された時間を、マッチ売りの少女として、精一杯生きよう』
・具島猪一郎『煙草の本妻』
・小野完次『保健委員の|奉仕《だいごみ》(だった)』
・高島裕『終戦後すぐは、一本のマッチを三回は使いました』
・井上嗣実『こする、つつく、ほじくる、|凌辱《りようじよく》の3本立』
・梅川俊哉『たばねて使えば火力を調節できます』
・作田隆哉『去年、種子島へ行った時これと同じものを見かけた』
・高安英行『私、高校生の頃から集めだしまして、現在十五本程度のマッチ棒を所持しております』
・橋本健『ハルマゲドンには火と硫黄が降るそうだから、今のうちに、全部使ってしまいましょう』
・岡本巧『マッチをする男 日本名画コレクション』
・重村郁夫『確かにコロンブスは一生マッチを使わなかった。まだなかったからだ』
・溝口彰子『わたしたち、みんな、処女よ』
・浜田敏郎『星飛雄馬は、マッチで目を燃やしていた』
・遠藤克彦『ガス入り新発売』
・木下洋一『ボクはマッチの炎で簡単に欲情できる!』
・宮城絢子『あ、すると言わずに、あたると言って下さい』
・渡邊ひとみ『余談ですが、わたくしラブホテルのマッチをコレクションしております。ちなみに多い色ベスト3は、1位グリーン、2位ワインレッド、3位パープルでございます』
・坂本光世『はーい、リカよ。お電話ありがとう。リカのお家はね、マッチをくべて暖をとるのよ』
・田川浩『私達は「マッチ」もやっています』
・鈴木茂『顔面穴めぐり』
・冨田真一『マッチ一本を四分の一にして使ったら、何か得をした気分になった』
・伊藤愛子『どや、火ィつくやろ』
・前島昭臣『靖国神社でライターを使うんじゃねぇ!』
・池田学『ハナクソをほじくるのだけは、勘弁してくれ』
・長坂秀佳『寒い……いいんだよ』
・平林清江『元町(もっとマッチ)ブルース』
・杉田章『赤いのは開店マッチ。黒ずんでいるのはベテランマッチ』
・高井孝平『父です』
・田尻康高『「マッチ一本火事の元」……ひとつのコピーが|冤罪《えんざい》を生んだ』
・石澤一樹『元町ユニオンで売っているろうマッチはNOWい』
・萩原咲子『マッチ一本鼓膜やぶりの元』
ス リ ッ パ
・原崎敦子『3足千円をバカにした翌日、客が8人来た』
・桜井清雅子『本当の背丈がわかったゾ! ズボンの裾がたるんでるゥ』
・水谷和義『停電時でもすぐはける夜光スリッパ』
・佐藤正史『僕の田舎では、藁で編む』
・神谷正一『彼は「単なるルームメートだよ」って言うんです』
・森島桂子『テメェも男なら、スリッパはいたまま全力疾走してみな』
・斎仁『ボクは毎朝、10号室の幸子さんの温かみを感じつつ、シアワセな朝の行為を終える。若竹荘9号室住人』
・稲田章『それは革ぐつの軟骨』
・加藤明彦『ガウンを着てスリッパをはかないのはおかしいが、スリッパをはいてガウンを着ないのは決しておかしくない』
・小林一広『お部屋の中でも純白の靴下でいたい』
・田辺十紀『今度の彼は、赤いギンガム』
・三浦和子『靴をやめてスリッパにすれば、戦争はなくなる』
・藤原保夫『待ってくれ! 裸でもいい、スリッパだけは、はかせてくれ』
・蜂谷忠太郎『廊下の渡し』
・近藤彰宏『明日、いいことあーれ』
・松田正志『ぼくの田舎の山形では、冬には父親は出稼ぎに、母親はスリッパ工場に働きに行く』
・永須徹也『これまで、ゲタやセンヌキを使ったレスラーはいた。しかし、いまだにスリッパを使った有効な凶器攻撃はあみだされていない』
・菊池重二郎『私って、上履きと呼ばれてみたかったりするの』
・山井義治『君の“スリッパ姿”が見たい』
・伊藤邦夫『下駄屋にあって靴屋にない。この不思議さがたまらない』
・工藤睦衛『「W.C.」と印刷してあるのはよく見かけるが、「夫婦の寝室」とか「明るい茶の間」と印刷しているのは、いまだに見たことがない』
・友里裕介『男は女のスリッパの上から乳房をもてあそんだ……(高校受験は英文和訳で失敗した)』
・吉川峯子『私の父は「傷だらけの人生」を唄う時スリッパを耳に当てる癖がある』
・神田洋一郎『孫の自慢するナイキのスニーカーに対抗するオバーチャンのスリッパは内科と書いてある』
・滝川順子『江の電の江の島駅と腰越駅の間の線路ぎわに並んでいるくつ屋とげた屋は、どちらがスリッパを売るかで30年以上もめている』
・大塚康純『パコーン、いてッ』
・赤塚英信『熱心な塾生サンなら、ポストの前で赤恥をかいたこともあろうのう、番頭サン』
・村田清仁『スリッパよ!! 我が情念の、はるかな飛翔を支えよ』
・国分幹雄『千足重ねた。輪になった』
・戸倉直樹『しょせん私の人生なんか、スリッパの裏にガムとまみれる細い毛みたいなものでした』
・森下真一『小便したとき右のスリッパ濡らすやつをスーパーライトというんだぜ』
・中戸川聡『うちの主人、形とにおいにうるさいんです』
・山田有規子『裸足で履いてもすれないから好きっ!』
・半谷嘉津彦『スリッパがスリッパをはいてどこが悪い!』
・谷島喜久子『みなさまから御愛用されております』
・藤森光明『アンモニアが沁みると更に|美味《おい》しさを増します』
・田中武治『ゲゲゲの鬼太郎様一足お買い上げ』
・槇島恒彦『おれが主役になると水虫との関係が微妙になり、気がかりだ』
・大貫弘子『先生はヤブだけどスリッパがきれいです』
[#地付き]〈了〉
単行本
糸井重里の萬流コピー塾/昭和五十九年三月文藝春秋刊
糸井重里の萬流コピー塾 U.S.A/昭和五十九年九月文藝春秋刊
以上二点を再編集・改題
[#改ページ]
文春ウェブ文庫版
(ぶんこ版)
糸井重里の萬流コピー塾
二〇〇〇年十月二十日 第一版
二〇〇一年七月二十日 第三版
著 者 糸井重里
発行人 堀江礼一
発行所 株式会社文藝春秋
東京都千代田区紀尾井町三─二三
郵便番号 一〇二─八〇〇八
電話 03─3265─1211
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