霊界物語 第六二巻 山河草木 丑の巻
出口王仁三郎
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●テキスト中に現れる記号について
《》……ルビ
|……ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)天地|剖判《ぼうはん》の
[#]……入力者注
【】……傍点が振られている文字列
(例)【ヒ】は火なり
●シフトJISコードに無い文字は他の文字に置き換え、そのことをWebサイトに「相違点」として記した。
●底本
『霊界物語 第六十二巻』天声社
1971(昭和46)年10月08日 第二刷発行
※現代では差別的表現と見なされる箇所もあるが修正はせずにすべて底本通りにした。
※図表などのレイアウトは完全に再現できるわけではないので適宜変更した。
※詳細な凡例は次のウェブサイト内に掲載してある。
http://www.onisavulo.jp/
※作成者…『王仁三郎ドット・ジェイピー』
2006年11月16日作成
2008年06月23日修正
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●目次
|序歌《じよか》
|総説《そうせつ》
第一篇 |言海霊山《げんかいれいざん》
第一章 |神威《しんゐ》〔一五七六〕
第二章 |神柱《しんちう》〔一五七七〕
第三章 |神力《しんりき》〔一五七八〕
第四章 |神慈《しんじ》〔一五七九〕
第五章 |神世《しんせい》〔一五八〇〕
第二篇 |桶伏《おけふせ》の|山《やま》
第六章 |神栄《しんえい》〔一五八一〕
第七章 |神降《しんかう》〔一五八二〕
第八章 |神生《しんせい》〔一五八三〕
第九章 |神子《しんし》〔一五八四〕
第一〇章 |神宮《しんぐう》〔一五八五〕
第三篇 |四尾《よつを》の|嶺《みね》
第一一章 |神勲《しんくん》〔一五八六〕
第一二章 |神教《しんけう》〔一五八七〕
第一三章 |神祈《しんき》〔一五八八〕
第一四章 |神幸《しんかう》〔一五八九〕
第一五章 |神情《しんじやう》〔一五九〇〕
第四篇 |弥仙《みせん》の|峰《みね》
第一六章 |神息《しんそく》〔一五九一〕
第一七章 |神心《しんしん》〔一五九二〕
第一八章 |神園《しんゑん》〔一五九三〕
第一九章 |神水《しんすゐ》〔一五九四〕
第二〇章 |神香《しんかう》〔一五九五〕
第五篇 |金竜世界《きんりうせかい》
第二一章 |神悟《しんご》〔一五九六〕
第二二章 |神樹《しんじゆ》〔一五九七〕
第二三章 |神導《しんだう》〔一五九八〕
第二四章 |神瑞《しんずゐ》〔一五九九〕
第二五章 |神雲《しんうん》〔一六〇〇〕
第六篇 |聖地《せいち》の|花《はな》
第二六章 |神丘《しんきう》〔一六〇一〕
第二七章 |神習《しんしふ》〔一六〇二〕
第二八章 |神滝《しんろう》〔一六〇三〕
第二九章 |神洲《しんしう》〔一六〇四〕
第三〇章 |神座《しんざ》〔一六〇五〕
第三一章 |神閣《しんかく》〔一六〇六〕
第三二章 |神殿《しんでん》〔一六〇七〕
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|序歌《じよか》
一、|高砂《たかさご》(|謡曲《えうきよく》)
|磯輪垣《しわがき》の、|秀妻《ほづま》の|国《くに》に|打《う》ち|寄《よ》する、|浪《なみ》は|静《しづ》かに|泰平《たいへい》の、|鼓《つづみ》を|打《う》ち、|御代《みよ》も|治《をさ》まる|天津風《あまつかぜ》、いそ【ふく|神《かみ》】の|宝舟《たからぶね》、|栄《さか》えの|神《かみ》に|相生《あひおひ》の、|松《まつ》のみどりのうるはしけれ。かくも|尊《たふと》き|神国《かみくに》に、|住《す》める|御民《みたみ》ぞ|豊《ゆた》かなる、いづの|恵《めぐ》みぞありがたき いづの|恵《めぐ》みぞありがたき。
二、|玉《たま》の|井《ゐ》(|謡曲《えうきよく》)
|尽《つ》きせぬ|生命《いのち》の|真清水《ましみづ》は、いや|永久《とこしへ》に|湧《わ》き|出《い》でにけり。|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|汲《く》みて|知《し》る、|心《こころ》の|底《そこ》の|曇《くも》りなき、|月《つき》の|桂《かつら》の|澄《す》み|渡《わた》る、|瑞《みづ》の|光《ひかり》に|照《て》らされて、|連理《れんり》の|枝《えだ》の|影《かげ》きよく、あした|夕《ゆふ》べに|溢《あふ》れ|出《い》づる、|玉《たま》の|井《ゐ》の|深《ふか》き|契《ちぎり》ぞたのもしき |深《ふか》き|契《ちぎり》ぞたのもしき。
三、|老松《おいまつ》(|謡曲《えうきよく》)
|綾《あや》の|高天原《たかあまはら》に、その|名《な》も|清《きよ》く|老松《おいまつ》の、みどりの|色《いろ》の、あでやかさ、|汚《けが》れは|露白梅《つゆしらうめ》の、|花《はな》の|香《か》の、|千代《ちよ》にかをりて、|行末《ゆくすゑ》|永久《とは》に|神垣守《みかきもり》、|栄《さか》えの|園《その》に|楽《たの》もしく、|夜《よ》を|守《まも》るこそ|目出度《めでた》けれ。|五六七《みろく》の|御代《みよ》を|知食《しろしめ》す|皇大神《すめおほかみ》は、|爰《ここ》も|同《おな》じ|名《な》の、|天津御空《あまつみそら》の|高天原《たかあまはら》に、|楽《たの》しく|栄《さか》えて|紅《くれなゐ》の、|花《はな》も|常磐《ときは》の|松《まつ》も|諸共《もろとも》に、|万代《よろづよ》の|春《はる》とかや、|千代万代《ちよよろづよ》の|春《はる》とかや。
大正十二年五月十六日
|総説《そうせつ》
|歌《うた》の|枕《まくら》に
|夕暮《ゆふぐれ》の|空《そら》を|照《て》らして|望《もち》の|夜《よ》の
|月《つき》は|出《い》でたり|東《あづま》の|空《そら》に
|天土《あめつち》の|火水《かみ》の|恵《めぐ》みを|世《よ》の|人《ひと》に
|知《し》らさむための|瑞《みづ》の|言霊《ことたま》
スメールの|山《やま》の|尾《を》の|上《へ》に|鳴《な》き|渡《わた》る
こゑも|悲《かな》しきあはれ|時鳥《ときどり》
|三五《あななひ》の|月《つき》の|光《ひかり》の|影《かげ》さして
|生言霊《いくことたま》は|照《て》り|出《い》でにけり
|三千年《みちとせ》の|神《かみ》の|忍《しの》びをかしこみて
|称《たた》への|歌《うた》は|鳴《な》り|出《い》でにけり
大正十二年五月十五日
第一篇 |言海霊山《げんかいれいざん》
第一章 |神威《しんゐ》〔一五七六〕
第二五二
|刈菰《かりごも》の|乱《みだ》れはてたる|吾《わ》が|胸《むね》も
|神《かみ》の|言葉《ことば》にをさまりにけり
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|御声《みこゑ》は|大滝《おほたき》の
|響《ひび》くが|如《ごと》く|聞《き》こえ|来《く》るなり
|昼夜《ひるよる》の|別《わか》ちも|知《し》らに|皇神《すめかみ》の
|御稜威《みいづ》を|歌《うた》ふ|身《み》こそ|安《やす》けれ
|安《やす》らけく|御前《みまへ》に|申《まを》す|太祝辞《のりごと》は
|神《かみ》にささぐる|貢物《みつぎもの》なり
|永久《とこしへ》に|栄《さかえ》を|給《たま》ふ|瑞御魂《みづみたま》を
|四方《よも》の|国人《くにびと》|待《ま》ちあぐみ|居《を》り
|大前《おほまへ》に|仕《つか》へまつりて|吾《わ》が|罪《つみ》を
|夜昼《よるひる》なしに|清《きよ》めこそすれ
|身《み》の|幸《さち》を|神《かみ》の|御前《みまへ》に|祈《いの》りつつ
|今日《けふ》も|暮《く》れけり|明日《あす》も|暮《く》れゆく
|御試《みため》しに|遭《あ》ひて|打《う》ち|勝《か》つ|信徒《まめひと》と
ならしめたまへ|神《かみ》の|力《ちから》に
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|言葉《ことば》を|味《あぢ》はひて
|夜《よる》なき|国《くに》の|幸《さち》を|知《し》るかな
一〇
|日々《にちにち》の|法《のり》となすべき|御姿《みすがた》を
|罪《つみ》ある|身《み》にも|拝《をが》ませたまへ
一一
|永久《とこしへ》の|栄《さか》えに|充《み》てる|皇神《すめかみ》は
わが|身《み》を|守《まも》る|力《ちから》なりけり
第二五三
|天津日《あまつひ》の|神《かみ》の|光《ひかり》に|照《て》らされて
|夜《よる》なき|国《くに》に|進《すす》み|往《ゆ》かまし
|輝《かがや》ける|珍《うづ》の|大路《おほぢ》を|歩《あゆ》む|身《み》は
|罪《つみ》の|流《なが》れに|落《お》つる|事《こと》なし
|八重葎《やへむぐら》わが|往《ゆ》く|道《みち》を|塞《ふさ》ぐとも
|安《やす》く|通《かよ》はむ|神《かみ》の|任《ま》に|任《ま》に
|奥津城《おくつき》も|栄《さか》えの|門《かど》と|思《おも》ふまで
|恵《めぐ》ませたまへ|瑞《みづ》の|心《こころ》に
|村肝《むらきも》の|心《こころ》に|神《かみ》のましまさば
|常世《とこよ》の|闇《やみ》も|如何《いか》で|迷《まよ》はむ
第二五四
|仇人《あだびと》の|群《むら》がり|立《た》ちて|笑《わら》ふとも
|押《お》しわけ|往《ゆ》かむ|神《かみ》の|大路《おほぢ》を
|我《わが》|神《かみ》の|御前《みまへ》に|進《すす》み|跪《ひざまづ》き
|過《す》ぎにし|罪《つみ》を|悔《く》いて|捨《す》てばや
|罪《つみ》の|身《み》も|神《かみ》の|尊《たふと》きころも|手《で》に
|触《ふ》れて|安《やす》けくなりにけるかな
|如何《いか》ならむ|曲《まが》のわが|身《み》を|襲《おそ》ふとも
|動《うご》かざらまし|神《かみ》の|守《まも》りに
|数《かず》ならぬ|身《み》をも|捨《す》てさせたまはずに
|此上《こよ》なき|恵《めぐ》み|賜《たま》ふわが|更生主《きみ》
|我《わが》|神《かみ》の|為《ため》には|何《なに》か|惜《を》しむべき
|山《やま》も|畑《はたけ》も|珍《うづ》の|宝《たから》も
|大前《おほまへ》に|供《そな》へまつらむものもなし
ただ|赤心《まごころ》の|清《きよ》きのみなる
|砕《くだ》けたる|心《こころ》の|玉《たま》を|御幣《みてぐら》と
|供《そな》へまつらむ|神《かみ》の|御前《みまへ》に
第二五五
|皇神《すめかみ》は|昼《ひる》と|夜《よる》との|別《わか》ちなく
|恵《めぐ》みの|雨《あめ》を|降《ふ》らせたまひぬ
|世《よ》の|中《なか》の|楽《たの》しみばかり|求《もと》めたる
わが|身《み》は|実《げ》にも|愚《おろ》かなりけり
|苦《くる》しみも|厭《いと》はず|避《さ》けず|大道《おほみち》に
|麻柱《あなな》ひまつる|人《ひと》ぞ|尊《たふと》き
ふく|息《いき》も|幽《かす》かに|残《のこ》る|最後《いまは》にも
|恵《めぐ》ませたまふ|元《もと》つ|大神《おほかみ》
第二五六
|仇《あだ》|数多《あまた》|攻《せ》め|寄《よ》せ|来《く》とも|恐《おそ》れむや
|神《かみ》は|吾等《われら》と|共《とも》に|在《ゐ》ませば
|試《こころ》みに|遭《あ》ふも|憂《うれ》ひの|雨《あめ》|降《ふ》るも
|悔《く》やまず|怯《お》ぢず|神《かみ》に|任《まか》せよ
|闇《やみ》|深《ふか》く|嵐《あらし》|激《はげ》しく|吹《ふ》く|中《なか》も
|神《かみ》に|任《まか》せし|身《み》こそ|安《やす》けき
|世《よ》の|中《なか》の|聖《ひじり》の|道《みち》を|踏《ふ》み|越《こ》えて
|神《かみ》の|大路《おほぢ》に|進《すす》み|行《ゆ》かまし
わが|心《こころ》|救《すく》ひの|神《かみ》に|任《まか》す|上《うへ》は
|今《いま》も|神国《みくに》の|幸《さち》に|住《す》むなり
第二五七
|終《をは》りまで|赤心《まごころ》|籠《こ》めて|仕《つか》へまつる
|人《ひと》は|神代《かみよ》の|宝《たから》なりけり
|現世《うつしよ》の|戦《たたか》ひ|如何《いか》に|激《はげ》しとも
|御旗《みはた》の|下《もと》はいとど|安《やす》けし
|目《め》も|眩《くら》むばかり|輝《かがや》く|珍宝《うづたから》
|何《なに》かはあらむ|神《かみ》の|国《くに》には
|誘《いざな》ひの|醜《しこ》の|諸声《ももごゑ》|耳《みみ》にみちて
|眼《まなこ》|眩《くら》ます|人《ひと》ぞうたてき
わが|身魂《みたま》|試《こころ》むるもの|内外《うちそと》に
|伊寄《いよ》り|集《つど》ひぬ|守《まも》らせたまへ
いと|清《きよ》き|珍《うづ》の|御声《みこゑ》を|放《はな》ちつつ
|名利《めいり》の|嵐《あらし》を|薙《な》ぎたまひける
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|御心《みこころ》|移《うつ》しなば
|心《こころ》の|浪《なみ》は|忽《たちま》ち|凪《な》ぐべし
|大前《おほまへ》に|珍《うづ》の|僕《しもべ》と|仕《つか》へまつる
|司《つかさ》を|清《きよ》く|恵《めぐ》ませたまへ
|現世《うつしよ》にあらむかぎりは|麻柱《あななひ》の
|神《かみ》の|心《こころ》を|永久《とは》に|持《も》たまし
第二五八
|皇神《すめかみ》の|御稜威《みいづ》を|高《たか》くうたひつつ
|天津御国《あまつみくに》に|昇《のぼ》る|嬉《うれ》しさ
|厳御霊《いづみたま》|宣《の》らせたまへる|言《こと》の|葉《は》は
|闇世《やみよ》を|照《て》らす|光《ひかり》なるかも
|形《かたち》ある|宝《たから》に|心《こころ》|動《うご》かさず
|誠《まこと》|一《ひと》つに|進《すす》み|往《ゆ》け|御子《みこ》
|世《よ》のほまれ|如何《いか》に|広《ひろ》けく|照《て》れるとも
|神《かみ》の|国《くに》にはいとど|小《ちひ》さし
|奇《くし》びなる|愛《あい》の|光《ひかり》の|輝《かがや》ける
|御顔《みかほ》の|色《いろ》ぞ|実《げ》にもなつかし
|悲《かな》しみは|消《き》えて|憂《うれ》ひは|跡《あと》もなし
めぐみの|滴《したた》る|瑞《みづ》の|姿《すがた》に
|悩《なや》む|時《とき》|疲《つか》れし|折《を》りも|皇神《すめかみ》の
|愛《あい》の|御声《みこゑ》に|力《ちから》|得《え》にけり
|目《め》に|見《み》えぬ|元《もと》つ|神国《みくに》も|我《わが》|神《かみ》の
|恵《めぐ》みによりて|安《やす》く|昇《のぼ》らむ
第二五九
|生死《いきしに》は|皆《みな》|皇神《すめかみ》の|御心《みこころ》ぞ
|唯《ただ》|何事《なにごと》も|神《かみ》に|倣《なら》へよ
|我《わが》|神《かみ》の|御為《みため》になれば|富《とみ》も|智慧《ちゑ》も
|力《ちから》も|位《くらゐ》も|捧《ささげ》まつらむ
|神《かみ》のため|憂《うれ》ひ|悩《なや》みも|怖《おそ》れずに
|進《すす》み|往《ゆ》く|身《み》ぞ|国《くに》の|御宝《みたから》
|神《かみ》のため|千座《ちくら》を|負《お》ひて|勇《いさ》み|立《た》ち
|喜《よろこ》び|行《ゆ》かむ|山《やま》の|奥《おく》まで
第二六〇
|綾錦《あやにしき》|神《かみ》の|都《みやこ》に|上《のぼ》り|往《ゆ》く
|旅《たび》にしあれば|頼《たの》もしきかな
|御教《みをしへ》の|友《とも》と|手《て》を|引《ひ》き|遠方《をちかた》の
|綾部《あやべ》をさして|行《ゆ》くぞ|嬉《うれ》しき
|円山《まるやま》の|緑《みどり》|滴《したた》る|斎場《ゆには》こそ
|神《かみ》の|在《ま》します|御園《みその》なりけり
これやこの|知《し》るも|知《し》らぬも|押《お》し|並《な》べて
|笑《ゑ》みこぼれつつ|御園《みその》に|集《つど》へる
|世《よ》の|中《なか》の|総《すべ》てを|捨《す》てて|皇神《すめかみ》の
|教《のり》に|従《したが》ふ|人《ひと》ぞたふとき
第二六一
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|神柱《みはしら》は
|御禊《みそぎ》の|業《わざ》を|初《はじ》めたまひぬ
|御心《みこころ》に|背《そむ》きまつりし|人草《ひとぐさ》も
|等《ひと》しく|愛《あい》の|御声《みこゑ》|聞《き》くなり
|永久《とことは》に|罪《つみ》より|清《きよ》め|御恵《みめぐ》みの
|滴《したた》る|園《その》に|導《みちび》きたまへ
|永久《とこしへ》に|輝《かがや》き|渡《わた》る|御栄《みさか》えは
|旭《あさひ》の|昇《のぼ》る|如《ごと》くにおはせり
(大正一二・五・九 旧三・二四 於教主殿 明子録)
第二章 |神柱《しんちう》〔一五七七〕
第二六二
わがために|千座《ちくら》を|負《お》ひし|神柱《みはしら》を
|知《し》らぬ|顔《かほ》にて|世《よ》にあるべきや
|御教《みをしへ》に|叶《かな》ひし|御子《みこ》の|幸《さち》はひは
いかに|楽《たの》しき|生涯《すぐせ》なるらむ
|悦《よろこ》びて|千座《ちくら》を|負《お》ひつつ|道《みち》の|為《ため》
|死《し》に|至《いた》るまで|仕《つか》へまつらな
|御栄光《みさかえ》の|珍《うづ》の|冠《かむり》は|千座《ちくら》|負《お》ふ
|人《ひと》の|頭《かしら》に|被《かぶ》せ|玉《たま》はむ
第二六三
|世《よ》の|栄誉《ほまれ》|空《むな》しき|希望《のぞみ》|何《なに》かあらむ
|神《かみ》の|栄光《さかえ》に|比《くら》べて|見《み》れば
わが|命《いのち》|道《みち》の|為《ため》には|棄《す》つるとも
いかで|惜《を》しまむ|神《かみ》います|国《くに》よ
|現世《うつしよ》の|楽《たの》しみ|栄《さか》え|悉《ことごと》く
|神《かみ》に|捧《ささ》げて|仕《つか》へ|奉《まつ》らな
|天津国《あまつくに》のつきぬ|楽《たの》しみを|身《み》に|受《う》けて
|永久《とは》に|栄《さか》ゆる|魂《たま》となるべき
|恵《めぐ》みより|栄光《さかえ》に|進《すす》み|上《のぼ》り|行《ゆ》く
|天津御国《あまつみくに》は|楽《たの》しかるらむ
|変《かは》り|行《ゆ》く|世《よ》に|生《うま》れ|来《き》て|皇神《すめかみ》の
|恵《めぐ》みに|浸《ひた》るは|嬉《うれ》しからずや
第二六四
わが|魂《たま》を|洗《あら》ひ|清《きよ》めて|永久《とこしへ》の
|恵《めぐ》みをたまへ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
わが|月日《つきひ》わが|所有物《もちもの》も|悉《ことごと》く
つかはせ|玉《たま》へ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
わが|歩《あゆ》み|神《かみ》の|御後《みあと》を|慕《した》ひつつ
|夜《よる》なき|国《くに》に|進《すす》む|嬉《うれ》しさ
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|力《ちから》に|頼《たよ》りつつ
|悪魔《あくま》の|猛《たけ》る|道《みち》を|別《わ》け|行《ゆ》く
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みを|謳《うた》ふわが|舌《した》は
|天《あま》の|瓊矛《ぬぼこ》の|剣《つるぎ》なりけり
わが|口《くち》に|清《きよ》き|言葉《ことば》の|訪《おとづ》れを
|溢《あふ》るるばかり|充《み》たさせ|玉《たま》へ
|世《よ》の|宝《たから》|皆《みな》|皇神《すめかみ》に|奉《たてまつ》り
|魂《たま》をあづけて|御世《みよ》を|送《おく》らむ
わが|心《こころ》|神《かみ》の|宝座《みくら》と|選《えら》みまして
いや|永久《とこしへ》に|鎮《しづ》まりませよ
第二六五
|雪《ゆき》よりも|白《しろ》く|清《きよ》けく|研《みが》きませ
|神《かみ》の|宮居《みやゐ》のわが|魂《たましひ》を
|諸々《もろもろ》の|仇《あだ》を|退《やら》ひてわが|魂《たま》を
|神《かみ》の|宮居《みやゐ》となさしめ|玉《たま》へ
|伏《ふ》して|願《ね》ぎ|起《お》きては|祈《いの》る|真心《まごころ》を
|諾《うべな》ひたまへ|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
|許々多久《ここたく》の|罪《つみ》を|清《きよ》めてわが|魂《たま》を
いや|新《あたら》しき|宮《みや》となしませ
第二六六
|皇神《すめかみ》は|生命《いのち》のもとにましませば
|吾等《われら》は|永久《とは》に|生《い》きて|栄《さか》えむ
|皇神《すめかみ》の|御許《みもと》|離《はな》れて|現世《うつしよ》に
|立働《たちはたら》くも|御心《みこころ》なるべき
|身《み》も|魂《たま》も|捧《ささ》げまつりて|道《みち》のため
|世人《よびと》のために|犠牲《いけにへ》となれ
第二六七
|世《よ》の|中《なか》の|波《なみ》は|騒《さわ》げど|御恵《みめぐ》みの
|声《こゑ》は|静《しづ》かに|治《をさ》まりて|聞《き》こゆ
|家族《うから》|親族《やから》すべてを|捨《す》てて|御後方《みしりへ》に
とく|従《したが》ひぬ|神《かみ》のまにまに
|朝夕《あさゆふ》の|起臥《おきふし》さへも|御恵《みめぐ》みの
|神《かみ》の|御声《みこゑ》は|豊《ゆた》かに|聞《き》こゆる
|限《かぎ》りある|果敢《はか》なき|此《この》|世《よ》の|富《とみ》を|棄《す》てて
|生命《いのち》のもとの|神《かみ》に|従《したが》へ
|瑞御魂《みづみたま》|宣《の》らす|言霊《ことたま》|喜《よろこ》びて
|声《こゑ》のまにまに|進《すす》み|行《ゆ》くなり
第二六八
|真心《まごころ》を|籠《こ》めし|祈言《のりごと》|短《みじか》くも
|恵《めぐ》みの|神《かみ》は|聞召《きこしめ》すらむ
|朝夕《あさゆふ》に|御前《みまへ》に|祈《いの》り|業《げふ》をなせば
いと|安《やす》らけく|進《すす》み|行《ゆ》くべし
|曲《まが》りたる|人《ひと》は|何《なん》とも|言《い》はば|言《い》へ
わが|真心《まごころ》は|神《かみ》のみぞ|知《し》る
第二六九
|人《ひと》の|子《こ》の|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|守《まも》るべき
|勤《つと》めは|神《かみ》に|従《したが》ふにあり
|天地《あめつち》の|道《みち》に|叶《かな》ひて|皇神《すめかみ》の
|厳《いづ》の|御楯《みたて》となるが|嬉《うれ》しき
|世《よ》のために|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|勤《いそ》しみて
|御旨《みむね》|伝《つた》ふる|人《ひと》は|神《かみ》なり
|何事《なにごと》も|元津御神《もとつみかみ》の|御名《みな》によりて
|祈《いの》る|言葉《ことば》に|仇花《あだばな》はなし
|世《よ》の|審判《さばき》|近《ちか》づくとても|恐《おそ》れむや
|神《かみ》の|大道《おほぢ》を|歩《あゆ》む|身《み》なれば
第二七〇
わが|身魂《みたま》|慰《なぐ》さめ|照《て》らすものあらじ
ただ|皇神《すめかみ》の|御声《みこゑ》のみなり
われは|今《いま》|瑞《みづ》の|御魂《みたま》と|倶《とも》にあり
|如何《いか》なる|枉《まが》も|襲《おそ》ふべきかは
いと|清《きよ》き|神《かみ》の|光《ひかり》に|照《て》らされて
|輝《かがや》きわたる|人《ひと》は|聖止《ひと》なり
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御魂《みたま》の|御心《みこころ》に
|叶《かな》ふ|人《ひと》こそ|人《ひと》の|聖止《ひと》なり
第二七一
|千万《ちよろづ》の|仇《あだ》は|絶《た》えせず|襲《おそ》ひ|来《こ》む
|厳《きび》しく|守《まも》れ|神《かみ》の|大道《おほぢ》を
|世《よ》の|中《なか》の|戦《たたか》ひ|休《やす》む|時《とき》もなし
|神《かみ》に|祈《いの》りて|安《やす》く|栄《さか》えよ
|枉神《まがかみ》の|戦《いくさ》に|勝《か》てば|弥益《いやます》も
こころ|固《かた》めて|夢《ゆめ》な|撓《たゆ》みそ
|天津国《あまつくに》|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》に|進《すす》むまで
|勇《いさ》み|戦《たたか》へ|言霊《ことたま》をもて
(大正一二・五・九 旧三・二四 隆光録)
第三章 |神力《しんりき》〔一五七八〕
第二七二
|皇神《すめかみ》の|教《のり》のちからに|霊魂《たましひ》を
|強《つよ》めて|曲《まが》のとりでにせまれ
|曲神《まがかみ》の|世《よ》にある|限《かぎ》り|言霊《ことたま》の
いくさは|止《や》まじ|勇《いさ》み|進《すす》めよ
|皇神《すめかみ》のいづのちからに|頼《たよ》りなば
まがつ|戦《いくさ》もなにか|有《あ》らむや
たたかひの|長《なが》きを|悔《く》やむ|事《こと》なかれ
かちどき|挙《あ》ぐる|時《とき》は|迫《せま》りぬ
|曲神《まがかみ》の|力《ちから》|加《くは》はり|来《き》たる|時《とき》
|神《かみ》の|力《ちから》はいや|増《まさ》り|行《ゆ》く
|神国《かみくに》の|厳《いづ》のつはものいざ|進《すす》め
|生言霊《いくことたま》の|楯《たて》をかざして
第二七三
|浅《あさ》き|瀬《せ》は|醜《しこ》のあら|浪《なみ》|高《たか》けれど
|深《ふか》き|流《なが》れは|水音《みなおと》も|無《な》し
|御救《みすく》ひの|舟《ふね》に|棹《さを》さし|辷《すべ》りゆく
|大海原《おほうなばら》の|波《なみ》の|静《しづ》けさ
たらちねの|母《はは》のみどり|子《ご》|安《やす》らかに
ねむらす|如《ごと》く|治《をさ》めますかも
|舟人《ふなびと》の|声《こゑ》も|静《しづ》かに|聞《き》こゆなり
いざすすみゆけ|救《すく》ひの|船《ふね》に
みさかえの|珍《うづ》の|港《みなと》も|近《ちか》づきぬ
|神《かみ》のまにまに|御船《みふね》|漕《こ》ぎゆく
|瑞御魂《みづみたま》|救《すく》ひの|舟《ふね》とあらはれて
|浪《なみ》に|漂《ただよ》ふ|世人《よびと》を|助《たす》くる
第二七四
|恐《おそ》れずに|進《すす》め|言霊神軍《ことたまみいくさ》よ
|十曜《とえう》の|御旗《みはた》|高《たか》くひるがへる
|言霊《ことたま》の|軍《いくさ》の|声《こゑ》に|戦《をのの》きて
|雲《くも》を|霞《かすみ》と|敵《あだ》は|逃《に》げ|往《ゆ》く
|神軍《みいくさ》の|勲《いさを》を|称《たた》ふその|声《こゑ》は
|黄泉《よみ》の|礎《いしずゑ》|揺《ゆ》り|動《うご》かさむ
|言霊《ことたま》のみやび|言葉《ことば》を|打《う》ち|出《だ》して
|仇《あだ》の|砦《とりで》に|進《すす》み|往《ゆ》かまし
たとへ|身《み》は|滅《ほろ》び|失《う》すとも|皇神《すめかみ》の
みくには|永久《とは》に|滅《ほろ》ぶ|事《こと》なし
|黄泉国《よもつくに》|醜《しこ》の|力《ちから》も|消《き》えて|往《ゆ》く
|生言霊《いくことたま》の|勇《いさ》ましきかな
|天使《あまつかひ》|世人《よびと》と|共《とも》に|皇神《すめかみ》の
|勲《いさを》|称《たた》ふる|時《とき》は|来《き》にけり
第二七五
|皇神《すめかみ》の|御旨《みむね》|畏《かしこ》み|進《すす》む|身《み》は
|醜《しこ》の|曲霊《まがひ》も|何《なに》か|怖《おそ》れむ
|言霊《ことたま》の|太刀《たち》|取《と》り|佩《は》きて|寄《よ》せ|来《き》たる
|仇《あだ》を|言向《ことむ》け|和《やは》せ|神人《かみびと》
|醜《しこ》の|仇《あだ》|放《はな》たばはなて|征矢《そや》のたま
われにも|神《かみ》の|楯《たて》はありけり
|仇浪《あだなみ》の|醜《しこ》の|企《たく》みも|何《なに》かあらむ
|神《かみ》の|守《まも》りのしげき|身《み》なれば
|戦《たたかひ》のその|度毎《たびごと》にわが|力《ちから》
|神《かみ》の|恵《めぐ》みにいや|勝《まさ》り|行《ゆ》く
|瑞御霊《みづみたま》|表《おもて》に|輝《かがや》きたまひつつ
|世《よ》を|治《をさ》めます|日《ひ》は|近《つか》づきぬ
第二七六
|立《た》てよ|奮《ふる》へよ|三五《あななひ》の  |神《かみ》のよさしの|神軍《みいくさ》よ
|十曜《とえう》の|御旗《みはた》|翻《ひるがへ》し  |総《すべ》ての|仇《あだ》を|言向《ことむ》けて
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|四方《よも》の|国《くに》  |輝《かがや》かすまで|進《すす》み|往《ゆ》け
|皇大神《すめおほかみ》は|神軍《みいくさ》を  |数多《あまた》|率《ひ》きつれ|大空《おほぞら》の
|雲《くも》|掻《か》き|別《わ》けて|下《くだ》ります  |醜《しこ》の|悪魔《あくま》はいや|猛《たけ》く
|押《お》し|寄《よ》せ|来《き》たる|事《こと》あるも  |何《なに》か|怖《おそ》れむ|三五《あななひ》の
|誠《まこと》の|道《みち》の|宣伝使《せんでんし》
|立《た》てよ|言霊神軍《ことたまみいくさ》よ  |厳《いづ》の|御霊《みたま》を|経《たて》となし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》を|緯《ぬき》となし  |錦《にしき》の|御旗《みはた》を|織《お》りながら
|仁慈《じんじ》の|鎧《よろひ》を|身《み》にまとひ  |智慧《ちゑ》の|剣《つるぎ》を|打《う》ちかざし
|各自《おのも》おのもの|職分《もちまへ》と  |身《み》も|棚知《たなし》らに|進《すす》むべし
|神《かみ》の|御軍《みいくさ》やうやくに  |終《をは》りを|告《つ》げて|勝鬨《かちどき》の
|声《こゑ》は|天地《てんち》に|揺《ゆ》らぐなり  |永久《とは》の|生命《いのち》の|冠《かむり》をば
|受《う》けて|栄《さか》えの|神柱《かむばしら》  |経《たて》と|緯《よこ》との|経綸《けいりん》に
|励《いそ》しみまつれ|信徒《まめひと》よ  |神《かみ》は|汝《なんぢ》と|倶《とも》にあり
|人《ひと》は|神《かみ》の|子《こ》|神《かみ》の|宮《みや》
第二七七
|曲津霊《まがつひ》を|言向《ことむ》け|和《やは》す|神軍《みいくさ》の
|錦《にしき》の|御旗《みはた》に|従《したが》ひ|進《すす》め
|世《よ》のそしり|醜《しこ》の|妨《さまた》げ|厭《いと》はずに
|進《すす》むは|神《かみ》の|御旨《みむね》に|叶《かな》へる
|千万《ちよろづ》のあざみ|妨《さまた》げ|身《み》にうけて
|怯《お》ぢず|撓《たゆ》まず|進《すす》め|神人《かみびと》
|太刀剣《たちつるぎ》|火水《ひみづ》の|中《なか》も|厭《いと》はざらむ
|世《よ》のため|神《かみ》の|御為《みため》なりせば
|男女《をのこをみな》|老《おい》と|若《わか》きの|隔《へだ》てなく
|神《かみ》の|軍《いくさ》に|行《ゆ》くは|雄々《をを》しき
|黄泉《よみ》の|国《くに》|払《はら》ひくだきて|神国《かみくに》に
|開《ひら》かせたまふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|皇神《すめかみ》の|使《つか》はせたまふ|御軍《みいくさ》の
|尊《たふと》き|群《むれ》に|入《い》るが|嬉《うれ》しき
第二七八
|言霊《ことたま》の|軍《いくさ》の|主《きみ》は|瑞御霊《みづみたま》
|醜《しこ》の|曲霊《まがひ》も|清《きよ》められ|行《ゆ》く
|神軍《みいくさ》の|列《つら》に|加《くは》はり|血《ち》の|海《うみ》を
いやさきがけて|進《すす》み|行《ゆ》かまし
|如何《いか》にしてわが|身《み》|一人《ひとり》が|花《はな》の|園《その》に
|嬉《うれ》しき|夢《ゆめ》を|辿《たど》るべしやは
|目《ま》のあたり|醜《しこ》の|仇神《あだがみ》|潮《しほ》の|如《ごと》く
|寄《よ》せ|来《く》る|見《み》れば|心《こころ》|勇《いさ》みぬ
|大御旗《おほみはた》|空《そら》にかざして|戦《たたか》はむ
|生言霊《いくことたま》になびかぬ|仇《あだ》なし
|弥栄《いやさか》に|栄《さか》ゆる|御代《みよ》は|近《ちか》づきぬ
|我《わが》|日《ひ》の|御子《みこ》の|厳《いづ》の|光《ひかり》に
第二七九
|村肝《むらきも》の|心《こころ》をののき|惑《まど》ふときも
|勇《いさ》ませたまふ|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
わが|為《ため》に|天津神国《あまつみくに》に|祈《いの》ります
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|恵《めぐ》みかしこし
|形《かたち》ある|宝《たから》に|眼《まなこ》|奪《うば》はれて
|知《し》らず|知《し》らずに|黄泉《よみ》に|落《お》ち|往《ゆ》く
|素盞嗚《すさのを》の|神《かみ》の|負《お》ひます|八千座《やちくら》は
|世人《よびと》の|罪《つみ》のあがなひと|知《し》れ
|遣瀬《やるせ》なき|諸《もも》の|悲《かな》しみ|悩《なや》みをも
|払《はら》はせたまふ|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
|皇神《すめかみ》の|秘《ひそ》めたまへる|慈愛《いつくしみ》
|現《あら》はしたまふ|世《よ》は|近《ちか》づきぬ
|現身《うつそみ》の|塵《ちり》|打《う》ち|払《はら》ひ|御恵《みめぐ》みの
|冠《かむり》をたまふ|三五《あななひ》の|神《かみ》
|許々多久《ここたく》の|悩《なや》みに|勝《か》ちて|永久《とこしへ》の
|春《はる》ばかりなる|神国《みくに》へ|行《ゆ》かむ
第二八〇
|城《しろ》|高《たか》く|堀《ほり》|深《ふか》くとも|仇人《あだびと》の
|拠《よ》れる|砦《とりで》は|恐《おそ》るるに|足《た》らず
|弥高《いやたか》き|城《しろ》も|軍《いくさ》も|皇神《すめかみ》の
|伊吹《いぶき》の|狭霧《さぎり》に|水泡《あわ》と|消《き》え|往《ゆ》かむ
|怖《おそ》るべき|仇《あだ》は|世人《よびと》の|目《め》に|見《み》えず
|攻《せ》めも|来《き》たらず|囲《かこ》みもなさず
|恐《おそ》るべき|誠《まこと》の|仇《あだ》は|心《こころ》なり
|鬼《おに》の|潜《ひそ》みて|時期《をり》を|窺《うかが》ふ
わが|胸《むね》に|潜《ひそ》める|仇《あだ》は|三五《あななひ》の
|御霊《みたま》の|剣《つるぎ》に|刺《さ》し|徹《とほ》してむ
|生霊《いくたま》の|珍《うづ》の|剣《つるぎ》に|怯《お》ぢ|怖《おそ》れ
|心《こころ》の|仇《あだ》は|滅《ほろ》び|失《う》せけり
|皇神《すめかみ》は|軍《いくさ》の|主《きみ》にましませば
おそるることなく|進《すす》み|戦《たたか》へ
|内外《うちそと》の|仇《あだ》|悉《ことごと》く|平《たひ》らげて
|更生主《きみ》の|御前《みまへ》に|勝鬨《かちどき》あげよ
第二八一
|神《かみ》の|子《こ》よ|神《かみ》の|御声《みこゑ》に|目《め》を|醒《さ》ませ
|世《よ》の|終《をは》るとき|近《ちか》づき|来《き》たれり
|永久《とこしへ》の|生命《いのち》の|綱《つな》は|御空《みそら》より
|神《かみ》のまにまに|降《くだ》り|来《き》にけり
|諸人《もろびと》よ|神《かみ》の|御声《みこゑ》を|謹《つつし》みて
|生言霊《いくことたま》の|御綱《みつな》に|縋《すが》れ
|早《はや》|来《こ》よと|綾《あや》の|高天原《たかま》に|現《あら》はれて
|招《まね》かせたまひぬ|生命《いのち》の|神《かみ》は
|皇神《すめかみ》の|栄《さか》え|輝《かがや》き|現世《うつしよ》に
|又比《またくら》ぶべきものなかるべし
|現世《うつしよ》にときめき|渡《わた》る|人《ひと》の|名《な》も
|神《かみ》の|国《くに》にはいとど|小《ちひ》さき
|瑞御霊《みづみたま》|招《まね》かせたまふ|玉《たま》の|声《こゑ》を
しるべに|走《はし》れ|神《かみ》の|都《みやこ》へ
ミロクの|代《よ》|開《ひら》け|初《そ》めたる|暁《あかつき》は
|神《かみ》の|力《ちから》を|称《たた》へぬはなし
(大正一二・五・一〇 旧三・二五 於教主殿 明子録)
第四章 |神慈《しんじ》〔一五七九〕
第二八二
|由良《ゆら》の|河瀬《かはせ》の|音《おと》|高《たか》く  |枕《まくら》に|響《ひび》く|並松《なみまつ》の
|松雲閣《しよううんかく》の|離《はな》れの|間《ま》  |横《よこ》に|臥《ふ》しつつ|敷島《しきしま》の
|煙《けぶり》にうさを|散《さん》じつつ  |山河草木《さんかさうもく》|己丑《つちのとうし》の
|巻物語《まきものがたり》はじめゆく
|新緑《しんりよく》|滴《したた》る|初夏《しよか》の|候《こう》  |川《かは》の|流《ながれ》を|聞《き》きながら
|猫《ねこ》の|産《さん》した|話《はなし》なぞ  |面白《おもしろ》|可笑《をか》しく|聞《きき》ながら
|鼻《はな》の|尖《とが》つた|北村氏《きたむらし》  |竿竹姫《さをだけひめ》と|諸共《もろとも》に
|讃美歌《さんびか》もどきの|雑歌《ざつうた》を  あらあらここに|詠《よ》み|出《い》でぬ
ほのかに|聞《き》こゆる|水《みづ》の|音《おと》  |並松《なみまつ》|通《かよ》ふ|車《くるま》の|響《ひびき》
|赤児《あかご》の|泣声《なきごゑ》|聞《き》きながら  |猫《ねこ》の|鳴《な》き|音《ね》と|怪《あや》しみつ
|南枕《みなみまくら》に|西《にし》|向《む》いて  いやいやながら|述《の》べて|行《ゆ》く
|筆《ふで》を|含《ふく》みし|麦畑《むぎばたけ》  |菜種子《なたね》の|花《はな》も|彼方此方《あちこち》に
|黄金《こがね》の|色《いろ》をかざしつつ  いとも|静《しづ》かに|夏《なつ》の|日《ひ》を
|迎《むか》へゐるこそ|床《ゆか》しけれ  |流《なが》れも|清《きよ》き|小雲川《こくもがは》
|流《なが》れの|音《おと》の|轟々《がうがう》と  |世《よ》に|響《ひび》くなる|言霊《ことたま》の
|三十一文字《みそひともじ》の|物語《ものがたり》  |筆《ふで》にとどめて|後《のち》の|世《よ》の
ためしと|茲《ここ》に|述《の》べておく
第二八三
|日《ひ》は|西《にし》に|傾《かたむ》きそめて|醜神《しこがみ》の
|伊猛《いたけ》り|狂《くる》ふ|世《よ》とはなりぬる
|常世《とこよ》|行《ゆ》く|暗《やみ》を|晴《は》らして|昇《のぼ》ります
|月《つき》こそ|神《かみ》の|守《まもり》なりけり
|振《ふる》ひ|立《た》つ|枉《まが》も|御空《みそら》の|月影《つきかげ》に
|所《ところ》|得《え》ずして|逃《に》げ|失《う》せにけり
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|御守《みまもり》に
|魔《ま》の|棲《す》む|世《よ》にも|心《こころ》|安《やす》かり
|皇神《すめかみ》の|大御恵《おほみめぐ》みを|世《よ》に|伝《つた》へ
|御名《みな》を|現《あら》はす|人《ひと》となりたき
|苦《くる》しみの|中《なか》にも|永久《とは》の|希望《のぞみ》あり
いかに|幸《さち》あるわが|身《み》ならずや
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|御旨《みむね》に|叶《かな》ひなば
|御国《みくに》の|門《かど》は|独《ひと》り|開《ひら》かむ
第二八四
|伊都《いづ》の|御霊《みたま》や|美都御霊《みづみたま》  |玉《たま》の|御声《みこゑ》は|爽《さわや》かに
|天津空《あまつそら》より|聞《き》こえ|来《き》ぬ  アア|諸人《もろびと》よ|諸人《もろびと》よ
|耳《みみ》をすませて|逸早《いちはや》く  |神《かみ》の|吹《ふ》きます|角笛《つのぶえ》の
|御許《みもと》に|勇《いさ》み|寄《よ》り|集《つど》へ  |神《かみ》は|愛《あい》なり|力《ちから》なり
|海山《うみやま》|隔《へだ》てし|遠方《をちかた》の  |異国人《とつくにびと》に|御恵《みめぐ》みの
|訪《おとづ》れ|伝《つた》へ|得《え》ずとても  せめては|間近《まぢか》き|住人《すみびと》に
|神《かみ》の|御教《みのり》を|宣《の》べ|伝《つた》へ  |安《やす》けき|国《くに》に|導《みちび》きて
|錦《にしき》の|機《はた》の|神業《かむわざ》に  |一人《ひとり》も|多《おほ》く|仕《つか》ふべく
|諭《さと》させ|玉《たま》へ|惟神《かむながら》  |御前《みまへ》に|畏《かしこ》み|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|宣《の》り|玉《たま》ふ  |力《ちから》のこもりし|言《こと》の|葉《は》は
|語《かた》り|得《え》ずとも|村肝《むらきも》の  |心《こころ》の|限《かぎ》り|身《み》を|尽《つく》し
|仁慈《じんじ》の|神《かみ》の|御心《みこころ》を  |洽《あまね》く|世人《よびと》に|布《し》き|教《をし》へ
|神《かみ》の|御楯《みたて》と|逸早《いちはや》く  ならしめ|玉《たま》へと|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
|雲井《くもゐ》に|高《たか》く|住《す》む|人《ひと》や  |鄙《ひな》に|住《す》まへる|人々《ひとびと》に
|珍《うづ》の|教《をしへ》を|詳細《まつぶさ》に  |諭《さと》させ|玉《たま》へと|朝夕《あさゆふ》に
|祈《いの》りをこらす|神司《かむつかさ》  |卑《いや》しき|伏屋《ふせや》に|身《み》を|起《おこ》し
|女童《をみなわらべ》に|至《いた》るまで  |悟《さと》り|安《やす》きを|旨《むね》となし
|卑近《ひきん》な|言葉《ことば》を|相並《あひなら》べ  |厳《いづ》の|言霊《ことたま》|打《う》ち|出《だ》して
|救《すく》ひの|栞《しをり》となし|玉《たま》ふ  |教祖《をしへみおや》の|御功績《みいさを》は
|天地《てんち》に|並《なら》ぶものもなし  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|厳《いづ》の|御魂《みたま》の|尊《たふと》さよ  |為《な》す|業《わざ》なしと|世《よ》の|業《わざ》を
|怠《をこた》り|仇《あだ》に|日《ひ》を|暮《くら》す  |人《ひと》は|此《この》|世《よ》の|曲津神《まがつかみ》
|眼《まなこ》を|覚《さ》まし|省《かへり》みよ  |曇《くも》り|果《は》てたる|世《よ》の|人《ひと》の
|身魂《みたま》は|亡《ほろ》びに|近《ちか》づけり  |神《かみ》の|教《をしへ》を|畏《かしこ》みて
|四方《よも》にさまよふ|同胞《はらから》に  |神《かみ》の|救《すく》ひの|御声《おんこゑ》を
|宣《の》べ|伝《つた》へつつ|神《かみ》の|子《こ》と  |生《う》まれ|出《い》でたる|務《つと》めをば
|完全《うまら》に|委曲《つばら》に|尽《つく》すべし  |神《かみ》は|汝《なんぢ》と|倶《とも》にあり
|人《ひと》は|神《かみ》の|子《こ》|神《かみ》の|宮《みや》
第二八五
|道《みち》のため|励《いそ》しめ|宣伝使《つかさ》|花《はな》における
きらめく|露《つゆ》の|消《き》えぬ|間《ま》にこそ
|時《とき》は|過《す》ぎ|日《ひ》は|暮《く》れやすし|朝日子《あさひこ》の
|光《ひかり》|照《て》る|間《ま》に|道《みち》に|励《いそ》しめ
|天津日《あまつひ》の|光《ひかり》|輝《かがや》き|給《たま》ふ|間《ま》に
|勉《つと》め|励《いそ》しめ|神《かみ》の|宣伝使《つかさ》|等《ら》
|日《ひ》の|御足《みあし》|矢《や》よりも|速《はや》し|昼《ひる》の|間《ま》に
|神《かみ》の|言葉《ことば》を|宣《の》べ|伝《つた》へてよ
|励《いそ》しみて|仕《つか》へ|奉《まつ》れよ|青田《あをた》|吹《ふ》く
|涼《すず》しき|風《かぜ》の|通《かよ》へる|間《うち》に
|業《わざ》|休《やす》み|寝《ねむ》りに|就《つ》く|夜《よ》はいと|早《はや》し
|日《ひ》の|入《い》るまでに|道《みち》に|励《いそ》しめ
第二八六
|収穫《かりいれ》の|時《とき》|早《は》や|迫《せま》り|来《き》たりけり
|何故《なぜ》|淋《さび》しげに|野良《のら》に|立《た》てるか
|友《とも》|来《き》たる|時《とき》を|待《ま》つ|間《ま》に|日《ひ》は|暮《く》れぬ
ひきて|帰《かへ》らぬ|征矢《そや》の|如《ごと》くに
|夜《よ》とならば|如何《いか》になすべき|術《すべ》もなし
|日影《ひかげ》あるうち|谷川《たにがは》|渡《わた》らへ
|世《よ》を|恵《めぐ》む|神《かみ》の|御旨《みむね》を|畏《かしこ》みて
|仇《あだ》に|暮《くら》すな|神《かみ》の|御子《みこ》たち
|雨《あめ》の|朝《あさ》|風《かぜ》の|夕《ゆふ》べも|厭《いと》ひなく
|励《いそ》しみまつれ|惟神《かむながら》の|道《みち》
|黄金《こがね》なす|瑞穂《みづほ》の|稲《いね》を|山《やま》のごと
|収穫《かりい》れ|果《は》てて|倉《くら》に|納《をさ》めよ
|御教《みをしへ》の|種子《たね》をば|四方《よも》に|蒔《ま》きし|人《ひと》の
|収穫時《かりいれどき》の|賑《にぎ》はしきかな
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|大前《おほまへ》に
|功績《いさを》を|立《た》てて|謳《うた》ふ|嬉《うれ》しさ
第二八七
|皇神《すめかみ》の|大御心《おほみこころ》を|糧《かて》となし
|励《いそ》しみ|勤《つと》めよ|日々《ひび》の|業務《げふむ》に
|夢《ゆめ》よりも|果敢《はか》なき|此《この》|世《よ》の|栄《さか》えをば
|棄《す》てて|神国《みくに》の|栄《さか》え|楽《たの》しめ
|御栄光《みさかえ》と|生命《いのち》の|冠《かむり》を|賜《たま》ふべき
|時《とき》|近《ちか》づきぬ|励《いそ》しみ|勤《つと》めよ
|現《うつ》し|世《よ》の|空《むな》しき|旅《たび》をなす|人《ひと》に
|誠《まこと》の|道《みち》を|諭《さと》せ|神使《みつかひ》
|功績《いさ》もなく|仇《あだ》に|此《この》|世《よ》を|過《すご》しなば
|神国《みくに》の|父《ちち》に|会《あ》はむ|顔《かほ》なし
|目《め》を|覚《さ》まし|主《きみ》まつものの|頭《かしら》をば
|撫《な》で|慈《いつく》しむ|時《とき》は|近《ちか》みぬ
第二八八
|常暗《とこやみ》の|危《あや》ふき|旅路《たびぢ》を|今日《けふ》までも
|守《まも》り|玉《たま》ひし|尊《たふと》き|神《かみ》はも
|瑞御霊《みづみたま》|厳《いづ》の|御栄光《みさかえ》あれかしと
|祝《いは》ひ|謡《うた》へよ|神《かみ》の|御子《みこ》たち
わが|主《きみ》の|御名《みな》に|頼《たよ》りて|受《う》くるものは
|悪《あ》しき|汚《きたな》き|影《かげ》だにもなし
|玉《たま》の|緒《を》の|命《いのち》の|消《き》ゆる|時《とき》|来《く》れば
|神《かみ》の|御名《みな》こそ|力《ちから》なりけり
第二八九
|益良夫《ますらを》は|世《よ》をば|恐《おそ》れず|皇神《すめかみ》の
|御稜威《みいづ》の|光《ひかり》|畏《おそ》れて|住《す》むなり
|強《つよ》きをば|言向和《ことむけやは》し|弱《よわ》きをば
|助《たす》くる|人《ひと》ぞ|神《かみ》の|御使《みつかひ》
|村肝《むらきも》の|己《おの》が|心《こころ》を|楯《たて》とせず
|神《かみ》に|従《したが》ふ|人《ひと》は|神《かみ》なり
|皇神《すめかみ》の|掟《おきて》を|守《まも》り|畏《かしこ》みて
|百《もも》の|艱難《なやみ》に|勝《か》つ|人《ひと》ぞ|神《かみ》
|世《よ》の|中《なか》の|憂《うれ》ひに|先《さき》だちよく|憂《うれ》ひ
|共《とも》に|喜《よろこ》ぶ|人《ひと》は|神《かみ》なり
わが|友《とも》と|仇《あだ》なす|人《ひと》と|区別《わかち》なく
|誠《まこと》|変《か》へざる|人《ひと》は|神《かみ》なり
第二九〇
|麻柱《あななひ》の|大神教《おほみをしへ》のそのままを
|過《あやま》つ|事《こと》なく|語《かた》らしめてよ
|千早振《ちはやぶ》る|神《かみ》の|正《ただ》しき|大道《おほみち》に
まどへる|人《ひと》を|救《すく》ふ|楽《たの》しさ
|飢《う》ゑ|渇《かわ》く|人《ひと》の|身魂《みたま》に|皇神《すめかみ》の
|厳《いづ》の|糧《かて》をば|恵《めぐ》ませ|玉《たま》へ
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|力《ちから》にわが|魂《たま》は
|充《み》たされ|人《ひと》を|救《すく》ふ|身《み》となりぬ
|瑞御霊《みづみたま》わが|身体《からたま》に|憑《うつ》りまし
|使《つか》はせ|玉《たま》へ|御心《みこころ》のままに
|天地《あめつち》の|厳《いづ》の|喜《よろこ》び|身《み》に|受《う》けて
|栄光《さかえ》の|御顔《みかほ》|仰《あふ》ぐ|嬉《うれ》しさ
第二九一
|皇大神《すめおほかみ》の|御前《おんまへ》を  |斎《いつ》き|奉《まつ》るは|外《ほか》ならず
|神国《みくに》を|望《のぞ》み|黄泉《よみ》の|国《くに》  |百《もも》の|責苦《せめく》を|怖《お》ぢ|恐《おそ》れ
|逃《のが》れむ|為《ため》に|非《あら》ずして  |力《ちから》なき|身《み》も|厭《いと》はずに
|庇《かば》ひ|玉《たま》へる|御心《みこころ》の  いと|尊《たふと》さに|報《むく》ふため
|皇大神《すめおほかみ》の|御恵《みめぐ》みは  |百《もも》の|艱難《なやみ》を|凌《しの》ぎつつ
|仇《あだ》なす|身《み》をも|恵《めぐ》みまし  |天津御国《あまつみくに》の|幸《さち》はひも
|根底《ねそこ》の|国《くに》の|暗《くら》きをも  |照《て》らさせ|玉《たま》ふ|有難《ありがた》さ
その|御恵《みめぐ》みに|報《むく》いむと  |御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《たてまつ》る
|神《かみ》に|仕《つか》ふる|吾々《われわれ》は  |何《なん》の|報《むく》いか|望《のぞ》むべき
|此《この》|世《よ》を|造《つく》り|玉《たま》ひたる  |神《かみ》の|功績《いさを》を|称《たた》へつつ
|愛《あい》の|恵《めぐ》みに|報《むく》いむと  |真心《まごころ》こめて|大前《おほまへ》を
|祝《いは》ひまつりつ|永久《とこしへ》の  |守《まも》りの|主《きみ》と|仰《あふ》ぐのみ
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  いや|永久《とこしへ》にましませよ
(大正一二・五・一〇 旧三・二五 於松雲閣 隆光録)
第五章 |神世《しんせい》〔一五八〇〕
第二九二
|千早振《ちはやぶる》|古《ふる》き|神世《かみよ》も|巡《めぐ》り|来《き》て
|君《きみ》の|恵《めぐ》みも|弥《いや》|隆光《たかひか》る
|夜昼《よるひる》の|守《まも》りも|清《きよ》く|明《あき》らけく
|隈《くま》なく|照《て》らす|神《かみ》の|御代《みよ》かな
|空《そら》をおほふ|松《まつ》の|梢《こずゑ》に|鶴《つる》|棲《す》みて
その|声《こゑ》|高《たか》く|天《あめ》に|聞《き》こゆる
|小倉山《をぐらやま》|花《はな》と|紅葉《もみぢ》の|二尊院《にそんゐん》
|清《きよ》きは|神《かみ》の|姿《すがた》なりける
|千代《ちよ》|八千代《やちよ》|変《かは》らぬ|瑞《みづ》の|御光《みひかり》は
|此《この》|世《よ》を|救《すく》ふ|珍《うづ》の|御宝《みたから》
第二九三
|永久《とこしへ》の|身《み》の|住所《すみか》こそ|天津国《あまつくに》の
|夜《よる》なき|花《はな》の|神園《みその》とぞ|知《し》る
|高《たか》き|名《な》も|珍《うづ》の|宝《たから》もヨルダンの
|流《なが》れに|浮《う》かぶ|瑞《みづ》の|月影《つきかげ》
|夢《ゆめ》|醒《さ》めて|朝日《あさひ》の|影《かげ》はさしにけり
ねむりをさませ|惑《まど》ふ|人達《ひとたち》
|現世《うつしよ》を|離《はな》れて|元《もと》の|故郷《ふるさと》に
|帰《かへ》らむ|時《とき》の|神《かみ》は|御力《みちから》
第二九四
|千万《ちよろづ》の|仇《あだ》|攻《せ》め|囲《かこ》み|寄《よ》するとも
いかで|恐《おそ》れむ|綾《あや》の|高天原《たかま》は
わが|胸《むね》の|奥《おく》の|間《ま》|深《ふか》く|聞《き》こえけり
|目《め》を|醒《さ》ませよと|神《かみ》の|御声《おんこゑ》
|世《よ》の|人《ひと》を|救《すく》はむために|美《うる》はしき
|神《かみ》の|都《みやこ》を|築《きづ》きたまひぬ
|丹波《あかなみ》の|厳《いづ》の|聖地《せいち》に|上《のぼ》りなば
|知《し》らず|知《し》らずに|日《ひ》はたちてゆく
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|光《ひかり》は|八衢《やちまた》も
|雲《くも》|晴《は》れゆきて|花園《はなぞの》となる
第二九五
|皇神《すめかみ》は|卑《いや》しき|人《ひと》の|身《み》に|下《くだ》り
|百《もも》の|神業《かむわざ》|遂《と》げさせたまふ
|村肝《むらきも》の|心《こころ》の|奥《おく》を|掃《は》き|清《きよ》め
|鎮《しづ》まりいます|天津神等《あまつかみたち》
|新《あたら》しく|神《かみ》の|姿《すがた》につくりかへて
|導《みちび》きたまへ|栄《さか》えの|園《その》に
第二九六
|現身《うつそみ》の|世《よ》はいろいろに|変《かは》るとも
|神《かみ》のめぐみは|永久《とこしへ》にます
|花《はな》は|散《ち》りよしや|青葉《あをば》は|枯《か》るるとも
|幹《みき》と|頼《たの》みし|神《かみ》に|離《はな》れじ
|世《よ》の|旅《たび》に|疲《つか》れ|果《は》てたる|人《ひと》の|身《み》も
|神《かみ》の|御許《みもと》に|憩《いこ》ひ|栄《さか》えむ
|世《よ》の|中《なか》の|希望《のぞみ》は|絶《た》えて|果《は》つるとも
|栄《さか》えの|神《かみ》は|恵《めぐ》みますかも
|風《かぜ》|荒《すさ》み|雨《あめ》|降《ふ》りあれて|亡《ほろ》ぶとも
|神《かみ》の|御蔭《みかげ》に|寄《よ》らばやすけし
第二九七
わがために|千座《ちくら》の|置戸《おきど》を|負《お》ひましし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》は|誠《まこと》の|御親《みおや》ぞ
|土塊《つちくれ》に|似《に》たるわが|身《み》を|清《きよ》めつつ
|神国《みくに》のものとなさしめたまへ
|神勅《みことのり》|幾度《いくたび》|聞《き》けど|悟《さと》り|得《え》ず
|心《こころ》にもなき|御名《みな》を|汚《けが》しつ
かくまでも|曲《まが》れるわれを|捨《す》てずして
|救《すく》はせたまふ|更生主《きみ》ぞ|尊《たふと》き
第二九八
|日《ひ》の|下《もと》の|厳《いづ》の|聖地《せいち》をやらはれて
|自凝島《おのころじま》に|渡《わた》りたまひぬ
|自凝《おのころ》の|島《しま》の|真秀良場《まほらば》|四尾山《よつをやま》に
かくれてこの|世《よ》をしろしめします
|瑞御霊《みづみたま》メソポタミヤの|顕恩郷《けんおんきやう》に
かくれて|神代《みよ》をまちたまふなり
|瑞御霊《みづみたま》|元《もと》つ|御国《みくに》の|日《ひ》の|下《もと》に
|天降《あも》ります|代《よ》は|近《ちか》づきにけり
第二九九
|古《いにしへ》の|神《かみ》の|開《ひら》きしエルサレムは
ふたたび|旧《もと》に|返《かへ》らむとするも
イスラエル|十二《じふに》の|流《なが》れは|悉《ことごと》く
ヨルダン|川《がは》に|注《そそ》ぎ|入《い》るなり
|天地《あめつち》の|元《もと》つ|御祖《みおや》はやらはれて
|珍《うづ》の|御子《みこ》たち|世《よ》に|迷《まよ》ひぬる
|時《とき》|来《く》れば|四方《よも》の|国《くに》より|集《あつ》まりて
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|称《たた》へ|唱《うた》はむ
この|時《とき》ゆ|天津使《あまつつかひ》は|星《ほし》のごと
|神都《みやこ》の|空《そら》に|降《くだ》り|祝《ほ》ぐらむ
第三〇〇
|三五《あななひ》の|神《かみ》の|教《をしへ》の|広《ひろ》ければ
|狭《せま》き|心《こころ》のいかで|知《し》るべき
|頬杖《ほほづゑ》をついて|何《なに》ほど|調《しら》ぶとも
|隆光《たかひか》る|神《かみ》の|胸《むね》は|分《わか》らじ
|目《め》に|皺《しわ》を|寄《よ》せて|吐息《といき》をつきながら
|悟《さと》らむとする|人《ひと》のをかしさ
|惟神《かむながら》|神《かみ》の|御胸《みむね》をさとらむと
|思《おも》へば|元《もと》の|赤子《うまれご》となれ
|頼《たよ》りなき|智慧《ちゑ》や|力《ちから》を|頼《たの》みとし
|千年《ちとせ》ふるとも|悟《さと》り|得《え》ざらめ
この|経綸《しぐみ》|早《はや》く|世人《よびと》に|解《わか》りなば
|神《かみ》の|希望《のぞみ》は|永久《とこしへ》に|立《た》たず
第三〇一
|永久《とことは》に|育《はぐく》みたまへ|風《かぜ》の|日《ひ》も
|雨《あめ》の|夕《ゆふべ》も|変《かは》りたまはず
|世《よ》の|中《なか》の|罪《つみ》にみちたる|楽《たの》しみを
|捨《す》てて|御許《みもと》に|往《ゆ》く|日《ひ》|嬉《うれ》しき
さまざまの|世《よ》の|誘《いざな》ひに|打《う》ち|勝《か》ちて
|清《きよ》き|大道《おほぢ》を|進《すす》ませ|給《たま》へ
|闇《やみ》の|世《よ》を|放《はな》れて|昇《のぼ》る|旭影《あさひかげ》
|迎《むか》へむ|吉《よ》き|日《ひ》|近《ちか》づきにけり
|日《ひ》|出《い》づる|神《かみ》の|建《た》てたる|神国《かみくに》に
|常磐《ときは》の|教主《きみ》は|生《あ》れましにけり
|雲《くも》に|乗《の》り|波《なみ》を|分《わ》けつつ|出《い》で|来《き》たる
|東《あづま》の|教主《きみ》を|迎《むか》ふ|嬉《うれ》しさ
この|教主《きみ》や|天地《あめつち》|諸《もも》の|神人《かみびと》を
|治《をさ》むる|永久《とは》の|御柱《みはしら》なりけり
(大正一二・五・一〇 旧三・二五 於松雲閣 明子録)
第二篇 |桶伏《おけふせ》の|山《やま》
第六章 |神栄《しんえい》〔一五八一〕
第三〇二
|浮世《うきよ》さへさながら|神代《かみよ》の|心地《ここち》せり
|神《かみ》に|任《まか》せし|吾《わ》が|身《み》|吾《わ》が|魂《たま》
|村肝《むらきも》の|心《こころ》の|暗《やみ》を|晴《は》らされし
|厳《いづ》の|恵《めぐ》みを|称《たた》へまつらむ
|惟神《かむながら》|任《まか》しきつたる|心《こころ》には
|神《かみ》の|栄光《さかえ》を|自《おのづか》ら|見《み》む
|奇《くし》びなる|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|朝夕《あさゆふ》に
|下《くだ》らせ|玉《たま》ふと|思《おも》へば|嬉《うれ》しき
|喜《よろこ》びの|調《しら》べ|恵《めぐ》みの|訪《おとづ》れは
|天津御風《あまつみかぜ》に|送《おく》られ|来《き》たるも
われもなく|現世《うつしよ》もなく|只《ただ》|一人《ひとり》
|神《かみ》の|御前《みまへ》に|平伏《ひれふ》し|拝《をが》まむ
わが|胸《むね》の|波《なみ》|治《をさ》まりて|村肝《むらきも》の
|心《こころ》の|空《そら》に|月《つき》|照《て》り|渡《わた》る
第三〇三
|思《おも》ふさへなつかしき|教主《きみ》の|神姿《みすがた》を
|仰《あふ》げば|如何《いか》に|楽《たの》しかるらむ
|瑞御霊《みづみたま》|生命《いのち》の|主《きみ》に|勝《まさ》りたる
|美《うる》はしき|名《な》を|誰《たれ》か|謳《うた》はむ
|只管《ひたすら》に|神《かみ》に|従《したが》ふ|現身《うつそみ》の
その|歓喜《よろこび》は|底《そこ》ひ|知《し》られじ
わが|教主《きみ》の|仁慈大徳《じんじだいとく》さとりなば
|幸《さいは》ひの|花《はな》たちまち|開《ひら》かむ
|永久《とこしへ》に|栄《さか》えつきせぬわが|教主《きみ》の
|御前《みまへ》に|遊《あそ》ぶ|身《み》こそ|楽《たの》しき
第三〇四
|天津御空《あまつみそら》に|聞《き》こえ|来《く》る  |清《きよ》き|尊《たふと》き|歌《うた》の|音《ね》に
|合《あは》せて|謳《うた》ふ|信徒《まめひと》が  |身魂《みたま》の|楽《たの》しみ|如何《いか》ばかり
|浮世《うきよ》の|艱《なや》み|歎《なげ》きさへ  |朝《あした》の|深霧《みきり》|夕霧《ゆふぎり》の
|科戸《しなど》の|風《かぜ》に|散《ち》る|如《ごと》く  |晴《は》れ|渡《わた》りたる|心地《ここち》なり
|黒白《あやめ》も|分《わか》ぬ|暗《やみ》の|夜《よ》も  |教《をしへ》の|主《きみ》と|共《とも》なれば
|何《なに》か|恐《おそ》れむ|神国魂《みくにだま》  |誠《まこと》の|栄光《さかえ》は|神《かみ》にあり
|浮世《うきよ》の|栄光《さかえ》と|歓喜《よろこび》は  |忽《たちま》ち|消《き》えて|跡《あと》もなし
|謡《うた》へよ|謡《うた》へ|神《かみ》の|愛《あい》  |讃《ほ》めよ|称《たた》へよ|神《かみ》の|稜威《いづ》
|浮世《うきよ》を|包《つつ》む|村肝《むらきも》は  |厳《いづ》の|御魂《みたま》に|照《て》らされて
|日《ひ》に|日《ひ》に|泡《あわ》と|消《き》え|失《う》せむ  |朝《あした》の|深霧《みきり》|夕霧《ゆふぎり》は
|科戸《しなど》の|風《かぜ》に|晴《は》れ|渡《わた》り  |行《ゆ》く|手《て》に|輝《かがや》く|永久《とこしへ》の
|光《ひかり》は|吾等《われら》が|身魂《みたま》をば  いとおだやかに|照《て》らすなり
|仰《あふ》げよ|仰《あふ》げ|神《かみ》の|愛《あい》  |讃《ほ》めよ|称《たた》へよ|神《かみ》の|稜威《いづ》
第三〇五
|村肝《むらきも》の|胸《むね》の|小琴《をごと》に|御言葉《みことば》の
|奏《しら》べ|涼《すず》しく|合《あ》ふぞ|嬉《うれ》しき
|動《うご》きなき|心《こころ》の|海《うみ》に|波《なみ》はなし
これぞ|平和《へいわ》の|礎《いしずゑ》と|知《し》る
|瑞御霊《みづみたま》|教《をしへ》の|主《きみ》を|仰《あふ》ぎなば
|恵《めぐ》みの|露《つゆ》は|身魂《みたま》うるほす
|仇波《あだなみ》の|立《た》ち|騒《さわ》がざる|身魂《みたま》こそ
|海《うみ》より|深《ふか》き|心《こころ》なるらむ
第三〇六
|永久《とこしへ》の|生命《いのち》と|栄光《さかえ》を|与《あた》へます
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》を|親《おや》とし|仰《あふ》げ
|亡《ほろ》び|行《ゆ》くわが|魂《たましひ》を|生《い》かしつつ
|神国《みくに》の|民《たみ》とならしめ|玉《たま》へ
|限《かぎ》りなき|厳《いづ》の|御恵《みめぐ》み|知《し》らずして
|過《すご》せし|中《うち》に|守《まも》ります|神《かみ》
|世《よ》を|救《すく》ふ|神《かみ》の|御旨《みむね》に|背《そむ》きたる
われは|知《し》らずに|罪人《つみびと》となりぬ
第三〇七
|幸《さち》|多《おほ》き|生業《なりはひ》なりとも|皇神《すめかみ》の
|御許《みゆる》しなくば|吾《われ》はなすまじ
すぐれたる|人《ひと》の|賢《さか》しき|教《をしへ》をも
|御旨《みむね》ならずば|吾《われ》は|学《まな》ばじ
|友垣《ともがき》の|如何《いか》に|誘《いざな》ふ|道《みち》あるも
|神《かみ》に|背《そむ》きし|方《かた》に|行《ゆ》くまじ
|天津国《あまつくに》|如何《いか》に|楽《たの》しくあるとても
|教主《きみ》|坐《い》まさずば|吾《われ》は|上《のぼ》らず
第三〇八
|罪《つみ》も|苦《く》も|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|消《き》え|果《は》てて
|栄光《さかえ》|輝《かがや》く|御側《みそば》に|行《ゆ》かむ
|瑞御霊《みづみたま》|永久《とは》の|恵《めぐ》みに|守《まも》られて
|知《し》らず|知《し》らずに|御前《みまへ》に|進《すす》みぬ
|昼《ひる》となく|夜《よる》とはなしにわが|教主《きみ》の
|清《きよ》き|恵《めぐ》みに|守《まも》られて|生《い》く
|何処《いづこ》にも|神《かみ》の|御跡《みあと》は|現《あら》はれぬ
|憂《うれ》ひ|悲《かな》しみ|百《もも》の|艱《なや》みに
|癒《いや》されぬ|病《やまひ》もあらず|幸《さち》ならぬ
|曲《まが》もなきこそ|神代《かみよ》なりけり
|皇神《すめかみ》と|倶《とも》にありせば|如何《いか》ならむ
なやみに|遭《あ》ふも|苦《くる》しからまじ
第三〇九
|大空《おほぞら》を|渡《わた》る|日影《ひかげ》にまさるべし
|心《こころ》に|充《み》てる|神《かみ》の|光《ひかり》は
|輝《かがや》ける|神姿《すがた》を|胸《むね》にうつすこそ
|教《をしへ》の|主《きみ》の|光《ひかり》なりけり
|限《かぎ》りなき|称《たた》への|歌《うた》は|胸《むね》に|充《み》てるを
|口《くち》には|言《い》はね|神《かみ》は|聞《き》きまさむ
|花《はな》|薫《かを》り|小鳥《ことり》は|清《きよ》く|啼《な》き|渡《わた》る
|春《はる》の|景色《けしき》は|神国《みくに》の|姿《すがた》ぞ
|喜《よろこ》びの|心《こころ》に|充《み》つる|暁《あかつき》は
|思《おも》はず|知《し》らず|歌《うた》となりぬる
第三一〇
|黄昏《たそが》れて|行《ゆ》く|手《て》は|遠《とお》き|野路《のぢ》の|旅《たび》
|杖《つゑ》と|頼《たの》むは|神《かみ》ばかりなり
|一人寝《ひとりね》の|淋《さび》しき|夜半《よは》も|皇神《すめかみ》は
|倶《とも》に|坐《い》まして|哺育《はぐく》みたまふ
わが|友《とも》は|先立《さきだ》ち|行《ゆ》きて|淋《さび》しくも
|神《かみ》を|思《おも》へばいとど|楽《たの》しき
|玉《たま》の|緒《を》の|生命《いのち》の|影《かげ》は|薄《うす》れ|行《ゆ》きぬ
|神国《みくに》に|上《のぼ》るも|近《ちか》くやあるらむ
やすやすと|静《しづ》の|寝《ねむり》に|就《つ》かせたまへ
|天津神国《あまつみくに》に|覚《さ》むる|時《とき》まで
第三一一
よき|事《こと》もまた|曲事《まがこと》もわが|更生主《きみ》の
よさし|玉《たま》ひし|御事《みわざ》とぞ|知《し》る
|身《み》も|魂《たま》も|恵《めぐ》みの|御手《みて》に|委《ゆだ》ねつつ
|夜《よる》なき|国《くに》に|上《のぼ》る|楽《たの》しさ
|悲《かな》しみの|涙《なみだ》の|雨《あめ》は|袖《そで》に|降《ふ》り
|憂《うれ》ひの|雲《くも》は|胸《むね》を|包《つつ》みぬ
さりながら|天津神国《あまつみくに》に|上《のぼ》るてふ
|希望《のぞみ》は|尽《つ》きじ|神《かみ》ましませば
|現世《うつしよ》もまた|霊界《かくりよ》も|皇神《すめかみ》の
|清《きよ》き|御旨《みむね》に|任《まか》しまつらむ
(大正一二・五・一一 旧三・二六 於松雲閣 隆光録)
第七章 |神降《しんかう》〔一五八二〕
第三一二(エルサレムは至聖地の意なり)
|浮世《うきよ》の|闇《やみ》にさまよひて  |身《み》も|魂《たましひ》も|疲《つか》れたる
|悲《かな》しき|人《ひと》よとく|来《き》たれ  |救《すく》ひの|神《かみ》は|日《ひ》の|下《もと》の
|神《かみ》のよさしのエルサレム  |自転倒島《おのころじま》の|聖場《せいぢやう》に
|雨《あめ》の|如《ごと》くに|天降《あも》りませり
|高天原《たかあまはら》の|神国《かみくに》の  |厳《いづ》の|住居《すまゐ》はいと|広《ひろ》し
|常世《とこよ》の|春《はる》の|楽《たの》しみは  |花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ひ|鳥《とり》|歌《うた》ひ
|玉《たま》の|小琴《をごと》は|時《とき》じくに  |床《ゆか》しく|響《ひび》き|天人《よきひと》の
|清《きよ》き|御歌《みうた》の|声《こゑ》すなり
|類《たぐひ》も|知《し》らぬ|天津国《あまつくに》  |厳《いづ》の|御園《みその》は|現世《うつしよ》に
|見《み》し|事《こと》もなき|花《はな》|薫《かを》り  |栄光《さかえ》|歓喜《よろこび》|充《み》ち|溢《あふ》れ
|生命《いのち》の|清水《しみづ》は|永久《とこしへ》に  |泉《いづみ》の|如《ごと》く|湧《わ》き|立《た》てり
アア|美《うる》はしき|神《かみ》の|国《くに》  アアたのもしき|神《かみ》の|園《その》
第三一三
|故郷《ふるさと》の|高天原《たかあまはら》を|眺《なが》むれば
|憂愁《うれひ》に|曇《くも》る|目《め》も|晴《は》れ|渡《わた》る
|限《かぎ》りなき|醜《しこ》の|仇《あだ》ものよく|防《ふせ》ぎ
|飛《と》び|来《く》る|火矢《ひや》も|怯《お》ぢなく|立《た》たむ
わが|悩《なや》み|波《なみ》とも|打《う》たば|打《う》てよかし
|恵《めぐ》みの|真帆《まほ》をかけて|渡《わた》らむ
わが|憂愁《うれひ》|雨《あめ》とも|降《ふ》らば|降《ふ》れよかし
|恵《めぐ》みの|傘《かさ》を|開《ひら》き|進《すす》まむ
|故郷《ふるさと》の|清《きよ》き|家路《いへぢ》に|帰《かへ》り|行《ゆ》く
|身《み》は|恐《おそ》れむや|百《もも》の|艱難《なやみ》を
|疲《つか》れたるわが|魂《たましひ》を|永久《とこしへ》に
|休《やす》むる|神国《みくに》に|吹《ふ》く|嵐《あらし》なし
第三一四
|何言《なにごと》も|神《かみ》に|任《まか》せて|身《み》の|幸《さち》を
|賜《たま》へかしとは|祈《いの》りまつらじ
わが|負《お》へる|罪《つみ》の|重荷《おもに》を|取《と》りてよと
|祈《いの》らずとても|守《まも》らせたまへる
さりながら|祈《いの》りにまさる|宝《たから》なし
|夢《ゆめ》な|迷《まよ》ひそ|祈《いの》りの|道《みち》を
|我《わが》|神《かみ》は|麻柱《あなな》ひまつる|魂《たましひ》を
|花《はな》|咲《さ》く|道《みち》に|進《すす》ませたまふ
|紅《くれなゐ》の|花《はな》|咲《さ》き|薫《かを》る|鬼薊《おにあざみ》
|手折《たを》らむとする|風流男《みやびを》もなし
|鬼薊《おにあざみ》|花《はな》|咲《さ》かずともわが|教主《きみ》は
|床《とこ》の|飾《かざ》りと|愛《め》でさせたまふ
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みの|露《つゆ》は|隈《くま》もなく
|百《もも》の|草木《くさき》を|潤《うるほ》はせたまふ
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|光《ひかり》に|導《みちび》きて
|暗《くら》き|心《こころ》を|照《て》らさせたまへ
|足曳《あしびき》の|山《やま》にも|野《の》にも|皇神《すめかみ》の
|恵《めぐ》みの|露《つゆ》は|濺《そそ》ぎ|充《み》ちぬる
一〇
|夜《よ》の|初《はじ》めさやかに|知《し》らす|曙《あけ》の|星《ほし》の
|清《きよ》き|姿《すがた》を|仰《あふ》ぐ|嬉《うれ》しさ
一一
|現世《うつしよ》は|暮《く》れやすけれど|天津国《あまつくに》は
|空《そら》|澄《す》み|渡《わた》る|東雲《しののめ》に|似《に》たり
一二
|静《しづ》かなる|朝《あした》の|景色《けしき》|眺《なが》むれば
|神《かみ》の|御国《みくに》の|偲《しの》ばるるかな
第三一五
|神《かみ》によりしわが|言《こと》の|葉《は》も|為《な》す|業《わざ》も
|皆《みな》|喜《よろこ》びのおとづれとなる
|襲《おそ》ひ|来《く》る|醜《しこ》の|仇草《あだぐさ》|薙《な》ぎ|払《はら》ひ
|神《かみ》の|御前《みまへ》に|勝鬨《かちどき》あげむ
|許々多久《ここたく》の|妬《ねた》み|汚《けが》れを|打《う》ち|棄《す》てて
|誠《まこと》の|道《みち》に|進《すす》み|入《い》りてむ
|神《かみ》の|代《よ》の|現《あら》はれ|来《き》たる|日《ひ》を|待《ま》たむ
|厳《いづ》の|御言葉《みことば》|力《ちから》となして
第三一六
|麻柱《あななひ》の|救《すく》ひの|道《みち》を|遠近《をちこち》に
|神《かみ》に|習《なら》ひて|開《ひら》かせたまへ
|許々多久《ここたく》の|罪《つみ》や|穢《けが》れに|沈《しづ》みたる
|世人《よびと》を|救《すく》ふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
たのもしき|家《いへ》に|波風《なみかぜ》|起《おこ》すものは
|皆《みな》|悉《ことごと》く|罪《つみ》の|鬼《おに》なり
いと|猛《たけ》く|強《つよ》き|悪魔《あくま》に|勝鬨《かちどき》を
あげて|進《すす》まむ|神《かみ》のまにまに
|御恵《みめぐ》みの|鎧甲《よろひかぶと》を|身《み》につけて
|曲《まが》|言向《ことむ》くる|神《かみ》の|御使《みつかひ》
|永久《とこしへ》に|荒《あら》び|騒《さわ》ぎし|戦《たたか》ひの
|日《ひ》も|暮《く》れ|果《は》てて|朝日《あさひ》|輝《かがや》ふ
|矢叫《やさけ》びの|声《こゑ》は|御歌《みうた》と|変《かは》りけり
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|清《きよ》き|御名《みな》にて
第三一七
|試錬《こころみ》に|勝《か》つ|度《たび》ごとに|強《つよ》くならむ
|恵《めぐ》みの|鎧《よろひ》|身《み》にまとひつつ
|攻《せ》め|来《き》たる|仇《あだ》を|雄々《をを》しく|防《ふせ》ぎつつ
|平和《へいわ》の|国《くに》に|進《すす》ませたまへ
|御恵《みめぐ》みをたえず|求《もと》むる|信徒《まめひと》の
|心《こころ》に|宿《やど》る|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
ねぢけたる|心《こころ》の|友《とも》に|交《まじ》はらで
|神《かみ》の|教《をしへ》を|友《とも》とし|敬《うやま》へ
|真心《まごころ》の|矛《ほこ》たづさへて|道《みち》の|為《ため》
|進《すす》む|行《ゆ》く|手《て》にさやる|枉《まが》なし
|皇神《すめかみ》に|習《なら》ふ|武士《もののふ》|一度《ひとたび》は
|倒《たふ》れ|伏《ふ》すともやがて|起《た》たなむ
|神軍《みいくさ》に|従《したが》ひ|勇《いさ》み|戦《たたか》へば
|木《こ》の|葉《は》のごとく|仇《あだ》は|散《ち》り|行《ゆ》く
第三一八
|春《はる》の|花《はな》よ|蝶《てふ》よと|愛《め》でしいとし|子《ご》を
|後《あと》に|残《のこ》して|上《のぼ》る|苦《くる》しさ
たのみなき|浮世《うきよ》の|旅《たび》にさまよひて
|花《はな》|散《ち》る|暮《くれ》に|会《あ》ふは|悲《かな》しき
|心《こころ》ゆくばかり|御前《みまへ》に|平伏《ひれふ》して
わが|子《こ》の|為《ため》に|幸《さち》を|祈《いの》りぬ
|大空《おほぞら》をひた|翔《か》けり|行《ゆ》く|雁《かりがね》に
わが|子《こ》の|便《たよ》り|聞《き》かまほしかな
|大空《おほぞら》の|天津御国《あまつみくに》に|上《のぼ》りたる
|子《こ》は|如何《いか》にぞと|歎《なげ》き|悲《かな》しむ
|皇神《すめかみ》の|御使《みつかひ》と|見《み》しいとし|子《ご》の
|今《いま》は|夜《よる》なき|国《くに》に|上《のぼ》りぬ
|現世《うつしよ》の|父《ちち》と|母《はは》とを|後《あと》にして
|弥《いや》|永久《とこしへ》の|親《おや》に|会《あ》ひけむ
|雪《ゆき》の|朝《あした》|雨《あめ》の|夕《ゆふ》べに|思《おも》ふかな
|逝《ゆ》きしわが|子《こ》の|魂《たま》や|如何《いか》にと
第三一九
|夜《よる》|深《ふか》き|獄舎《ひとや》に|眠《ねむ》る|瑞御霊《みづみたま》を
|照《て》らし|玉《たま》へる|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
|万代《よろづよ》の|齢《よはひ》を|保《たも》つ|御使《みつかひ》に
|鉄《くろがね》の|門《かど》も|安《やす》く|開《ひら》けり
|鉄《くろがね》の|垣根《かきね》の|内《うち》に|鬼《おに》はなし
|外《そと》にさまよふ|人鬼《ひとおに》|多《おほ》きも
|慾《よく》の|川《かは》に|溺《おぼ》れ|苦《くる》しむ|友垣《ともがき》を
|瑞《みづ》の|御国《みくに》へ|上《のぼ》らせたまへ
|恐《おそ》ろしき|獄舎《ひとや》の|夢《ゆめ》も|覚《さ》めにけり
|日《ひ》の|出神《でのかみ》の|光《ひかり》|仰《あふ》ぎて
第三二〇
|誰《たれ》も|彼《か》も|千代《ちよ》の|栄光《さかえ》を|望《のぞ》まざる
されど|波風《なみかぜ》|荒《あら》き|世《よ》なれば
|足《あし》はなえ|手《て》は|折《を》るるとも|皇神《すめかみ》の
めぐみの|光《ひかり》わが|身《み》を|守《まも》らす
|永久《とこしへ》の|誠《まこと》の|親《おや》にまみゆべき
|五六七《みろく》の|御世《みよ》は|近《ちか》づきにけり
|世《よ》の|中《なか》にいとも|弱《よわ》きは|人《ひと》にこそ
|神《かみ》にすがりて|神力《みちから》を|得《え》よ
わが|弱《よわ》き|心《こころ》をつなぐ|鎖《くさり》まで
|断《た》ち|切《き》らむとする|枉《まが》|忌々《ゆゆ》しかり
第三二一
|焦《こ》げやすき|黄泉《よみぢ》を|走《はし》る|火《ひ》の|車《くるま》
|乗《の》り|行《ゆ》く|人《ひと》の|声《こゑ》|悲《かな》しかり
|御教《みをしへ》の|舟《ふね》に|棹《さを》さし|罪《つみ》の|海《うみ》に
|溺《おぼ》るる|人《ひと》を|救《すく》ふ|御使《みつかひ》
|荒波《あらなみ》に|溺《おぼ》るる|友《とも》の|声《こゑ》|聞《き》けば
|投《な》げむと|思《おも》ふ|救《すく》ひの|綱《つな》を
|罪《つみ》の|海《うみ》に|浮《う》きつ|沈《しづ》みつ|叫《さけ》ぶ|友《とも》を
|救《すく》ふは|誠《まこと》の|人《ひと》なりにけり
|常暗《とこやみ》の|夜《よ》は|来《き》たるとも|御光《みひかり》の
|充《み》ち|足《た》らひたる|神《かみ》は|助《たす》くる
|厳御霊《いづみたま》|投《な》げさせ|玉《たま》ふ|御綱《みつな》こそ
|生命《いのち》をつなぐ|力《ちから》なりけり
(大正一二・五・一一 旧三・二六 於竜宮館 隆光録)
第八章 |神生《しんせい》〔一五八三〕
第三二二
|貧《まづ》しくば|人《ひと》に|捨《す》てられさげしまる
|力《ちから》となるは|神《かみ》ばかりなり
|花《はな》さへも|散《ち》りては|杣人《そま》に|倒《たふ》されて
|賤《しづ》が|伏家《ふせや》の|薪《たきぎ》とぞなる
|玉《たま》の|緒《を》の|命《いのち》は|草《くさ》におく|露《つゆ》の
その|果敢《はか》なさを|知《し》らぬ|人《ひと》あり
|千年《ちとせ》まで|此《この》|世《よ》に|命《いのち》あるものと
|醜《しこ》のたぶれが|罪《つみ》|造《つく》るなり
|父《ちち》は|去《さ》り|母《はは》また|逝《ゆ》きて|淋《さび》しさの
|枕《まくら》に|通《かよ》ふ|神《かみ》の|御光《みひかり》
ただ|神《かみ》の|愛《あい》の|袂《たもと》にすがるより
わが|身《み》|慰《なぐさ》むものはあるまじ
|苦《くる》しみの|憂世《うきよ》を|渡《わた》る|月日《つきひ》さへ
|花《はな》|咲《さ》く|春《はる》を|待《ま》つが|楽《たの》しき
第三二三
|惟神《かむながら》|結《むす》び|合《あ》うたる|友垣《ともがき》の
その|親《した》しみは|同胞《はらから》にまさる
|信徒《まめひと》の|睦《むつ》び|親《した》しむ|有様《ありさま》は
|天津御国《あまつみくに》の|天人《あでびと》に|似《に》たり
|村肝《むらきも》の|心《こころ》|睦《むつ》べば|言霊《ことたま》も
|一《ひと》つになりて|大前《おほまへ》に|祈《いの》る
|皇神《すめかみ》の|道《みち》に|集《つど》ひし|友垣《ともがき》の
その|交《まじ》はりは|永久《とこしへ》|変《かは》らず
第三二四
|皇神《すめかみ》の|道《みち》|歩《あゆ》み|行《ゆ》く|友垣《ともがき》は
|同胞《はらから》よりも|楽《たの》しかりけり
|恐《おそ》れをもまた|希望《のぞみ》をもまごころを
|籠《こ》めて|祈《いの》らむ|神《かみ》の|御前《みまへ》に
|妹《いも》と|背《せ》が|互《たが》ひに|忍《しの》ぶ|苦《くる》しみも
|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|消《き》え|失《う》せて|行《ゆ》く
よき|友《とも》に|別《わか》るる|時《とき》はつらけれど
また|遇《あ》ふ|日《ひ》をば|祈《いの》り|待《ま》つなり
|罪《つみ》|憂《うれへ》|夜《よる》なき|国《くに》の|永久《とこしへ》の
|霊《たま》の|栄《さかえ》を|祈《いの》りつつ|経《ふ》る
第三二五
|村肝《むらきも》の|心《こころ》|一《ひと》つに|睦《むつ》び|合《あ》ひて
|神《かみ》の|御前《みまへ》に|仕《つか》ふる|信徒《まめひと》
|争《あらそ》ひし|醜《しこ》の|荒《すさ》びは|跡《あと》もなく
|消《き》え|失《う》せにけり|神《かみ》の|光《ひかり》に
|瑞御霊《みづみたま》|自《おの》が|頭《かしら》に|頂《いただ》きて
|醜《しこ》の|戦《たたか》ひ|終《をは》るまで|進《すす》め
|村肝《むらきも》の|心《こころ》|勇《いさ》みに|勇《いさ》みつつ
|神《かみ》の|言葉《ことば》に|進《すす》む|益良夫《ますらを》
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|御門《みかど》に|勝鬨《かちどき》を
あぐる|時《とき》まで|進《すす》み|往《ゆ》かまし
第三二六
|病《や》みふせる|床《とこ》にも|高《たか》き|恵《めぐ》みあり
|千座《ちくら》を|負《お》ひし|神《かみ》の|御稜威《みいづ》に
|瑞御霊《みづみたま》その|神業《かむわざ》を|思《おも》ひ|見《み》れば
|痛《いた》み|悩《なや》みも|消《き》え|失《う》するなり
|如何《いか》ならむ|涙《なみだ》の|中《なか》に|沈《しづ》むとも
|夢《ゆめ》な|忘《わす》れそ|神《かみ》のめぐみを
いと|清《きよ》き|神《かみ》の|下僕《しもべ》と|仕《つか》へむと
|思《おも》へば|百《もも》の|苦《くる》しみ|来《き》たる
|苦《くる》しみの|時《とき》も|喜《よろこ》びの|栄《さかえ》あり
|如何《いか》で|忘《わす》れむ|神《かみ》の|恵《めぐ》みを
わが|身魂《みたま》|焼《や》くばかりなる|苦《くる》しみも
|千座《ちくら》|思《おも》へばいとど|涼《すず》しき
第三二七
|皇神《すめかみ》の|力《ちから》に|癒《いや》し|尽《つく》されぬ
|歎《なげ》き|悲《かな》しみ|地《ち》の|上《うへ》になし
|味気《あぢき》なき|身《み》の|宿縁《すぐせ》をば|悔《く》やむまじ
|神《かみ》の|此《この》|世《よ》にいます|限《かぎ》りは
|永久《とことは》の|命《いのち》の|水《みづ》は|湧《わ》き|出《い》でぬ
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|清《きよ》き|勲《いさを》に
第三二八
|病《いたづき》の|身《み》にしあれども|天津国《あまつくに》
|思《おも》ひ|出《い》だせば|頼《たの》もしきかな
わが|胸《むね》に|囁《ささや》きたまふ|愛《あい》の|声《こゑ》は
いと|懐《なつか》しく|頼《たの》もしきかも
|世《よ》の|人《ひと》を|遍《あまね》く|救《すく》ひ|助《たす》けむと
|宣《の》らせたまひし|尊《たふと》き|神《かみ》はや
|皇神《すめかみ》の|教《をしへ》を|固《かた》く|守《まも》る|身《み》は
|昨日《きのふ》も|今日《けふ》も|楽《たの》しかりけり
第三二九
|身《み》に|余《あま》るその|悲《かな》しみは|円山《まるやま》の
|峰《みね》の|麓《ふもと》に|埋《うづ》めて|進《すす》まへ
|逸早《いちはや》く|悩《なや》み|苦《くる》しみ|打《う》ちすてて
|来《き》たれ|信徒《まめひと》|高天原《たかあまはら》に
|煩《わづら》ひの|雲霧《くもきり》|払《はら》ひ|救《すく》ひます
|神《かみ》は|高天原《たかま》に|現《あ》れましにけり
|村肝《むらきも》の|心《こころ》の|闇《やみ》も|晴《は》れぬらむ
|綾《あや》の|高天原《たかま》に|参《まゐ》る|身《み》なれば
|御恵《みめぐ》みを|身《み》に|受《う》けし|人《ひと》は|逸早《いちはや》く
|神《かみ》の|勲《いさを》を|世《よ》に|伝《つた》へ|行《ゆ》け
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御魂《みたま》の|御勲《みいさを》を
まだ|悟《さと》り|得《え》ぬ|人《ひと》の|多《おほ》かり
第三三〇
|苦《くる》しみの|中《なか》にも|神《かみ》の|恵《めぐ》みあり
|悩《なや》みなき|身《み》を|幸《さち》とな|思《おも》ひそ
|憂《う》き|涙《なみだ》|神《かみ》の|恵《めぐ》みによろこびの
|笑《ゑみ》とかはるは|有難《ありがた》きかな
|憂《う》きなやみ|一夜《ひとよ》の|夢《ゆめ》と|過《す》ぎ|去《さ》りて
|旭《あさひ》かがやく|喜《よろこ》びとなる
|悲《かは》しみはよしや|吾《わ》が|胸《むね》をやぶるとも
こころ|挫《くじ》くな|御心《みこころ》なれば
|苦《くる》しみも|涙《なみだ》ももれず|数《かぞ》へたて
|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》|酬《むく》いたまはむ
第三三一
|何人《なにびと》も|此《こ》の|世《よ》にしばし|生立《おひた》ちて
やがて|眠《ねむ》らむ|奥津城《おくつき》|静《しづ》かに
|皇神《すめかみ》の|法《のり》に|身魂《みたま》を|清《きよ》めつつ
|神国《みくに》に|至《いた》る|準備《そなへ》せよかし
|今《いま》|暫《しば》し|嵐《あらし》|吹《ふ》けどもやがて|又《また》
|花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|春《はる》や|来《き》たらむ
|雨《あめ》と|降《ふ》る|涙《なみだ》もやがて|拭《ぬぐ》はれむ
|朝日《あさひ》かがやく|御代《みよ》|近《ちか》づきて
|更生主《かうせいしゆ》|再《ふたた》び|下《くだ》りて|現世《うつしよ》を
|平和《やす》く|治《をさ》むる|時《とき》|近《ちか》づきぬ
(大正一二・五・一一 旧三・二六 於竜宮館 明子録)
第九章 |神子《しんし》〔一五八四〕
第三三二
|幸《さち》|薄《うす》く|果敢《はか》なき|夢《ゆめ》の|浮世《うきよ》にも
|神《かみ》としあれば|楽《たの》しかりけり
|風《かぜ》|荒《すさ》み|雨《あめ》しきりなる|闇《やみ》の|夜《よ》も
|如何《いか》で|怖《おそ》れむ|神《かみ》としあれば
|外《そと》よりは|諸《もも》の|誘惑《いざなひ》|内《うち》に|罪《つみ》
|汚《けが》れの|絶《た》えぬ|此《この》|世《よ》なりけり
|人《ひと》の|世《よ》はほほ|笑《ゑ》む|目《め》にも|涙《なみだ》あり
|泣《な》いて|楽《たの》しき|神《かみ》の|御教《みをしへ》
|恐《おそ》ろしき|死出《しで》の|山路《やまぢ》も|何《なに》かあらむ
|教主《きみ》も|一度《ひとたび》いでまさむ|道《みち》
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|御声《みこゑ》に|眼《め》を|醒《さ》ませ
ねむりの|深《ふか》き|罪《つみ》の|閨《ねや》より
|我《わが》|神《かみ》に|遠《とほ》く|放《はな》れて|現身《うつそみ》の
|憂世《うきよ》に|住《す》めば|苦《くる》しかるらむ
|幸《さち》|流《なが》れ|喜《よろこ》び|溢《あふ》るるヨルダンの
|水《みづ》こそ|瑞《みづ》の|御霊《みたま》なりけり
|愛善《あいぜん》の|徳《とく》にみたされ|円満《まどやか》に
|暮《くら》すは|天津国人《あまつくにびと》なりけり
一〇
|花《はな》のごと|晴《は》れて|曇《くも》らぬわが|教主《きみ》の
|瑞《みづ》のみもとの|頼《たの》もしきかな
第三三三
|神《かみ》の|手《て》にねむる|正《ただ》しき|信徒《まめひと》の
いまはの|面《おも》の|美《うる》はしきかな
|引《ひ》く|汐《しほ》の|静《しづ》かなるごと|逝《ゆ》く|人《ひと》の
|面《おも》ざし|見《み》れば|神《かみ》と|倶《とも》にあり
|生死《いきしに》の|恐《おそ》れもしらぬ|天津国《あまつくに》の
その|長閑《のどか》さは|春《はる》の|花園《はなぞの》
|光《ひかり》|闇《やみ》|行《ゆ》き|交《か》ふ|世《よ》をば|後《あと》にして
|天津御国《あまつみくに》に|昇《のぼ》るは|安《やす》けし
|天地《あめつち》の|神《かみ》も|祝《ことほ》ぎたまふらむ
|信徒《まめひと》たちの|最後《いまは》の|床《ゆか》しさを
第三三四
|春雨《はるさめ》のそぼふる|梢《うれ》に|萎《しぼ》みたる
|花《はな》の|姿《すがた》のいとど|床《ゆか》しき
|春《はる》の|夜《よ》の|短《みじか》き|夢《ゆめ》にも|似《に》たるかな
|露《つゆ》の|命《いのち》の|散《ち》るを|思《おも》へば
|秋風《あきかぜ》に|揺《ゆ》らるる|萩《はぎ》の|露《つゆ》のごと
おちて|消《き》え|行《ゆ》く|人《ひと》の|玉《たま》の|緒《を》
|花《はな》と|匂《にほ》ひ|玉《たま》と|栄《さか》えし|人《ひと》の|身《み》の
|消《き》ゆるを|見《み》れば|果敢《はか》なかりけり
|山《やま》に|野《の》に|河《かは》の|畔《ほとり》に|祈《いの》りてし
|昔《むかし》の|友《とも》のいとど|恋《こひ》しき
|奥都城《おくつき》に|淋《さび》しく|眠《ねむ》るわが|友《とも》は
|天津御国《あまつみくに》に|栄《さか》えますなり
|死出《しで》の|山《やま》|調《しらべ》の|川《かは》も|手《て》を|曳《ひ》いて
|導《みちび》きたまはむ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
第三三五
|人《ひと》はただ|此《この》|世《よ》の|命《いのち》のみならば
|如何《いか》に|悲《かな》しきものとこそ|知《し》れ
|身《み》はたとへ|朽《く》ち|果《は》つるとも|霊魂《たましひ》は
|天津御国《あまつみくに》は|永久《とは》に|栄《さか》えむ
|死《し》の|神《かみ》も|襲《おそ》ひ|来《き》たらぬ|神《かみ》の|国《くに》は
わが|玉《たま》の|緒《を》の|住所《すみか》なりけり
|妹《いも》と|背《せ》の|契《ちぎり》も|永久《とは》に|動《うご》かざる
|神《かみ》の|国《くに》こそ|楽《たの》しかるらめ
|村肝《むらきも》の|心《こころ》|直《すぐ》なる|人《ひと》の|家《いへ》は
|夜《よる》なき|国《くに》の|園《その》に|立《た》ちをり
|喜《よろこ》びの|絶《た》えせぬ|歌《うた》は|神国《かみくに》の
|御殿《みとの》の|門《かど》に|非時《ときじく》ひびくも
|朝日影《あさひかげ》に|消《き》えしと|見《み》えし|月星《つきほし》は
|消《き》えしにあらで|隠《かく》れたるなり
第三三六
|皇神《すめかみ》の|永久《とは》にまします|故郷《ふるさと》に
|帰《かへ》り|行《ゆ》く|身《み》は|死《し》せしにあらず
|涙《なみだ》をば|絞《しぼ》る|眼《まなこ》は|閉《と》づれども
|栄《さか》えに|醒《さ》むるをなど|死《し》と|言《い》はむ
|世《よ》の|中《なか》の|醜《しこ》の|覊絆《きづな》をときはなし
|天《あま》|翔《か》けり|往《ゆ》く|天晴《あは》れ|霊魂《たましひ》
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|言葉《ことば》に|招《まね》かれし
|身《み》は|永久《とこしへ》に|天《あめ》に|栄《さか》ゆく
第三三七
|親《おや》と|子《こ》を|後《あと》に|残《のこ》して|死《まか》る|身《み》も
いと|安《やす》らけし|御国《みくに》|思《おも》へば
|何事《なにごと》も|神《かみ》の|御旨《みむね》と|仰《あふ》ぎつつ
|空《むな》しき|別《わか》れを|歎《なげ》かざらまし
|永久《とことは》に|滅《ほろ》びず|朽《く》ちぬ|神国《かみくに》の
|恵《めぐ》み|思《おも》へば|頼《たの》もしきかな
わが|命《いのち》|神《かみ》に|受《う》けつつまた|神《かみ》に
|召《め》さるも|恵《めぐ》みの|御旨《みむね》と|仰《あふ》がむ
第三三八
|醜雲《しこぐも》の|四方《よも》に|閉《と》ざせる|世《よ》を|捨《す》てて
|愛児《いとしご》|逝《ゆ》きぬ|天津御国《あまつみくに》へ
|皇神《すめかみ》の|愛《あい》の|燈火《ともしび》きらめきて
|愛児《いとしご》の|路《みち》|照《て》らさせたまひぬ
|愛児《いとしご》は|天津乙女《あまつをとめ》の|懐《ふところ》に
|笑《ゑ》みつつ|永久《とは》の|花園《はなぞの》に|往《ゆ》きぬ
|天使《みつかひ》の|歌《うた》や|小琴《をごと》の|音《ね》の|響《ひび》きに
|慰《なぐさ》めたまふ|逝《ゆ》きし|愛児《まなご》を
|逝《ゆ》きし|子《こ》は|天津乙女《あまつをとめ》に|抱《いだ》かれて
|夜《よる》なき|国《くに》に|生《お》ひ|立《た》ちて|行《ゆ》く
|美《うる》はしき|天津乙女《あまつをとめ》に|抱《いだ》かるる
その|喜《よろこ》びは|如何《いか》に|深《ふか》けむ
|御心《みこころ》のままになりしか|愛児《いとしご》は
|夢《ゆめ》のごとくに|現世《うつしよ》|去《さ》りぬ
|皇神《すめかみ》は|生命《いのち》の|元《もと》にましまさば
|与《あた》へたまはむ|愛児《いとしご》の|命《いのち》
第三三九
|懐《なつ》かしくいと|慕《した》はしく|思《おも》ふかな
|天津御国《あまつみくに》にゆけるわが|子《こ》を
|父母《ちちはは》を|後《あと》に|見捨《みす》ててわが|御子《みこ》は
|夜《よる》なき|国《くに》に|昇《のぼ》りけるかな
|火《ひ》に|焼《や》けず|水《みづ》に|流《なが》れぬ|天津国《あまつくに》の
|永久《とは》の|家路《いへぢ》に|住《す》むか|愛児《いとしご》
|現世《うつしよ》に|老《お》いて|艱《なや》める|吾《われ》さへも
|若《わか》きに|帰《かへ》らむ|神《かみ》の|国《くに》には
|行《ゆ》く|先《さき》はただ|白露《しらつゆ》の|命《いのち》なれど
|神《かみ》としあらば|永久《とは》に|栄《さか》えむ
|思《おも》はざる|嵐《あらし》に|遇《あ》ひて|愛児《いとしご》は
|夜《よる》なき|国《くに》に|帰《かへ》りけるかな
|死《し》の|川《かは》や|暗《やみ》の|山路《やまぢ》を|打《う》ち|越《こ》えて
|神《かみ》の|御国《みくに》にわが|子《こ》|昇《のぼ》りし
|浪《なみ》の|上《うへ》|救《すく》ひの|船《ふね》をさしむけて
|拾《ひろ》はせたまへ|愛児《いとしご》の|霊《たま》を
第三四〇
|春《はる》の|花《はな》|夢《ゆめ》と|去《さ》り|往《ゆ》き|紅葉《もみぢ》|散《ち》らす
|風《かぜ》も|身《み》にしむ|人《ひと》の|果敢《はか》なさ
|花《はな》を|愛《め》で|月《つき》を|賞《ほ》めつつゑらぎてし
|友《とも》に|甲斐《かひ》なく|今《いま》は|別《わか》れぬ
わが|友《とも》の|昇《のぼ》りし|後《あと》は|遥《はる》けしと
|思《おも》ひし|空《そら》も|近《ちか》くなりけり
|天地《あめつち》は|離《はな》れをれども|皇神《すめかみ》を
|称《たた》へまつるに|隔《へだ》てこそなき
第三四一
|夜《よ》も|昼《ひる》も|天津御国《あまつみくに》の|幸《さちは》ひを
|胸《むね》にうかべて|送《おく》る|楽《たの》しさ
|天使《あまつかひ》|称《たた》への|歌《うた》は|海山《うみやま》に
みち|溢《あふ》れけり|夜《よ》も|日《ひ》もたえず
|慰《なぐさ》めの|珍《うづ》の|御声《みこゑ》は|故郷《ふるさと》に
|旅《たび》|立《た》つ|人《ひと》の|力《ちから》とぞなる
|言霊《ことたま》の|祝詞《のりと》の|声《こゑ》は|天地《あめつち》に
|響《ひび》きて|霊魂《たま》は|神国《みくに》に|栄《さか》えつ
|太祝詞《ふとのりと》|厳《いづ》の|言葉《ことば》に|守《まも》られて
|安《やす》く|御許《みもと》に|行《ゆ》くぞ|嬉《うれ》しき
|瑞御霊《みづみたま》|恵《めぐ》みの|声《こゑ》を|聞《き》く|時《とき》は
|嶮《けは》しき|山路《やまぢ》もやすく|渡《わた》らむ
|疲《つか》れたる|人《ひと》の|身魂《みたま》もわが|教主《きみ》の
|声《こゑ》をしるべに|喜《よろこ》び|進《すす》まむ
|天使《みつかひ》の|清《きよ》き|御歌《みうた》を|聞《き》く|時《とき》は
|尽《つ》きぬ|希望《のぞみ》の|胸《むね》に|溢《あふ》るる
|暗《くら》き|夜《よ》の|雲《くも》|晴《は》れ|渡《わた》り|天津日《あまつひ》の
|輝《かがや》く|日《ひ》まで|忍《しの》ばせたまへ
(大正一二・五・一一 旧三・二六 於教主殿 明子録)
第一〇章 |神宮《しんぐう》〔一五八五〕
第三四二
|皇神《すめかみ》のいづの|宮居《みやゐ》は|喜《よろこ》びの
|真玉《まだま》|白玉《しらたま》もちて|造《つく》れる
|世《よ》の|人《ひと》の|知《し》らぬ|楽《たの》しみ|輝《かがや》く|栄《さか》え
|神《かみ》の|御国《みくに》は|永久《とは》に|充《み》ちぬる
|天津神国《あまつみくに》|貴《うづ》の|宮居《みやゐ》に|集《あつ》まれる
|道《みち》の|司《つかさ》の|面《おも》かがやけり
|道《みち》のため|生命《いのち》ささげしあかし|人《びと》の
|伊寄《いよ》り|集《つど》へる|天津神国《あまつかみくに》
|白銀《しろがね》の|衣《ころも》まとひしつはものは
|神《かみ》の|御国《みくに》の|門《かど》を|守《まも》れる
|天津国《あまつくに》のうたげの|席《せき》に|招《まね》かれて
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|夜昼《よるひる》うたふ
|天津国《あまつくに》|都《みやこ》のまちに|立《た》ち|並《なら》ぶ
|珍《うづ》の|住家《すみか》は|永久《とこしへ》に|栄《さか》ゆ
|夜《よる》もなく|冬《ふゆ》なき|国《くに》にわが|魂《たま》を
|昇《のぼ》らせたまへ|御心《みこころ》のままに
第三四三
うつし|世《よ》は|破《やぶ》れ|乱《みだ》るる|事《こと》あるも
|永久《とは》に|動《うご》かぬ|神《かみ》の|坐《ま》す|国《くに》
|言霊《ことたま》の|天照国《あまてるくに》は|山海《やまうみ》も
|草木《くさき》も|君《きみ》の|御稜威《みいづ》をうたふ
|大空《おほぞら》を|包《つつ》みかくせし|村雲《むらくも》も
|聖《ひじり》の|君《きみ》の|御水火《みいき》に|晴《は》れつつ
|八重霞《やへがすみ》|伊行《いゆ》きはばかり|散《ち》り|失《う》せぬ
|我《わが》|日《ひ》の|御子《みこ》のいづの|伊吹《いぶき》に
|日《ひ》の|下《もと》の|御楯《みたて》となりし|軍卒《つはもの》を
|称《たた》へたまひぬ|日《ひ》の|御子《みこ》の|声《こゑ》
|鶴《つる》|巣《す》ぐふ|千代田《ちよだ》の|森《もり》に|天津日《あまつひ》の
|影《かげ》さしそへて|万代《よろづよ》をてらす
|大君《おほきみ》の|恵《めぐ》みの|露《つゆ》にうるほひて
|四方《よも》の|木草《きぐさ》も|弥《いや》|茂《しげ》るなり
|平《たひ》らけく|心《うら》|安《やす》らけく|住《す》む|月日《つきひ》
はや|三千年《みちとせ》の|君《きみ》の|御恵《みめぐ》み
第三四四
|大君《おほぎみ》の|御代《みよ》|知食《しろしめ》す|神国《かみくに》は
|天津御国《あまつみくに》の|姿《すがた》なりけり
|心《うら》|安《やす》く|国民《くにたみ》こぞり|栄《さか》え|行《ゆ》くも
|天津日《あまつひ》の|御子《みこ》|知食《しろしめ》す|世《よ》は
|四方《よも》の|国《くに》|浪《なみ》|立《た》ち|騒《さわ》ぐ|世《よ》の|中《なか》に
|君《きみ》の|御代《みよ》こそ|静《しづ》かなりけり
|諸々《もろもろ》の|醜《しこ》の|嵐《あらし》の|吹《ふ》き|来《く》とも
|神《かみ》の|御国《みくに》は|永久《とは》に|静《しづ》けし
|大君《おほきみ》の|光《ひかり》をあびて|心《うら》|安《やす》く
|世《よ》を|渡《わた》るこそ|楽《たの》しき|国民《くにたみ》
|日《ひ》の|御子《みこ》の|御祖《みおや》の|坐《い》ます|天津国《あまつくに》は
|百姓《おほみたから》の|永久《とは》の|住処《すみか》ぞ
第三四五
|日《ひ》の|御子《みこ》の|天降《あも》りましたる|日《ひ》の|国《くに》は
|天津神国《あまつみくに》の|姿《すがた》なりけり
|小雲川《こくもがは》の|水底《みなそこ》|深《ふか》く|影《かげ》うつす
|桶伏山《をけふせやま》は|神《かみ》の|御在所《みあらか》
|天地《あめつち》と|共《むた》|永久《とこしへ》に|揺《ゆる》ぎなき
|日本《にほん》は|御子《みこ》の|高御座《たかみくら》なり
|神《かみ》の|守《も》る|我《わが》|日《ひ》の|下《もと》はもろもろの
なやみくるしみ|知《し》らぬ|真秀良場《まほらば》
|野《の》に|山《やま》に|千歳《ちとせ》を|祝《いは》ふ|声《こゑ》すなり
|天津日《あまつひ》の|御子《みこ》|知《し》らす|御国《みくに》は
|現世《うつしよ》はかりの|浮世《うきよ》と|称《とな》へつつ
|目《め》に|見《み》ぬ|国《くに》のみ|慕《した》ふあはれさ
第三四六
|月《つき》も|日《ひ》も|流《なが》れて|変《かは》る|世《よ》の|中《なか》に
|天津日嗣《あまつひつぎ》の|道《みち》はとこしへ
|皇神《すめかみ》の|貴《うづ》の|教《をしへ》にヨルダンの
あなたの|岸《きし》に|渡《わた》る|信徒《まめひと》
|現世《うつしよ》も|天津御国《あまつみくに》もおしなべて
|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|花《はな》は|匂《にほ》へる
|身体《からたま》はよし|果《は》つるとも|天津国《あまつくに》の
|栄《さか》えの|園《その》に|永久《とは》に|栄《さか》えむ
第三四七
|清《きよ》き|身魂《みたま》の|歓《ゑら》ぎ|住《す》む  |神《かみ》の|御国《みくに》は|永久《とこしへ》の
|晴《は》れて|長閑《のどか》な|春《はる》の|園《その》  |何《なん》のなやみも|白梅《しらうめ》の
|彼方《あなた》|此方《こなた》に|咲《さ》き|匂《にほ》ひ  |生命《いのち》の|清水《しみづ》は|限《かぎ》りなく
|黄金《こがね》の|野辺《のべ》を|潤《うるほ》して  |四方《よも》の|景色《けしき》もいと|清《きよ》し
|神《かみ》の|恵《めぐ》みにヨルダンの  |川《かは》の|流《なが》れは|波《なみ》|立《た》たず
いとおだやかに|見《み》えぬれど  |尚《なほ》も|岸辺《きしべ》に|落《お》ち|惑《まど》ひ
|渡《わた》りかねつつ|罪人《つみびと》の  |立《た》ちて|眺《なが》むる|憐《あは》れさよ
|救《すく》はせ|玉《たま》へ|瑞御霊《みづみたま》
|天教山《てんけうざん》の|高嶺《たかね》より  |木花咲耶姫《このはなさくやひめ》のごと
|天津神国《あまつみくに》の|有様《ありさま》を  |楽《たの》しく|望《のぞ》み|眺《なが》むれば
|波《なみ》|立《た》ち|狂《くる》ふ|比沼真名井《ひぬまなゐ》  |岸《きし》に|渡《わた》るもいと|安《やす》き
|神《かみ》の|守《まも》りに|勇《いさ》み|立《た》ち  |進《すす》み|神国《みくに》に|渡《わた》り|行《ゆ》かむ
|守《まも》らせ|玉《たま》へ|厳御霊《いづみたま》
第三四八
ヨルダンの|川《かは》の|岸辺《きしべ》に|暫《しば》し|立《た》ちて
|神《かみ》の|御国《みくに》を|仰《あふ》ぐ|楽《たの》しさ
|岩《いは》ばしる|川《かは》の|流《ながれ》も|何《なに》かあらむ
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|守《まも》りありせば
|水《みづ》|清《きよ》く|野山《のやま》は|青《あを》く|花《はな》|薫《かを》り
|乳《ちち》は|流《なが》れぬ|天津神国《あまつかみくに》
|美《うる》はしき|神《かみ》のあれます|元津国《もとつくに》は
|野《の》にも|山《やま》にも|結実《みのり》|豊《ゆた》けし
|打《う》ち|仰《あふ》ぐ|限《かぎ》り|広野《ひろの》に|永久《とこしへ》に
|天津日影《あまつひかげ》は|照《て》り|輝《かがや》けり
|瑞御霊《みづみたま》この|珍国《うづくに》を|諸人《もろびと》に
|祖国《そこく》と|切《せつ》に|教《をし》へ|給《たま》ひぬ
|美《うる》はしき|神《かみ》の|御国《みくに》にまひ|上《のぼ》り
また|永久《とこしへ》の|勤《つと》め|励《はげ》まむ
ヨルダンの|川波《かはなみ》|如何《いか》に|高《たか》くとも
|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|安《やす》く|渡《わた》らむ
第三四九
|塵《ちり》の|世《よ》を|深《ふか》くおほへる|雲間《くもま》より
|天津光《あまつひかり》はかがやきにけり
|日《ひ》の|光《ひかり》|打《う》ち|仰《あふ》ぎつつ|人々《ひとびと》の
|喜《よろこ》ぶ|声《こゑ》は|神園《みその》に|響《ひび》く
わが|魂《たま》を|待《ま》てるわが|友《とも》と|会《あ》ふ|時《とき》は
|別《わか》れの|嘆《なげ》き|永久《とは》にあるなし
|雨《あめ》と|降《ふ》る|涙《なみだ》しのびて|大空《おほぞら》に
|朝日《あさひ》さすまで|祈《いの》りてぞ|待《ま》つ
|死《し》の|暗《やみ》の|仮令《たとへ》わが|身《み》を|呑《の》むとても
やがては|覚《さ》めむ|神《かみ》の|光《ひかり》に
|永久《とこしへ》の|魂《たま》の|命《いのち》を|与《あた》へむと
|待《ま》たせ|給《たま》ひぬ|彼方《かなた》の|岸《きし》に
わが|魂《たま》を|招《まね》かせ|給《たま》ふ|教主《きみ》の|声《こゑ》の
|聞《き》こえし|時《とき》や|楽《たの》しかるらむ
第三五〇
|天津神国《あまつみくに》の|御栄光《みさかえ》に  やがては|入《い》りて|友垣《ともがき》と
|会《あ》ふ|時《とき》こそは|村肝《むらきも》の  |心《こころ》の|空《そら》に|暗《やみ》もなし
|災《わざは》ひ|多《おほ》き|現《うつ》し|世《よ》の  |醜《しこ》の|戦《いくさ》の|雲《くも》|晴《は》れて
|朝日《あさひ》の|豊栄《とよさか》|昇《のぼ》ります  |珍《うづ》の|宝座《ほうざ》を|仰《あふ》ぐなり
|御稜威《みいづ》|輝《かがや》く|皇神《すめかみ》の  |御許《みもと》にやがてまひ|上《のぼ》り
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|限《かぎ》りなく  |受《う》けし|恵《めぐ》みを|思《おも》ひ|出《い》でて
いとも|楽《たの》しき|声《こゑ》|合《あは》せ  |謡《うた》ひ|舞《ま》ひつつ|瑞御霊《みづみたま》
|救《すく》ひの|御名《みな》を|称《たた》ふべし
|憂《うれ》ひなやみも|夜《よ》も|冬《ふゆ》も  |涙《なみだ》の|雨《あめ》も|露《つゆ》|知《し》らぬ
|神《かみ》の|御園《みその》に|住《す》みきりて  |世《よ》の|人々《ひとびと》の|夢《ゆめ》にだも
|知《し》らぬ|幸《さち》をば|蒙《かかぶ》らむ  |厳《いづ》の|御霊《みたま》や|瑞御霊《みづみたま》
|統《す》べ|知食《しろしめ》す|神国《かみくに》は  |平安《やすき》と|栄光《さかえ》|限《かぎ》りなし
第三五一
|暗《やみ》の|夜《よ》のとばり|漸《やうや》く|開《ひら》かれて
|天津曙《あまつあけぼの》|現《あら》はれにけり
イスラエル|清《きよ》き|流《なが》れは|天津日《あまつひ》の
|光《ひかり》に|照《て》りて|輝《かがや》きにけり
|巌《いはほ》なす|神《かみ》の|御身《みま》より|湧《わ》き|出《い》づる
|生命《いのち》の|水《みづ》の|流《なが》れとこしへ
|静《しづ》かなる|海《うみ》の|面《おもて》は|五十鈴川《いすずがは》
|清《きよ》き|流《なが》れの|集《あつ》まりと|知《し》れ
|白妙《しろたへ》の|清《きよ》き|衣《ころも》をまとひたる
|神《かみ》の|使《つかひ》の|言《こと》の|葉《は》を|聞《き》け
|神使《みつかひ》と|共《とも》に|佇《たたず》みヨルダンの
|清《きよ》き|流《なが》れに|魂《たま》を|浸《ひた》さむ
(大正一二・五・一二 旧三・二七 於竜宮館 隆光録)
第三篇 |四尾《よつを》の|嶺《みね》
第一一章 |神勲《しんくん》〔一五八六〕
第三五二
|善《よ》き|友《とも》の|打《う》ち|集《つど》ひつつ|皇神《すめかみ》の
|勲《いさを》たたふる|声《こゑ》|勇《いさ》ましも
|喜《よろこ》びて|生命《いのち》の|主《きみ》の|御前《おんまへ》に
|伊寄《いよ》り|集《つど》へる|神人《かみびと》の|群《むれ》
|疑《うたが》はず|心《こころ》|迷《まよ》はずためらはず
|神《かみ》の|大路《おほぢ》にとく|進《すす》めかし
|限《かぎ》りなき|人《ひと》の|霊魂《みたま》の|楽《たの》しみは
|神《かみ》の|御園《みその》に|比《くら》ぶるものなし
|皇神《すめかみ》の|道《みち》によりての|交《まじ》はりは
|親《した》しみ|長《なが》くうつる|事《こと》なし
|生《う》みの|子《こ》のいやつぎつぎに|相伝《あひつた》へ
|神《かみ》の|大道《おほぢ》を|守《まも》りゆくべし
第三五三
|皇神《すめかみ》と|共《むた》|永久《とこしへ》に|限《かぎ》りなき
|珍《うづ》の|生命《いのち》の|栄《さか》え|嬉《うれ》しき
|賤《しづ》の|身《み》も|清《きよ》き|生命《いのち》を|永久《とこしへ》に
|与《あた》へたまひし|尊《たふと》き|神《かみ》はも
|荒野《あらの》|往《ゆ》く|淋《さび》しき|旅《たび》も|夜毎《よるごと》に
|近《ちか》づきにけり|元《もと》のわが|家《や》に
|霞《かすみ》の|奥《おく》|雲《くも》の|彼方《あなた》に|皇神《すめかみ》の
|黄金《こがね》の|御門《みかど》はえ|初《そ》めにけり
|永久《とこしへ》の|珍《うづ》の|命《いのち》をたまひてし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|恵《めぐ》みかしこし
|今《いま》ぞ|知《し》る|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|御勲《おんいさを》
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|深《ふか》き|恵《めぐ》みを
第三五四
|人《ひと》の|目《め》に|見《み》えずかからず|永久《とこしへ》に
|光《ひか》り|輝《かがや》く|神国《みくに》ありけり
|憂《う》き|雲《くも》もあとなく|晴《は》れて|苦《くる》しみの
|雨《あめ》さへ|降《ふ》らぬ|皇神《すめかみ》の|園《その》
|幸《さち》|流《なが》れ|喜《よろこ》び|溢《あふ》れ|御栄《みさかえ》の
|尽《つ》きぬは|神《かみ》の|御園《みその》なりけり
|瑞御霊《みづみたま》|黄金《こがね》の|枢《とぼそ》|引《ひ》きあけて
|待《ま》たせたまへど|恐《おそ》れて|入《い》らず
|天使《あまつかひ》|疾《と》く|下《くだ》り|来《き》てわが|弱《よわ》き
|魂《たま》を|導《みちび》け|神《かみ》の|御園《みその》へ
|大空《おほぞら》に|清《きよ》く|聞《き》こゆる|歌《うた》の|声《こゑ》は
|天津聖《あまつひじり》の|称《たた》ふるなるらむ
第三五五
|世《よ》の|塵《ちり》をはき|清《きよ》めつつ|選《えら》まれし
|清《きよ》けき|民《たみ》の|群《むれ》に|入《い》らばや
|心《うら》|安《やす》く|宴会《うたげ》の|筵《むしろ》に|招《まね》かれて
|玉《たま》の|御歌《みうた》を|聞《き》くはうれしき
|綾錦《あやにしき》ミロクの|殿《との》の|直会《なほらひ》に
|遇《あ》ひし|昔《むかし》のなつかしきかな
|未《いま》だみぬ|尽《つ》きぬ|御幸《みさち》のおぼろげに
うつるも|畏《かしこ》しミロクの|殿《との》は
|瑞御霊《みづみたま》|生命《いのち》の|主《きみ》と|仰《あふ》ぎつつ
|誠《まこと》の|御子《みこ》は|集《あつ》まり|来《き》たるも
|過《す》ぎ|去《さ》りし|憂《うれ》ひ|悩《なや》みも|今《いま》ははや
よろこび|事《ごと》の|種《たね》となりぬる
|瑞御霊《みづみたま》その|勲《いさをし》を|高《たか》らかに
|親《した》しくほむる|日《ひ》こそ|待《ま》たるる
第三五六
|老《お》いゆきて|夕日《ゆふひ》|影《かげ》なすわが|命《いのち》
|失《う》するも|悔《く》いじ|神《かみ》とありせば
|黄金《こがね》なす|翅《つばさ》にのりて|故郷《ふるさと》に
|勇《いさ》みて|往《ゆ》かむ|神《かみ》の|守《まも》りに
ヨルダンの|岸辺《きしべ》の|露《つゆ》を|踏《ふ》みわけて
|神国《みくに》に|昇《のぼ》る|日《ひ》は|近《ちか》づきぬ
|天使《あまつかひ》|下《くだ》り|来《き》ますか|黄金《こがね》なす
|翅《つばさ》の|音《おと》の|聞《き》こえ|来《き》にけり
|綾錦《あやにしき》|厳《いづ》の|都《みやこ》にあれませる
|教主《きみ》に|遇《あ》ふ|日《ひ》を|待《ま》ちわびにけり
第三五七
|錆《さ》び|腐《くさ》り|失《う》せ|往《ゆ》く|宝《たから》|何《なに》かあらむ
|誠《まこと》の|宝《たから》を|神国《みくに》に|積《つ》まばや
|何《なに》よりもわが|求《もと》むるは|天津国《あまつくに》の
|夜《よる》なき|園《その》の|清所《すがど》なりけり
わが|名《な》をも|記《しる》させたまへ|天津国《あまつくに》の
|清《きよ》き|御文《みふみ》に|輝《かがや》くばかり
|天《あめ》の|星《ほし》|真砂《まさご》の|数《かず》の|罪咎《つみとが》を
|払《はら》はせたまへ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|八千座《やちくら》の|置戸《おきど》を|負《お》ひて|世《よ》の|人《ひと》を
|救《すく》ひやらむと|誓《ちか》ひしわが|教主《きみ》
わが|名《な》をば|生命《いのち》の|文《ふみ》に|記《しる》されしと
|天津《あまつ》たよりに|聞《き》く|日《ひ》|嬉《うれ》しき
|天津国《あまつくに》に|澄《す》み|渡《わた》りたる|諸声《もろごゑ》は
|清《きよ》き|御霊《みたま》の|謡《うた》ふなるらむ
|露《つゆ》ばかり|乱《みだ》れ|滅《ほろ》びも|無《な》き|国《くに》の
|都《みやこ》に|至《いた》ると|思《おも》へばうれしき
第三五八
|打《う》ち|仰《あふ》ぐ|天津御空《あまつみそら》に|輝《かがや》ける
|楽《たの》しき|住所《すみか》ありと|知《し》らずや
わが|魂《たま》は|輝《かがや》く|神《かみ》の|御国《みくに》にて
|親《した》しき|友《とも》と|共《とも》に|語《かた》らむ
|諸々《もろもろ》の|嘆《なげ》き|苦《くる》しみ|打《う》ち|忘《わす》れ
|御民《みたみ》となりて|神業《みわざ》に|励《いそ》しめ
|豊《ゆた》かなる|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|永久《とこしへ》に
|歓《ゑら》ぎ|楽《たの》しむ|天津国人《あまつくにびと》
第三五九
|嬉《うれ》しさの|涙《なみだ》かわきて|頼《たの》もしく
|悲《かな》しくありし|身《み》はくれてゆく
|現身《うつそみ》の|命《いのち》の|消《き》ゆる|其《そ》の|日《ひ》まで
|神《かみ》は|安《やす》けく|守《まも》りましけり
|新《あたら》しく|天津御国《あまつみくに》に|甦《よみがへ》り
|尽《つ》きぬ|命《いのち》をまたも|賜《たま》はる
|汚《けが》れたる|諸人達《もろびとたち》の|罪《つみ》を|許《ゆる》し
|御禊《みそぎ》の|業《わざ》に|救《すく》はせたまへ
|日《ひ》に|夜《よる》に|諸《もも》の|汚《けが》れを|掃《は》き|清《きよ》め
|長閑《のどか》な|春《はる》に|遇《あ》ふ|日《ひ》|嬉《うれ》しき
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みの|中《なか》にやすらひて
|天津使《あまつつかひ》とともに|仕《つか》へむ
第三六〇
|夢《ゆめ》の|間《ま》に|月日《つきひ》はたちて|年《とし》|老《お》いぬ
ただ|此《こ》の|上《うへ》は|神《かみ》のまにまに
|人《ひと》の|世《よ》の|命《いのち》は|如何《いか》に|長《なが》くとも
|百年《ももとせ》|越《こ》ゆるものは|稀《まれ》なり
|振《ふ》り|返《かへ》り|歩《あゆ》みし|道《みち》を|眺《なが》むれば
|罪《つみ》と|汚《けが》れの|足跡《あしがた》のみなる
|悲《かな》しみし|心《こころ》は|重荷《おもに》となり|果《は》てて
|行《ゆ》き|難《なや》むほど|年《とし》は|暮《く》れけり
わが|魂《たま》を|清《きよ》め|澄《す》まして|皇神《すめかみ》の
|姿《すがた》をうつす|鏡《かがみ》となせよ
|新《あたら》しき|晨《あした》を|迎《むか》へて|新《あら》たなる
|春《はる》の|光《ひか》りに|遇《あ》はさせたまへ
第三六一
とどめ|得《え》ぬ|月日《つきひ》の|歩《あゆ》み|早《はや》ければ
わが|身《み》の|花《はな》はうつろひにけり
|行《ゆ》く|秋《あき》の|紅葉《もみぢ》の|色《いろ》もはやあせて
|冬《ふゆ》も|間近《まぢか》くなりにけるかな
|振《ふ》り|返《かへ》り|過《す》ぎ|来《こ》し|方《かた》を|眺《なが》むれば
|雲《くも》に|閃《ひらめ》く|電《いなづま》の|如《ごと》し
|行《ゆ》く|水《みづ》の|面《おもて》に|浮《う》かぶ|水泡《うたかた》の
わが|身《み》の|果《はて》は|影《かげ》も|止《とど》めず
|水泡《うたかた》の|水玉《みたま》と|消《き》えしわが|魂《たま》は
|夜《よる》なき|国《くに》に|甦《よみがへ》りつつ
|永久《とこしへ》に|尽《つ》きぬ|命《いのち》を|保《も》ちながら
|夢《ゆめ》の|浮世《うきよ》と|言《い》ひて|夢《ゆめ》|見《み》つ
(大正一二・五・一二 旧三・二七 於教主殿 明子録)
第一二章 |神教《しんけう》〔一五八七〕
第三六二
この|年《とし》も|神《かみ》の|御業《みわざ》の|御《おん》ために
|捧《ささ》げまつらむ|許《ゆる》させたまへ
たとへ|身《み》に|幸《さち》あらずとも|世《よ》の|為《ため》に
|尽《つく》す|身魂《みたま》となさしめたまへ
いとし|子《ご》の|身《み》に|幸《さちは》ひのあれかしと
|祈《いの》るは|親《おや》の|心《こころ》なりけり
|明日《あす》の|日《ひ》は|如何《いか》にならむと|村肝《むらきも》の
|心《こころ》なやめず|今日《けふ》を|楽《たの》しめ
|御恵《みめぐ》みの|露《つゆ》はわが|身《み》におきそひて
|神《かみ》の|大道《おほぢ》にさきくあれかし
|御教《みをしへ》の|珍《うづ》の|言霊《ことたま》|力《ちから》にて
|世《よ》に|現《あら》はさむ|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を
|村雲《むらくも》のよしやわが|日常《よ》を|包《つつ》むとも
|忽《たちま》ち|晴《は》れむ|神《かみ》の|光《ひか》りに
|安河《やすかは》に|誓約《うけひ》たましわが|主《きみ》を
|偲《しの》びまつりて|身《み》をや|尽《つく》さむ
第三六三
|世《よ》をしらす|我《わが》|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|手《て》に
|縋《すが》れば|世《よ》には|恐《おそ》るべきなし
|新《あたら》しき|春《はる》は|長閑《のどか》に|廻《めぐ》り|来《き》ぬ
|神《かみ》の|恵《めぐ》みのとこしへにして
|旅枕《たびまくら》|草《くさ》の|褥《しとね》にねむるとも
|守《まも》らせたまひぬ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
わが|往《ゆ》かむ|道《みち》に|塞《ふさ》がる|深霧《ふかぎり》を
|吹《ふ》きはらひませ|科戸辺《しなどべ》の|神《かみ》
|夜昼《よるひる》の|常《つね》に|行《ゆ》き|交《か》ふ|世《よ》の|中《なか》は
|神《かみ》より|外《ほか》に|頼《たよ》るべきなし
わが|身魂《みたま》|栄《さか》ゆる|時《とき》も|衰《おとろ》ふる
|折《を》りにも|神《かみ》は|見捨《みす》て|給《たま》はず
第三六四
|皇神《すめかみ》の|御前《みまへ》に|寝《い》ぬる|安《やす》けさは
|夢《ゆめ》の|浮世《うきよ》に|知《し》る|人《ひと》もなし
|死出《しで》の|山《やま》|過《す》ぎ|行《ゆ》く|時《とき》も|厳御霊《いづみたま》
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|御名《みな》に|安《やす》けき
|我《わが》|神《かみ》と|倶《とも》にありせば|幸《さち》|深《ふか》し
|恐《おそ》れ|難《なや》みも|逃《に》げ|失《う》せゆくなり
|安《やす》らかに|病《やまひ》の|床《とこ》に|臥《ふ》しながら
|生命《いのち》の|国《くに》を|望《のぞ》む|楽《たの》しさ
|御教《みをしへ》に|眼《まなこ》さむるぞ|嬉《うれ》しけれ
|甦《よみがへ》り|往《ゆ》くわが|身《み》|思《おも》へば
第三六五
|世《よ》を|去《さ》りし|友《とも》の|身《み》の|上《うへ》|悲《かな》しむな
|死《し》こそ|神国《みくに》に|昇《のぼ》る|架橋《かけはし》
|死《し》の|影《かげ》の|襲《おそ》ひ|来《き》たるも|厭《いと》はまじ
|永久《とは》のやすみは|神国《みくに》にありせば
|先立《さきだ》ちし|親子《おやこ》|兄弟《はらから》|友垣《ともがき》に
|廻《めぐ》りあふ|日《ひ》の|死出《しで》の|旅《たび》なり
|末《すゑ》の|日《ひ》の|迫《せま》り|切《き》たらば|墓《はか》を|蹴《け》り
|甦《よみがへ》りつつ|栄《さかえ》を|受《う》けむ
|死《し》のねむり|醒《さ》ます|御声《みこゑ》を|待《ま》ちわびて
|埋《うづ》むる|友《とも》を|涙《なみだ》に|送《おく》る
第三六六
|世《よ》に|下《くだ》り|世《よ》の|憂《う》き|事《ごと》をまつぶさに
|嘗《な》めさせたまふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
かへり|来《こ》ぬ|人《ひと》を|慕《した》ひて|泣《な》く|時《とき》に
|慰《なぐさ》めたまふ|神《かみ》の|御声《おんこゑ》
|千座《ちくら》をば|身《み》に|負《お》ひながら|嘲罵《あざけり》や
|虐《しひた》げうけし|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
わが|罪《つみ》を|憂《うれ》ひ|悲《かな》しむ|時《とき》こそは
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|助《たす》けありけり
|千座《ちくら》をば|負《お》はせたまひて|許々多久《ここたく》の
|苦《く》をしのびてし|尊《たふと》き|教主《きみ》なり
|神《かみ》の|代《よ》の|審判《さばき》を|受《う》くるその|時《とき》に
|恵《めぐ》ませたまへ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
第三六七
|今《いま》は|早《はや》|難《なや》みのあとも|留《とど》めずに
|御手《みて》に|曳《ひ》かれて|御園《みその》へ|進《すす》むも
|現世《うつしよ》の|荒《あら》き|浪風《なみかぜ》|切《き》り|抜《ぬ》けて
|永久《とは》に|長閑《のどか》な|岸《きし》に|渡《わた》らむ
|死《し》に|行《ゆ》くも|此《この》|世《よ》にありて|働《はたら》くも
|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|漏《も》るることなし
第三六八
|世《よ》を|去《さ》りし|友垣《ともがき》|跡《あと》を|偲《しの》ぶれば
|心《こころ》|淋《さび》しくなり|勝《まさ》りゆく
|身体《からたま》は|藻脱《もぬ》けのからとなるとても
|霊《たま》は|神国《みくに》に|生《い》きて|栄《さか》えむ
|皇神《すめかみ》の|清《きよ》き|大道《おほぢ》を|辿《たど》りつつ
まめに|仕《つか》へし|人《ひと》の|幸《さち》なる
|世《よ》の|中《なか》に|残《のこ》しおきたる|善《よ》き|事《こと》の
|花《はな》|咲《さ》き|出《い》でて|実《みの》る|神国《かみくに》
|浪風《なみかぜ》の|荒《あら》く|寄《よ》せ|来《く》る|其《そ》の|日《ひ》をも
|吾等《われら》がために|守《まも》らせたまふ
|神《かみ》に|寄《よ》りて|難《なや》みに|堪《た》へし|心《こころ》こそ
いや|永久《とこしへ》の|実《み》を|結《むす》ぶなり
|現世《うつしよ》に|学《まな》びし|知恵《ちゑ》は|剥《は》ぎ|取《と》られ
|富《とみ》は|消《き》えゆく|元《もと》つ|神国《みくに》なり
ただ|神《かみ》の|言葉《ことば》によりて|悟《さと》り|得《え》し
|智慧《ちえ》と|富《とみ》とは|永久《とは》に|栄《さか》えむ
第三六九
|選《えら》まれし|世人《よびと》のために|築《きづ》かれし
|神国《みくに》の|殿《との》に|入《い》る|日《ひ》|嬉《うれ》しも
|輝《かがや》ける|神《かみ》の|御国《みくに》の|花園《はなぞの》に
|待《ま》つわが|友《とも》と|逢《あ》ふは|嬉《うれ》しき
|皇神《すめかみ》の|御許《みもと》へ|昇《のぼ》るわが|霊《たま》を
|引《ひ》きな|止《とど》めそ|神《かみ》のまにまに
いろいろとかけし|望《のぞ》みも|散《ち》る|花《はな》の
|果敢《はか》なき|此《この》|世《よ》と|思《おも》へばうたてき
|永久《とことは》の|御栄《みさかえ》に|入《い》る|魂《たましひ》の
|留《とど》まるべしやはここに|暫《しば》しも
|涙《なみだ》なく|苦《くる》しみもなく|喜《よろこ》びの
|尽《つ》きぬ|神国《みくに》に|昇《のぼ》るは|楽《たの》しも
|瑞御霊《みづみたま》|厳《いづ》の|功《いさを》を|天人《あまびと》と
|謳《うた》ふよき|日《ひ》の|待《ま》たれぬるかな
第三七〇
|雷《いかづち》を|笛《ふえ》の|音《ね》となし|電《いなづま》を
|劍《つるぎ》となして|天地《あめつち》しらす
|天地《あめつち》を|豊《ゆた》かにしらす|皇神《すめかみ》の
|光《ひかり》は|平和《やすき》を|下《くだ》したまひぬ
|正《ただ》しきを|守《まも》り|平和《やすき》を|守《まも》ります
|神《かみ》の|懐《ふところ》いとどゆたけし
|神《かみ》の|法《のり》|捨《す》てて|大道《おほぢ》に|逆《さか》らひし
|吾《われ》にも|神《かみ》はやすきをたまへり
|御怒《みいか》りを|放《はな》ちたまはで|親《おや》の|如《ごと》
|恵《めぐ》ませたまひぬ|元津御神《もとつみかみ》は
|青雲《あをくも》の|棚曳《たなび》く|極《きは》み|白雲《しらくも》の
むかふす|限《かぎ》り|御名《みな》を|称《たた》へむ
第三七一
|天津神《あまつかみ》|厳《いづ》の|御座《みくら》に|現《あ》れまして
|葦原《あしはら》の|国《くに》を|守《まも》らせたまへり
|大前《おほまへ》に|御稜威《みいづ》|畏《かしこ》み|伏《ふ》し|拝《をが》む
その|言《こと》の|葉《は》に|喜《よろこ》びあふるる
|喜《よろこ》びを|如何《いか》に|包《つつ》まむ|術《すべ》もなし
|神《かみ》のみやびの|言《こと》の|葉《は》のかげ
|蝦夷《えぞち》|千島《しま》|高砂島《たかさごじま》の|外《そと》までも
わが|大君《おほきみ》の|恵《めぐ》みあまねし
|国民《くにたみ》は|君《きみ》の|御功《みいさを》をあがめつつ
とこしへなれとひたに|祈《いの》るも
|大空《おほぞら》に|聳《そび》ゆる|富士《ふじ》の|高山《たかやま》も
|地《ち》に|伏《ふ》す|谷《たに》も|君《きみ》の|食《を》す|国《くに》
|瑞枝《みづえ》さす|林《はやし》も|共《とも》に|御言葉《みことば》の
|光《ひかり》に|遇《あ》ひて|実《み》を|結《むす》ぶなり
|鄙都《ひなみやこ》へだてもあらにわが|主《きみ》の
|御稜威《みいづ》を|謡《うた》ふ|声《こゑ》うるはしも
(大正一二・五・一二 旧三・二七 於教主殿 明子録)
第一三章 |神祈《しんき》〔一五八八〕
第三七二
|天《あめ》の|下《した》|四方《よも》の|国々《くにぐに》|安《やす》かれと
|日毎《ひごと》に|祈《いの》る|外《ほか》なかりけり
わが|愛《め》づるうましき|国《くに》を|朝夕《あさゆふ》に
|恵《めぐ》ませ|玉《たま》ふ|元津大神《もとつおほかみ》
|内《うち》は|安《やす》く|外《そと》より|襲《おそ》ふ|仇《あだ》もなく
|御国《みくに》|穏《おだひ》に|進《すす》ませ|玉《たま》へ
|神《かみ》に|出《い》でし|誠《まこと》の|智慧《ちゑ》に|充《み》ち|溢《あふ》れ
|御国《みくに》の|花《はな》と|匂《にほ》はせ|玉《たま》へ
|常永久《とことは》に|我《わが》|神国《かみくに》の|生命《いのち》となりて
|恵《めぐ》みの|露《つゆ》に|潤《うるほ》したまへ
第三七三
|国々《くにぐに》の|幸《さち》を|祈《いの》らむとりわけて
わが|日本《ひのもと》の|行末《ゆくすゑ》の|幸《さち》を
|四《よつ》の|海《うみ》|波風《なみかぜ》|立《た》たず|浦安《うらやす》く
|田畑《たはた》は|稔《みの》る|珍《うづ》の|神国《みくに》よ
|鄙都《ひなみやこ》|恵《めぐ》みに|隔《へだ》てあらねども
|民《たみ》の|心《こころ》に|差別《けぢめ》あるかな
|神《かみ》の|子《こ》のこぞりて|神《かみ》に|仕《つか》へつつ
|御代《みよ》を|祝《ことほ》ぐ|声《こゑ》|聞《き》かまほし
|願《ねが》はくば|元津御神《もとつみかみ》の|御教《みをしへ》を
|普《あまね》く|四方《よも》に|知《し》らせたきもの
|野《の》も|山《やま》も|響《ひび》き|渡《わた》れり|言霊《ことたま》の
|珍《うづ》の|御声《みこゑ》はいと|爽《さはや》かに
|岩《いは》よりも|堅《かた》き|神代《かみよ》に|住《す》みながら
|何《なに》|驚《おどろ》くか|神国《かみくに》の|民《たみ》
第三七四
|磯輪垣《しわがき》の|秀妻《ほづま》の|国《くに》を|朝夕《あさゆふ》に
|守《まも》らせたまへ|伊勢《いせ》の|大神《おほかみ》
|打《う》ち|寄《よ》する|荒《あら》ぶる|波《なみ》を|凪《な》ぎ|払《はら》ひ
|治《をさ》めたまはれ|大君《おほきみ》の|国《くに》を
|四海《しかい》|波《なみ》いとも|静《しづ》かに|治《をさ》まれる
|自転倒島《おのころじま》は|神《かみ》の|御舎殿《みあらか》
|日《ひ》の|下《もと》の|稜威《いづ》の|光《ひかり》を|四方《よも》の|国《くに》に
|輝《てら》し|玉《たま》へり|伊勢《いせ》の|大神《おほかみ》
|四方《よも》の|国《くに》|皆《みな》|同胞《はらから》と|睦《むつ》び|合《あ》ひ
|神国《みくに》の|民《たみ》となる|日《ひ》|待《ま》たるる
第三七五
|雪《ゆき》をもて|被《おほ》ひかくしつ|雨《あめ》をそそぎ
|育《はぐく》みたまふ|畑《はた》の|種物《たなもの》
|天津日《あまつひ》に|暖《あたた》め|尽《つ》きぬ|露《つゆ》|下《くだ》し
|風《かぜ》を|送《おく》りて|恵《めぐ》ませたまふ
|朝夕《あさゆふ》に|耕作《たがやし》|勤《つと》むる|狭田長田《さだながた》
|稲穂《いなほ》の|波《なみ》は|神《かみ》の|御恵《みめぐ》み
よきものは|皆《みな》|御空《みそら》より|下《くだ》り|来《き》ぬ
|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|讃《ほ》めよ|称《たた》へよ
|雨風《あめかぜ》をよき|折《を》りをりに|起《おこ》しつつ
|種子物《たなつもの》をら|育《はぐく》みたまふ
|花《はな》|咲《さ》かせ|鳥《とり》を|養《やしな》ひ|種子物《たなつもの》を
|茂《しげ》らせたまふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|吾等《われら》をも|御子《みこ》と|称《とな》へて|朝夕《あさゆふ》に
|与《あた》へたまひぬ|生命《いのち》の|糧《かて》を
|永久《とこしへ》の|魂《たま》の|生命《いのち》も|身《み》の|幸《さち》も
|種子物《たなつもの》みな|神《かみ》の|賜物《たまもの》
|村肝《むらきも》の|清《きよ》けき|赤《あか》き|心《こころ》もて
|珍《うづ》の|御前《みまへ》に|御饌《みけ》|奉《たてまつ》れ
第三七六
|春《はる》は|去《は》り|夏《なつ》|過《す》ぎ|秋《あき》の|稔《みの》り|見《み》て
|冬籠《ふゆごも》りせむ|神《かみ》の|館《やかた》に
|秋《あき》の|田《た》の|稲《とし》は|豊《ゆた》けし|百姓《みたから》の
|野辺《のべ》に|謡《うた》へる|声《こゑ》は|澄《す》みけり
|日《ひ》の|光《ひかり》|月《つき》の|露《つゆ》にて|育《はぐく》みし
|秋《あき》の|田《た》の|面《も》に|黄金《こがね》の|波《なみ》|立《た》つ
|御恵《みめぐ》みに|山々《やまやま》|躍《をど》り|谷《たに》|謡《うた》ひ
|恵《めぐ》みの|露《つゆ》は|玉《たま》とかがよふ
|生業《なりはひ》を|励《いそ》しむ|民《たみ》を|愛《め》でたまひ
|生命《いのち》の|種子《たね》を|豊《ゆた》に|賜《たま》へる
|皇神《すめかみ》に|初穂《はつほ》|捧《ささ》げて|御恵《みめぐ》みの
|千重《ちへ》の|一重《ひとへ》に|酬《むく》いまつらな
第三七七
いざ|共《とも》に|天津祝詞《あまつのりと》を|奏《とな》へつつ
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|祝《いは》ひ|奉《まつ》らな
|皇神《すめかみ》の|造《つく》りたまひし|天地《あめつち》は
|栄光《さかえ》|歓喜《よろこび》|充《み》ち|溢《あふ》れたり
わが|母《はは》の|懐《ふところ》にありしその|日《ひ》より
|踏《ふ》みて|来《き》にけむ|麻柱《あななひ》の|道《みち》
|今《いま》の|世《よ》もまた|後《のち》の|世《よ》も|災《わざは》ひを
|除《のぞ》きて|神《かみ》は|守《まも》りたまはむ
|神《かみ》の|子《こ》と|生《う》まれあひたる|人草《ひとぐさ》は
|神《かみ》を|除《のぞ》きて|如何《いか》で|栄《さか》えむ
|村肝《むらきも》の|心《こころ》の|迷《まよ》ひ|洗《あら》ひ|去《さ》り
|恵《めぐ》ませたまふ|麻柱《あななひ》の|神《かみ》
|元津神《もとつかみ》|厳《いづ》と|瑞《みづ》との|二柱《ふたはしら》に
|御栄光《みさかえ》あれと|祈《いの》る|神《かみ》の|子《こ》
第三七八
|万有《ものみな》は|栄《さか》え|輝《かがや》き|喜《よろこ》びに
|充《み》ちて|美《うる》はし|神《かみ》の|御国《みくに》は
|御恵《みめぐ》みの|光《ひかり》|輝《かがや》き|四方《よも》の|国《くに》
|百《もも》の|草木《くさき》も|生《お》ひ|立《た》ちて|行《ゆ》く
あぢきなき|浮世《うきよ》の|中《なか》に|瑞御霊《みづみたま》
|希望《のぞみ》かかへて|下《くだ》りましけり
|誘惑《いざなひ》の|暗《やみ》の|黒雲《くろくも》かかるとも
|行《ゆ》く|先《さき》|明《あか》し|神《かみ》の|大道《おほぢ》は
|澄《す》み|渡《わた》る|清《きよ》き|御空《みそら》を|仰《あふ》ぎ|見《み》よ
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|貴《うづ》の|神姿《みすがた》と
第三七九
|雪霜《ゆきしも》の|烈《はげ》しき|冬《ふゆ》に|先立《さきだ》ちて
|秋《あき》の|田《た》の|面《も》に|黄金《こがね》の|波《なみ》|打《う》つ
|喜《よろこ》びて|勇《いさ》み|収穫《かりい》れ|田人等《たびとら》が
|珍《うづ》の|御前《みまへ》に|初穂《はつほ》ささぐる
|顕《うつ》し|世《よ》は|神《かみ》の|御国《みくに》の|田畑《たはた》なれば
|畏《おそ》れ|慎《つつし》み|日々《ひび》に|励《はげ》めよ
よき|種子《たね》を|神《かみ》の|畑《はたけ》に|蒔《ま》くならば
|豊《ゆた》に|稔《みの》らむ|千頴《ちかひ》|八千頴《やちかひ》
|大本《おほもと》は|神《かみ》の|教《をしへ》の|田畑《たはた》なり
|獣《けもの》|来《き》たりて|荒《あら》さむとせり
|種子《たね》|蒔《ま》けば|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|気《き》を|配《くば》れ
|鴉《からす》|来《き》たりて|実《み》をや|拾《ひろ》はむ
よき|種子《たね》を|蒔《ま》けばよき|花《はな》よき|稔《みの》り
|悪《あ》しき|種子《たね》をな|夢《ゆめ》にも|蒔《ま》きそ
|八束穂《やつかほ》の|瑞穂《みづほ》の|稲《いね》を|刈《か》り|入《い》るる
|秋《あき》こそ|待《ま》ため|御使《みつかひ》と|共《とも》に
第三八〇
|大前《おほまへ》に|今《いま》|立《た》ち|祈《いの》る|妹《いも》と|背《せ》を
|恵《めぐ》ませ|玉《たま》へいや|永久《とこしへ》に
|妹《いも》と|背《せ》の|愛《あい》の|衣《ころも》の|破《やぶ》れじと
|守《まも》らせ|玉《たま》へいや|永久《とこしへ》に
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みの|露《つゆ》のなかりせば
|安《やす》けからまじ|妹《いも》と|背《せ》の|道《みち》
|八重葎《やへむぐら》|囲《かこ》める|賤《しづ》の|伏屋《ふせや》にも
|愛《あい》の|光《ひかり》の|楽《たの》しみは|充《み》つ
|妹《いも》と|背《せ》が|互《たが》ひに|助《たす》け|救《すく》ひ|合《あ》ひ
|渡《わた》らせ|玉《たま》へ|浮世《うきよ》の|旅《たび》を
|相共《あひとも》に|神《かみ》の|大道《おほぢ》に|手《て》をとりて
|進《すす》ませ|玉《たま》へ|清《きよ》く|正《ただ》しく
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|御楯《みたて》と|選《えら》まれて
|今日《けふ》|妹《いも》と|背《せ》を|契《ちぎ》る|嬉《うれ》しさ
第三八一
|妹《いも》と|背《せ》を|契《ちぎ》る|伏屋《ふせや》の|神床《かむどこ》に
|臨《のぞ》ませ|玉《たま》ふ|須勢理姫《すせりひめ》の|神《かみ》
|那岐那美《なぎなみ》の|稜威《いづ》の|心《こころ》になりませる
|祝《いはひ》の|席《むしろ》|開《ひら》く|目出《めで》たさ
|大前《おほまへ》に|立《た》ち|並《なら》びつつ|慎《つつし》みて
|結《むす》ぶ|契《ちぎり》は|動《うご》かざらまし
|真心《まごころ》の|限《かぎ》りを|尽《つく》し|妹《いも》と|背《せ》が
|神《かみ》の|大道《おほぢ》に|永久《とは》に|仕《つか》へむ
|妹《いも》と|背《せ》の|愛《あい》の|礎《いしずゑ》|固《かた》く|据《す》ゐて
|平和《へいわ》の|柱《はしら》|永久《とこしへ》に|樹《た》てむ
|何事《なにごと》も|神《かみ》に|従《したが》ひ|進《すす》みなば
|妹背《いもせ》の|道《みち》も|久《ひさ》しかるらむ
|妹《いも》と|背《せ》の|清《きよ》き|正《ただ》しき|交《まじ》はりは
いや|永久《とこしへ》に|楽《たの》しみ|尽《つ》きず
|苦《くる》しみを|互《たが》ひに|分《わか》ち|担《にな》ひつつ
|勇《いさ》みて|進《すす》め|神《かみ》の|大道《おほぢ》に
(大正一二・五・一二 旧三・二七 於竜宮館 隆光録)
第一四章 |神幸《しんかう》〔一五八九〕
第三八二
|三月三日《さんぐわつみつか》の|桃《もも》の|花《はな》  |五月五日《ごぐわついつか》の|桃《もも》の|実《み》や
|菖蒲《あやめ》の|花《はな》の|咲《さ》き|匂《にほ》ふ  |厳《いづ》の|吉《よ》き|日《ひ》は|来《き》たりけり
|遠《とほ》き|神代《かみよ》の|昔《むかし》より  いや|永久《とこしへ》に|定《さだ》まれる
|神《かみ》の|光《ひかり》は|妹《いも》と|背《せ》の  |生代《いくよ》を|契《ちぎる》|神柱《かむばしら》
|祝《いはひ》の|日《ひ》とぞなりにける
|山《やま》と|山《やま》との|谷間《たにあひ》を  |流《なが》るる|水《みづ》の|底《そこ》|清《きよ》く
|菖蒲《あやめ》の|花《はな》は|朝夕《あさゆふ》に  |妙《たへ》なる|薫《かを》りを|放《はな》ちつつ
わが|庭前《にはさき》の|池《いけ》の|面《も》に  |影《かげ》をば|映《うつ》す|水鏡《みづかがみ》
|上《うへ》と|下《した》とは|紫《むらさき》の  |花《はな》と|花《はな》との|妹《いも》と|背《せ》が
|睦《むつ》びし|如《ごと》く|映《うつ》ろへり
|此《この》|世《よ》の|憂《う》きも|悩《なや》みをも  また|喜《よろこ》びも|楽《たの》しみも
|共《とも》におひつつ|睦《むつま》じく  |厳《いづ》の|栄光《さかえ》の|神園《みその》をば
|望《のぞ》みて|進《すす》む|妹《いも》と|背《せ》の  |正《ただ》しき|道《みち》の|楽《たの》しさよ
|八千代《やちよ》と|寿《ことほ》ぐ|百鳥《ももどり》の  |歌《うた》の|調《しらべ》も|長閑《のどか》なり
|神《かみ》の|御庭《みには》に|集《あつ》まりし  |珍《うづ》の|信徒《まめひと》|睦《むつ》び|合《あ》ひ
|花《はな》の|莚《むしろ》に|嬉《うれ》しげに  うごなはり|居《ゐ》る|有様《ありさま》は
|天津使《あまつつかひ》の|如《ごと》くにて  |妹背《いもせ》の|幸《さち》を|祈《いの》るなり
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |恩頼《みたまのふゆ》を|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
第三八三
|妹《いも》と|背《せ》の|道《みち》を|開《ひら》きし|那岐那美《なぎなみ》の
|神《かみ》の|御声《みこゑ》は|今《いま》なほ|聞《き》こゆも
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|下《くだ》り|来《き》て
|今日《けふ》の|喜《よろこ》び|幸《さち》はひ|給《たま》はむ
|現世《うつしよ》に|立《た》ちて|働《はたら》くわが|友《とも》を
|与《あた》へ|給《たま》はれ|妹《いも》と|背《せ》の|道《みち》
|須勢理姫《すせりひめ》|出雲《いづも》の|神《かみ》とならばして
|結《むす》び|給《たま》ひぬ|妹背《いもせ》の|道《みち》を
|産土《うぶすな》の|神《かみ》の|恵《めぐ》みのとりなしに
|結《むす》び|終《をは》りぬ|妹背《いもせ》の|道《みち》を
|幾千代《いくちよ》も|幸《さち》はひ|給《たま》へ|大御神《おほみかみ》
|産土神《うぶすながみ》と|力《ちから》|協《あは》せて
第三八四
|元津神《もとつかみ》|厳《いづ》と|瑞《みづ》との|二柱《ふたはしら》に
|仕《つか》ふる|家内《やぬち》は|永久《とは》に|楽《たの》しき
|兄弟《はらから》も|家族《うから》|親族《やから》も|親《した》しみて
|喜《よろこ》び|分《わか》つ|家《いへ》の|楽《たの》しさ
|朝夕《あさゆふ》に|業《わざ》|勤《いそ》しみて|皇神《すめかみ》の
|御栄光《みさかえ》あれと|祈《いの》る|朝宵《あさよひ》
|霜枯《しもが》れし|浮世《うきよ》に|住《す》めど|楽《たの》もしき
|常世《とこよ》の|春《はる》の|心地《ここち》するなり
第三八五
|天津国《あまつくに》|花《はな》の|御園《みその》に|建《た》つ|家《いへ》は
|黄金《こがね》の|薨《いらか》|四辺《あたり》まばゆき
|火《ひ》に|焼《や》かれ|水《みづ》に|流《なが》るる|現世《うつしよ》の
|家居《いへゐ》は|夢《ゆめ》の|果敢《はか》なきを|知《し》れ
|八重葎《やへむぐら》|門《かど》を|鎖《とざ》せし|賤ケ家《しづがや》も
|祝詞《のりと》|聞《き》こえて|宮居《みやゐ》となれり
|逸《はや》りてし|己《おの》が|心《こころ》を|笑《わら》ひつつ
|今《いま》|落《お》ち|着《つ》きぬ|神《かみ》の|言葉《ことば》に
|湧《わ》くままに|野中《のなか》の|清水《しみづ》|掬《むす》びつつ
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|恵《めぐ》みさとりぬ
|玉《たま》の|井《ゐ》に|宿《やど》る|月影《つきかげ》いと|清《きよ》し
|魂《たま》を|研《みが》けと|教《をし》へ|給《たま》ふか
第三八六
|芝垣《しばがき》の|一重《ひとへ》の|中《うち》も|楽《たの》しけれ
|神《かみ》をたたへて|世《よ》を|渡《わた》る|身《み》は
わが|妹《いも》は|花《はな》と|笑《ゑ》みつついとし|子《ご》は
|鳥《とり》と|歌《うた》ひて|神《かみ》を|称《たた》へり
|円山《まるやま》に|登《のぼ》りて|四方《よも》を|眺《なが》むれば
|神《かみ》の|栄光《さかえ》は|目《ま》のあたり|見《み》ゆ
|橄欖《かんらん》の|花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|円山《まるやま》に
|胸《むね》をどるかも|瑞垣《みづがき》の|跡《あと》
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》の|砕《くだ》かれし
|跡《あと》|見《み》るたびに|涙《なみだ》こぼるる
|八重葎《やへむぐら》|茂《しげ》れる|賤ケ伏家《しづがふせや》にも
|月《つき》は|窓《まど》より|覗《のぞ》かせたまふ
|御恵《みめぐ》みの|雨《あめ》は|枢《とぼそ》を|潤《うるほ》して
|生命《いのち》の|水《みづ》をそそがせたまへり
わが|家《いへ》は|皇大神《すめおほかみ》の|御住居《おんすまゐ》
|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》と|尊《たふと》み|守《まも》らへ
第三八七
ほのぼのと|東《あづま》の|空《そら》は|明《あ》けにけり
はや|昇《のぼ》るらし|待《ま》ちわびし|日《ひ》は
|大空《おほぞら》にかすみし|月《つき》も|奇《くし》びなる
|光《ひかり》を|放《はな》つ|夜《よ》とはなりぬる
|冬籠《ふゆごも》り|春《はる》|待《ま》ちわびし|白梅《しらうめ》の
|神《かみ》の|御園《みその》に|身《み》をひそめ|居《ゐ》つ
|声《こゑ》|高《たか》く|鶯《うぐひす》|雲雀《ひばり》|野《の》に|叫《さけ》ぶは
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|謳《うた》ふなるらむ
|梅《うめ》|柳《やなぎ》|花橘《はなたちばな》の|色《いろ》|清《きよ》く
|主《きみ》の|栄《さか》えを|粧《よそ》ひぬるかな
|皇神《すめかみ》の|同《おな》じ|身魂《みたま》を|受《う》くる|身《み》は
|男女《をのこをみな》の|区別《わかち》あるなし
|珍《めづら》しき|花《はな》|匂《にほ》ふなる|庭《には》の|面《も》に
|導《みちび》かれ|行《ゆ》くも|神《かみ》のまにまに
第三八八
|時鳥《ほととぎす》|深山《みやま》の|奥《おく》に|身《み》をかくし
|瑞枝《みづえ》|栄《さか》ゆる|夏《なつ》を|待《ま》ちつつ
|時鳥《ほととぎす》|泣《な》く|音《ね》に|醒《さ》めて|起《お》き|出《い》づれば
|有明《ありあけ》の|月《つき》かがやき|渡《わた》らふ
|花蓮《はなはちす》|白梅《しらうめ》のごと|薫《かを》りつつ
|神《かみ》の|御旨《みむね》を|教《をし》へ|示《しめ》せり
|月《つき》|涼《すず》し|秋《あき》また|涼《すず》し|野《の》も|山《やま》も
|涼《すず》しき|空《そら》に|月《つき》は|輝《かがや》く
|旅人《たびびと》のなやむ|真昼《まひる》の|夕立《ゆふだち》に
|心《こころ》の|塵《ちり》は|洗《あら》はれにけり
|皇神《すめかみ》の|御稜威《みいづ》|称《たた》ふる|珍《うづ》の|声《こゑ》は
|天津御空《あまつみそら》の|神《かみ》に|通《かよ》はむ
第三八九
|皇神《すめかみ》の|教《のり》に|交《まじ》らふ|友垣《ともがき》は
|兄弟《はらから》よりも|親《した》しかりけり
|来《き》たります|主《きみ》|待《ま》ちわびて|長月《ながつき》の
|消息《たより》をきくの|花莚《はなむしろ》かな
|麻柱《あななひ》の|赤《あか》き|心《こころ》は|紅葉《もみぢば》の
|奇《くし》き|色香《いろか》に|通《かよ》ひぬるかな
|永久《とこしへ》の|神《かみ》の|望《のぞ》みはさやかなる
|御空《みそら》の|月《つき》にさも|似《に》たるかな
|田《た》の|面《おも》に|稔《みの》る|稲穂《いなほ》を|鏡《かがみ》とし
|謙遜《へりくだ》りつつ|御世《みよ》を|渡《わた》らへ
|秋《あき》の|夜《よ》の|虫《むし》の|泣《な》く|音《ね》に|合《あは》せつつ
|小琴《をごと》の|調《しらべ》に|御代《みよ》を|謳《うた》はむ
第三九〇
|日《ひ》は|流《なが》れ|月《つき》は|歩《あゆ》みて|星《ほし》|移《うつ》り
|今年《ことし》も|余《あま》り|尠《すく》なくなりぬ
|御恵《みめぐ》みの|深《ふか》きも|知《し》らず|白雪《しらゆき》の
|中《なか》にまよふも|夢心地《ゆめごごち》して
|野《の》も|山《やま》もはや|冬枯《ふゆが》れて|見《み》る|目《め》|淋《さび》し
|頼《たよ》りとするは|御光《みひかり》のみなる
|皇神《すめかみ》の|教《をしへ》の|場《には》の|睦《むつ》びこそ
|花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|永久《とは》の|春《はる》かも
いと|清《きよ》き|教《をしへ》の|友《とも》の|交《まじ》らひは
|後《のち》の|世《よ》かけて|変《かは》らざらまし
|埋火《うづみび》の|深《ふか》き|心《こころ》を|知《し》らずして
|煙《けむり》の|如《ごと》くさまよひ|巡《めぐ》るも
第三九一
|豊栄《とよさか》|昇《のぼ》る|朝日影《あさひかげ》  さすや|迷《まよ》ひの|雲《くも》|晴《は》れて
|天津御国《あまつみくに》に|永久《とこしへ》に  あれます|元津祖神《もとつおやがみ》の
|御稜威《みいづ》は|四方《よも》に|輝《かがや》きぬ  |神《かみ》の|御子《みこ》なる|人草《ひとぐさ》の
|打《う》ち|仰《あふ》ぎつつ|御空《みそら》をば  |恋慕《こひした》ふこそ|床《ゆか》しけれ
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|下《くだ》します  |恵《めぐ》みの|露《つゆ》を|身《み》に|受《う》けて
|罪《つみ》や|穢《けが》れに|萎《しを》れたる  |青人草《あをひとぐさ》に|御栄光《みさかえ》の
|再《ふたた》び|花《はな》を|咲《さ》かしむる  |目出度《めでた》き|時《とき》は|近《ちか》づきぬ
|仰《あふ》ぎ|敬《うやま》へ|神《かみ》の|徳《とく》
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|譬《たと》ふれば  |風《かぜ》も|誘《さそ》はぬ|春《はる》の|花《はな》
|雲《くも》もかからぬ|秋《あき》の|月《つき》  |朝日《あさひ》の|豊栄《とよさか》|昇《のぼ》る|如《ごと》
いと|明《あき》らかに|天地《あめつち》に  |弥《いや》|永久《とこしへ》に|栄《さか》えます
|仰《あふ》ぎ|敬《うやま》へ|大稜威《おほみいづ》  |慕《した》ひまつれよ|神《かみ》の|愛《あい》
|神《かみ》の|御前《みまへ》に|集《つど》ひ|来《き》て  |瑞《みづ》の|御声《みこゑ》を|聞《き》く|時《とき》は
|心《こころ》の|底《そこ》より|勇《いさ》み|立《た》ち  |果《は》てしも|知《し》らぬ|嬉《うれ》しさを
|包《つつ》む|術《すべ》なき|薄衣《うすごろも》  |畳《たた》むも|惜《を》しき|心地《ここち》かな
|仰《あふ》ぎ|敬《うやま》へ|神《かみ》の|稜威《いづ》  |慕《した》ひまつれよ|神《かみ》の|愛《あい》
(大正一二・五・一二 旧三・二七 於竜宮館 隆光録)
第一五章 |神情《しんじやう》〔一五九〇〕
第三九二
|西《にし》の|果《はて》|東《あづま》の|国《くに》に|至《いた》るとも
|同《おな》じ|雲井《くもゐ》の|月《つき》を|見《み》るかな
|山《やま》|変《かは》り|人《ひと》|異《ことな》れど|村肝《むらきも》の
|心《こころ》の|色《いろ》に|変《かは》りなきかな
わが|友《とも》の|遠《とほ》き|御国《みくに》に|別《わか》れ|行《ゆ》く
|影《かげ》|見送《みおく》りて|神《かみ》に|祈《いの》りつ
|皇神《すめかみ》の|情《なさけ》の|御手《みて》に|任《まか》したる
|君《きみ》を|送《おく》りて|嘆《なげ》き|喜《よろこ》ぶ
|別《わか》れ|行《ゆ》く|親《した》しき|友《とも》もわが|身《み》をも
いと|健《すこや》かに|守《まも》らせたまへ
|誘惑《いざなひ》のしげき|世《よ》なれば|心《こころ》して
さだめの|国《くに》に|進《すす》みませ|君《きみ》
第三九三
ああ|神《かみ》よ|友《とも》を|守《まも》りて|往《ゆ》く|道《みち》に
つつむ|事《こと》なく|進《すす》ませたまへ
|禍《わざは》ひの|雲《くも》|吹《ふ》き|払《はら》ひ|任《ま》けの|国《くに》に
|進《すす》ませたまへと|祈《いの》る|今日《けふ》かな
わが|友《とも》に|再《ふたた》び|遇《あ》はむ|其《そ》の|日《ひ》まで
|守《まも》らせたまへ|恵《めぐ》みの|御手《みて》に
|荒野原《あらのはら》|通《かよ》ふ|時《とき》しも|嵐《あらし》|吹《ふ》く
|寒《さむ》けき|日《ひ》をも|恵《めぐ》ませたまへ
|雲霧《くもきり》の|如何《いか》に|行手《ゆくて》を|塞《ふさ》ぐとも
|天津御光《あまつみひかり》|照《て》らさせたまへ
いつくしみ|広《ひろ》き|翅《つばさ》の|懐《ふところ》に
|育《はぐく》みたまへ|疲《つか》れたる|身《み》を
第三九四
|皇大神《すめおほかみ》の|賜《たま》ひてし  |心《こころ》の|玉《たま》を|研《みが》き|上《あ》げ
|学《まな》びのかこひを|立《た》ち|出《い》でて  |各自《おのも》おのもに|進《すす》み|往《ゆ》く
いづくの|里《さと》に|到《いた》るとも  |皇大神《すめおほかみ》の|御教《みをしへ》の
|清《きよ》き|光《ひかり》を|世《よ》に|照《て》らし  |神《かみ》の|栄《さか》えを|委曲《まつぶさ》に
|弥《いや》|永久《とこしへ》に|現《あら》はさめ
|日頃《ひごろ》なれにし|学《まな》び|舎《や》の  |窓《まど》を|忘《わす》れず|御教《みをしへ》の
|親《おや》の|恵《めぐ》みをよく|思《おも》ひ  |尊《たふと》き|神《かみ》の|御栄《みさかえ》を
|四方《よも》の|国々《くにぐに》|輝《かがや》かせ  |親《した》しき|友《とも》や|兄弟《はらから》に
|誠《まこと》の|功《いさを》を|現《あら》はして  |限《かぎ》りも|知《し》らぬ|神《かみ》の|愛《あい》
|故郷《こきやう》の|土産《みやげ》となせよかし
|学《まな》び|館《やかた》の|窓《まど》の|内《うち》  |互《たが》ひに|固《かた》く|結《むす》びたる
|睦《むつ》びの|紐《ひも》は|永久《とこしへ》に  |解《と》けて|離《はな》るる|事《こと》もなし
|遠《とほ》き|海山《うみやま》|打《う》ち|越《こ》えて  その|身《み》は|如何《いか》に|離《はな》るとも
|清《きよ》き|心《こころ》と|宣《の》り|言《ごと》は  |互《たが》ひに|伊行《いゆ》き|交《まじ》らひて
|御国《みくに》のために|尽《つく》さまし  これぞ|吾等《われら》が|人《ひと》として
|世《よ》に|生《う》まれたる|務《つと》めなれ
第三九五
|宮柱《みやばしら》|太敷立《ふとしきた》てて|千木《ちぎ》|高《たか》く
|厳《いづ》の|恵《めぐ》みをひたすら|祈《いの》る
|一本《ひともと》の|三《み》つの|位《くらゐ》の|皇神《すめかみ》の
|栄《さか》えを|四方《よも》に|現《あら》はしまつらむ
|打《う》ち|嘆《なげ》く|心《こころ》あはれみ|給《たま》ひつつ
|注《そそ》ぎたまはれ|溢《あふ》るる|恵《めぐ》みを
|御言葉《みことば》にならひて|清《きよ》く|明《あき》らけき
|天津御殿《あまつみとの》に|昇《のぼ》り|往《ゆ》かばや
第三九六
|宮柱《みやばしら》|太敷立《ふとしきた》てて|弥高《いやたか》く
|仕《つか》へまつりし|今日《けふ》の|嬉《うれ》しさ
|礎《いしずゑ》を|底《そこ》つ|岩根《いはね》に|突《つ》き|固《かた》め
|据《す》ゑし|今日《けふ》こそ|楽《たの》しきろかも
|親石《おやいし》を|上津岩根《うはついはね》につき|凝《こ》らし
|礎《いしずゑ》|固《かた》く|定《さだ》まりにけり
|大殿《おほとの》を|造《つく》らむとして|斧初《をのはじ》め
|祝《いは》ふも|嬉《うれ》し|今日《けふ》の|御祭《みまつり》
|人《ひと》の|住《す》む|家《いへ》てふ|家《いへ》は|多《おほ》けれど
|枕《まくら》する|間《ま》もなきは|悲《かな》しき
わが|家《や》なき|子《こ》の|宿《やど》りにと|親神《おやがみ》の
|造《つく》りたまひし|神国《かみくに》の|家《いへ》
|棟《むね》|高《たか》く|柱《はしら》|太《ふと》くはあらねども
|天津御殿《あまつみとの》の|面影《おもかげ》|写《うつ》せり
|三《み》つ|御魂《みたま》|鎮《しづ》まりたまふ|珍《うづ》の|宮《みや》に
|詣《まう》で|行《ゆ》く|身《み》は|楽《たの》しかりけり
第三九七
|人《ひと》の|手《て》の|業《わざ》になりてし|宮居《みやゐ》にも
|鎮《しづ》まりたまへ|元津大神《もとつおほかみ》
|永久《とこしへ》に|鎮《しづ》まりたまへ|礎《いしずゑ》の
|固《かた》きが|上《うへ》に|立《た》てる|宮居《みやゐ》に
|真木柱《まきばしら》|太敷立《ふとしきた》てし|此《こ》の|宮《みや》に
|黄金《こがね》|輝《かがや》く|千木《ちぎ》や|松魚木《かつをぎ》
|海原《うなばら》に|舟《ふね》うちつづけ|送《おく》り|来《く》る
|真木《まき》の|柱《はしら》は|御代《みよ》の|礎《いしずゑ》
|飛騨工《ひだたくみ》|石工《いしく》の|業《わざ》も|御心《みこころ》の
あれますままに|使《つか》はせたまへ
第三九八
|珍宮《うづみや》に|鎮《しづ》まりまして|永久《とこしへ》に
|奇《くす》しき|御業《みわざ》を|現《あら》はしたまへ
|奇《くし》びなる|御《み》のりを|祝《しゆく》し|御力《みちから》を
|四方《よも》の|国々《くにぐに》|示《しめ》させたまへ
|罪人《つみびと》の|諸《もも》の|願《ねが》ひも|聞《き》こし|召《め》せ
|千座《ちくら》を|負《お》ひし|恵《めぐ》みの|主《きみ》よ
|元津御祖《もとつみおや》|厳《いづ》と|瑞《みづ》との|御柱《みはしら》も
|鎮《しづ》まりたまへ|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》に
|宮《みや》のみか|清《きよ》き|身魂《みたま》の|心《こころ》をも
|宮居《みやゐ》となりして|鎮《しづ》まりたまへ
第三九九
やけ|気味《ぎみ》になつた|男《をとこ》の|吹《ふ》く|息《いき》を
うるほしたまへ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
わが|家《いへ》にわが|魂《たましひ》に|永久《とこしへ》の
|平和《へいわ》の|水《みづ》をわかしめたまへ
|瑞御霊《みづみたま》|安《やす》の|河原《かはら》に|溢《あふ》れ|出《い》でて
|常世《とこよ》の|海《うみ》に|流《なが》れ|往《ゆ》くかも
|砕《くだ》かれし|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》の|立直《たてなほ》し
|信徒《まめひと》|共《とも》に|祈《いの》りけるかな
|珍《うづ》の|宮《みや》に【あらす】|憎《にく》むもの|立《た》ちにけり
|窺《うかが》ひ|知《し》りぬ|暗世《やみよ》の|終《をは》りを
第四〇〇
|天地《あめつち》を|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》となしたまふ
|尊《たふと》き|神《かみ》も|此《こ》の|宮《みや》にませ
|大前《おほまへ》に|額《ぬか》づき|拝《をが》む|信徒《まめひと》を
みたさせたまへ|清《きよ》き|御霊《みたま》に
|疑《うたが》ひの|雲《くも》|晴《は》れゆきて|大空《おほぞら》ゆ
|日《ひ》の|御光《みひかり》もさし|添《そ》ひにけり
|潰《つぶ》されし|宮《みや》を|眺《なが》めて|信徒《まめひと》の
|心《こころ》の|空《そら》に|涙《なみだ》の|雨《あめ》ふる
|今《いま》|暫《しば》し|待《ま》てよ|信徒《まめひと》|御空《みそら》より
|栄《さか》えの|月日《つきひ》|輝《かがや》き|給《たま》はむ
第四〇一
|天地《あめつち》の|神《かみ》のまします|珍宮《うづみや》を
むごく|砕《くだ》きぬ|醜《しこ》の|司《つかさ》ら
|大前《おほまへ》に|集《つど》ふ|御民《みたみ》を|勇《いさ》ませて
|謡《うた》はせたまへ|心《こころ》ゆくまで
|円山《まるやま》のその|頂《いただき》に|立《た》てられし
|宮居《みやゐ》の|跡《あと》を|見《み》るは|悲《かな》しも
|天地《あめつち》の|神《かみ》も|怒《いか》らせたまふらむ
|万代《よろづよ》までも|醜《しこ》の|仕《し》わざを
|天地《あめつち》の|神《かみ》の|宮居《みやゐ》を|取《と》り|壊《こぼ》ち
|身《み》を|滅《ほろ》ぼせし|司《つかさ》もありけり
|世《よ》を|救《すく》ふ|神《かみ》の|鎮《しづ》まる|御殿《みとの》まで
|打《う》ち|壊《こは》したる|人《ひと》の|憐《あは》れさ
|願《ねが》はくは|醜《しこ》の|司《つかさ》を|憐《あは》れみて
|赦《ゆる》させたまへ|広《ひろ》き|心《こころ》に
(大正一二・五・一二 旧三・二七 於教主殿 明子録)
第四篇 |弥仙《みせん》の|峰《みね》
第一六章 |神息《しんそく》〔一五九一〕
第四〇二
|言霊《ことたま》のただ|一息《ひといき》に|天地《あめつち》を
|造《つく》り|玉《たま》ひし|元津大神《もとつおほかみ》
|肉《にく》にある|人《ひと》の|造《つく》りし|宮居《みやゐ》なれど
|心《こころ》|安《やす》けく|鎮《しづ》まり|玉《たま》へ
|真心《まごころ》をこめて|仕《つか》へし|御民等《みたみら》の
この|宮殿《みやどの》を|愛《め》でさせ|玉《たま》へ
|三五《あななひ》の|神《かみ》の|教《をしへ》に|従《したが》ひて
|祈《いの》る|心《こころ》に|宿《やど》らせ|玉《たま》へ
|清《きよ》き|赤《あか》き|心《こころ》をこめて|捧《ささ》げたる
この|社殿《みあらか》を|愛《め》でさせ|玉《たま》へ
|御栄光《みさかえ》の|雲《くも》|棚引《たなび》きて|永久《とこしへ》に
たえぬ|燈火《あかし》となりぬべきかな
|厳御霊《いづみたま》|御名《みな》によりつつ|固《かた》めたる
この|礎《いしずゑ》は|千代《ちよ》も|動《うご》かじ
|許々多久《ここたく》の|罪《つみ》の|荒波《あらなみ》|寄《よ》せ|来《く》とも
|払《はら》はせ|玉《たま》へ|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
|邪悪《よこしま》の|嵐《あらし》は|猛《たけ》り|狂《くる》ふとも
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》によりて|安《やす》けし
第四〇三
|天津神《あまつかみ》|四方《よも》の|民草《たみぐさ》|憐《あは》れみて
|厳《いづ》の|清所《すがど》を|造《つく》り|玉《たま》ひぬ
|昔《むかし》より|今《いま》も|変《かは》らぬ|御恵《みめぐ》みの
|露《つゆ》は|世人《よびと》の|命《いのち》なりけり
|永久《とこしへ》に|恵《めぐ》みの|神《かみ》の|住《す》みたまふ
|清《きよ》き|宮居《みやゐ》を|拝《をが》む|嬉《うれ》しさ
|幾千代《いくちよ》も|変《かは》らざれかし|大前《おほまへ》に
|拝《をろが》みまつる|今日《けふ》の|歓喜《よろこび》
|天津国《あまつくに》の|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》を|地《ち》の|上《うへ》に
うつし|奉《まつ》りし|御殿《みとの》は|尊《たふと》し
|御舎《みあらか》を|打《う》ち|壊《こは》されし|古《いにしへ》を
|偲《しの》べばいとど|口惜《くや》しかりけり
われと|倶《とも》に|永久《とは》にまします|聖霊《みたま》こそ
|闇《くら》きを|照《て》らす|光《ひかり》なりけり
|村肝《むらきも》の|心《こころ》の|宮《みや》に|此《こ》の|宮《みや》に
|永久《とは》に|鎮《しづ》まり|輝《かがや》きたまへ
第四〇四
|大本《おほもと》の|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|畏《かしこ》みて
|心《こころ》|尽《つく》して|建《た》てし|宮《みや》はも
|幾年《いくとせ》の|祈《いのり》と|誠《まこと》を|重《かさ》ね|来《き》し
|末《すゑ》に|建《た》てたる|円山《まるやま》の|宮《みや》
|円山《まるやま》の|宮《みや》をこはせし|醜司《しこつかさ》の
|今《いま》や|根底《ねそこ》の|国《くに》に|落《お》ちたる
|皇神《すめかみ》の|尊《たふと》き|御名《みな》はふさはねど
|心《こころ》|協《あは》して|建《た》てし|此《こ》の|宮《みや》
|漸《やうや》くに|建《た》て|上《あ》がりたる|新宮《にひみや》を
|取《と》りこぼちたる|枉《まが》の|名《な》|失《う》せじ
第四〇五
|神柱《かむばしら》|造《つく》り|玉《たま》ひし|元津神《もとつかみ》
|聞《き》こし|召《め》しませ|清《きよ》き|祈《いの》りを
|御名《みな》の|為《ため》に|言霊軍《ことたまいくさ》に|出《い》で|立《た》ちて
|枉《まが》の|軍《いくさ》を|退《やら》ふ|楽《たの》しさ
|枉神《まがかみ》の|軍《いくさ》も|神《かみ》の|御子《みこ》ならば
|如何《いか》で|憎《にく》まむ|神《かみ》の|心《こころ》に
|朝夕《あさゆふ》に|神《かみ》の|神業《みわざ》に|習《なら》ひつつ
わが|身《み》|惜《を》しまぬ|神柱《みはしら》とならむ
|宣伝使《みつかひ》の|教《をし》ふるままに|正道《まさみち》を
|歩《あゆ》む|身《み》なれば|枉事《まがこと》もなし
|踏《ふ》み|迷《まよ》ひ|暗《やみ》に|陥《おちい》る|人《ひと》の|子《こ》は
|神《かみ》の|御後《みあと》をふまぬ|故《ゆゑ》なり
第四〇六
|野《の》も|山《やま》も|恵《めぐ》みの|露《つゆ》の|玉《たま》|照《て》りて
いと|美《うる》はしき|神《かみ》の|御代《みよ》かな
やはらぎの|道《みち》を|伝《つた》ふる|宣伝使《みつかひ》は
|善言美詞《みやびのことば》を|朝夕《あさゆふ》に|宣《の》れ
|乱《みだ》れ|覆《お》ふ|醜《しこ》の|村雲《むらくも》|吹《ふ》き|払《はら》ひ
|平和《へいわ》の|光《ひかり》を|照《て》らさせ|玉《たま》へ
|玉《たま》の|緒《を》の|命《いのち》の|若草《わかぐさ》|生《お》ひ|立《た》ちぬ
|心《こころ》を|閉《と》ぢし|雪霜《ゆきしも》の|解《と》けて
|安河《やすかは》に|天地《あめつち》|諸《もも》の|民草《たみぐさ》の
|罪《つみ》を|清《きよ》めし|神《かみ》の|勲《いさを》よ
第四〇七
|天津国《あまつくに》の|焔《ほのほ》と|輝《かがや》く|神霊《かむみたま》
|降《くだ》らせ|玉《たま》へ|人《ひと》の|身魂《みたま》に
|分霊《わけみたま》|光《ひかり》と|輝《かがや》き|玉《たま》の|緒《を》の
|永《なが》き|生命《いのち》と|現《あら》はれたまへ
|朝夕《あさゆふ》に|涙《なみだ》に|曇《くも》る|眼《まなこ》をば
|乾《かわ》かせ|玉《たま》へ|厳《いづ》の|光《ひかり》に
|枉神《まがかみ》の|仇《あだ》を|退《しりぞ》けわが|身魂《みたま》
|進《すす》ませ|玉《たま》へ|神《かみ》の|御園《みその》に
|瑞御霊《みづみたま》|御稜威《みいづ》|称《たた》ふる|歌《うた》の|声《こゑ》は
|天《あめ》と|地《つち》とに|永久《とこしへ》に|響《ひび》く
第四〇八
|果《は》てもなき|大海原《おほうなばら》を|知食《しろしめ》す
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》に|栄《さか》え|行《ゆ》くなり
|吹《ふ》き|荒《すさ》ぶ|疾風《はやて》を|鎮《しづ》め|荒浪《あらなみ》を
|凪《な》がせ|玉《たま》ひし|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|八潮路《やしほぢ》の|浪路《なみぢ》を|遠《とほ》く|行《ゆ》く|友《とも》を
|安《やす》く|彼方《あなた》に|渡《わた》らせたまへ
|荒浪《あらなみ》の|立《た》ち|狂《くる》ふなる|海原《うなばら》も
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》に|安《やす》く|渡《わた》らむ
第四〇九
|遠《とほ》き|神代《かみよ》の|昔《むかし》より  |変《かは》らせ|玉《たま》はず|天地《あめつち》を
|統《す》べ|守《まも》ります|大御神《おほみかみ》  |教《をしへ》の|友《とも》の|身《み》の|上《うへ》を
|安《やす》く|守《まも》らせ|玉《たま》ひつつ  いとも|嶮《けは》しき|山路《やまぢ》をも
|荒風《あらかぜ》|猛《たけ》る|海路《うなぢ》をも  |厳《いづ》の|御霊《みたま》の|御光《みひかり》に
|安《やす》く|越《こ》えさせ|玉《たま》へかし
|麓《ふもと》の|霧《きり》をふみ|砕《くだ》き  |高嶺《たかね》の|雲《くも》を|押《お》し|分《わ》けて
|昇《のぼ》る|朝日《あさひ》の|影《かげ》|清《きよ》く  |厳《いづ》の|御霊《みたま》の|御光《みひかり》に
|嶮《けは》しき|道《みち》も|平《たひ》らけく  |珍《うづ》の|力《ちから》を|与《あた》へまし
|進《すす》ませ|玉《たま》へと|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
|潮《しほ》の|八百路《やほぢ》の|八潮路《やしほぢ》を  |漕《こ》ぎ|分《わ》け|進《すす》むわが|船《ふね》は
|逆捲《さかま》く|波《なみ》に|襲《おそ》はれて  |危《あや》ふき|事《こと》のありとても
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|御光《みひかり》と  |瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|御恵《みめぐ》みに
|嵐《あらし》を|鎮《しづ》め|波《なみ》を|凪《な》ぎ  |彼方《あなた》の|岸《きし》に|心《うら》|安《やす》く
|進《すす》ませ|玉《たま》へ|惟神《かむながら》  |御霊《みたま》の|限《かぎ》り|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
第四一〇
|足曳《あしびき》の|山路《やまぢ》を|越《こ》えて|只《ただ》|一人《ひとり》
|行《ゆ》く|身《み》も|安《やす》し|神《かみ》としあれば
|松《まつ》の|嵐《あらし》|谷《たに》の|流《なが》れも|神使《みつかひ》の
|御歌《みうた》も|玉《たま》の|琴《こと》の|音《ね》と|聞《き》く
|澄《す》み|渡《わた》る|心《こころ》の|空《そら》に|雲《くも》もなし
|清《きよ》きは|嶺《みね》の|白雪《しらゆき》と|見《み》む
|足曳《あしびき》の|山路《やまぢ》|嶮《けは》しく|前途《ゆくて》|遠《とほ》し
|何時《いつ》かは|着《つ》かむ|珍《うづ》の|都《みやこ》に
|荒野《あらの》|行《ゆ》く|淋《さび》しき|一人旅《ひとりたび》なれど
|神《かみ》と|大道《おほぢ》はいとも|安《やす》けし
|黄昏《たそが》れて|草《くさ》の|褥《しとね》に|石枕《いはまくら》
|仮寝《かりね》の|夢《ゆめ》にも|神《かみ》は|忘《わす》れじ
第四一一
|雷《いかづち》の|轟《とどろ》き|渡《わた》り|海《うみ》は|鳴《な》り
|黒雲《くろくも》|塞《ふさ》ぐ|世《よ》は|近《ちか》づきぬ
さり|乍《なが》ら|恵《めぐ》みの|神《かみ》は|何時《いつ》までも
|払《はら》はでおかむやこれの|災難《なやみ》を
|待《ま》ち|望《のぞ》む|星《ほし》は|彼方《あなた》の|大空《おほぞら》に
きらめきにけり|心《こころ》|清《きよ》めよ
|大空《おほぞら》を|呑《の》みつつ|寄《よ》せ|来《く》る|荒浪《あらなみ》は
|日毎《ひごと》|夜毎《よごと》に|迫《せま》り|来《き》たれり
わが|身魂《みたま》|照《て》らして|救《すく》ふ|平和《おだやか》の
|星《ほし》は|御空《みそら》にほほゑみ|出《い》でぬ
|荒浪《あらなみ》に|木《こ》の|葉《は》の|如《ごと》く|揺《ゆ》られたる
|御舟《みふね》の|上《うへ》もわれは|恐《おそ》れじ
わが|身魂《みたま》|照《て》らさむとして|大空《おほぞら》に
|輝《かがや》きたまふ|瑞《みづ》の|三《み》つ|星《ぼし》
(大正一二・五・一三 旧三・二八 隆光録)
第一七章 |神心《しんしん》〔一五九二〕
第四一二
わが|身魂《みたま》|逆《さか》まく|浪《なみ》に|呑《の》まれむとす
|出《い》ださせたまへ|救《すく》ひの|船《ふね》を
|日《ひ》は|沈《しづ》み|四方《よも》の|海原《うなばら》|物凄《ものすご》し
|照《て》らさせたまへ|厳《いづ》の|光《ひかり》を
|海《うみ》も|陸《くが》も|神《かみ》の|御手《おんて》にある|上《うへ》は
|如何《いか》で|恐《おそ》れむ|神《かみ》のまにまに
|沓島潟《めしまがた》|伊猛《いたけ》る|浪《なみ》をしづめてし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》を|友《とも》とし|往《ゆ》かむ
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|御言《みこと》を|畏《かしこ》みて
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|闇夜《やみよ》をわたらむ
第四一三
|大宮《おほみや》の|燈火《ともしび》|影《かげ》は|暗《くら》くして
|静《しづ》けさやぶる|御声《みこゑ》|聞《き》こえぬ
|大宮《おほみや》はよし|毀《こぼ》たれて|跡《あと》なくも
|神《かみ》の|御国《みくに》に|厳《おごそ》かに|立《た》てり
|罪《つみ》|知《し》らぬ|幼《をさな》き|童《わらべ》は|朝夕《あさゆふ》に
|神《かみ》の|御声《みこゑ》を|確《たし》に|聞《き》くなり
|静《しづ》かなる|珍《うづ》の|御声《みこゑ》を|聞《き》く|時《とき》は
|心《こころ》に|天津神国《あまつかみくに》|開《ひら》くも
|皇神《すめかみ》の|大御心《おほみこころ》を|心《こころ》とし
|仇《あだ》し|思《おも》ひを|去《さ》らさせたまへ
|世《よ》の|聖《ひじり》|夢《ゆめ》にも|知《し》らぬ|勅《みことのり》
|幼《おさな》き|童《わらべ》の|耳《みみ》に|聞《き》こゆる
第四一四
|夕日《ゆふひ》|落《お》ち|塒《ねぐら》に|急《いそ》ぐ|諸鳥《ももどり》の
|声《こゑ》|悲《かな》しげに|聞《き》こえ|来《く》るかな
|花《はな》ねむり|星《ほし》は|御空《みそら》に|閃《ひらめ》きて
|四辺《あたり》|静《しづ》けき|夜《よる》は|来《き》にけり
|夜《よ》もすがら|恵《めぐ》みの|神《かみ》よ|懐《ふところ》に
|抱《だ》かれて|眠《ねむ》る|心《こころ》|安《やす》けし
|夢路《ゆめぢ》にも|照《て》り|輝《かがや》きし|御姿《みすがた》を
|拝《をが》ませたまへ|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
|小路《をぢ》を|往《ゆ》く|旅人《たびびと》|浪《なみ》にのる|船人《ふなびと》
ともにとこやみの|夜《よる》にもおぢず
|進《すす》ませたまへ|神《かみ》の|光《ひかり》に|神《かみ》の|恵《めぐ》みに
|御使《みつかひ》の|黄金《こがね》の|翅《はね》に|抱《いだ》かれて
いと|勇《いさ》ましく|御国《みくに》へ|昇《のぼ》るも
第四一五
|新緑《しんりよく》の|萠《も》えたつ|野辺《のべ》にわが|魂《たま》を
|導《みちび》きたまへ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
わが|魂《たま》を|育《はぐく》みましていと|安《やす》く
|永久《とは》の|栄《さか》えに|入《い》らしめたまへ
わが|魂《たま》の|力《ちから》の|友《とも》となりまして
|導《みちび》きたまへ|綾《あや》の|聖地《せいち》へ
ねぎごとをいと|平《たひ》らかにうけ|給《たま》へ
|御神《みかみ》に|頼《たよ》る|外《ほか》なきわれを
|許々多久《ここたく》の|罪《つみ》や|汚《けが》れを|清《きよ》めます
|力《ちから》は|神《かみ》の|御稜威《みいづ》なりけり
わが|罪《つみ》を|贖《あがな》ひ|永久《とは》の|生命《せいめい》を
|守《まも》りたまへる|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|御心《みこころ》をわれにみたして|常世《とこよ》ゆく
|闇夜《やみよ》の|燈火《あかし》となさしめたまへ
いや|深《ふか》き|恵《めぐ》みの|露《つゆ》を|浴《あ》びながら
|花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|野辺《のべ》を|往《ゆ》くかな
第四一六
|幼子《をさなご》の|心《こころ》に|返《かへ》りしわが|魂《たま》を
|憐《あは》れみ|御子《みこ》と|恵《めぐ》ませたまへ
|教主《きみ》の|如《ごと》く|優《やさ》しくあらばほほゑみて
わが|頭辺《かしらべ》を|撫《な》でさせたまはむ
わが|教主《きみ》の|御子《みこ》とならむと|朝夕《あさゆふ》に
|幼心《をさなごころ》を|培《つちか》ひて|往《ゆ》く
|朝《あさ》なさな|御心《みこころ》|慕《した》ひ|御恵《みめぐ》みに
|育《そだ》ちて|輝《かがや》く|玉《たま》となりける
わが|教主《きみ》の|珍《うづ》の|使《つかひ》とならばやと
|奇《くし》き|神代《かみよ》の|御文《みふみ》よむなり
|珍《めづら》しき|奇《くし》き|神代《かみよ》の|物語《ものがたり》
|己《おの》が|身魂《みたま》の|礎《いしずゑ》となる
|御文《おんふみ》は|雲《くも》の|八百路《やほぢ》を|踏《ふ》みわけて
|神国《みくに》に|至《いた》る|栞《しをり》なりけり
第四一七
|賤《しづ》の|家《や》に|産声《うぶごゑ》あげし|幼子《をさなご》も
|天津使《あまつつかひ》の|業《わざ》をいそしむ
|諸人《もろびと》の|救《すく》ひの|柱《はしら》と|生《あ》れながら
|汚《けが》れし|人《ひと》の|中《なか》に|居《ゐ》るなり
|忠実《まめやか》に|親《おや》に|仕《つか》へて|敬《うやま》ひつ
|人《ひと》の|務《つと》めの|法《のり》となれかし
|世《よ》の|様《さま》をいやことごとに|知《し》る|教主《きみ》は
|日《ひ》に|夜《よ》に|神《かみ》の|智慧《ちゑ》をうけつつ
|身体《からたま》は|現身《うつそみ》の|世《よ》にありとても
|神《かみ》と|倶《とも》なり|清《きよ》き|御霊《みたま》は
よき|事《こと》を|務《つと》めはげみて|頼《たの》もしき
|神国《みくに》に|昇《のぼ》る|人《ひと》は|人《ひと》なり
第四一八
|山《やま》に|河《かは》に|草木《くさき》すべての|物《もの》|皆《みな》に
|宿《やど》らせたまふ|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
|終夜《よもすがら》わが|身《み》わが|魂《たま》を|守《まも》りつつ
|東雲《しののめ》の|空《そら》|待《ま》たせたまひぬ
|駒《こま》の|声《こゑ》|轡《くつわ》の|音《ね》にもにこやかに
|笑《ゑ》ませたまひぬ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
第四一九
|永久《とことは》に|強《つよ》くましますわが|主《きみ》を
|慕《した》ひまつらむ|弱《よわ》きわが|身《み》は
|地《ち》の|上《うへ》の|罪《つみ》を|清《きよ》めて|救《すく》ふために
|栄《さか》えを|捨《す》てて|天降《あも》りましけり
|白銀《しろがね》や|黄金《こがね》の|門《かど》をうち|開《ひら》き
|待《ま》たせたまひぬ|清《きよ》き|御霊《みたま》を
ヨルダンの|清《きよ》き|流《なが》れに|御禊《みそぎ》して
|御国《みくに》のために|功樹《いさをた》てばや
第四二〇
|世《よ》を|教《をし》ふ|神《かみ》の|御文《みふみ》を|読《よ》みてより
|深《ふか》き|御稜威《みいづ》を|広《ひろ》く|悟《さと》りぬ
|懐《なつ》かしくいとも|尊《たふと》くなりにけり
|神書《みふみ》|見《み》しよりわが|神《かみ》の|厳《いづ》
|罪《つみ》のため|神《かみ》の|御許《みもと》を|離《はな》れしも
|咎《とが》めたまはず|守《まも》らせたまひぬ
|歌心《うたごころ》|無《な》きわが|身《み》にも|皇神《すめかみ》の
|恵《めぐ》みに|打《う》たれ|歌《うた》わき|出《い》づる
第四二一
|罪《つみ》|知《し》らぬ|清《きよ》き|幼子《をさなご》よび|集《あつ》め
|御許《みもと》に|遊《あそ》ばせたまふ|嬉《うれ》しさ
わが|霊《たま》を|労《いたは》りたまふ|皇神《すめかみ》の
|面《おもて》を|見《み》れば|慕《した》はしくなりぬ
|目《め》に|見《み》えぬ|神《かみ》の|面《おもて》も|赤心《まごころ》の
|光《ひかり》に|照《て》りて|今日《けふ》は|拝《をが》みぬ
|教主《きみ》が|召《め》す|神国《みくに》の|園《その》に|行《ゆ》かばやと
|備《そな》へをなして|月日《つきひ》|待《ま》ちぬる
|選《えら》まれし|御霊《みたま》の|永久《とは》に|住《す》む|家《いへ》は
|天津御国《あまつみくに》に|備《そな》はりてあり
|幼子《をさなご》の|数多《あまた》|集《つど》ひて|天津国《あまつくに》の
|御園《みその》に|主《きみ》と|共《とも》に|遊《あそ》べる
(大正一二・五・一三 旧三・二八 於教主殿 明子録)
第一八章 |神園《しんゑん》〔一五九三〕
第四二二
|幼子《をさなご》の|群《むら》がり|集《つど》ふ|神《かみ》の|園《その》に
いともやさしき|母神《ははがみ》の|声《こゑ》
|美《うる》はしくいと|懐《なつ》かしき|声《こゑ》すなり
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》のあれし|花園《はなぞの》に
|御心《みこころ》に|従《したが》ひまつりわが|魂《たま》を
|清《きよ》めて|御許《みもと》に|宮仕《みやづか》へせむ
|幼子《をさなご》の|弱《よわ》きを|御手《みて》に|抱《いだ》きつつ
|哺育《はぐく》み|玉《たま》へ|御心《みこころ》のままに
第四二三
わが|身魂《みたま》はぐくみまして|楽《たの》もしき
|珍《うづ》の|御園《みその》へ|遊《あそ》ばせ|玉《たま》へ
|今日《けふ》も|亦《また》|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|暮《く》れにけり
|恵《めぐ》ませ|玉《たま》へまた|来《き》たる|日《ひ》を
|住《す》む|家《いへ》も|食物《おしもの》|着物《きもの》も|賜《たま》はりし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|恵《めぐ》み|尊《たふと》き
あやまちを|宣《の》り|直《なほ》しつつ|吉《よ》き|夢《ゆめ》を
|結《むす》ばせ|玉《たま》へ|世《よ》の|悉《ことごと》に
第四二四
|日《ひ》の|下《もと》の|珍《うづ》の|都《みやこ》に|下《くだ》ります
|佳《よ》き|日《ひ》|待《ま》ちつつ|魂《たま》を|研《みが》かむ
|大空《おほぞら》の|星《ほし》と|輝《かがや》き|我《わが》|神《かみ》の
|冠《かむり》の|玉《たま》とつかはせ|玉《たま》へ
|天津国《あまつくに》の|青人草《おほみたから》と|数《かぞ》へらるる
|人《ひと》の|身魂《みたま》に|露《つゆ》|汚《けが》れなし
|世《よ》の|穢《けが》れ|夢《ゆめ》にも|知《し》らぬ|幼児《をさなご》は
|神《かみ》の|御国《みくに》の|花《はな》にぞありける
第四二五
|春《はる》の|野《の》にほほゑむ|菫花《すみれ》の|姿《すがた》|見《み》れば
|萎《しを》れし|胸《むね》も|潤《うるほ》ひにけり
|夏草《なつぐさ》の|茂《しげ》れる|中《なか》に|撫子《なでしこ》の
|姿《すがた》やさしき|花《はな》もありけり
しづしづと|平和《へいわ》の|道《みち》を|歩《あゆ》む|稚児《ちご》の
|姿《すがた》を|見《み》れば|心《こころ》|和《やは》らぐ
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みの|綱《つな》にひかるとも
|知《し》らで|高天原《たかま》に|上《のぼ》り|来《き》にけり
|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|春野《はるの》の|花《はな》もいつしかに
|色香《いろか》|褪《あ》せ|行《ゆ》く|時《とき》は|来《き》ぬらむ
|人《ひと》の|世《よ》の|災《わざは》ひいかに|多《おほ》くとも
|神《かみ》と|倶《とも》なる|身《み》こそ|安《やす》けき
|皇神《すめかみ》の|御後《みあと》|踏《ふ》み|分《わ》け|進《すす》む|身《み》は
|醜《しこ》の|枉霊《まがひ》の|襲《おそ》ふことなし
第四二六
|千早振《ちはやぶ》る|神《かみ》の|御祖《みおや》の|御恵《みめぐ》みは
いと|豊《ゆた》かなり|天《あめ》と|地《つち》とに
|皇神《すめかみ》は|厳《いづ》の|涙《なみだ》を|湛《たた》へつつ
|罪《つみ》の|御子等《みこら》を|導《みちび》き|玉《たま》ふ
|幼児《をさなご》の|心《こころ》は|神《かみ》に|等《ひと》しけれ
その|言霊《ことたま》の|淀《よど》みなければ
第四二七
|神《かみ》の|代《よ》の|事《こと》つばらかに|記《しる》したる
|書《ふみ》よむ|度《たび》に|神《かみ》を|悟《さと》りぬ
|千早振《ちはやぶ》る|神《かみ》を|知《し》らざる|罪《つみ》の|子《こ》は
|仇《あだ》に|暮《くら》しぬ|珍《うづ》の|月日《つきひ》を
|神《かみ》を|知《し》らぬ|同胞《はらから》の|身《み》を|憐《あは》れみて
|朝夕《あさゆふ》|祈《いの》れ|神《かみ》の|御前《みまへ》に
|小羊《こひつじ》を|恵《めぐ》み|育《そだ》つる|瑞御霊《みづみたま》は
|恵《めぐ》み|普《あまね》き|坤《ひつじさる》の|神《かみ》
|夕《ゆふ》べ|毎《ごと》|五六七《みろく》の|殿《との》に|参集《まゐつど》ひ
|聖《ひじり》も|知《し》らぬ|教《のり》を|聞《き》くかな
|憂《う》き|悩《なや》み|身《み》に|忍《しの》びつつ|人《ひと》の|為《ため》に
|天降《あも》りましたる|神《かみ》を|崇《あが》めよ
第四二八
|春夏《はるなつ》の|朝《あした》|涼《すず》しく|蒔《ま》く|種子《たね》の
|稔《みの》り|豊《ゆた》けき|秋《あき》は|来《き》たりぬ
|空《そら》かすむ|永《なが》き|春日《はるひ》の|眠《ねむ》たさを
|忍《しの》びて|述《の》ぶるこれの|霊界物語《かみふみ》
いそしみて|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|述《の》べ|伝《つた》ふ
この|物語《ものがたり》|永久《とは》に|栄《さか》えむ
|身《み》も|魂《たま》も|神《かみ》の|大道《おほぢ》に|捧《ささ》げつつ
|筆《ふで》に|任《まか》せて|物語《みふみ》を|記《しる》す
第四二九
ささやけき|葉末《はずゑ》の|露《つゆ》も|流《なが》れ|行《ゆ》けば
はてしも|知《し》らぬ|海《うみ》となり|行《ゆ》く
こまやかな|浜《はま》の|真砂《まさご》も|年《とし》を|経《へ》て
|積《つ》もれば|遂《つひ》に|山《やま》となりぬる
|徒《いたづら》に|空《むな》しく|過《すご》す|束《つか》の|間《ま》も
おのが|生命《いのち》の|一節《ひとふし》なりける
|塵《ちり》ほどの|罪過《つみあやま》ちも|重《かさ》なれば
|身《み》を|亡《ほろ》ぼすの|種《たね》となるらむ
かすかなる|道《みち》に|叶《かな》ひしよき|業《わざ》も
|積《つ》もり|積《つ》もりて|神業《みわざ》となるも
第四三〇
|時《とき》は|来《き》ぬ|神《かみ》の|御教《みのり》の|広庭《ひろには》に
|急《いそ》ぎ|進《すす》めよ|選《えら》まれし|人《ひと》
|美《うる》はしき|主《きみ》の|御言葉《みことば》|目《ま》のあたり
|聞《き》かむ|佳《よ》き|日《ひ》は|迫《せま》り|来《き》にけり
|神《かみ》の|道《みち》|学《まな》ぶ|館《やかた》をわれ|一《いち》と
|先《さき》を|争《あらそ》ひ|進《すす》みてぞ|行《ゆ》け
|三柱《みはしら》の|厳《いづ》の|称《たた》への|御声《おんこゑ》の
|聞《き》こゆる|中《うち》に|急《いそ》げ|世《よ》の|人《ひと》
|矢《や》の|如《ごと》く|月日《つきひ》の|駒《こま》の|速《はや》ければ
|空《むな》しく|過《すご》すな|惜《を》しき|此《この》|世《よ》を
第四三一
|問《と》はまほし|浜辺《はまべ》の|真砂《まさご》|行《ゆ》く|水《みづ》の
|落《お》ち|行《ゆ》く|先《さき》は|何《いづ》れの|海《うみ》と
|川《かは》の|辺《べ》にいさりつきたる|真砂《まさご》さへ
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|神《かみ》を|称《たた》へつ
|美《うる》はしき|千草《ちぐさ》の|花《はな》に|言問《ことと》はむ
|妙《たへ》なる|色香《いろか》|誰《た》がために|咲《さ》く
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みの|花《はな》の|薫《かを》りをば
|世《よ》に|示《しめ》さむと|日毎《ひごと》|咲《さ》くなり
|声《こゑ》|清《きよ》き|野辺《のべ》の|小鳥《ことり》に|言問《ことと》はむ
|楽《たの》しき|歌《うた》は|何人《なにびと》のため
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みの|節《ふし》を|示《しめ》さむと
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|野山《のやま》に|謡《うた》ふ
|御栄光《みさかえ》は|永久《とは》に|絶《た》えせず|御恵《みめぐ》みの
|豊《ゆた》けき|神《かみ》の|御稜威《みいづ》|称《たた》へむ
(大正一二・五・一三 旧三・二八 隆光録)
第一九章 |神水《しんすゐ》〔一五九四〕
第四三二
|大空《おほぞら》にきらめく|星《ほし》の|数《かず》|限《かぎ》りなく
|御手《みて》に|造《つく》りし|神《かみ》ぞ|崇《あが》めよ
|野《の》に|山《やま》に|限《かぎ》りも|知《し》らず|咲《さ》き|満《み》つる
|花《はな》の|数々《かずかず》|匂《にほ》はせたまふ
|草《くさ》や|木《き》に|置《お》く|白露《しらつゆ》の|数《かず》|知《し》れず
|宿《やど》らせ|玉《たま》ふ|月《つき》の|御光《みひかり》
|数々《かずかず》の|浜《はま》の|真砂《まさご》も|一々《いちいち》に
|知《し》りたまひけり|神《かみ》の|眼《まなこ》は
|垂乳根《たらちね》の|親《おや》の|恵《めぐ》みの|深《ふか》きをば
|人《ひと》の|子《こ》|如何《いか》に|悟《さと》りうべきか
|垂乳根《たらちね》の|親《おや》をたまひし|神《かみ》こそは
|永久《とは》の|恵《めぐ》みの|親《おや》の|親《おや》なり
第四三三
|湧《わ》き|出《い》づる|生命《いのち》の|清水《しみづ》|永久《とこしへ》に
|流《なが》れて|世《よ》をば|霑《うるほ》したまふ
|真清水《ましみづ》を|汲《く》みてし|飲《の》まば|村肝《むらきも》の
|心《こころ》のかわき|覚《おぼ》えざるらむ
|宮川《みやかは》の|谷《たに》の|清水《しみづ》に|御禊《みそぎ》して
|代《よ》をうるほせし|御祖《みおや》は|畏《かしこ》し
|世《よ》の|人《ひと》の|霊《たま》の|住家《すみか》を|備《そな》へつつ
|待《ま》たせたまひぬ|元津御神《もとつみかみ》は
|弥生空《やよひぞら》|長閑《のどか》に|匂《にほ》ふ|御恵《みめぐ》みの
|花《はな》こそ|清《きよ》き|御胸《みむね》なるらむ
|御恵《みめぐ》みの|涼《すず》しき|風《かぜ》の|吹《ふ》き|渡《わた》る
|綾《あや》の|高天原《たかま》は|慕《した》はしきかな
第四三四
|闇《やみ》の|夜《よ》の|影《かげ》は|漸《やうや》く|消《き》えにけり
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|朝日《あさひ》|昇《のぼ》りて
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|御前《みまへ》に|現《あら》はれて
|仰《あふ》ぎ|奉《まつ》らむ|清《きよ》き|御顔《みかほ》を
|足曳《あしびき》の|山《やま》にも|野《の》にも|夜《よる》の|幕《まく》
かかれる|時《とき》ぞ|淋《さび》しかりけり
|夜《よ》の|帳《とばり》かかげて|昇《のぼ》る|朝日子《あさひこ》は
いづの|御魂《みたま》の|恵《めぐ》みなりけり
|御恵《みめぐ》みに|天津日影《あまつひかげ》を|照《て》らしつつ
|迷《まよ》ひの|雲《くも》を|晴《は》らさせたまへ
|疾《と》く|起《お》きて|勤《つと》むる|術《わざ》も|神《かみ》しなくば
|水《みづ》に|絵《ゑ》をかく|如《ごと》くなるらむ
|人《ひと》の|業《わざ》はもう|一息《ひといき》といふ|時《とき》に
|破《やぶ》られ|易《やす》し|神《かみ》に|祈《いの》れよ
|荒金《あらがね》の|地《つち》の|中《なか》まで|照《て》らしゆく
|神《かみ》の|光《ひかり》を|夢《ゆめ》なうとみそ
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|伝《つた》へましし
その|言《こと》の|葉《は》に|心《こころ》ひらけよ
一〇
|闇《やみ》|消《き》えて|常夜《とこよ》の|晨《あした》となるならば
|疾《と》く|起《お》き|出《い》でよ|神《かみ》に|倣《なら》ひて
第四三五
|日《ひ》の|御影《みかげ》|天《あめ》の|御影《みかげ》とかくろひて
|謙遜《へりくだ》りつつ|道《みち》に|仕《つか》へむ
|朝夕《あさゆふ》に|宣《の》る|言霊《ことたま》を|平《たひ》らけく
|聞《き》こし|召《め》しませ|耳《みみ》ふり|立《た》てて
|小牡鹿《さをしか》の|耳《みみ》ふり|立《た》てて|聞《きこ》し|召《め》せ
|心《こころ》|清《きよ》めて|宣《の》る|言霊《ことたま》を
|世《よ》の|塵《ちり》に|暫《しば》し|離《はな》れて|天津国《あまつくに》の
|景色《けしき》しのびし|時《とき》の|楽《たの》しさ
わが|霊《たま》を|御座《みくら》となして|正義《ただしき》と
|平和《へいわ》の|満《み》てる|宮《みや》となしませ
わづらひも|仇《あだ》し|望《のぞ》みも|消《き》え|失《う》せて
|神《かみ》の|使《つかひ》と|今《いま》はなりぬる
第四三六
|言霊《ことたま》の|御水火《みいき》によりて|天地《あめつち》を
|造《つく》り|固《かた》めし|常立《とこたち》の|神《かみ》
|素盞嗚《すさのを》の|神《かみ》の|功《いさを》を|言霊《ことたま》の
|限《かぎ》り|尽《つく》せど|称《たた》へあまりぬ
|大前《おほまへ》に|額《ぬか》づき|奉《まつ》る|民草《たみぐさ》の
|称《たた》への|声《こゑ》は|長閑《のどか》なりけり
第四三七
|御稜威《みいづ》あれ|御栄《みさか》えあれと|皇神《すめかみ》の
|御前《みまへ》に|祈《いの》る|今朝《けさ》の|楽《たの》しさ
|月《つき》も|日《ひ》も|大地《くぬち》|草木《くさき》もおしなべて
|元津御神《もとつみかみ》の|御稜威《みいづ》たたへつ
|瑞御霊《みづみたま》|神《かみ》の|心《こころ》に|叶《かな》ひなば
|世《よ》に|襲《おそ》ひ|来《く》る|仇神《あだがみ》はなし
いと|高《たか》く|清《きよ》けき|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みに
|抱《いだ》かれながら|栄《さか》ゆもろもろ
|罪汚《つみけが》れ|諸《もも》のなやみも|安河《やすかは》の
|御禊《みそぎ》のわざに|洗《あら》はれにけり
第四三八
わが|力《ちから》|知恵《ちゑ》を|頼《たの》みとせし|人《ひと》も
|神《かみ》の|御前《みまへ》には|顔色《かんばせ》もなし
|仇人《あだびと》の|怪《け》しき|卑《いや》しき|教草《をしへぐさ》
|薙《な》ぎ|払《はら》ひ|行《ゆ》かむ|月《つき》の|利鎌《とがま》に
|如何《いか》ほどに|力《ちから》|強《つよ》くも|永久《とこしへ》の
|頼《たの》みならむや|人《ひと》にしあれば
|遠《とほ》からず|朽《く》ち|果《は》つるべきこの|生命《いのち》
|救《すく》はせたまへ|永久《とは》の|神国《みくに》に
|身《み》の|中《うち》に|厳《いづ》の|御霊《みたま》のましまさば
|醜《しこ》の|曲霊《まがひ》の|如何《いか》でさやらむ
|根《ね》の|国《くに》の|醜《しこ》の|兵《つはもの》|吠《ほ》え|猛《たけ》り
|迫《せま》り|来《く》るとも|払《はら》ふ|神風《かみかぜ》
|曲神《まがかみ》の|力《ちから》の|限《かぎ》り|攻《せ》め|来《く》とも
|防《ふせ》ぎやらはむ|厳《いづ》の|言霊《ことたま》
わが|命《いのち》わが|妻子《つまこ》まで|奪《うば》はむと
|攻《せ》め|来《く》る|仇《あだ》を|打《う》ち|退《しりぞ》くる|法《のり》
第四三九
|大本《おほもと》の|恵《めぐ》みの|神《かみ》は|世《よ》の|人《ひと》を
|救《すく》はむとして|御子《みこ》を|下《くだ》しぬ
|八千座《やちくら》の|責苦《せめく》にあひて|瑞御霊《みづみたま》
|生命《いのち》の|主《きみ》と|現《あ》れましにけり
|日《ひ》の|御神《みかみ》|月《つき》の|御神《みかみ》と|相共《あひとも》に
|降《ふ》らせたまひぬ|恵《めぐ》みの|雨《あめ》を
第四四〇
|玉《たま》の|井《ゐ》の|清《きよ》き|真清水《ましみづ》|完全《まつぶさ》に
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|昔《むかし》を|語《かた》りつ
|空《そら》|高《たか》く|太《ふと》き|欅《けやき》は|囁《ささや》きぬ
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|生《あ》れし|昔《むかし》を
|限《かぎ》りなき|生命《いのち》の|清水《しみづ》|永久《とこしへ》に
|湧《わ》きて|尽《つ》きせぬこれの|玉《たま》の|井《ゐ》
|冬枯《ふゆが》れし|世《よ》の|有様《ありさま》を|救《すく》はむと
|長閑《のどか》な|春《はる》の|梅《うめ》|馨《かを》るなり
第四四一
|奥津城《おくつき》にかくれたまひし|御恵《みめぐ》みの
|花《はな》|咲《さ》く|春《はる》も|近《ちか》づきにけり
わが|教祖《おや》は|生命《いのち》の|元《もと》にましませば
いや|永久《とこしへ》に|栄《さか》えますかも
|奥津城《おくつき》の|見《み》えぬ|根底《ねそこ》に|下《くだ》りまして
|救《すく》ひの|道《みち》を|伝《つた》へたまひぬ
|稚比売《わかひめ》の|神《かみ》の|御魂《みたま》は|御空《みそら》より
|天降《あも》りて|千代《ちよ》の|礎《いしずゑ》となりぬ
(大正一二・五・一三 旧三・二八 於教主殿 明子録)
第二〇章 |神香《しんかう》〔一五九五〕
第四四二
さまよへる|罪《つみ》の|人《ひと》の|子《こ》|求《ま》ぎ|集《つど》ひ
|清《きよ》き|莚《むしろ》に|導《みちび》く|宣伝使《みつかひ》
|八束髭《やつかひげ》わが|胸先《むなさき》に|垂《た》るるまで
|歎《なげ》き|玉《たま》ひぬ|天地《あめつち》の|為《ため》に
ヨルダンの|清《きよ》き|流《なが》れもわが|魂《たま》を
|洗《あら》ふ|由《よし》なきまでに|曇《くも》りぬ
|穢《けが》れたるわが|魂《たましひ》も|清《きよ》まりぬ
|神《かみ》の|教《をしへ》にヨルダンの|川《かは》
第四四三
|瑞御霊《みづみたま》|世《よ》の|枉神《まがかみ》に|勝《か》ちけりと
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|珍《うづ》の|御声《おんこゑ》
|言霊《ことたま》の|珍《うづ》の|軍《いくさ》を|整《ととの》へて
|待《ま》ち|玉《たま》ひたる|神軍《みいくさ》|強《つよ》し
|言霊《ことたま》の|軍《いくさ》の|司《つかさ》|勇《いさ》み|立《た》ち
|勝鬨《かちどき》|挙《あ》ぐる|時《とき》は|来《き》にけり
|枉神《まがかみ》の|稜威《いづ》の|根城《ねじろ》も|震《ふる》ひけり
|鍛《きた》へに|鍛《きた》へし|直日《なほひ》の|霊《たま》に
|言霊《ことたま》の|軍《いくさ》の|前《まへ》に|仇《あだ》もなく
|進《すす》むにつれて|勝鬨《かちどき》の|声《こゑ》
|山々《やまやま》の|伊保理《いほり》を|分《わ》けて|百《もも》の|神《かみ》
|加《くわ》はり|玉《たま》はむ|言霊軍《ことたまいくさ》に
|選《えら》まれし|御民《みたみ》の|勇《いさ》む|時《とき》は|来《き》ぬ
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|勝鬨《かちどき》の|声《こゑ》
第四四四
|如何《いか》にせむと|悩《なや》み|迷《まよ》ひし|村肝《むらきも》の
|心《こころ》に|聞《き》こゆる|御教《みをしへ》の|声《こゑ》
|迷《まよ》ふものよ|早《はや》く|来《き》たれと|手《て》を|延《の》べて
|長閑《のどか》な|顔《かほ》に|招《まね》かせ|玉《たま》ふ
|村雲《むらくも》は|心《こころ》の|空《そら》に|塞《ふさ》がりて
|見《み》え|分《わか》ぬまで|眼《まなこ》くらめり
|村肝《むらきも》の|心《こころ》の|眼《まなこ》|押《お》し|開《ひら》き
|救《すく》はむとして|出《い》でましにけり
|何人《なにびと》が|吾《われ》を|招《まね》くと|辿《たど》り|行《ゆ》けば
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|立《た》ち|玉《たま》ふ|影《かげ》
|近寄《ちかよ》りて|勇《いさ》み|喜《よろこ》ぶ|耳《みみ》の|中《うち》に
|入《い》りしは|愛《あい》の|御声《みこゑ》なりけり
|浅間《あさま》しきわが|心根《こころね》を|知《し》り|玉《たま》ふ
|神《かみ》の|御前《みまへ》の|恥《は》づかしきかな
|皇神《すめかみ》に|捨《す》てられむかと|煩《わづら》ひつ
|進《すす》みて|見《み》れば|御声《みこゑ》|変《かは》らず
|瑞御霊《みづみたま》|声《こゑ》もやさしく|世《よ》の|中《なか》に
|迷《まよ》ひし|聖人《ひじり》を|教《をし》へ|玉《たま》へる
第四四五
|神代《かみよ》より|秘《ひ》め|置《お》かれたる|綾《あや》の|里《さと》に
|御教《みをしへ》を|聞《き》く|今日《けふ》の|楽《たの》しさ
|枉神《まがかみ》の|醜《しこ》の|企《たく》みも|災《わざは》ひも
|知《し》らずに|過《すご》す|神《かみ》の|花園《はなぞの》
|玉《たま》の|井《ゐ》の|厳《いづ》の|真清水《ましみづ》|汲《く》み|上《あ》げて
|渇《かわ》きし|魂《たま》を|癒《いや》し|玉《たま》ひぬ
|類《たぐひ》なき|世《よ》の|喜《よろこ》びは|御恵《みめぐ》みの
|神《かみ》と|静《しづ》かに|憩《いこ》ふ|時《とき》なる
|訳《わけ》もなき|願言《ねぎごと》さへも|忍《しの》びつつ
|受《う》けさせ|玉《たま》ふ|救《すく》ひの|御神《みかみ》よ
あやまてる|世人《よびと》に|教《のり》を|垂《た》れ|玉《たま》ひ
|餓《う》ゑし|心《こころ》に|力《ちから》を|賜《たま》ふ
|定《さだ》めなき|浮雲《うきぐも》の|世《よ》を|後《あと》にして
|秘《ひ》め|置《お》かれたる|花園《はなぞの》に|行《ゆ》かむ
|御恵《みめぐ》みの|清《きよ》き|神姿《すがた》の|玉《たま》の|井《ゐ》に
|映《うつ》るも|嬉《うれ》し|月《つき》の|大神《おほかみ》
第四四六
わが|魂《たま》を|恵《めぐ》ませ|玉《たま》ふ|瑞御霊《みづみたま》
|天津港《あまつみなと》へみちびき|玉《たま》へ
|風《かぜ》|荒《すさ》び|波《なみ》|高《たか》まりてわが|船《ふね》は
|沈《しづ》まむとす|救《すく》はせ|玉《たま》へ|大神《おほかみ》
|頼《たよ》るべき|方《かた》だにもなきわが|魂《たま》を
|恵《めぐ》ませたまへ|仁慈《いつくし》の|神《かみ》
|御恵《みめぐ》みの|珍《うづ》の|翼《つばさ》の|下影《したかげ》に
|抱《いだ》かれし|身《み》は|楽《たの》しかりけり
|曇《くも》りたる|世人《よびと》のために|瑞御霊《みづみたま》
|救《すく》はむとして|下《くだ》りましけり
|疲《つか》れたる|魂《たま》を|慰《なぐさ》め|玉《たま》ひけり
|内《うち》と|外《そと》とを|清《きよ》めすまして
|玉《たま》の|緒《を》の|命《いのち》のもととあれませる
|元津御神《もとつみかみ》に|会《あ》はせ|給《たま》はれ
|枯《か》れ|果《は》てしわが|魂《たましひ》を|潤《うるほ》して
|栄光《さかえ》を|賜《たま》ふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
第四四七
|姉妹《おとどい》の|天《あめ》の|真名井《まなゐ》の|御禊《みそぎ》より
|現《あら》はれましし|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|滝津瀬《たきつせ》の|涙《なみだ》も|百《もも》の|詫言《わびごと》も
|罪《つみ》を|償《つぐな》ふ|力《ちから》だになし
|只《ただ》|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|露《つゆ》に|恵《めぐ》まれて
|重《おも》き|罪科《つみとが》|赦《ゆる》さるるのみ
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》のまさざれば
われは|生《い》くべき|力《ちから》だになし
|現世《うつしよ》も|亦《また》|霊界《かくりよ》も|隔《へだ》てなく
|守《まも》らせ|玉《たま》ふ|元津大神《もとつおほかみ》
第四四八
|災《わざは》ひに|悩《なや》む|諸人《もろびと》はや|来《き》たれ
|救《すく》ひの|神《かみ》はここにあれます
|言霊《ことたま》の|御水火《みいき》に|迷《まよ》ひの|夢《ゆめ》|覚《さ》めて
|日《ひ》は|輝《かがや》きぬ|心《こころ》の|空《そら》に
|武士《もののふ》の|猛《たけ》き|心《こころ》も|和《やは》らぎて
|厳《いづ》の|御前《みまへ》に|太祝詞《ふとのりと》|宣《の》る
|泡沫《うたかた》の|水泡《みなわ》と|消《き》ゆる|名《な》を|捨《す》てて
|醜《しこ》の|博士《ものしり》|大前《おほまへ》に|伏《ふ》せ
|遣《や》る|瀬《せ》なき|老《お》いさらばひし|人《ひと》さへも
|神《かみ》の|御前《みまへ》に|笑《ゑ》み|栄《さか》ゆなり
第四四九
|世《よ》の|務《つと》め|果《は》てて|神国《みくに》に|帰《かへ》りなば
|愛《あい》の|御声《みこゑ》をかけさせ|玉《たま》へ
|常久《とこしへ》に|果《は》てしも|知《し》らに|栄《さか》え|行《ゆ》く
|神《かみ》の|御園《みその》は|楽《たの》しき|住家《すみか》よ
|疑《うたが》ひの|雲《くも》もあとなく|晴《は》れぬらむ
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|下《くだ》りましなば
|東雲《しののめ》の|雲《くも》にまたがり|元津都《もとつくに》に
|下《くだ》らせ|玉《たま》ふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
第四五〇
|朝《あさ》|咲《さ》きて|夕《ゆふ》べも|待《ま》たぬ|朝顔《あさがほ》の
|萎《しを》るる|花《はな》に|迷《まよ》ふ|人《ひと》あり
|春《はる》の|雨《あめ》|秋《あき》の|夕《ゆふ》べの|露時雨《つゆしぐれ》
|涙《なみだ》とともに|祈《いの》る|母神《ははがみ》
|垂乳根《たらちね》の|恵《めぐ》みの|胸《むね》に|抱《いだ》かれて
|哺育《はぐく》まれたる|昔《むかし》|忘《わす》るな
|村肝《むらきも》の|心《こころ》を|千々《ちぢ》に|砕《くだ》きたる
|報《むく》いありしと|喜《よろこ》ばせ|母《はは》を
|漸《やうや》くに|世《よ》に|立《た》つ|身魂《みたま》となりぬれば
|母《はは》の|恵《めぐ》みを|忘《わす》るる|凡俗《ただびと》
|母神《ははがみ》の|此《この》|世《よ》にいます|其《そ》の|中《うち》に
|御袖《みそで》に|縋《すが》れ|四方《よも》の|民草《たみぐさ》
第四五一
|御恵《みめぐ》みの|雨《あめ》は|静《しづ》かに|降《ふ》り|来《き》たり
|雪霜《ゆきしも》|消《き》えて|山《やま》は|笑《わら》ひぬ
|御言葉《みことば》に|春《はる》の|花《はな》まで|頷《うなづ》きて
|旭《あさひ》|長閑《のどか》に|匂《にほ》ひけるかな
|夕立《ゆふだち》の|早《はや》|過《す》ぎ|行《ゆ》きて|勇《いさ》み|立《た》つ
|木草《きくさ》の|葉末《はずゑ》に|月《つき》はほほ|笑《ゑ》む
|雨《あめ》と|露《つゆ》に|苗《なへ》|潤《うるほ》せば|秋《あき》の|田《た》の
|黄金《こがね》の|垂穂《たりほ》|浪《なみ》|打《う》ち|寄《よ》するも
|春《はる》|生《い》かし|夏《なつ》には|育《そだ》て|秋《あき》|稔《みの》らせ
|冬《ふゆ》|休《やす》まする|洽《あまね》き|恵《めぐ》みよ
(大正一二・五・一三 旧三・二八 隆光録)
第五篇 |金竜世界《きんりうせかい》
第二一章 |神悟《しんご》〔一五九六〕
第四五二
|暁《あかつき》|告《つ》ぐる|笛《ふえ》の|声《こゑ》  |十曜《とえう》の|御旗《みはた》|翩翻《へんぽん》と
|天津御風《あまつみかぜ》に|翻《ひるがへ》り  |神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|現《あら》はせり
|珍《うづ》の|言霊《ことたま》|畏《かしこ》みて  |錦《にしき》の|御旗《みはた》|十曜《とえう》の|旗《はた》
|先頭《せんとう》に|押《お》し|立《た》て|曲津見《まがつみ》の  |軍《いくさ》に|向《む》かつて|進《すす》む|声《こゑ》
|天津空《あまつそら》より|聞《き》こえ|来《く》る  いざ|立《た》て|進《すす》め|御軍《みいくさ》よ
|怪《あや》しき|諸《もも》の|疑《うたが》ひに  |取囲《とりかこ》まれし|十曜《とえう》の|旗《はた》
|神《かみ》の|御園《みその》に|翻《ひるがへ》る  |益良猛夫《ますらたけを》よいざ|進《すす》め
|誠《まこと》の|軍《いくさ》の|勝鬨《かちどき》を  あげて|御国《みくに》の|大神《おほかみ》の
|誠《まこと》の|法《のり》の|判《わか》るまで  いざいざ|進《すす》めいざ|進《すす》め
|仇《あだ》の|虜《とりこ》となり|果《は》てし  |神《かみ》の|御子《みこ》をば|逸早《いちはや》く
|救《すく》へや|救《すく》へ|諸共《もろとも》に  |神《かみ》は|汝《なんぢ》と|倶《とも》にあり
|仇《あだ》は|漸《やうや》く|色《いろ》めきて  |旗色《はたいろ》|悪《あ》しくなり|往《ゆ》きぬ
わが|御軍《みいくさ》の|勝鬨《かちどき》は  |今《いま》|目《ま》の|当《あた》り|近《ちか》づきぬ
|疲《つか》れはてたる|兵士《つはもの》よ  |瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|真清水《ましみづ》に
|喉《のど》|潤《うるほ》はせ|仇神《あだがみ》の  |籠《こも》る|根城《ねじろ》に|言霊《ことたま》の
|劔《つるぎ》をかざし|逸早《いちはや》く  |進《すす》めよ|進《すす》めよいざ|進《すす》め
|神《かみ》は|汝《なんぢ》と|倶《とも》にあり
第四五三
|鬨《とき》の|声《こゑ》|松《まつ》|吹《ふ》く|風《かぜ》となりにけり
|十曜《とえう》の|御旗《みはた》ひるがへる|朝《あさ》
|言霊《ことたま》の|軍《いくさ》の|主《きみ》の|勇《いさ》ましく
|進《すす》むを|見《み》れば|惟神《かむながら》ならめ
|戦《たたか》はぬ|先《さき》に|仇《あだ》をば|呑《の》み|尽《つく》す
|神《かみ》の|軍《いくさ》の|勇《いさ》ましきかな
|御旗《みはた》かざし|千座《ちくら》を|負《お》ひて|進《すす》み|往《ゆ》く
|兵士《もののふ》の|歌《うた》|勇《いさ》ましく|聞《き》こゆ
|言霊《ことたま》の|厳《いづ》の|鋭《するど》き|鉾先《ほこさき》に
|当《あた》るべきかは|仇《あだ》の|司《つかさ》も
|神《かみ》の|名《な》にふさはしからむ|功《いさをし》を
|樹《た》て|貫《つらぬ》けよ|神軍人《みいくさびと》よ
|永久《とこしへ》の|勝《かち》を|望《のぞ》みて|進《すす》めかし
|厳言霊《いづことたま》に|刃向《はむ》かふ|仇《あだ》なし
第四五四
|慈愛《いつくしみ》の|珍《うづ》の|真清水《ましみづ》|溢《あふ》れつつ
|賤《しづ》の|身《み》をさへ|霑《うるほ》したまふ
|御姿《みすがた》を|真名井《まなゐ》にうつせ|瑞御霊《みづみたま》
|道《みち》の|鏡《かがみ》とのぞき|見《み》るまで
|天津国《あまつくに》の|永久《とは》の|栄《さかえ》は|湧《わ》き|出《い》づる
|生命《いのち》の|水《みづ》に|現《あら》はれにけり
|御顔《かんばせ》を|仰《あふ》ぎまつりて|恐《おそ》れなく
|父《ちち》よ|母《はは》よと|慕《した》ひまつりぬ
|皇神《すめかみ》の|御姿《みすがた》のままに|生《あ》れ|出《い》でし
|人《ひと》は|神《かみ》の|子《こ》|神《かみ》の|宮居《みやゐ》ぞ
第四五五
|隔《へだ》てなく|人《ひと》をなぐさめ|慈《いつく》しむ
|清《きよ》き|心《こころ》は|神《かみ》にぞありける
|身《み》を|忘《わす》れ|力《ちから》|限《かぎ》りに|大道《おほみち》に
|仕《つか》へまつれよ|珍《うづ》の|御子《みこ》たち
|村肝《むらきも》の|心《こころ》|一《ひと》つに|固《かた》めつつ
|身《み》も|棚《たな》しらに|仕《つか》へまつらむ
|弥栄《いやさか》に|栄《さか》え|目出度《めでた》き|神《かみ》の|園《その》は
|常磐《ときは》の|松ケ枝《まつがえ》|水《みづ》に|浮《うか》べり
第四五六
|宣伝使《つかひびと》|手《て》に|手《て》に|御旗《みはた》かざしつつ
|登《のぼ》り|行《ゆ》くかも|神路《かみぢ》の|山《やま》へ
|宣伝使《みつかひ》の|前《まへ》には|炎《ほのほ》も|消《き》えてゆく
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》の|身《み》に|満《み》ちぬれば
|太刀劔《たちつるぎ》|脆《もろ》く|砕《くだ》けて|跡《あと》もなし
|攻《せ》めあぐみたる|曲《まが》の|砦《とりで》は
|神旗《みはた》をば|翳《かざ》して|進《すす》め|言霊《ことたま》の
|軍《いくさ》の|君《きみ》よ|怯《お》めず|臆《おく》せず
|御光《みひかり》に|包《つつ》まれながら|花《はな》|匂《にほ》ふ
|春野《はるの》を|通《かよ》ふ|言霊軍《ことたまいくさ》よ
第四五七
|天《あま》の|河《かは》いと|安《やす》らけく|渡会《わたらひ》の
|神《かみ》の|御許《みもと》に|進《すす》む|嬉《うれ》しさ
|天降《あも》ります|日《ひ》を|数《かぞ》へつつ|教《のり》の|友《とも》は
|仰《あふ》ぎまつらむ|玉《たま》の|御門《みかど》に
|一度《ひとたび》は|絶《た》えし|縁《えにし》も|故郷《ふるさと》に
いと|頼《たの》もしく|遇《あ》はむとぞ|思《おも》ふ
|消《き》え|往《ゆ》きし|星《ほし》は|再《ふたた》び|輝《かがや》きて
|望《のぞ》みし|道《みち》も|明《あか》くなりぬる
|親《おや》と|子《こ》と|妹背《いもせ》と|友《とも》と|歓《ゑら》ぎあふ
|目出度《めでた》き|国《くに》は|神《かみ》の|在《ま》す|国《くに》
|雲《くも》は|散《ち》り|霧《きり》は|跡《あと》なく|消《き》え|果《は》てて
|同《おな》じ|姿《すがた》をうつす|神国《かみくに》
第四五八
|身体《からたま》はよし|奥津城《おくつき》にねむるとも
|魂《たま》は|醒《さ》めなむ|元津神国《もとつみくに》に
|行《ゆ》く|魂《たま》を|救《すく》ひ|助《たす》けて|元津国《もとつくに》に
|導《みちび》きたまふ|天津御使《あまつみつかひ》
|一度《ひとたび》は|死出《しで》の|山路《やまぢ》を|渡《わた》りつつ
|墓《はか》の|彼方《あなた》の|神国《みくに》に|入《い》らむ
|御恵《みめぐ》みの|露《つゆ》|奥津城《おくつき》に|眠《ねむ》りたる
|人《ひと》を|慕《した》ひて|信徒《まめひと》の|泣《な》く
第四五九
|身体《からたま》は|底津岩根《そこついはね》に|魂《たましひ》は
|神国《みくに》の|園《その》に|永久《とは》に|納《をさ》まる
|人《ひと》の|身《み》は|生《い》くるも|死《まか》るも|惟神《かむながら》
|御旨《みむね》のままに|任《まか》す|外《ほか》なし
|兄弟《はらから》は|遺骸《なきがら》を|見《み》て|悲《かな》しめど
|天津使《あまつつかひ》は|喜《よろこ》び|迎《むか》ふる
|天津日《あまつひ》の|輝《かがや》き|渡《わた》る|神園《かみぞの》に
|茂《しげ》る|木草《きぐさ》の|麗《うるは》しきかな
|繋《つな》がれし|浮世《うきよ》の|枷《かせ》は|砕《くだ》かれて
|慈愛《めぐみ》の|主《きみ》と|住《す》まむ|楽《たの》しさ
|死《し》に|行《ゆ》きしわが|同胞《はらから》と|喜《よろこ》びて
|相見《あひみ》む|折《を》りを|与《あた》へませ|教主《きみ》
第四六〇
|瑞御霊《みづみたま》|天降《あも》りたまひてエルサレムに
|教《をしへ》の|庭《には》を|開《ひら》きたまへる
|世《よ》を|審判《さば》くためにはるばる|下《くだ》ります
|教主《きみ》の|心《こころ》に|叶《かな》ひたきもの
|永久《とこしへ》の|神《かみ》の|御国《みくに》の|民《たみ》として
|恵《めぐ》ませたまへ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|日《ひ》に|夜《よる》に|御稜威《みいづ》|称《たた》ふる|歌《うた》の|声《こゑ》を
|主《きみ》は|漏《も》れなく|聞《き》こし|召《め》すらむ
|今日《けふ》の|日《ひ》も|罪汚《つみけが》れなく|穏《おだ》やかに
|栄《さかえ》と|共《とも》に|送《おく》らせたまへ
|御心《みこころ》にまかせまつりしわが|魂《たま》を
|恵《めぐ》ませたまへ|弥《いや》|永久《とこしへ》に
第四六一
|天津使《あまつつかひ》|国津使《くにつつかひ》も|諸共《もろとも》に
|恵《めぐ》みあふるる|御神《みかみ》を|称《たた》へよ
|天地《あめつち》に|恵《めぐ》み|溢《あふ》るる|皇神《すめかみ》の
|御名《みな》の|栄《さか》えを|祈《いの》る|信徒《まめひと》
|父《ちち》と|子《こ》と|清《きよ》き|御霊《みたま》の|大前《おほまへ》に
|堅磐常磐《かきはときは》の|栄《さか》えあれかし
|天《あめ》が|下《した》に|住《す》む|民草《たみぐさ》は|声《こゑ》を|合《あは》せ
|厳《いづ》の|栄《さか》えを|称《たた》へまつれよ
|精霊《せいれい》の|厳《いづ》の|力《ちから》と|瑞御霊《みづみたま》
|元津御神《もとつみかみ》の|恵《めぐ》み|永久《とは》なれ
|天地《あめつち》の|民《たみ》ことごとく|三柱《みはしら》の
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|称《たた》へまつれよ
(大正一二・五・一三 旧三・二八 於教主殿 明子録)
第二二章 |神樹《しんじゆ》〔一五九七〕
第四六二
|葦原《あしはら》の|瑞穂《みづほ》の|国《くに》のことごとは
|天津御神《あまつみかみ》の|御許《みもと》に|仕《つか》ふ
|天地《あめつち》のすべてを|造《つく》り|玉《たま》ひたる
|神《かみ》の|御前《みまへ》に|山河《さんか》|寄《よ》り|来《こ》む
|山河《やまかは》も|皇大神《すめおほかみ》の|大前《おほまへ》に
より|来《き》|仕《つか》ふる|御代《みよ》ぞ|尊《たふと》き
|言《こと》の|葉《は》も|胸《むね》の|思《おも》ひもよろこびも
みな|皇神《すめかみ》のめぐみし|賜《たま》もの
|大前《おほまへ》に|地《くに》のことごと|集《あつ》まりて
みいづ|称《たた》へむ|日《ひ》は|近《ちか》づきぬ
|石《いそ》の|上《かみ》ふるき|神代《かみよ》の|初《はじ》めより
|神《かみ》の|御国《みくに》とえらまれし|大和《くに》
|神《かみ》の|民《たみ》とえりぬかれたる|国人《くにびと》の
さすらひの|夢《ゆめ》も|今《いま》は|醒《さ》めけり
|葦原《あしはら》の|中津御国《なかつみくに》に|降《くだ》ります
|教《をしへ》の|主《きみ》を|仰《あふ》ぎつつ|待《ま》つ
よろこびを|胸《むね》にたたへて|皇神《すめかみ》の
いづの|救《すく》ひをまつの|代《よ》のたみ
一〇
わが|魂《たま》よ|貴《うづ》の|教《をしへ》によみがへり
|雲《くも》より|来《き》たる|神《かみ》にならへよ
第四六三
|限《かぎ》りなき|教《をしへ》の|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みを
|心《こころ》にとめて|夢《ゆめ》な|忘《わす》れそ
いたづきの|身《み》もやすかれと|朝夕《あさゆふ》に
わが|皇神《すめかみ》はわづらひたまふ
ほろびゆく|生命《いのち》を|救《すく》ひ|愛《あい》の|雨《あめ》を
そそがせ|玉《たま》ふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
ゆたかなる|恵《めぐ》みの|雨《あめ》の|降《ふ》りそそぎて
|怒《いかり》のちりを|清《きよ》めさせたまひぬ
とこしへに|怒《いか》らせたまふ|事《こと》もなく
せむることなき|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|人《ひと》の|罪《つみ》を|数《かぞ》へたまはず|憎《にく》みまさず
|只《ただ》|愛《あい》のみを|御身《みま》となしたまふ
|天津空《あまつそら》の|高《たか》きがごとく|皇神《すめかみ》の
みいづはスメール|山《ざん》も|及《およ》ばじ
|東《ひがし》|西《にし》|分《わか》るるごとくわが|罪《つみ》を
|遠《とほ》ざけたまふ|仁愛《みろく》の|大神《おほかみ》
|始《はじ》めなく|終《をは》りも|知《し》らに|栄《さか》えませ
すべてを|造《つく》り|守《まも》る|大神《おほかみ》
第四六四
|千引岩《ちびきいは》|動《うご》かぬ|主《きみ》の|御恵《みめぐ》みを
|力《ちから》となして|進《すす》む|嬉《うれ》しさ
|喜《よろこ》びの|声《こゑ》を|揃《そろ》へて|皇神《すめかみ》の
あれます|都《みやこ》を|讃《ほ》め|称《たた》へかし
|天地《あめつち》の|総《すべ》ての|神《かみ》を|統《す》べたまふ
|誠《まこと》の|神《かみ》は|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
|足曳《あしびき》の|山《やま》の|頂《いただき》|海《うみ》の|底《そこ》も
|皆《みな》|皇神《すめかみ》の|御手《みて》にありけり
|海陸《うみくが》を|造《つく》り|玉《たま》ひし|皇神《すめかみ》の
|御子《みこ》と|生《う》まれし|人《ひと》は|神《かみ》なり
|跪《ひざまづ》きてわが|身《み》|生《う》ましし|元津祖《もとつおや》を
|綾《あや》の|高天原《たかま》に|伏《ふ》し|拝《をが》むかな
|村肝《むらきも》の|心《こころ》の|清《きよ》き|供物《そなへもの》
|受《う》けさせ|玉《たま》へ|元津大神《もとつおほかみ》
|地《ち》の|限《かぎ》りその|大前《おほまへ》に|畏《かしこ》みて
いと|美《うるは》しく|称《たた》へまつれよ
|正《ただ》しきと|誠《まこと》をもちて|諸々《もろもろ》の
|民《たみ》を|審《さば》かせ|玉《たま》ふ|時《とき》|来《き》ぬ
一〇
|元津御祖《もとつみおや》|厳《いづ》と|瑞《みづ》との|二柱《ふたはしら》の
|御稜威《みいづ》|常磐《ときは》にあれと|祈《いの》りつ
第四六五
|神国《みくに》には|御栄光《みさかえ》あれや|地《ち》の|上《うへ》は
|平穏《おだやか》あれよ|恵《めぐ》みあれかし
|皇神《すめかみ》を|讃《ほ》めつ|称《たた》へつ|拝《をろが》みつ
|御栄光《みさかえ》|仰《あふ》ぎて|御稜威《みいづ》を|崇《あが》む
|天《あめ》にます|大国常立大神《おほくにとこたちおほかみ》は
すべてのものの|誠《まこと》の|祖《おや》なり
|祖神《おやがみ》は|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|瑞《みづ》の|子《こ》を
|下《くだ》して|世《よ》をば|救《すく》はせ|玉《たま》ふ
|世《よ》の|罪《つみ》をわが|身《み》|一《ひと》つに|引受《ひきう》けし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|恵《めぐ》みかしこし
|穢《けが》れたるわが|魂《たましひ》を|洗《あら》へかし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|教《をしへ》の|主《きみ》よ
|皇神《すめかみ》の|右《みぎ》にまします|瑞御霊《みづみたま》
わが|祈《いの》りをも|受《う》けさせ|玉《たま》へ
いと|清《きよ》く|尊《たふと》き|瑞《みづ》の|神霊《かむみたま》
|厳《いづ》の|御霊《みたま》は|世《よ》を|生《い》かしますも
|厳御霊《いづみたま》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》は|祖神《おやがみ》の
|栄光《さかえ》の|中《なか》にいや|栄《さか》えたまふ
第四六六
|神路山《かみぢやま》|五十鈴《いすず》の|川《かは》の|水上《みなかみ》に
|世《よ》を|照《て》らします|神《かみ》はましけり
|暗《くら》き|世《よ》を|照《て》らさむために|厳御霊《いづみたま》
|教祖《みおや》の|宮《みや》に|下《くだ》りましけり
|更生主《かうせいしゆ》の|魂《たま》に|宿《やど》りて|天地《あめつち》の
|奇《く》しき|誠《まこと》を|諭《さと》し|玉《たま》へり
|攻《せ》め|来《き》たる|醜《しこ》の|仇《あだ》さへ|憎《にく》まずに
|言向和《ことむけやは》す|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|遠津祖《とほつおや》|世々《よよ》の|祖等《おやたち》に|仕《つか》へよと
|教《をし》へ|玉《たま》ひぬ|瑞《みづ》の|御霊《みたま》は
|世《よ》を|照《て》らす|油《あぶら》の|教主《きみ》はあれましぬ
|古《ふる》き|誓《ちか》ひを|証《あか》しせむため
|御教《みをしへ》の|聖《きよ》き|義《ただ》しき|言《こと》の|葉《は》に
|仕《つか》ふる|身《み》こそ|楽《たの》しかりけり
|精霊《せいれい》を|充《み》たし|玉《たま》ひて|更生主《かうせいしゆ》に
|天降《あも》りし|国《くに》の|常立《とこたち》の|神《かみ》
|老《おい》の|身《み》を|賤《しづ》が|伏屋《ふせや》に|横《よこ》たへて
|明《あか》き|尊《たふと》き|道《みち》を|宣《の》べけり
一〇
|皇神《すめかみ》の|深《ふか》き|恵《めぐ》みに|罪人《つみびと》を
|救《すく》はむとして|下《くだ》りましけり
一一
|御恵《みめぐ》みの|珍《うづ》の|光《ひかり》は|死《し》の|影《かげ》と
|暗《くら》き|身魂《みたま》を|照《て》らしましけり
一二
わが|足《あし》を|安《やす》き|大道《おほぢ》に|導《みちび》かむと
|輝《かがや》き|玉《たま》ふ|厳《いづ》の|大神《おほかみ》
第四六七
わが|心《こころ》|厳《いづ》の|御霊《みたま》を|崇《あがめ》つつ
|喜《よろこ》び|祝《いは》ふ|更生《かうせい》の|神《かみ》を
|元津神《もとつかみ》|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|御教《みをしへ》を
|伝《つた》へ|玉《たま》へる|更生《かうせい》の|御神《みかみ》
|瑞御霊《みづみたま》|万代《よろづよ》までもわが|魂《たま》を
|真幸《まさき》くあれと|守《まも》りますかも
|御力《みちから》に|富《と》ませ|玉《たま》へる|厳《いづ》の|神《かみ》は
わが|身《み》を|尊《たか》きものとなしませり
|名《な》は|清《きよ》く|恵《めぐ》みの|深《ふか》き|皇神《すめかみ》を
|畏《おそ》るるものは|世々《よよ》|恵《めぐ》まれむ
|村肝《むらきも》の|心《こころ》|驕《おご》れる|枉人《まがびと》の
|曲《まが》を|散《ち》らして|救《すく》はせ|玉《たま》ふ
|高山《たかやま》の|伊保里《いほり》を|分《わ》けて|谷《たに》に|下《くだ》し
いやしきものを|上《のぼ》らせ|玉《たま》ふ
|飢《う》ゑ|渇《かわ》く|人《ひと》をば|飽《あ》かせ|富《と》めるものも
|許《ゆる》させ|玉《たま》ふ|日《ひ》は|近《ちか》づけり
|神孫《かみのこ》とその|御裔《みすゑ》をば|限《かぎ》りなく
|憐《あは》れみ|玉《たま》ふ|元津大神《もとつおほかみ》
一〇
|遠津祖《とおつおや》に|誓《ちか》ひ|玉《たま》ひし|言《こと》の|葉《は》を
|現《あら》はし|玉《たま》ふ|時《とき》は|来《き》にけり
一一
|古《いにしへ》の|神《かみ》の|誓《ちか》ひを|詳細《まつぶさ》に
|証《あか》させ|玉《たま》ふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
第四六八
|新《あたら》しき|御歌《みうた》を|神《かみ》の|大前《おほまへ》に
|向《む》かひて|歌《うた》へ|声《こゑ》も|涼《すず》しく
|神津代《かみつよ》の|奇《くし》き|尊《たふと》き|物語《ものがたり》
|中《なか》に|交《まじ》はる|厳《いづ》の|御歌《みうた》を
|御救《みすく》ひを|知《し》らせ|正《ただ》しき|理《ことはり》を
|世《よ》の|悉《ことごと》に|示《しめ》させたまふ
|瑞御霊《みづみたま》|現《あら》はれまして|五十鈴《いそすず》の
|家《いへ》を|堅磐《かきは》に|守《まも》らせ|玉《たま》ふ
|地《ち》のはても|神《かみ》の|救《すく》ひを|得《え》たりけり
|聞《き》けよ|諸人《もろびと》|神《かみ》の|言葉《ことば》を
|琴《こと》の|音《ね》と|歌《うた》の|声《こゑ》もて|皇神《すめかみ》を
|崇《あが》めまつれよ|上《かみ》にある|人《ひと》
|海《うみ》も|山《やま》も|皆《みな》|諸共《もろとも》に|鳴《な》り|動《どよ》み
やがては|神《かみ》の|御代《みよ》となるべし
|瑞御霊《みづみたま》|神《かみ》の|御前《みまへ》に|手《て》を|拍《う》てば
|山川《やまかは》ともに|声《こゑ》|挙《あ》げて|答《こた》へむ
|地《ち》の|上《うへ》の|総《すべ》てのものは|大前《おほまへ》に
|戦《をのの》き|畏《かしこ》み|仕《つか》ふる|御代《みよ》かな
一〇
|地《ち》の|上《うへ》の|総《すべ》ての|民《たみ》を|審《さば》かむと
|下《くだ》り|玉《たま》ひぬ|神《かみ》の|言葉《ことば》に
第四六九
|節分《せつぶん》の|夜《よ》に|退《やら》はれし|我《わが》|神《かみ》の
|再《ふたた》び|現《あ》れます|時《とき》は|来《き》にけり
|邪心《よこしま》と|悪徳《あしき》を|捨《す》てて|愛善《あいぜん》の
|誠《まこと》の|種子《たね》を|地《ち》の|上《うへ》に|蒔《ま》け
|瑞御霊《みづみたま》|東《あづま》の|空《そら》に|甦《よみがへ》り
|雲《くも》に|乗《の》りつつ|来《き》たる|日《ひ》|近《ちか》し
|罪《つみ》に|死《し》し|神《かみ》に|生《い》きたる|瑞御霊《みづみたま》
|今《いま》は|此《この》|世《よ》の|柱《はしら》なりけり
|至聖《しせい》なる|旧《もと》の|都《みやこ》に|雲《くも》の|如《ごと》
|降《くだ》らせ|玉《たま》ふ|時《とき》は|来《き》にけり
|時《とき》|満《み》ちて|救《すく》ひの|神《かみ》は|元津国《もとつくに》に
|甦《よみがへ》りましぬ|来《き》たりて|崇《あが》めよ
|瑞御霊《みづみたま》|五六七《みろく》のもとに|寄《よ》り|集《つど》ふ
|誠《まこと》の|人《ひと》に|生命《いのち》|賜《たま》はむ
第四七〇
|三柱《みはしら》の|御前《みまへ》に|向《む》かひて|喜《よろこ》びの
|声《こゑ》を|上《あ》げつつ|謡《うた》ひ|舞《ま》へかし
わが|身魂《みたま》|生《う》ませ|玉《たま》ひて|懇《ねもごろ》に
|哺育《はぐく》みたまふ|元津祖神《もとつおやがみ》
|身体《からたま》も|霊魂《みたま》も|神《かみ》のものならば
ただ|御心《みこころ》に|任《まか》すのみなり
|綾錦《あやにしき》|厳《いづ》の|御門《みかど》に|寄《よ》り|来《き》たり
|讃《ほ》めよ|称《たた》へよ|厳《いづ》の|御前《みまへ》に
|千早振《ちはやぶ》る|神代《かみよ》は|愚《おろ》か|万代《よろづよ》の
|末《すゑ》も|守《まも》らす|元津大神《もとつおほかみ》
第四七一
|惟神《かむながら》|御霊《みたま》|幸《さち》はひましませと
|三柱神《みはしらがみ》の|御前《みまへ》に|祈《いの》る
スメールの|山《やま》は|何処《いづく》と|打《う》ち|仰《あふ》ぐ
わが|目《め》に|映《うつ》る|紫《むらさき》の|雲《くも》
わが|魂《たま》を|助《たす》け|守《まも》らす|皇神《すめかみ》は
|三柱神《みはしらがみ》の|外《ほか》なかりけり
わが|持《も》てる|五官《いつつ》の|機関《はたらき》あるうちに
|祈《いの》れよ|称《たた》へよ|勤《いそ》しみ|仕《つか》へよ
|葦原《あしはら》の|地《ち》の|悉《ことごと》を|守《まも》ります
|神《かみ》は|夜昼《よるひる》|眠《ねむ》り|玉《たま》はず
|人《ひと》はただ|神《かみ》の|守《まも》りを|受《う》くるより
|外《ほか》に|栄光《さかえ》の|道《みち》こそ|無《な》けれ
|夜《よ》の|守《まも》り|日《ひる》の|守《まも》りと|月日《つきひ》の|神《かみ》は
|光《ひか》り|恵《めぐ》みを|与《あた》へたまひぬ
|諸々《もろもろ》の|醜《しこ》の|災《わざは》ひ|打《う》ちはらひ
わが|魂《たましひ》を|守《まも》らせ|玉《たま》ふ
|皇神《すめかみ》は|永久《とこしへ》までも|汝《なれ》が|身《み》の
|出《い》づると|入《い》るとを|守《まも》り|玉《たま》はむ
(大正一二・五・一四 旧三・二九 隆光録)
第二三章 |神導《しんだう》〔一五九八〕
第四七二
|身体《からたま》と|霊魂《たましひ》までに|祖神《おやがみ》は
|要《い》るべきものを|与《あた》へ|玉《たま》ひぬ
|花《はな》|薫《かを》る|野辺《のべ》に|遊《あそ》ばせ|息《いき》|休《やす》む
|汀《みぎは》に|清《きよ》く|住《す》まはせ|玉《たま》ふ
わが|魂《たま》を|生《い》かし|尊《たふと》き|御名《みな》の|故《ゆゑ》に
|正《ただ》しき|道《みち》に|導《みちび》きたまふ
|皇神《すめかみ》は|恵《めぐ》みの|笞杖《しもとつゑ》をもて
|弱《よわ》き|身魂《みたま》を|立《た》たせ|給《たま》ひぬ
|御恵《みめぐ》みの|露《つゆ》の|溢《あふ》るる|盃《さかづき》は
わが|魂《たましひ》を|潤《うるほ》し|給《たま》ふ
|御恵《みめぐ》みの|花《はな》|咲《さ》く|綾《あや》の|花園《はなぞの》に
|集《つど》ふ|身魂《みたま》ぞ|楽《たの》しかりけり
第四七三
|皇神《すめかみ》の|定《さだ》め|給《たま》ひし|大神教《おほみのり》を
|守《まも》らせ|給《たま》へ|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに
|皇神《すめかみ》は|言葉《ことば》の|儘《まま》にわが|魂《たま》を
|導《みちび》き|給《たま》ふ|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》に
|清《きよ》まりし|眼《まなこ》に|映《うつ》る|神姿《みすがた》は
|東雲《しののめ》の|空《そら》|仰《あふ》ぐ|如《ごと》くなり
|外国《とつくに》の|人《ひと》の|身魂《みたま》も|照《て》らします
|神《かみ》の|光《ひかり》を|崇《あが》めまつれよ
|皇神《すめかみ》の|選《えら》み|給《たま》ひし|至聖地《しせいち》は
|広《ひろ》き|御恵《みめぐ》みの|泉《いづみ》なりけり
|大前《おほまへ》に|捧《ささ》ぐる|百《もも》の|種子物《たなつもの》も
|皆《みな》|皇神《すめかみ》の|造《つく》らししもの
さりながら|吾等《われら》の|清《きよ》き|真心《まごころ》を
|受《う》けさせ|給《たま》へいと|平《たひ》らかに
第四七四
|御恵《みめぐ》みの|清《きよ》き|御顔《みかほ》をわが|上《うへ》に
|照《て》らさせ|給《たま》へ|幸《さち》はひ|給《たま》へ
|大道《おほみち》は|普《あまね》し|地《つち》のはしばしに
|救《すく》ひの|教《のり》を|知《し》らさむ|為《ため》に
|朝夕《あさゆふ》に|感謝《かんしや》|祈願《きぐわん》の|太祝詞《ふとのりと》
|宣《の》る|氏《うぢ》の|子《こ》を|恵《めぐ》ませ|給《たま》へ
|皇神《すめかみ》の|現《あら》はれまして|善悪《よしあし》を
|審《さば》き|給《たま》はむ|時《とき》は|来《き》にけり
|地《つち》|裂《さ》けて|宝《たから》|現《あら》はれ|埋《うづ》もれし
|御玉《みたま》は|清《きよ》く|高《たか》く|栄《さか》えむ
|山川《やまかは》もよりて|仕《つか》ふる|神《かみ》の|代《よ》に
|生《う》まれ|出《い》でたる|人《ひと》の|幸《さち》かも
第四七五
|瑞御霊《みづみたま》|現《あら》はれ|給《たま》ふ|時《とき》|来《く》れば
|荒野《あらの》に|沙漠《さばく》に|川《かは》も|流《なが》れむ
|潤《うるほ》ひを|知《し》らぬ|国土《くぬち》も|御功績《みいさを》に
|清《きよ》き|清水《しみづ》の|源《みなもと》と|変《かは》らむ
|山犬《やまいぬ》の|棲処《すみか》も|神《かみ》の|代《よ》とならば
よしあし|茂《しげ》る|沼《ぬま》と|変《かは》らむ
|丹波《あかなみ》の|山《やま》の|奥《おく》にも|皇神《すめかみ》の
|聖《きよ》き|大道《おほぢ》は|開《ひら》かれにけり
|穢《けが》れたる|人《ひと》は|聖地《せいち》に|入《い》るを|得《え》ず
|迷《まよ》ひの|雲《くも》の|晴《は》れやらぬ|間《うち》は
さりながら|恵《めぐ》みの|神《かみ》は|穢《けが》れをも
|憐《あは》れみ|給《たま》ひ|濺《すす》がせ|給《たま》ふ
|攻《せ》め|寄《よ》せし|獅子《しし》も|来《き》たらず|鬼《おに》|大蛇《をろち》
ふたたび|襲《おそ》ふ|事《こと》もあるまじ
|醜虎《しことら》の|爪《つめ》|磨《と》ぎすまし|後《うし》ろより
|不意《ふい》に|抱《かか》へぬ|瑞《みづ》の|御霊《みたま》を
|枉《まが》ものも|瑞《みづ》の|御霊《みたま》に|清《きよ》められ
|姿《すがた》を|変《か》へて|仰《あふ》ぎけるかな
一〇
|道《みち》の|辺《べ》に|深《ふか》く|穿《うが》ちし|陥穽《おとしあな》に
|倒《たふ》れむとして|起《お》き|上《あ》がりけり
一一
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|御守《みまも》りある|上《うへ》は
|醜《しこ》の|枉津《まがつ》も|襲《おそ》ふ|術《すべ》なし
一二
|勝鬨《かちどき》の|声《こゑ》を|揃《そろ》へて|神《かみ》のます
|珍《うづ》の|都《みやこ》へ|帰《かへ》る|日《ひ》|勇《いさ》まし
一三
|歌《うた》ひつつ|栄光《さかえ》の|雲《くも》に|打乗《うちの》りて
|永久《とは》の|栄光《さかえ》の|聖地《せいち》に|帰《かへ》る
一四
|悲《かな》しみも|嘆《なげ》きもあとを|隠《かく》しけり
|獄舎《ひとや》の|中《なか》も|神《かみ》の|栄光《さかえ》に
一五
|元津神《もとつかみ》|厳《いづ》の|御霊《みたま》や|瑞御霊《みづみたま》
|救《すく》ひの|主《ぬし》に|御栄光《みさかえ》あれや
第四七六
|天津国《あまつくに》の|珍《うづ》の|都《みやこ》を|地《ち》の|上《うへ》に
うつし|給《たま》ひし|大本大神《おほもとおほかみ》
|天《あめ》になる|日毎《ひごと》の|糧《かて》を|地《ち》の|上《うへ》に
|恵《めぐ》み|給《たま》ひぬ|綾《あや》の|高天原《たかま》に
われに|罪《つみ》を|負《お》はせしものを|赦《ゆる》す|如《ごと》く
|赦《ゆる》させ|給《たま》へ|世人《よびと》の|罪《つみ》を
|試練《こころみ》に|遭《あ》はせ|給《たま》はずわが|魂《たま》を
|悪《あく》より|救《すく》ひ|出《い》ださせ|給《たま》へ
|神《かみ》の|国《くに》の|御稜威《みいづ》|御栄光《みさかえ》|御権力《みちから》は
|堅磐常磐《かきはときは》に|神《かみ》のものなれ
第四七七
ああ|吾《われ》は|天地《てんち》の|造《つく》り|主《ぬし》、|全智《ぜんち》|全能《ぜんのう》の|誠《まこと》の|御祖神《みおや》|大国常立之大神《おほくにとこたちのおほかみ》を|信《しん》ず。その|聖《きよ》き|美《うる》はしき|大御霊《おほみたま》より|現《あら》はれ|給《たま》ふ|厳《いづ》の|御霊《みたま》、|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|二柱《ふたはしら》、|聖霊《せいれい》に|導《みちび》かれて|綾《あや》の|高天原《たかあまはら》に|降《くだ》らせ|給《たま》ひ、|現世《うつしよ》のあらゆる|苦患《くるしみ》を|受《う》け、|厳《いづ》の|御霊《みたま》は|奥津城《おくつき》に|隠《かく》れ|給《たま》ひ、|稚姫君《わかひめぎみ》の|御霊《みたま》と|共《とも》に|天津国《あまつくに》に|上《のぼ》りまし、|地《ち》の|上《うへ》の|総《すべ》てを|憐《あは》れみ|恵《めぐ》ませ|給《たま》ひ、|又《また》|瑞《みづ》の|御霊《みたま》は|千座《ちくら》の|置戸《おきど》を|負《お》ひて|黄泉《よみ》に|下《くだ》り、|百二十日《ももはつか》あまり|六日《むゆか》の|間《あひだ》|虐《しひた》げられ、|再《ふたた》び|甦《よみがへ》りて|綾《あや》の|高天原《たかあまはら》に|上《のぼ》り、|無限絶対《むげんぜつたい》|無始無終《むしむしう》の|皇大御神《すめおほみかみ》の|大御恵《おほみめぐ》みを|伝《つた》へ、|又《また》|生《い》ける|人《ひと》と|死《まか》れる|人《ひと》の|霊《みたま》を|清《きよ》めむがために、|神《かみ》の|御使《みつかひ》として|勤《いそし》み|給《たま》ふ|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|神柱《かむばしら》を|信《しん》ず。|又《また》|吾《われ》は|大神《おほかみ》の|聖霊《せいれい》に|充《み》たされたる|精霊《せいれい》の|変性男子《いづのみたま》|変性女子《みづのみたま》の|肉《にく》の|宮《みや》に|下《くだ》り、|教《をしへ》の|場《には》と|信徒《まめひと》の|為《ため》に|限《かぎ》りなき|歓喜《よろこび》と|栄光《さかえ》と|生命《いのち》を|与《あた》へ|給《たま》ふ|事《こと》を|固《かた》く|信《しん》ず。
|惟神《かむながら》|霊《たま》|幸倍《ちはへ》|坐世《ませ》。
第四七八
|天津神《あまつかみ》|大国常立之大神《おほくにとこたちのおほかみ》の
|外《ほか》に|誠《まこと》の|神《かみ》ありと|思《おも》はじ
|目《め》に|見《み》えぬ|神《かみ》を|誠《まこと》の|神《かみ》として
|敬《うやま》ひまつれ|諸々《もろもろ》の|民《たみ》
|徒《いたづら》に|神《かみ》の|御名《みな》をば|称《たた》へまじ
|穢《けが》れ|果《は》てたる|言霊《ことたま》をもて
|清《きよ》き|日《ひ》は|総《すべ》ての|業《わざ》を|休《やす》らひて
|神《かみ》を|斎《いつ》きて|歌《うた》へ|舞《ま》へかし
|地《ち》の|上《うへ》の|汝《なれ》の|生命《いのち》の|永《なが》かれと
|父《ちち》と|母《はは》との|神《かみ》を|敬《うやま》へ
よしもなき|事《こと》に|生物《いきもの》|殺《ころ》すなよ
|皆《みな》|天地《あめつち》の|身魂《みたま》なりせば
|徒《いたづら》に|白日床組《しらひとこくみ》なす|勿《なか》れ
|神《かみ》の|御業《みわざ》の|勤《つと》め|忘《わす》れて
|目《め》を|偸《ぬす》み|宝《たから》を|盗《ぬす》み|日《ひ》を|窃《ぬす》む
|人《ひと》こそ|神《かみ》の|罪人《つみびと》と|知《し》れ
|詐《いつは》りの|証《あかし》を|立《た》ててわが|罪《つみ》を
|隣《となり》の|人《ひと》に|夢《ゆめ》なきせまじ
一〇
|仁愛《じんあい》の|心《こころ》|忘《わす》れて|世《よ》の|人《ひと》の
|総《すべ》ての|業《わざ》の|妨《さまた》げなすな
第四七九
|小雲《こくも》の|川《かは》を|波枕《なみまくら》  |百《もも》の|妨《さまた》げ|艱《なや》みをも
|直日《なほひ》に|見直《みなほ》し|宣直《のりなほ》し  |何《なん》の|憚《はばか》るところなく
|暗路《やみぢ》を|照《て》らす|神《かみ》の|代《よ》の  |奇《くし》き|尊《たふと》き|物語《ものがたり》
|言霊車《ことたまぐるま》|転《ころ》ぶまに  |水《みづ》の|流《なが》るる|音《おと》を|聞《き》き
いと|安《やす》らかに|述《の》べて|行《ゆ》く
|神《かみ》のかかりて|物《もの》されし  |瑞《みづ》の|言霊《ことたま》|聞《き》く|人《ひと》は
なやみも|罪《つみ》も|速川《はやかは》の  |波《なみ》に|埋《うづ》めて|曇《くも》りなき
|光《ひかり》の|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みに  |照《て》らされながら|正道《まさみち》を
|神《かみ》と|諸共《もろとも》|歩《あゆ》むべし
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|御言《みこと》もて  |述《の》べ|初《はじ》めたる|神《かみ》の|物語《ふみ》
|穢《けが》れ|果《は》てたる|現世《うつしよ》を  |尊《たふと》き|清《きよ》き|神《かみ》の|代《よ》に
|立直《たてなほ》さむと|朝夕《あさゆふ》に  |百《もも》の|司《つかさ》の|妨《さまた》げも
|心《こころ》にかけずスクスクと  |川瀬《かはせ》の|波《なみ》の|淀《よど》みなく
|神《かみ》のまにまに|述《の》べて|行《ゆ》く
|高天原《たかあまはら》に|現《あら》はれし  |皇大神《すめおほかみ》の|御栄光《みさかえ》の
|冠《かむり》を|頂《いただ》き|勇《いさ》み|立《た》ち  |白《しろ》き|衣《ころも》をまとひつつ
|瑞《みづ》の|聖霊《みたま》に|充《み》たされて  |天津御神《あまつみかみ》の|歌《うた》ふ|声《こゑ》に
|節《ふし》を|合《あは》せて|述《の》べて|行《ゆ》く  この|物語《ものがたり》|拡《ひろ》ごりて
|堅磐常磐《かきはときは》に|栄《さか》え|行《ゆ》く  |神《かみ》の|仕組《しぐみ》ぞ|尊《たふと》けれ
第四八〇
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|積《つ》もりてし  |数多《あまた》の|罪科《つみとが》|穢《けが》れをば
|棄《す》てて|高天原《たかま》に|参上《まゐのぼ》り  |心《こころ》の|色《いろ》も|新《あたら》しく
|咲《さ》き|匂《にほ》ひたるわが|身魂《みたま》  |厳《いづ》の|御霊《みたま》や|瑞御霊《みづみたま》
|聖《きよ》き|尊《たふと》き|御名《みな》により  |昔《むかし》の|神《かみ》のふまれたる
|御跡《みあと》を|慕《した》ひ|詳細《まつぶさ》に  その|経緯《いきさつ》を|述《の》べて|行《ゆ》く
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |恩頼《みたまのふゆ》をたまへかし
|八十《やそ》の|枉津《まがつ》の|醜魂《しこたま》に  |穢《けが》され|果《は》てし|烏羽玉《うばたま》の
|黒《くろ》き|汚《きたな》き|身体《からたま》は  |潮《しほ》の|八百路《やほぢ》の|八潮路《やしほぢ》の
|千尋《ちひろ》の|海《うみ》の|藻屑《もくづ》とし  |恵《めぐ》み|普《あまね》き|皇神《すめかみ》の
|御跡《みあと》を|踏《ふ》み|分《わ》け|奉《たてまつ》り  |根底《ねそこ》の|国《くに》や|中有界《ちううかい》
|神《かみ》の|御国《みくに》の|有様《ありさま》を  いと|細々《こまごま》と|述《の》べて|行《ゆ》く
|奇《くし》き|霊界物語《れいかいものがたり》  |開《ひら》かせ|給《たま》へ|四方《よも》の|国《くに》
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|救《すく》ひより  |天津御国《あまつみくに》に|上《のぼ》りなば
いと|新《あたら》しき|神《かみ》の|世《よ》に  |御霊《みたま》を|受《う》けて|甦《よみがへ》り
|浸染《しみ》なく|傷《きず》なき|日本魂《やまとだま》  |赤《あか》き|血潮《ちしほ》の|道筋《みちすぢ》を
|只《ただ》|一条《ひとすぢ》に|歩《あゆ》み|行《ゆ》く  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|恩頼《みたまのふゆ》ぞ|尊《たふと》けれ
第四八一
|和知川《わちがは》の|流《なが》れに|罪《つみ》を|流《なが》し|捨《す》て
|新《あたら》しき|神《かみ》の|御園《みその》に|進《すす》む
|御園《みその》には|宣伝使《みつかひ》|数多《あまた》|集《あつ》まりて
|天津御国《あまつみくに》の|教《のり》を|伝《つた》ふる
|古《ふる》びたるわが|身《み》を|洗《あら》ひ|清《きよ》めつつ
|生《い》かせ|給《たま》ひぬ|新《あたら》しき|命《いのち》に
|現界《うつしよ》の|今日《けふ》を|終《をは》りと|思《おも》ひなして
|甦《よみがへ》りてむ|神《かみ》の|大道《おほぢ》に
|身《み》を|殺《ころ》す|罪《つみ》の|中《なか》をば|浮《うか》び|出《い》でて
|命《いのち》の|汀《みぎは》に|今《いま》は|立《た》ちぬる
|現界《うつしよ》の|夢《ゆめ》は|水泡《みなわ》と|消《き》え|果《は》てて
|行《ゆ》かむ|花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|神国《みくに》に
(大正一二・五・一四 旧三・二九 隆光録)
第二四章 |神瑞《しんずゐ》〔一五九九〕
第四八二
|大空《おほぞら》ゆ|黄金《こがね》の|鳩《はと》は|下《くだ》りけり
|御文《みふみ》|啣《くは》へて|綾《あや》の|聖地《せいち》に
|御教《みをしへ》と|御名《みな》を|広《ひろ》けく|伝《つた》ふべく
|天《あま》|翔《か》けり|往《ゆ》く|八咫烏《やあたがらす》は
|永久《とこしへ》に|身《み》は|奥津城《おくつき》の|墓《はか》を|蹴《け》り
|白鳥《しらとり》となりて|天《あま》|翔《か》けりましぬ
|吹《ふ》き|棄《す》つる|伊吹《いぶき》の|狭霧《さぎり》にあれませる
|劔《つるぎ》の|御霊《みたま》|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
第四八三
|生命《いのち》の|主《きみ》はヨルダンの  |河瀬《かはせ》の|波《なみ》を|押《お》しわけて
|聖《きよ》き|御園《みその》に|来《き》たりまし  |天津御国《あまつみくに》の|音《おと》づれを
|委曲《つぶさ》に|宣《の》らす|珍《うづ》の|声《こゑ》  |風《かぜ》のまにまに|聞《き》こえけり
|黄金《こがね》の|鳩《はと》は|御空《みそら》より  |神《かみ》の|御園《みその》の|嫩葉《わかば》をば
|含《ふく》みて|清《きよ》く|下《くだ》り|来《く》る  |神《かみ》の|選《えら》みし|大聖地《だいせいち》
|都《みやこ》の|空《そら》ぞ|美《うる》はしき
|栄《さか》えの|園《その》にいそいそと  |進《すす》み|往《ゆ》く|身《み》は|五十鈴《いそすず》の
|河《かは》の|流《なが》れに|御禊《みそぎ》して  |罪《つみ》の|跡《あと》なき|神御霊《かむみたま》
|神《かみ》の|御足《みあし》の|跡《あと》を|追《お》ひ  |夜《よる》なき|国《くに》へ|上《のぼ》り|往《ゆ》く
|永久《とは》の|備《そな》への|為《ため》ぞかし
いと|新《あたら》しき|奥津城《おくつき》の  |深《ふか》きに|隠《かく》れたまひたる
|教御祖《をしへみおや》の|霊《たましひ》は  |天津使《あまつつかひ》に|伴《ともな》はれ
|日《ひ》の|若宮《わかみや》に|昇《のぼ》りまし  |老《お》いず|死《まか》らず|喜《よろこ》びと
|栄《さか》えに|充《み》てる|楽園《らくゑん》に  |御跡《みあと》とどめて|葦原《あしはら》の
|下津御国《したつみくに》の|人草《ひとぐさ》に  |恵《めぐ》みの|露《つゆ》を|垂《た》れたまふ
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |恩頼《みたまのふゆ》を|給《たま》へかし
第四八四
|水仙《すゐせん》の|花《はな》は|散《ち》れども|惜《を》しむまじ
|神《かみ》の|御園《みその》の|種《たね》を|残《のこ》せば
|白雲《しらくも》にまがふばかりの|花《はな》の|山《やま》を
|仇《あだ》に|散《ち》らすか|醜《しこ》の|曲風《まがかぜ》
|故郷《ふるさと》に|帰《かへ》りて|如何《いか》に|詫《わ》びぬべき
|醜《しこ》の|嵐《あらし》に|散《ち》りし|花《はな》の|身《み》は
|花《はな》とばかり|輝《かがや》く|月《つき》にあこがれて
|知《し》らず|知《し》らずに|神国《かみくに》に|入《い》る
|御空《みそら》|照《て》る|月《つき》の|光《ひかり》のなかりせば
|夜《よる》の|旅路《たびぢ》を|如何《いか》に|進《すす》まむ
さやかなる|月《つき》の|御顔《みかほ》を|拝《をが》まむと
|出《い》でにし|庭《には》に|松《まつ》の|露《つゆ》|散《ち》る
|科戸辺《しなどべ》の|風《かぜ》の|姿《すがた》は|見《み》えねども
|真帆《まほ》の|孕《はら》みを|眺《なが》めてぞ|知《し》る
第四八五
|皆《みな》|人《ひと》の|眠《ねむ》りにつける|真夜中《まよなか》に
|醒《さ》めよと|来《き》なく|山杜鵑《やまほととぎす》
|千早振《ちはやぶ》る|神《かみ》の|社《やしろ》の|大前《おほまへ》に
|劔《つるぎ》かざして|大和舞《やまとまひ》する
|忍《しの》び|音《ね》に|啼《な》く|杜鵑《ほととぎす》|声《こゑ》|涸《か》れて
|今《いま》は|血《ち》を|吐《は》くよしもなきかな
|風雅人《みやびと》の|耳《みみ》には|入《い》らぬ|杜鵑《ほととぎす》
|嘆《なげ》きの|声《こゑ》は|杣人《そまびと》のみ|聞《き》く
|杜鵑《ほととぎす》|声《こゑ》は|御空《みそら》に|啼《な》き|涸《か》れて
|月《つき》の|影《かげ》のみ|後《あと》に|慄《ふる》へる
|杜鵑《ほととぎす》|啼《な》く|音《ね》を|聞《き》けばしかすがに
|心《うら》|悲《かな》しくもなりにけるかな
|山々《やまやま》を|啼《な》き|渡《わた》りつつ|杜鵑《ほととぎす》
|賤《しづ》が|伏屋《ふせや》の|空《そら》に|来《き》にけり
|清《きよ》き|友《とも》の|寄《よ》りて|仕《つか》ふる|赤心《まごころ》を
|雲井《くもゐ》につげよ|山杜鵑《やまほととぎす》
第四八六
|足曳《あしびき》の|山《やま》の|彼方《かなた》に|月《つき》|澄《す》みぬ
|仰《あふ》ぎ|慕《した》へよ|瑞《みづ》の|光《ひかり》を
|月《つき》の|神《かみ》|闇《やみ》を|晴《は》らして|円山《まるやま》の
|清《きよ》き|御空《みそら》にのぼらせたまふ
|電燈《でんとう》の|光《ひかり》も|月《つき》の|出《い》でぬれば
うとまれにけり|道《みち》|行《ゆ》く|人《ひと》に
|草《くさ》の|葉《は》におく|白露《しらつゆ》のいと|清《きよ》く
|月《つき》の|光《ひかり》の|添《そ》ひて|守《まも》れる
|夕立《ゆふだち》の|雲《くも》|晴《は》れゆきて|大空《おほぞら》に
|涼《すず》しき|月《つき》の|影《かげ》さやかなり
|駒《こま》|留《と》めてしばし|拝《をが》まむ|円山《まるやま》の
|珍《うづ》の|御空《みそら》に|輝《かがや》く|月《つき》を
|小雲川《こくもがは》|波《なみ》も|静《しづ》かに|水《みづ》の|面《も》に
うつれる|月《つき》の|影《かげ》は|砕《くだ》けつ
|水底《みなそこ》に|影《かげ》をうつせし|松ケ枝《まつがえ》に
|月《つき》は|澄《す》みけり|魚《うを》も|住《す》みけり
第四八七
|天《あま》の|河《かは》|小雲《こくも》の|川《かは》にうつせしか
|機織姫《はたおりひめ》の|衣《きぬ》を|洗《あら》へる
|月《つき》|沈《しづ》む|綾《あや》の|大橋《おほはし》うちわたり
|高天原《たかあまはら》にのぼる|神人《かみびと》
|野辺《のべ》に|咲《さ》く|花《はな》の|姿《すがた》にあこがれて
|宿《やど》りたまふか|月《つき》の|大神《おほかみ》
|奥山《おくやま》の|紅葉《もみぢ》の|錦《にしき》|散《ち》らぬ|間《ま》に
|求《ま》ぎて|来《き》たれよ|鹿《しか》の|鳴《な》く|音《ね》を
|三五《あななひ》の|月《つき》の|光《ひかり》を|求《ま》ぎて|来《こ》よ
|草葉《くさば》の|露《つゆ》に|袖《そで》ぬらすとも
|神《かみ》の|道《みち》|踏《ふ》み|分《わ》けゆけば|嬉《うれ》し|野《の》の
|木々《きぎ》の|梢《こずゑ》に|宿《やど》る|月影《つきかげ》
|雲《くも》の|上《へ》の|貴人達《あでびとたち》に|聞《き》かせたし
|谷間《たにま》に|歌《うた》ふ|鶯《うぐひす》の|声《こゑ》
第四八八
|雁《かりがね》の|便《たよ》りも|聞《き》かぬ|山《やま》の|奥《おく》に
|世《よ》を|救《すく》はむと|泣《な》く|人《ひと》のあり
|澄《す》み|渡《わた》る|秋《あき》の|月影《つきかげ》|眺《なが》むれば
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|偲《しの》ばるるかな
|荒風《あらかぜ》に|吹《ふ》き|捲《まく》られて|白露《しらつゆ》に
おく|月影《つきかげ》も|散《ち》りてけるかな
|草《くさ》の|葉《は》の|露《つゆ》に|宿《やど》れる|月影《つきかげ》を
|醜《しこ》の|嵐《あらし》の|散《ち》らすうたてさ
|幾褥《いくふすま》|重《かさ》ねてさへも|寒《さむ》き|夜半《よは》
|御空《みそら》の|月《つき》は|霜《しも》に|宿《やど》かる
|老《お》いぬれど|澄《す》みきる|月《つき》を|眺《なが》むれば
また|若《わか》がへりたる|心地《ここち》こそすれ
|花《はな》|散《ち》りて|見《み》る|影《かげ》もなき|梢《こずゑ》にも
|月《つき》は|静《しづ》かに|輝《かがや》きにけり
|夕暮《ゆふぐれ》に|悲《かな》しげに|鳴《な》く|秋《あき》の|虫《むし》の
|声《こゑ》|聞《き》くごとに|世《よ》をば|果敢《はか》なむ
第四八九
|虫《むし》の|音《ね》は|早《はや》くも|絶《た》えて|草枯《くさが》れの
|野辺《のべ》にも|清《きよ》く|月《つき》は|照《て》りぬる
|御教《みをしへ》を|聞《き》きて|袂《たもと》を|絞《しぼ》りつつ
|露野《つゆの》を|分《わ》けて|参《まゐ》る|嬉《うれ》しさ
|白露《しらつゆ》の|光《ひかり》|目出度《めでた》く|輝《かがや》くは
|月《つき》の|御神《みかみ》の|在《ま》せばなりけり
|賤ケ家《しづがや》の|軒端《のきば》の|菊《きく》はしをれけり
|唯《ただ》|一度《ひとたび》の|霜《しも》のいたみに
|山々《やまやま》の|木草《きぐさ》も|如何《いか》に|育《そだ》つべき
|清《きよ》けき|月《つき》の|露《つゆ》なかりせば
|凩《こがらし》や|時雨《しぐれ》に|脆《もろ》く|砕《くだ》かれて
|朝露《あさつゆ》に|匂《にほ》ふ|紅葉《もみぢ》|散《ち》りぬる
|照《て》りはえし|高雄《たかを》の|山《やま》の|紅葉《もみぢば》も
いつ|木枯《こがらし》の|吹《ふ》かぬものかは
|高砂《たかさご》の|尾上《をのへ》の|松《まつ》も|秋《あき》の|夜《よ》の
|月《つき》しなければ|淋《さび》しかるらむ
第四九〇
|御空《みそら》|飛《と》ぶ|高雄《たかを》の|山《やま》の|紅葉《もみぢば》も
|色《いろ》づき|初《そ》めて|冬《ふゆ》|近《ちか》づきぬ
|変《かは》り|往《ゆ》く|色《いろ》こそ|見《み》えね|常磐山《ときはやま》
|紅葉《もみぢ》の|色《いろ》もうつりけるかな
|澄《す》み|渡《わた》る|月《つき》の|桂《かつら》は|清《きよ》くして
|暗《くら》き|高雄《たかを》の|峰《みね》を|照《て》らしつ
|晴《は》れ|曇《くも》り|時雨《しぐれ》|往《ゆ》きかふ|冬《ふゆ》の|空《そら》に
|月《つき》の|光《ひかり》はひとりさやけし
|日《ひ》に|月《つき》にうつろひ|初《そ》めし|紅葉《もみぢば》の
|果敢《はか》なく|散《ち》らむ|冬《ふゆ》は|来《き》にけり
|日《ひ》の|光《ひかり》|月《つき》の|恵《めぐ》みの|露《つゆ》を|受《う》けて
|唐紅《からくれなゐ》に|照《て》れる|紅葉《もみぢば》
|神無《かみな》しの|月《つき》の|御空《みそら》は|凩《こがらし》の
|今《いま》|吹《ふ》かずとも|紅葉《もみぢ》|散《ち》り|行《ゆ》く
|千鳥《ちどり》|鳴《な》く|声《こゑ》も|激《はげ》しき|波《なみ》の|音《ね》に
|妨《さまた》げられて|聞《き》かぬ|時《とき》かな
第四九一
|室《むろ》にさく|千花《ちばな》の|色《いろ》は|赤《あか》くとも
|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|薫《かを》りなきかな
|大本《おほもと》に|参来《まゐき》|集《つど》へる|信徒《まめひと》は
|一度《ひとたび》|汲《く》めよ|玉《たま》の|井《ゐ》の|水《みづ》
|神垣《かみがき》の|厳《いづ》の|光《ひかり》を|白梅《しらうめ》の
|薫《かを》りに|心《こころ》|移《うつ》ろひにけり
|袖《そで》なしの|衣《ころも》の|胸《むね》に|散《ち》る|花《はな》は
|常世《とこよ》の|国《くに》の|姿《すがた》なりけり
|人《ひと》|恋《こ》ふる|心《こころ》に|道《みち》はなきものを
など|醜鬼《しこおに》のさやるなるらむ
|飽《あ》きかけし|夫婦《ふうふ》の|中《なか》も|草枕《くさまくら》
|旅《たび》にし|行《ゆ》けば|又《また》|思《おも》ふかな
|膝元《ひざもと》に|仕《つか》へまつりし|時《とき》よりも
|恋《こひ》しくなりぬ|神《かみ》の|大前《おほまへ》
|別《わか》れても|亦《また》|逢阪《おふさか》の|関《せき》の|戸《と》を
|開《ひら》かむ|道《みち》を|備《そな》へおかまし
|小雲川《こくもがは》|深《ふか》き|心《こころ》はとめずとも
また|慕《した》はしくなるものぞかし
(大正一二・五・一四 旧三・二九 於教主殿 明子録)
第二五章 |神雲《しんうん》〔一六〇〇〕
第四九二
せまり|来《く》る|神代《かみよ》も|更《さら》に|白河《しらかは》の
|関《せき》の|戸《と》|開《ひら》く|人《ひと》の|少《すく》なき
|草枕《くさまくら》|旅《たび》に|出《い》でては|思《おも》ふかな
|綾《あや》の|高天《たかま》の|大前《おほまへ》|如何《いか》にと
|白雲《しらくも》の|遠《とほ》く|隔《へだ》ちし|国々《くにぐに》ゆ
|御稜威《みいづ》|慕《した》ひて|来《き》たる|神垣《かみがき》
|敷島《しきしま》の|大和《やまと》|島根《しまね》の|神《かみ》の|庭《には》は
|千代《ちよ》に|八千代《やちよ》に|動《うご》かざらまし
さざれ|石《いし》の|巌《いはほ》となれる|姿《すがた》|見《み》れば
|神《かみ》の|都《みやこ》の|御栄《みさか》えを|知《し》る
|皇神《すめかみ》の|珍《うづ》の|教《をしへ》は|万代《よろづよ》に
|弥広《いやひろ》らかに|栄《さか》えますらむ
|神垣《かみがき》の|木々《きぎ》の|緑《みどり》は|萌《も》え|出《い》でて
|神代《かみよ》の|春《はる》を|長閑《のどか》に|語《かた》れり
|杜鵑《ほととぎす》|声《こゑ》|涸《か》れ|果《は》てて|御恵《みめぐ》みの
|露《つゆ》|奥津城《おくつき》に|忍《しの》び|音《ね》になく
第四九三
|四尾山《よつをやま》|峰《みね》の|諸木《もろき》も|緑《みどり》して
|迎《むか》へ|待《ま》つらむミロクの|御代《みよ》を
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》の|聖地《せいち》に|杜鵑《ほととぎす》
|夜《よ》な|夜《よ》な|来《き》たりてひた|啼《な》きになく
|三千年《みちとせ》の|長《なが》き|月日《つきひ》を|啼《な》き|明《あか》し
|今《いま》なほ|叫《さけ》ぶ|山杜鵑《やまほととぎす》
|風《かぜ》の|宵《よひ》|雨《あめ》の|晨《あした》は|一入《ひとしほ》に
|物悲《ものかな》しもよ|桶伏《をけふせ》の|山《やま》
|人《ひと》の|目《め》に|壊《こは》たれたりと|見《み》ゆれども
|珍《うづ》の|高殿《たかどの》|永久《とこしへ》に|建《た》てり
|本宮山《ほんぐうやま》|若葉《わかば》をふくむ|山鳩《やまばと》の
|影《かげ》さへ|見《み》えぬ|闇夜《やみよ》なるかも
|谷《たに》の|戸《と》を|押《お》しわけ|歌《うた》ふ|鶯《うぐひす》の
|声《こゑ》は|常世《とこよ》の|春《はる》の|魁《さきがけ》
|咲《さ》くとても|手折《たを》る|人《ひと》なき|松《まつ》の|花《はな》
|葉末《はずゑ》の|露《つゆ》の|恵《めぐ》み|知《し》らねば
第四九四
|神垣《かみがき》の|松《まつ》の|梢《こずゑ》に|御空《みそら》|飛《と》ぶ
|鶴《つる》|舞《ま》ひ|下《くだ》り|千歳《ちとせ》を|契《ちぎ》る
|月《つき》なくて|如何《いか》で|木草《きぐさ》の|茂《しげ》るべきや
|天津光《あまつひかり》の|影《かげ》のみにして
|又《また》しても|月《つき》の|面《も》のみを|讃《ほ》め|称《たた》へ
|焦《こが》れ|顔《がほ》なる|夕暮《ゆふぐれ》の|空《そら》
|金竜《きんりう》の|池《いけ》の|面《おもて》に|澄《す》む|月《つき》は
|世《よ》の|乱《みだ》れをも|知《し》らず|顔《がほ》なる
|水鳥《みづとり》のいと|安《やす》らけく|浮《うか》ぶとも
|足《あし》にひまなき|月《つき》の|御心《みこころ》
|神《かみ》|思《おも》ふ|珍《うづ》の|心《こころ》につながれて
あこがれ|出《い》できぬ|糸《いと》のまにまに
|君《きみ》|知《し》るや|高天原《たかあまはら》の|神《かみ》の|園《その》に
|身《み》はよそながらかかる|心《こころ》を
|神垣《かみがき》の|月《つき》の|光《ひかり》をながめつつ
したたる|雫《しづく》に|霑《うるほ》ひにけり
|神垣《かみがき》の|松《まつ》の|落葉《おちば》をかきよせて
|常夜《とこよ》の|暗《やみ》の|篝火《かがりび》とせむ
一〇
|大丈夫《ますらを》の|中《なか》に|淋《さび》しく|只《ただ》|一人《ひとり》
|交《まじ》こるわが|身《み》も|神国《かみくに》のため
第四九五
|千早振《ちはやぶ》る|神《かみ》の|教《をしへ》にしたがひて
|御国《みくに》に|尽《つく》す|外《ほか》なかりけり
|楠船《くすぶね》ののり|越《こ》す|波《なみ》のいや|深《ふか》く
|真心《まごころ》ひとつに|御国《みくに》に|尽《つく》さむ
|花《はな》の|色《いろ》は|昔《むかし》ながらに|変《かは》らねど
|移《うつ》ろひにけり|心《こころ》の|花《はな》は
|木下蔭《こしたかげ》に|淋《さび》しげに|咲《さ》きし|兄《こ》の|花《はな》も
|天津光《あまつひかり》をうけて|栄《さか》ゆる
|空《そら》|蔽《おほ》ひし|醜《しこ》の|古木《ふるき》の|倒《たふ》れてゆ
|白梅《しらうめ》の|花《はな》は|世《よ》に|出《い》でにけり
|山《やま》|深《ふか》み|日影《ひかげ》もささぬ|谷《たに》の|底《そこ》に
|薫《かを》る|桜《さくら》も|月《つき》の|恵《めぐ》みぞ
|花《はな》は|散《ち》り|木《こ》の|葉《は》も|落《お》ちて|杣人《そまびと》の
|手斧《ておの》の|錆《さび》となる|老木《おいき》かな
|桶伏《をけふせ》の|御山《みやま》の|花《はな》は|散《ち》らされて
わが|面影《おもかげ》にのみぞ|残《のこ》れる
第四九六
|古《いにしへ》の|神《かみ》の|都《みやこ》に|吹《ふ》き|捲《まく》る
|嵐《あらし》の|浪《なみ》の|打《う》ちかへしかも
|科戸辺《しなどべ》の|風《かぜ》|吹《ふ》きかへす|朝《あさ》ぼらけ
|浪《なみ》|逆《さか》まきて|仇船《あだぶね》|沈《しづ》めむ
|来《き》て|見《み》れば|山《やま》の|諸木《もろき》は|緑《みどり》すれど
うら|悲《かな》しけれ|宮居《みやゐ》の|跡《あと》は
|三千年《みちとせ》の|醜《しこ》|荒浪《あらなみ》に|漂《ただよ》ひて
|現《あ》れましし|神《かみ》の|宮居《みやゐ》こぼちぬ
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》|登《のぼ》り|往《ゆ》く|信徒《まめひと》の
|心《こころ》の|空《そら》に|時雨《しぐれ》しにけり
|宮脇《みやわき》に|潜《ひそ》める|醜《しこ》の|曲神《まがかみ》の
|荒《あら》ぶがままに|任《まか》したまひぬ
|皇神《すめかみ》の|心《こころ》は|広《ひろ》し|和田《わだ》の|原《はら》
|秘密《ひみつ》の|底《そこ》は|知《し》るよしもなし
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》に|夜《よ》な|夜《よ》な|只《ただ》|一人《ひとり》
|祈《いの》る|真人《まびと》のありと|知《し》らずや
第四九七
|白妙《しろたへ》の|衣《ころも》の|袖《そで》に|梅《うめ》|薫《かを》る
|綾《あや》の|高天《たかま》に|詣《まう》で|来《き》しより
|家族《うから》|親族《やから》うち|連《つ》れ|立《だ》ちて|神園《かみその》の
|教《をしへ》の|花《はな》に|酔《よ》ふぞ|楽《たの》しき
|和衣《にぎたへ》の|綾部《あやべ》に|薫《かを》る|白梅《しらうめ》は
|心《こころ》の|花《はな》の|眼《まなこ》さませり
|昔《むかし》|見《み》し|白梅《しらうめ》の|木《き》は|老《お》いぬれど
|花《はな》の|色香《いろか》はいとど|目出度《めでた》し
|足曳《あしびき》の|深山《みやま》の|奥《おく》に|潜《ひそ》むとも
|花《はな》は|咲《さ》くなり|鳥《とり》|歌《うた》ふなり
|青垣《あをがき》を|四方《よも》に|繞《めぐ》らす|山里《やまざと》に
|清《きよ》き|清水《しみづ》の|流《なが》れけるかな
|都路《みやこぢ》の|塵《ちり》に|汚《けが》れし|御霊《みたま》をば
|来《き》たりて|滌《すす》げ|玉《たま》の|井《ゐ》の|水《みづ》に
|山里《やまざと》に|身《み》は|老《お》いぬれど|霊魂《たましひ》は
|神《かみ》の|都《みやこ》の|花《はな》と|薫《かを》れる
第四九八
|神園《かみぞの》の|松《まつ》に|御霊《みたま》を|取《と》りかけて
|神去《かむさ》りましぬ|教御祖《をしへみおや》は
|白梅《しらうめ》の|花《はな》に|心《こころ》を|残《のこ》しつつ
|露《つゆ》|奥津城《おくつき》に|眠《ねむ》りたまひぬ
|木花《このはな》の|咲耶《さくや》の|姫《ひめ》の|生《あ》れましし
|黄金《こがね》の|峰《みね》は|雲《くも》に|聳《そび》えつ
|瑞御霊《みづみたま》|珍《うづ》の|教《をしへ》をうつそみの
|世《よ》は|木《こ》の|花《はな》と|永久《とは》に|栄《さか》えむ
|西《にし》へ|行《ゆ》く|思《おも》ひは|誰人《たれ》もあるものを
|見捨《みす》てて|入《い》るな|大空《おほぞら》の|月《つき》
|憐《あは》れみの|心《こころ》は|誰《たれ》も|広《ひろ》けれど
|育《はぐ》くむ|袖《そで》の|狭《せま》きが|憂《う》れたき
|限《かぎ》りなき|恵《めぐ》みの|御手《みて》を|差《さ》し|伸《の》べて
|救《すく》はせたまふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|頂《いただき》に|霜《しも》|降《ふ》り|添《そ》ひて|白雪《しらゆき》の
|心《こころ》の|空《そら》は|清《きよ》くなりぬる
第四九九
|五月蠅《さばへ》なす|声《こゑ》は|激《はげ》しくなりにけり
|世《よ》の|別《わか》れ|路《ぢ》の|近《ちか》づきしより
|曲神《まがかみ》の|荒《すさ》む|闇世《やみよ》もすみがまの
|黒《くろ》き|煙《けむり》と|消《き》ゆる|神代《みよ》なり
アア|神《かみ》と|唱《とな》ふる|声《こゑ》に|夢《ゆめ》|醒《さ》めて
|打《う》ち|出《で》て|見《み》れば|月《つき》は|傾《かたむ》く
|厳御霊《いづみたま》|教《をしへ》の|光《ひかり》なかりせば
|如何《いか》でか|月《つき》に|心《こころ》を|懸《か》けむや
|苗代《なはしろ》の|水《みづ》は|乾《かわ》きぬ|天《あま》の|河《かは》
|放《はな》ちてみづの|御霊《みたま》たまひぬ
|梅《うめ》|散《ち》りて|御園《みその》の|桃《もも》は|咲《さ》きにけり
|薫《かを》り|目出度《めでた》き|神《かみ》のまにまに
|春山《はるやま》に|朝《あさ》|啼《な》く|雉子《きじ》の|声《こゑ》すなり
|神《かみ》の|御教《みのり》の|若芽《わかめ》|摘《つ》めとや
|月《つき》の|夜《よ》に|生《お》ひ|育《そだ》ちたる|姫小松《ひめこまつ》の
|葉末《はずゑ》の|露《つゆ》は|玉《たま》と|照《て》らへり
第五〇〇
|池水《いけみづ》にうつりて|咲《さ》ける|梅《うめ》の|花《はな》を
|手折《たを》るはみづの|心《こころ》なりけり
|吾《われ》|行《ゆ》かむ|後《のち》まで|散《ち》らず|待《ま》てよかし
|薫《かを》り|床《ゆか》しき|神園《かみぞの》の|梅《うめ》
|久方《ひさかた》の|御空《みそら》に|咲《さ》ける|桃《もも》の|花《はな》を
|手折《たを》らむよしも|泣《な》き|暮《くら》しつつ
よしや|身《み》は|山河《やまかは》|遠《とほ》く|隔《へだ》つとも
|心《こころ》に|手折《たを》らむ|神園《かみぞの》の|桃《もも》
|真清水《ましみづ》も|霜《しも》にこほればひた|曇《くも》る
|昔《むかし》にかへれみづの|御霊《みたま》に
|山桜《やまざくら》|彼方《かなた》|此方《こなた》に|立《た》ち|交《まじ》り
|松《まつ》の|緑《みどり》に|眺望《ながめ》|添《そ》へぬる
|嵐山《あらしやま》|花《はな》のまにまに|緑《みどり》なくば
|錦《にしき》の|峰《みね》と|誰《たれ》か|称《たた》へむ
|風《かぜ》に|散《ち》る|花《はな》の|姿《すがた》を|眺《なが》むれば
|人《ひと》の|浮世《うきよ》の|憂《うれ》たくもあるかな
第五〇一
|散《ち》りて|又《また》|再《ふたた》び|花《はな》の|咲《さ》く|春《はる》を
|待《ま》つよしもなく|滅《ほろ》び|行《ゆ》くかな
|永久《とこしへ》の|花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|天津国《あまつくに》の
|春《はる》こそ|永久《とは》の|住家《すみか》なりけり
|讃《ほ》め|称《たた》へ|見上《みあ》ぐる|花《はな》の|足許《あしもと》に
|散《ち》りて|踏《ふ》まるる|山桜《やまざくら》かな
|九重《ここのへ》に|咲《さ》く|山吹《やまぶき》の|果敢《はか》なけれ
|散《ち》りたる|後《のち》に|実《み》さへなければ
|世《よ》の|中《なか》は|往来《ゆきき》の|道《みち》も|見《み》えぬまで
|闇《やみ》の|帳《とばり》に|包《つつ》まれにけり
|闇《やみ》の|戸《と》を|押《お》しわけ|昇《のぼ》る|朝日子《あさひこ》の
|日《ひ》の|出《で》の|神《かみ》を|待《ま》ちあぐみつつ
|東雲《しののめ》の|空《そら》を|眺《なが》めて|神《かみ》の|子《こ》の
|月松《つきまつ》の|代《よ》を|焦《こが》れ|慕《した》ひつ
|露霜《つゆしも》の|置《お》きて|褪《あ》せたる|白菊《しらぎく》の
|花《はな》はあやしく|葉末《はずゑ》に|慄《ふる》ふ
(大正一二・五・一五 旧三・三〇 於教主殿 明子録)
第六篇 |聖地《せいち》の|花《はな》
第二六章 |神丘《しんきう》〔一六〇一〕
第五〇二
|澄《す》み|渡《わた》る|玉《たま》の|井《ゐ》の|底《そこ》を|眺《なが》むれば
|風《かぜ》に|散《ち》り|行《ゆ》く|花《はな》の|影《かげ》|見《み》ゆ
|玉《たま》の|井《ゐ》の|鏡《かがみ》に|映《うつ》る|月影《つきかげ》は
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》か|如意《によい》の|宝珠《ほつしゆ》か
|花《はな》の|色《いろ》の|褪《あ》せ|行《ゆ》く|見《み》れば|知《し》らぬ|間《ま》に
|春《はる》は|暮《く》れけり|野《の》はうつりけり
|夜《よ》を|照《て》らす|月《つき》の|恵《めぐ》みを|白雲《しらくも》の
|花《はな》と|讃《ほ》めつつ|雪《ゆき》と|称《たた》へつ
|雪《ゆき》よりも|花《はな》よりも|尚《なほ》|清《きよ》くして
|御空《みそら》に|澄《す》める|月《つき》の|光《かげ》なり
第五〇三
|夢《ゆめ》とのみ|仇《あだ》に|聞《き》きてし|時鳥《ほととぎす》
|只《ただ》|一声《ひとこゑ》の|懐《なつか》しくなりぬ
|神園《かみぞの》にたてる|常磐《ときは》の|松《まつ》を|見《み》れば
|花《はな》に|心《こころ》はうつらざりけり
|松《まつ》|見《み》れば|何時《いつ》も|緑《みどり》の|色《いろ》|清《きよ》く
|常磐《ときは》の|春《はる》の|心地《ここち》せらるる
|神園《かみぞの》の|白梅《しらうめ》|清《きよ》く|散《ち》り|果《は》てぬ
|実《み》を|結《むす》ぶなる|魁《さきがけ》として
|高山《たかやま》にかかれる|八重《やへ》の|横雲《よこぐも》に
なきすてて|行《ゆ》く|山時鳥《やまほととぎす》
第五〇四
|時鳥《ほととぎす》|啼《な》きつるあとに|家鶏《かけどり》の
|声《こゑ》さわやかに|暁《あかつき》|告《つ》ぐる
|暁《あかつき》の|黄金《こがね》の|鳥《とり》は|啼《な》き|初《そ》めぬ
|五六七《みろく》の|御代《みよ》の|曙《あけぼの》|近《ちか》みて
いや|高《なか》く|月《つき》は|照《て》れども|八重霞《やへがすみ》
|中空《なかぞら》しきる|忌《いま》はしさかな
|武蔵野《むさしの》に|声《こゑ》|悲《かな》しげに|啼《な》き|渡《わた》る
|山時鳥《やまほととぎす》|血潮《ちしほ》|吐《は》くなり
|啼《な》き|涸《か》れて|今《いま》は|声《こゑ》なき|時鳥《ほととぎす》
|焦《こが》るる|袖《そで》に|五月雨《さみだれ》の|降《ふ》る
第五〇五
|夏《なつ》の|夜《よ》も|寝《い》ねあぐみたる|老人《おいびと》の
|耳《みみ》を|澄《す》まして|啼《な》く|時鳥《ほととぎす》かな
|寝《いぬ》る|間《ま》も|神《かみ》の|御前《みまへ》を|慕《した》ふ|身《み》の
|夢《ゆめ》の|山路《やまぢ》に|時鳥《ほととぎす》|啼《な》く
|世《よ》を|嘆《なげ》き|人《ひと》を|嘆《なげ》きて|時鳥《ほととぎす》
|声《こゑ》からしつつ|雲井《くもゐ》を|翔《か》ける
|一声《ひとこゑ》の|叫《さけ》びは|月《つき》か|時鳥《ほととぎす》
|何《いづ》れにしても|悲《かな》しかりけり
|時鳥《ほととぎす》|啼《な》かぬ|山里《やまざと》なけれども
|都大路《みやこおほぢ》に|叫《さけ》ぶ|術《すべ》なし
第五〇六
|荒鷲《あらわし》の|御空《みそら》をかける|都路《みやこぢ》は
|山時鳥《やまほととぎす》|啼《な》く|術《すべ》もなし
|小夜《さよ》|更《ふ》けて|山時鳥《やまほととぎす》|淋《さび》し|気《げ》に
|啼《な》きつる|声《こゑ》の|耳《みみ》に|入《い》らずや
|足曳《あしびき》の|黄金《こがね》の|山《やま》に|登《のぼ》り|見《み》れば
ここにも|聞《き》きぬ|時鳥《ときどり》の|声《こゑ》
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》の|茂《しげ》みに|身《み》を|潜《ひそ》め
|声《こゑ》|悲《かな》しげに|啼《な》く|時鳥《ほととぎす》
|風《かぜ》に|散《ち》る|花橘《はなたちばな》の|影《かげ》|見《み》れば
|来《き》たるべき|世《よ》の|偲《しの》ばるるかな
第五〇七
いと|清《きよ》き|谷《たに》の|流《なが》れも|濁《にご》り|来《き》ぬ
|降《ふ》る|五月雨《さみだれ》のしげきがままに
|風《かぜ》|荒《すさ》み|雨《あめ》は|頻《しき》りに|降《ふ》りそそぎ
|清《きよ》き|谷水《たにみづ》|濁《にご》らひ|行《ゆ》くなり
|今《いま》|暫《しば》し|時《とき》|待《ま》てよかし|谷《たに》の|水《みづ》
やがては|月《つき》の|影《かげ》|映《うつ》すらむ
|大空《おほぞら》に|雲《くも》ふさがりて|五月雨《さみだれ》の
|降《ふ》り|来《く》る|中《なか》に|時鳥《ほととぎす》なく
|小雲川《こくもがは》|立《た》ち|出《い》で|御禊《みそぎ》する|夜半《よは》の
|川音《かはおと》|更《ふ》けて|曙《あけぼの》|近《ちか》し
第五〇八
|大空《おほぞら》を|包《つつ》み|隠《かく》せし|五月雨《さみだれ》の
|中《なか》に|輝《かがや》く|月《つき》の|影《かげ》かな
|白妙《しろたへ》のわが|衣手《ころもで》は|時雨《しぐれ》しぬ
|雲井《くもゐ》の|空《そら》を|思《おも》ひなやみて
|澄《す》み|昇《のぼ》る|二日《ふつか》の|月《つき》も|秋《あき》の|空《そら》の
|盈《み》つる|今宵《こよひ》を|待《ま》ち|経《へ》たりけむ
|久方《ひさかた》の|御空《みそら》にすめる|月影《つきかげ》は
|海《うみ》の|外《そと》まで|鏡《かがみ》と|見《み》るなり
|踏《ふ》み|迷《まよ》ふ|人《ひと》を|照《て》らして|秋《あき》の|月《つき》は
|雲《くも》に|乗《の》りつつ|西《にし》に|傾《かたむ》く
第五〇九
|大空《おほぞら》の|月《つき》も|夜《よ》な|夜《よ》な|眺《なが》むれば
さまで|珍《めづ》しと|思《おも》はざりけり
|昔《むかし》|見《み》し|月《つき》の|光《ひかり》も|今日《けふ》の|月《つき》も
|珍《うづ》の|姿《すがた》は|変《かは》らざりけり
|中空《なかぞら》に|雲《くも》のさやりのなかりせば
|月《つき》の|光《ひかり》はさやけからまし
|瑞御霊《みづみたま》|月《つき》の|光《ひかり》を|見《み》るたびに
|魂《たま》の|曇《くも》りの|恥《は》づかしくなりぬ
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》に|八重雲《やへぐも》|棚曳《たなび》きて
|小雲《こくも》の|川《かは》に|月《つき》はさやけし
第五一〇
すむ|月《つき》の|瑞《みづ》の|光《ひかり》を|包《つつ》まむと
|高山《たかやま》の|端《は》に|起《おこ》る|黒雲《くろくも》
|小雲川《こくもがは》|科戸《しなど》の|風《かぜ》に|波《なみ》|立《た》ちて
うつろふ|月《つき》は|千々《ちぢ》に|砕《くだ》けつ
|八重雲《やへぐも》に|鎖《とざ》されいます|月影《つきかげ》も
ほのかにさしぬ|獄舎《ひとや》の|窓《まど》に
|春《はる》の|日《ひ》の|御空《みそら》の|月《つき》を|仰《あふ》ぎ|見《み》て
|涙《なみだ》しにけり|吐息《といき》つくづく
|醜神《しこがみ》に|押《お》し|籠《こ》められし|身《み》の|上《うへ》は
|窓《まど》の|月《つき》さへ|仰《あふ》ぐ|由《よし》なし
第五一一
|和田《わだ》の|原《はら》|漕《こ》ぎ|行《ゆ》く|舟《ふね》のしるべとも
なりてかかがよふ|月《つき》の|影《かげ》かな
|小夜《さよ》|更《ふ》けて|山路《やまぢ》に|深《ふか》く|迷《まよ》ふ|身《み》を
|照《て》らして|昇《のぼ》る|夜半《よは》の|月影《つきかげ》
|白妙《しろたへ》の|袖《そで》に|輝《かがや》く|月影《つきかげ》は
|恵《めぐ》みの|露《つゆ》の|玉《たま》とこそ|知《し》る
|深山路《みやまぢ》の|木《こ》の|間《ま》を|通《とほ》して|照《て》る|月《つき》の
|影《かげ》こそ|千々《ちぢ》に|砕《くだ》け|見《み》ゆるも
|玉《たま》の|身《み》を|千々《ちぢ》に|砕《くだ》きて|木下闇《こしたやみ》に
|潜《ひそ》む|千草《ちぐさ》を|照《て》らす|月影《つきかげ》
(大正一二・五・一五 旧三・三〇 隆光録)
第二七章 |神習《しんしふ》〔一六〇二〕
第五一二
|醜草《しこぐさ》の|生《お》ひ|茂《しげ》りたる|野路《のぢ》|行《ゆ》けば
|山犬《やまいぬ》の|声《こゑ》におどろかされぬる
|皇神《すめかみ》と|倶《とも》にありせば|獅子《しし》|熊《くま》の
|吠《ほ》え|猛《たけ》るさへ|恵《めぐ》みとぞ|聞《き》く
|道《みち》のため|荒野《あらの》を|別《わ》けて|進《すす》む|身《み》に
|醜《しこ》の|曲霊《まがひ》の|如何《いか》でさやらむ
たそがれて|山路《やまぢ》に|迷《まよ》ふ|旅人《たびびと》を
|照《て》らして|昇《のぼ》る|夜半《よは》の|月影《つきかげ》
わざはひの|繁《しげ》き|世《よ》なれば|惟神《かむながら》
|御旨《みむね》にまつろふ|外《ほか》なかりけり
第五一三
|嬉《うれ》しくも|浮世《うきよ》の|雲《くも》をわけ|上《のぼ》る
|今日《けふ》|故郷《ふるさと》の|月《つき》を|見《み》しかな
|天伝《あまつた》ふ|月《つき》の|恵《めぐ》みも|深草《ふかくさ》や
|露野ケ原《つゆのがはら》にも|宿《やど》りたまひぬ
|春《はる》の|日《ひ》の|花《はな》の|別《わか》れを|惜《を》しむより
|神《かみ》の|御前《みまへ》のわかれ|惜《を》しめよ
|秋《あき》|深《ふか》みやがて|凩《こがらし》|吹《ふ》き|荒《すさ》む
|冬《ふゆ》|来《き》たるらむ|備《そな》へせよかし
|備《そな》へとは|身体《からたま》|包《つつ》む|衣《きぬ》ならず
いや|暖《あたた》かき|心《こころ》|培《つちか》へ
第五一四
|四尾《よつを》の|山《やま》の|諸鳥《ももどり》|声《こゑ》|冴《さ》えて
|峰《みね》に|残《のこ》れる|有明《ありあけ》の|月《つき》
|大庭《おほには》に|燃《も》えたつ|珍《うづ》の|紅葉《もみぢば》の
|赤《あか》きは|神《かみ》の|心《こころ》なるかも
|秋山《あきやま》の|紅葉《もみぢ》の|色《いろ》のいろいろに
|照《て》りかがやくも|神《かみ》のまにまに
|同《おな》じ|山《やま》に|照《て》る|紅葉《もみぢば》もいろいろに
|艶《えん》を|争《あらそ》ふ|浮世《うきよ》なりけり
|皇神《すめかみ》の|領有《うしは》ぎたまふうまし|世《よ》は
|梢《こずゑ》の|露《つゆ》も|御栄《みさか》えとぞなる
第五一五
|神園《かみぞの》の|松《まつ》の|木蔭《こかげ》に|佇《たたず》めば
|思《おも》ひがけなき|梅《うめ》が|香《か》ぞする
|大空《おほぞら》に|聳《そび》えて|高《たか》き|常磐木《ときはぎ》は
|百度《ももたび》|千度《ちたび》|風《かぜ》にもまれつ
|玉《たま》の|井《ゐ》の|底《そこ》に|宿《やど》れる|月影《つきかげ》の
|深《ふか》き|心《こころ》を|汲《く》む|人《ひと》ぞなき
|空《そら》|寒《さむ》き|冬《ふゆ》の|夕《ゆふ》べに|三日月《みかづき》の
|慄《ふる》ふを|見《み》れば|淋《さび》しかりけり
|大空《おほぞら》に|慄《ふる》ふと|見《み》ゆる|月影《つきかげ》は
おのが|眼《まなこ》の|迷《まよ》ひなりけり
第五一六
|大空《おほぞら》に|引《ひ》き|廻《まは》したる|闇《やみ》の|幕《まく》を
もれて|輝《かがや》く|星《ほし》の|数々《かずかず》
|立《た》ち|迷《まよ》ふ|八重棚雲《やへたなぐも》の|綻《ほころ》びゆ
|覗《のぞ》き|初《そ》めたりオリオンの|星《ほし》
|選《えら》まれし|民《たみ》は|照《て》る|日《ひ》の|下《もと》にあり
ただ|待《ま》ち|暮《くら》す|望月《もちづき》の|影《かげ》
|日出《ひい》づる|国《くに》の|空《そら》より|輝《かがや》きの
|雲《くも》にのりつつ|臨《のぞ》む|月影《つきかげ》
ヨルダンの|水底《みなそこ》|深《ふか》く|照《て》る|月《つき》の
|影《かげ》は|浪間《なみま》に|砕《くだ》けつつ|澄《す》む
第五一七
|吹《ふ》く|風《かぜ》に|峰《みね》の|桜《さくら》は|散《ち》り|果《は》てて
|御空《みそら》に|独《ひと》り|月《つき》は|霞《かす》める
|花《はな》|誘《さそ》ふ|嵐《あらし》いたむか|大空《おほぞら》に
|月《つき》は|霞《かす》みて|影《かげ》|朧《おぼろ》なり
|蜩《ひぐらし》の|声《こゑ》は|漸《やうや》く|細《ほそ》りけり
|凩《こがらし》|荒《すさ》ぶ|冬《ふゆ》|悲《かな》しみて
|山《やま》の|端《は》に|恵《めぐ》みの|月《つき》は|輝《かがや》けど
|麓《ふもと》の|里《さと》は|光《ひかり》さへ|見《み》ず
|村雲《むらくも》を|蹴散《けち》らすごとく|進《すす》み|往《ゆ》く
|御空《みそら》の|月《つき》の|勇《いさ》ましきかな
第五一八
|夜半《よは》の|暗《やみ》|照《て》らしてなほも|翌昼《あくるひ》の
|御空《みそら》に|月《つき》は|輝《かがや》きわたる
|時雨《しぐれ》ては|晴《は》れゆく|後《のち》の|大空《おほぞら》に
|冬《ふゆ》の|夜《よ》の|月《つき》|清《きよ》く|慄《ふる》へる
|打《う》ち|慄《ふる》ふ|月《つき》の|姿《すがた》を|眺《なが》むれば
|常闇《とこやみ》のよを|歎《かこ》つべらなり
|黒雲《くろくも》の|天津日影《あまつひかげ》も|隠《かく》す|世《よ》は
|曇《くも》らざらめや|玉《たま》の|井《ゐ》の|月《つき》
|玉《たま》の|井《ゐ》の|底《そこ》に|宿《やど》れる|月影《つきかげ》も
|魂《たま》は|御空《みそら》に|永久《とこしへ》に|照《て》る
第五一九
|秋《あき》の|野《の》の|木々《きぎ》の|梢《こずゑ》におく|霜《しも》を
|照《て》らして|生《い》かす|天津日《あまつひ》の|影《かげ》
|秋《あき》の|夜《よ》に|月《つき》の|光《ひかり》のなかりせば
|野山《のやま》の|草木《くさき》|根《ね》より|枯《か》れなむ
|天津日《あまつひ》を|眺《なが》めて|遊《あそ》ぶ|人《ひと》はなし
|花見《はなみ》|雪見《ゆきみ》と|共《とも》に|月《つき》|見《み》る
|天地《あめつち》に|恵《めぐ》みの|露《つゆ》を|垂《た》れたまふ
|月《つき》|弄《もてあそ》ぶ|人《ひと》ぞ|礼《ゐや》なき
|空《そら》|冴《さ》えて|凍《こほ》るかと|見《み》る|月影《つきかげ》も
|降《ふ》らしたまひぬ|恵《めぐ》みの|露《つゆ》を
第五二〇
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》に|皇神《すめかみ》|有明《ありあけ》の
|月《つき》こそ|人《ひと》の|生命《いのち》なりけり
|百千鳥《ももちどり》|声《こゑ》さわがしくなりにけり
あかつき|近《ちか》き|兆《しるし》なるらむ
|雲霧《くもきり》を|払《はら》ふ|高天《たかま》の|山風《やまかぜ》に
|吹《ふ》かれて|散《ち》らむ|醜《しこ》の|木《こ》の|葉《は》は
|円山《まるやま》の|袖《そで》に|月影《つきかげ》|小夜《さよ》|更《ふ》けて
|小雲《こくも》の|川《かは》は|包《つつ》まれにけり
|真盛《まさか》りの|短《みじか》き|野辺《のべ》の|桜花《さくらばな》
|春《はる》の|心《こころ》を|惜《を》しむなるらむ
第五二一
|散《ち》りて|往《ゆ》く|花《はな》の|心《こころ》は|知《し》らねども
|羨《うらや》むならむ|空《そら》の|月《つき》|見《み》て
|月毎《つきごと》に|輝《かがや》く|月《つき》に|比《くら》ぶれば
|花《はな》の|盛《さか》りも|物《もの》の|数《かず》かは
|野《の》も|山《やま》も|真白《ましろ》に|染《そ》めし|白雪《しらゆき》も
|朝日《あさひ》の|影《かげ》に|果敢《はか》なく|消《き》えゆく
|花紅葉《はなもみぢ》|春《はる》と|秋《あき》との|錦《にしき》さへ
|月《つき》の|眺《なが》めのながきにしかず
|神垣《かみがき》の|柳《やなぎ》の|梢《こずゑ》|芽含《めぐ》みけり
|常世《とこよ》の|春《はる》の|魁《さきがけ》として
(大正一二・五・一五 旧三・三〇 於教主殿 明子録)
第二八章 |神滝《しんろう》〔一六〇三〕
第五二二
|水晶魂《すゐしやうみたま》を|選《え》りぬいて  |身魂《みたま》のあらため|為《な》し|給《たま》ふ
|絶体絶命《ぜつたいぜつめい》の|世《よ》となりぬ  この|世《よ》は|変《かは》る|紫陽花《あぢさゐ》の
|早《はや》|七度《ななたび》も|近《ちか》づきて  |神《かみ》の|審判《さばき》も|目《ま》のあたり
|驚《おどろ》き|騒《さわ》ぐ|醜魂《しこだま》の  |身《み》の|果《はて》こそは|憐《あは》れなり
さは|然《さ》りながら|何人《なにびと》も  |心《こころ》の|柱《はしら》を|立直《たてなほ》し
|誠《まこと》の|道《みち》に|還《かへ》りなば  |本津御神《もとつみかみ》はよろこびて
|平和《へいわ》の|御国《みくに》にやすやすと  |進《すす》ませたまふぞ|尊《たふと》けれ
こころ|改《あらた》め|大道《おほみち》に  |向《む》かつて|進《すす》む|人々《ひとびと》は
|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|助《たす》けられ  |常世《とこよ》の|春《はる》に|遊《あそ》ぶべし
|悪念《あくねん》|晴《は》れず|疑《うたが》ひの  |強《つよ》く|神慮《しんりよ》に|反《そむ》きなば
|心《かなら》ず|懲戒《いましめ》|来《き》たるべし  |皇大神《すめおほかみ》の|御言葉《みことば》は
|巌《いはほ》のごとく|山《やま》の|如《ごと》  いや|永久《とこしへ》に|動《うご》き|無《な》し
|人《ひと》の|表面《おもて》は|変《かは》るとも  |易《かは》りがたきは|霊魂《みたま》なり
|神《かみ》の|御言《みこと》をかしこみて  |天授《さづけ》の|魂《たま》を|良《よ》く|研《みが》き
やがて|来《き》たらむ|皇神《すめかみ》の  さばきの|時《とき》の|備《そな》へせよ
|神《かみ》は|愛《あい》なり|権威《ちから》なり
わが|脚下《あしもと》に|注意《ちうい》して  かならず|過《あやま》つことなかれ
|源《みなもと》|涸《か》れて|川下《かはしも》の  |水《みづ》|汲《く》み|得《う》べき|道理《だうり》なし
|山野《やまの》の|木草《きぐさ》もその|如《ごと》く  |根本《ねもと》なければ|幹《みき》もなく
|花《はな》|咲《さ》き|匂《にほ》ふ|枝《えだ》もなし  |根本《ねもと》と|幹《みき》と|枝葉《えだは》とは
|同《おな》じ|一木《ひとき》の|身魂《みたま》なり  |根本《ねもと》を|大切《だいじ》に|守《まも》るべし
|三千世界《さんぜんせかい》の|梅《うめ》の|花《はな》  |一度《いちど》に|開《ひら》く|時《とき》は|来《き》ぬ
スメール|山《ざん》に|艮《うしとら》の  |皇大神《すめおほかみ》のあれまして
|治《をさ》めたまはる|五六七《みろく》の|代《よ》  |月日《つきひ》と|倶《とも》に|迫《せま》りけり
|敬《うやま》ひ|畏《かしこ》み|大道《おほみち》に  |叶《かな》ひまつれよ|諸人《もろびと》よ
第五二三
|金竜《きんりう》の|池《いけ》の|面《も》に|清《きよ》く|照《て》る|月《つき》は
|五六七《みろく》の|御代《みよ》の|鏡《かがみ》なるべし
|円山《まるやま》の|御空《みそら》に|望《もち》の|月《つき》|照《て》りて
まるく|治《をさ》まる|神《かみ》の|御代《みよ》かな
|四方《よも》の|海《うみ》|皆《みな》|静《しづ》かなる|神《かみ》の|代《よ》は
|望《もち》の|夜《よ》の|月《つき》|波間《なみま》にも|澄《す》む
|千早振《ちはやぶ》る|神代《かみよ》ながらの|月影《つきかげ》を
うつす|金竜池《きんりういけ》の|冴《さ》やけさ
|相恋《あひこ》ふる|衣《ころも》の|薫《かを》る|夏《なつ》の|夜《よ》に
しづ|心《ごころ》なく|月《つき》は|傾《かたむ》く
第五二四
|久方《ひさかた》の|天《あま》の|戸《と》|開《あ》けて|厳御霊《いづみたま》
|降《くだ》り|給《たま》ひぬ|桶伏《をけふせ》の|山《やま》に
|天《あま》の|川《かは》|竿《さを》をかざして|瑞御霊《みづみたま》
|更生《かうせい》の|舟《ふね》をひきて|下《くだ》りぬ
|夕《ゆふ》ざれば|桶伏山《をけふせやま》もかすむなり
|空《そら》にいざよふ|月《つき》おぼろにて
|池《いけ》の|面《も》の|波《なみ》にくだけし|月《つき》|見《み》れば
|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|偲《しの》ばれにけり
|獣等《けものら》の|荒《あ》れ|狂《くる》ひたる|神園《かみぞの》に
すまし|顔《がほ》なる|月《つき》の|影《かげ》かな
第五二五
|太刀劔《たちつるぎ》|弾丸《たま》は|何処《いづく》と|潜水《くぐりづ》の
|底《そこ》まで|探《さぐ》る|獣《けもの》の|愚《おろ》かさ
|四尾山《よつをやま》|木《こ》の|葉《は》|揺《ゆる》ぎて|神《かみ》の|園《その》に
あやしき|風《かぜ》の|吹《ふ》き|荒《すさ》みけり
|蜘蛛《くも》の|子《こ》を|散《ち》らすが|如《ごと》く|戦《をのの》きて
|果敢《はか》なく|失《う》せぬ|醜《しこ》の|仇司《あだし》は
|小雲川《こくもがは》|底《そこ》の|月影《つきかげ》つかまむと
くだり|来《き》たれる|山《やま》の|上《へ》の|猿《さる》
|頭《あたま》|掻《か》き|恥《はぢ》かき|己《おの》が|手《て》をかきつ
|神《かみ》の|御園《みその》を|猿《さる》かきまはす
第五二六
|玉《たま》の|井《ゐ》に|映《うつ》る|木《こ》の|実《み》をむしらむと
|悶《もだ》え|苦《くる》しむ|高山《たかやま》の|猿《さる》
|鬼火《おにび》かと|思《おも》へば|淋《さび》し|五月雨《さみだれ》の
|雨《あめ》に|息《いき》する|螢《ほたる》なりけり
|頭《あたま》には|赤《あか》き|冠《かむり》をのせながら
|尻《しり》のみ|光《ひかる》|螢虫《ほたるむし》かな
|暗夜《やみよ》にはかすかに|光《ひか》る|螢虫《ほたるむし》も
|月《つき》し|出《い》づれば|影《かげ》|消《き》ゆるなり
|草《くさ》の|上《へ》に|露《つゆ》の|命《いのち》を|保《たも》ちたる
|螢《ほたる》は|月《つき》の|光《ひかり》を|怖《お》づるも
第五二七
|夕《ゆふ》されば|勢《いきほ》ひのよき|螢虫《ほたるむし》も
|旭《あさひ》の|影《かげ》に|消《き》え|失《う》するなり
|千早振《ちはやぶ》る|尊《たふと》き|聖《きよ》き|神《かみ》の|山《やま》に
|醜《しこ》の|曲津見《まがつみ》|登《のぼ》りて|驚《おどろ》く
|如何《いか》にして|此《こ》の|神山《かみやま》を|穢《けが》さむと
|醜《しこ》の|魔神《まがみ》は|心《こころ》|砕《くだ》きけむ
|今《いま》|暫《しば》し|時《とき》|待《ま》てよかし|円山《まるやま》の
|空《そら》に|輝《かがや》く|黄金《こがね》の|薨《いらか》を
|竜神《たつがみ》も|時《とき》を|得《え》ざれば|玉《たま》の|井《ゐ》の
|水底《みなそこ》|深《ふか》く|姿《すがた》かくしつ
第五二八
|月《つき》となり|竜神《たつがみ》となりミカエルと
なりて|輝《かがや》く|時《とき》|近《ちか》づきぬ
|四尾《よつを》の|山《やま》に|隠《かく》れし|国武彦《くにたけひこ》の
|厳《いづ》の|光《ひかり》を|待《ま》つ|間《ま》の|久《ひさ》しき
|大八洲《おほやしま》|清《きよ》く|囲《めぐ》れる|池水《いけみづ》は
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|姿《すがた》なりけり
|澄《す》み|渡《わた》るこの|真清水《ましみづ》も|夕立《ゆふだち》の
|水《みづ》|呑《の》みあきて|濁《にご》る|忌々《ゆゆ》しさ
|真清水《ましみづ》も|亦《また》|泥水《どろみづ》も|否《いな》まずに
のめどうつらぬ|金竜《きんりう》の|池《いけ》
第五二九
|月《つき》|照《て》れる|夕《ゆふ》べの|御空《みそら》|静《しづ》かにて
|柳《やなぎ》の|梢《こずゑ》に|春《はる》は|来《き》にけり
|大前《おほまへ》を|恋《こ》ふる|心《こころ》のなかりせば
|浮世《うきよ》の|旅《たび》も|淋《さび》しかるらむ
|大道《おほみち》の|司《つかさ》の|前《まへ》に|口《くち》ごもりぬ
|思《おも》ひのたけを|述《の》べむとすれど
|何事《なにごと》か|思《おも》ひのたけを|述《の》ぶべしと
|教《をしへ》の|言葉《ことば》に|口《くち》は|開《ひら》けぬ
|海山《うみやま》のつもる|思《おも》ひもしかすがに
|言葉《ことば》の|露《つゆ》の|慄《ふる》ふのみなる
第五三〇
|千早振《ちはやぶ》る|神《かみ》に|親《した》しみ|愛《あい》すてふ
|心《こころ》ありせば|言葉《ことば》の|花《はな》|咲《さ》く
|神柱《かむばしら》|遠《とほ》く|敬《うやま》ひ|居《ゐ》る|身《み》には
|言霊車《ことたまぐるま》|押《お》しあぐみつつ
|親《した》しみと|愛《あい》の|心《こころ》を|楯《たて》として
|広《ひろ》く|言問《ことと》へ|教司《をしへつかさ》に
わが|思《おも》ふ|心《こころ》のたけの|一節《ひとふし》も
|神柱《みつかひ》の|前《まへ》に|語《かた》りかねつつ
わが|袖《そで》の|涙《なみだ》の|露《つゆ》に|月《つき》|照《て》りぬ
|祖神《みおや》の|問《と》はば|如何《いか》に|答《こた》へむ
第五三一
|夕暮《ゆふぐ》れて|妹《いも》とし|登《のぼ》る|円山《まるやま》の
|月《つき》を|仰《あふ》げば|恥《は》づかしきかな
|小雲川《こくもがは》|水《みづ》の|心《こころ》を|白波《しらなみ》の
|上《うへ》|漕《こ》ぎ|渡《わた》る|汚家《をげ》の|釣船《つりぶね》
|月《つき》も|日《ひ》も|波間《なみま》に|浮《うか》ぶ|小雲川《こくもがは》
|清《きよ》きは|神《かみ》の|心《こころ》なるかも
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》を|写《うつ》して|小雲川《こくもがは》
いや|永久《とこしへ》に|清《きよ》く|流《なが》るる
|小雲川《こくもがは》たつ|荒浪《あらなみ》に|驚《おどろ》きて
|淵《ふち》を|出《い》でけり|竜《たつ》のおとし|子《ご》
(大正一二・五・一六 旧四・一 於教主殿 隆光録)
第二九章 |神洲《しんしう》〔一六〇四〕
第五三二
|宮柱《みやはしら》|太敷建《ふとしきた》てしその|昔《かみ》を
|偲《しの》ぶは|一人《ひとり》われのみならず
|円山《まるやま》の|姿《すがた》はとみに|変《かは》れども
|御空《みそら》の|月《つき》はいよよさやけし
|新聞《しんぶん》の|記者《きしや》の|囁《ささや》き|腐鶏《くだかけ》の
|暁《あかつき》またで|鳴《な》きたつるかな
|円山《まるやま》の|宮《みや》は|再《ふたた》び|建《た》ちぬべし
|打《う》ち|砕《くだ》きたる|醜《しこ》の|哀《あは》れさ
|醜弓《しこゆみ》のひきて|返《かへ》らぬ|過《あやま》ちに
|的《てき》|射外《いはづ》せし|鬼《おに》のはかなさ
第五三三
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》に|八重雲《やへくも》|棚曳《たなび》きて
|紫《むらさき》の|空《そら》に|月《つき》はかがよふ
|紫《むらさき》の|御空《みそら》を|広《ひろ》くしめながら
かがやきわたる|円山《まるやま》の|月《つき》
|本宮山《ほんぐうやま》|木《こ》の|葉《は》のさやぎ|静《しづ》まりて
|洗《あら》ふが|如《ごと》き|夏月《なつづき》|照《て》れり
|礎《いしずゑ》の|跡《あと》を|照《て》らして|夏《なつ》の|月《つき》
|恵《めぐ》みの|露《つゆ》の|雨《あめ》を|濺《そそ》げり
|只《ただ》さへに|清《きよ》けきものを|円山《まるやま》の
|月《つき》にかがやく|礎《いしずゑ》の|露《つゆ》
第五三四
|円山《まるやま》の|底津岩根《そこついはね》に|厳《おごそ》かに
|昔《むかし》を|語《かた》る|珍《うづ》の|礎《いしずゑ》
|円山《まるやま》の|月《つき》にあこがれ|登《のぼ》り|見《み》れば
|露《つゆ》を|三年《みとせ》の|涙《なみだ》あふるる
|月《つき》|清《きよ》し|礎《いしずゑ》|清《きよ》し|円山《まるやま》の
|木々《きぎ》の|梢《こずゑ》はいとど|清《すが》しも
|金竜《きんりう》の|池《いけ》に|浮《うか》べる|魚族《うろくづ》も
|醜《しこ》の|嵐《あらし》を|恐《おそ》れざりけり
|西《にし》|東《ひがし》|南《みなみ》ゆ|北《きた》と|醜神《しこがみ》の
|襲《おそ》ひし|昔《むかし》も|夢《ゆめ》となりぬる
第五三五
|梓弓《あづさゆみ》|春《はる》の|円山《まるやま》|緑《みどり》して
|梢《こずゑ》の|露《つゆ》に|月《つき》を|宿《やど》せり
|人《ひと》の|世《よ》は|百度《ももたび》|千度《ちたび》|移《うつ》るとも
|月《つき》は|昔《むかし》の|姿《すがた》なりけり
|限《かぎ》りある|人《ひと》の|命《いのち》は|草《くさ》におく
|露《つゆ》の|干《ひ》ぬ|間《ま》の|朝顔《あさがほ》の|花《はな》
|円山《まるやま》にかかりし|雲《くも》のあと|晴《は》れて
|今《いま》はさやけき|月《つき》を|見《み》るかな
みちのくの|月《つき》を|見《み》むとて|来《き》て|見《み》れば
|聖地《せいち》に|劣《おと》りて|濁《にご》れる|心地《ここち》す
第五三六
|照《て》る|月《つき》の|光《ひかり》に|変《かは》りなけれども
|人《ひと》の|心《こころ》の|空《そら》はいろいろ
|円山《まるやま》に|啼《な》き|残《のこ》したる|杜鵑《ほととぎす》
うら|悲《かな》しげに|仇《あだ》し|野《の》になく
|何人《なにびと》も|御空《みそら》の|月《つき》はめづるものを
|花《はな》に|心《こころ》を|取《と》られ|往《ゆ》くなり
|仇花《あだばな》の|茂《しげ》り|合《あ》ひたる|仇《あだ》し|野《の》に
|色香《いろか》|妙《たへ》なる|白梅《しらうめ》はなし
|皇神《すめかみ》の|深《ふか》き|恵《めぐ》みを|白梅《しらうめ》の
|花《はな》|手折《たを》らむと|仇《あだ》し|野《の》|彷徨《さまよ》ふ
第五三七
|照《て》る|月《つき》の|真下《ました》に|住《す》めばわが|影《かげ》の
いとも|小《ちひ》さく|見《み》ゆるものかな
|月影《つきかげ》の|傾《かたむ》く|時《とき》はわが|影《かげ》の
いと|長々《ながなが》しく|見《み》ゆるものなり
|小夜衣《さよごろも》かけはなれても|赤心《まごころ》の
|通《かよ》ひし|友《とも》はなつかしきかな
|有難《ありがた》さに|落《お》つる|涙《なみだ》の|玉《たま》の|神諭《ふみ》は
わが|永久《とこしへ》の|生命《いのち》なりけり
|空《そら》|包《つつ》む|夜《よる》の|帳《とばり》もあきの|空《そら》に
|輝《かがや》く|月《つき》の|影《かげ》の|恋《こひ》しさ
第五三八
|木《こ》の|花《はな》の|神《かみ》の|命《みこと》の|永久《とこしへ》に
|鎮《しづ》まりいます|富士《ふじ》の|神山《かみやま》
|瑞御霊《みづみたま》|厳島姫《いつくしまひめ》|永久《とこしへ》に
|竹生《ちくぶ》の|島《しま》に|鎮《しづ》まりたまふ
|高熊《たかくま》の|峰《みね》に|現《あ》れます|玉照彦《たまてるひこ》の
|光《ひかり》|輝《かがや》く|時《とき》は|来《き》にけり
|黄金《こがね》なす|峰《みね》の|麓《ふもと》に|現《あら》はれし
|玉照姫《たまてるひめ》の|御世《みよ》となりぬる
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》にひそめる|杜鵑《ほととぎす》
|五月《さつき》の|空《そら》を|待《ま》ちつつ|経《ふ》るも
第五三九
|一箸《ひとはし》の|運《はこ》びの|間《ま》にも|死《し》の|影《かげ》は
|人《ひと》のまはりをつけ|狙《ねら》ひ|居《ゐ》る
もてなしのいと|懇《ねもごろ》な|昼食《ひるげ》こそ
|味《あぢ》も|殊更《ことさら》|美《うる》はしきかな
|花《はな》かざす|乙女《をとめ》の|玉手《たまで》にくめる|湯《ゆ》は
いと|香《かん》ばしき|薫《かを》り|漂《ただよ》ふ
|日《ひ》に|月《つき》に|清《きよ》き|心《こころ》のます|鏡《かがみ》
のぞくも|嬉《うれ》し|金竜《きんりう》のうみ
|起《お》き|伏《ふ》しの|草《くさ》の|露《つゆ》にも|輝《かがや》きぬ
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|月《つき》の|御影《みかげ》は
第五四〇
|大前《おほまへ》に|天《あま》のさかてを|只《ただ》|一人《ひとり》
うつの|山鳩《やまばと》|下《くだ》り|来《き》にけり
|大前《おほまへ》の|榊《さかき》にかけし|十寸鏡《ますかがみ》は
|清《きよ》けき|神《かみ》の|心《こころ》なりけり
|曇《くも》りなき|鏡《かがみ》の|面《おも》を|眺《なが》むれば
わが|心根《こころね》の|恥《は》づかしきかな
|円山《まるやま》に|昇《のぼ》る|月影《つきかげ》いと|清《きよ》く
ミロクの|御代《みよ》を|守《まも》りますらむ
|神代《かみよ》より|清《きよ》く|流《なが》れし|和知川《わちがは》の
|水瀬《みなせ》に|澄《す》める|秋《あき》の|夜《よ》の|月《つき》
第五四一
|巌窟《いはやど》をあけし|鏡《かがみ》をたづぬれば
|御空《みそら》に|澄《す》める|月《つき》と|答《こた》へむ
|御劔《みつるぎ》も|鏡《かがみ》も|玉《たま》も|瑞御霊《みづみたま》
|岩戸《いはと》を|開《ひら》く|宝《たから》なりけり
|神《かみ》つ|代《よ》の|世《よ》の|有様《ありさま》をたづねむと
|月《つき》にとへども|月《つき》は|答《こた》へず
|地《ち》に|降《くだ》り|草葉《くさば》の|露《つゆ》に|身《み》を|寄《よ》せて
むかしを|語《かた》る|月《つき》の|大神《おほかみ》
|榊葉《さかきば》にたれたる|瑞《みづ》の|白木綿《しらゆふ》は
|神《かみ》も|心《こころ》をかけてや|見《み》るらむ
(大正一二・五・一六 旧四・一 於教主殿 明子録)
第三〇章 |神座《しんざ》〔一六〇五〕
第五四二
|仰《あふ》ぎ|見《み》る|此《この》|世《よ》の|月《つき》に|比《くら》ぶれば
|霊国《みくに》の|月《つき》は|光《ひかり》|妙《たへ》なり
|登《のぼ》り|行《ゆ》く|足跡《あしあと》|見《み》れば|惜《を》しきかな
|真白《ましろ》に|積《つ》める|雪《ゆき》の|円山《まるやま》
|谷水《たにみづ》の|流《なが》るるままにわが|行衛《ゆくゑ》
|定《さだ》めおきたし|神《かみ》にたよりて
|跡《あと》たれて|幾世《いくよ》|経《へ》ぬらむ|水無月《みなづき》の
|社《やしろ》の|松《まつ》も|神《かむ》さびてけり
|千早振《ちはやぶ》る|神代《かみよ》ながらの|月影《つきかげ》は
わが|玉《たま》の|井《ゐ》の|底《そこ》に|宿《やど》れる
第五四三
|天国《てんごく》の|花《はな》をかざして|大神《おほかみ》の
|御前《みまへ》を|祀《まつ》る|天使等《あまつかひたち》
|朝日《あさひ》|照《て》る|桶伏山《をけふせやま》の|神《かみ》の|丘《をか》に
|光《ひかり》を|添《そ》ゆる|秋《あき》の|夜《よ》の|月《つき》
|朝日《あさひ》|刺《さ》す|月《つき》|澄《す》み|渡《わた》る|円山《まるやま》の
|台《うてな》は|神《かみ》の|厳《いづ》の|御社殿《みあらか》
|今《いま》の|世《よ》も|後《あと》の|世《よ》も|亦《また》|皇神《すめかみ》の
|恵《めぐ》みにたよる|外《ほか》なかりけり
|愛《めぐ》はしと|皇大神《すめおほかみ》もみなそこの
すめる|心《こころ》をみそなはすらむ
第五四四
|万代《よろづよ》に|御栄光《みさかえ》あれと|朝夕《あさゆふ》に
|祈《いの》る|心《こころ》を|神《かみ》は|愛《め》づらむ
|本宮山《ほんぐうやま》|裾《すそ》を|流《なが》るる|和知川《わちがは》の
|水《みづ》は|此《この》|世《よ》のみそぎなるらむ
|小雲川《こくもがは》|並木《なみき》の|松《まつ》も|老《お》いにけり
|吾《わ》が|身《み》も|老《お》いぬ|神《かみ》のまにまに
|二十五年《にじふごねん》|神《かみ》に|仕《つか》へて|漸《やうや》くに
|霊国《みくに》の|様《さま》を|悟《さと》り|初《そ》めけり
|二年《ふたとせ》や|三年《みとせ》|四年《よとせ》の|宮仕《みやづか》へに
いかで|悟《さと》らむ|神《かみ》の|経綸《しぐみ》を
第五四五
|光《ひかり》をば|和《やは》らげ|塵《ちり》に|同《まじ》はりて
|世人《よびと》を|守《まも》る|月《つき》の|大神《おほかみ》
|寝《ね》て|祈《いの》り|起《お》きて|祈《いの》りぬ|愚《おろ》かなる
|吾《わ》が|身《み》に|幸《さち》の|永久《とは》にあれよと
|千早振《ちはやぶ》る|富士《ふじ》の|高山《たかやま》|雪《ゆき》|清《きよ》く
|深《ふか》きは|神《かみ》の|心《こころ》なりけり
|如意宝珠《によいほつしゆ》|玉《たま》|拾《ひろ》はむと|千早振《ちはやぶ》る
|神《かみ》の|光《ひかり》に|求《ま》ぎて|行《ゆ》くかも
|玉鉾《たまぼこ》の|道《みち》を|歩《あゆ》める|身《み》ながらも
|人《ひと》は|難波《なには》のよしあしを|謂《い》ふ
第五四六
|世《よ》の|為《ため》と|祈《いの》る|真人《まびと》ぞ|尠《すく》なけれ
そこの|心《こころ》は|吾《わ》が|身《み》の|為《ため》のみ
|世《よ》を|祈《いの》るわが|真心《まごころ》に|詐《いつは》りの
あら|尊《たふと》けれ|神《かみ》のみぞ|知《し》る
|罪《つみ》|穢《けが》れあら|人神《ひとがみ》の|安《やす》かれと
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|神前《みまへ》に|祈《いの》る
わが|植《う》ゑし|常磐《ときは》の|松《まつ》は|繁《しげ》りけり
|三《み》つの|柱《はしら》の|幹《みき》を|揃《そろ》へて
|幾千代《いくちよ》も|忘《わす》れざらまし|吾《わ》が|植《う》ゑし
|常磐《ときは》の|松《まつ》に|心《こころ》とどめて
第五四七
この|松《まつ》の|栄《さか》ゆる|如《ごと》く|教《をし》へ|草《ぐさ》の
|永久《とこしへ》なれと|祈《いの》りつつ|植《う》ゑぬ
|死《まか》るともこの|松ケ枝《まつがえ》に|魂《たま》かけて
|五六七《みろく》の|御代《みよ》を|守《まも》らむとぞ|思《おも》ふ
|霊《たま》ちはふ|神《かみ》の|大道《おほぢ》を|歩《あゆ》む|身《み》は
|世《よ》のうき|事《ごと》も|楽《たの》しみと|見《み》る
この|道《みち》の|堅磐常磐《かきはときは》に|動《うご》かざれと
|石《いし》の|玉垣《たまがき》|仕《つか》へまつりぬ
|冴《さ》え|渡《わた》る|八雲小琴《やくもをごと》のすがかきを
|神《かみ》も|愛《め》でつつ|聞《きこ》し|召《め》すらむ
第五四八
|松ケ枝《まつがえ》に|桜《さくら》の|花《はな》に|降《ふ》る|雨《あめ》も
|同《おな》じ|御神《みかみ》の|恵《めぐ》みなりけり
|紅《くれなゐ》の|花《はな》も|清《きよ》けき|白梅《しらうめ》も
|同《おな》じ|恵《めぐ》みの|雨《あめ》に|咲《さ》くなり
|神垣《かみがき》の|風《かぜ》にしられぬ|法燈《ともしび》は
|根底《ねそこ》の|国《くに》まで|照《て》らし|行《ゆ》くなり
|消《き》えやらぬ|神《かみ》の|御前《みまへ》の|燈火《ともしび》に
|闇《くら》き|心《こころ》を|照《て》らされて|行《ゆ》く
|来《き》て|見《み》れば|思《おも》ひしよりも|勝《まさ》りけり
|桶伏《をけふせ》の|山《やま》の|珍《うづ》の|聖地《せいち》は
第五四九
|玉《たま》の|井《ゐ》の|水《みづ》の|面《おもて》に|心《こころ》とめて
|輝《かがや》きにけり|三五《あななひ》の|月《つき》
|皇神《すめかみ》の|大道《おほぢ》を|歩《あゆ》む|心《こころ》しあれば
|迷《まよ》ひの|暗《やみ》もやすく|晴《は》れなむ
|山《やま》の|上《へ》の|池《いけ》の|心《こころ》は|仇《あだ》なれや
|氷《こほり》も|水《みづ》も|名《な》のみ|残《のこ》れる
|名《な》ばかりの|水《みづ》なき|池《いけ》に|如何《いか》にして
|月《つき》の|姿《すがた》の|映《うつ》るべしやは
|月《つき》の|水《みづ》たえてし|無《な》くば|草《くさ》も|木《き》も
|如何《いか》で|芽含《めぐ》まむ|此《こ》の|地《ち》の|上《うへ》に
第五五〇
|皇神《すめかみ》の|教《のり》の|真清水《ましみづ》|清《きよ》ければ
|流《なが》れ|流《なが》れて|世《よ》を|洗《あら》ふなり
|玉《たま》の|井《ゐ》の|同《おな》じ|清水《しみづ》を|掬《むす》ぶ|身《み》は
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|永久《とこしへ》の|友《とも》
|三十年《みそとせ》の|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|御教《みをしへ》に
まだ|現《あら》はれぬ|光《ひかり》|見《み》るかな
|薄雲《うすぐも》におほはれ|居《ゐ》たる|月《つき》の|光《かげ》を
|今《いま》も|仰《あふ》ぎぬ|目《め》|無《な》き|司《つかさ》は
|薄雲《うすぐも》の|逃《に》げ|去《さ》り|行《ゆ》きし|後《あと》の|月《つき》の
|光《ひかり》に|照《て》りて|慄《ふる》ひをののく
第五五一
かりそめに|説《と》きおかれたる|言《こと》の|葉《は》に
|眼《まなこ》とどめて|迷《まよ》ふ|人《ひと》あり
さまざまに|説《と》けども|説《と》き|得《え》ぬ|言《こと》の|葉《は》を
|聞《き》かずして|聞《き》く|人《ひと》は|稀《まれ》なり
|曇《くも》りたる|人《ひと》の|心《こころ》を|照《て》らさむと
|厳《いづ》と|瑞《みづ》との|鏡《かがみ》かがやく
|情《なさけ》|知《し》らぬ|春《はる》の|嵐《あらし》も|神《かみ》の|里《さと》の
|主《ぬし》ある|花《はな》は|避《さ》けて|吹《ふ》くらむ
|更生主《かうせいしゆ》|再《ふたた》び|下《くだ》る|世《よ》に|会《あ》ひて
|誠《まこと》の|神《かみ》の|教《のり》を|聞《き》くなり
(大正一二・五・一六 旧四・一 隆光録)
第三一章 |神閣《しんかく》〔一六〇六〕
第五五二
|常闇《とこやみ》の|夜《よる》の|帳《とばり》は|降《おろ》されて
|初《はじ》めて|慕《した》ふ|月《つき》の|影《かげ》かな
|足引《あしびき》の|五十路《いそぢ》の|山《やま》を|二《ふた》つ|越《こ》えて
|三《み》つの|神《かみ》ます|花園《はなぞの》に|進《すす》む
|一人《ひとり》|行《ゆ》くも|惜《を》しくぞ|思《おも》ふ|花《はな》の|山《やま》
ふりかへりつつ|招《まね》く|友垣《ともがき》
|暁《あかつき》を|告《つ》ぐる|御殿《みとの》の|太鼓《たいこ》の|音《ね》に
|長《なが》き|眠《ねむ》りをさましつつゆく
|人《ひと》は|皆《みな》|深《ふか》き|暗路《やみぢ》を|渡《わた》り|川《がは》
|清《きよ》き|流《なが》れに|更生主《きみ》|一人《ひとり》|立《た》つ
第五五三
|傾《かたむ》きし|月《つき》に|心《こころ》の|澄《す》みぬれば
|仇《あだ》に|一夜《ひとよ》も|寝《ね》られざりけり
|紫《むらさき》の|雲《くも》|棚曳《たなび》きて|大空《おほぞら》に
|傾《かたむ》く|月《つき》を|慕《した》ひ|見《み》るかな
|大空《おほぞら》に|慄《ふる》ひて|澄《す》める|月影《つきかげ》は
|地《ち》の|凩《こがらし》を|歎《かこ》ち|顔《がほ》なる
|小夜《さよ》|更《ふ》けて|山川草木《やまかはくさき》|静《しづ》かなり
|只《ただ》|月《つき》のみぞ|空《そら》に|冴《さ》えぬる
わくらはに|心《こころ》の|月《つき》の|澄《す》みぬるは
|悟《さと》りに|入《い》るの|初《はじ》めなりけり
第五五四
|玉《たま》の|井《ゐ》の|底《そこ》に|沈《しづ》むも|大空《おほぞら》に
|著《しる》けき|月《つき》も|同《おな》じ|光《ひかり》ぞ
|白梅《しらうめ》の|花《はな》は|匂《にほ》ひていつしかに
|疎《うと》みし|人《ひと》も|尋《たづ》ね|来《く》るかな
|神垣《かみがき》を|後《あと》に|見捨《みす》てて|行《ゆ》く|雁《かり》の
|中《なか》にも|残《のこ》る|一列《ひとつら》ありけり
|白梅《しらうめ》の|匂《にほ》ふも|待《ま》たで|行《ゆ》く|雁《かり》の
|心《こころ》の|空《そら》は|淋《さび》しかるらむ
|神垣《かみがき》の|春《はる》もあさ|野《の》の|若草《わかぐさ》に
かくれて|雉子《きぎす》|鳴《な》き|渡《わた》るなり
第五五五
|円山《まるやま》の|木々《きぎ》の|梢《こずゑ》の|呼子鳥《よびこどり》
|誰《た》を|招《まね》くらむ|声《こゑ》も|静《しづ》けく
|神園《かみぞの》の|梅《うめ》|手折《たを》らむと|来《き》て|見《み》れば
|早《はや》くも|散《ち》りて|実《み》は|結《むす》びたり
|白梅《しらうめ》の|外《ほか》にかぐはし|友《とも》もなし
|散《ち》りたる|後《のち》の|心《こころ》|淋《さび》しさ
|散《ち》るとてもまた|来《く》る|春《はる》を|松ケ枝《まつがえ》に
|緑《みどり》の|色《いろ》のすがすがしくあれ
|凩《こがらし》の|荒《すさ》みし|跡《あと》の|円山《まるやま》に
|照《て》る|月影《つきかげ》はいとも|長閑《のど》けし
第五五六
|三五《あななひ》の|月《つき》は|御空《みそら》を|唯《ただ》|一人《ひとり》
わがもの|顔《がほ》に|澄《す》み|渡《わた》るなり
|久方《ひさかた》の|天津日影《あまつひかげ》も|月影《つきかげ》も
|元津御神《もとつみかみ》の|光《ひかり》なりけり
|時鳥《ほととぎす》|五月《さつき》の|空《そら》に|里《さと》なれて
|夜《よる》の|更《ふ》くるまで|鳴《な》き|渡《わた》るかな
|金竜《きんりう》の|池《いけ》のみぎはもさみだれて
|菖蒲《あやめ》の|花《はな》の|紫《むらさき》に|咲《さ》く
|皇神《すめかみ》の|恵《めぐ》みもわけて|大八洲《おほやしま》
|松《まつ》の|木《こ》の|間《ま》に|迦陵頻伽《からびんが》|鳴《な》く
第五五七
|和田《わだ》の|原《はら》|澄《す》み|渡《わた》りたる|月影《つきかげ》の
|傾《かたむ》く|見《み》れば|淋《さび》しかりけり
|金竜《きんりう》の|池《いけ》の|氷《こほり》の|解《と》けてより
|水底《みなそこ》|深《ふか》くうつる|月影《つきかげ》
|空《そら》|高《たか》く|立《た》つ|河霧《かはぎり》の|隙間《すきま》より
|漏《も》れ|来《く》る|月《つき》の|光《ひかり》|慕《した》はし
|長《なが》き|夜《よ》も|明《あ》けて|悔《く》やしく|思《おも》ふかな
|月《つき》の|光《ひかり》のあせて|見《み》ゆれば
|神垣《かみがき》の|空《そら》を|包《つつ》みし|黒雲《くろくも》を
すかして|照《て》れる|有明《ありあけ》の|月《つき》
第五五八
|月《つき》|出《い》でて|松《まつ》の|緑《みどり》は|栄《さか》えけり
|紅葉《もみぢ》|散《ち》り|敷《し》く|凩《こがらし》の|後《あと》に
|呉竹《くれたけ》の|筧《かけひ》の|水《みづ》におく|露《つゆ》も
|月《つき》の|光《ひかり》をうけてかがよふ
|富士《ふじ》の|根《ね》に|積《つ》む|白雪《しらゆき》のいと|清《きよ》く
|永久《とは》に|消《き》えざる|心《こころ》ともがな
|富士《ふじ》の|雪《ゆき》の|永久《とは》に|消《き》えざる|心《こころ》もて
|清《きよ》く|御前《みまへ》に|仕《つか》へまつらむ
|霜《しも》の|褥《とこ》|月《つき》の|枕《まくら》を|数《かず》|重《かさ》ね
|神国《みくに》のために|道《みち》|伝《つた》へ|往《ゆ》く
第五五九
|山川《やまかは》に|風《かぜ》のかけたる|花《はな》の|橋《はし》を
|渡《わた》らむとすも|今《いま》の|世人《よびと》は
|光《ひかり》|無《な》き|谷《たに》の|底《そこ》にも|岩躑躅《いはつつじ》
|月《つき》の|恵《めぐ》みの|露《つゆ》に|匂《にほ》へる
|世《よ》の|為《ため》に|建《た》てし|宮居《みやゐ》を|醜司《しこづかさ》
|真金《まがね》の|鉾《ほこ》を|打《う》ちふり|砕《くだ》きぬ
|世《よ》のために|尽《つく》すと|言《い》ひし|醜司《しこづかさ》の
|醜《しこ》の|限《かぎ》りを|尽《つく》したるかな
ひたすらに|世《よ》を|安《やす》かれと|祈《いの》るかな
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|神《かみ》の|御前《みまへ》に
第五六〇
|神垣《かみがき》の|松《まつ》の|心《こころ》の|誓《ちか》ひにて
|主《きみ》が|千歳《ちとせ》を|朝夕《あさゆふ》|祈《いの》る
|千早振《ちはやぶ》る|神代《かみよ》は|知《し》らず|老松《おいまつ》の
|梢《こずゑ》に|澄《す》める|月《つき》はさやけし
|綿津海《わたつみ》の|真砂《まさご》の|数《かず》はかぞふとも
|数《かぞ》へきれぬは|神《かみ》の|御恵《みめぐ》み
|白梅《しらうめ》の|花《はな》も|常磐《ときは》の|色《いろ》|添《そ》ひて
|八重神垣《やへかみがき》に|匂《にほ》ひけるかな
|世《よ》の|人《ひと》の|心《こころ》の|闇《やみ》や|晴《は》れぬらむ
|澄《す》み|渡《わた》りたる|円山《まるやま》の|月《つき》に
第五六一
|大空《おほぞら》の|月《つき》も|澄《す》みけり|池水《いけみづ》も
|澄《す》み|渡《わた》りたる|神垣《かみがき》の|庭《には》
|御禊《みそぎ》する|小雲《こくも》の|川《かは》の|小波《さざなみ》の
|日数《ひかず》|重《かさ》ねて|神《かみ》に|祈《いの》りつ
|皆《みな》|人《ひと》のやがて|渡《わた》らむ|三瀬川《みつせがは》
せき|留《と》むるよしも|無《な》き|涙《なみだ》かな
|白妙《しろたへ》のわが|衣手《ころもで》は|濡《ぬ》れにけり
|露《つゆ》と|消《き》えにし|可憐児《いとしご》のため
|草《くさ》の|葉《は》におく|白露《しらつゆ》のいつまでも
|醜《しこ》の|嵐《あらし》に|散《ち》らぬものかは
(大正一二・五・一六 旧四・一 於教主殿 明子録)
第三二章 |神殿《しんでん》〔一六〇七〕
第五六二
|高山《たかやま》に|雲《くも》|湧《わ》き|立《た》ちて|天津日《あまつひ》の
|影《かげ》もかすかになりにけるかな
|東《ひむがし》の|峰《みね》をわけつつ|昇《のぼ》り|来《く》る
|月《つき》の|姿《すがた》の|大《おほ》きく|見《み》ゆるも
いつ|迄《まで》も|日《ひ》はわが|上《うへ》に|輝《かがや》かじ
やがて|傾《かたむ》く|夕暮《ゆふぐれ》の|空《そら》
|大空《おほぞら》の|星《ほし》の|光《ひかり》を|押《お》しかくし
|輝《かがや》き|渡《わた》る|天津日《あまつひ》の|神《かみ》
|天津日《あまつひ》の|光《ひかり》の|西《にし》に|沈《しづ》みてゆ
|星《ほし》の|真砂《まさご》は|輝《かがや》き|初《そ》めぬ
第五六三
|星影《ほしかげ》もまばらになりぬ|秋《あき》の|夜《よ》の
|清《きよ》けき|月《つき》の|昇《のぼ》りましてゆ
|半開《はんかい》の|花《はな》も|嵐《あらし》にたたかれて
もろく|散《ち》り|行《ゆ》く|浮世《うきよ》なりけり
|現《うつ》し|世《よ》の|恵《めぐ》みの|神《かみ》のまさずあれば
|人《ひと》の|命《いのち》の|如何《いか》であるべき
|限《かぎ》りなき|玉《たま》の|命《いのち》の|真清水《ましみづ》を
|恵《めぐ》ませたまふ|瑞《みづ》の|大神《おほかみ》
|永久《とこしへ》に|朽《く》ちず|亡《ほろ》びぬ|玉《たま》の|緒《を》の
|命《いのち》|賜《たま》ひし|元津祖神《もとつおやがみ》
第五六四
|鳩《はと》の|棲《す》む|桶伏山《をけふせやま》の|木《こ》の|間《ま》より
|夜《よ》は|明《あ》けにけり|霞《かすみ》|晴《は》れけり
|山々《やまやま》に|数多《あまた》|啼《な》けども|時鳥《ほととぎす》
その|諸声《もろこゑ》は|空音《そらね》なりけり
|奥津城《おくつき》の|山《やま》に|咲《さ》きぬる|女郎花《をみなへし》
|露《つゆ》の|涙《なみだ》に|打《う》ち|萎《しを》れつつ
|奥津城《おくつき》の|松《まつ》の|梢《こずゑ》は|緑《みどり》して
|常世《とこよ》の|春《はる》を|迎《むか》へ|顔《がほ》なる
|奥津城《おくつき》の|紅葉《もみぢ》の|色《いろ》の|紅《くれなゐ》は
|教御祖《をしへみおや》の|御心《みこころ》なるらむ
第五六五
|玉《たま》の|身《み》をかくしまつりし|奥津城《おくつき》を
|醜《しこ》の|獣《けもの》の|穿《うが》つ|御代《みよ》かな
|奥津城《おくつき》は|幾度《いくたび》となく|穢《けが》されぬ
|深《ふか》き|経綸《しぐみ》のおはすなるらむ
|世《よ》にありて|仇《あだ》に|攻《せ》められ|死《まか》りては
|又《また》もや|獣《けもの》に|呪《のろ》はれ|玉《たま》ひぬ
|鳥《とり》|獣《けもの》|虫族《むしけら》までも|救《すく》ひ|行《ゆ》く
|厳《いづ》の|御霊《みたま》は|安《やす》くますらむ
|奥津城《おくつき》の|御庭《みには》の|広《ひろ》く|清《きよ》けきは
|教御祖《をしへみおや》の|心《こころ》なるかも
第五六六
|時鳥《ほととぎす》のみか|諸鳥《もろとり》|夜《よ》な|夜《よ》なに
|来《き》たりて|教祖《みおや》の|奥津城《おくつき》|守《まも》る
|白雲《しらくも》の|遠《とほ》き|国《くに》より|尋《たづ》ね|来《き》て
|教祖《みおや》が|奥津城《おくつき》|拝《をが》み|泣《な》くなり
おさへられ|足《あし》に|踏《ふ》まれて|水袋《みづぶくろ》
いや|益々《ますます》も|固《かた》くなりぬる
|瑞御霊《みづみたま》|中《なか》に|充《み》たせし|水袋《みづぶくろ》
|押《おさ》へよ|踏《ふ》めよ|力《ちから》|限《かぎ》りに
|奥津城《おくつき》の|御空《みそら》を|高《たか》く|照《て》る|月《つき》は
|露《つゆ》の|涙《なみだ》を|夜《よ》な|夜《よ》な|降《ふ》らせり
第五六七の一
|諸々《もろもろ》の|去《さ》りにし|教子《みこ》は|喜《よろこ》びて
|露《つゆ》おくつきの|庭《には》に|遊《あそ》びつ
|天王平《てんわうだひら》|常磐《ときは》の|森《もり》に|八百万《やほよろづ》
|神集《かむつど》ひしてはかり|玉《たま》はむ
|大方《おほかた》の|春《はる》の|哀《あは》れは|鶯《うぐひす》の
|啼《な》く|音《ね》にまさるものなかりけり
|奥津城《おくつき》に|来啼《きな》く|鶯《うぐひす》|声《こゑ》|嗄《か》れて
また|啼《な》き|渡《わた》る|時鳥《ほととぎす》かな
|村雀《むらすずめ》|露《つゆ》おくつきの|塚《つか》の|前《まへ》に
|伊寄《いよ》り|集《つど》ひて|太祝詞《ふとのりと》|宣《の》る
第五六七の二
|荒《あら》されし|厳《いづ》の|御墓《みはか》も|神直日《かむなほひ》
|国直霊主《くになほひぬし》の|深《ふか》き|神心《みこころ》
|奥津城《おくつき》を|慕《した》ひて|詣《まゐ》る|信徒《まめひと》の
|心《こころ》に|悲《かな》しき|五月雨《さみだれ》の|降《ふ》る
|奥津城《おくつき》の|空《そら》|晴《は》れ|渡《わた》り|日《ひ》は|照《て》れど
|音《おと》なき|時雨《しぐれ》に|袖《そで》は|濡《ぬ》れつつ
|嬉《うれ》しさと|悲《かな》しみの|雲《くも》|行《ゆ》き|交《か》ひて
|心《こころ》の|空《そら》の|月《つき》は|曇《くも》りぬ
|奥《おく》つきの|神《かみ》は|表《おもて》に|現《あら》はれて
|開《ひら》き|玉《たま》はむ|五六七《みろく》の|御世《みよ》を
(大正一二・五・一六 旧四・一 於竜宮館 隆光録)
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霊界物語 第六二巻 山河草木 丑の巻
終り