霊界物語 第六〇巻 真善美愛 亥の巻
出口王仁三郎
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●テキスト中に現れる記号について
《》……ルビ
|……ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)天地|剖判《ぼうはん》の
[#]……入力者注
【】……傍点が振られている文字列
(例)【ヒ】は火なり
●シフトJISコードに無い文字は他の文字に置き換え、そのことをWebサイトに「相違点」として記した。
●底本
『霊界物語 第六十巻』天声社
1971(昭和46)年01月15日 第二刷発行
※現代では差別的表現と見なされる箇所もあるが修正はせずにすべて底本通りにした。
※図表などのレイアウトは完全に再現できるわけではないので適宜変更した。
※詳細な凡例は次のウェブサイト内に掲載してある。
http://www.onisavulo.jp/
※作成者…『王仁三郎ドット・ジェイピー』
2006年10月09日作成
2008年06月23日修正
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●目次
|序文《じよぶん》
|総説《そうせつ》
第一篇 |天仁和楽《てんじんわらく》
第一章 |清浄車《しやうじやうぐるま》〔一五二六〕
第二章 |神森《しんしん》〔一五二七〕
第三章 |瑞祥《ずゐしやう》〔一五二八〕
第四章 |木遣《きやり》〔一五二九〕
第五章 |鎮祭《ちんさい》〔一五三〇〕
第六章 |満悦《まんえつ》〔一五三一〕
第二篇 |東山霊地《アヅモスれいち》
第七章 |方便《はうべん》〔一五三二〕
第八章 |土蜘蛛《つちぐも》〔一五三三〕
第九章 |夜光玉《やくわうのたま》〔一五三四〕
第一〇章 |玉国《たまくに》〔一五三五〕
第一一章 |法螺貝《ほらがひ》〔一五三六〕
第三篇 |神《かみ》の|栄光《えいくわう》
第一二章 |三美歌《さんびか》その一〔一五三七〕
第一三章 |三美歌《さんびか》その二〔一五三八〕
第四篇 |善言美詞《ぜんげんびし》
第一四章 |神言《かみごと》〔一五三九〕
第一五章 |祝詞《のりと》〔一五四〇〕
第一六章 |祈言《いのりごと》〔一五四一〕
第一七章 |崇詞《あがめごと》〔一五四二〕
第一八章 |復祭《ふくさい》〔一五四三〕
第一九章 |復活《ふくくわつ》〔一五四四〕
第五篇 |金言玉辞《きんげんぎよくじ》
第二〇章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その一〔一五四五〕
第二一章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その二〔一五四六〕
第二二章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その三〔一五四七〕
第二三章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その四〔一五四八〕
第二四章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その五〔一五四九〕
第二五章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その六〔一五五〇〕
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|序文《じよぶん》
|凡《すべ》て|教法《けうはふ》には|大乗《だいじやう》|小乗《せうじやう》の|区別《くべつ》がある。|一般民衆《いつぱんみんしう》に|理解《りかい》し|易《やす》く|説示《せつじ》するを|小乗《せうじやう》と|曰《い》つて、|卑近《ひきん》な|例《れい》を|引《ひ》いたり、|何人《なにびと》にも|解《かい》し|易《やす》き|言語《げんご》をもつて|示《しめ》すの|類《るゐ》をいふ。|多数《たすう》|一般《いつぱん》の|人々《ひとびと》に|対《たい》して|神《かみ》の|教《をしへ》を|説《と》く|時《とき》は、どうしても|小乗《せうじやう》でなければ|駄目《だめ》である。|哲学的《てつがくてき》|思索《しさく》にふけつてをるやうな|所謂《いはゆる》|知識階級《ちしきかいきふ》に|対《たい》しては、また|小乗《せうじやう》では|馬鹿《ばか》にして|耳《みみ》を|傾《かたむ》けないものである。|何事《なにごと》も|難解的《なんかいてき》の|経典《きやうてん》を|以《もつ》て、|唯一成道《ゆゐいつじやうだう》の|大法《たいほふ》と|心得《こころえ》てをる|自称《じしよう》|先覚者《せんかくしや》には、|霊界《れいかい》の|事情《じじやう》は|容易《ようい》には|解《かい》されない。|自然界《しぜんかい》と|全《まつた》く|相反《あいはん》するところの|神霊界《しんれいかい》の|消息《せうそく》に|対《たい》して、|科学《くわがく》を|基礎《きそ》とせなくては|駄目《だめ》だと|思惟《しゐ》してをる|知識階級《ちしきかいきふ》の|人々《ひとびと》は、いづれも|九十五種外道《くじふごしゆげだう》の|全部《ぜんぶ》を|完備《くわんび》してをるといつても|良《よ》いくらゐなものである。|大乗《だいじやう》を|究《きは》めむとして|不知不識《しらずしらず》の|間《あひだ》に|外道《げだう》に|陥落《かんらく》し|一《いち》も|取《と》らず|二《に》も|取《と》らず、|終《つひ》には|昏迷《こんめい》と|愚痴《ぐち》とのみを|取得《しゆとく》するにいたる。
|凡《すべ》て|天国《てんごく》に|昇《のぼ》るものは、|小乗《せうじやう》を|聞《き》いて、|直《ただ》ちに|神霊界《しんれいかい》の|消息《せうそく》を|感知《かんち》し|得《う》る|神的知識者《しんてきちしきしや》である。|現界《げんかい》にあつて|学者《がくしや》と|謂《い》はるる|人々《ひとびと》も|神的《しんてき》|知識《ちしき》なるものを|欠《か》く|時《とき》は、|決《けつ》して|神霊界《しんれいかい》を|窺《うかが》ふことは|出来《でき》ない。|凡《すべ》て|大乗《だいじやう》|教義《けうぎ》なるものは、|上根者《じやうこんしや》、|宣伝使《せんでんし》などの|所業《しよげふ》の|教理《けうり》であつて、|一般《いつぱん》|学者《がくしや》の|到底《たうてい》|感得《かんとく》し|能《あた》はざる|神秘《しんぴ》である。|大乗《だいじやう》とは|一《いち》に|法大《ほふだい》、|二《に》に|心大《しんだい》、|三《さん》に|解大《げだい》、|四《よん》に|浄大《じやうだい》、|五《ご》に|荘厳大《さうごんだい》、|六《ろく》に|時大《じだい》、|七《しち》に|具足大《ぐそくだい》、|以上《いじやう》の|七大乗《しちだいじやう》は|神《かみ》に|選《えら》まれたる|神知識《しんちしき》の|所有者《しよいうしや》でなければ、|到底《たうてい》|今日《こんにち》|勃興《ぼつこう》しつつある|学者《がくしや》|間《かん》の|科学的《くわがくてき》|研究《けんきう》|態度《たいど》にては、たとへ|数百年《すうひやくねん》を|経《ふ》るともその|真相《しんさう》を|究《きは》むることは|不可能事《ふかのうじ》である。|神《かみ》を|信《しん》ぜず、その|存在《そんざい》を|認《みと》めず、|神《かみ》を|愛《あい》せざるものは|決《けつ》してその|関門《くわんもん》さへも|窺《うかが》ふことは|許《ゆる》されない。|而《しか》して|大乗《だいじやう》は|歯《は》に|合《あ》はず、|小乗《せうじやう》は|馬鹿《ばか》にして|耳《みみ》を|傾《かたむ》けず、|暗中摸索《あんちうもさく》の|境涯《きやうがい》に|迷《まよ》ふものは、|科学本能主義《くわがくほんのうしゆぎ》の|学者《がくしや》の|通常《つうじやう》たどるところの|経路《けいろ》である。|之《これ》を|神諭《しんゆ》には|途中《とちう》の|鼻高《はなだか》と|称《とな》へられてゐる。|神《かみ》を|外《ほか》にして|霊界《れいかい》を|知《し》らむと|如何《いか》に|焦慮《せうりよ》するとも、|決《けつ》してそのアナンタニルデーシャ・ブラテスターナ(|無量義処《むりやうぎしよ》)に|達《たつ》することは|出来《でき》ない。カルバシャーヤ(|劫濁《ごふぢよく》)クレーシャガシャーヤ(|煩悩濁《ぼんなうぢよく》)サッドワカシャーヤ(|衆生濁《しゆじやうぢよく》)ドルスチカシャーヤ(|見濁《けんぢよく》)アーユシカシャーヤ(|命濁《みやうぢよく》)の|五濁《ごぢよく》を|清《きよ》め|去《さ》り、|清浄無垢《せいじやうむく》|赤子《あかご》の|心境《しんきやう》に|立《た》ちて、|初《はじ》めて|神霊界《しんれいかい》の|真義《しんぎ》に|歩《ほ》を|向《む》くることが|出来《でき》るものである。
この|物語《ものがたり》もまた|神示《しんじ》の|所作《しよさ》なれば、|五濁《ごぢよく》を|除去《ぢよきよ》し|以《もつ》てこれに|向《む》かふ|時《とき》は、|神命垂示《しんめいすゐじ》のマハービジニヤーナーヒアー(|大通智勝《だいつうちしよう》)を|感受《かんじゆ》し、マハービューバ(|大荘厳《だいさうごん》)の|神理《しんり》を|味《あぢ》はひ、|神霊《しんれい》のラトナーワ゛・バーサ(|宝音《はうおん》)に|接《せつ》し、|無等々正覚《むとうとうしやうかく》を|得《え》て|人生《じんせい》の|本分《ほんぶん》を|全《まつた》うし、|不老不死《ふらうふし》|天国《てんごく》の|生涯《しやうがい》を|生《い》きながら|楽《たの》しむことが|出来《でき》る|案内書《あんないしよ》となるのであります。
ああ|惟神《かむながら》|霊《たま》|幸倍《ちはへ》|坐世《ませ》。
大正十二年四月
|総説《そうせつ》
|古人《こじん》|曰《い》ふ、『|善願《ぜんぐわん》あれば|天《てん》|必《かなら》ず|之《これ》を|輔《たす》く』と。|瑞月《ずゐげつ》は|神明《しんめい》のまにまに|病躯《びやうく》を|駆《か》つてやうやく|神示《しんじ》の|物語《ものがたり》、|原稿用紙《げんかうようし》|七万五千枚《しちまんごせんまい》、|約《やく》|八百五十万言《はつぴやくごじふまんげん》、|頁数《ページすう》|二万四千《にまんよんせん》、|約《やく》|九箇月《きうかげつ》の|着手日数《ちやくしゆにつすう》を|要《えう》して、|茲《ここ》にいよいよ|六十巻《ろくじつくわん》を|口述《こうじゆつ》|編著《へんちよ》しました。かかる|阿房多羅《あはうだら》に|長《なが》い|物語《ものがたり》を|書《か》いて、|識者《しきしや》より|冗長粗漫《じようちやうそまん》の|文章《ぶんしやう》だと|失笑《しつせう》さるる|恐《おそ》れ|無《な》きには|非《あら》ざれども、|今日《こんにち》の|大多数《だいたすう》の|人々《ひとびと》は|古人《こじん》に|比《ひ》して|頭悩《づなう》の|活動力《くわつどうりよく》|最《もつと》も|劣《おと》り、|容易《ようい》に|深遠《しんゑん》なる|教義《けうぎ》を|真解《しんかい》すること|能《あた》はず、かつ|何事《なにごと》も|上走《うはばし》りにて|誤解《ごかい》し|易《やす》く、|為《ため》に|三五教《あななひけう》の|真相《しんさう》や|大精神《だいせいしん》を|曲解《きよくかい》し、|終《つひ》には|忌《いま》はしき|大本事件《おほもとじけん》を|喚起《くわんき》するに|到《いた》つたのは、|返《かへ》す|返《がへ》すも|遺憾《ゐかん》の|至《いた》りであります。
|上根《じやうこん》の|人《ひと》は|一言《ひとこと》|聞《き》いてその|真相《しんさう》を|了解《れうかい》し、|至仁《しじん》|至愛《しあい》の|神《かみ》の|大精神《だいせいしん》や|大経綸《だいけいりん》を|正覚《しやうかく》すと|雖《いへど》も、|中根《ちうこん》|下根《げこん》の|人々《ひとびと》に|対《たい》しては|到底《たうてい》|高遠微妙《かうゑんびめう》なる|文章《ぶんしやう》や|言語《げんご》にては|解《かい》し|得《え》ないのみならず、かへつて|神意《しんい》を|誤解《ごかい》し、|大道《だいだう》を|汚濁《をぢよく》する|虞《おそ》れがある。|故《ゆゑ》に|瑞月《ずゐげつ》は|現代《げんだい》|多数《たすう》の|人々《ひとびと》のために|多大《ただい》の|努力《どりよく》と|日子《につし》を|費《つひ》やしたのであります。
|現代《げんだい》は|古《いにしへ》と|異《ことな》つて|何事《なにごと》も|大仕掛《おほじか》けになつてをり、|更《さら》にますます|大《おほ》きく|成《な》らむとしつつあるが|故《ゆゑ》に、|非常《ひじやう》にその|間口《まぐち》が|広《ひろ》くて、|奥行《おくゆき》が|浅《あさ》い|人間《にんげん》が|多《おほ》く|現《あら》はれるのは|止《や》むを|得《え》ない。|故《ゆゑ》に|今後《こんご》の|人々《ひとびと》に|対《たい》して|徹底《てつてい》せしめむとするには、|不断《ふだん》の|根気《こんき》が|何《なに》よりも|大切《たいせつ》である。たとへ|百年《ひやくねん》かからうが|神《かみ》の|大御心《おほみこころ》を|万人《ばんにん》に|徹底《てつてい》させなくては|措《お》かない|決心《けつしん》である。
|現代《げんだい》の|人々《ひとびと》がただの|一人《ひとり》も|自分《じぶん》が|口述《こうじゆつ》した|物語《ものがたり》を|用《もち》ゐてくれず、また|了解《れうかい》してくれなくてもかまはない、|自分《じぶん》だけただ|一人《ひとり》これを|信《しん》じて|大神《おほかみ》の|大精神《だいせいしん》を|幾分《いくぶん》なりとも|実行《じつかう》し、|正《ただ》しき|信仰《しんかう》の|下《もと》に|人間《にんげん》として|生《い》きてゆく|考《かんが》へである。|現代人《げんだいじん》の|中《うち》には|斯《か》くのごとく|世間《せけん》の|行事《ぎやうじ》が|悪化《あくくわ》し|獣化《じうくわ》するのを|見《み》ては、……|自分《じぶん》|一人《ひとり》が|心身《しんしん》を|正《ただ》しくし|神《かみ》の|示教《じけう》を|信《しん》じることが|出来《でき》ようか……と|思《おも》つたりいつたりしてをる|人々《ひとびと》の|考《かんが》へはあまりの|狼狽《らうばい》である。|今日《こんにち》の|社会《しやくわい》にコウいふ|狼狽《うろた》へた|人々《ひとびと》の|多《おほ》いことは|如何《いか》にしても|慨《なげ》かはしいことである。|国《くに》の|滅亡《めつぼう》する|時《とき》は「|一人《いちにん》の|義人《ぎじん》あるなし。また|識者《しきしや》なるもの|一人《いちにん》もある|無《な》し」といふ|極端《きよくたん》まで|行《ゆ》くものだが、|国《くに》に|一人《ひとり》にても、|義人《ぎじん》や|真《しん》の|識者《しきしや》のある|限《かぎ》り、|決《けつ》してその|国《こく》は|亡《ほろ》ぶるものではない。|神諭《しんゆ》にも「|誠《まこと》の|義人《もの》が|三人《さんにん》あれば|弥勒神政《みろくしんせい》|必《かなら》ず|成就《じやうじゆ》すべし」と|示《しめ》してある。|今日《こんにち》はお|互《たが》ひに|最後《さいご》の|一人《いちにん》を|以《もつ》て|任《にん》じ、せめて|自分《じぶん》だけでも|正《ただ》しき|信仰《しんかう》に|生《い》き、|清《きよ》き|人間《にんげん》として|世《よ》のため|道《みち》のために|尽《つく》さむとする|同《おな》じ|心《こころ》の|人々《ひとびと》と|共《とも》に、この|聖《せい》なる|団体《だんたい》を|擁護《えうご》し|開展《かいてん》し、|以《もつ》てこの|世界《せかい》をして|真善美愛《しんぜんびあい》の|楽土《らくど》と|化《くわ》せしめ、|国祖《こくそ》の|神慮《しんりよ》に|叶《かな》ひ|奉《まつ》らむことを|希望《きばう》し、あらゆる|迫害《はくがい》に|耐《た》へ、|克《よ》く|忍《しの》び|以《もつ》てこの|千載一遇《せんざいいちぐう》の|神業《しんげふ》に|奉仕《ほうし》せむと|欲《ほつ》し、|最後《さいご》の|一人《いちにん》となるも|決《けつ》して|絶望《ぜつばう》せず、|狼狽《らうばい》せず、|平静《へいせい》に|生命《せいめい》ある|聖《きよ》き|希望《きばう》を|抱《いだ》いて|天下《てんか》のために|竭《つく》さむとするものである。|故《ゆゑ》に|吾人《ごじん》は|世俗《せぞく》のあらゆる|非難《ひなん》|攻撃《こうげき》にも|屈《くつ》せず、|山鳥《やまどり》の|尾《を》のしだり|尾《を》の|長々《ながなが》しくも|撓《たゆ》まず|屈《くつ》せず、|口述《こうじゆつ》を|続《つづ》けて|後世《こうせい》の|軌範《きはん》とせむことを|希求《ききう》しつつあるのである。
この|世《よ》を|造《つく》りし|神直日《かむなほひ》、|心《こころ》も|広《ひろ》き|大直日《おほなほひ》、ただ|何事《なにごと》も|人《ひと》の|世《よ》は、|直日《なほひ》に|見直《みなほ》せ|聞《き》き|直《なほ》せ|身《み》の|過《あやま》ちは|宣直《のりなほ》せ、と|吾人《ごじん》は|日夜《にちや》この|神示《しんじ》を|楯《たて》として、ヒシヒシと|押《お》し|寄《よ》せ|来《き》たる|激浪《げきらう》|怒濤《どたう》を|浴《あ》びながら、|善言美詞《ぜんげんびじ》の|言霊《ことたま》の|武器《ぶき》を|以《もつ》て|凡《すべ》ての|外道《げだう》を|言向和《ことむけやは》す|覚悟《かくご》である。|何《なに》|程《ほど》|多勢《たぜい》の|敵《てき》といへども|驚《おどろ》くには|及《およ》ばない。ただ|一言《ひとこと》の|善辞《ぜんじ》、|即《すなは》ち|言霊《ことたま》の|善用《ぜんよう》によりて|強敵《きやうてき》は|忽《たちま》ち|化《くわ》して|強《つよ》き|味方《みかた》となり、また|多数《たすう》の|味方《みかた》といへども、ただ|一《ひと》つの|悪言暴語《あくげんばうご》に|依《よ》つて|直《ただ》ちに|怨敵《をんてき》となる。|言霊《ことたま》のもつとも|慎《つつし》むべきを|明示《めいじ》したのは、|本書《ほんしよ》|霊界物語《れいかいものがたり》を|通《つう》じての|大眼目《だいがんもく》であります。|読者《どくしや》|幸《さいは》ひに|本書《ほんしよ》に|依《よ》つて|言霊《ことたま》の|活用《くわつよう》を|味《あぢ》はひたまふことあらば、|瑞月《ずゐげつ》の|微衷《びちう》も|酬《むく》はれたりといふべきであります。ああ|惟神《かむながら》|霊《たま》|幸倍《ちはへ》|坐世《ませ》。
大正十二年四月
第一篇 |天仁和楽《てんじんわらく》
第一章 |清浄車《しやうじやうぐるま》〔一五二六〕
|東西《とうざい》|百里《ひやくり》|南北《なんぼく》|二百里《にひやくり》、|広袤《くわうぼう》|二万方里《にまんはうり》のキヨメの|湖《うみ》は、|大小《だいせう》|十二《じふに》の|島《しま》を|泛《う》かべて|鏡《かがみ》のごとく|照《て》り|輝《かがや》いてゐる。|北方《ほくぱう》の|雲間《うんかん》にボカされたやうなテルモン|山《ざん》が|水鏡《みづかがみ》を|覗《のぞ》いてゐる。
|饅頭笠《まんぢうがさ》のやうな|大太陽《だいたいやう》が|東《ひがし》の|波間《なみま》より|生《う》まれはじめ、|五色《ごしき》の|雲《くも》の|階段《かいだん》をチクチクと|登《のぼ》るにつけてその|形《かたち》を|小《ちひ》さくしてゆく。|颯々《さつさつ》たる|夏《なつ》の|晨《あした》の|風《かぜ》は|涼《すず》しく|人《ひと》の|面《おもて》を|撫《な》で、|帆《ほ》をペタペタと|前後《ぜんご》に|揺《ゆ》すつてゐる|長閑《のどか》さ。|数万《すうまん》の|鳥族《てうぞく》は|湖上《こじやう》を|前後左右《ぜんごさいう》に|〓翔《かうしやう》し、|日《ひ》の|出《で》を|喜《よろこ》び|祝《いは》ふ|声《こゑ》は|九天《きうてん》に|達《たつ》するかと|疑《うたが》はるるばかりであつた。|白砂《はくしや》|青松《せいしよう》のスマの|浜辺《はまべ》には、|山《やま》のごとく|老若男女《らうにやくなんによ》の|羅漢姿《らかんすがた》が|蝟集並列《ゐしふへいれつ》して、その|影《かげ》を|湖中《こちう》に|逆《さか》しまに|映《うつ》してゐる。
|伊太彦《いたひこ》が|率《ひき》ゆる|二十艘《にじつそう》の|猩々舟《しやうじやうぶね》は、|万歳《ばんざい》|歓呼《くわんこ》の|中《うち》にチクリチクリと|磯辺《いそべ》に|向《む》かつて|近附《ちかづ》き|来《き》たる。|磯辺《いそべ》に|立《た》つた|群集《ぐんしふ》は|鬱金《うこん》の|鉢巻《はちまき》|赤襷《あかだすき》、|太鼓《たいこ》や、|摺鉦《すりがね》や、|笛《ふえ》、|笙《しやう》、|篳篥《ひちりき》、|羯鼓《かつこ》、|月琴《げつきん》などを|手《て》にし、|思《おも》ひ|思《おも》ひの|妙技《めうぎ》を|発揮《はつき》して、|伊太彦《いたひこ》|一行《いつかう》の|無事《ぶじ》|帰港《きこう》を|祝《しゆく》してゐる。
|淡水《たんすゐ》の|湖原《うなばら》は|気分《きぶん》の|悪《わる》い|潮《しほ》の|香《か》もなく、|風《かぜ》は|芳香《はうかう》を|送《おく》り、|無声《むせい》の|音楽《おんがく》|聞《き》こえて|人《ひと》の|耳《みみ》を|浄《きよ》め、|天《てん》|清《きよ》く|海《うみ》|青《あを》く、|地《つち》また|清《きよ》く、|天火水地《てんくわすゐち》はいと|静《しづ》かにいと|賑《にぎ》はしく、|実《じつ》に|理想《りさう》の|天国《てんごく》を|現出《げんしゆつ》せしごとく、|真善美愛《しんぜんびあい》の|極地《きよくち》に|達《たつ》した。|天地《てんち》の|間《あひだ》にも|人《ひと》の|心《こころ》にも|一点《いつてん》の|塵《ちり》も|止《とど》めず、|和気《わき》|靄々《あいあい》として、|親子《おやこ》の|如《ごと》く、|兄弟《きやうだい》の|如《ごと》く、|夫婦《ふうふ》の|如《ごと》く、|敵《てき》も|味方《みかた》も|一切《いつさい》の|障壁《しやうへき》を|忘《わす》れその|睦《むつ》まじきこと、|鴛鴦《をし》の|番《つがひ》の|如《ごと》し。かかる|平和《へいわ》の|天地《てんち》にもかかはらず、|猜疑心《さいぎしん》に|搦《から》まれたる|心《こころ》の|暗鬼《あんき》は|忽《たちま》ち|畏怖《ゐふ》|驚愕《きやうがく》のあまり、バラモン|教《けう》のヤッコス、サボールを|駆《か》つて、|無残《むざん》や|湖中《こちう》に|身《み》を|投《とう》ぜしめた。
|船中《せんちう》の|人々《ひとびと》も|陸上《りくじやう》の|群集《ぐんしふ》も、|猩々隊《しやうじやうたい》もこの|光景《くわうけい》を|見《み》て、|手《て》に|唾《つばき》し、|如何《いか》にもして|彼《かれ》ら|両人《りやうにん》を|救《すく》はむと|思《おも》ふ|至情《しじやう》は|一度《いちど》に|勃発《ぼつぱつ》し、|同情《どうじやう》の|念《ねん》に|胸《むね》を|焦《こ》がした。かかるところへ、|予《かね》てかくあらむと、|玉国別《たまくにわけ》の|命《めい》により|葦草《あしぐさ》の|間《あひだ》に|小舟《こぶね》を|泛《う》かばせ|待《ま》つてゐた|真純彦《ますみひこ》、|三千彦《みちひこ》はスハこそ|一大事《いちだいじ》と、|艪櫂《ろかい》を|操《あやつ》り、|水面《すいめん》を|飛鳥《ひてう》のごとく|辷《すべ》つて、ドブンと|落《お》ちた|渦巻《うづまき》の|上《うへ》に|舟《ふね》を|送《おく》り、やうやくにして|二人《ふたり》を|救《すく》ふことを|得《え》た。|万一《まんいち》この|二人《ふたり》のうち|一人《ひとり》たりとも、|生命《いのち》を|失《うしな》ふごとき|不吉事《ふきつじ》あらば、|至善《しぜん》|至真《ししん》|至美《しび》の|天地《てんち》に|瑕瑾《かきん》を|印《いん》し、|光玉《くわうぎよく》に|曇《くも》りのかかりしごとくなるべかりしを、|事《こと》なくして|済《す》みたるは、|実《じつ》に|平和《へいわ》の|祥徴《しやうちよう》なりと|衆人《しうじん》|一度《いちど》に|歓喜《くわんき》し、かつ|真純彦《ますみひこ》、|三千彦《みちひこ》が|仁侠《じんけふ》を|手《て》を|拍《う》つて|感賞《かんしやう》した。
スマの|関守《せきもり》チルテルは、|十数台《じふすうだい》の|猩々車《しやうじやうぐるま》を|造《つく》り、|種々《いろいろ》の|花《はな》を|飾《かざ》りて、|数多《あまた》の|兵士《へいし》に|引《ひ》かせながら、|猩々隊《しやうじやうたい》を|迎《むか》へむため、チルテルが|先頭《せんとう》に|立《た》ち|磯端《いそばた》に|待《ま》つてゐる。|伊太彦《いたひこ》は|先《ま》づ|第一《だいいち》に|舟《ふね》を|離《はな》れて|玉国別《たまくにわけ》の|前《まへ》に|進《すす》みより、|歓喜《くわんき》の|涙《なみだ》をたたへながら、|固《かた》くその|手《て》を|握《にぎ》り|二三回《にさんくわい》|揺《ゆ》すつた。|玉国別《たまくにわけ》は|感涙《かんるゐ》に|咽《むせ》びながら、|稍《やや》かすむだ|声《こゑ》にて、
『|伊太彦《いたひこ》|殿《どの》、|天晴《あつぱ》れお|手柄《てがら》、|御苦労《ごくらう》であつた。|予定《よてい》の|時刻《じこく》に|先立《さきだ》つて、|無事《ぶじ》|帰《かへ》る|事《こと》を|得《え》たのは|全《まつた》く|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みと、|汝《なんぢ》が|至誠《しせい》の|賜物《たまもの》である。サアこれからバーチル|館《やかた》に|帰《かへ》つて|種々《いろいろ》の|珍《めづら》しい|話《はなし》を|聞《き》かしてもらはう』
|伊太彦《いたひこ》『ハイ|有難《ありがた》うございます。しからばお|伴《とも》いたしませう』
バーチル、サーベル|姫《ひめ》は|美《うる》はしき|山車《だんじり》を|飾《かざ》り|立《た》て、|玉国別《たまくにわけ》、|真純彦《ますみひこ》、|伊太彦《いたひこ》、|三千彦《みちひこ》、デビス|姫《ひめ》を|搭乗《たふじやう》せしめ、|自分《じぶん》も|山車《だんじり》の|前方《ぜんぱう》に|立《た》ち、|歌《うた》を|歌《うた》ひながら、|里人《さとびと》に|太綱《ふとづな》をもつて|輓《ひ》かせつつ|帰《かへ》りゆく。|十数台《じふすうだい》のチルテルが|設備《せつび》した|車《くるま》には|三百三十三体《さんびやくさんじふさんたい》の|眷族《けんぞく》が|搭乗《たふじやう》し、キヤツ キヤツと|歓声《くわんせい》を|挙《あ》げながら、ヂリリヂリリと|輓《ひ》かれ|行《ゆ》く。|鐘《かね》、|太鼓《たいこ》、|拍子木《ひやうしぎ》、|縦笛《たてぶえ》、|横笛《よこぶえ》、|羯鼓《かつこ》、|月琴《げつきん》そのほか|種々雑多《しゆじゆざつた》の|音楽《おんがく》に|送《おく》られ、おのおの|唄《うた》を|唄《うた》つて|賑々《にぎにぎ》しく|大道《だいだう》を|練《ね》り|行《ゆ》く。
チルテルは|猩々車《しやうじやうぐるま》の|先《さき》に|立《た》ち、|声《こゑ》も|涼《すず》しく|音頭《おんどう》をとつた。|群衆《ぐんしう》は|一節一節《ひとふしひとふし》そのあとをつけながら、|手《て》をふり|腰《こし》を|振《ふ》り、|狂喜《きやうき》のごとく|踊《をど》り|狂《くる》ふ。
チルテル『|酒《さけ》のイヅミのアヅモス|山《さん》の  ヨーイセ ソーラセ
パインや|樟《くす》の|繁茂《はんも》せる  |梢《こずゑ》に|鷹《たか》が|巣《す》をつくる
|鳥《とり》の|司《つかさ》の|禿鷲《はげわし》さまが  |千羽《せんば》|万羽《まんば》と|子《こ》を|生《う》んで
スマの|中空《ちうくう》に|舞《ま》ひ|遊《あそ》ぶ  ヨーイセ ソーラセー
みみづく|梟《ふくろ》や|山鳩《やまばと》が  またも|梢《こずゑ》に|巣《す》をくんで
バーチルさまの|万歳《ばんざい》を  |祝《いは》ふも|目出《めで》たき|夏《なつ》の|空《そら》
ヨーイセ ソーラセ  |千歳《ちとせ》の|鶴《つる》は|舞《ま》ひ|遊《あそ》び
|八千代《やちよ》の|亀《かめ》は|舞《ま》ひ|遊《あそ》ぶ  |前代未聞《ぜんだいみもん》の|盛典《せいてん》に
|敵《てき》と|味方《みかた》の|隔《へだ》てなく  |天火水地《てんくわすゐち》も|結《むす》び|合《あ》ひ
|世界《せかい》を|一《ひと》つに|相丸《あひまる》め  |三五教《あななひけう》やバラモンの
|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|慎《つつし》みて  |老《おい》と|若《わか》きの|隔《へだ》てなく
|仰《あふ》ぎ|敬《うやま》ふ|今日《けふ》の|空《そら》  ヤートコセー ヨーイヤナ
アレワイセー コレワイセ  ソーリヤ ヨーイトセー
カンカンチキチン カンチキチン  チキチン チキチン カンチキチン
ドンドコ ドンドコ ドコドコドン  ヒユーヒユーヒユーヒユーヒユーヒユーヒユー
|猩々ケ島《しやうじやうがしま》に|流《なが》されし  |三百有余《さんびやくいうよ》の|眷族《けんぞく》は
|天《あま》の|岩戸《いはと》の|開《ひら》かれて  |全《まつた》く|日出《ひので》の|御代《みよ》となり
|五六七《みろく》の|神《かみ》の|松《まつ》の|代《よ》と  |目出《めで》たく|祝《いは》ふスマの|里《さと》
|鷹《たか》の|棲《す》まひしアヅモスの  |元《もと》の|屋敷《やしき》に|立《た》ち|帰《かへ》り
|天王《てんわう》の|森《もり》の|守護神《しゆごじん》と  |再《ふたた》び|仕《つか》ふる|世《よ》となりぬ
ヨーイセ ソーラセ  かかる|目出《めで》たき|神代《かみよ》をば
|招来《せうらい》したる|神人《しんじん》は  |玉国別《たまくにわけ》の|宣伝使《せんでんし》
|誠《まこと》|一《ひと》つの|賜物《たまもの》ぞ  バラモン|軍《ぐん》によく|仕《つか》へ
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|三五《あななひ》の  |教司《をしへつかさ》や|信徒《まめひと》を
|鵜《う》の|目《め》|鷹《たか》の|目《め》|光《ひか》らせつ  |片《かた》ツぱしから|捕縛《ほばく》して
|苦《くる》しめ|悩《なや》めし|吾々《われわれ》も  |転迷開悟《てんめいかいご》の|花《はな》|開《ひら》き
|今《いま》は|全《まつた》くバラモンの  |軍《いくさ》の|司《つかさ》を|辞職《じしよく》して
|心《こころ》も|清《きよ》き|三五《あななひ》の  |誠《まこと》の|道《みち》に|進《すす》みけり
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |此《この》|世《よ》を|造《つく》りし|神直日《かむなほひ》
|心《こころ》も|広《ひろ》き|大直日《おほなほひ》  ただ|何事《なにごと》も|人《ひと》の|世《よ》は
|直日《なほひ》に|見直《みなほ》し|聞直《ききなほ》す  |神《かみ》の|恵《めぐ》みに|抱《いだ》かれて
|今日《けふ》の|祝《いは》ひに|列《つら》なりし  その|喜《よろこ》びは|天地《あめつち》も
|一度《いちど》に|揺《ゆ》るぐばかりなり  ヨーイセー ソーラセ
|引《ひ》けよ|引《ひ》け|引《ひ》け|猩々車《しやうじやうぐるま》  ドツコイシヨウ ドツコイシヨウ
|砂《すな》|敷《し》きつめしこの|街道《かいだう》  |車《くるま》の|轍《わだち》のきしる|音《おと》
|引手《ひきて》の|一度《いちど》に|唄《うた》ふ|声《こゑ》  |天国《てんごく》|浄土《じやうど》か|地《ち》の|上《うへ》か
|例《ためし》も|知《し》らぬ|楽《たの》しさは  |高天原《たかあまはら》の|天国《てんごく》の
そのまま|姿《すがた》をうつしたる  |歓喜《くわんき》の|波《なみ》は|漂《ただよ》ひぬ
ドツコイセー ドツコイセー  ヤートコセーのヨーイヤナ
チヤンチヤンチキチン チヤンチキチン  チキチン チキチン チヤンチキチン
ドンドコ ドンドコ ドコドコドン  ヒユーヒユードンドン ヒユードンドン』
『|清《きよ》めの|湖《うみ》に|三歳《みとせ》ぶり  |漂《ただよ》ひ|暮《くら》したアンチーは
|猩々《しやうじやう》の|島《しま》のお|客《きやく》さま  |漸《やうや》く|無事《ぶじ》に|迎《むか》へ|来《き》て
スマの|磯辺《いそべ》につくや|否《いな》  |数多《あまた》の|男女《なんによ》に|迎《むか》へられ
|抃舞雀躍《べんぶじやくやく》|魂《たましひ》の  |置《お》きどこさへも|知《し》らぬ|身《み》の
|歓迎車《くわんげいぐるま》の|梶《かぢ》を|把《と》り  |館《やかた》へ|帰《かへ》る|嬉《うれ》しさよ
ヨーイセー ソーラセ  |皆《みな》さま|揃《そろ》うて|曳《ひ》いてくれ
|先方《むかふ》に|見《み》ゆる|森蔭《もりかげ》は  バーチルさまの|御館《おんやかた》
|静《しづ》まり|返《かへ》つた|邸内《ていない》も  |今日《けふ》の|生日《いくひ》の|足日《たるひ》から
|三百有余《さんびやくいうよ》の|眷族《けんぞく》が  |老木《らうぼく》|茂《しげ》る|森《もり》の|上《へ》に
|梢《こずゑ》を|伝《つた》ひ|飛《と》びまはり  キヤツキヤツキヤツと|賑《にぎ》はしく
|宙空《ちうくう》に|音楽《おんがく》|相奏《あひかな》で  イヅミの|国《くに》の|隆昌《りうしやう》を
|祝《ことほ》ぎまつることだらう  |三五教《あななひけう》やバラモンの
|教《をしへ》の|司《つかさ》が|村肝《むらきも》の  |心《こころ》を|一《ひと》つになし|玉《たま》ひ
|真善美愛《しんぜんびあい》の|神《かみ》の|道《みち》  |完全《うまら》に|委曲《つばら》に|立《た》て|玉《たま》ふ
|聖《ひじり》の|御世《みよ》とはなりにけり  ヨーイセー ソーラセ
|旭《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも  |月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも
テルモン|山《ざん》は|海《うみ》となり  キヨメの|湖《うみ》は|山《やま》となり
|天変地妖《てんぺんちえう》の|災《わざは》ひが  |一度《いちど》に|起《おこ》る|事《こと》あるも
|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|救《すく》はれし  |神《かみ》の|選《えら》みしスマの|里《さと》
|千代《ちよ》も|八千代《やちよ》も|動《うご》かまじ  |勇《いさ》めよ|勇《いさ》め|里人《さとびと》よ
|風《かぜ》は|自然《しぜん》の|音楽《おんがく》を  |宙空《ちうくう》に|奏《かな》で|百《もも》の|木《き》は
|手《て》を|振《ふ》り|腰《こし》を|曲《ま》げながら  ダンスを|演《えん》じて|吾々《われわれ》が
|無事《ぶじ》の|帰郷《ききやう》を|祝《いは》ふなり  |喜《よろこ》び|勇《いさ》め|惟神《かむながら》
|神《かみ》に|任《まか》せて|何事《なにごと》も  |日々《ひび》の|業務《げふむ》を|勤《つと》めつつ
バーチルさまを|親《おや》となし  |神《かみ》の|司《つかさ》を|師《し》となして
|卑屈《ひくつ》|猜疑《さいぎ》の|精神《せいしん》を  |科戸《しなど》の|風《かぜ》に|吹《ふ》き|払《はら》ひ
|速川《はやかは》の|瀬《せ》に|流《なが》しすて  |清浄無垢《しやうじやうむく》の|魂《たま》となり
|永《なが》く|天与《てんよ》の|御恵《みめぐ》みを  |仰《あふ》ぎまつらむ|世《よ》となりぬ
|引《ひ》けよ|引《ひ》け|引《ひ》け|御車《みくるま》の  この|太綱《ふとづな》の|切《き》れるまで
ヨイトコセー ヨイトコセー』
|新《あら》たに|開鑿《かいさく》された|広《ひろ》い|街道《かいだう》に|白砂《しらすな》を|布《し》きつめた|上《うへ》を、やうやくにしてアヅモス|山《さん》の|南麓《なんろく》、バーチルが|宏大《くわうだい》なる|屋敷《やしき》を|指《さ》して、|歓喜《くわんき》の|裡《うち》に|着《つ》いた。これより|一同《いちどう》は|邸園《ていゑん》に|蓆《むしろ》を|布《し》き、|祝《いは》ひの|酒《さけ》に|舌鼓《したつづみ》を|打《う》ち、|歓喜《くわんき》を|尽《つく》すこととなつた。
バーチル、サーベル|姫《ひめ》は|一同《いちどう》に|恭《うやうや》しく|礼《れい》を|述《の》べ、|玉国別《たまくにわけ》|一行《いつかう》およびチルテルの|一行《いつかう》を|導《みちび》いて、|奥《おく》の|広《ひろ》き|客間《きやくま》に|招待《せうたい》した。|三百有余《さんびやくいうよ》の|猩々《しやうじやう》は|何《なん》の|会釈《ゑしやく》もなく、|車《くるま》より|先《さき》を|争《あらそ》うて|飛《と》び|下《お》り、バーチルの|後《あと》に|従《したが》ひ、|所《ところ》|狭《せ》きまでうごなはつて、|奥《おく》の|間《ま》を|塞《ふさ》いでしまつた。
|玉国別《たまくにわけ》『バーチルの|君《きみ》は|嬉《うれ》しくおぼすらむ
|数多《あまた》の|御子《みこ》を|目《ま》のあたりみて』
バーチル『|三歳《みとせ》ぶり|吾《わ》が|子《こ》のごとく|愛《め》でゐたる
|猿《ましら》の|顔《かほ》を|見《み》るぞ|嬉《うれ》しき』
サーベル|姫《ひめ》『|生《う》みの|子《こ》のいや|日《ひ》に|月《つき》に|栄《さか》えしも
|皆《みな》|天地《あめつち》の|恵《めぐ》みなりけり
もの|言《い》はぬ|吾《わ》が|子《こ》なれども|魂《たましひ》は
われに|通《かよ》ひぬ|子《こ》の|事々《ことごと》は』
チルテル『|鳥《とり》|獣《けもの》|虫族《むしけら》までも|救《すく》うてふ
|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|有難《ありがた》くぞ|思《おも》ふ』
|真純彦《ますみひこ》『|大空《おほぞら》も|大海原《おほうなばら》もすみ|渡《わた》る
|島《しま》に|育《そだ》ちし|身魂《みたま》ぞ|清《きよ》き』
|伊太彦《いたひこ》『かくばかり|楽《たの》しき|事《こと》があらむとは
われさへ|夢《ゆめ》に|悟《さと》らざりけり』
|三千彦《みちひこ》『|天地《あめつち》の|恵《めぐ》みは|四方《よも》に|三千彦《みちひこ》の
|水《みづ》も|洩《も》らさぬ|今日《けふ》の|喜《よろこ》び』
デビス|姫《ひめ》『われもまた|神《かみ》の|御業《みわざ》を|了《を》へし|上《うへ》は
|御子《みこ》の|数々《かずかず》|生《う》まむとぞ|思《おも》ふ』
|伊太彦《いたひこ》『|三千《さんぜん》のもの|言《い》はぬ|子《こ》を|生《う》み|並《なら》べ
|喜《よろこ》び|胸《むね》に|三千彦《みちひこ》となれ』
|三千彦《みちひこ》『|三千《さんぜん》や|五千《ごせん》の|御子《みこ》は|何《なん》のその
|百千万《ももちよろづ》の|教御子《をしへみこ》|生《う》む』
アンチー『アヅモスの|山《やま》に|棲《す》まへる|百鳥《ももどり》も
|教《をしへ》の|御子《みこ》の|数《かず》に|入《い》らなむ』
アキス『われとても|玉国別《たまくにわけ》の|御子《みこ》となりぬ
|恵《めぐ》みの|乳《ちち》を|含《ふく》みし|身《み》なれば』
カール『さる|昔《むかし》|猿《さる》が|三匹《さんびき》|飛《と》んで|来《き》て
アヅモス|山《やま》の|使《つかひ》とぞなる』
テク『その|子孫《しそん》|茂《しげ》り|栄《さか》えて|三百《さんびやく》の
|珍《うづ》の|猿《ましら》の|御子《みこ》となりける』
カンナ『|惟神《かむながら》|人《ひと》の|種《たね》をば|地《ち》に|蒔《ま》いて
|青人草《あをひとぐさ》と|育《そだ》て|玉《たま》ひぬ
|草《くさ》も|木《き》も|花《はな》|咲《さ》きみのる|世《よ》の|中《なか》に
|吾《われ》のみ|一人《ひとり》|花《はな》なかるらむ』
ヘール『|初花《はつはな》の|露《つゆ》の|唇《くちびる》|吸《す》はむとて
|驚《おどろ》かされぬ|珍《うづ》の|白狐《びやくこ》に』
チルナ|姫《ひめ》『|咲《さ》くとても|容易《ようい》にチルナ|初花《はつはな》の
|香《かを》りを|千代《ちよ》の|枝《えだ》にとどめて
チルテルの|吾《わ》が|背《せ》の|君《きみ》も|惟神《かむながら》
|目覚《めざ》め|玉《たま》ひし|今日《けふ》の|嬉《うれ》しさ』
ワックス『テルモンの|神《かみ》の|館《やかた》を|追《お》ひ|出《だ》され
|今日《けふ》は|嬉《うれ》しき|春《はる》に|会《あ》ふ|哉《かな》』
ヘルマン『うたかたの|夢《ゆめ》と|消《き》えゆく|吾《わ》が|罪《つみ》は
|皆《みな》|皇神《すめかみ》の|光《ひかり》なりけり』
エキス『|五百笞《いほむち》を|大勢《おほぜい》の|前《まへ》で|加《くは》へられ
|尻《しり》おちつきし|今日《けふ》の|喜《よろこ》び』
エル『ミカエルの|珍《うづ》の|司《つかさ》の|現《あら》はれて
|百《もも》の|罪科《つみとが》|払《はら》ひ|玉《たま》ひぬ』
ハール『|情《なさ》けある|神《かみ》の|司《つかさ》を|疑《うたが》ひて
|海《うみ》に|堕《お》ちたる|人《ひと》もありけり』
ヤッコス『|吾《わ》が|罪《つみ》の|深《ふか》きを|思《おも》ひ|泛《う》かべては
|世《よ》にやすやすと|永《なが》らへぬべき
さりながら|恵《めぐ》みの|深《ふか》き|神司《かむづかさ》
|浮《う》かばせ|玉《たま》ひぬ|命《いのち》|助《たす》けて』
サボール『|情《なさ》けある|神《かみ》の|司《つかさ》の|言《こと》の|葉《は》に
|今《いま》は|怖《おそ》れの|夢《ゆめ》も|醒《さ》めけり』
サーベル|姫《ひめ》『|子《こ》よ|孫《まご》よ|汝《なれ》はこれより|門《かど》に|出《で》て
|神酒《みき》に|浸《ひた》れよ|心《こころ》ゆくまで』
|伊太彦《いたひこ》『|猩々《しやうじやう》の|御子《みこ》に|代《かは》りて|物《もの》|申《まう》さむ
|吾《わ》がたらちねの|深《ふか》き|御恵《みめぐ》み
|今日《けふ》よりはアヅモス|山《さん》に|立《た》ち|帰《かへ》り
|昔《むかし》のままに|神仕《かみづか》へせむ
この|館《やかた》|木々《きぎ》の|茂《しげ》みの|深《ふか》ければ
|千代《ちよ》の|棲処《すみか》になさむとぞ|思《おも》ふ
|人《ひと》の|子《こ》は|畳《たたみ》の|上《うへ》に|騒《さわ》げども
|吾《われ》は|梢《こずゑ》によりて|騒《さわ》がむ
|夜着《よぎ》|一《ひと》つ|箸《はし》|一本《いつぽん》も|要《い》りませぬ
|木々《きぎ》の|木《こ》の|実《み》を|取《と》りて|食《くら》へば
|折々《をりをり》に|酒倉《さかぐら》|開《ひら》きなみなみと
|神酒《みき》を|与《あた》へよ|百《もも》の|御子《みこ》らに』
バーチル『|吾《われ》は|今《いま》にはかに|御子《みこ》を|得《え》たりけり
|妻《つま》の|御腹《みはら》をからざる|御子《みこ》を』
サーベル|姫《ひめ》『|身体《からたま》はよし|借《か》らずとも|汝《な》が|身魂《みたま》
|吾《われ》に|睦《むつ》びて|生《うま》せ|玉《たま》ひぬ』
バーチル『バーチルと|猩々彦《しやうじやうひこ》の|和合《わがふ》して
|生《う》みし|子《こ》なれば|他人《ひと》の|子《こ》でなし』
|玉国別《たまくにわけ》『いざさらばこれの|宴会《うたげ》を|切《き》りあげて
|神《かみ》の|宮居《みやゐ》に|進《すす》み|詣《まう》でむ』
テク『バーチルの|家《いへ》をば|守《まも》るテク|司《つかさ》
|従《したが》ひ|行《ゆ》かむ|君《きみ》の|背後《しりへ》に』
これより|玉国別《たまくにわけ》は|一同《いちどう》と|共《とも》に、アヅモス|山《さん》の|彼方《あなた》こなたの|谷間《たにあひ》を|跋渉《ばつせう》し、|大峡《おほがひ》|小峡《をがひ》の|木《き》を|数多《あまた》の|杣人《そまびと》に|伐採《ばつさい》せしめ、|手斧《てをの》の|音《おと》|勇《いさ》ましく|宮《みや》の|普請《ふしん》の|木作《きづく》りに|着手《ちやくしゆ》する|事《こと》となつた。|数多《あまた》の|里人《さとびと》をはじめ、チルテルの|部下《ぶか》ならびに|猩々隊《しやうじやうたい》は|昼夜《ちうや》の|別《べつ》なく|喜《よろこ》び|勇《いさ》んで、|木《き》を|伐《き》り、あるひは|運《はこ》び、あるひは|削《けづ》り、|身《み》の|疲《つか》れも|打《う》ち|忘《わす》れて|宮普請《みやぶしん》に|奉仕《ほうし》することとなつた。
(大正一二・四・五 旧二・二〇 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
第二章 |神森《しんしん》〔一五二七〕
アヅモス|山《さん》の|谷《たに》|深《ふか》く  |数多《あまた》の|樵夫《きこり》や|猩々《しやうじやう》を
|引率《いんそつ》なして|三五《あななひ》の  |玉国別《たまくにわけ》の|宣伝使《せんでんし》
|彼方《かなた》こなたと|経巡《へめぐ》りて  |手頃《てごろ》の|良材《りやうざい》|相選《あひえら》び
|山口神《やまぐちがみ》を|祭《まつ》りつつ  |本《もと》と|末《すゑ》とは|山霊《さんれい》に
|供《そな》へまつりて|三《み》つ|栗《ぐり》の  |中《なか》の|幹《みき》をば|伐《き》り|出《い》だし
|珍《うづ》の|宮居《みやゐ》の|材《ざい》となす  グイグイグイと|鋸《のこ》の|音《おと》
チヨンチヨン カンカン|鉞《まさかり》の  |声《こゑ》は|木精《こだま》に|響《ひび》きつつ
|彼方《あなた》こなたに|歌《うた》ふ|声《こゑ》  |猿《ましら》の|勇《いさ》む|怪声《くわいせい》に
さながら|戦場《せんぢやう》のごとくなる  この|光景《くわうけい》を|打《う》ち|眺《なが》め
バーチル|夫婦《ふうふ》は|手《て》を|拍《う》つて  |天国《てんごく》|浄土《じやうど》の|建設《けんせつ》と
|祝《いは》ひ|歌《うた》ふぞ|目出《めで》たけれ。
バーチル『|心《こころ》もスマの|神《かみ》の|里《さと》  アヅモス|山《ざん》の|南麓《なんろく》に
|遠《とほ》き|神代《かみよ》の|昔《むかし》より  |里庄《りしやう》の|君《きみ》と|仕《つか》へつつ
バラモン|神《がみ》を|尊敬《そんけい》し  |神《かみ》の|司《つかさ》を|兼《か》ねながら
|神代《かみよ》ながらの|吾《わ》が|家《いへ》を  |守《まも》り|来《き》たりし|目出《めで》たさよ
わが|垂乳根《たらちね》のバーチクは  |尊《たふと》き|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みに
いつしか|慣《な》れて|天王《てんわう》の  |森《もり》に|鎮《しづ》まる|神様《かみさま》を
いとおろそかに|思《おも》ひなし  |神《かみ》の|使《つかひ》の|猩々彦《しやうじやうひこ》
|命《いのち》をとりて|神罰《しんばつ》を  |蒙《かかぶ》り|遂《つひ》に|果敢《はか》なくも
|天寿《てんじゆ》|短《みじか》く|失《う》せたまふ  |猩々《しやうじやう》の|彦《ひこ》の|魂《たましひ》は
わが|肉体《からたま》を|宮《みや》となし  |天王《てんわう》の|森《もり》の|神殿《しんでん》を
いと|新《あたら》しく|改築《かいちく》し  |底津岩根《そこついはね》に|宮柱《みやばしら》
|太敷《ふとし》く|建《た》てて|垂乳根《たらちね》の  |犯《をか》せし|罪《つみ》を|宣直《のりなほ》し
アヅモス|山《さん》の|比丘《びく》となり  |堅磐常磐《かきはときは》に|仕《つか》へよと
|猩々《しやうじやう》の|彦《ひこ》の|魂《たましひ》が  |吾《われ》に|厳《きび》しく|宣《の》り|伝《つた》ふ
|玉国別《たまくにわけ》の|許《ゆる》し|得《え》て  |神代《かみよ》ながらに|刃物《はもの》をば
|入《い》れしことなき|神《かみ》の|森《もり》  |喜《よろこ》び|勇《いさ》みて|伐採《ばつさい》し
|宮《みや》の|柱《はしら》と|仕《つか》へゆく  |今日《けふ》の|生日《いくひ》の|目出《めで》たさよ
アナンヰ゛イクラー(無量力)の|神力《しんりき》を  |各《おの》も|各《おの》もに|受《う》けつぎし
アバーヰクラーミン(大力)の|荒男《あらをとこ》  |朝《あさ》も|早《はや》ふから|現《あら》はれて
|捻鉢巻《ねぢはちまき》の|大活動《だいくわつどう》  アニクシブタヅラ(不休息)の|大車輪《だいしやりん》
|汗《あせ》をタラタラ|流《なが》しつつ  |励《いそし》む|見《み》れば|惟神《かむながら》
|神《かみ》の|仕組《しぐみ》と|知《し》られけり  |玉国別《たまくにわけ》はトライロー・キャボクラー(越三界)
|天下《てんか》に|稀《まれ》な|宣伝使《せんでんし》  マイトレーヤ(弥勒)の|神国《しんこく》を
|築《きづ》かむために|産土《うぶすな》の  |館《やかた》に|現《あ》れます|瑞御魂《みづみたま》
ライトブラナ(月光)の|命《めい》を|受《う》け  ブールナ・チャンドラ(満月)の|照《て》り|渡《わた》る
これの|神山《みやま》に|現《あ》れまして  ニッテヨーデユクタ(常精進)|励《はげ》みつつ
|神《かみ》の|柱《はしら》を|一々《いちいち》に  |選《え》りぬき|玉《たま》ふ|雄々《をを》しさよ
|朝日《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも  |月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも
たとへ|大地《だいち》は|沈《しづ》むとも  |誠《まこと》|一《ひと》つの|神《かみ》の|道《みち》
いかなる|曲《まが》も|恐《おそ》れむや  |神《かみ》の|依《よ》さしのこの|宮《みや》は
|天国《てんごく》|浄土《じやうど》のマハーヰ゛ユーバ(大荘厳)  |宮居《みやゐ》のごとく|築《きづ》かれて
|弥《いや》|永久《とこしへ》に|世《よ》の|人《ひと》を  |救《すく》はせ|玉《たま》ふことならむ
|吾《われ》はこれより|朝夕《あさゆふ》に  |神《かみ》の|教《をしへ》のスダルマ(善法)や
シキン(妙識)を|清《きよ》く|身《み》に|稟《う》けて  |青人草《あをひとぐさ》はいふも|更《さら》
|禽獣虫魚《きんじうちうぎよ》に|至《いた》るまで  マイトレーヤ(弥勒)の|心《こころ》もて
|救《すく》ひ|助《たす》けむ|惟神《かむながら》  |神《かみ》に|誓《ちか》ひて|願《ね》ぎまつる
|吾《わ》が|魂《たましひ》はアヴドヤー(無明)  |苦集滅道《くしふめつだう》の|真諦《しんたい》を
|誤《あやま》り|忘《わす》れ|漁《すなど》りに  |心《こころ》を|傾《かたむ》けゐたりしが
|神《かみ》の|試練《しれん》を|与《あた》へられ  |今《いま》は|全《まつた》く|新人《しんじん》と
|生《うま》れ|変《か》はりし|嬉《うれ》しさよ  |三五教《あななひけう》の|御教《みをしへ》を
|心《こころ》を|清《きよ》めて|体得《たいとく》し
サムダヤ(集聖諦)ヂフカ(苦し聖諦)ニローザ(滅聖諦)マール(道聖諦)が|四聖諦《しせいたい》
|世《よ》の|人々《ひとびと》に|説《と》き|諭《さと》し  |物質的《ぶつしつてき》に|宝《たから》をば
|残《のこ》らず|社会《しやくわい》に|奉還《ほうくわん》し  |貧富貴賤《ひんぷきせん》の|区別《けじめ》なく
|神《かみ》のまにまに|此《こ》の|世《よ》をば  |嬉《うれ》しく|楽《たの》しく|渡《わた》るべし
|清浄無垢《しやうじやうむく》の|猩々彦《しやうじやうひこ》  |猩々姫《しやうじやうひめ》は|惟神《かむながら》
|神《かみ》に|仕《つか》へてその|体《からだ》  |一《ひと》つを|守《まも》るばかりにて
|此《こ》の|世《よ》の|宝《たから》を|身《み》に|持《も》たず  |天地《てんち》の|恵《めぐ》みを|喜《よろこ》びて
|此《こ》の|世《よ》に|生《い》きて|栄《さか》えゆく  |空《そら》|飛《た》つ|鳥《とり》も|山《やま》に|棲《す》む
|百《もも》の|獣《けもの》も|鱗族《うろくづ》も  |野辺《のべ》の|草木《くさき》に|至《いた》るまで
|決《けつ》して|宝《たから》を|私有《しいう》せぬ  それゆゑ|心《こころ》を|清《きよ》らけく
|天地《てんち》|自然《しぜん》の|法則《はふそく》に  |従《したが》ひまつり|永久《とこしへ》の
|恵《めぐ》みの|春《はる》を|喜《よろこ》びて  |此《こ》の|世《よ》を|暮《くら》す|健気《けなげ》さよ
これを|思《おも》へば|吾々《われわれ》は  |巨万《きよまん》の|富《とみ》を|私有《しいう》して
|天地《てんち》の|恵《めぐ》みを|独占《どくせん》し  |里庄《りしやう》となりて|世《よ》の|人《ひと》に
|誇《ほこ》りゐたりし|苦《くる》しさよ  いざこれよりは|一切《いつさい》の
|執着心《しふちやくしん》を|払拭《ふつしき》し  サーベル|姫《ひめ》と|睦《むつ》まじく
アヅモス|山《さん》に|草庵《さうあん》を  |結《むす》びて|移《うつ》り|住《す》みながら
|父祖《ふそ》の|伝《つた》へし|邸《やしき》をば  |里人《さとびと》たちが|身心《しんしん》の
|疲労《つかれ》を|休《やす》むる|園《その》となし  せめては|父祖《ふそ》の|罪科《つみとが》を
|贖《あがな》ひまつりサルワ゛ロー  カターツ・バドラヴオード
ワ゛エーカブラチユツチールナ(度一切世間苦悩)|神業《しんげふ》に
|仕《つか》へまつらむ|惟神《かむながら》  |守《まも》らせ|玉《たま》へと|大神《おほかみ》の
|御前《みまへ》に|慴伏《ひれふ》し|願《ね》ぎ|奉《まつ》る  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|御霊《みたま》|幸《さち》はへましませよ』
テクは|捻鉢巻《ねぢはちまき》をなし、|数多《あまた》の|荒男《あらをとこ》の|樵夫《きこり》を|監督《かんとく》しながら|歌《うた》ひ|始《はじ》めた。
『|世《よ》はおひおひと|更《あらた》まり  |専制制度《せんせいせいど》を|破壊《はくわい》して
|新《あたら》し|人《ひと》の|御世《みよ》となり  ソシアリズムやコンミュニズム
|海《うみ》の|内外《うちと》に|擡頭《たいとう》し  |天地《てんち》の|雲行《くもゆき》|一変《いつぺん》し
|天国《てんごく》|浄土《じやうど》を|地《ち》の|上《うへ》に  |築《きづ》かむ|時《とき》とぞなりにけり
|此《こ》の|家《や》の|主《あるじ》バーチルは  |世界《せかい》|思想《しさう》の|傾向《けいかう》を
|早《はや》くも|悟《さと》り|玉《たま》ひつつ  ソシアリズムを|発揮《はつき》して
|巨万《きよまん》の|富《とみ》を|里人《さとびと》に  いと|平等《べうどう》に|分与《ぶんよ》しつ
|上下《しようか》|睦《むつ》びて|世《よ》を|送《おく》る  |至誠《しせい》を|発揮《はつき》し|玉《たま》ひけり
これぞ|全《まつた》く|皇神《すめかみ》の  |平等愛《びやうどうあい》の|発現《はつげん》か
ただしは|人《ひと》の|覚醒《かくせい》か  もしくば|時代《じだい》の|賜物《たまもの》か
|実《げ》にも|尊《たふと》き|限《かぎ》りなり  もしもこのまま|頑《ぐわん》として
|昔《むかし》のままに|地《ち》の|上《うへ》の  |宝《たから》を|独占《どくせん》するならば
|四民《しみん》の|怨府《えんぷ》となり|果《は》てて  |如何《いか》なる|凶事《きようじ》が|見舞《みま》ふやら
|図《はか》り|難《がた》なき|正念場《しやうねんば》  よくも|改心《かいしん》なされました
これこそ|私《わたし》の|御主人《ごしゆじん》だ  アナーキズムやニヒリスト
その|外《ほか》|百《もも》の|主義《しゆぎ》|党派《たうは》  |現《あら》はれ|来《き》たるを|防止《ばうし》して
この|美《うる》はしき|天地《あめつち》を  |完全《くわんぜん》|無事《ぶじ》に|開《ひら》きつつ
マイトレーヤ(弥勒)の|神《かみ》の|世《よ》を  |楽《たの》しみ|祝《いは》ふ|魁《さきがけ》と
|現《あら》はれたまひし|猩々彦《しやうじやうひこ》  |猩々《しやうじやう》の|姫《ひめ》の|真心《まごころ》を
|世人《よびと》に|代《か》はり|慎《つつし》みて  ここに|感謝《かんしや》し|奉《たてまつ》る
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊《みたま》の|恩頼《ふゆ》の|尊《たふと》さを
|仰《あふ》ぎ|敬《うやま》ひ|祝《ほ》ぎ|奉《まつ》る』
|三千彦《みちひこ》『|真善美愛《しんぜんびあい》の|天地《あめつち》の  |中《なか》に|生《うま》れし|諸々《もろもろ》は
ただ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |尊《たふと》き|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みに
|浸《ひた》りて|清《きよ》く|栄《さか》えゆく  アヅモス|山《さん》の|森林《しんりん》は
|遠《とほ》き|神代《かみよ》の|昔《むかし》より  |刃物《はもの》を|入《い》れぬ|聖場《せいぢやう》と
|伝《つた》へ|来《き》たりし|神《かみ》の|山《やま》  |木々《きぎ》の|梢《こずゑ》は|蒼々《さうさう》と
|常磐堅磐《ときはかきは》に|色《いろ》|深《ふか》く  |花《はな》も|実《み》もある|太柱《ふとばしら》
|鷲《わし》が|巣《す》を|組《く》む|鷹《たか》が|棲《す》む  パインの|枝《えだ》には|田鶴《たづ》|棲《すぐ》ふ
|昼目《ひるめ》の|見《み》えぬ|梟鳥《ふくろどり》  |木菟《みみづく》までが|集《あつ》まりて
|千代《ちよ》の|棲所《すみか》と|定《さだ》めたる  |彼方《あなた》こなたの|木《き》の|幹《みき》を
|忌鋤《いむすき》|忌斧《いむをの》|打《う》ち|揮《ふる》ひ  |伐《き》り|倒《たふ》しゆく|勢《いきほ》ひに
|一度《いちど》は|驚《おどろ》き|逃《に》げ|狂《くる》ふ  その|有様《ありさま》を|見《み》るにつけ
|同情《どうじやう》の|涙《なみだ》|禁《きん》じ|得《え》ず  さはさりながら|大神《おほかみ》の
|珍《うづ》の|社《やしろ》が|建《た》つなれば  |百鳥《ももとり》|千鳥《ちどり》|勇《いさ》み|立《た》ち
もとの|如《ごと》くに|安々《やすやす》と  |天授《てんじゆ》の|恵《めぐ》みを|楽《たの》しみて
この|天国《てんごく》に|永久《とこしへ》に  |安《やす》く|月日《つきひ》を|送《おく》るべし
|今《いま》まで|姿《すがた》を|隠《かく》したる  |猩々彦《しやうじやうひこ》の|魂《たま》の|裔《すゑ》
|三百三十三体《さんびやくさんじふさんたい》の  |眷族《けんぞく》さまは|又《また》もとの
|千代《ちよ》の|棲処《すみか》に|帰《かへ》りまし  |梢《こずゑ》を|渡《わた》り|跳《と》び|越《こ》えて
キヤツキヤツキヤツと|勇《いさま》しく  |歓喜《くわんき》の|声《こゑ》を|張《は》り|上《あ》げて
|珍《うづ》の|御子《みこ》をば|数《かず》|多《おほ》く  |幾千万人《いくせんまんにん》|生《う》みたらし
|清浄無垢《しやうじやうむく》の|神国《かみぐに》と  |歓喜《くわんき》の|花《はな》の|開《ひら》くなる
|常世《とこよ》の|春《はる》に|遇《あ》ふならむ  |勇《いさ》めよ|勇《いさ》め|里人《さとびと》よ
|祝《いは》へよ|祝《いは》へ|猩々《しやうじやう》さま  |三五教《あななひけう》もバラモンの
|教《をしへ》の|司《つかさ》も|信徒《まめひと》も  |心《こころ》の|塵《ちり》を|打《う》ち|払《はら》ひ
|睦《むつ》び|親《した》しみ|永久《とこしへ》に  |神《かみ》の|恵《めぐ》みを|感謝《かんしや》して
|苦行《くぎやう》|外道《げだう》の|境域《きやうゐき》を  |今日《けふ》より|全《まつた》く|脱却《だつきやく》し
|嬉《うれ》しく|楽《たの》しく|此《こ》の|世《よ》をば  |渡《わた》らせ|玉《たま》へ|惟神《かむながら》
|珍《うづ》の|教《をしへ》の|三千彦《みちひこ》が  |清《きよ》き|心《こころ》を|現《あら》はして
|神《かみ》の|御前《みまへ》に|詳細《まつぶさ》に  |世《よ》の|行末《ゆくすゑ》の|安全《あんぜん》を
|畏《かしこ》み|畏《かしこ》み|願《ね》ぎ|奉《まつ》る  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|神代《かみよ》の|姿《すがた》ぞ|尊《たふと》けれ』
アヅモスの|山《やま》は|尊《たふと》きスメール(須弥仙)と
やがて|輝《かがや》く|四方《よも》の|国々《くにぐに》
(大正一二・四・五 旧二・二〇 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
第三章 |瑞祥《ずゐしやう》〔一五二八〕
|三千世界《さんぜんせかい》の|梅《うめ》の|花《はな》  |蓮《はちす》の|花《はな》も|一時《いちどき》に
|開《ひら》いて|香《かを》る|世《よ》となりぬ  |厳《いづ》の|霊《みたま》の|大御神《おほみかみ》
|瑞《みづ》の|霊《みたま》の|大御神《おほみかみ》  |須弥仙山《しゆみせんざん》の|頂《いただき》に
|現《あら》はれまして|大宇宙《だいうちう》  |一切万事《いつさいばんじ》を|統《す》べたまふ
マイトレーヤ(弥勒)の|世《よ》となりぬ  そもそも|須弥《しゆみ》の|頂《いただき》は
|梵語《ぼんご》のメールクータなり  |妙高山《めうかうざん》と|翻訳《ほんやく》し
またもスメールと|称《とな》ふなり  その|東方《とうはう》は|黄金《わうごん》の
|宝《たから》を|蔵《ぞう》し|南方《なんぱう》は  |玻璃《はり》|西方《せいはう》は|瑞御霊《みづみたま》
|白銀宝珠《はくぎんほつしゆ》|所成《しよじやう》せり  |北方《ほくぽう》|瑪瑙《めなう》の|宝《たから》|成《な》り
|連山群峰《れんざんぐんぽう》|圧《あつ》しつつ  |大海中《おほわだなか》に|突出《とつしゆつ》し
|雲《くも》を|抜《ぬ》き|出《で》てその|高《たか》さ  |三百三十六里《さんびやくさんじふろくり》あり
|天地《てんち》を|造《つく》りたまひたる  |元津柱《もとつはしら》の|大神《おほかみ》の
|常磐堅磐《ときはかきは》の|御住所《みあらか》と  |天《てん》|人《ひと》ともに|尊敬《そんけい》し
|安明《あんめい》|妙光《めうくわう》|金剛山《こんがうざん》  |好光山《かうくわうざん》と|称《とな》へらる
これをば|翻訳《ほんやく》する|時《とき》は  |霊山会場《れいざんゑぢやう》の|蓮華台《れんげだい》
|聖《きよ》き|丘陵《きうりよう》の|意味《いみ》となる  アヅモス|山《さん》も|三五《あななひ》の
|尊《たふと》き|神《かみ》を|祭《まつ》りてゆ  |須弥仙山《しゆみせんざん》と|称《とな》へられ
|百《もも》の|神《かみ》たち|勇《いさ》みたち  |集《つど》ひたまへる|霊場《れいぢやう》と
|定《さだ》まりたるぞ|尊《たふと》けれ  |神《かみ》の|恵《めぐ》みに|浴《よく》したる
この|里人《さとびと》は|村肝《むらきも》の  |心《こころ》を|清浄潔白《しやうじやうけつぱく》に
|濁《にご》り|汚《けが》れの|跡《あと》もなく  |霊耳《れいじ》を|開《ひら》きて|天人《てんにん》が
|現《あら》はれ|来《き》たり|舞《ま》ひ|遊《あそ》ぶ  |三千世界《さんぜんせかい》の|声《こゑ》を|聞《き》き
|象馬牛車《ざうめぎうしや》や|鐘鈴《しようれい》の  |微妙《びめう》の|楽《がく》に|耳《みみ》|澄《す》ませ
|琴瑟簫笛《きんしつせうてき》|勇《いさ》ましく  |清《きよ》き|涼《すず》しき|歌《うた》の|声《こゑ》
|百人《ももひと》たちの|歓声《くわんせい》は  |天地《てんち》も|揺《ゆ》るぐばかりなり
|数多《あまた》のエンゼル|下《くだ》り|来《き》て  |楽《がく》をば|奏《そう》し|玄妙《げんめう》の
|唱歌《しやうか》の|声《こゑ》は|澄《す》み|渡《わた》る  |老若男女《らうにやくなんによ》はいふも|更《さら》
|海川山野《うみかはやまぬ》|谷々《たにだに》の  |空《そら》|駈《か》けりゆく|祥鳥《しやうてう》は
|迦陵頻伽《かりようびんが》か|鳳凰《ほうわう》|孔雀《くじやく》  |鶴《つる》|鷲《わし》|鷹《たか》や|鶯《うぐひす》の
その|啼声《なきごゑ》は|天地《あめつち》に  |親和《しんわ》し|来《き》たり|天国《てんごく》を
|地上《ちじやう》に|建《た》てしごとくなり  |地獄《ぢごく》に|起《お》こる|大苦悶《だいくもん》
|阿鼻叫喚《あびけうくわん》の|声《こゑ》もなく  |餓鬼《がき》の|飢渇《きかつ》の|叫《さけ》びなく
|飲食《おんじき》|求《もと》むる|声《こゑ》もせず  |曲《まが》の|阿修羅《あしゆら》が|大海《だいかい》の
|傍《ほとり》に|住《す》みて|自《おのづか》ら  |囁《ささや》き|呪《のろ》ふ|影《かげ》も|無《な》し
|皆《みな》|一切《いつさい》に|神《かみ》の|教《のり》  |喜《よろこ》び|勇《いさ》みて|聴聞《ちやうもん》し
|人《ひと》と|獣《けもの》の|分《わか》ちなく  |喜《よろこ》び|勇《いさ》むぞ|尊《たふと》けれ。
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |真善美愛《しんぜんびあい》の|神心《かみごころ》
いよいよここに|顕現《けんげん》し  |天地《てんち》に|轟《とどろ》く|音彦《おとひこ》の
|玉国別《たまくにわけ》の|神徳《しんとく》は  |三千世界《さんぜんせかい》の|天使《エンゼル》ぞと
|仰《あふ》がぬ|者《もの》こそなかりけり  |朝日《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも
|月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも  |清浄無垢《しやうじやうむく》の|御霊《みたま》をば
|照《て》らして|渡《わた》る|世《よ》の|中《なか》に  いかでか|曲《まが》の|襲《おそ》はむや
アヅモス|山《さん》の|聖場《せいぢやう》は  |須弥仙山《しゆみせんざん》の|光景《くわうけい》を
|完全《うまら》に|委曲《つばら》に|現出《げんしゆつ》し  |三千世界《さんぜんせかい》の|鎮《しづ》めぞと
|八千万劫《はちせんまんがふ》の|末《すゑ》までも  |照《て》り|輝《かがや》くぞ|目出《めで》たけれ
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |神《かみ》の|御言《みこと》を|蒙《かうむ》りて
|須弥仙山《しゆみせんざん》に|譬《たと》ふべき  |蓮華台上《れんげだいじやう》の|存在地《そんざいち》
|綾《あや》の|聖地《せいち》を|後《あと》にして  |神洲《しんしう》|最初《さいしよ》の|鎮台《ちんだい》と
|言《い》ひ|伝《つた》へたる|大山《だいせん》を  |救《すく》ひの|船《ふね》に|乗《の》りながら
|眺《なが》めてここに|遠《とほ》つ|世《よ》の  |生物語《いくものがたり》|述《の》べて|行《ゆ》く。
|時《とき》しもあれや|聖地《せいち》より  |此《こ》の|世《よ》の|泥《どろ》を|清《きよ》むてふ
【|二代《にだい》|澄子《すみこ》】と【|仁斎《じんさい》】|氏《し》  |木花姫《このはなひめ》の|御再来《ごさいらい》
|御霊《みたま》の|守《まも》る|肉《にく》の|宮《みや》  |千代《ちよ》の|固《かた》めの|経綸《けいりん》に
はるばる|来《き》たる|松林《まつばやし》  |中《なか》に|立《た》ちたる|温泉場《をんせんば》
|浜屋《はまや》の|二階《にかい》に|対坐《たいざ》して  |役員《やくゐん》|信徒《しんと》もろもろと
|三月三日《さんぐわつみつか》の|瑞御霊《みづみたま》  |五月五日《ごぐわついつか》の|厳《いづ》の|御霊《みたま》
|三五《さんご》の|月《つき》の|光《ひかり》をば  いと|円満《ゑんまん》に|照《て》らさむと
|互《たが》ひに|誠《まこと》を|語《かた》り|合《あ》ひ  |誓《ちか》ひを|立《た》てし|目出《めで》たさよ
|堅磐常磐《かきはときは》にいや【|加藤《かとう》】  いや【|明《あき》】らけく|日月《じつげつ》の
|恵《めぐ》みを|祝《いは》ふ|神《かみ》の|書《ふみ》  |写《うつ》すも|尊《たふと》き【|加藤《かとう》|明子《はるこ》】
|松《まつ》の|千年《ちとせ》はまだ|愚《おろ》か  |万年筆《まんねんひつ》も|健《すこや》かに
|紫檀《したん》の|机《つくゑ》に|打《う》ち|向《む》かひ  |千秋万歳《せんしうばんざい》|誌《しる》しおく
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |神《かみ》の|恵《めぐ》みの|尊《たふと》さよ。
|朝日《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも  |月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも
たとへ|大地《だいち》は|沈《しづ》むとも  |星《ほし》は|空《そら》より|落《お》つるとも
|日本海《につぽんかい》は|涸《か》るるとも  |神《かみ》の|伝《つた》へしこの|聖書《せいしよ》
|千代《ちよ》も|八千代《やちよ》も|動《うご》かまじ  |厳《いづ》の|御霊《みたま》の|命令《みこと》もて
|空《そら》|漕《こ》ぎ|渡《わた》る|方舟《はこぶね》に  |心臓《ハート》に|鼓《つづみ》を|打《う》たせつつ
|科戸《しなど》の|神《かみ》や|水分《みくまり》の  |神《かみ》の|弄《すさみ》のダンスをば
|面白《おもしろ》|嬉《うれ》しく|眺《なが》めつつ  |心《こころ》も|清《きよ》く|平《たひ》らけく
|神《かみ》のまにまに|進《すす》み|行《ゆ》く。
スメールの|山《やま》の|麓《ふもと》に|二柱《ふたはしら》
|並《なら》びて|世《よ》をば|開《ひら》く|今日《けふ》かな
|世《よ》の|人《ひと》を|皆《みな》|生《い》かすてふ|温泉場《をんせんば》
|救《すく》ひの|船《ふね》に|棹《さを》さし|進《すす》む
|天地《あめつち》の|真純《ますみ》の|彦《ひこ》の|物語《ものがた》り
|此《この》|世《よ》を【|澄子《すみこ》】の|司《つかさ》|来《き》たれる
マイトレーヤ|御代《みよ》|早《はや》かれと【|松村《まつむら》】の 松村真澄
【|真澄《ますみ》】の|彦《ひこ》の|笑《え》み|栄《さか》えつつ
ミロクの|世《よ》|一日《ひとひ》も|早《はや》き【|北村《きたむら》】の 北村隆光
|月日《つきひ》の【|隆《たか》】き【|光《ひかり》】|待《ま》ちつつ
いとた【|加《か》】き【|藤《ふぢ》】の|御山《みやま》の|神霊《かむみたま》 加藤明子
【|明《あか》】したまひぬ|常闇《とこやみ》の|世《よ》を
|世《よ》を|救《すく》ふ|神《かみ》の【|出口《でぐち》】の【|瑞月《ずゐげつ》】が 出口瑞月
【|真純《ますみ》】の|空《そら》に|輝《かがや》き|渡《わた》る
マハースターマブラーブタ(大勢至)マンヂュシュリ(文珠師利)
アバローキテーシュワ゛ラ(観世音)|尊《たふと》き
スーラヤ(日天子)やチャンドラデーワブトラ(月天子)やサマンタガン
|守《まも》らせ|給《たま》へ|瑞《みづ》の|御霊《みたま》を
ダルタラーストラ・マハーラーヂャ(東方持国天王)ヰ゛ルーダカ(南方増長天王)
ヰ゛ルーバークサ(西方広目天王)ワ゛イスラワナ(北方多聞天王)
|守《まも》らせ|玉《たま》へこれの|教《をしへ》を
(大正一二・四・五 旧二・二〇 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
|附記《ふき》
|本日《ほんじつ》は|暴風雨《ばうふうう》|烈《はげ》しく|怒濤《どたう》の|声《こゑ》に|妨《さまた》げられ|是《これ》にて|口述《こうじゆつ》|中止《ちゆうし》せり。
第四章 |木遣《きやり》〔一五二九〕
|霊山会場《れいざんゑぢやう》のスメール|山《さん》  |天《てん》を|封《ふう》じて|鬱蒼《うつさう》と
|立《た》ち|並《なら》びたる|老木《らうぼく》を  |大峡《おほがひ》|小峡《をがひ》に|求《もと》めつつ
|宮《みや》の|柱《はしら》を|造《つく》らむと  |玉国別《たまくにわけ》の|宣伝使《せんでんし》
|数多《あまた》の|信徒《まめひと》ともなひて  |昼夜《ちうや》を|分《わか》たず|伐採《ばつさい》に
いそしみ|励《はげ》むぞ|勇《いさ》ましき。
アンチーは|采配《さいはい》を|振《ふ》つて|木遣歌《きやりうた》を|唄《うた》ひ、|彼方《あなた》こなたの|谷間《たにあひ》より、|作事場《さくじば》に|向《む》かつて|運搬《うんぱん》を|始《はじ》めかけたり。
『|天《てん》は|清浄《しやうじやう》|地《ち》|清浄《しやうじやう》  |人《ひと》の|心《こころ》も|清浄《しやうじやう》に
|猩々《しやうじやう》の|宮《みや》を|造《つく》らむと  スマの|村人《むらびと》|打《う》ち|揃《そろ》ひ
|御酒《みき》に|心《こころ》を|浮《う》かませつ  |汗《あせ》を|絞《しぼ》りて|木《き》を|運《はこ》ぶ
ヨーイヨーイ ヨーイトセ  ここは|名《な》におふキヨの|湖《うみ》
|南《みなみ》に|連《つら》なるアヅモスの  |神《かみ》の|集《つど》ひの|霊場《れいぢやう》と
|数千年《すうせんねん》の|昔《むかし》より  |世《よ》に|響《ひび》きたるスメールの
|清浄無垢《しやうじやうむく》の|鎮守《ちんじゆ》なり  |旭《あさひ》は|空《そら》に|煌々《きらきら》と
|輝《かがや》きわたり|西《にし》に|入《い》る  |旭《あさひ》の|直射《たださ》す|神《かみ》の|森《もり》
|冬日《ゆふひ》の|日照《ひて》らす|珍《うづ》の|山《やま》  この|頂《いただき》に|一本《ひともと》の
|世界《せかい》に|稀《まれ》な|樟《くす》の|木《き》は  |囲《まは》りは|三百三十丈《さんびやくさんじふぢやう》
|幹《みき》の|高《たか》さは|五百丈《ごひやくぢやう》  |梢《こずゑ》は|四方《よも》に|拡《ひろ》がりて
|三百三十三体《さんびやくさんじふさんたい》の  |眷族様《けんぞくさま》の|御住所《おんすみか》
ヨーイトセー ヨーイトセー  |鷹《たか》も|梟《ふくろ》も|荒鷲《あらわし》も
そのほか|百《もも》の|鳥翼《とりつばさ》  |常磐堅磐《ときはかきは》に|棲《す》みながら
|互《たが》ひに|睦《むつ》び|親《した》しみて  |他《た》をば|犯《をか》さず|太平《たいへい》の
|目出《めで》たき|証《しるし》を|昔《むかし》より  |示《しめ》し|来《き》たりし|長閑《のど》けさよ
ヨーイトセー ヨーイトセー  バラモン|天《てん》を|斎《まつ》りたる
|猩々《しやうじやう》の|宮《みや》も|永年《ながとし》の  |雨《あめ》と|風《かぜ》とに|曝《さら》されて
|棟《むね》は|雨《あめ》もり|梁《うつばり》は  |歪《ゆが》みて|柱《はしら》は|虫《むし》がくひ
|見《み》るも|無残《むざん》な|有様《ありさま》と  |時《とき》の|力《ちから》か|知《し》らねども
|荒廃《くわうはい》したるぞ|歎《うた》てけれ  バーチルさまが|改《あらた》めて
|神《かみ》の|教《をしへ》を|遵奉《じゆんぽう》し  この|聖場《せいぢやう》に|目出《めで》たくも
|三五教《あななひけう》の|珍《うづ》の|宮《みや》  バラモン|教《けう》の|宮殿《きうでん》を
|新《あら》たに|建造《けんざう》ましまして  |三千世界《さんぜんせかい》の|鎮台《ちんだい》と
まつらせ|玉《たま》ふぞ|有難《ありがた》き  ヨーイトセー ヨーイトセー
|旭《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも  |月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも
たとへ|大地《だいち》は|沈《しづ》むとも  アヅモス|山《さん》の|霊場《れいぢやう》は
|常磐堅磐《ときはかきは》に|変《か》はらまじ  |遠《とほ》き|神代《かみよ》の|昔《むかし》より
|天足《あだる》の|彦《ひこ》や|胞場姫《えばひめ》が  |霊《たま》の|御末裔《みすゑ》と|現《あ》れませる
タクシャカ|竜王《りうわう》の|出生地《しゆつしやうち》  |見《み》るも|厳《いかめ》し|九頭竜《くづりう》の
その|猛勢《まうせい》は|見《み》る|人《ひと》の  |眼《まなこ》を|潰《つぶ》し|毒《どく》を|吐《は》き
|人《ひと》の|命《いのち》を|取《と》り|喰《くら》ふ  その|悪業《あくごふ》を|懲《きた》めむと
|高天原《たかあまはら》に|現《あ》れませる  |月照彦《つきてるひこ》のエンゼルが
|厳《いづ》の|言霊《ことたま》|打《う》ち|出《い》だし  この|霊場《れいぢやう》の|岩《いは》が|根《ね》に
|封《ふう》じおきしと|伝《つた》へたる  |世界《せかい》に|名高《なだか》き|地点《ちてん》なり
|十万年《じふまんねん》のその|間《あひだ》  |心《こころ》を|鍛《きた》へ|魂《たま》を|錬《ね》り
|清浄無垢《しやうじやうむく》の|霊身《れいしん》に  |立《た》ち|直《なほ》りたる|暁《あかつき》は
またもエンゼル|現《あら》はれて  タクシャカ|竜王《りうわう》を|救《すく》ひ|出《だ》し
|五風十雨《ごふうじふう》の|調節《てうせつ》を  |守《まも》らせ|玉《たま》ふ|御誓《おんちか》ひ
この|竜王《りうわう》の|永久《とこしへ》に  |地底《ちてい》に|潜《ひそ》み|在《ま》す|限《かぎ》り
|荒風《あらかぜ》すさび|大雨《おほあめ》は  |十日《とをか》|二十日《はつか》と|降《ふ》りしきり
|地上《ちじやう》に|住《す》める|人畜《じんちく》や  |草木《くさき》の|片葉《かきは》に|至《いた》るまで
この|苦《くる》しみは|癒《い》えざらむ  ヨーイトセー ヨーイトセ
|三五教《あななひけう》の|宣伝使《せんでんし》  |月照彦《つきてるひこ》の|流《なが》れをば
|汲《く》ませ|玉《たま》へる|玉国別《たまくにわけ》の  |地上《ちじやう》のエンゼル|今《いま》ここに
|現《あら》はれませしを|幸《さいは》ひに  |天地《てんち》を|浄《きよ》め|澄《す》ますてふ
|天津祝詞《あまつのりと》や|神言《かみごと》を  |宇宙《うちう》の|神霊《しんれい》に|奏上《そうじやう》し
|千代《ちよ》に|八千代《やちよ》に|封《ふう》じたる  これの|竜王《りうわう》を|速《すみ》やかに
|救《すく》はせ|玉《たま》へば|国人《くにびと》は  いかに|喜《よろこ》ぶことならむ
|五穀《ごこく》は|稔《みの》り|草《くさ》や|木《き》の  |花《はな》の|色香《いろか》も|麗《うるは》しく
|実《みの》りも|殊《こと》に|豊《ゆた》やかに  |地上《ちじやう》の|生物《せいぶつ》|一切《いつさい》は
|鼓腹撃壌《こふくげきじやう》|神国《しんこく》の  |真善美愛《しんぜんびあい》の|祥徴《しやうちよう》を
|堅磐常磐《かきはときは》に|楽《たの》しまむ  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|御霊《みたま》の|恩頼《ふゆ》を|願《ね》ぎ|奉《まつ》る  ヨーイトセー ヨーイトセ
|三千世界《さんぜんせかい》の|梅《うめ》の|花《はな》  |一度《いちど》に|開《ひら》く|蓮華花《はちすばな》
スメール|山《さん》と|聞《き》こえたる  |自転倒島《おのころじま》の|高原地《かうげんち》
|天教山《てんけうざん》に|現《あ》れませる  |木花姫《このはなひめ》の|御守護《おんまもり》
いよいよ|茲《ここ》に|現《あら》はれて  |暗《やみ》に|包《つつ》みしスマの|里《さと》
|芽出《めで》たく|日出《ひので》の|御代《みよ》となり  |神《かみ》の|光《ひかり》を|朝夕《あさゆふ》に
|歓《えら》ぎ|楽《たの》しむ|世《よ》とならむ  |勇《いさ》めよ|勇《いさ》め|里人《さとびと》よ
ヨーイトセー ヨーイトセ  |幾千年《いくせんねん》も|荒金《あらがね》の
|土《つち》に|埋《うづ》もれ|石《いし》となる  この|楠《くすのき》の|良材《りやうざい》は
|神《かみ》の|御代《みよ》をば|永久《とこしへ》に  |不変不動《ふへんふどう》と|献《たてまつ》る
|厳《いづ》の|恵《めぐ》みの|祥徴《しやうちよう》か  この|楠《くすのき》の|重量《ぢうりやう》の
ほかに|秀《すぐ》れて|雄々《をを》しきは  |万古不動《ばんこふどう》の|神《かみ》の|代《よ》の
これまた|珍《うづ》の|祥徴《しやうちよう》ぞ  |思《おも》へば|思《おも》へば|有難《ありがた》や
|村人《むらびと》|勇《いさ》みて|曳《ひ》いてくれ  ヨーイトセー ヨーイトセ
この|大木《たいぼく》を|引出《ひきい》だす  |御用《ごよう》に|仕《つか》ふる|人《ひと》びとは
|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|深《ふか》くして  |身体《からだ》|一所《ひととこ》|怪我《けが》もせず
また|草臥《くたび》れぬ|不思議《ふしぎ》さよ  |神《かみ》の|守《まも》りは|目《ま》のあたり
|喜《よろこ》び|勇《いさ》みて|曳《ひ》いてくれ  ヨーイトセー ヨーイトセ
この|宮柱《みやばしら》いや|太《ふと》く  |雲《くも》をつき|出《で》て|立《た》つならば
|千木《ちぎ》|勝男木《かつをぎ》はキラキラと  |黄金《こがね》の|光《ひかり》|輝《かがや》きて
|月《つき》の|御国《みくに》やフサの|国《くに》  カラもヤマトも|一時《いちどき》に
|月日《つきひ》のごとくに|輝《かがや》かむ  アア|勇《いさ》ましや|勇《いさ》ましや
|爺《ぢぢ》も|婆《ばば》も|孫《まご》|伴《つ》れて  |夜《よ》を|日《ひ》についで|日《ひ》の|寄進《きしん》
|夜《よる》も|休《やす》まぬ|夜《よ》の|寄進《きしん》  |人《ひと》の|心《こころ》に|昼夜《ひるよる》の
|区別《くべつ》も|知《し》らぬ|天界《てんかい》の  |花《はな》|咲《さ》く|春《はる》のごとくなり
ヨーイトセー ヨーイトセ』
|伊太彦《いたひこ》『|天津御空《あまつみそら》に|摩訶不思議《まかふしぎ》  |微妙《びめう》の|音楽《おんがく》|聞《き》こえ|来《く》る
|高天原《たかあまはら》の|霊国《れいごく》と  |楽《たの》しみ|深《ふか》き|天国《てんごく》の
エンゼル|天人《てんにん》|現《あら》はれて  |高天原《たかあまはら》を|地《ち》の|上《うへ》に
|築《きづ》き|仕《つか》ふるこの|神業《みわざ》  |助《たす》けむために|羽衣《はごろも》の
|袖《そで》をば|微風《びふう》に|翻《ひるがへ》し  |寿《ことほ》ぎ|祝《いは》ひ|玉《たま》ふなり
|地上《ちじやう》に|住《す》める|人《ひと》びとは  |善言美詞《ぜんげんびし》の|言霊《ことたま》に
|救《すく》はれ|曲《まが》の|影《かげ》もなく  |心《こころ》も|一《ひと》つ|身《み》も|一《ひと》つ
ただ|何事《なにごと》も|皇神《すめかみ》の  |心《こころ》のままに|勤勉《いそし》みて
|世界《せかい》に|輝《かがや》く|神《かみ》の|宮《みや》  その|御普請《ごふしん》に|仕《つか》へゆく
|浄行毘舎《じやうぎやうびしや》や|首陀《しゆだ》その|他《た》  |賤《いや》しき|十二《じふに》の|姓族《しやうぞく》も
|種々《いろいろ》|差別《さべつ》を|撤廃《てつぱい》し  |水平線上《すゐへいせんじやう》に|相立《あひた》つて
|三五教《あななひけう》やバラモンの  |神《かみ》の|御《おん》ため|世《よ》のために
|赤心《まごころ》|尽《つ》くす|目出《めで》たさよ  かかる|例《ためし》は|昔《むかし》より
|夢《ゆめ》にも|聞《き》かぬ|太平《たいへい》の  なみなみならぬ|慶事《けいじ》なり
|青人草《あをひとぐさ》はいふも|更《さら》  この|霊場《れいぢやう》に|永久《とこしへ》に
|住《す》みなれたりし|猩々姫《しやうじやうひめ》  そのほか|百《もも》の|御子《みこ》たちも
|天国《てんごく》|浄土《じやうど》の|春《はる》に|会《あ》ひ  |目出《めで》たく|元《もと》の|棲処《すみか》へと
|無事《ぶじ》に|帰《かへ》りし|喜《よろこ》びは  |天地《てんち》|開《ひら》けし|初《はじ》めより
|例《ためし》も|知《し》らぬ|次第《しだい》なり  |産土山《うぶすなやま》を|立《た》ち|出《い》でて
|清《きよ》き|心《こころ》の|玉国別《たまくにわけ》の  |珍《うづ》の|司《つかさ》に|従《したが》ひて
やうやくここに|月《つき》の|国《くに》  |音《おと》に|名高《なだか》きアヅモスの
|聖地《せいち》に|来《き》たり|未曾有《みぞいう》の  |大神業《だいしんげふ》に|奉仕《ほうし》する
|吾《わ》が|魂《たましひ》の|歓《よろこ》びは  |旱《ひで》りの|稲田《いなだ》に|夕立《ゆふだち》の
|降《ふ》り|注《そそ》ぎたる|如《ごと》くなり  ヨーイヨーイ ヨーイトセ
|力《ちから》を|揃《そろ》へ|声《こゑ》|合《あは》せ  ヨイヨイヨイと|曳《ひ》いとくれ
|古今未曾有《ここんみぞう》の|神業《しんげふ》に  |誠心《まことごころ》を|現《あら》はして
|仕《つか》へまつれる|人々《ひとびと》は  |神《かみ》の|恵《めぐ》みの|幸《さき》はひて
|身《み》も|壮健《すこやか》にその|家《いへ》は  |月《つき》を|重《かさ》ねてよく|栄《さか》え
|御子《みこ》|孫《まご》|曾孫《ひまご》つぎつぎに  |父祖《ふそ》の|神業《しんげふ》を|喜《よろこ》びて
いや|永久《とこしへ》に|神徳《しんとく》を  |尊《たふと》みまつり|末《すゑ》の|世《よ》の
|語《かた》り|草《ぐさ》にとなすならむ  |勇《いさ》めよ|勇《いさ》めみな|勇《いさ》め
|天地《てんち》に|代《か》はる|功績《いさをし》を  みな|平等《べうどう》に|立《た》て|比《くら》べ
アヅモス|山《さん》の|聖場《せいぢやう》を  |真善美愛《しんぜんびあい》の|根本《こんぽん》と
|造《つく》らせ|玉《たま》へ|惟神《かむながら》  |神《かみ》に|誓《ちか》ひて|伊太彦《いたひこ》が
このスマ|人《びと》の|諸々《もろもろ》に  |代《か》はりて|願《ねが》ひ|奉《たてまつ》る
ヨーイトセー ヨーイトセ』
|大小無数《だいせうむすう》の|樟《くす》、|桧《ひのき》、|欅《けやき》、|松《まつ》、|杉《すぎ》、|楢《なら》|等《とう》の|良材《りやうざい》は|一ケ月《いつかげつ》ならずして|作事場《さくじば》に|無事《ぶじ》|持《も》ち|運《はこ》ばれた。|而《しか》してただ|一人《ひとり》のカスリ|傷《きず》を|負《お》うた|者《もの》も|現《あら》はれなかつたのは、|全《まつた》く|神《かみ》の|深《ふか》き|御守《おんまも》りと|一同《いちどう》|感謝《かんしや》の|念《ねん》に|駈《か》られ、|猫《ねこ》も|杓子《しやくし》も|脛腰《すねこし》の|立《た》つ|者《もの》は、|寝食《しんしよく》を|忘《わす》れ|熱狂《ねつきやう》して、|宮普請《みやぶしん》にのみ|心力《しんりよく》を|傾注《けいちう》した。|諸人《もろびと》の|丹精《たんせい》によつて、|荘厳《さうごん》なる|宮殿《きうでん》は|東西《とうざい》に|並《なら》んで、|南向《みなみむ》きに|千木《ちぎ》|高《たか》く|建《た》ち|上《あ》がつた。ああ|惟神《かむながら》|霊《たま》|幸《ち》はへませ。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
第五章 |鎮祭《ちんさい》〔一五三〇〕
|真善美《しんぜんび》を|尽《つく》したる|二棟《ふたむね》の|宮殿《きうでん》は、|玉国別《たまくにわけ》|以下《いか》|一同《いちどう》の|丹精《たんせい》によつて|漸《やうや》く|完成《くわんせい》し、|東側《ひがしがは》の|宮《みや》には|大国常立大神《おほくにとこたちのおほかみ》を|祀《まつ》り、|西《にし》の|宮《みや》には|大国彦命《おほくにひこのみこと》を|鎮祭《ちんさい》する|事《こと》となつた。
|玉国別《たまくにわけ》は|斎主《さいしゆ》として|新調《しんてう》の|祭服《さいふく》を|身《み》に|着《つ》け、|真純彦《ますみひこ》|以下《いか》の|宣伝使《せんでんし》および|主人側《しゆじんがは》のバーチル|夫婦《ふうふ》、ならびにバラモンのチルテル|以下《いか》|里人《さとびと》|一同《いちどう》と|共《とも》に、|荘厳《さうごん》なる|遷宮式《せんぐうしき》を|挙行《きよかう》した。
|大国常立尊《おほくにとこたちのみこと》の|御神体《ごしんたい》としては、バーチルの|家《いへ》に|古《ふる》くより|伝《つた》はりし|直径《ちよくけい》|三尺《さんじやく》|三寸《さんずん》の|瑪瑙《めなう》の|宝玉《はうぎよく》に|神霊《しんれい》をとりかけ、|大国彦命《おほくにひこのみこと》の|御神体《ごしんたい》としては、チルテルが|大切《たいせつ》に|保存《ほぞん》せる|直径《ちよくけい》|三寸《さんずん》ばかりの|水晶《すいしやう》の|玉《たま》に|神霊《しんれい》をとりかけ、これを|奉斎《ほうさい》することとなつた。
さうしてバーチルは|東《ひがし》の|宮《みや》の|神主《かむぬし》となり、サーベル|姫《ひめ》は|西《にし》の|宮《みや》の|神主《かむぬし》となり、|朝夕《てうせき》|心身《しんしん》を|清《きよ》めてこれに|奉仕《ほうし》することとなつた。
|玉国別《たまくにわけ》の|宣伝使《せんでんし》は|遷宮式《せんぐうしき》の|祝詞《のりと》を|歌《うた》に|代《か》へて|歌《うた》ふ。
『|朝日《あさひ》|輝《かがや》くアヅモスの  テーワ゛ラージャーの|森《もり》の|中《なか》
|大峡小峡《おほがいをがひ》の|木《き》を|伐《き》りて  |清《きよ》き|心《こころ》の|里人《さとびと》が
|下津岩根《したついはね》に|宮柱《みやばしら》  |太《ふと》しく|造《つく》り|高天原《たかあまはら》に
|千木《ちぎ》|高《たか》|知《し》りて|三五《あななひ》の  |皇大神《すめおほかみ》やバラモンの
|教司《をしへつかさ》の|神《かみ》たちを  |斎《いつ》きまつらむ|今日《けふ》の|日《ひ》は
|天《あま》の|岩戸《いはと》の|開《ひら》くなる  |生日足日《いくひたるひ》の|生時《いくとき》ぞ
|此《この》|世《よ》を|造《つく》り|固《かた》めたる  |大国常立大御神《おほくにとこたちおほみかみ》
|天王星《てんわうせい》より|下《くだ》ります  |梵天《ぼんてん》|帝釈《たいしやく》|自在天《じざいてん》
|大国彦《おほくにひこ》の|大神《おほかみ》の  |深《ふか》き|恵《めぐ》みを|蒙《かかぶ》りて
|漸《やうや》くここに|宮柱《みやばしら》  |建《た》て|了《をは》りたる|目出《めで》たさよ
|高天原《たかあまはら》の|霊国《れいごく》の  |姿《すがた》を|移《うつ》すスメールの
|山《やま》は|世界《せかい》の|救《すく》ひ|主《ぬし》  |天地《てんち》の|神《かみ》も|寄《よ》り|集《つど》ひ
|世《よ》を|永久《とこしへ》に|守《まも》らむと  |寄《よ》り|来《き》|仕《つか》ふる|目出《めで》たさよ
|朝日《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも  |月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも
たとへ|大地《だいち》は|覆《かへ》るとも  |元津御祖《もとつみおや》の|大神《おほかみ》が
この|地《ち》に|鎮《しづ》まります|限《かぎ》り  |如何《いか》なる|枉《まが》も|来《き》たるべき
|大三災《だいさんさい》の|風水火《ふうすゐくわ》  |小三災《せうさんさい》の|饑病戦《きびやうせん》
|煙《けむり》のごとく|霧《きり》のごと  |朝《あした》の|風《かぜ》や|夕風《ゆふかぜ》の
|吹《ふ》き|払《はら》ふごと|影《かげ》もなく  |安全《あんぜん》|無事《ぶじ》の|霊場《れいぢやう》と
|弥《いや》|永久《とこしへ》に|鎮《しづ》まりて  |世人《よびと》を|守《まも》り|玉《たま》へかし
|此《こ》の|世《よ》を|造《つく》りし|神直日《かむなほひ》  |心《こころ》も|広《ひろ》き|大直日《おほなほひ》
ただ|何事《なにごと》も|人《ひと》の|世《よ》は  |直日《なほひ》に|見直《みなほ》し|聞直《ききなほ》し
|身《み》の|過《あやま》ちは|宣直《のりなほ》す  |善言美詞《ぜんげんびし》の|神嘉言《かむよごと》
|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|宣《の》り|上《あ》げて  すべての|邪気《じやき》を|拭《ふ》き|払《はら》ひ
|神《かみ》の|御国《みくに》の|歓楽《くわんらく》を  この|国人《くにびと》は|永久《とこしへ》に
|味《あぢ》はひまつる|有難《ありがた》さ  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
この|神床《かむどこ》に|永久《とこしへ》に  |鎮《しづ》まりまして|常暗《とこやみ》の
|世界《せかい》を|救《すく》ひ|玉《たま》ひつつ  |神《かみ》の|御稜威《みいづ》はラシューズダ
サハスラバリ・ブールナドワ゛ヂャ  サルワサットワブリヤダルシャナと
|現《あら》はれ|玉《たま》ひて|永久《とこしへ》に  |鎮《しづ》まりゐませと|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
この|里人《さとびと》の|誠心《まごころ》ゆ  |捧《ささ》げまつりし|海河《うみかは》や
|山野《やまぬ》の|種々《くさぐさ》|珍味物《うましもの》  |八足《やたり》の|机《つくゑ》に|弥広《いやひろ》く
|弥高《いやたか》らかに|横山《よこやま》の  |姿《すがた》のごとく|置《お》き|足《た》らし
|真心《まごころ》こめて|大神酒《おほみき》や  |大神饌《おほみけ》|御水《みもひ》|奉《たてまつ》る
この|二柱大御神《ふたはしらおほみかみ》  |青人草《あをひとぐさ》の|真心《まごころ》を
|完全《うまら》に|委曲《つばら》に|聞《きこ》し|召《め》し  |今日《けふ》の|喜《よろこ》び|永久《とこしへ》に
|続《つづ》かせ|玉《たま》へ|惟神《かむながら》  |尊《たふと》き|神《かみ》の|御前《おんまへ》に
|三五教《あななひけう》の|神司《かむつかさ》  |玉国別《たまくにわけ》が|真心《まごころ》を
|籠《こ》めて|一同《いちどう》になり|代《か》はり  |畏《かしこ》み|畏《かしこ》み|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊《みたま》|幸《さち》はへましませよ』
|祭典《さいてん》は|無事《ぶじ》に|終了《しうれう》し、おのおの|聖地《せいち》に|処狭《ところせ》きまで|群集《うごなは》りゐて、|撤饌《てつせん》の|供物《くもつ》により|直会《なほらひ》の|宴《えん》を|開《ひら》き、|神酒《みき》を|頂《いただ》きながら|思《おも》ひ|思《おも》ひに|今日《けふ》の|盛事《せいじ》を|祝《しゆく》した。その|中《うち》|重《おも》なる|人《ひと》の|歌《うた》を|一《いち》、|二《に》|左《さ》に|述《の》べておく。
バーチル『アア|有難《ありがた》し|有難《ありがた》し  |天《あま》の|岩戸《いはと》は|開《ひら》きけり
|暗《やみ》の|帳《とばり》は|上《あ》がりけり  |四辺《あたり》の|空気《くうき》は|何《なん》となく
いと|爽《さはや》かに|風《かぜ》そよぐ  |木々《きぎ》の|梢《こずゑ》はしとやかに
|自然《しぜん》の|音楽《おんがく》|相奏《あひかな》で  |梢《こずゑ》は|舞踏《ぶたふ》を|演《えん》じつつ
|今日《けふ》の|盛事《せいじ》を|祝《いは》ふなり  |野辺《のべ》に|咲《さ》きぬる|蓮花《はちすばな》
|香《かを》りも|高《たか》く|吹《ふ》き|送《おく》る  |牡丹《ぼたん》|芍薬《しやくやく》ダリヤまで
|艶《えん》をば|競《きそ》ひ|香《か》を|送《おく》る  |天国《てんごく》|浄土《じやうど》も|目《ま》のあたり
|眺《なが》むるごとき|心地《ここち》なり  |朽《く》ち|果《は》てたりし|宮殿《きうでん》も
|今《いま》は|目出《めで》たく|新《あら》たまり  |木《き》の|香《か》|新《あら》たに|鼻《はな》をつく
|見《み》るもの|聞《き》くもの|一《いつ》として  |尊《たふと》き|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みの
|籠《こも》らせ|玉《たま》はぬものはなし  |父《ちち》の|犯《をか》せし|罪科《つみとが》の
|吾《わ》が|身《み》に|巡《めぐ》り|来《き》たりてゆ  |日夜《にちや》に|心《こころ》を|痛《いた》めつつ
|清《きよ》めの|湖《うみ》に|浮《うか》び|出《い》で  |百《もも》の|鱗族《うろくづ》|漁《あさ》りつつ
|心《こころ》を|慰《なぐさ》めゐたりしが  |神《かみ》の|恵《めぐ》みの|引《ひ》き|合《あは》せ
|例《ためし》もあらぬ|颶風《しけ》に|遭《あ》ひ  |猩々《しやうじやう》の|島《しま》に|助《たす》けられ
|因縁《いんねん》|因果《いんぐわ》の|巡《めぐ》り|合《あ》ひ  |猩々《しやうじやう》の|姫《ひめ》とゆくりなく
|鴛鴦《をし》の|縁《えにし》を|契《ちぎ》りつつ  |三年《みとせ》を|過《す》ぐる|暁《あかつき》に
|救《すく》ひの|神《かみ》の|来《き》たりまし  |吾《われ》を|助《たす》けてイヅミなる
スマの|館《やかた》に|送《おく》りまし  |今《いま》また|神《かみ》の|神勅《みことのり》
|忝《かたじけ》なみて|伊太彦《いたひこ》の  |神《かみ》の|司《つかさ》に|一族《いちぞく》を
これの|神山《みやま》に|迎《むか》へられ  |霊魂《みたま》の|親子《おやこ》は|喜《よろこ》びて
スメール|山《ざん》の|神殿《しんでん》に  |朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|仕《つか》へゆく
|嬉《うれ》しき|身《み》とはなりにけり  |吾《われ》は|之《これ》より|比丘《びく》となり
|神《かみ》の|柱《はしら》となる|上《うへ》は  |父祖《ふそ》の|伝《つた》へし|吾《わ》が|館《やかた》
そのほか|山野田畑《さんやでんぱた》を  |天地《てんち》の|神《かみ》に|奉還《ほうくわん》し
|里人《さとびと》おのおの|持場《もちば》をば  |定《さだ》めて|自由《じいう》に|稲《いね》や|麦《むぎ》
|豆《まめ》|粟《あは》|黍《きび》はいふも|更《さら》  |羊《ひつじ》や|豚《ぶた》の|数《かず》|限《かぎ》り
|知《し》られぬばかりの|財産《ざいさん》を  みな|里人《さとびと》の|有《いう》となし
このまま|地上《ちじやう》の|天国《てんごく》を  いや|永久《とこしへ》に|築《きづ》きつつ
その|神恩《しんおん》に|浴《よく》されよ  |神《かみ》に|仕《つか》へし|上《うへ》からは
|物質的《ぶつしつてき》の|宝《たから》をば  |塵《ちり》もとどめず|放《ほ》り|出《い》だし
|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|与《あづ》かりて  |夫婦《ふうふ》|親子《おやこ》は|聖場《せいぢやう》に
|楽《たの》しく|仕《つか》へ|奉《まつ》るべし  |諾《うべな》ひ|玉《たま》へ|天津神《あまつかみ》
|国津神《くにつかみ》たち|八百万《やほよろづ》  その|生宮《いきみや》と|現《あ》れませる
バラモン|軍《ぐん》のキャプテンを  |始《はじ》め|奉《まつ》りて|部下《ぶか》とます
|百《もも》の|軍《いくさ》も|里人《さとびと》も  |公平無私《こうへいむし》にわが|宝《たから》
|分配《ぶんぱい》なして|穏《おだや》かに  |此《この》|世《よ》を|送《おく》り|玉《たま》へかし
|朝日《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも  |月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも
たとへ|大地《だいち》は|沈《しづ》むとも  |神《かみ》の|司《つかさ》のバーチルが
|言葉《ことば》は|永久《とは》に|変《かは》らまじ  |心《こころ》|安《やす》けく|平《たひ》らけく
|思召《おぼしめ》されよと|皇神《すめかみ》の  |御前《みまへ》に|誓《ちか》ひて|宣《の》りまつる
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊《みたま》|幸《さち》はへましませよ』
|里人《さとびと》が|原野《げんや》を|捜《あさ》つて|集《あつ》め|来《き》たりし|四種《ししゆ》の|曼陀羅華《まんだらげ》を|神殿《しんでん》|処狭《ところせ》きまで|供《そな》へまつり、サーベル|姫《ひめ》はその|花《はな》の|中心《ちうしん》に|立《た》つて|曼陀羅華《まんだらげ》を|手《て》にし、|太鼓《たいこ》、|羯鼓《かつこ》、|笙《しやう》、|篳篥《ひちりき》、|翼琴《よくきん》などの|微妙《びめう》の|音楽《おんがく》の|音《ね》に|和《やは》して、|歌《うた》を|歌《うた》ひながら|舞《ま》ひ|狂《くる》うた。
|因《ちなみ》に|四種《ししゆ》の|曼陀羅華《まんだらげ》とは、
一、マーンダーラワ゛
二、マハーマンダーラワ゛
三、マンヂュシャカ
四、マハーマンヂュシャカ
をいふ。さうして|曼陀羅《まんだら》は|適意花《てきいくわ》、|成意花《じやういくわ》、|円花《ゑんくわ》、|悦音花《えつおんくわ》、|雑色花《ざつしきくわ》、|天妙花《てんめうくわ》とも|翻訳《ほんやく》され、その|色《いろ》は|赤《あか》に|似《に》て|黄色《くわうしよく》を|帯《お》びたり、|青《あを》に|似《に》て|紫《むらさき》、|紫《むらさき》に|似《に》て|黒《くろ》を|帯《お》びたり|種々《しゆじゆ》|雑妙《ざつめう》の|色《いろ》がある。マハーマンダーラワ゛は|白華《びやくげ》または|大白華《だいびやくげ》となすものがある。マンジュシャカは|柔軟草《にうなんさう》、|如意草《によいさう》、|赤団華《あかだんげ》とするものもある。
サーベル|姫《ひめ》『|天火水地《てんくわすゐち》と|結《むす》びたる  |青赤白黄紫《あおあかしろきむらさき》の
|曼陀羅華《まんだらげ》をば|大前《おほまへ》に  |処狭《ところせ》きまで|奉《たてまつ》り
|天地《てんち》の|水火《いき》に|叶《かな》ひたる  |真善美愛《しんぜんびあい》の|花束《はなたば》を
|里人《さとびと》たちが|慎《つつし》みて  |真心《まごころ》|捧《ささ》げて|奉《たてまつ》る
|皇大神《すめおほかみ》は|言霊《ことたま》の  |天火水地《てんくわすゐち》を|結《むす》びまし
|地上《ちじやう》の|人《ひと》は|曼陀羅華《まんだらげ》  |天火水地《てんくわすゐち》と|結《むす》びたる
|種々《しゆじゆ》|雑妙《ざつめう》のこの|花《はな》を  |大宮前《おほみやまへ》に|立《た》て|並《なら》べ
|至誠《しせい》を|現《あら》はし|奉《たてまつ》る  |皇大神《すめおほかみ》よ|大神《おほかみ》よ
|吾《われ》らをはじめ|里人《さとびと》が  |清《きよ》き|心《こころ》を|臠《みそなは》し
アヅモス|山《さん》の|霊場《れいぢやう》に  |大宮柱太《おほみやばしらふと》しりて
|鎮《しづ》まり|居《ゐ》ます|珍宮《うづみや》の  |司《つかさ》と|永遠《とは》に|仕《つか》へませ
バーチル|夫婦《ふうふ》が|真心《まごころ》を  ここに|現《あら》はし|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
|吾《われ》ら|夫婦《ふうふ》は|大神《おほかみ》の  |恵《めぐ》みの|露《つゆ》に|霑《うるほ》ひて
|咲《さ》き|匂《にほ》ひたる|曼陀羅華《まんだらげ》  |一度《いちど》に|開《ひら》く|花蓮《はなはちす》
|心《こころ》の|空《そら》に|天界《てんかい》の  |平和《へいわ》と|歓喜《くわんき》の|国《くに》を|建《た》て
|神《かみ》の|御《おん》ため|世《よ》のために  |三五教《あななひけう》やバラモンの
|一体不二《いつたいふじ》の|神教《しんけう》を  |普《あまね》く|四方《よも》に|宣《の》べ|伝《つた》へ
|世人《よびと》を|救《すく》はせ|玉《たま》へかし  |三百三十三体《さんびやくさんじふさんたい》の
この|愛《あい》らしき|猩々《しやうじやう》は  |吾《わ》が|身《み》に|憑《うつ》りし|猩々姫《しやうじやうひめ》
|神《かみ》の|使《つかひ》の|生《う》みませる  |天地《てんち》の|愛《あい》の|珍《うづ》の|子《こ》と
|憐《あは》れみ|玉《たま》ひて|永久《とこしへ》に  |身魂《みたま》を|守《まも》り|平安《へいあん》に
この|世《よ》を|渡《わた》らせ|玉《たま》へかし  |執着心《しふちやくしん》や|世染《せぜん》をば
|科戸《しなど》の|風《かぜ》に|払拭《ふつしき》し  |安《やす》の|河原《かはら》に|垢離《こり》をとり
|清浄無垢《しやうじやうむく》の|魂《たま》となり  |仕《つか》へまつらせ|玉《たま》へかし
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊《みたま》の|恩頼《ふゆ》を|願《ね》ぎまつる』
かく|歌《うた》ひをはり|一同《いちどう》に|拝礼《はいれい》し、|数多《あまた》の|猩々《しやうじやう》に|前後《ぜんご》を|守《まも》られて、|一先《ひとま》づ|元《もと》の|館《やかた》へ|引《ひ》き|返《かへ》し、|村人《むらびと》|一般《いつぱん》に|対《たい》し|財産《ざいさん》|全部《ぜんぶ》|提供《ていきよう》の|準備《じゆんび》をなすべく、|欣々《いそいそ》として|嬉《うれ》しげに|立《た》ち|帰《かへ》る。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
第六章 |満悦《まんえつ》〔一五三一〕
|大空《おほぞら》は|一点《いつてん》の|雲翳《うんえい》もなく、|天津日《あまつひ》の|神《かみ》は|煌々《くわうくわう》としてアヅモス|山《さん》の|霊地《れいち》を|照臨《せうりん》したまひ、|梢《こずゑ》を|渡《わた》る|夏風《なつかぜ》は|颯々《さつさつ》として|清涼《せいりやう》の|気《き》をおくる。|中空《ちうくう》には|無声《むせい》の|音楽《おんがく》|聞《き》こえ|渡《わた》り|芳香《はうかう》|薫《くん》じ、|地上《ちじやう》には、|諸々《もろもろ》の|楽器《がくき》の|一度《いちど》に|鳴《な》り|渡《わた》る|声《こゑ》、|梢《こずゑ》にも|百鳥《ももどり》の|千代《ちよ》の|祥瑞《しやうずゐ》を|囀《さへづ》る|美声《びせい》、|天地人三才合一《てんちじんさんさいがふいつ》のこの|瑞祥《ずゐしやう》は、|神前《しんぜん》に|備《そな》へまつれる|曼陀羅華《まんだらげ》の|妙色《めうしき》に|現《あら》はれてゐる。バラモン|軍《ぐん》に|永《なが》く|仕《つか》へ、キャプテンの|職《しよく》にあつてキヨの|関守《せきもり》を|兼《か》ね、|相当《さうたう》に|暴威《ばうゐ》を|振《ふる》ひたるチルテルは、その|妻《つま》チルナ|姫《ひめ》をはじめ、カンナ、ヘールその|他《た》の|部下《ぶか》を|率《ひき》ゐて|大宮《おほみや》の|前《まへ》に|恭《うやうや》しく|拝礼《はいれい》し、|曼陀羅華《まんだらげ》を|手《て》に|捧《ささ》げ、|歌《うた》ひはじめた。
『|天《てん》は|清浄《しやうじやう》|地《ち》|清浄《しやうじやう》  |六根清浄《ろくこんしやうじやう》|懺悔《ざんげ》の|花《はな》の|咲《さ》き|満《み》ちし
|今日《けふ》の|喜《よろこ》び|永久《とこしへ》に  |神《かみ》の|御前《みまへ》に|謹《つつし》みて
|吾《われ》|人《ひと》ともに|村肝《むらきも》の  |心《こころ》の|限《かぎ》り|身《み》の|限《かぎ》り
|感謝《かんしや》の|涙《なみだ》に|咽《むせ》かへる  |仰《あふ》いで|空《そら》を|眺《なが》むれば
|天津御空《あまつみそら》は|蒼々《あをあを》と  |際限《さいげん》もなく|静《しづ》かに|広《ひろ》くいや|高《たか》し
|伏《ふ》して|地上《ちじやう》を|眺《なが》むれば  |牡丹《ぼたん》|芍薬《しやくやく》ダリヤをはじめ
|所《ところ》まんだら|咲《さ》き|乱《みだ》れ  |雑色微妙《ざつしきびめう》の|蝶《てふ》は|舞《ま》ひ
|万木万草《ばんもくばんさう》いや|茂《しげ》る  |夏野《なつの》に|遊《あそ》び|戯《たはむ》るる
その|瑞祥《ずゐしやう》を|目《ま》のあたり  |眺《なが》むる|吾《われ》こそ|嬉《うれ》しけれ
この|聖場《せいぢやう》に|群集《うごなは》る  |人《ひと》の|面《おもて》を|眺《なが》むれば
|老若男女《らうにやくなんによ》の|分《わか》ちなく  みな|紅《くれなゐ》に|面《おも》|照《て》りて
さながら|天女《てんによ》の|如《ごと》くなり  |天《てん》の|造《つく》りしこの|天地《てんち》
|真善美愛《しんぜんびあい》の|実状《じつじやう》を  いと|広《ひろ》らかに|安《やす》らかに
|示《しめ》させたまふ|尊《たふと》さよ  |朝日《あさひ》は|輝《かがや》く|月《つき》は|照《て》る
|星《ほし》は|閃《きら》めく|天津空《あまつそら》  |北極星座《ほつきよくせいざ》の|動《うご》きなく
|七剣星《しちけんせい》がその|周囲《しうゐ》  |朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|撓《たわ》みなく
|廻《めぐ》るがごとく|里人《さとびと》の  これの|宮居《みやゐ》に|集《あつ》まりて
|歓《ゑら》ぎ|楽《たの》しみ|宮《みや》の|辺《べ》を  |廻《まは》りて|遊《あそ》ぶ|目出《めで》たさよ
ハルナの|都《みやこ》に|現《あ》れませる  |大黒主《おほくろぬし》の|神司《かむづかさ》
いかに|心《こころ》を|配《くば》りまし  |神《かみ》の|御国《みくに》を|地《ち》の|上《うへ》に
|弥《いや》|永久《とこしへ》に|築《きづ》かむと  |焦《あせ》らせ|給《たま》へど|如何《いか》にして
|三五教《あななひけう》を|守《まも》ります  |神《かみ》の|功《いさを》に|及《およ》ばむや
|遠《とほ》き|近《ちか》きの|隔《へだ》てなく  |神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|恋《こ》ひ|慕《した》ひ
|集《あつ》まり|来《き》たる|人《ひと》の|数《かず》  |百千万《ももちよろづ》はまだ|愚《おろ》か
|追々《おひおひ》|寄《よ》り|来《く》る|潮《うしほ》の|勢《いきほ》ひ  また|霊界《れいかい》を|調《しら》ぶれば
|天男《てんなん》|天女《てんによ》を|初《はじ》めとし  |万《よろづ》の|人《ひと》の|神霊《しんれい》や
|鳥《とり》|獣《けだもの》や|虫《むし》けらの  |御霊《みたま》も|先《さき》を|争《あらそ》ひて
|吾《われ》もわしもと|集《つど》ひ|来《く》る  その|光景《くわうけい》は|高天原《たかあまはら》の
|天《あま》の|岩戸《いはと》の|開《ひら》けし|如《ごと》く  あな|面白《おもしろ》やあなさやけをけ
|目出《めで》たさ|嬉《うれ》しさ|胸《むね》にみち  |身《み》もたなしらに|神業《かむわざ》に
|仕《つか》へまつるぞ|有難《ありがた》き  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|大国治立大御神《おほくにはるたちおほみかみ》  |御伴《みとも》の|神《かみ》と|仕《つか》へます
|大国彦《おほくにひこ》の|大神《おほかみ》の  |御前《みまへ》に|謹《つつし》み|畏《かしこ》みて
バラモン|軍《ぐん》のキャプテンが  ここに|赤心《まごころ》|披瀝《ひれき》して
|畏《かしこ》み|畏《かしこ》み|願《ね》ぎまつる  |三千世界《さんぜんせかい》の|梅《うめ》の|花《はな》
|一度《いちど》に|開《ひら》く|曼陀羅華《まんだらげ》  |常世《とこよ》の|春《はる》の|光景《くわうけい》を
|拝《をろが》む|人《ひと》こそ|目出《めで》たけれ  |朝日《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも
|月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも  たとへ|大地《だいち》は|沈《しづ》むとも
テルモン|山《ざん》は|海《うみ》となり  キヨメの|湖《うみ》は|山《やま》となり
アヅモス|山《さん》の|聖場《せいぢやう》は  |雲間《くもま》に|高《たか》く|突《つ》き|出《い》でて
|高《たか》く|嶮《けは》しくなるとても  |神《かみ》に|誓《ちか》ひしこの|体《からだ》
いかでか|心《こころ》を|変《か》へざらむ  |恵《めぐ》ませたまへ|大御神《おほみかみ》
|従《したが》ひたまふ|千万《ちよろづ》の  |司《つかさ》の|神《かみ》の|御前《おんまへ》に
|畏《かしこ》み|畏《かしこ》み|願《ね》ぎまつる  |畏《かしこ》み|畏《かしこ》み|願《ね》ぎまつる』
アキスはまた|歌《うた》ひ|出《だ》した。
『バーチル|館《やかた》に|幼少《えうせう》より  |家《いへ》の|奴《やつこ》と|仕《つか》へたる
|天《あま》の|岩戸《いはと》もはやアキス  |猩々姫《しやうじやうひめ》の|御言《みこと》もて
|伊太彦司《いたひこつかさ》に|付添《つきそ》ひつ  |千里《せんり》の|浪《なみ》を|漕《こ》ぎ|渡《わた》り
|天《てん》にも|地《ち》にもかけがへの  |無《な》き|御子《みこ》|数多《あまた》|迎《むか》へたる
|猩々《しやうじやう》の|小父《をぢ》が|今《いま》ここで  |三百三十三体《さんびやくさんじふさんたい》の
|御霊《みたま》に|代《かは》り|宣《の》り|奉《まつ》る  |父《ちち》の|命《みこと》は|端《はし》なくも
バーチクさまに|玉《たま》の|緒《を》の  |惜《を》しき|命《いのち》を|奪《うば》はれて
|後《あと》に|残《のこ》りし|母《はは》と|子《こ》は  |周章《うろた》へ|騒《さわ》ぎ|手《て》も|足《あし》も
|出《だ》す|術《すべ》もなき|悲《かな》しさに  |浜辺《はまべ》の|船《ふね》を|寄《よ》せ|集《あつ》め
|夜陰《やいん》に|乗《じやう》じて|湖原《うなばら》を  |恐《おそ》れながらに|逃《に》げて|行《ゆ》く
サーガラ|竜王《りうわう》の|棲所《すみか》ぞと  |怖《おそ》れられたる|浮島《うきしま》に
|馴《な》れぬ|艪櫂《ろかい》を|操《あやつ》りて  |命《いのち》からがら|辿《たど》りつき
わづかに|命《いのち》を|支《ささ》へつつ  |悲《かな》しき|月日《つきひ》を|送《おく》るをり
|此《この》|世《よ》を|救《すく》ふ|厳御霊《いづみたま》  |瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|開《ひら》きたる
|三五教《あななひけう》の|神司《かむづかさ》  |数多《あまた》|現《あら》はれましまして
|父《ちち》の|命《みこと》と|崇《あが》めたる  バーチルさまを|船《ふね》に|乗《の》せ
|磯《いそ》を|離《はな》れて|帰《かへ》ります  |恋《こひ》しき|母《はは》はこの|様《さま》を
|見《み》るより|歎《なげ》かせたまひつつ  |二人《ふたり》の|仲《なか》に|生《う》まれたる
|人獣合一《にんじうがふいつ》の|珍《うづ》の|子《こ》を  |喉《のど》|締《し》め|殺《ころ》し|母《はは》の|身《み》は
|湖底《うなぞこ》|深《ふか》く|隠《かく》れましぬ  |後《あと》に|残《のこ》りし|一同《いちどう》は
|蚊《か》の|鳴《な》くごとく|騒《さわ》ぎ|立《た》ち  |呼《よ》べどかへせど|此《この》|世《よ》へは
|再《ふたた》び|帰《かへ》り|給《たま》はざる  |悲運《ひうん》を|歎《なげ》きゐたりしが
|風《かぜ》の|便《たよ》りか|白浪《しらなみ》の  |彼方《かなた》に|見《み》ゆる|船《ふね》の|影《かげ》
|浪《なみ》を|蹴立《けた》てて|寄《よ》り|来《き》たる  これぞ|全《まつた》く|吾《わ》が|父《ちち》の
|心《こころ》づくしの|御船《みふね》ぞと  |子《こ》らは|一同《いちどう》に|磯端《いそばた》に
|垣《かき》を|造《つく》つて|眺《なが》めをる  |仁慈《じんじ》の|神《かみ》に|仕《つか》へたる
|伊太彦司《いたひこつかさ》が|悠々《いういう》と  |数多《あまた》の|船《ふね》を|引《ひ》き|連《つ》れて
|吾《われ》ら|一同《いちどう》をバーチルの  |館《やかた》に|迎《むか》へ|帰《かへ》らむと
|手真似《てまね》をもつて|示《しめ》します  その|嬉《うれ》しさは|如何《いか》ばかり
|天《てん》にも|登《のぼ》る|心地《ここち》して  |先《さき》を|争《あらそ》ひ|救《すく》ひの|船《ふね》に
|身《み》を|跳《をど》らして|乗《の》り|込《こ》めば  |思《おも》ひも|寄《よ》らぬ|般若湯《はんにやたう》
いと|馨《かんば》しきその|香《かを》り  |樽《たる》の|鏡《かがみ》を|打《う》ち|開《あ》けて
|吾《われ》らを|犒《ねぎら》ひたまひつつ  |静《しづ》かな|波《なみ》に|真帆《まほ》を|揚《あ》げ
|湖中《こちう》に|棲《す》める|魚族《うろくづ》に  |前後左右《ぜんごさいう》を|守《まも》られて
スマの|港《みなと》に|安着《あんちやく》し  |父《ちち》の|館《やかた》に|立《た》ち|帰《かへ》り
|楽《たの》しき|月日《つきひ》を|送《おく》りつつ  またもや|元《もと》の|棲処《すみか》へと
|帰《かへ》り|来《き》たりし|嬉《うれ》しさよ  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|神《かみ》の|宮居《みやゐ》もいと|清《きよ》く  いと|麗《うるは》しく|建《た》ち|終《をは》り
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|大御神《おほみかみ》  バラモン|帝釈《たいしやく》|自在天《じざいてん》
|弥《いや》|永久《とこしへ》に|鎮《しづ》まりて  イヅミの|国《くに》の|国人《くにびと》を
|守《まも》らせたまふ|世《よ》となりぬ  |吾《われ》ら|一同《いちどう》の|眷族《けんぞく》は
|清浄無垢《しやうじやうむく》の|魂《たましひ》を  |捧《ささ》げて|仕《つか》へ|奉《たてまつ》り
アヅモス|山《さん》の|森林《しんりん》を  |千代《ちよ》の|棲処《すみか》と|相定《あひさだ》め
|常世《とこよ》の|春《はる》を|楽《たの》しまむ  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|神《かみ》の|聖地《せいち》をおそれみて  |里人《さとびと》|男女《なんによ》の|分《わか》ちなく
この|森林《しんりん》に|永久《とは》に|棲《す》む  |吾《われ》らが|兄弟《おとどい》よく|愛《あい》し
|決《けつ》して|殺《ころ》すこと|勿《なか》れ  もしも|過《あやま》ちある|時《とき》は
|忽《たちま》ち|神《かみ》に|相祈《あひいの》り  |誡《いまし》め|下《くだ》し|世《よ》の|人《ひと》の
|眼《まなこ》|厳《きび》しくさますべし  |謹《つつし》みたまへ|里人《さとびと》よ
バラモン|教《けう》の|軍《いくさ》の|君《きみ》よ  |猩々彦《しやうじやうひこ》や|猩々姫《しやうじやうひめ》の
|水火《いき》より|出《い》でし|吾々《われわれ》|一同《いちどう》  ここに|言挙《ことあ》げ|奉《たてまつ》る
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊《みたま》|幸《さち》はへましませよ』
|玉国別《たまくにわけ》『|久方《ひさかた》の|天津御空《あまつみそら》も|地《ち》の|上《うへ》も
すみ|渡《わた》りたる|今日《けふ》ぞ|目出《めで》たき』
|真純彦《ますみひこ》『|打《う》ち|仰《あふ》ぐますみの|空《そら》に|塵《ちり》もなし
|田鶴《たづ》|舞《ま》ひ|遊《あそ》ぶ|影《かげ》のみぞ|見《み》ゆ』
|三千彦《みちひこ》『|大神《おほかみ》の|珍《うづ》の|恵《めぐ》みは|天地《あめつち》に
いや|三千彦《みちひこ》の|今日《けふ》の|嬉《うれ》しさ』
|伊太彦《いたひこ》『アヅモスの|山《やま》に|登《のぼ》りて|四方《よも》の|野《の》を
|見《み》る|吾《わ》が|心《こころ》は|広《ひろ》く|安《やす》けし』
デビス|姫《ひめ》『|月《つき》も|日《ひ》も|大空《おほぞら》|高《たか》くテルモンの
|館《やかた》を|後《あと》にデビス|姫《ひめ》かな』
バーチル『|人《ひと》となりまた|猩々《しやうじやう》となりかはり
|清浄無垢《しやうじやうむく》で|神《かみ》に|仕《つか》へむ』
サーベル|姫《ひめ》『|月《つき》も|日《ひ》も|浪《なみ》より|出《い》でて|浪《なみ》に|入《い》る
|神《かみ》の|恵《めぐ》みの|深《ふか》き|湖《みづうみ》』
テク『|今《いま》までは|心《こころ》|曇《くも》りし|吾《われ》なれど
|冴《さ》え|渡《わた》りけり|神《かみ》の|教《をしへ》に』
アンチー『|大神《おほかみ》の|広《ひろ》き|恵《めぐ》みに|離《はな》れ|島《じま》
|憂《う》きを|三歳《みとせ》の|今日《けふ》の|吾《われ》かな』
アキス『|春《はる》も|過《す》ぎ|夏《なつ》の|大空《おほぞら》|澄《す》み|渡《わた》り
|秋《あき》|澄《す》み|渡《わた》る|吾《われ》の|魂《たましひ》』
カール『|磯端《いそばた》に|主《あるじ》の|君《きみ》を|待《ま》ち|佗《わ》びし
カール|司《つかさ》の|今日《けふ》の|喜《よろこ》び』
チルテル『|花《はな》は|散《ち》る|月《つき》は|御空《みそら》に|照《てる》の|国《くに》
すましてすまむスマの|関守《せきもり》』
チルナ|姫《ひめ》『|曼陀羅《まんだら》の|華《はな》はいつまでチルナ|姫《ひめ》
|早《はや》く|散《ち》れ|散《ち》れ|塵《ちり》と|芥《あくた》は』
カンナ『|惟神《かむながら》|神《かみ》の|光《ひかり》の|強《つよ》くして
|常夜《とこよ》の|闇《やみ》も|晴《は》れ|渡《わた》りけり』
ヘール『テルモンの|山《やま》は|霞《かす》みて|見《み》えねども
|目《ま》のあたり|見《み》る|神《かみ》の|御恵《みめぐ》み』
かく|互《たが》ひに|遷宮式《せんぐうしき》の|祭典《さいてん》を|祝《しゆく》し|終《をは》つて、|道々《みちみち》|口々《くちぐち》に|歌《うた》を|歌《うた》ひながら、|広大《くわうだい》なるバーチルの|館《やかた》を|指《さ》して|帰《かへ》り|行《ゆ》く。|漸《やうや》く|日《ひ》は|西山《せいざん》に|舂《うすづ》きて|黄昏《たそがれ》の|空気《くうき》は|四辺《あたり》を|圧《あつ》した。|満天《まんてん》たちまち|金銀《きんぎん》の|星光《せいくわう》|恆河《こうが》の|砂《すな》のごとく|現《あら》はれて、|一行《いつかう》が|歓喜《くわんき》の|姿《すがた》を|黙々《もくもく》として|瞰下《かんか》してゐる。アヅモス|山《さん》の|峰続《みねつづ》き、ハールナ|山《さん》の|中腹《ちうふく》にある|寺院《じゐん》の|梵鐘《ぼんしよう》は、ボーンボーンと|夕《ゆふ》べの|空気《くうき》を|圧《あつ》して|響《ひび》き|来《き》たる。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
第二篇 |東山霊地《アヅモスれいち》
第七章 |方便《はうべん》〔一五三二〕
|新《あら》たに|建《た》てられたアヅモス|山《さん》の|社《やしろ》の|前《まへ》には、アキス、カールにワードの|役《やく》を|命《めい》じおき、バーチルは|玉国別《たまくにわけ》|一行《いつかう》その|他《た》と|共《とも》に|喜《よろこ》び|勇《いさ》んで、|一先《ひとま》づ|館《やかた》へ|帰《かへ》ることとなつた。スマの|里人《さとびと》は|老人少女《らうじんせうぢよ》を|聖地《せいち》に|残《のこ》し、|玉国別《たまくにわけ》|一行《いつかう》を|見送《みおく》つて、バーチル|館《やかた》に|従《したが》ひ|行《ゆ》く。
|元来《ぐわんらい》スマの|里《さと》は|何《いづ》れも|山野田畠《さんやでんばた》|一切《いつさい》、バーチルの|富豪《ふうがう》に|併呑《へいどん》され、|里人《さとびと》は|何《いづ》れも|小作人《こさくにん》の|境遇《きやうぐう》に|甘《あま》んじてゐた。しかしながら|日《ひ》|歩《あゆ》み|月《つき》|進《すす》み|星《ほし》|移《うつ》るに|従《したが》ひて、あちらこちらに|不平《ふへい》|不満《ふまん》の|声《こゑ》が|起《おこ》り|出《だ》し、ソシァリストやコンミュニストなどが|現《あら》はれて|来《き》た。|中《なか》には|極端《きよくたん》なるマンモニストもあつて、|僅《わづ》かの|財産《ざいさん》を|地底《ちてい》に|埋匿《まいとく》し、|吝嗇《りんしよく》の|限《かぎ》りを|尽《つく》す|小作人《こさくにん》も|現《あら》はれてゐた。|然《しか》るにこの|度《たび》、アヅモス|山《さん》の|御造営《ござうえい》|完了《かんれう》と|共《とも》に、|一切《いつさい》の|資産《しさん》を|開放《かいはう》して|郷民《きやうみん》に|万遍《まんべん》なく|分与《ぶんよ》することとなり、|郷民《きやうみん》はいづれも|歓喜《くわんき》して、リパブリックの|建設者《けんせつしや》として、バーチル|夫婦《ふうふ》を、|口《くち》を|極《きは》めて|賞揚《しやうやう》することとなつた。にはかにスマの|里《さと》は|憤嫉《ふんしつ》の|声《こゑ》なく、おのおの|和煦《わく》の|色《いろ》を|顔面《がんめん》にたたへて、オブチーミストの|安住所《あんぢうしよ》となつた。
サーベル|姫《ひめ》は|村人《むらびと》の|代表者《だいへうしや》を|十数人《じふすうにん》|膝元《ひざもと》に|集《あつ》めて、|一切《いつさい》の|帳簿《ちやうぼ》を|取《と》り|出《だ》し、|快《こころよ》くこれを|手《て》に|渡《わた》し、|自分《じぶん》は|夫《をつと》と|共《とも》に|永遠《ゑいゑん》に、アヅモス|山《さん》の|大神《おほかみ》に|仕《つか》ふることを|約《やく》した。ここに|又《また》もや|郷民《きやうみん》の|祝宴《しゆくえん》は|盛大《せいだい》に|開《ひら》かれ、|夫婦《ふうふ》の|万歳《ばんざい》を|祝《しゆく》し|合《あ》うた。
さて|玉国別《たまくにわけ》|一行《いつかう》はバーチルの|居間《ゐま》に|請《しやう》ぜられ、おのおの|歓《くわん》を|尽《つく》して、|尊《たふと》き|神《かみ》の|御教《みをしへ》を|互《たが》ひに|語《かた》り|合《あ》ひつつ、|嬉《うれ》しくその|日《ひ》を|過《す》ごした。
チルテル『|玉国別《たまくにわけ》|様《さま》にお|願《ねが》ひがございます。|私《わたし》もこの|通《とほ》り|菩提心《ぼだいしん》を|起《お》こし、|一切《いつさい》の|世染《せぜん》を|捨《す》て、|惟神《かむながら》の|大道《おほみち》を|遵奉《じゆんぽう》し|奉《たてまつ》る|嬉《うれ》しき|身《み》の|上《うへ》となりましたのも、|全《まつた》く|貴師《あなた》の|御余光《ごよくわう》でございます。ついては|宏遠微妙《こうゑんびめう》なる|御教理《ごけうり》も|承《うけたまは》りたく、|且《かつ》また|自分《じぶん》の|歓《よろこ》びを|衆生《しゆじやう》に|分《わか》ち、|神業《しんげふ》の|一端《いつたん》に|奉仕《ほうし》したく|存《ぞん》じてをりますから、|三五教式《あななひけうしき》の|宣伝方法《せんでんはうはふ》を|御教示《ごけうじ》|願《ねが》ひたいものでございます』
|玉国別《たまくにわけ》『それは|誠《まこと》に|結構《けつこう》な|思召《おぼしめ》し、|玉国別《たまくにわけ》も|歓喜《くわんき》の|情《じやう》にたへませぬ。|左様《さやう》ならば|吾々《われわれ》の、|大神様《おほかみさま》より|直授《ちよくじゆ》された|宣伝方法《せんでんはうはふ》について、|少《すこ》しばかりお|伝《つた》へをいたしませう。
|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|身《み》に|禀《う》けて  |世人《よびと》を|救《すく》ひ|助《たす》けむと
|四方《よも》に|教《をしへ》を|開《ひら》くなる  |至仁《しじん》|至愛《しあい》の|神司《かむづかさ》
たらむとすれば|何時《いつ》とても  |心《こころ》を|安《やす》く|穏《おだや》かに
|歓喜《くわんき》の|情《じやう》をたたへつつ  |蒼生《あをひとぐさ》に|打《う》ち|向《む》かひ
|幽玄微妙《いうげんびめう》の|道《みち》を|説《と》け  |清浄無垢《しやうじやうむく》の|霊地《れいち》にて
|座床《ざしやう》を|造《つく》り|身《み》を|浄《きよ》め  |塵《ちり》や|芥《あくた》を|排除《はいじよ》して
|汚《けが》れに|染《そ》まぬ|衣《きぬ》をつけ  |心《こころ》も|身《み》をも|清《きよ》くして
|始《はじ》めて|宝座《ほうざ》に|着席《ちやくせき》し  |人《ひと》の|尋《たづ》ねに|従《したが》ひて
|極《きは》めて|平易《へいい》に|道《みち》を|説《と》け  |比丘《びく》や|比丘尼《びくに》や|信徒《まめひと》や
|王侯《わうこう》|貴人《きじん》さまざまの  |前《まへ》をも|怖《お》ぢず|赤心《まごころ》を
|尽《つく》して|微妙《びめう》の|意義《いぎ》を|説《と》き  |面貌《めんばう》|声色《せいしよく》|和《やは》らげて
|人《ひと》の|身魂《みたま》をよく|査《しら》べ  |因縁《いんねん》|比喩《たとえ》を|敷衍《ふえん》して
|天地《てんち》の|道理《だうり》を|説《と》きさとせ  |人《ひと》は|神《かみ》の|子《こ》|神《かみ》の|宮《みや》
|善言美詞《ぜんげんびし》の|言霊《ことたま》を  |一人《ひとり》も|嫌《きら》ふ|者《もの》はない
もし|聴衆《ちやうしう》のその|中《うち》に  |汝《なんぢ》が|説《せつ》を|攻撃《こうげき》し
あるひは|非難《ひなん》するあれば  |吾《わ》が|身《み》を|深《ふか》く|省《かへり》みよ
|神《かみ》にかなはぬ|言霊《ことたま》を  |心《こころ》の|曲《まが》の|汚《けが》れより
|不知不識《しらずしらず》に|発《はつ》せるを  |必《かなら》ず|覚悟《かくご》し|得《う》るならむ
|百千万《ひやくせんまん》の|敵《てき》とても  ただ|一言《ひとこと》の|善言《ぜんげん》に
|感《かん》じて|忽《たちま》ち|強力《きやうりよく》の  |神《かみ》の|味方《みかた》となりぬべし
たとへ|数万《すまん》の|吾《わ》が|部下《ぶか》を  |味方《みかた》となして|誇《ほこ》るとも
ただ|一言《ひとこと》の|悪言《あくげん》に  |感《かん》じて|忽《たちま》ち|怨敵《をんてき》と
|掌《てのひら》|覆《かへ》すごとくなる  この|真諦《しんたい》を|省《かへり》みて
|必《かなら》ず|過《あやま》つ|事《こと》|勿《なか》れ  ただ|何事《なにごと》も|世《よ》の|中《なか》は
すべて|善事《ぜんじ》に|宣直《のりなほ》し  |愛《あい》の|善《ぜん》をばよく|保《たも》ち
|信《しん》の|真《しん》をばよく|悟《さと》り  しかして|後《のち》に|世《よ》の|人《ひと》に
|真《まこと》の|道《みち》を|説《と》くならば  いかなる|外道《げだう》の|曲人《まがびと》も
|決《けつ》して|反《そむ》くものでない  |誠《まこと》|一《ひと》つは|世《よ》を|救《すく》ふ
|神《かみ》の|教《をしへ》は|目《ま》のあたり  |現《あら》はれ|来《き》たる|摩訶不思議《まかふしぎ》
すべて|天地《てんち》は|言霊《ことたま》の  |御水火《みいき》によりて|創造《さうざう》され
また|言霊《ことたま》の|御水火《みいき》にて  |規則《きそく》|正《ただ》しく|賑《にぎ》はしく
|治《をさ》まり|栄《さか》ゆるものぞかし  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|真善美愛《しんぜんびあい》の|神《かみ》の|道《みち》  |学《まな》ばせ|玉《たま》へバラモンの
|軍《いくさ》に|仕《つか》へし|諸人《もろびと》よ  |玉国別《たまくにわけ》の|神司《かむづかさ》
|心《こころ》の|岩戸《いはと》を|押《お》し|開《ひら》き  ここに|一言《ひとこと》|宣《の》り|申《まを》す
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |神《かみ》の|授《さづ》けし|言霊《ことたま》の
|厳《いづ》の|伊吹《いぶき》ぞ|尊《たふと》けれ  |旭《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも
|月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも  |大三災《だいさんさい》の|来《き》たるとも
|神《かみ》に|受《う》けたる|言霊《ことたま》を  |清《きよ》く|涼《すず》しく|宣《の》るならば
すべての|災《わざはひ》たちまちに  |雲《くも》を|霞《かすみ》と|消《き》え|失《う》せむ
|守《まも》らせ|玉《たま》へ|言霊《ことたま》の  |善言美詞《ぜんげんびし》の|太祝詞《ふとのりと》
|心《こころ》を|清《きよ》め|身《み》を|浄《きよ》め  その|行《おこな》ひを|清《きよ》くして
|厳《いづ》の|言霊《ことたま》|宣《の》るなれば  |雲井《くもゐ》に|高《たか》き|天界《てんかい》の
|皇大神《すめおほかみ》もエンゼルも  |地上《ちじやう》に|現《あ》れます|神々《かみがみ》も
|蒼生《あをひとぐさ》も|草《くさ》や|木《き》も  その|神徳《しんとく》を|慕《した》ひつつ
これの|教《をしへ》を|守《まも》るべし  |偉大《ゐだい》なるかな|言霊《ことたま》の
|皇大神《すめおほかみ》のお|活動《はたらき》  |仰《あふ》ぎ|敬《うや》まひ|奉《たてまつ》れ
|仰《あふ》ぎ|敬《うやま》ひ|奉《たてまつ》れ』
チルテル『バラモン|教《けう》の|神柱《かむばしら》  |大黒主《おほくろぬし》に|従《したが》ひて
|左手《ゆんで》にコーラン|捧《ささ》げつつ  |右手《めて》に|剣《つるぎ》を|握《にぎ》りしめ
|折伏《しやくふく》|摂受《せつじゆ》の|剣《けん》として  |外道《げだう》の|道《みち》を|辿《たど》りつつ
|今《いま》まで|暮《くら》し|来《き》たりしが  |玉国別《たまくにわけ》の|師《し》の|君《きみ》に
|誠《まこと》の|道《みち》を|教《をし》へられ  |布教《ふけう》|伝道《でんだう》の|方便《はうべん》を
いと|明《あき》らかに|授《さづ》けられ  |心《こころ》の|暗《やみ》も|晴《は》れ|渡《わた》り
|旭《あさひ》の|豊栄《とよさか》|昇《のぼ》るごと  |身《み》も|健《すこや》かになりにけり
いざこの|上《うへ》は|真心《まごころ》の  |限《かぎ》りを|尽《つく》して|愛善《あいぜん》の
|徳《とく》を|養《やしな》ひ|信真《しんしん》の  |覚《さと》りを|開《ひら》き|詳細《まつぶさ》に
|一切衆生《いつさいしゆじやう》を|救済《きうさい》し  |天地《てんち》の|御子《みこ》と|生《う》まれたる
その|本分《ほんぶん》を|尽《つく》すべし  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|三五教《あななひけう》を|守《まも》ります  |厳《いづ》の|御霊《みたま》や|瑞御霊《みづみたま》
|玉照彦《たまてるひこ》や|玉照姫《たまてるひめ》の  |雄々《をを》しき|聖《きよ》き|御柱《みはしら》に
|従《したが》ひ|奉《まつ》り|八十《やそ》の|国《くに》  |八十《やそ》の|島々《しまじま》|隈《くま》もなく
|神《かみ》の|教《をしへ》の|司《つかさ》とし  |沐雨櫛風《もくうしつぷう》|厭《いと》ひなく
|神《かみ》の|御《おん》ため|世《よ》のために  あらゆるベストを|尽《つく》すべし
|守《まも》らせ|玉《たま》へ|惟神《かむながら》  |神《かみ》の|御前《みまへ》に|赤心《まごころ》を
|捧《ささ》げて|祈《いの》り|奉《たてまつ》る  アヅモス|山《さん》の|宮司《みやづかさ》
バーチル|夫婦《ふうふ》も|今《いま》よりは  |聖《きよ》き|尊《たふと》き|三五《あななひ》の
|教《をしへ》を|守《まも》り|玉《たま》ひつつ  |東《ひがし》の|宮《みや》と|西《にし》の|宮《みや》
|心《こころ》に|隔《へだ》つることもなく  いと|忠実《まめやか》に|朝夕《あさゆふ》に
|仕《つか》へ|玉《たま》はれ|惟神《かむながら》  |神《かみ》の|光《ひかり》に|照《て》らされて
バラモン|軍《ぐん》に|仕《つか》へたる  チルテル|司《つかさ》が|願《ね》ぎ|奉《まつ》る
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊幸《みたまさき》はへましませよ』
カンナ『キャプテンの|司《つかさ》の|君《きみ》に|従《したが》ひて
|吾《われ》も|進《すす》まむ|神《かみ》の|大道《おほぢ》へ』
ヘール『|久方《ひさかた》の|天津御神《あまつみかみ》の|音信《おとづれ》を
|今《いま》|目《ま》のあたり|聞《き》くぞ|尊《たふと》き』
チルナ|姫《ひめ》『|背《せ》の|君《きみ》は|全《まつた》く|人《ひと》となりましぬ
|心《こころ》に|棲《す》める|曲《まが》のはなれて』
チルテル『|吾《わ》が|魂《たま》はさまで|悪《あ》しくは|思《おも》はねど
|寄《よ》りくる|曲《まが》を|防《ふせ》ぎかねつつ
|力《ちから》なき|吾《わ》が|魂《たましひ》も|今《いま》は|早《は》や
|千引《ちびき》の|岩《いは》の|動《うご》かずなりぬ』
チルナ|姫《ひめ》『|背《せ》の|君《きみ》の|珍《うづ》の|言霊《ことたま》|聞《き》こしより
|心《こころ》の|曲《まが》も|消《き》え|失《う》せにけり』
|真純彦《ますみひこ》『|師《し》の|君《きみ》の|初《はじ》めて|宣《の》らす|言霊《ことたま》を
|聞《き》きし|吾《われ》こそ|嬉《うれ》しかりけり』
|三千彦《みちひこ》『|斎苑館《いそやかた》|立《た》ち|出《い》で|月日《つきひ》|数《かず》|重《かさ》ね
|初《はじ》めて|聞《き》きし|吾師《わがし》の|言葉《ことば》』
|伊太彦《いたひこ》『|一《いち》と|言《い》へば|十百千《じふひやくせん》を|悟《さと》るてふ
|身魂《みたま》ならでは|詮《せん》すべもなし
|一《いち》|聞《き》いて|直《ただ》ちに|島《しま》に|打《う》ち|渡《わた》り
|功績《いさを》を|立《た》てし|猩々舟《しやうじやうぶね》|哉《かな》』
|三千彦《みちひこ》『すぐにまた|鼻《はな》をば|高《たか》め|足許《あしもと》に
|眼《まなこ》|失《うしな》ひ|躓《つまづ》くなゆめ』
|伊太彦《いたひこ》『|皇神《すめかみ》の|選《え》りに|選《え》りたる|吾魂《わがたま》は
いかでか|汝《なれ》に|比《くら》ぶべきやは』
|真純彦《ますみひこ》『うぬぼれて|深谷川《ふかたにがは》に|落《お》ち|込《こ》むな
|慢心《まんしん》すればすぐに|躓《つまづ》く』
|伊太彦《いたひこ》『|吾《われ》とても|誇《ほこ》る|心《こころ》はなけれども
|魂《たま》はいそいそ|笑《ゑ》み|栄《さか》え|来《き》て』
デビス|姫《ひめ》『|何事《なにごと》も|人《ひと》に|先立《さきだ》つ|伊太彦《いたひこ》の
|神《かみ》の|使《つかひ》のいとど|畏《かしこ》き』
チルテル『|伊太彦《いたひこ》の|得意《とくい》や|実《げ》にも|思《おも》ふべし
|獣《けもの》の|皮《かは》|着《き》し|人《ひと》を|迎《むか》へて』
カンナ『|獣《けもの》とはいへど|此《この》|世《よ》の|人草《ひとぐさ》に
|優《まさ》る|霊《みたま》を|持《も》てる|尊《たふと》さ』
ヘール『かくまでも|人《ひと》の|心《こころ》の|曇《くも》りしかと
|思《おも》へばいとど|悲《かな》しくなりぬ』
アンチー『アヅモスの|山《やま》に|棲《す》まへる|鳥翼《とりつばさ》
|人《ひと》にあらねど|人《ひと》を|見下《みおろ》す
|人々《ひとびと》の|頭《かしら》の|上《うへ》を|悠々《いういう》と
|舞《ま》ひて|遊《あそ》べる|鷹《たか》ぞ|恨《うら》めし』
バーチル『|何事《なにごと》も|天地《てんち》の|神《かみ》の|御心《みこころ》に
|任《まか》すは|人《ひと》の|務《つと》めなるらむ』
サーベル|姫《ひめ》『|天地《あめつち》の|神《かみ》も|諾《うべな》ひ|玉《たま》ふらむ
|心《こころ》|清《きよ》けきこの|人々《ひとびと》を』
テク『|朝夕《あさゆふ》によからぬ|事《こと》のみ|漁《あさ》りつつ
|暮《くら》し|来《き》たりし|吾《われ》ぞうたてき
さりながら|恵《めぐ》みも|深《ふか》き|大神《おほかみ》の
|御手《みて》に|救《すく》はれ|勇《いさ》む|今日《けふ》かな』
ワックス『テルモンの|山《やま》を|立出《たちい》でいま|此処《ここ》に
|仇《あだ》と|思《おも》ひし|人《ひと》と|並《なら》びぬ
|仇《あだ》とのみ|思《おも》ひしことは|夢《ゆめ》となり
|今《いま》は|救《すく》ひの|神《かみ》と|見《み》るかな』
エキス『|相共《あひとも》に|悪《あ》しき|事《こと》のみ|謀《はか》り|合《あ》ひ
|神《かみ》を|汚《けが》せしことの|悔《くや》しさ
|町人《まちびと》の|前《まへ》に|恥《はぢ》をば|曝《さら》されて
|尻《しり》|叩《たた》かれしことぞ|恥《は》づかし
|今日《けふ》よりは|心《こころ》の|駒《こま》を|立直《たてなほ》し
|進《すす》みて|行《ゆ》かむ|神《かみ》の|大道《おほぢ》に』
ヘルマン『|吾《われ》もまた|善《よ》からぬ|友《とも》に|誘《いざな》はれ
ワックスを|責《せ》めしことの|愚《おろ》かさ
|三五《あななひ》の|神《かみ》の|司《つかさ》を|殺《ころ》さむと
|大海原《おほうなばら》に|待《ま》ちし|愚《おろ》かさ
|皇神《すめかみ》の|厳《いづ》の|力《ちから》におぢ|恐《おそ》れ
|今《いま》は|全《まつた》く|猫《ねこ》となりけり』
エル『|神館《かむやかた》|小国別《をくにわけ》の|身失《みう》せしと
|思《おも》ひて|世人《よびと》|欺《あざむ》きし|吾《われ》
くさぐさの|罪《つみ》を|重《かさ》ねし|吾《われ》なれど
|救《すく》ひ|玉《たま》ひぬ|誠《まこと》の|神《かみ》は
スメールの|御山《みやま》に|清《きよ》く|現《あ》れませる
|神《かみ》の|御稜威《みいづ》を|仰《あふ》ぐ|尊《たふと》さ
いかならむ|魔神《まがみ》の|襲《おそ》ひ|来《き》たるとも
|今日《けふ》の|心《こころ》は|千代《ちよ》に|変《か》へなむ』
サーベル|姫《ひめ》『|吾《われ》こそは|猩々姫《しやうじやうひめ》の|霊《みたま》なり
|玉国別《たまくにわけ》に|願言《ねぎごと》やせむ
|天王《てんわう》の|宮《みや》の|御跡《みあと》の|石蓋《いしぶた》を
|開《あ》けて|竜王《りうわう》|救《すく》ひ|玉《たま》はれ』
|玉国別《たまくにわけ》『|汝《な》が|願《ねが》ひ|諾《うべな》ひまつりこれよりは
アヅモス|山《さん》の|神《かみ》を|救《すく》はむ』
かく|互《たが》ひに|歌《うた》を|取《と》りかはし、|十二分《じふにぶん》の|歓喜《くわんき》を|尽《つく》し、|玉国別《たまくにわけ》は|一同《いちどう》を|従《したが》へ|再《ふたた》び|天王《てんわう》の|古宮《ふるみや》の|床下《ゆかした》を|調査《てうさ》すべく、|夜《よ》の|明《あ》くるを|待《ま》つて|進《すす》み|行《ゆ》くこととなつた。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
第八章 |土蜘蛛《つちぐも》〔一五三三〕
|玉国別《たまくにわけ》の|一行《いつかう》はバーチルの|館《やかた》を|立《た》ち|出《い》で、|再《ふたた》びアヅモス|山《さん》のもとの|古社《ふるやしろ》の|趾《あと》に|近寄《ちかよ》り|見《み》れば、|猩々姫《しやうじやうひめ》の|言葉《ことば》に|違《たが》はず、|五寸《ごすん》ばかり|上土《うはつち》をめくつてみると、|長方形《ちやうはうけい》の|石蓋《いしぶた》が|現《あら》はれて|来《き》た。
|玉国別《たまくにわけ》は|先《ま》づ|石蓋《いしぶた》|取《と》り|除《のぞ》きの|祈願《きぐわん》を|奏上《そうじやう》したり。
『スメールの|珍《うづ》の|聖地《せいち》に、|宮柱太《みやばしらふと》しく|建《た》てて|常久《とこしへ》に、|鎮《しづ》まり|居《ゐ》ますバラモンの、|教《をしへ》の|御祖《みおや》|大国彦《おほくにひこ》の|御舎《みあらか》を、|仕《つか》へまつりし|古《ふる》き|趾《あと》の|石蓋《いしぶた》を、|猩々姫《しやうじやうひめ》の|願《ねが》ひによりて、|心《こころ》を|清《きよ》め|身《み》を|浄《きよ》め、|珍《うづ》の|言霊《ことたま》|宣《の》り|上《あ》げて、|三千年《さんぜんねん》の|昔《むかし》より、|封《ふう》じおきたる|玉手箱《たまてばこ》、|神《かみ》の|恵《めぐ》みを|蒙《かうむ》りて、いよいよ|開《ひら》き|奉《たてまつ》る。|仰《あふ》ぎ|願《ねが》はくはこの|神業《かむわざ》に|仕《つか》へまつる|人々《ひとびと》は、|心《こころ》|正《ただ》しく|清《きよ》く|直《なほ》くして、|神《かみ》の|霊《みたま》に|帰《かへ》りし|珍《うづ》の|御宝《みたから》なれば、|如何《いか》なる|神《かみ》の|在《ま》すかは|知《し》らねども|必《かなら》ず|咎《とが》め|罰《きた》めたまふ|事《こと》なく、いと|安々《やすやす》と|之《これ》の|岩戸《いはと》を|開《ひら》かせ|玉《たま》へ。|又《また》これの|岩窟《いはやど》に|忍《しの》び|入《い》りて、|神代《かみよ》ながらの|秘事《ひめごと》を|疾《と》く|速《すむ》やかに|探《さぐ》らせ|玉《たま》へ。|惟神《かむながら》|皇大神《すめおほかみ》の|御前《おんまへ》に|慎《つつし》み|敬《うやま》ひ|願《ね》ぎ|奉《まつ》る。|一《ひと》|二《ふた》|三《み》|四《よ》|五《いつ》|六《むゆ》|七《なな》|八《や》|九《ここの》|十《たり》|百《もも》|千《ち》|万《よろづ》、ああ|惟神《かむながら》|霊《たま》|幸倍《ちはへ》|坐世《ませ》|惟神《かむながら》|霊《たま》|幸倍《ちはへ》|坐世《ませ》』
と|珍《うづ》の|宣《の》り|言《ごと》|唱《とな》へ|上《あ》げ、|忌鋤忌鍬《いむすきいむくは》を|以《もつ》て|土《つち》を|掻《か》き|分《わ》け、|洗《あら》ひ|清《きよ》めし|金梃《かなてこ》を|岩《いは》の|隙間《すきま》に|押込《おしこ》み、やうやくにして|広《ひろ》き|厚《あつ》き|岩蓋《いはぶた》を|取《と》り|除《のぞ》いた。|黒煙《こくえん》|濛々《もうもう》として|立《た》ち|昇《のぼ》り、|少時《しばし》は|咫尺《しせき》も|弁《べん》ぜざる|如《ごと》き|惨澹《さんたん》たる|光景《くわうけい》であつた。をりから|吹《ふ》きくる|科戸《しなど》の|風《かぜ》に|黒《くろ》き|煙《けぶり》は|何処《いづく》ともなく|散《ち》り|失《う》せて、|岩戸《いはと》の|入口《いりぐち》は|階段《かいだん》まで|明《あ》きらかに|見《み》えて|来《き》た。
|玉国別《たまくにわけ》『|千早《ちはや》|振《ふ》る|昔《むかし》ながらの|秘事《ひめごと》を
|開《ひら》き|初《そ》めたる|今朝《けさ》ぞ|目出《めで》たき』
バーチル『|九頭竜《くづりう》を|弥《いや》|常久《とこしへ》に|封《ふう》じたる
|岩戸《いはと》も|開《ひら》く|今日《けふ》の|目出《めで》たさ』
サーベル|姫《ひめ》『|神代《かみよ》より|言《い》ひつぎ|語《かた》りつぎ|来《き》たる
タクシャカ|竜王《りうわう》に|会《あ》はむ|今日《けふ》かな』
|伊太彦《いたひこ》『|吾《われ》は|今《いま》この|岩窟《いはやど》の|奥底《おくそこ》を
|探《さぐ》り|見《み》むとす|許《ゆる》させ|玉《たま》へ』
|玉国別《たまくにわけ》『|何事《なにごと》も|先立《さきだ》たむとする|伊太彦《いたひこ》の
インクリネーション|現《あら》はれにけり』
|伊太彦《いたひこ》『|何事《なにごと》も|人《ひと》に|先立《さきだ》ち|進《すす》まむと
するは|吾《わ》が|身《み》のテーストなりけり』
|三千彦《みちひこ》『|伊太彦《いたひこ》のそのネーチュア|現《あら》はれて
|危《あや》ふき|穴《あな》に|進《すす》まむとぞする』
|伊太彦《いたひこ》『これしきの|岩窟《いはや》|探《さぐ》るは|難《かた》からじ
|朝飯前《あさめしまへ》のメデオーカ|事《ごと》ぞや』
|玉国別《たまくにわけ》は|伊太彦《いたひこ》を|総取締《そうとりしまり》となし、ワックス、エル|二人《ふたり》を|伴《ともな》はしめ、|一同《いちどう》を|岩窟《いはや》の|入口《いりぐち》に|待《ま》たせおき、|長《なが》き|綱《つな》の|先《さき》に|鈴《すず》をつけて|穴《あな》の|入口《いりぐち》に|掛《か》けおき、|危急《ききふ》の|場合《ばあひ》はこの|綱《つな》を|引《ひ》けば|援兵《ゑんぺい》に|何人《なにびと》か|来《き》てくれるやうと|頼《たの》みおき、|数千年《すうせんねん》の|秘密《ひみつ》の|鍵《かぎ》を|探《さぐ》るべく、|蜘蛛《くも》の|巣《す》を|払《はら》ひ|払《はら》ひ|階段《かいだん》をドンドンと|下《くだ》つて|行《ゆ》く。|不思議《ふしぎ》にも|長《なが》き|深《ふか》き|隧道《すゐだう》は|燐光《りんくわう》|燦爛《さんらん》として|輝《かがや》き、あまり|足許《あしもと》の|悩《なや》みを|訴《うつた》へないまでに|明《あか》かつた。
|三人《さんにん》はタクシャカ|竜王《りうわう》の|幽閉所《いうへいしよ》と|聞《き》こえたる|岩窟《がんくつ》を|天《あま》の|数歌《かずうた》を|歌《うた》ひながら、あるひは|下《くだ》りあるひは|上《のぼ》り、|右《みぎ》に|左《ひだり》に|折《を》れ|廻《まは》りながら|足《あし》に|任《まか》せて|探《さぐ》り|行《ゆ》く。にはかにクワツと|明《あか》るい|処《ところ》がある。|近《ちか》づき|見《み》れば|直径《ちよくけい》|三尺《さんじやく》ばかりの|丸《まる》い|茶褐色《ちやかつしよく》の|不思議《ふしぎ》な|物《もの》が|隧道《すゐだう》の|真中《まんなか》に|横《よこ》たはり、|薄明《うすあか》い|燈火《あかり》を|放射《はうしや》してゐる。|耳《みみ》をすまして|聞《き》きをれば、ブーンブーンと|不思議《ふしぎ》な|声《こゑ》が|聞《き》こえる。|三人《さんにん》は|少時《しばし》|茫然《ばうぜん》としてこの|怪《あや》しき|物体《ぶつたい》を|眺《なが》めてゐた。にはかにブツブツブツと|粥《かゆ》の|煮《に》えるやうな|音《おと》が|高《たか》く|聞《き》こえて|来《き》た。
エル『おいワックス、こいつア|何《なん》でもモンスターに|違《ちが》ひない。この|杖《つゑ》で|一《ひと》つポカンと|一撃《いちげき》を|加《くは》へたら|如何《どう》だらうかな』
ワックス『|待《ま》て|待《ま》て、|何《なに》が|出《で》よるか|知《し》れぬ。うつかり|相手《あひて》にならうものなら、それこそ|大変《たいへん》だ』
|伊太彦《いたひこ》『アハハハハ、|丁度《ちやうど》エルさまが|牛《うし》に|踏《ふ》み|潰《つぶ》された|代物《しろもの》のやうだな。ポツポツと|湯気《ゆげ》が|立《た》つてゐるやうだ。こいつア|大方《おほかた》|田野危平《たのきへい》が|八畳敷《はちでふじき》を|落《お》としておいたのかも|知《し》れないぞ』
エル『|曲津《まがつ》の|奴《やつ》、|逸早《いちはや》くこんな|処《ところ》へ|先走《さきばし》りをしやがつて、|俺等《おれたち》の|睾丸《きんたま》、オツトドツコイ|肝玉《きもたま》を|潰《つぶ》さうと|企《たく》んで、|失礼千万《しつれいせんばん》な、|吾々《われわれ》の|行路《かうろ》を|遮《さへぎ》つてゐやがるのだらう。|人《ひと》|触《ふ》るれば|人《ひと》を|斬《き》り、|馬《うま》|触《ふ》るれば|馬《うま》を|斬《き》る|程《てい》の|英雄《えいゆう》|豪傑《がうけつ》、エルさまは|到底《たうてい》そのまま|差許《さしゆる》すことは|出来《でき》ぬ。|又《また》あくまで|此奴《こいつ》を|如何《どう》とかせなくては|向側《むかふ》へ|渡《わた》る|事《こと》が|出来《でき》ぬぢやないか。のうワックス、|貴様《きさま》も|随分《ずゐぶん》|横着者《わうちやくもの》だつたが、こいつには|閉口《へいこう》したと|見《み》え|沈黙《ちんもく》を|守《まも》つてるぢやないか。モンスターが|恐《おそ》ろしいやうなことで、|岩窟《いはや》の|探険《たんけん》がどうして|出来《でき》るものか。もし|伊太彦《いたひこ》さま、このモンスターを|私《わたし》に|処分《しよぶん》さして|下《くだ》さいませぬか』
|伊太彦《いたひこ》『よろしい、お|前《まへ》の|力《ちから》で|一《ひと》つ|退散《たいさん》さしてみるのもよからう』
エル『そんなら|退散《たいさん》さして|御覧《ごらん》に|入《い》れませう。|大山鳴動《たいざんめいどう》して|鼠《ねずみ》|一匹《いつぴき》かも|知《し》れませぬぞ』
といひながら|杖《つゑ》を|真向《まつかう》に|振《ふ》り|翳《かざ》し|構《かま》へ|腰《ごし》になつて、エイヤと|一声《ひとこゑ》、ウンと|打《う》つた。たちまち|怪物《くわいぶつ》は|黒《くろ》い|細長《ほそなが》い|足《あし》が|数十本《すうじつぽん》ニユーツと|生《は》え|出《だ》し、|丸《まる》い|体《からだ》を|七八尺《しちはつしやく》ばかりの|中空《ちうくう》に|浮《う》かしてガサリガサリと|逃《に》げ|出《だ》した。よくよく|見《み》れば|数千年《すうせんねん》|劫《ごふ》を|経《へ》たる|穴蜘蛛《あなぐも》が|足《あし》を|縮《すく》めてここに|眠《ねむ》つてゐたのであつた。
エル『アツハハハハ|何《なん》だ、|蜘蛛《くも》の|親方《おやかた》|奴《め》、エルさまの|御威勢《ごゐせい》に|恐《おそ》れ、|長《なが》いコンパスを|運転《うんてん》させ、|体《からだ》を|宙《ちう》に|浮《う》かべて|雲《くも》を|霞《かすみ》と|逃《に》げ|失《う》せやがつた。イヒヒヒヒヒエルさまの|神力《しんりき》によつて【くも】なく|退散《たいさん》|仕《つかまつ》り……|後《あと》をも|見《み》ずになりにける……だ。おいワックス、|今度《こんど》は|何《なに》が|出《で》ても|俺《おれ》はもうかまはぬから、お|前《まへ》の|番《ばん》だ、|確《しつか》りやり|玉《たま》へ』
ワックス『ここの|蜘蛛《くも》は|燐《りん》の|息《いき》を|吸《す》うてをると|見《み》えて|体《からだ》までが|光《ひか》つてゐやがる。|本当《ほんたう》に|妙《めう》な|事《こと》があるものだ。サアこれから|四辺《あたり》に|心《こころ》を|配《くば》り|十二分《じふにぶん》の|注意《ちうい》を|払《はら》つて|進《すす》む|事《こと》にしよう。|伊太彦《いたひこ》|様《さま》、あなたもずゐぶん|狼狽者《あわてもの》、いやいや|何《なん》でも|先鞭《せんべん》をつけるお|方《かた》だと|玉国別《たまくにわけ》さまがいつてをられたぢやありませぬか。|今度《こんど》は|貴方《あなた》が|率先《そつせん》して|怪物退治《くわいぶつたいぢ》をやつていただきたいものですな』
|伊太彦《いたひこ》『|玉国別《たまくにわけ》|様《さま》のお|伴《とも》をしてゐる|時《とき》は、どうしても|俺《わし》が|先駈《せんく》を|勤《つと》めねばならない。しかしながら|今日《けふ》は|三人《さんにん》の|総統者《そうとうしや》だから、チツとばかり|慎重《しんちよう》の|態度《たいど》を|守《まも》つてるのだ。まあエルさま、|先走《さきばし》りとなつて|燥《はつしや》いで|下《くだ》さい。まさかとなればこの|伊太彦《いたひこ》|宣伝使《せんでんし》がお|助《たす》け|申《まを》すから』
エル『ヘヘヘヘヘうまい|事《こと》おつしやいますワイ。|何《なん》ですか、その|足許《あしもと》は、|膝坊主《ひざぼし》が|大変《たいへん》|活動《くわつどう》してるぢやありませぬか。|急性恐怖病《きようふびやう》が|起《おこ》つたのでせう』
|伊太彦《いたひこ》『なに、|急性沈着病《きうせいちんちやくびやう》が|勃発《ぼつぱつ》したのだ。|決《けつ》して|心配《しんぱい》は|要《い》らぬ。サア|進《すす》んだり|進《すす》んだり』
エル『|何《なん》だかチツとばかり|寂寥《せきれう》の|感《かん》に|打《う》たれて|来《き》ました。|一《ひと》つ|歌《うた》を|歌《うた》つて|元気《げんき》をつけますから|囃《はや》して|下《くだ》さい、|頼《たの》みますよ』
ワックス『アハハハハ、|到頭《たうとう》エルの|奴《やつ》、|生地《きぢ》を|現《あら》はしやがつたな。|空威張《からゐば》りの|睾丸潰《きんたまつぶ》しの|大将《たいしやう》|奴《め》、ウツフフフフ』
エル『こりやこりやワックス|馬鹿息子《ばかむすこ》  オツトドツコイこりや|違《ちが》うた
|善言美詞《ぜんげんびし》のこの|教《をしへ》  |忘《わす》れて|口《くち》を|滑《すべ》らせた
ワックスさまよチツとばかり  お|腹《はら》が|立《た》つかは|知《し》らねども
|知《し》つてる|通《とほ》りの|狼狽者《あわてもの》  |思《おも》はぬ|口《くち》が|滑《すべ》りました
|神《かみ》の|心《こころ》に|見直《みなほ》して  |決《けつ》して|怒《おこ》つちやなりませぬ
|岩戸《いはと》の|口《くち》からドンドンと  |限《かぎ》り|知《し》られぬ|階段《かいだん》を
|下《くだ》りて|又《また》も|上《のぼ》りつめ  |右《みぎ》や|左《ひだり》と|屈曲《くつきよく》し
|漸《やうや》くここに|来《き》て|見《み》れば  パツと|光《ひか》るは|摩訶不思議《まかふしぎ》
|合点《がてん》のゆかぬモンスター  |一《ひと》つ|調《しら》べて|見《み》むものと
|金剛杖《こんがうづゑ》をば|振《ふ》り|翳《かざ》し  ウンとばかりに|打《う》ち|据《す》うる
ポンと|音《おと》して|黒煙《くろけぶり》  |鳥賊《いか》が|墨《すみ》をば|吐《は》くやうに
|四辺《あたり》を|真黒々助《まつくろくろすけ》に  |包《つつ》んでしまつた|可笑《をか》しさよ
しばらく|眺《なが》めゐる|間《うち》に  あまたのコンパス|附着《ふちやく》して
|怪体《けたい》な|体《からだ》を|中空《ちうくう》に  ヒヨロリヒヨロリと|揺《ゆ》すりつつ
|前方《ぜんぱう》さして|逃《に》げて|行《ゆ》く  こいつあテツキリ|蜘蛛《くも》の|精《せい》
|何処《どこ》どこまでもおつついて  |往生《わうじやう》させねば|措《お》かないぞ
こちらが|命《いのち》をとらるるか  むかふを|往生《わうじやう》さしてやるか
|二《ふた》つの|中《うち》の|一《ひと》つをば  |選《えら》まにやならぬ|今《いま》の|破目《はめ》
|梵天《ぼんてん》|帝釈《たいしやく》|自在天《じざいてん》  オツトドツコイ|国《くに》の|祖《おや》
|国治立《くにはるたち》の|大御神《おほみかみ》  |何《なに》とぞエルに|神力《しんりき》を
|腕《うで》もたわわに|与《あた》へませ  |偏《ひとへ》に|願《ねが》ひ|奉《たてまつ》る
|伊太彦司《いたひこつかさ》に|従《したが》ひて  |初《はじ》めて|岩窟《いはや》の|探険《たんけん》と
|出《で》かけた|吾々《われわれ》|両人《りやうにん》は  |到底《たうてい》|様子《やうす》が|分《わか》らない
いかなる|枉《まが》の|陥穽《かんせい》に  |陥《お》ちて|命《いのち》を|落《お》とすやら
|今《いま》から|案《あん》じ|過《す》ごされる  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|御霊《みたま》|幸《さち》はへましませよ』
かく|歌《うた》ひなながら|又《また》もや|曲《まが》り|角《かど》に|着《つ》いた。|角《かど》を|曲《まが》るや|否《いな》やワックスの|現《うつつ》を|抜《ぬ》かして|恋慕《れんぼ》してゐたデビス|姫《ひめ》が|起居物腰《たちゐものごし》しとやかに、|袖《そで》にて|赤《あか》い|口《くち》を|隠《かく》しながら、やや|伏目勝《ふしめが》ちにスツクと|立《た》つてゐる。エルは|勢《いきほ》ひよく|進《すす》む|途端《とたん》に、この|女《をんな》に|衝突《しようとつ》し、
『アイタタタタタ、こりや|阿魔《あま》ツ|女《ちよ》、|往来《わうらい》の|真中《まんなか》に|黙《だま》つて|立《た》てつてゐやがるものだから、|到頭《たうとう》|俺《おれ》の|出歯《でば》をきつい|目《め》に|打《う》つてしまつたぢやないか。これ|見《み》よ、この|通《とほ》り|歯《は》の|間《あひだ》から|黒《くろ》い|血《ち》がポトポトと|流《なが》れてゐる。「|悪《わる》い|事《こと》いたしました」と|一言《ひとこと》|謝《あやま》らぬかい。|馬鹿《ばか》だな』
|女《をんな》『ホホホホホ、あなたは|狼狽者《あわてもの》のエルさまぢやありませぬか。|昼《ひる》の|最中《さいちう》に|大道《だいだう》を|歩《ある》いては|牛《うし》の|尻《しり》に|衝突《しようとつ》し、|又《また》こんなところで|妾《あたい》のお|尻《いど》に|衝突《しようとつ》し、|出歯《でば》を|打《う》つとは|天下一品《てんかいつぴん》のチヨカ|助《すけ》だな』
エル『ヤア、デビス|姫様《ひめさま》でございましたか。|腹《はら》の|悪《わる》い、|吾々《われわれ》を|吃驚《びつくり》さそうと|思《おも》つて、ソツと|階段《かいだん》を|下《くだ》り、あの|四辻《よつつじ》から、ここへ|先廻《さきまは》りして|吃驚《びつくり》さす|考《かんが》へですな。|本当《ほんたう》に|姫様《ひめさま》も|三千彦司《みちひこつかさ》の|奥《おく》さまになつてから|大変《たいへん》なお|転婆《てんば》になりましたな。おいワックス、|貴様《きさま》もこんなところで、|改心《かいしん》したといふものの|幾分《いくぶん》か|未練《みれん》が|残《のこ》つてゐるだらうから、|一言《ひとくち》|怨《うら》みの|数《かず》を|陳列《ちんれつ》して|姫様《ひめさま》のお|聞《き》きに|達《たつ》したらどうだ。こんな|好《い》い|機会《きくわい》は|一生《いつしやう》の|間《あひだ》に|又《また》とは|無《な》いぞよ。|俺《おれ》が|邪魔《じやま》になるなら|友達《ともだち》の|誼《よしみ》で|気《き》を|利《き》かしてやる。モシ|伊太彦《いたひこ》さま、|少《すこ》しの|間《ま》、|控《ひか》へてをりませうかな』
|伊太彦《いたひこ》『……』
ワックス『これはこれは、デビス|姫様《ひめさま》、この|恐《おそ》ろしい|岩窟内《がんくつない》を|女《をんな》|一人《ひとり》で|探険《たんけん》とは|実《じつ》に|恐《おそ》れ|入《い》りました。いや|感心《かんしん》いたしました。その|健気《けなげ》なお|志《こころざし》を|看破《かんぱ》して、このワックスは|何時《いつ》も|心《こころ》を|悩《なや》めたのでございますよ。|三千彦《みちひこ》|様《さま》のお|側《そば》|近《ちか》く|膠《にかは》のやうに|引《ひつ》ついて|喜《よろこ》んでゐらつしやるものだから、お|顔《かほ》を|見《み》ながら|儘《まま》ならず、まるで|写真《しやしん》を|見《み》てゐるやうだつたが、|今日《けふ》は|一言《ひとくち》ぐらゐは|言葉《ことば》をかけて|下《くだ》さるでせうね』
|女《をんな》『ホホホこれワックスさま、あなたはそこまで|妾《あたい》を|本当《ほんたう》に|思《おも》つて|下《くだ》さるのですか。|本当《ほんたう》ならば|嬉《うれ》しいワ』
ワックス『|酒《さけ》も|飲《の》まずに、どうして|男《をとこ》が|女《をんな》を|捉《つか》まへて|嘘《うそ》がいへませう。|心底《しんそこ》から【ホ】の|字《じ》と【レ】の|字《じ》だから、ここまで|実《じつ》のところは|跟《つ》いて|来《き》たのですよ。チツとは|男《をとこ》の|心《こころ》にも|同情《どうじやう》を|寄《よ》せてもらつても|余《あま》り|罰《ばち》が|当《あた》りますまいがな』
エル『アハハハハハおい、ワックス、そこだ そこだ、|正念場《しやうねんば》だ、|確《しつか》りやれ、ワツシヨワツシヨ』
|女《をんな》『ホホホホホあのエルさまの|睾丸潰《きんたまつぶ》しさま、|犬《いぬ》か|何《なん》ぞのやうに|嗾《けし》をかけなくても|宜《い》いぢやありませぬか』
エル『コレ、|姫《ひめ》さま、|一生懸命《いつしやうけんめい》ですよ。|友人《いうじん》の|恋《こひ》を|叶《かな》へてやりたいばつかりに|骨《ほね》を|折《を》つてゐるのですから、あまり|憎《にく》うはありますまい。あなただつてこんな|処《ところ》に|一人《ひとり》|待《ま》つてるくらゐだから|万更《まんざら》ワックスがお|嫌《きら》ひでないことは|百《ひやく》も|承知《しようち》、|千《せん》も|合点《がつてん》の|私《わたし》、ずゐぶん|気《き》を|利《き》かしてあげますよ。しかしながら|伊太彦《いたひこ》さまがチツとばかり|煙《けぶ》たうなつて|来《き》た。モシ|伊太彦《いたひこ》さま、|表《おもて》は|表《おもて》、|裏《うら》は|裏《うら》、めつたに|三千彦《みちひこ》さまの|奥《おく》さまをワックスが|取《と》らうといふのぢやないから、|握手《あくしゆ》ぐらゐは|大目《おほめ》に|見《み》てやつて|下《くだ》さるでせうな』
|伊太彦《いたひこ》『オイ、|両人《りやうにん》、この|女《をんな》に|指《ゆび》|一本《いつぽん》でも|触《さ》へることはならぬぞ。|大変《たいへん》な|事《こと》が|出来《しゆつたい》するからの』
エル『さてもさても|融通《ゆうづう》の|利《き》かぬ|唐変木《たうへんぼく》だな。おいワックス、|俺《おれ》が|三千彦《みちひこ》さまに|弁解《べんかい》をしてやるから|一寸《ちよつと》|形式《けいしき》だけ|握手《あくしゆ》やつたら|如何《どう》だ』
|女《をんな》『もし、エルさま、ワックスさまの|代理《だいり》として|貴方《あなた》と|握手《あくしゆ》しようぢやありませぬか、|握手《あくしゆ》したといつても|決《けつ》して|心《こころ》は|貴方《あなた》に|移《うつ》しませぬよ』
エル『おいワックス、|俺《おれ》が|代理権《だいりけん》を|執行《しつかう》しても|滅多《めつた》に|姦通《かんつう》の|訴訟《そしよう》は|起《おこ》さないだらうな』
ワックス『うん』
エル『ハハア、こいつ、|割《わ》りとは|気《き》の|弱《よわ》い|奴《やつ》だ。|恥《は》づかしいとみえるな。それではこのエルが|暫《しばら》く|弁理公使《べんりこうし》を|勤《つと》めてやらう。サア、デビスさま、お|手《て》を|出《だ》して|御覧《ごらん》』
|女《をんな》『はい、|有難《ありがた》うございます。サアあなたのお|手《てて》をズツと|伸《の》ばして|下《くだ》さい』
エル『たとへ|代理権《だいりけん》にもせよ、こんなナイスに|手《て》を|握《にぎ》られるのはチツと|気分《きぶん》が|悪《わる》い……ことはないワイ。エヘヘヘヘおい、ワックス、すみませぬな。|必《かなら》ず|気《き》を|悪《わる》うして|下《くだ》さるな、|伊太彦《いたひこ》さま、どうぞここは|宣伝使《せんでんし》のお|情《なさ》けをもつて|大目《おほめ》に|見《み》て|下《くだ》さい。エツヘヘヘヘヘ』
と|嬉《うれ》しさうに|笑《わら》ひながらグツと|手《て》をつき|出《だ》した。|女《をんな》はエルの|手《て》を|握《にぎ》るや|否《いな》や|赤《あか》い|唇《くちびる》へペタリと|当《あ》てたと|思《おも》ふ|途端《とたん》、エルは「キヤツ」と|悲鳴《ひめい》を|上《あ》げ|其《その》|場《ば》に|倒《たふ》れてしまつた。|女《をんな》はたちまち|般若《はんにや》のやうな|面《めん》になり、
|女《をんな》『ケラケラケラケラケラ、|俺《わし》が|折角《せつかく》|休《やす》んでるところを|金剛杖《こんがうづゑ》で|頭《あたま》を|殴《なぐ》りやがつたから、その|敵討《かたきうち》だ、イツヒヒヒヒ』
と|腮《あご》をしやくる|途端《とたん》に|又《また》もとの|大蜘蛛《おほくも》となり、|数《かず》|限《かぎ》りもなきコンパスをニユツと|現《あら》はし、|七八尺《しちはつしやく》|上《うへ》の|方《はう》に|体《からだ》を|浮《うか》してノソリノソリと|奥《おく》を|目《め》がけて|這《は》うて|行《ゆ》く。|伊太彦《いたひこ》は|直《ただ》ちに|近寄《ちかよ》つてエルの|傷所《きずしよ》に|息《いき》を|吹《ふ》きかけ、|天《あま》の|数歌《かずうた》を|歌《うた》ひ|上《あ》げた。|半時《はんとき》ばかり|経《た》つてエルはやうやく|正気《しやうき》づき、|痛《いた》さを|堪《こら》へながら|意気消沈《いきせうちん》の|態《てい》で、|二人《ふたり》の|後《あと》に|従《したが》ひおづおづしながら|進《すす》み|行《ゆ》く。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
第九章 |夜光玉《やくわうのたま》〔一五三四〕
エルは|怪物《くわいぶつ》に|肝玉《きもだま》を|取《と》られ、|色《いろ》|青《あを》ざめ、|臆病風《おくびやうかぜ》に|誘《さそ》はれて、そろそろ|慄《ふる》ひ|出《だ》した。
ワックス『オイ、エルの|奴《やつ》、ちつと|確《しつか》りせぬかい、|睾丸《きんたま》を|提《さ》げた|一人前《いちにんまへ》の|男《をとこ》が、|蜘蛛《くも》の|化物《ばけもの》ぐらゐに|驚《おどろ》いて、どうしてこの|探険《たんけん》が|出来《でき》ようか。|今《いま》まで|俺《おれ》たちがあらゆる|悪業《あくごふ》を|尽《つく》した|罪《つみ》を|償《つぐな》ふために、|今度《こんど》は|抜群《ばつぐん》の|手柄《てがら》を|現《あら》はさにやならぬぢやないか、|本当《ほんたう》に|腰抜《こしぬけ》ぢやなア』
エル『さう|叱《しか》るものぢやないワ、|今《いま》までの|俺《おれ》ならもつと|勇気《ゆうき》を|出《だ》すのぢやけれど、ブラ|下《さ》げる|睾丸《きんたま》が|無《な》くなつてをるのぢやから、サウ|註文通《ちうもんどほ》りにゆかないワ。そこは|一《ひと》つ|同情《どうじやう》してくれないと|困《こま》るぢやないか』
ワックス『|何《なん》だ、その|間抜《まぬけ》た|面《つら》は。わづかの|顔面《がんめん》に、|免役地《めんえきち》や、|未開墾地《みかいこんち》や、|荒蕪地《くわうぶち》が|沢山《たくさん》|現《あら》はれとると|思《おも》へば、|矢張《やは》り|間《ま》に|合《あ》はぬ|代物《しろもの》だつたワイ。モシ|伊太彦《いたひこ》さま、こんな|奴《やつ》これから|奥《おく》へ|連《つ》れて|行《ゆ》かうものなら、|吾々《われわれ》の|迷惑《めいわく》ですから、ここから|一層《いつそう》|帰《いな》してやつたらどうでせうか』
|伊太彦《いたひこ》『それも|好《よ》からう。サア エル、これから|免役《めんえき》だ。トツトと|帰《かへ》つたら|好《よ》からうぞ』
エル『ハイ|有難《ありがた》う。そんなら|何卒《どうぞ》、|入口《いりぐち》まで|送《おく》つて|下《くだ》さいますか』
|伊太彦《いたひこ》『そいつは|些《ちつ》と|困《こま》つたなア』
ワックス『オイエル、|確《しつか》りせぬかい、|人《ひと》は|心《こころ》の|持《も》ちやう|一《ひと》つだ。サア|一人《ひとり》|帰《かへ》つたがよからう。この|金剛杖《こんがうづゑ》|一本《いつぽん》あれば|大丈夫《だいぢやうぶ》だから』
エル『そンなら|仕方《しかた》がない、|三人《さんにん》の|中間《まんなか》になつて|跟《つ》いて|行《ゆ》くことにしよう』
ワックス『ハハア、たうと|屁古《へこ》たれやがつたな。そンなら、|伊太彦《いたひこ》さま、|悪《あく》にも|強《つよ》けりや|善《ぜん》にも|強《つよ》いこのワックスが|先頭《せんとう》に|立《た》ちませう、こいつは|面白《おもしろ》い』
と、|四股《しこ》|踏《ふ》みながら、|燐光《りんくわう》に|光《ひか》る|岩窟《いはや》の|隧道《すゐだう》を、|一歩一歩《ひとあしひとあし》|探《さぐ》るやうにして|進《すす》み|入《い》る。|向《む》かふの|方《はう》から|二三個《にさんこ》の|光《ひか》つた|玉《たま》が|地上《ちじやう》|三尺《さんじやく》ばかりのところを|浮《う》いたやうに|此方《こちら》に|向《む》かつて|進《すす》んで|来《く》る。よくよく|見《み》ればその|青白《あをじろ》い|玉《たま》の|中《なか》には、|嫌《いや》らしい|顔《かほ》がハツキリと|現《あら》はれてゐる。エルは|腰《こし》を|屈《かが》め、ワックスの|背《せな》に|顔《かほ》を|当《あ》てながら、|足《あし》もワナワナ|跟《つ》いて|行《ゆ》く。|青白《あをじろ》い|火団《くわだん》は|強大《きやうだい》なる|音響《おんきやう》と|共《とも》に、|三個《さんこ》|一度《いちど》にワックスの|一二間前《いちにけんまへ》の|所《とこ》で|爆発《ばくはつ》した。エルは「キヤツ」と|叫《さけ》んで、ワックスの|肩《かた》を|掴《つか》んだまま|倒《たふ》れた。|止《や》むを|得《え》ずワックスもその|場《ば》にドンと|倒《たふ》れてしまつた。
|伊太彦《いたひこ》『オイ、ワックスさま、エルさま、|起《お》|来《き》た|起《お》きた、|敵《てき》は|粉砕《ふんさい》の|厄《やく》に|遭《あ》つて|消《き》え|失《う》せてしまつた。もう|大丈夫《だいぢやうぶ》だ。|神様《かみさま》の|御威光《ごゐくわう》に|怖《おそ》れ|脆《もろ》くも|滅亡《めつぼう》したとみえる。アハハハハ』
ワックス『これしきの|事《こと》に|驚《おどろ》くワックスぢやありませぬが、エルの|奴《やつ》|人《ひと》の|首筋《くびすぢ》を|掴《つか》むだまま|倒《たふ》れやがつたものだから、あたら|勇士《ゆうし》も|共倒《ともだふ》れの|厄《やく》に|遭《あ》ひました。オイ エル、|確《しつか》りしやがらぬか』
エル『イヤもう|確《しつか》りする。|哥兄《あにき》お|前《まへ》|確《しつか》りしてゐてくれよ。お|前《まへ》と|伊太彦《いたひこ》さまとさへ|強《つよ》ければ|大丈夫《だいぢやうぶ》だからなア』
ワックス『|何《なん》というても|数千年来《すうせんねんらい》|密閉《みつぺい》されてあつた|魔《ま》の|岩窟《いはや》だから、|種々《しゆじゆ》の|奇怪千万《きつくわいせんばん》な|珍事《ちんじ》が|勃発《ぼつぱつ》するのは|覚悟《かくご》の|前《まへ》だ。サア|行《ゆ》かう、タクシャカ|竜王《りうわう》に|対《たい》し|吾々《われわれ》は|赦免《しやめん》のお|使《つかひ》だから、さう|無暗《むやみ》に|悪魔《あくま》が|俺《おれ》たちを|困《くる》しめる|筈《はず》がない。エルが|怪物《くわいぶつ》に|手《て》を|噛《か》まれたのも|矢張《やつぱ》りエルが|悪《わる》いのだ、|弄《いら》はぬ|蜂《はち》は|螫《さ》さぬからなア。サア|一《ひと》つ|機嫌《きげん》を|直《なほ》して|宣伝歌《せんでんか》でも|歌《うた》つて|元気《げんき》をつけようぢやないか。|俺《おれ》が|歌《うた》ふから|後《あと》から|共節《ともぶし》について|来《こ》い。|何《なん》だか|何処《どこ》ともなしに|気分《きぶん》の|好《よ》い、|事《こと》はない|魔《ま》の|岩窟《いはや》だ。
|朝日《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも  |月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも
|岩窟《いはや》の|蜘蛛《くも》は|化《ば》けるとも  |何《なに》か|怖《おそ》れむ|三五《あななひ》の
|神《かみ》の|使《つかひ》と|現《あら》はれし  |伊太彦司《いたひこつかさ》を|始《はじ》めとし
ワックス エルの|三柱《みはしら》だ  |三千世界《さんぜんせかい》のその|間《あひだ》
アヅモス|山《さん》の|底津根《そこつね》に  |封《ふう》じ|込《こ》まれた|竜王《りうわう》の
|罪《つみ》をば|赦《ゆる》し|救《すく》ひ|上《あ》げ  |尊《たふと》き|神《かみ》の|御使《みつかひ》と
なさむがために|来《き》たりけり  たとへ|如何《いか》なる|怪物《くわいぶつ》が
|雲霞《うんか》のごとく|潜《ひそ》むとも  |神《かみ》の|力《ちから》を|身《み》に|浴《あ》びて
|進《すす》む|吾《わ》が|身《み》は|金剛不壊《こんがうふゑ》  |如意《によい》の|宝珠《ほつしゆ》の|玉《たま》なるぞ
|水《みづ》に|溺《おぼ》れず|火《ひ》に|焼《や》けず  |錆《さび》ず|腐《くさ》らず|曇《くも》らずに
|幾万年《いくまんねん》の|後《のち》までも  |天地《てんち》の|宝《たから》と|光《ひか》りゆく
|来《き》たれよ|来《き》たれ|曲津神《まがつかみ》  |蜘蛛《くも》も|蛙《かはづ》も|虫族《むしけら》も
|神力無双《しんりきむさう》の|吾々《われわれ》に  |手向《てむ》かふ|事《こと》は|出来《でき》よまい
|今《いま》|現《あら》はれた|三《みつ》つの|玉《たま》  |怪《あや》しき|面《つら》を|晒《さら》しつつ
|吾《われ》らが|前《まへ》に|進《すす》み|来《き》て  |木《こ》つ|端微塵《ぱみぢん》に|粉砕《ふんさい》し
|煙《けぶり》と|消《き》えし|哀《あは》れさよ  |吾《わ》が|神力《しんりき》はこの|通《とほ》り
|岩窟《いはや》に|潜《ひそ》む|曲神《まがかみ》よ  |吾《わ》が|言霊《ことたま》を|聞《き》きしめて
|決《けつ》して|無礼《ぶれい》をするでない  |洒落《しやれ》た|事《こと》をばいたすなら
|決《けつ》して|許《ゆる》しはせぬほどに  ワックスさまの|身魂《みたま》には
|鬼《おに》も|大蛇《をろち》も|狼《おほかみ》も  ライオンまでも|棲《す》んでゐる
さうかと|思《おも》へば|天地《あめつち》を  |完全《うまら》に|委曲《つばら》に|固《かた》めなし
|造《つく》りたまひし|大御祖《おほみおや》  |尊《たふと》き|神《かみ》が|神集《かむつど》ひ
|無限《むげん》の|神力《しんりき》|輝《かがや》かし  |控《ひか》へてござるぞ|気《き》をつけよ
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |息《いき》が|塞《ふさ》がりそになつた
|伊太彦司《いたひこつかさ》よ|今《いま》ここで  ちよつと|休息《きうそく》|仕《つかまつ》り
|天津祝詞《あまつのりと》や|神言《かみごと》を  |奏上《そうじやう》なして|岩窟《いはやど》の
|妖気《えうき》を|払《はら》ひ|参《まゐ》りませう  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|叶《かな》はぬ|時《とき》の|神頼《かみだの》み  |誠《まこと》に|済《す》まぬと|知《し》りながら
かうなりやもはや|仕様《しやう》がない  ここで|一服《いつぷく》|仕《つかまつ》る』
|伊太彦《いたひこ》|一行《いつかう》はまたもや|隧道《すゐだう》をドンドンドンと|下《くだ》り|行《ゆ》く。そこには|雷《らい》のごとき|音《おと》が|聞《き》こえてをる。ハテ|不思議《ふしぎ》と、|一町《いつちやう》ばかりまた|平坦《へいたん》な|隧道《すゐだう》を|下《くだ》つて|行《ゆ》くと、|相当《さうたう》に|広《ひろ》い|河《かは》があつて、|岩《いは》から|出《で》て|岩《いは》に|吸収《きふしう》さるるごとく|氷《こほり》のごとき|冷《つめ》たい|水《みづ》が|流《なが》れてゐる。|三人《さんにん》は|流《なが》れを|渡《わた》つて|向《む》かふへ|着《つ》いた。ここには|大小無数《だいせうむすう》の|色々《いろいろ》の|形《かたち》をした|岩《いは》が、キラキラ|光《ひか》つて|立《た》つてゐる。さうして|何処《どこ》ともなしに|岩《いは》の|隙間《すきま》から|明《あか》りがさしてゐるのは|一《ひと》つの|不思議《ふしぎ》である。ハテ|不思議《ふしぎ》と|三人《さんにん》は|四辺《あたり》を|見廻《みまは》せば、|鐘乳石《しようにゆうせき》の|一丈《いちぢやう》もあらうといふ|立柱《たちばしら》の|上《うへ》に、|夜光《やくわう》の|玉《たま》が|輝《かがや》いてゐるのが|目《め》についた。|伊太彦《いたひこ》は|此処《ここ》にて|天津祝詞《あまつのりと》を|奏上《そうじやう》し、|神慮《しんりよ》を|伺《うかが》つてみた。|神示《しんじ》に|依《よ》ればこの|玉《たま》は|夜光《やくわう》の|玉《たま》であつて、タクシャカ|竜王《りうわう》が|宝物《はうもつ》である。されどこの|玉《たま》を|彼《かれ》に|持《も》たせおく|時《とき》は、|再《ふたた》び|天地《てんち》の|間《あひだ》に|跋扈跳梁《ばつこてうりやう》して|風水火《ふうすゐくわ》の|天災《てんさい》を|誘起《いうき》するをもつて、|月照彦《つきてるひこ》の|神《かみ》がこれを|取《と》り|上《あ》げ、ここに|安置《あんち》しおき、|岩窟《がんくつ》の|底《そこ》|深《ふか》く|竜王《りうわう》を|封《ふう》じおかれたとのことであつた。さうして、この|玉《たま》は|伊太彦《いたひこ》が|自《みづか》ら|持《も》ち|帰《かへ》り|玉国別《たまくにわけ》に|渡《わた》せとの|神示《しんじ》である。|伊太彦《いたひこ》は|大《おほ》いに|喜《よろこ》び、|種々《いろいろ》と|工夫《くふう》をこらしてその|玉《たま》を|手《て》に|入《い》れ|恭《うやうや》しく|懐《ふところ》に|納《をさ》め、またもや|天《あま》の|数歌《かずうた》を|歌《うた》ひながら、|地底《ちてい》の|岩窟《がんくつ》をさして|際限《さいげん》もなく|進《すす》み|行《ゆ》く。|懐《ふところ》に|蔵《ざう》せし|玉《たま》の|光《ひかり》によつて|地底《ちてい》の|岩窟《がんくつ》も|明《あか》くなり、|崎嶇《きく》たる、|或《あるひ》は|細《ほそ》く、|或《あるひ》は|狭《せま》き|岩穴《いはあな》を|潜《くぐ》つて|最低《さいてい》の|岩窟《がんくつ》についた。|此処《ここ》には|岩蓋《いはぶた》が|施《ほどこ》して、タクシャカ|竜王《りうわう》、すなはち|九頭竜《くづりう》が|堅《かた》く|封《ふう》じ|込《こ》めてあつた。
|伊太彦《いたひこ》は|停立《ていりつ》して|神示《しんじ》を|宣《の》り|伝《つた》へたり。
『|神代《かみよ》の|昔《むかし》|高天《たかま》にて  |天地《てんち》の|主《ぬし》と|現《あ》れませる
|大国常立大神《おほくにとこたちおほかみ》は  |宇宙万有《うちうばんいう》|造《つく》りなし
|神《かみ》の|形《かたち》の|生宮《いきみや》を  |最後《さいご》に|造《つく》りなさむとて
|天足《あだる》の|彦《ひこ》や|胞場姫《えばひめ》の  |珍《うづ》の|御子《みこ》をば|生《う》みたまふ
かかるところへ|天界《てんかい》の  |海王星《かいわうせい》より|現《あら》はれし
|汝《なんぢ》タクシャカ|竜王《りうわう》は  |神《かみ》の|御国《みくに》を|汚《けが》さむと
|胞場《えば》の|身魂《みたま》に|憑依《ひようい》して  |神《かみ》の|教《をしへ》に|背《そむ》かしめ
|蒼生草《あをひとぐさ》を|悉《ことごと》く  |罪《つみ》の|奴隷《どれい》と|汚《けが》したる
|悪逆無道《あくぎやくぶだう》を|矯《た》めむとて  |皇大神《すめおほかみ》の|勅《みこと》もて
|月照彦《つきてるひこ》の|大神《おほかみ》は  |汝《なんぢ》を|此処《ここ》に|封《ふう》じまし
|世《よ》の|禍《わざはひ》を|除《のぞ》かれぬ  さはさりながらタクシャカの
|霊《みたま》の|邪気《じやき》が|世《よ》に|残《のこ》り  |八岐大蛇《やまたをろち》や|醜狼《しこぎつね》
|曲鬼《まがおに》あまた|現《あら》はれて  |神《かみ》の|造《つく》りし|御国《みくに》をば
|汚《けが》し|曇《くも》らす|果敢《はか》なさよ  |此《こ》の|世《よ》の|曲《まが》を|清《きよ》めむと
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の|大御神《おほみかみ》  |瑞《みづ》の|御霊《みたま》の|大神《おほかみ》は
|千座《ちくら》の|置戸《おきど》を|負《お》ひたまひ  |汝《なんぢ》が|犯《をか》せし|罪科《つみとが》を
|宥《ゆる》して|地上《ちじやう》に|救《すく》ひ|上《あ》げ  |尊《たふと》き|神《かみ》の|御使《みつかひ》と
なさせたまはむ|思召《おぼしめ》し  |汝《なんぢ》タクシャカ|竜王《りうわう》よ
|吾《わ》が|宣《の》り|伝《つた》ふ|言《こと》の|葉《は》を  |心《こころ》の|底《そこ》より|悔悔《くわいご》して
|喜《よろこ》び|仰《あふ》ぎ|聞《き》くならば  |今《いま》こそ|汝《なんぢ》を|救《すく》ふべし
|善悪邪正《ぜんあくじやせい》の|分《わか》れ|際《ぎは》  |完全《うまら》に|委曲《つばら》に|復命《かへりごと》
|申《まを》させたまへ|惟神《かむながら》  |神《かみ》の|御言《みこと》を|蒙《かうむ》りて
ここに|誠《まこと》を|述《の》べ|伝《つた》ふ  |一《ひと》|二《ふた》|三《み》|四《よ》|五《いつ》つ|六《む》つ
|七《なな》|八《や》|九《ここの》つ|十《たり》|百《もも》|千《ち》  |万《よろづ》の|神《かみ》はアヅモスの
この|聖場《せいぢやう》に|集《あつ》まりて  |三千世界《さんぜんせかい》を|水晶《すいしやう》の
|世《よ》に|立直《たてなほ》し|天地《あめつち》の  |一切衆生《いちさいしゆじやう》を|救《すく》ひます
|畏《かしこ》き|御世《みよ》となりけるぞ  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
ここに|伊太彦《いたひこ》|現《あら》はれて  |汝《なんぢ》が|清《きよ》き|返答《いらへ》まつ』
と|宣《の》り|終《をは》れば、タクシャカ|竜王《りうわう》は、|見《み》るも|怖《おそ》ろしき|九頭一体《きうとういつたい》の|巨躯《きよく》を|現《あら》はし、|各《おのおの》|二枚《にまい》の|舌《した》を|吐《は》き|出《だ》しながら、|口許《くちもと》から、|青《あを》、|赤《あか》、|紫《むらさき》、|白《しろ》、|黄《き》、|橄欖色《かんらんしよく》などの|煙《けぶり》を|盛《さか》んに|吐《は》き|出《だ》し、|忽《たちま》ち|白髪赤面《はくはつせきめん》の|老人《らうじん》となり、|赤色《あかいろ》の|衣《ころも》を|全身《ぜんしん》に|纒《まと》ひ、|岩窟《がんくつ》の|戸《と》をパツと|開《ひら》いて|伊太彦《いたひこ》の|前《まへ》に|進《すす》み|恭《うやうや》しく|目礼《もくれい》しながら、|歌《うた》をもつてこれに|答《こた》へた。
『|三千年《さんぜんねん》の|古《いにしへ》より  |月照彦《つきてるひこ》の|大神《おほかみ》に
|押込《おしこ》められし|吾《われ》こそは  タクシャカ|竜王《りうわう》|魔《ま》の|頭《かしら》
|暴風《ばうふう》|起《お》こし|火《ひ》を|放《はな》ち  |豪雨《がうう》を|降《ふ》らして|天地《あめつち》を
|自由自在《じいうじざい》に|乱《みだ》したる  |吾《われ》は|悪魔《あくま》の|霊《みたま》ぞや
|罪障《ざいしやう》|深《ふか》き|吾《われ》こそは  |八千万劫《はつせんまんごふ》の|末《すゑ》までも
|常暗《とこやみ》なせる|岩窟《がんくつ》に  |捨《す》てられ|苦《くる》しむものなりと
|覚悟《かくご》を|極《きは》めゐたりしが  ここに|一陽来復《いちやうらいふく》し
|仁慈《じんじ》の|神《かみ》の|御恵《みめぐ》みに  |再《ふたた》び|吾《われ》を|世《よ》に|出《い》だし
|救《すく》はむための|御使《おんつかひ》  |謹《つつし》み|感謝《かんしや》し|奉《たてまつ》る
いざこの|上《うへ》は|一日《いちにち》も  |早《はや》く|地上《ちじやう》に|救《すく》はれて
|天地《てんち》の|陽気《やうき》を|調節《てうせつ》し  |蒼生草《あをひとぐさ》や|鳥《とり》|獣《けもの》
|草木《くさき》の|末《すゑ》に|至《いた》るまで  |神《かみ》のまにまに|守《まも》るべし
|救《すく》はせたまへ|神司《かむづかさ》  |今《いま》まで|犯《をか》せし|罪《つみ》を|悔《く》い
ここに|至誠《しせい》を|吐露《とろう》して  |改心《かいしん》|誓《ちか》ひ|奉《たてまつ》る
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊《みたま》の|恩頼《ふゆ》を|給《たま》へかし』
と|言葉《ことば》も|爽《さはや》かに|答《こた》へた。|伊太彦《いたひこ》は、
『タクシャカの|竜神《かみ》は|心《こころ》を|改《あらた》めて
|服《まつろ》ふといひし|言《こと》の|葉《は》|尊《たふと》き
いざさらば|早《はや》くこの|場《ば》を|出《い》でまして
|登《のぼ》らせたまへ|地《つち》の|表《おもて》に』
タクシャカ『|有難《ありがた》し|花《はな》|咲《さ》く|春《はる》に|廻《めぐ》り|会《あ》ひ
|君《きみ》に|遇《あ》ひたる|今日《けふ》の|嬉《うれ》しさ
|今《いま》までの|悪《あ》しき|行《おこな》ひ|改《あらた》めて
|誠《まこと》|一《ひと》つに|神《かみ》に|仕《つか》へむ』
|伊太彦《いたひこ》『このごろの|知辺《しるべ》なしとも|地《ち》の|上《うへ》に
|因縁《ゆかり》ありせば|安《やす》くかへらせ』
かく|互《たが》ひに|歌《うた》を|交換《かうくわん》し、タクシャカ|竜王《りうわう》を|従《したが》へ、ワックス、エルの|両人《りやうにん》に|先頭《せんとう》をさせながら、|隧道《すゐだう》をあるひは|登《のぼ》り、あるひは|下《くだ》り、|左右《さいう》に|屈曲《くつきよく》しながら|漸《やうや》くにして、|元《もと》の|入口《いりぐち》に|登《のぼ》りついた。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 加藤明子録)
第一〇章 |玉国《たまくに》〔一五三五〕
|伊太彦司《いたひこつかさ》に|導《みちび》かれ  |三千年《さんぜんねん》の|幽閉《いうへい》を
ヤツと|免《のが》れて|千仭《せんじん》の  |地底《ちてい》の|闇《やみ》より|登《のぼ》り|来《く》る
タクシャカ|竜王《りうわう》は|人体《じんたい》と  |変化《へんげ》の|術《じゆつ》を|使《つか》ひつつ
|満面《まんめん》|笑《ゑ》みを|相《あひ》たたへ  アヅモス|山《さん》の|霊場《れいぢやう》の
|神《かみ》の|祭《まつ》りしその|前《まへ》に  |岩戸《いはと》の|階段《かいだん》|登《のぼ》りつつ
|天《てん》にも|昇《のぼ》る|心地《ここち》して  |現《あら》はれ|出《い》でし|尊《たふと》さよ
|玉国別《たまくにわけ》の|一行《いつかう》は  |伊太彦司《いたひこつかさ》の|功績《いさをし》を
|口《くち》を|極《きは》めて|讃《ほ》めながら  タクシャカ|竜王《りうわう》に|打《う》ち|向《む》かひ
|言葉《ことば》|優《やさし》く|宣《の》らすやう、
|玉国別《たまくにわけ》『|国常立《くにとこたち》の|大御神《おほみかみ》  |豊国姫《とよくにひめ》の|大神《おほかみ》の
|開《ひら》かせ|玉《たま》ふ|三五《あななひ》の  |教《をしへ》の|道《みち》の|宣伝使《せんでんし》
|玉国別《たまくにわけ》の|神司《かむづかさ》  |神《かみ》の|御言《みこと》を|蒙《かうむ》りて
ハルナの|都《みやこ》に|出《い》でてゆく  その|途《みち》すがら|皇神《すめかみ》の
|仕組《しぐみ》の|糸《いと》に|操《あやつ》られ  |心《こころ》も|身《み》をもスマの|里《さと》
アヅモス|山《さん》に|来《き》て|見《み》れば  |三千年《さんぜんねん》のその|昔《むかし》
|月照彦《つきてるひこ》の|大神《おほかみ》が  |此《こ》の|世《よ》を|安《やす》く|治《をさ》めむと
|秘《ひ》めおかれたる|汝《な》が|霊《みたま》  |救《すく》ひ|助《たす》けむ|時《とき》は|来《き》ぬ
われも|汝《なんぢ》が|勇《いさ》ましく  |深《ふか》き|罪《つみ》をば|赦《ゆる》されて
ここに|姿《すがた》を|現《あら》はせる  その|光景《くわうけい》を|打《う》ちながめ
|歓喜《くわんき》の|涙《なみだ》にたへかねつ  |思《おも》はず|知《し》らず|袖《そで》|絞《しぼ》る
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  タクシャカ|竜王《りうわう》|聞《き》こし|召《め》せ
|此《こ》の|世《よ》の|泥《どろ》をすすがむと  |現《あら》はれ|玉《たま》ひし|埴安《はにやす》の
|彦命《ひこのみこと》や|埴安姫《はにやすひめ》は  |厳《いづ》と|瑞《みづ》との|神柱《かむばしら》
|経《たて》と|緯《よこ》との|経綸《けいりん》を  |始《はじ》め|玉《たま》ひし|上《うへ》からは
|水《みづ》も|洩《も》らさぬ|神《かみ》の|国《くに》  |汝《なれ》も|今《いま》より|御心《みこころ》を
|清《きよ》く|正《ただ》しく|持《も》ち|玉《たま》へ  |元《もと》つ|御祖《みおや》の|大神《おほかみ》の
|大神業《だいしんげふ》に|仕《つか》へませ  |三千年《さんぜんねん》のその|間《あひだ》
|地底《ちてい》に|潜《ひそ》み|玉《たま》ひたる  |苦心《くしん》を|察《さつ》し|奉《たてまつ》る』
タクシャカ|竜王《りうわう》は|久《ひさ》し|振《ぶ》りにて|地上《ちじやう》の|光明《くわうみやう》に|浴《よく》し、また|珍《めづら》しき|人《ひと》の|顔《かほ》や|四辺《あたり》の|樹木《じゆもく》の|青々《あをあを》として|茂《しげ》り|栄《さか》ゆる|光景《くわうけい》を|眺《なが》め|歓喜《くわんき》に|堪《た》へず、|歌《うた》をもつて|玉国別《たまくにわけ》に|答《こた》へたり。
『われは|八大竜王《はちだいりうわう》の  |司《つかさ》と|聞《き》こえしタクシャカの
|九頭両舌《くづりやうぜつ》の|悪神《あくがみ》ぞ  |一度《ひとたび》|眼《まなこ》を|光《ひか》らせば
|万木万草《ばんもくばんさう》みな|萎《しぼ》み  |一度《ひとたび》|声《こゑ》を|発《はつ》すれば
|山野河海《さんやかかい》も|動揺《どうえう》し  さすが|貴《たふと》き|大神《おほかみ》も
いとど|悩《なや》ませ|玉《たま》ひつつ  |神力無双《しんりきむさう》のエンゼルと
|現《あら》はれ|玉《たま》ひし|月照彦《つきてるひこ》の  |神《かみ》の|命《みこと》が|天降《あまくだ》り
|有無《うむ》を|言《い》はせず|言霊《ことたま》の  |伊吹《いぶき》に|吾《われ》を|霊縛《れいばく》し
アヅモス|山《さん》の|地《ち》の|底《そこ》に  |今《いま》まで|封《ふう》じ|玉《たま》ひけり
かくなる|上《うへ》は|吾《われ》とても  いかでか|悪《あく》を|好《この》まむや
|仁慈無限《じんじむげん》の|大神《おほかみ》の  |大御心《おほみこころ》を|心《こころ》とし
|蒼生《あをひとぐさ》や|草《くさ》や|木《き》の  |片葉《かきは》の|露《つゆ》に|至《いた》るまで
|心《こころ》を|尽《つく》し|身《み》を|尽《つく》し  いと|懇《ねもごろ》に|守《まも》るべし
|吾《われ》の|宝《たから》と|秘《ひ》めおきし  |夜光《やくわう》の|玉《たま》は|伊太彦《いたひこ》が
|懐《ふところ》|深《ふか》く|納《をさ》めまし  |今《いま》やこの|場《ば》に|現《あ》れましぬ
タクシャカ|竜王《りうわう》が|改心《かいしん》の  |至誠《しせい》を|顕《あら》はすその|為《ため》に
|風水火災《ふうすゐくわさい》を|自由《じいう》にせし  この|宝玉《はうぎよく》を|献《たてまつ》る
|何卒《なにとぞ》|受《う》けさせ|玉《たま》へかし  |旭《あさひ》は|照《て》るとも|曇《くも》るとも
|月《つき》は|盈《み》つとも|虧《か》くるとも  たとへ|大地《だいち》は|破《やぶ》るとも
|一旦《いつたん》|神《かみ》に|誓《ちか》ひたる  |吾《わ》が|言霊《ことたま》は|動《うご》かまじ
|諾《うべな》ひ|玉《たま》へ|惟神《かむながら》  |玉国別《たまくにわけ》の|御前《おんまへ》に
|謹《つつし》み|敬《ゐやま》ひ|願《ね》ぎまつる』
|玉国別《たまくにわけ》『|世《よ》を|紊《みだ》す|八岐大蛇《やまたをろち》の|祖神《おやがみ》と
|聞《き》きたる|竜神《かみ》は|汝《なんぢ》なりしか
|面白《おもしろ》し|心《こころ》の|底《そこ》より|改《あらた》めて
|玉《たま》を|還《かへ》せし|汝《なれ》は|神《かみ》なり
つゆ|雫《しづく》|偽《いつは》り|持《も》たぬ|言《こと》の|葉《は》に
|吾《われ》も|嬉《うれ》しく|玉《たま》を|受《う》けなむ
|伊太彦《いたひこ》の|教司《をしへつかさ》は|大神《おほかみ》の
|神業《みわざ》に|清《きよ》く|仕《つか》へ|了《お》へぬる』
|伊太彦《いたひこ》『|吾《わ》が|身魂《みたま》|弱《よわ》く|甲斐《かひ》なく|力《ちから》なく
|神《かみ》のまにまに|勤《つと》め|了《おほ》せし』
ワックス『|伊太彦《いたひこ》の|司《つかさ》の|後《あと》に|従《したが》ひて
さも|怖《おそ》ろしき|夢《ゆめ》を|見《み》しかな
さりながら|今《いま》の|喜《よろこ》び|見《み》るにつけ
|思《おも》はず|知《し》らず|心《こころ》|勇《いさ》みぬ』
エル『|思《おも》はざる|醜《しこ》の|魔神《まがみ》にさへられて
|肝《きも》|潰《つぶ》したる|事《こと》の|愚《おろ》かさ
さりながら|伊太彦司《いたひこつかさ》と|諸共《もろとも》に
|無事《ぶじ》に|帰《かへ》りしことぞ|嬉《うれ》しき』
|真純彦《ますみひこ》『|伊太彦《いたひこ》は|心《こころ》おちゐぬ|人《ひと》とのみ
|思《おも》ひし|事《こと》の|恥《は》づかしきかな』
|三千彦《みちひこ》『|鉋屑《かんなくづ》も|間《ま》に|合《あ》ふ|時《とき》のあるものと
|聞《き》きし|言葉《ことば》の|思《おも》ひ|出《だ》されぬ
|言霊《ことたま》の|濁《にご》る|男《をとこ》とさげすむな
|吾《われ》も|幾度《いくたび》|揶揄《からか》はれたる|身《み》よ』
|伊太彦《いたひこ》『|惟神《かむながら》とは|言《い》ひながら|妹《いも》を|連《つ》れ
|進《すす》み|行《ゆ》く|身《み》を|羨《うらや》ましく|思《おも》へば』
デビス|姫《ひめ》『|伊太彦《いたひこ》の|教司《をしへつかさ》の|功績《いさをし》は
|岩戸開《いはとびら》きの|業《わざ》に|優《まさ》れる』
バーチル『|昔《むかし》より|魔《ま》の|隠《かく》れしと|伝《つた》へたる
この|神山《かみやま》の|岩戸《いはと》|開《ひら》きぬ』
サーベル|姫《ひめ》『かくまでも|霊《みたま》の|清《きよ》き|神《かみ》ますと
|吾《われ》は|夢《ゆめ》にも|思《おも》はざりけり
|猩々《しやうじやう》の|姫《ひめ》の|命《みこと》に|教《をし》へられ
|汝《なれ》を|迎《むか》へし|今日《けふ》の|嬉《うれ》しさ』
タクシャカ『|今《いま》よりは|猩々翁《しやうじやうおきな》と|名《な》をかへて
これの|神山《みやま》に|永《なが》く|仕《つか》へむ』
|玉国別《たまくにわけ》『|千代《ちよ》|八千代《やちよ》|万代《よろづよ》までもこの|宮《みや》に
いと|安《やす》らけく|仕《つか》へ|玉《たま》はれ』
チルテル『|訝《いぶ》かしや|猩々《しやうじやう》の|彦《ひこ》や|猩々姫《しやうじやうひめ》
|猩々翁《しやうじやうおきな》の|現《あら》はれむとは
|九頭竜《くづりう》の|醜《しこ》の|魔神《まがみ》と|聞《き》きぬれど
|汝《なれ》の|姿《すがた》は|神《かみ》にましけり』
かく|歌《うた》ふところへ、|大地《だいち》にはかに|震動《しんどう》してキヨメの|湖《うみ》の|波《なみ》|立《た》ち|狂《くる》ひ、|湖《うみ》はパツと|二《ふた》つに|開《ひら》いて|中《なか》より、さも|怖《おそ》ろしきサーガラ|竜王《りうわう》、|七八才《しちはちさい》の|乙女《をとめ》を|背《せ》に|乗《の》せながら、スマの|浜辺《はまべ》に|浮《う》かみ|出《い》で、たちまち|老媼《おうな》の|姿《すがた》となり、|愛《あい》らしき|幼児《えうじ》を|抱《かか》へ、|霧《きり》に|包《つつ》まれながら、|中空《ちうくう》を|翔《か》けつてタクシャカ|竜王《りうわう》が|前《まへ》に|現《あら》はれ|来《き》たり、
サーガラ『|三千年《みちとせ》の|悩《なや》み|忍《しの》びて|目出《めで》たくも
|吾《わ》が|背《せ》の|君《きみ》は|世《よ》に|出《い》でにけり
この|御子《みこ》は|吾《わ》が|身魂《みたま》より|生《あ》れ|出《い》でし
|如意《によい》の|宝珠《ほつしゆ》の|化身《けしん》なりけり』
タクシャカ『|恋慕《こひした》ふ|汝《なれ》が|命《みこと》に|廻《めぐ》り|会《あ》ひ
|嬉《うれ》しさ|胸《むね》に|三千年《みちとせ》の|今日《けふ》
|玉国《たまくに》の|神《かみ》の|司《つかさ》や|諸人《もろびと》に
|救《すく》はれ|神《かみ》の|許《ゆる》しうけけり』
サーガラ『|汝《な》が|命《みこと》|世《よ》に|出《い》でませば|吾《われ》もまた
|人《ひと》の|姿《すがた》となりて|仕《つか》へむ
|玉国《たまくに》の|別《わけ》の|司《つかさ》よ|諸人《もろびと》よ
|憐《あは》れみ|玉《たま》へこれの|夫婦《ふうふ》を』
|玉国別《たまくにわけ》『|昔《むかし》より|縁《えにし》の|深《ふか》き|夫婦《めをと》づれ
いや|永久《とこしへ》に|世《よ》を|守《まも》りませ』
サーガラ|竜王《りうわう》は、|脇《わき》に|抱《かか》へし|七八才《しちはちさい》ばかりの|乙女《をとめ》を|地《ち》に|下《おろ》し、|夫婦《ふうふ》が|互《たが》ひに|水火《いき》を|吹《ふ》きかけた。たちまち|乙女《をとめ》は|如意宝珠《によいほつしゆ》の|玉《たま》と|変《へん》じた。サーガラ|竜王《りうわう》は|押《お》し|戴《いただ》き、
サーガラ『この|玉《たま》は|朝《あさ》な|夕《ゆふ》なに|抱《いだ》きてし
|如意《によい》の|宝珠《ほつしゆ》よ|君《きみ》に|捧《ささ》げむ』
|玉国別《たまくにわけ》『|玉国別《たまくにわけ》|神《かみ》の|命《みこと》と|名《な》を|負《お》ひし
|吾《われ》は|二《ふた》つの|玉《たま》を|得《え》にけり
この|宝《たから》|二《ふた》つ|揃《そろ》うて|手《て》に|入《い》らば
いかで|恐《おそ》れむ|大黒主《おほくろぬし》を』
|真純彦《ますみひこ》『|師《し》の|君《きみ》の|御名《みな》は|今《いま》こそ|知《し》られけり
|玉守別《たまもりわけ》と|宣《の》り|直《なほ》しませ』
|三千彦《みちひこ》『|玉守別《たまもりわけ》ならで|玉取別神《たまとりわけがみ》と
|宣《の》り|直《なほ》しませ|吾《わ》が|師《し》の|君《きみ》よ』
|玉国別《たまくにわけ》『|国魂《くにたま》を|右《みぎ》と|左《ひだり》に|受《う》けし|身《み》は
|玉国別《たまくにわけ》と|名乗《なの》るこそよき』
|伊太彦《いたひこ》『|肝腎《かんじん》の|玉《たま》は|吾《わ》が|師《し》の|物《もの》となり
|指《ゆび》かみ|切《き》つて|伊太彦《いたひこ》の|吾《われ》』
デビス|姫《ひめ》『|汝《なれ》はなぜ|玉取別《たまとりわけ》と|名乗《なの》らざる
|伊太彦司《いたひこつかさ》の|名《な》こそ|悪《あ》しけれ』
|伊太彦《いたひこ》『|今《いま》となり|名《な》を|宣直《のりなほ》す|術《すべ》もなし
|神《かみ》の|依《よ》さしの|称《とな》へなりせば』
|真純彦《ますみひこ》『|因縁《いんねん》の|霊々《みたまみたま》の|御用《ごよう》をば
させると|神《かみ》の|教《をしへ》なりけり
|言霊《ことたま》の|真純《ますみ》の|彦《ひこ》の|名《な》を|負《お》ふも
|魂《たま》の|濁《にご》らばいかにとやせむ
|吾《われ》もまた|心《こころ》の|魂《たま》を|研《みが》き|上《あ》げ
|吾《わ》が|師《し》の|君《きみ》にあやかりてみむ』
これよりタクシャカ|竜王《りうわう》は、|人体《じんたい》に|変化《へんげ》し、|猩々翁《しやうじやうおきな》となり、サーガラ|竜王《りうわう》は|猩々媼《しやうじやうおうな》となり、|珍《めづら》しき|果物《くだもの》の|酒《さけ》を|作《つく》り、|朝夕《あさゆふ》|神前《しんぜん》に|献《けん》じて|神慮《しんりよ》を|慰《なぐさ》め、|自分《じぶん》の|罪《つみ》を|謝《しや》することとなつた。
バーチル|夫婦《ふうふ》は|二《ふた》つの|宮《みや》の|宮司《ぐうじ》として|永久《えいきう》に|仕《つか》へ、|子孫《しそん》|繁栄《はんゑい》し、|神《かみ》の|柱《はしら》と|世《よ》に|敬《うやま》はれた。またバラモンのチルテル|夫婦《ふうふ》はバーチルの|館《やかた》の|一隅《いちぐう》に|居《きよ》を|構《かま》へ、スマの|里《さと》の|里庄《りしやう》となり、|厚《あつ》く|神《かみ》に|仕《つか》へて|村民《そんみん》を|愛撫《あいぶ》し、|部下《ぶか》はカンナ、ヘールを|家僕《いへのこ》とし、その|他《た》はいづれも|里人《さとびと》の|列《れつ》に|加《くは》へ、|美《うる》はしく|新《あたら》しき|村《むら》を|造《つく》つて、|余生《よせい》を|楽《たの》しく|送《おく》り、その|霊《みたま》は|天国《てんごく》に|至《いた》つて、|天人《てんにん》の|列《れつ》に|加《くは》はり、アヅモス|山《さん》の|聖地《せいち》を|守《まも》る|事《こと》となつた。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 松村真澄録)
第一一章 |法螺貝《ほらがひ》〔一五三六〕
|玉国別《たまくにわけ》|一行《いつかう》はバーチル、チルテルその|外《ほか》|一同《いちどう》に|暇《いとま》を|告《つ》げ、|山野湖河《さんやこか》を|渡《わた》りハルナの|都《みやこ》を|指《さ》して|進《すす》むこととなつた。|別《わか》れを|惜《を》しみてバーチル|以下《いか》|一同《いちどう》は|袖《そで》に|縋《すが》りつき、|涙《なみだ》をたたへて|別離《わかれ》の|歌《うた》を|歌《うた》ふ。
バーチル『|神《かみ》の|任《よ》さしの|宣伝使《せんでんし》  |清《きよ》き|身魂《みたま》の|玉国別《たまくにわけ》は
|天津御神《あまつみかみ》や|国津神《くにつかみ》  |百《もも》の|神々《かみがみ》|勇《いさ》み|立《た》ち
その|身辺《しんぺん》を|守《まも》ります  |尊《たふと》き|珍《うづ》の|神司《かむづかさ》
|従《したが》ひたまふ|真純彦《ますみひこ》  |三千彦《みちひこ》|伊太彦《いたひこ》デビス|姫《ひめ》
|神《かみ》に|等《ひと》しき|御身魂《おんみたま》  |親子《おやこ》の|悩《なや》みを|救《すく》ひまし
この|里人《さとびと》をよく|治《をさ》め  |珍《うづ》の|宮居《みやゐ》を|建《た》て|玉《たま》ひ
タクシャカ|竜王《りうわう》をはじめとし  サーガラ|竜王《りうわう》|言向《ことむ》けて
|世界《せかい》の|災《わざは》ひ|除《のぞ》きまし  |小天国《せうてんごく》を|建設《けんせつ》し
|恵《めぐ》みの|露《つゆ》を|四方八方《よもやも》に  |垂《た》れさせ|玉《たま》ひし|有難《ありがた》さ
|千代《ちよ》も|八千代《やちよ》も|永久《とこしへ》に  アヅモス|山《さん》の|山麓《さんろく》に
|鎮《しづ》まりまして|吾々《われわれ》を  |導《みちび》き|玉《たま》へと|朝夕《あさゆふ》に
|祈《いの》りし|甲斐《かひ》もあら|悲《かな》し  |教《をしへ》の|御子《みこ》を|後《あと》にして
|魔神《まがみ》の|猛《たけ》る|月《つき》の|国《くに》  ハルナの|都《みやこ》に|出《い》でたまふ
その|首途《いでたち》を|見送《みおく》りて  |悲《かな》しみ|胸《むね》に|咽返《むせかへ》り
|涙《なみだ》は|滝《たき》と|流《なが》れ|落《お》つ  ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》
|神《かみ》の|任《よ》さしの|宣伝使《せんでんし》  いかほど|真心《まごころ》|現《あら》はして
|頼《たの》むも|詮《せん》なき|御体《おんからだ》  |別《わか》れを|惜《を》しむも|愚《おろ》かなれ
さはさりながら|師《し》の|君《きみ》よ  ハルナの|都《みやこ》の|神業《しんげふ》を
|無事《ぶじ》に|終《を》へさせ|玉《たま》ひなば  これの|聖地《せいち》を|見捨《みす》てずに
|再《ふたた》び|現《あら》はれ|来《き》たりまし  |吾《われ》らに|尊《たふと》き|御教《みをしへ》を
|完全《うまら》に|委曲《つばら》に|伝《つた》へませ  |宮《みや》の|司《つかさ》のバーチルが
|里人《さとびと》|一同《いちどう》になり|代《かは》り  |慎《つつし》み|願《ねが》ひ|奉《たてまつ》る
ああ|惟神《かむながら》|々々《かむながら》  |御霊《みたま》|幸《さち》はへましませよ』
|玉国別《たまくにわけ》『バーチルの|清《きよ》き|言葉《ことば》を|名残《なごり》にて
いざ|立《た》ち|行《ゆ》かむ|神《かみ》のまにまに』
|真純彦《ますみひこ》『|皇神《すめかみ》の|任《よ》さしのままに|吾《われ》は|行《ゆ》く
|健《まめや》かなれや|百《もも》の|人《ひと》たち』
|三千彦《みちひこ》『|縁《えにし》あらば|再《ふたた》びお|目《め》にかかるべし
|神《かみ》の|恵《めぐ》みに|世《よ》を|送《おく》りませ』
|伊太彦《いたひこ》『|言葉《ことば》にも|尽《つく》され|難《がた》き|待遇《もてなし》を
|受《う》けし|恵《めぐ》みをいかに|返《かへ》さむ』
デビス|姫《ひめ》『いざさらば|吾《わ》が|師《し》の|君《きみ》と|諸共《もろとも》に
|別《わか》れを|告《つ》げむ|百人《ももびと》の|前《まへ》に』
アンチー『|玉《たま》の|緒《を》の|生命《いのち》の|親《おや》に|果敢《はか》なくも
|生《い》き|別《わか》れする|吾《われ》ぞ|悲《かな》しき』
チルテル『|摩訶不思議《まかふしぎ》|深《ふか》き|縁《えにし》に|包《つつ》まれて
|嬉《うれ》しき|夢《ゆめ》を|暫《しば》し|見《み》しかな』
サーベル|姫《ひめ》『いざさらば|真幸《まさき》くハルナに|出《い》でませよ
|神《かみ》に|祈《いの》りて|君《きみ》を|守《まも》らむ』
チルナ|姫《ひめ》『|師《し》の|君《きみ》の|諭《さと》しによりて|吾《わ》が|夫《つま》は
|誠《まこと》の|道《みち》に|帰《かへ》りましけり
|山《やま》よりも|高《たか》き|恵《めぐ》みを|如何《いか》にして
|報《むく》いむものと|心《こころ》|苛《いら》ちつ』
テク『いざさらば|御身《みみ》|健《すこや》かに|出《い》でませよ
|君《きみ》の|前《まへ》には|敵《てき》もなければ』
カンナ『|思《おも》ひきや|思《おも》はぬ|人《ひと》に|巡《めぐ》り|会《あ》ひ
またも|思《おも》はぬ|別《わか》れするかな』
ヘール『|何事《なにごと》も|神《かみ》の|任《よ》さしのままなれば
|人《ひと》の|言問《ことと》ふ|道《みち》にあらまし』
アキス『わが|主人《あるじ》|救《すく》ひ|玉《たま》ひし|助《たす》け|神人《がみ》
|別《わか》れむとして|涙《なみだ》こぼるる』
カール『|何事《なにごと》も|夢《ゆめ》の|浮世《うきよ》と|諦《あきら》めて
|思《おも》はざるらむ|情《つれ》なき|別《わか》れを』
ワックス『|許々多久《ここたく》の|罪《つみ》や|穢《けが》れを|洗《あら》はれし
|神《かみ》の|司《つかさ》に|今《いま》|別《わか》れむとす
|惜《を》しめども|悔《くや》めど|泣《な》けども|如何《いか》にせむ
|神《かみ》に|任《まか》せし|教司《をしへつかさ》を』
ヘルマン『|夢《ゆめ》の|世《よ》に|不思議《ふしぎ》な|夢《ゆめ》を|見《み》たりけり
|夢《ゆめ》な|忘《わす》れそ|神《かみ》の|恵《めぐ》みは』
エキス『ワックスや|主人《あるじ》の|君《きみ》を|悩《なや》めたる
|懺悔《ざんげ》の|涙《なみだ》とどめかねつつ
|玉国別《たまくにわけ》|神《かみ》の|司《つかさ》よ|吾《わ》が|罪《つみ》を
|神《かみ》に|祈《いの》りて|払《はら》はせ|玉《たま》へ』
エル『テルモンの|山《やま》の|麓《ふもと》に|立《た》ち|別《わか》れ
またもや|神《かみ》に|別《わか》れむとぞする』
|玉国別《たまくにわけ》『|猩々《しやうじやう》の|翁《おきな》|媼《おうな》にもの|申《まを》す
いや|永久《とこしへ》に|安《やす》くましませ』
|翁《おきな》『スメールのこれの|神山《みやま》に|永久《とこしへ》に
ありて|御世《みよ》をば|守《まも》らむとぞ|思《おも》ふ』
|媼《おうな》『|背《せ》の|君《きみ》のタクシャカ|竜王《りうわう》と|相並《あひなら》び
これの|聖地《せいち》を|永遠《とは》に|守《まも》らむ』
|玉国別《たまくにわけ》『いざさらば|諸人《もろびと》たちに|物申《ものまう》す
|安《やす》くましませ|神《かみ》の|恵《めぐ》みに』
|玉国別《たまくにわけ》の|一行《いつかう》は  |無限《むげん》の|神力《しんりき》|現《あら》はして
|麻《あさ》のごとくに|乱《みだ》れたる  |諸人《もろびと》たちの|心《こころ》をば
|一《ひと》つに|治《をさ》め|悠々《いういう》と  スマの|里《さと》をば|後《あと》にして
|晩夏《ばんか》の|風《かぜ》を|浴《あ》びながら  |稲葉《いなば》のそよぐ|細道《ほそみち》を
|草鞋脚絆《わらぢきやはん》に|身《み》を|固《かた》め  |二《ふた》つの|玉《たま》を|捧《ささ》げつつ
|意気《いき》|揚々《やうやう》と|進《すす》み|行《ゆ》く。
|日《ひ》は|漸《やうや》く|黄昏《たそが》れて|来《き》た。|広袤千里《くわうぼうせんり》の|大原野《だいげんや》、|人通《ひとどほ》りも|尠《すく》なく、|僅《わづ》かに|道《みち》の|傍《かたへ》の|娑羅双樹《さらさうじゆ》の|森《もり》を|認《みと》めて|一夜《いちや》の|雨宿《あまやど》りをなさむと|足《あし》を|速《はや》めたり。
この|森《もり》には|半《なか》ば|破《やぶ》れた|小《ちひ》さき|祠《ほこら》が|建《た》つてゐる。|一行《いつかう》|五人《ごにん》は|祠《ほこら》の|前《まへ》に|蓑《みの》を|布《し》き、|笠《かさ》を|顔《かほ》に|被《かぶ》つて|一夜《いちや》を|明《あか》すこととした。|夜《よ》は|深々《しんしん》と|更渡《ふけわた》り|水《みづ》も|眠《ねむ》れる|丑満《うしみつ》の|頃《ころ》となつた。|窺《うかが》ひ|寄《よ》つて|三人《さんにん》の|男《をとこ》、|五人《ごにん》の|寝息《ねいき》を|考《かんが》へ、
|甲《かふ》『オイ、|乾児共《こぶんども》、どうやら|此奴《こいつ》ア|物《もの》になりさうだぞ。うまく|行《ゆ》けば|一生《いつしやう》|遊《あそ》んで|暮《くら》す|事《こと》が|出来《でき》るやうにならうも|知《し》れぬから、|貴様《きさま》らも|俺《おれ》の|指揮《しき》に|従《したが》つて|捨身的《しやしんてき》|大活動《だいくわつどう》をやつてくれ』
|乙《おつ》『ハハハハハイ、カカカカ|畏《かしこ》まりました。なかなか|鼾《いびき》の|高《たか》い|連中《れんちう》で……』
|甲《かふ》『|馬鹿《ばか》、|寝《ね》てゐる|人間《にんげん》の|鼾《いびき》が|怖《こは》うてこの|商売《しやうばい》が|出来《でき》ると|思《おも》ふか』
|乙《おつ》『まだシシシシ|新米《しんまい》でございますから、ねつから|勝手《かつて》が|分《わか》りませぬので……』
|丙《へい》『モシ、ベルの|親方《おやかた》さま、|此奴《こいつ》アまだ|間《ま》がございませぬから|仕方《しかた》がございませぬ。|何《なに》、これくらゐの|仕事《しごと》は|私《わたし》|一人《ひとり》で|結構《けつこう》です。なにほど|新米《しんまい》だつて|三月《みつき》すれば|古米《こまい》になりますからな』
|乙《おつ》『オイ、|三月《みつき》|経《た》つたら|古米《こまい》になるとは、それは|何《なん》だ、|米相場《こめさうば》でもしようといふのか、こんな|処《ところ》で|店屋《みせや》もないぢやないか』
|甲《かふ》『|馬鹿《ばか》ぢやな。|貴様《きさま》は|乞食《こじき》もようさらさず、たまたま|泥棒《どろばう》に|連《つ》れて|来《く》れば、その|腰《こし》は|何《なん》だ。|痳病患者《りんびやうやみ》か|梅毒患者《ひえかき》のやうな|態《ざま》しやがつて……|見《み》つともない』
|乙《おつ》『ヘヘヘヘヘ|痳病《りんびやう》もチツトばかり|患《わづら》うてゐます。|梅毒《ひえ》も|漸《やうや》く|癒《なほ》りかけたところでございます。アイタタタタ|痳病《りんびやう》の|話《はなし》すると|俄《には》かに|痛《いた》くなつてきました、もう|動《うご》けませぬ。アイタタタタ』
と|屁太《へた》る。
ベル『オイ、バット、もう|仕方《しかた》が|無《な》い、なにほど|大勢《おほぜい》をつても|寝首《ねくび》を|締《し》めるのは|容易《ようい》なものだ。サアこんな|腰抜《こしぬ》けは|放《ほ》つといて、|貴様《きさま》と|俺《おれ》が|両方《りやうはう》から|仕事《しごと》に|取《と》りかからうぢやないか』
バット『ハイ、|承知《しようち》しました。|吾々《われわれ》が|運《うん》の|開《ひら》け|時《どき》、この|機会《きくわい》を|逸《いつ》して、どうして|頭《あたま》が|上《あ》がりませう』
|玉国別《たまくにわけ》は|最初《さいしよ》から|三人《さんにん》の|密々話《ひそひそばなし》を|一言《いちごん》も|洩《も》らさず|聞《き》いてゐた。
かかるところへ「ブーブー」と|闇《やみ》を|貫《つらぬ》く|法螺《ほら》の|声《こゑ》、|社《やしろ》の|後《うし》ろより|聞《き》こえ|来《き》たる。|泥棒《どろばう》は|驚《おどろ》いて|乙《おつ》を|社前《しやぜん》に|残《のこ》しながら|闇《やみ》に|紛《まぎ》れて|逃《に》げ|去《さ》つてしまつた。|法螺《ほら》の|声《こゑ》はますます|高《たか》く|響《ひび》いてくる。
|玉国別《たまくにわけ》は|法螺《ほら》の|音《ね》の|静《しづ》まるを|待《ま》つて、
『|山川《やまかは》の|枉《まが》|拭《ふ》き|払《はら》ふ|法螺《ほら》の|貝《かひ》
|何処《いづく》の|人《ひと》の|弄《すさ》びなるらむ
|御社《みやしろ》の|傍《かたはら》|近《ちか》く|聞《き》こえ|来《く》る
この|言霊《ことたま》の|主《ぬし》は|何人《なにびと》』
|祠《ほこら》の|後《うし》ろより、
『|吾《われ》こそは|鬼春別《おにはるわけ》のなれの|果《はて》
|比丘《びく》と|仕《つか》ふる|治道居士《ちだうこじ》ぞや』
|玉国別《たまくにわけ》『|治国別《はるくにわけ》|神《かみ》の|司《つかさ》に|服《まつろ》ひし
バラモン|軍《ぐん》のゼネラルなりしか
|吾《われ》こそは|玉国別《たまくにわけ》の|宣伝使《せんでんし》
|思《おも》はぬところに|会《あ》ひにけるかな』
|治道《ちだう》『|懐《なつか》しや|音《おと》に|名高《なだか》き|玉国別《たまくにわけ》の
|神《かみ》の|司《つかさ》か|嬉《うれ》し|恥《は》づかし』
|三千彦《みちひこ》『|泥棒《どろばう》がわが|懐《ふところ》を|探《さぐ》らむと
|慄《ふる》ひ|戦《をのの》き|来《き》たる|可笑《をか》しさ』
|伊太彦《いたひこ》『|盗人《ぬすびと》を|追《お》ひ|払《はら》ひたる|法螺《ほら》の|貝《かひ》
|吹《ふ》き|立《た》てたるは|神《かみ》にぞ|在《ま》さむ』
|三千彦《みちひこ》『|聞《き》き|及《およ》ぶ|治道居士《ちだうこじ》とは|汝《な》がことか
|思《おも》はぬところに|会《あ》ひにけるかな』
|治道《ちだう》『|吾《われ》は|今《いま》ビクトル|山《さん》の|比丘《びく》となり
|四方《よも》を|逍遥《さまよ》ふ|修験者《しうげんじや》ぞや
|武士《もののふ》の|矢猛心《やたけごころ》を|抑《おさ》へつつ
|誠《まこと》の|道《みち》に|進《すす》みゆく|身《み》よ』
デビス|姫《ひめ》『|神《かみ》の|道《みち》ただ|只管《ひたすら》に|進《すす》み|行《ゆ》く
|比丘《びく》の|司《つかさ》の|心《こころ》|雄々《をを》しき
われもまたテルモン|山《ざん》の|神館《かむやかた》
バラモン|神《がみ》に|仕《つか》へし|身《み》ぞや』
|治道《ちだう》『テルモンの|大海原《おほうなばら》を|乗《の》り|越《こ》えて
|漸《やうや》くここに|吾《われ》は|着《つ》きぬる
|草枕《くさまくら》|旅《たび》の|疲《つか》れを|休《やす》めむと
|祠《ほこら》の|蔭《かげ》に|憩《いこ》ひゐたりし
|皇神《すめかみ》の|縁《えにし》の|糸《いと》につながれて
|神《かみ》の|司《つかさ》に|会《あ》ふぞ|嬉《うれ》しき』
|三千彦《みちひこ》は|燧《ひうち》を|取《と》り|出《だ》し、|闇《やみ》を|探《さぐ》つて|木《こ》の|葉《は》|枯枝《かれえだ》の|端《はし》を|掻《か》き|集《あつ》め、パツと|火《ひ》を|点《てん》じた。|治道居士《ちだうこじ》は|祠《ほこ》の|後《うし》ろより|現《あら》はれ|来《き》たり、|一同《いちどう》の|顔《かほ》を|見《み》て、さも|嬉《うれ》しげに、
『|貴方《あなた》は|噂《うはさ》に|高《たか》き|玉国別《たまくにわけ》|様《さま》の|御一行《ごいつかう》でございましたか、これは|不思議《ふしぎ》なところでお|目《め》にかかりました。|私《わたし》はバラモン|教《けう》のゼネラルでございましたが、|河鹿峠《かじかたうげ》において|吾《わ》が|部下《ぶか》の|片彦《かたひこ》、|久米彦《くめひこ》|将軍《しやうぐん》が|治国別《はるくにわけ》|様《さま》の|言霊《ことたま》に|打《う》ち|悩《なや》まされ、|実《じつ》に|見苦《みぐる》しき|敗《はい》をとりました。それについて、|私《わたし》は|到底《たうてい》|武力《ぶりよく》をもつて|神力《しんりき》に|勝《か》つことの|不可能《ふかのう》なるを|悟《さと》りました。しかしながら、|数千人《すうせんにん》の|部下《ぶか》を|引率《ひきつ》れ|大黒主《おほくろぬし》の|命《めい》を|受《う》けて|征途《せいと》に|上《のぼ》るゼネラルの|分際《ぶんざい》として、|直《ただ》ちに|軍籍《ぐんせき》を|捨《す》て、|尊《たふと》き|神《かみ》の|道《みち》に|入《い》らむとするも|事情《じじやう》が|許《ゆる》しませぬので、|止《や》むを|得《え》ずランチ|将軍《しやうぐん》と|相談《さうだん》の|上《うへ》、|浮木《うきき》の|森《もり》にて|半永久的《はんえいきうてき》|陣営《ぢんえい》を|造《つく》り、|戦《たたか》ふ|心《こころ》もなく、|徒《いたづら》に|光陰《くわういん》を|濫費《らんぴ》してをりましたが、つひに|軍隊《ぐんたい》を|二《ふた》つに|分《わか》ち、|三千余騎《さんぜんよき》を|率《ひき》ゐてライオン|川《がは》を|横断《わうだん》し、ビクトル|山《さん》の|麓《ふもと》に|陣営《ぢんえい》を|構《かま》へ、ここにてもまた|思《おも》はぬ|失敗《しつぱい》をとり、ふたたび|猪倉山《ゐのくらやま》の|山寨《さんさい》に|立籠《たてこ》もり、|治国別《はるくにわけ》|様《さま》の|言霊《ことたま》を|浴《あ》びせられ、ここに|全《まつた》く|菩提心《ぼだいしん》を|起《おこ》し、|至善《しぜん》|至愛《しあい》の|大神《おほかみ》に|信従《しんじう》する|証拠《しようこ》として|頭《かしら》を|剃《そ》り|落《こぼ》ち、|円頂緇衣《ゑんちやうしえ》の|比丘姿《びくすがた》となり、ビクトル|山《さん》の|傍《かたはら》に|草庵《さうあん》を|給《たま》び、われわれ|同志《どうし》|四人《よにん》が|交《かは》る|交《がは》る|神《かみ》の|教《をしへ》の|宣伝《せんでん》に|廻《まは》つてをります。|玉国別《たまくにわけ》|様《さま》|御一行《ごいつかう》の|事《こと》も、|治国別《はるくにわけ》|様《さま》より|詳《くは》しく|承《うけたまは》り、|一度《いちど》|尊《たふと》き|謦咳《けいがい》に|接《せつ》したきものと|祈《いの》つてをりましたが、|思《おも》はぬところで|面会《めんくわい》を|得《え》まして|何《なん》ともいへぬ|嬉《うれ》しさが|漂《ただよ》ひました。どうぞ|御見捨《おみす》てなく|御懇意《ごこんい》に|願《ねが》ひます』
|玉国別《たまくにわけ》『|貴方《あなた》がバラモン|軍《ぐん》の|鬼春別《おにはるわけ》|将軍様《しやうぐんさま》でございましたか、|不思議《ふしぎ》の|縁《えん》で|不思議《ふしぎ》なところでお|目《め》にかかりました。これも|全《まつた》く|大神様《おほかみさま》のお|引合《ひきあは》せでございませう。この|四人《よにん》は|真純彦《ますみひこ》、|三千彦《みちひこ》、|伊太彦《いたひこ》、デビス|姫《ひめ》でございます。どうぞ|今後《こんご》は|御入魂《ごじつこん》に|願《ねが》ひます』
|治道《ちだう》『|網笠《あみがさ》|一《ひと》つ、|蓑《みの》|一《ひと》つ、|杖《つゑ》|一本《いつぽん》の|修験者《しゆげんじや》、なにとぞ|共《とも》に|手《て》を|引《ひ》き|合《あ》うて|神業《しんげふ》に|参加《さんか》させて|頂《いただ》きたうございます』
|真純彦《ますみひこ》『|初《はじ》めてお|目《め》にかかります。いやもう|何《なん》にも|申《まを》し|上《あ》げませぬ。|神様《かみさま》の|御《おん》ため|世《よ》のために|互《たが》ひに|力《ちから》になり|合《あ》つて|進《すす》むことにいたしませう』
|伊太彦《いたひこ》『|私《わたし》は|狼狽者《とばしりもの》の|名《な》を|売《う》つた|伊太彦《いたひこ》でございます』
|三千彦《みちひこ》『|私《わたし》は|三千彦《みちひこ》|夫婦《ふうふ》でございます。いつも|伊太彦《いたひこ》|殿《どの》に|女《をんな》を|連《つ》れてをるといつて|揶揄《からか》はれ|通《どほ》しで、|閉口《へいこう》|致《いた》してをります』
|治道《ちだう》『ハハハハハ|何分《なにぶん》|若《わか》いお|方《かた》は|元気《げんき》がよろしいから|面白《おもしろ》いでせう』
デビス|姫《ひめ》『ゼネラル|様《さま》、|妾《わたし》はテルモン|山《ざん》の|神館《かむやかた》の|司《つかさ》|小国別《をくにわけ》の|娘《むすめ》デビス|姫《ひめ》でございます。|不思議《ふしぎ》な|縁《えん》でこの|三千彦《みちひこ》|様《さま》に|命《いのち》を|助《たす》けられ、ハルナの|都《みやこ》へお|伴《とも》をいたすところでございます。して、これから|貴方《あなた》は|何方《どちら》へおいでになりますか』
|治道《ちだう》『これはまた|不思議《ふしぎ》な|御縁《ごえん》でござる。|貴女《あなた》が|小国別《をくにわけ》|様《さま》の|御息女《おむすめご》とは|思《おも》ひも|寄《よ》りませなかつた。かうなる|上《うへ》は、|何《いづ》れも|三五教《あななひけう》のピュウリタンとして|互《たが》ひに|打《う》ち|解《と》け、|御神業《ごしんげふ》に|奉仕《ほうし》させていただきませう』
|玉国別《たまくにわけ》『もはや|体《からだ》もよほど、|疲《つか》れも|休《やす》まつたやうですから|夜中《やちう》なれども|大明《おほあか》りがしてをりますから、ボツボツ|進《すす》みませう』
|治道《ちだう》『どうか|私《わたし》も|途中《とちう》までなりとお|伴《とも》をさしていただきませう』
と|立《た》ち|上《あ》がる。|側《そば》を|見《み》れば|一人《ひとり》の|泥棒《どろばう》が|踞《しやが》んで|慄《ふる》うてゐる。
|治道《ちだう》『オ、お|前《まへ》は|何者《なにもの》だ。|泥棒《どろばう》の|片割《かたわれ》ではないか』
|乙《おつ》『はい、|私《わたし》は|乞食《こじき》でございますが、|今日《けふ》|初《はじ》めて|泥棒《どろばう》のベルといふ|男《をとこ》の|家来《けらい》となり、|三人連《さんにんづ》れにてこの|人々《ひとびと》の|跡《あと》をつけ|狙《ねら》ひ、ここまで|参《まゐ》りましたが|法螺貝《ほらがひ》の|声《こゑ》で|腰《こし》を|抜《ぬ》かしました。|二人《ふたり》は|何処《どこ》かへ|風《かぜ》を|喰《くら》つて|逃《に》げたでございませう』
|治道《ちだう》『はてな、ベルがまた|泥棒《どろばう》をしてをるのかな』
としきりに|首《くび》を|傾《かたむ》けてゐる。|泥棒《どろばう》の|乙《おつ》はコソコソと|闇《やみ》に|紛《まぎ》れて|姿《すがた》を|隠《かく》した。|一行《いつかう》|六人《ろくにん》は|治道居士《ちだうこじ》を|先頭《せんとう》に|法螺《ほら》を|吹《ふ》き|立《た》て、|東南《とうなん》に|道《みち》を|転《てん》じて|露《つゆ》おく|野路《のぢ》を|足許《あしもと》|忙《いそ》がしく|進《すす》み|行《ゆ》く。
(大正一二・四・七 旧二・二二 於皆生温泉浜屋 北村隆光録)
第三篇 |神《かみ》の|栄光《えいくわう》
第一二章 |三美歌《さんびか》その一〔一五三七〕
|大本三美歌《おほもとさんびか》
|君《きみ》が|代《よ》は |千代《ちよ》にましませ
|八千代《やちよ》に ましませ
さざれ|石《いし》の いはほとなりて
|苔《こけ》のむすまで ましませ
第一(三八〇)(この番号は讃美歌の譜なり)
とつぎおこなふ  けふの|日《ひ》は
あまつそらより  えにしをば
あたへむとして  すせりの|姫《ひめ》は
くだらせたまひ  ほぎたまふ。
いづの|御前《みまへ》に  たちならび
むすぶいもせの  かむわざは
|千代《ちよ》のかためと  なりてさかえむ
まもらせたまへ  |八千代《やちよ》まで。
いもせの|柱《はしら》  つきかため
あいなるむな|木《ぎ》  いや|太《ふと》く
いづのみたまの  きよきこころを
まもるめをとに  さかえあれ。
かしこきけふの  まじはりは
よろこびつきず  くるしみを
かたみにわかち  むつびにむつび
いさみてすすめ  おほ|道《みち》に。
第二(三八二)
なぎなみの|神《かみ》は  いもせのみちを
ひらきたまひしゆ  いまもつたはる。
むすびの|御神《みかみ》も  のぞませたまひ
いはひのむしろを  |賑《にぎ》はせたまはむ。
いざなぎいざなみ  |二人《ふたり》の|君《きみ》を
くだししごとくに  えにしゆるせよ。
えにしをむすぶの  すめ|大神《おほかみ》よ
わがわざたすくる  つまをあたへよ。
|瑞《みづ》のにひ|妻《づま》を  まもるみたまよ
いもとせふたりを  ことほぎたまへ。
めぐみの|御神《みかみ》よ  ふたりをまもり
よろづ|代《よ》のすゑも  |栄光《さかえ》をたまへ。
第三(一)
わが|魂《たま》さめじ  あしたのひかりに
|神《かみ》の|御国《みくに》をば  さとりてすすめよ。
あだにすごしたる  |時《とき》をつぐのひて
まだ|来《こ》ぬ|良《よ》き|日《ひ》を  |足《た》らはしておくれ。
|神《かみ》のよさします  |御宝《みたから》ささげて
のちの|代《よ》のそなへ  つぶさにつかへよ。
|神《かみ》の|御目《みめ》は|光《て》る  |暗《くら》きをはなれて
|月日《つきひ》のかぶとを  つけて|戦《たたか》へよ。
|御霊魂《みたま》もさかえて  わが|神《かみ》をあがめ
みいづかしこみぬ  |天使《みつかひ》と|倶《とも》に。
第四(二)
あした|夕《ゆふ》べに  |月日《つきひ》とともに
いづのひかりを  |御魂《みたま》にうけて
きよきめぐみを  |日《ひ》に|夜《よ》にさとる。
あした|夕《ゆふ》べに  |魂《たま》をきよむる
めぐみのつゆは  |御空《みそら》ゆくだり
|神《かみ》の|幸《さち》をぞ  |日《ひ》に|夜《よ》にさとる。
あした|夕《ゆふ》べに  |言行心《わがおこなひ》を
|清《きよ》めすまして  たてまつりなば
まつりし|宝《たから》  |益《ま》さしめたまはむ。
あした|夕《ゆふ》べに  |為《な》す|身《み》のつとめ
|人《ひと》をめぐみて  わが|身《み》にかたば
|神《かみ》にすすまむ  |御階《みはし》とぞなれ。
あした|夕《ゆふ》べに  |救《すく》ひを|祈《いの》る
あしもただしく  |大道《おほみち》すすみ
|天津《あまつ》みくにへ  |昇《のぼ》らせたまへ。
第五(一二)
|八雲《やくも》の|小琴《をごと》の  しらべにまかせ
うたはせたまへ  みろくの|神《かみ》よ。
つばさをやすらふ  |夕《ゆふ》べにあれば
|神《かみ》にぞゆだねむ  けふ|為《な》せしわざを。
すべてのものの  いろもすがたも
かくれてぞゆく  |夜《よる》は|来《き》にけり。
つねに|勤《つと》むる  わが|良《よ》きわざも
|世《よ》には|知《し》らさず  かくしたまひぬ。
|日《ひ》かげは|西《にし》に  |田人《たびと》は|家《いへ》に
かへるゆふべこそ  |心《こころ》しづかなれ。
|神《かみ》のよさしの  わざをはりなば
あまつみくにに  いこはせたまへ。
第六(二三)
|宇都《うづ》のめぐみ  |瑞霊《かみ》の|慈愛《じあい》
ゆたかにみつ  |神宮《かむみや》の
あつきめぐみ  |滴《したた》る|愛《あい》
なやみは|失《う》せ  うきもきえむ
この|神庭《には》に  みな|来《き》たれ
|永久《とは》にたまふ  おんめぐみ。
あめの|宮居《みやゐ》  しづが|伏屋《ふせや》
なべておなじ  うきためし
ひとはみづの  あわにひとし
たちてはまた  |消《き》えて|失《う》せむ
|永久《とこしへ》の  さちぞある
この|宮居《みやゐ》に  |慕《した》ひ|来《こ》よ。
|瑞霊《みづ》のすくひ  |世《よ》にあ|真似《まね》し
とく|来《き》たりて  くいよつみ
なやみもきえ  たまきよまる
うづのおもて  ゑみたまはむ
たのしみは  つねにみち
うれひきゆる  この|宮居《みやゐ》。
第七(五三)
|伊都《いづ》の|御《み》ひかりは  |吾《わ》が|身《み》のなやむ
|暗路《やみぢ》を|守《まも》れり  |神《かみ》は|愛《あい》なり
(折返)
われらも|愛《あい》せむ  |伊都《いづ》の|御神《みかみ》を。
|村雲《むらくも》つつめど  |月日《つきひ》の|笑《ゑみ》は
きよけくてり|出《い》づ  |神《かみ》は|愛《あい》なり。
|悲《かな》しき|折《を》りにも  めぐみを|与《あた》へ
|勇《いさ》ませ|玉《たま》へり  |神《かみ》は|仁《じん》なり。
|世《よ》は|曇《くも》り|行《ゆ》けど  |御神《みかみ》の|稜威《みいづ》
とこしへにぞ|照《て》る  |神《かみ》は|善《ぜん》なり。
第八(五八)
|御祖《みおや》はあれまし  |道《みち》を|説《と》けり
なやみにすむ|人《ひと》  |求《ま》ぎて|来《き》たれ
|智慧《さとり》の|御柱《みはしら》  |世《よ》に|降《くだ》れり
よわき|人々《ひとびと》よ  |来《き》たりまなべ。
|伊都《いづ》の|大神《おほかみ》は  |世《よ》に|降《くだ》れり
よろづのひとびと  |来《き》たりたのめ
|身霊《みたま》を|清《きよ》むる  |神《かみ》の|清水《しみづ》
|汚《けが》されし|人《ひと》は  |来《き》たりすすげ。
|五六七《みろく》の|大神《おほかみ》  |世《よ》に|出《い》でます
なやめるひとびと  |来《き》たりたのめ
|生命《いのち》の|御親《みおや》は  |世《よ》に|降《くだ》れり
つみに|染《し》みし|人《ひと》  |求《ま》ぎて|生《い》きよ。
|美都《みづ》の|御柱《みはしら》  |世《よ》にうまれぬ
うへした|諸共《もろとも》  |来《き》たり|斎《いつ》け
|天地《あめつち》のはしら  |御代《みよ》に|降《くだ》る
すべての|物《もの》みな  |勇《いさ》みうたへ。
第九(六八)
|大地《だいち》にあまねき  |万《よろづ》の|草木《くさき》は
|神《かみ》の|御力《みちから》を  |現《あら》はし|居《を》れども
|救《すく》ひのたよりと  |人《ひと》|皆《みな》のあふぐ
|力《ちから》は|一《ひと》つの  |瑞《みづ》の|神御霊《かむみたま》。
|常夜《とこよ》の|暗《やみ》の|海《うみ》  |風《かぜ》|吹《ふ》きすさびて
|木《こ》の|葉《は》のごとくに  |波間《なみま》にただよひ
あはやとばかりに  |煩《わづら》ひしときぞ
|望《のぞ》みとなりしは  オレゴン|座《ざ》の|星《ほし》。
|嵐《あらし》を|吹《ふ》き|分《わ》け  |暗夜《やみよ》を|追《お》ひ|退《の》け
|旅路《たびぢ》つつがなく  |都《みやこ》に|来《き》にけり
|今《いま》より|夜《よ》な|夜《よ》な  |御空《みそら》を|仰《あふ》ぎて
みいづを|称《たた》へむ  オレゴン|座《ざ》の|星《ほし》。
第一〇(八三)
|世《よ》は|日日《ひび》に|曇《くも》りぬ  |坪《つぼ》の|内《うち》のそのに
とらはれ|御祖《みおや》は  ひとり|祈《いの》りたまふ。
|血《ち》を|吐《は》くおもひに  |御代《みよ》をなげきます
|救《すく》ひの|主《あるじ》の  |胸《むね》しらぬ|御弟子《みでし》。
|世《よ》の|罪《つみ》を|負《お》ひて  とらはれし|救主《ぬし》を
|元津御祖神《もとつみおやがみ》  まもらせたまひぬ。
|天津御使《あまつみつかひ》は  |雲《くも》のごと|降《くだ》り
|救主《ぬし》をかこみつつ  まもらせたまひぬ。
第一一(一一〇)
|美都御霊《みづみたま》いつと|知《し》らず  |降《くだ》らせたまはむ
|燈火《ひかり》を|手《て》に|捧《ささ》げ  まつものは|誰《たれ》ぞ
(折返)
|美都御霊《みづみたま》とく|来《き》ませ  そなへは|成《な》りぬ
|美都《みづ》みたまとく|来《き》ませ  そなへは|調《とと》なひぬ。
|任《よ》さし|玉《たま》ひし|御霊《みたま》  |返《かへ》しまつる|時《とき》
きよき|光《ひかり》ほまれを  |得《う》るものは|誰《たれ》ぞ
|人《ひと》の|義務《つとめ》をはたし  ちからをつくし
|聖《きよ》けき|御魂《みたま》なりと  いふものは|誰《たれ》ぞ。
|夢《ゆめ》のごとくに|来《き》ます  |救主《きみ》を|迎《むか》へて
いや|高《たか》き|御栄光《みさかえ》に  いるものは|誰《たれ》ぞ。
第一二(一二二)
|聖霊《みたま》よ|天降《あも》りて  |神世《かみよ》のごとく
|奇《くす》しき|神業《みわざ》を  あらはし|玉《たま》へ
(折返)
|世々《よよ》に|坐《ま》します  |聖《きよ》き|霊《みたま》よ
|己《おの》が|身霊《みたま》にも  |足《た》らはせ|玉《たま》へ。
|聖霊《みたま》よ|天降《あも》りて  |仁愛《めぐみ》の|露《つゆ》に
かわけるたましひを  うるほしませよ。
|聖霊《みたま》よ|天降《あも》りて  |貧《まづ》しきものを
いづの|御《み》ちからに  |富《と》ましめたまへ。
|聖霊《みたま》よ|天降《あも》りて  |曲津《まがつ》を|清《きよ》め
たのしき|御国《みくに》に  |進《すす》ませたまへ。
第一三(一三四)
|斯《こ》の|世《よ》は|魔《ま》の|世《よ》と  うつらば|移《うつ》れ
|月日《つきひ》のまもりの  もとにしあれば
やすけし  |御神《みかみ》の|都城《みやこ》は。
|愛《め》づらし|友垣《ともがき》  こころは|移《うつ》り
|親《おや》の|慈愛《じあい》さへ  |冷《ひ》ゆることあれ
うつらじ  |月日《つきひ》の|愛《あい》は。
|身《み》をやくばかりの  ためしの|御火《みひ》も
|霊魂《みたま》に|常磐《ときは》の  ひかりをそへて
|失《う》せまじ  |御神《みかみ》のたみは。
第一四(一三七)
|尊《たふと》き|瑞霊《みたま》よ  つみの|身《み》は
さかし|旅路《たびぢ》に  まよひしを
|清《きよ》けく|照《て》らす  |御仁愛《みめぐみ》の
ひかりを|拝《をが》む  うれしさよ。
みづの|御神《みかみ》に  すくはれし
|身霊《みたま》いまより  ただ|救主《かみ》の
|御心《みむね》のままに  うちまかせ
|神国《みくに》の|道《みち》に  |進《すす》み|行《ゆ》かむ。
|悪《あく》のからまる  |身《み》は|死《し》にて
|瑞霊《かみ》の|稜威《みいづ》に  よみがへり
きよき|神使《つかひ》の  かずにいる
その|誓《うけ》がひの  |鎮魂帰神《バプテスマ》。
|汚《けが》れなき|身《み》の  |幸《さいは》ひは
これに|比《くら》ぶる  ものぞなき
|身《み》もたましひも  みなささげ
|救主《みな》を|慕《した》ひて  |月日《つきひ》おくる。
第一五(一六六)
|美都御魂《みづみたま》  |世《よ》に|給《たま》ひし
|伊都《いづ》の|神《かみ》を  あがめまし
(折返)
ふたたび|身霊《みたま》を  |活《いか》したまふ
|救《すく》ひの|御神《みかみ》に  さかえあれ。
|伊都《いづ》のかみ  |降《くだ》させたまふ
|美都御魂《みづみたま》を  あがめまし。
|世《よ》の|岐美《きみ》を  |示《しめ》させたまふ
|清《きよ》き|聖霊《みたま》  あがめまし。
|伊都《いづ》の|火《ひ》を  きよき|民《たみ》に
|燃《も》やしたまへ  いまの|今《いま》。
第一六(一六七)
メシヤよメシヤよ  かみくにに
われらをすてずに  いれたまへ
(折返)
|聖霊《みたま》よ  ききたまへ
やぶれしこころの  ねぎごとを。
みまへに|泣《な》き|伏《ふ》し  |身《み》をくゆる
こころのねがひを  ゆるしませ。
|救主《きみ》のひかりにぞ  |照《て》らされむ
|暗《くら》けきこの|身《み》を  |救《すく》ひませ。
すくひの|親《おや》なる  |救主《きみ》おきて
あめにもつちにも  たすけなし。
第一七(一七一)
かみのみちを  ひらきませば
|集《つど》への|御《み》こゑを  われはきけり
(折返)
|大御前《おほみまへ》  いさみ|行《ゆ》く
|伊都《いづ》の|力《ちから》に  きよめたまへ。
かよわきみも  ましみづを|得《え》
|身霊《みたま》のけがれを  みなすすがれむ。
まごころもて  きよく|祈《いの》る
|身霊《みたま》にみつるは  |神《かみ》のめぐみ。
ほめよたたへ  |御神《みかみ》のあい
アアほめよたたへ  |瑞霊《みたま》のあい。
第一八(一七六)
おのがみたまの  したひまつる
みづ|御魂《みたま》うるはしさよ
|宇都《うづ》の|月《つき》か  |松《まつ》のみどり
|梅《うめ》の|花《はな》の|清《きよ》きがごと
ながめもあかぬ  みのたのしさ
なやめる|日《ひ》のわがとも
|瑞霊《きみ》は|貴《うづ》の|月《つき》  |松《まつ》のみどり
うつし|世《よ》にたぐひあらじ。
|身《み》の|苦《くる》しさも  |世《よ》のうれひも
われとともにわかちつつ
|誘《いざな》ふものの  |暗《くら》きたくみ
やぶりたまふありがたき
|一《ひと》つは|捨《す》つとも  |瑞霊《かみ》はすてず
みめぐみはいやまさらむ
|瑞霊《きみ》は|貴《うづ》の|月《つき》  |松《まつ》の|美《み》どり
|現《うつ》し|世《よ》にたぐひも|無《な》し。
まごころを|以《も》て  |集《あつ》まりなば
|常世《とこよ》に|契《ちぎり》はたえじ
|水《みづ》にも|火《ひ》にも  |恐《おそ》れあらず
|瑞霊《きみ》こそかたき|城《しろ》なれ
あなわが|神《かみ》の  なつかしさよ
|天降《あもり》の|日《ひ》ぞ|待《ま》たるる
|瑞霊《きみ》は|貴《うづ》の|月《つき》  |松《まつ》のみどり
うつし|世《よ》にたぐひもなし。
第一九(一八三)
つみの|谷《たに》に|落入《おちい》りて  |亡《ほろ》び|行《ゆ》く|人々《ひとびと》に
すくひの|御手《みて》をのべたまふ
あらしの|日《ひ》も|暗《くら》き|夜《よ》も
(折返)
かみのみこの  ほろぶるは
みむねならじ  すくへよ。
つねにそむき|去《さ》りし|子《こ》を
しのび|泣《な》く|母《はは》のごと
|神《かみ》われらをまちたまふ
つみ|悔《く》いてかへれよと。
あを|人草《ひとぐさ》のみたまをば
いつくしみます|救主《かみ》は
あさ|夕《ゆふ》なげかせたまひて
をしへをばつたへたまふ。
いづと|瑞《みづ》とふたはしら
つみの|身《み》もすくふなり
|母《はは》のおもひ|父《ちち》のあい
くめどもつきぬめぐみを。
第二〇(一八六)
つみにまよふものよ  |神《かみ》にかへり
あまつ|神国《みくに》の  さまをみよや
つみをかへりみる  みたまこそは
|国《くに》の|常立《とこたち》の  たまものなれ。
つみに|迷《まよ》ふものよ  |神《かみ》にかへり
|国《くに》の|常立《とこたち》の  |厳《いづ》のまへに
まことの|言霊《ことたま》  |宣《の》りなほせよ
|人《ひと》は|知《し》らずとも  |神《かみ》は|知《し》れり。
つみに|迷《まよ》ふものよ  |神《かみ》にかへり
メシヤの|御許《みもと》に  とくひれ|伏《ふ》せ
|父《ちち》は|見直《みなほ》して  |御手《みて》をのばし
ながるる|涙《なみだ》を  ぬぐひ|玉《たま》はむ。
つみに|汚《けが》れしものよ  |神《かみ》にかへり
|千座《ちくら》を|負《お》はせる  |母《はは》を|見《み》よや
|手足《てあし》の|爪《つめ》なき  |御手《みて》をひろげ
|生《い》きよ|栄《さか》えよと  まねき|玉《たま》ふ。
第二一(一八八)
あだ|浪《なみ》たける  |世《よ》のなかは
|老《おい》も|若《わか》きも  さだめなき
かぜにおそはれ  |船《ふね》かへり
あるは|彼岸《ひがん》に  |渡《わた》りゆく。
あとより|往《ゆ》くも  さきだつも
|千代《ちよ》の|住処《すみか》は  うへもなき
|神《かみ》の|御国《みくに》か  |底《そこ》しらぬ
ほろびの|地獄《くに》か  ほかぞなき。
|浮《う》かれ|出《い》でゆく  |精霊《せいれい》よ
|汝《な》があくがるる  |花《はな》の|香《か》を
|散《ち》らし|往《ゆ》くべき  しこ|嵐《あらし》
|一息《ひといき》|待《ま》たで  |吹《ふ》かぬかは。
|人《ひと》は|神《かみ》の|子《こ》  |神《かみ》の|宮《みや》
かきはときはに  |生《い》きとほし
ほろびも|知《し》らず  |栄《さか》えゆく
みたまのふゆを  たのしめよ。
第二二(二〇〇)
|神《かみ》のみたまの  さちはひて
あめつち|四方《よも》を  まもります
いづの|御霊《みたま》の  かむばしら
あやのたかまに  |現《あ》れましぬ。
たかあま|原《はら》の  |神《かみ》のくに
あまつつかひの  あらはれて
|青人草《あをひとぐさ》  とりけもの
すくはせ|玉《たま》ふ  ありがたき。
|草《くさ》の|片葉《かきは》に  おく|露《つゆ》も
|月《つき》のめぐみを  |身《み》にうけて
ゑみさかえ|行《ゆ》く  |神《かみ》のその
いさみて|進《すす》め  |人《ひと》の|子《こ》よ。
第二三(二〇八)
くもり|果《は》てし  この|身《み》の|罪《つみ》を
なげく|涙《なみだ》は  |雨《あめ》とふるとも
いかですすがむ
(折返)
わが|罪《つみ》のため  |千座《ちくら》を|負《お》ひし
|神《かみ》よりほかに  すくひはなし。
くもりはてし  この|身《み》のつみを
まごころ|籠《こ》めて  いそしむわざも
いかですすがむ。
すくふすべなき  この|身《み》のつみを
|神《かみ》のをしへを  さとるのみにて
いかですすがむ。
第二四(二一七)
|人《ひと》の|身霊《みたま》を  |守《まも》らす|救主《きみ》よ
やみは|襲《おそ》ひ|来《き》  あくまは|迫《せま》り
|死《し》なむばかりの  この|身《み》をすくひ
|天津神都《あまつみやこ》へ  みちびきたまへ。
たよるすべなき  わがたましひを
|瑞《みづ》のすくひの  |御神《みかみ》にまかせ
|慕《した》ひまつれば  うへなき|愛《あい》の
|御船《みふね》のなかに  |乗《の》らせたまひぬ。
わが|身体《からたま》は  |汚《けが》れに|染《そ》めど
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》は  いと|清《きよ》く|坐《ま》し
|霊魂《みたま》|身体《からたま》  ことごと|洗《あら》ひ
さびにし|魂《たま》を  |研《みが》かせ|玉《たま》はむ。
|生命《いのち》の|清水《しみづ》  いやとこしへに
たえず|湧《わ》き|出《い》で  |身霊《みたま》にあふれ
われをうるほし  かわきをとどめ
みろくのよまで  やすきをたまへ。
第二五(二二三)
|仁慈《みろく》の|御神《みかみ》の  みあとをしたひて
かみよの|旅路《たびぢ》を  |進《すす》むぞうれしき
(折返)
|月《つき》のおほかみの  |御伴《みとも》と|仕《つか》へて
|御蔭《みかげ》あゆみつつ  |天《あめ》にのぼりゆかむ。
|深山《みやま》のはてにも  |人《ひと》すむ|里《さと》にも
|瑞霊《かみ》|倶《とも》にまして  わが|霊《たま》|導《みちび》く。
けはしき|坂路《さかぢ》も  |暗《くら》けき|谷間《たにま》も
|大御手《おほみて》にすがり  |進《すす》みて|行《ゆ》かなむ。
|世《よ》のこと|終《を》へなば  よみぢの|河《かは》をも
|懼《おそ》れなく|渡《わた》らむ  |瑞《みづ》のみたすけ。
第二六(二三二)
|長閑《のどか》な|野辺《のべ》の|小径《こみち》を
すぎゆく|時《とき》にも
いとも|峻《けはし》き|山路《やまぢ》を
のぼり|行《ゆ》くをりにも
(折返)
|心《こころ》やすし  |神《かむ》ならひて|安《やす》し。
|黄泉《よもつ》しこめはたけりて
|追《お》ひしき|攻《せ》むれど
|八十《やそ》の|曲津見《まがつみ》あらびて
のぞみを|破《やぶ》るとも。
たふとや|千座《ちくら》のうへに
|身《み》のつみ|失《う》せにき
|苦《くる》しみもだえにし|身《み》も
やよひの|春《はる》のごと。
|大空《おほぞら》の|月日《つきひ》|落《お》ち
|地《つち》はしづむとき
つみびとらは|騒《さわ》ぐとも
|神《かみ》によるわれらは。
第二七(二三三)
|瑞《みづ》の|御魂《みたま》  |守《まも》りたまへ
きよきうづの  |御魂《みたま》あふがむ
|大蛇《をろち》さぐめ  |追《お》ひしくとも
|御言葉《みことば》もて  ことむけなむ。
みたま|清《きよ》め  |身《み》をあらひて
わがちからと  ちゑをすてて
ただ|御神《みかみ》の  |言葉《ことば》のまま
こころかぎり  |進《すす》みゆかなむ。
|法《のり》のままに  われすすまむ
|魔《ま》は|猛《たけ》りて  |道《みち》を|汚《けが》し
わざはひやみ  せまり|来《く》とも
いかで|怖《お》ぢむ  |神《かみ》の|御子《みこ》われ。
すべてのもの  けがれを|去《さ》り
|神《かみ》のために  まごころもて
あさなゆふな  つかへまつる
|人《ひと》の|身《み》たま  |実《げ》にたふとき。
(大正一二・五・一五 加藤明子録)
第一三章 |三美歌《さんびか》その二〔一五三八〕
第二八(二三五)
やまぢに|迷《まよ》ひし  |世《よ》の|人《ひと》よ|神《かみ》の
めぐみのしたたる  みをしへをきけや
(折返)
|涙《なみだ》の|雨《あめ》は  たちまち|晴《は》れて
つきせぬ|嬉《うれ》しみ  |日《ひ》の|出《で》とかがやかむ。
|浮世《うきよ》のます|人《ひと》  |苦《くる》しめる|友《とも》よ
|心《こころ》を|清《きよ》めて  |瑞霊《みたま》にまつろへ。
|苦《くる》しみもだへて  なげく|罪人《つみびと》よ
すくひの|御舟《みふね》を  |指《ゆび》をり|待《ま》てかし。
|大本御神《おほもとみかみ》に  なやみをはらはれ
いさみてあそばむ  |吉《よ》き|日《ひ》はまぢかし。
第二九(二四二)
|神《かみ》の|御国《みくに》へ  のぼりゆくと
|知《し》れど|親《した》しき  あとにのこし
|肉《にく》のやかたを  |別《わか》るるとき
なごり|惜《を》しまぬ  |人《ひと》やはある
(折返)
ああみづみたま
|御神《みかみ》にまさる|御力《みちから》なし。
とはの|生命《いのち》は  みとむれども
|逝《ゆ》きますあとに  |生《い》けるものに
なごりのうれひ  たえがたきを
いかでなげかぬ  ひとやはある。
うき|世《よ》の|富《とみ》を  ねがはずとも
うからやからは  うゑにふるひ
わが|身《み》なやみて  いえぬときは
たれかくるしみ  かなしまざる。
まが|神《かみ》たけり  |誠《まこと》よわく
つみに|曇《くも》れる  |世《よ》にし|住《す》めど
|祝詞《のりと》に|由《よ》りて  |神力《みちから》を|得《え》
かよわき|魂《たま》も  つひにかちなむ。
第三〇(二四三)
をしへのわが|友《とも》  ミロクの|神《かみ》は
|千座《ちくら》のおき|戸《ど》に  つみゆるします
こころのなやみを  |皆《みな》うちあけて
などかはおろさぬ  つみの|重荷《おもに》を。
をしへのわが|友《とも》  ミロクの|神《かみ》は
われらのなやみを  しりて|憐《あは》れむ
|諸《もも》のかなしみに  しづめる|時《とき》も
|真言《まこと》にこたへて  すくはせ|玉《たま》はむ。
をしへのわが|友《とも》  ミロクの|神《かみ》は
ふかきいつくしみ  |千代《ちよ》にかはらず
|世人《よびと》のわが|身《み》を  |離《はな》るる|時《とき》も
|真言《まこと》にこたへて  |恵《めぐ》ませたまはむ。
第三一(二四八)
わが|身体《からたま》わが|霊魂《みたま》  わが|生命《いのち》の|守神《かみ》
|朝《あさ》なほめ|夕《ゆふ》べたたへ  |猶《なほ》たらじとおもふ。
したひまつる|瑞御魂《みづみたま》  いづれの|御国《みくに》に
その|御姿《みすがた》をあらはし  |守《まも》らせたまふぞ。
|狼《おほかみ》のさけぶ|山路《やまぢ》  ふるひつつ|辿《たど》り
|行《ゆ》きなやみたる|吾《わ》が|身《み》を  あだはあざみわらふ。
|木花姫《このはなひめ》のらせかし  |白梅《しらうめ》のかをり
|野《の》に|咲《さ》くか|山《やま》に|咲《さ》くか  あい|悟《さと》らまほし。
|瑞御魂《みづみたま》うるはしさに  |神人《かみびと》よろこび
|言霊《ことたま》のみちからこそ  |天地《あめつち》|動《ゆる》げ。
いと|優《やさ》しき|瑞御魂《みづみたま》  |言《こと》の|葉《は》うれしき
|清《きよ》き|生命《いのち》のいづみは  きみにこそあれや。
第三二(二四九)
あまつ|御国《みくに》 のぼりなむ みちしるべは
|千座《ちくら》を |負《お》ふともなど
かなしむべき |救主《きみ》のみ|許《もと》に ちかづかむ。
かをれる|間《ま》に |花《はな》ちり |草《くさ》のまくら
しとねの |夢《ゆめ》にもなほ
|神《かみ》をあがめ |救主《きみ》のみもとに ちかづかむ。
あまつつかひは みそらに わたす|橋《はし》の
うへより |迎《むか》へたまふ
たまをきよめ |救主《きみ》のみもとに ちかづかむ。
|目《め》さめし|吾《われ》 み|神《かみ》の あとを|追《お》ひて
み|幸《さち》を いよよ|切《せち》に
|願《ねが》ひつつぞ |救主《きみ》のみもとに ちかづかむ。
あまつくにに のぼりて さかえ|行《ゆ》く|日《ひ》
みたまの きよきいのち
ながくてりて |救主《きみ》の|御顔《みかほ》を あふぎみむ。
第三三(二六四)
|瑞《みづ》の|御魂《みたま》よわが|身《み》を
うづの|宮《みや》となしたまへ
けがれしこの|身《み》の|魂《たま》を
|月日《つきひ》なす|照《て》らしませよ
(折返)
わが|御霊《みたま》あらひて
|雪《ゆき》よりも|潔《きよ》くせよな。
|厳《いづ》の|神力《みちから》によりて
|醜《しこ》の|曲霊《まがひ》をおひそけ
きよき|御霊《みたま》にたてかへ
みまへに|仕《つか》へしめてよ。
|神《かみ》よ|千座《ちくら》のもとに
ふしていのるわがみたま
|抜《ぬ》かれたまひし|血《ち》しほに
|暗《くら》き|身《み》を|照《て》らしたまへ。
|月《つき》の|神《かみ》のいさをしに
|照《て》らさるるこそうれしき
|霊魂《みたま》をあらたにきよめ
あまつつかひとなしたまへ。
第三四(二七三)
|聖《きよ》き|十曜《とえう》の  |御旗《みはた》こそ
|御祖《みおや》の|神《かみ》の  さだめてし
|現世《このよ》|神世《かみよ》の  |宝《たから》なり
みはた|汚《けが》さず  よくまもれ
(折返)
|守《まも》れよまもれ  よく|守《まも》れ
|十曜《とえう》の|御旗《みはた》  |押《お》し|立《た》てよ。
|十曜《とえう》の|御旗《みはた》を  あさ|風《かぜ》に
ひるがへしつつ  すすみ|行《ゆ》け
|神《かみ》は|汝《いまし》と  |倶《とも》にあり
|神《かみ》のまにまに  |身《み》をささげ。
|神《かみ》の|神軍《みいくさ》  むらきもの
こころを|清《きよ》め  |身《み》をきよめ
|御教《みのり》のままに  すすみゆけ
|厳《いづ》の|御霊《みたま》の  |御楯《みたて》とし。
|大地《だいち》は|泥《どろ》に  |沈《しづ》むとも
|月《つき》|落《お》ち|星《ほし》は  |降《くだ》るとも
|誠《まこと》|一《ひと》つの  |麻柱《あななひ》の
|神《かみ》の|言葉《ことば》は  |動《うご》かまじ。
|来《き》たれやきたれ  |神《かみ》の|子《こ》よ
いづのみたまや  みづみたま
あらはれませる  |神園《かむぞの》に
|神《かみ》は|汝等《なれら》を  |待《ま》たせたまふ。
第三五(二七四)
|神《かみ》のいくさの  きみのみむねを
をしへつかさよ  よくまもれ
ことたまきよめ  |霊《たま》あきらかに
はやうちむかへ  まが|神《かみ》に。
|仇《あだ》よ|矢玉《やだま》を  はなたばはなて
われには|厳《いづ》の  |言葉《ことば》あり
あだよてだてを  つくさばつくせ
われにも|神《かみ》の  たすけあり。
|神《かみ》のまにまに  ちからはまして
まがのいくさは  どよめきぬ
いさめよいさめ  |救《すく》ひの|瑞霊《きみ》と
かちどきあぐる  |時《とき》はきぬ。
第三六(二七五)
|立《た》てよふるへよ  |神《かみ》のいくさ
みずや|御旗《みはた》の  |十曜《とえう》の|紋《もん》を
まがのみいくさ  |失《う》せゆくまで
|救主《きみ》はさきだち  |進《すす》みたまはむ。
きけよふえの|音《ね》  |救主《きみ》の|吹《ふ》かす
|声《こゑ》はいくさの  かどでのしらせ
|神《かみ》にしたがふ  |身《み》にしあれば
よろづのあだも  いかでおそれむ。
|瑞《みづ》の|御魂《みたま》の  ちからにより
|厳《いづ》のよろひを  かたくまとひ
|直霊《なほひ》のつるぎ  ぬきかざして
|神《かみ》のまにまに  いさみすすめ。
|瑞《みづ》のみいくさ  やがてをはり
|厳《いづ》のかちうた  きよくうたひ
つきひかざしの  かむりをうけ
みづの|御神《みかみ》と  ともにいさまむ。
第三七(二八〇)
あらへよ|霊魂《たましひ》  こころかぎり
ちからつくまでに  いそぎすすげ
みたまのひかりは  くもにふれず
あめつち|四方八方《よもやも》  |照《て》るたのしさ。
をしへのつかさは  くものごとく
むらがりかこみて  |殿《との》に|居《を》れり
わきめもふらずに  |神《かみ》のさとし
きよむるまごころ  うべなひたまふ。
みろくの|御神《みかみ》の  きよきこころ
まなばせたまへと  |両手《もろて》あはせ
この|世《よ》のみはしら  つかへなむと
|天授《さづけ》の|霊魂《みたま》を  |研《みが》きすます。
あまつ|御使《みつかひ》の  みづの|御霊《みたま》
|御言《みこと》のまにまに  すすむこの|身《み》
いかなるあくまの  さはりあるも
|神《かみ》のみちからに  うちも|払《はら》はむ。
第三八(二八八)
いづの|神《かみ》の  のらすみのり
かしこみまつり  |世《よ》におそれず
ひとにたよらで  みちをまもり
つきよをなだめて  よわきをたすくる
|人《ひと》こそ|実《げ》に  うづのみこぞ。
かみのよさす  |御使《みつかひ》|誰《たれ》ぞ
あしきこころを  |夢《ゆめ》いだかず
いづのみのりを  かしこみつつ
あしたに|夕《ゆふ》べに  たゆまずつかふる
|人《ひと》こそ|実《げ》に  うづの|使《つかひ》。
みちをまもる  まめひと|誰《たれ》ぞ
|世《よ》にさきがけて  |御世《みよ》をなげき
|世人《よびと》のさちを  ともにいはひ
あめにもつちにも  |愧《は》づるを|知《し》らざる
|身霊《みたま》ぞ|実《げ》に  |信徒《まめひと》なれ。
第三九(三〇三)
いかなるなげきも  |科戸《しなど》の|風《かぜ》に
いきふき|払《はら》ひて  |身《み》もすこやかに
|神《かみ》のみをしへを  たよりとなして
うつしきこの|世《よ》を  うたひくらさむ。
|浮世《うきよ》の|苦《くる》しみ  いかがありなむ
まことのよろこび  |瑞霊《きみ》にこそあれや
あく|魔《ま》にあふとも  |救主《きみ》ましまして
|守《まも》らせたまへば  いさまざらめや。
|御神《みかみ》をあふげば  こころのなやみ
|日《ひ》に|夜《よ》にはらはれ  |雲霧《くもきり》はれぬ
かきはに|輝《かがや》く  |瑞霊《みたま》のひかり
ながめしわれ|等《ら》は  |勇《いさ》まざらめや。
第四〇(三〇五)
|罪《つみ》に|汚《けが》れし  わがみなれども
|瑞《みづ》のみたまは  |千座《ちくら》を|負《お》ひて
われ|等《ら》をきよめ  |救《すく》ひ|玉《たま》へり。
きよき|御国《みくに》の  |御民《みたみ》となして
|神《かみ》につかへて  |羊《ひつじ》のごとく
ただみち|守《まも》り  |住《す》まはせたまへ。
|奇《くし》びにたふとき  |大御《おほみ》めぐみや
いづのみひかり  あふぎしわれは
この|世《よ》に|怖《お》づる  もの|無《な》かりけり。
|伊都《いづ》の|御神《みかみ》の  みこころ|知《し》らで
そむきまつりし  まがこそは|実《げ》に
かみの|御国《みくに》の  |仇《あだ》なりしかも。
第四一(三〇九)
あく|魔《ま》すさびて  |暗夜《やみよ》はふかし
わが|身《み》はいかにと  をののきわづらふ
(折返)
わが|救主《きみ》よこよひも  このみをまもり
さみしき|一《ひ》と|夜《よ》  めぐまひ|玉《たま》へ。
ちかく|交《まじ》こりし  |友《とも》みなゆきて
つれなき|憂世《うきよ》に  ふりのこされぬ。
わがみの|霊衣《みけし》は  うすくなりけり
|夜《よる》なき|神国《みくに》も  ちかづきしならむ。
をしへのまにまに  |逝《ゆ》かしめたまへ
|生世《いくよ》のあしたに  よみがへるまで。
第四二(三一二)
|霊魂《みたま》のふるさと  あふぎ|見《み》れば
|歎《なげ》きにかすめる  |目《め》も|晴《は》れけり。
|小暗《をぐら》きこの|世《よ》の  |曲《まが》をきため
とび|来《く》る|矢玉《やだま》も  おそれずたたむ。
やだまは|霰《あられ》と  |降《ふ》らばふれよ
まがつは|嵐《あらし》と  |吹《ふ》かばふけよ。
|永久《とは》の|住処《すみか》なる  もとつ|家《いへ》に
かへりゆく|身《み》は  いと|安《やす》からむ。
さしもに|長閑《のどか》な  |神《かみ》の|国《くに》に
やつれし|霊魂《みたま》を  ながく|休《やす》めむ。
第四三(三一七)
|月《つき》|雪《ゆき》よ|花《はな》よと  |愛《め》でにし
わがこののこしたる  |衣《ころも》のそで
ながめてなげく|折《を》り  |御《み》かみは
やすくわが|身霊《みたま》を  なぐさめたまふ
(折返)
めぐしき|吾《わ》が|子《こ》よ  |神《かみ》の|辺《へ》に
のぼりゆき|祈《いの》りを  ともにせよや。
わかれゆくわが|子《こ》を  おくりぬ
なみだの|雨《あめ》|晴《は》れて  |雲《くも》はちれり
|花《はな》さき|匂《には》ひ|充《み》つる  たびぢを
いさみすすみ|行《ゆ》けや  |月《つき》すむ|夜半《よは》。
|神《かみ》にひとしかりし  わが|子《こ》よ
|今《いま》ちちは|年《とし》|老《お》い  |母《はは》はやみぬ
|然《さ》れど|汝《な》が|魂《たましひ》  いさみて
わが|世《よ》を|守《まも》りつつ  |神国《みくに》へゆけ。
第四四(三二一)
|山《やま》|伐《き》り|払《はら》へば  あたひは|降《くだ》り
|川水《かはみづ》かわけば  |舟《ふね》もかよはず
せむすべ|無《な》き|身《み》を  |誰《たれ》にかたよらむ
|瑞《みづ》の|御魂《みたま》なす  |神《かみ》の|愛《あい》のみ。
いのちの|清水《しみづ》は  かきはに|湧《わ》けり
つれなきあらかぜ  |誘《さそ》ひくるとも
いかでか|恐《おそ》れむ  |神《かみ》のますみくに
めぐみの|露《つゆ》にぞ  うるほひまつる。
|伊都能売《いづのめ》の|神《かみ》の  ふかき|心《こころ》は
いかでか|知《し》り|得《え》む  |人《ひと》の|身《み》をもて
ふたつの|御霊《みたま》の  |月日《つきひ》のわざを
つつしみうやまへ  たかきみいさを。
第四五(三二二)
|救主《ぬし》のしもべの  |睦《むつ》びあひて
|神《かみ》たちあがむる  うるはしさよ。
|御魂《みたま》あひて  ことたまあひ
みくにの|御《おん》ため  |一《ひと》つに|祈《いの》る。
|神《かみ》につかふ  |貴《うづ》の|友《とも》は
はなるること|無《な》し  とこしなへに。
第四六(三二五)
ひとやの|中《なか》にも  よろこびあり
|世人《よびと》にかはりて  |血《ち》をながせる
|瑞《みづ》の|神《かむ》ばしら  |偲《しの》び|見《み》れば
なげきはみづから  |消《き》えてぞゆく。
わがみ|憂《う》きときに  まなこさまし
|瑞《みづ》の|御霊《みたま》なる  |救主《きみ》を|見《み》れば
|千座《ちくら》の|置戸《おきど》を  |負《お》はせぬれど
ひるみたまはぬに  こころいさむ。
|苦《くる》しめる|時《とき》にも  |楽《たの》しみあり
きよきをしへにも  |曲《まが》しのべる
|火《ひ》をうごかす|水《みづ》  またも|水《みづ》は
|火《ひ》のためにうごく  |奇《く》しき|世《よ》になむ。
第四七(三四二)
うつりかはるよにしあれど
うごかぬはみくに
あふぎうたはむ|友《とも》よ|来《き》たれ
とこしなへのうたを
とこしなへのうたを
あふぎうたはむ|友《とも》よ|来《き》たれ
とこしなへのみうた。
おきておもひふして|夢《ゆめ》み
あまつ|神《かみ》のもとに
|花《はな》|咲《さ》きにほふすがた|見《み》ゆ
かすみは|日《ひ》に|月《つき》に
かげもなく|消《き》えて
|花《はな》のかをるすがたきよく
かすみは|日《ひ》に|晴《は》れて。
あくに|勝《か》てるいくさびとの
|言霊《ことたま》の|風流《みやび》
|火口《ひぐち》そろへ|進《すす》みつつも
|月《つき》かげを|力《ちから》とし
よせきたる|浪《なみ》わけて
たかまのはら|昇《のぼ》りてゆく
うづみのりみこあゆむ。
|八雲小琴《やくもをごと》|掻《か》き|鳴《な》らして
いづのうたうたひ
いづの|御霊《みたま》みづ|御魂《みたま》
こころなぐさまひつつ
きよきしらべささぐ
|神《かみ》ののりのまめひとらが
いづの|御前《みまへ》にふして。
第四八(三五六)
|黄金《こがね》|白銀《しろがね》  |山《やま》なすとても
いかで|求《もと》めむ  さびゆく|宝《もの》ぞ
|霊魂《みたま》の|行衛《ゆくゑ》  |天津御国《あまつみくに》
|栄《さか》へ|久《ひさ》しき  うづの|住居《すまゐ》
かみわがたま  あまつくにの
いのちのそのに  みちびきませ。
|山《やま》とつみてし  わが|身《み》のつみ
はらひきよませ  |霊《たま》|幸《さち》はひて
よろこび|充《み》てる  |神《かみ》の|座《くら》へ
あめ|地《つち》ももの  |神《かみ》のつかひ
よさしのまま  わがみたまを
めぐませたまへ  すくひの|救主《きみ》。
|八雲《やくも》の|琴《こと》の  |珍《うづ》の|音色《ねいろ》
ひびき|渡《わた》れり  |神《かみ》の|庭《には》に
|草木《くさき》も|露《つゆ》の  |玉《たま》をかざし
|神《かみ》のみさかえ  |祝《いは》ひまつる
|木《こ》の|葉《は》|青《あを》く  |花《はな》はあかく
|竜《たつ》の|宮居《みやゐ》の  うるはしさよ。
第四九(三九二)
|国常立《くにとこたち》の|神《かみ》
わがたまを|守《まも》り
|御魂《みたま》の|糧《かて》もて
いのちを|永久《とは》に|賜《た》べ
(折返)
みろくの|御代《みよ》の  |開《ひら》くる|日《ひ》まで
いづのまもり  ひろけくあれませよ。
やみ|路《ぢ》を|行《ゆ》く|時《とき》も
|魔神《まがみ》たける|夜半《よは》も
ゆくてを|照《て》らして
とはにみちびきませ。
ゆくてを|包《つつ》みたる
しこの|雲霧《くもきり》も
|科戸辺《しなどべ》の|風《かぜ》に
|伊吹《いぶき》はらひすすむ。
みろくの|神代《かみよ》まで
わがたまを|守《まも》り
み|翼《つばさ》のしたに
かかへ|守《まも》らせ|瑞霊《きみ》。
第五〇(四〇九)
|暗《やみ》の|野路《のぢ》を  ひとりゆけど
|神《かみ》にまかせたる  |魂《たま》はやすし。
あらきはやて  |滝《たき》なすあめ
いかでおそれむや  |神《かみ》のをしへ|子《ご》。
あきの|水《みづ》と  |魂《たま》はきよく
|月日《つきひ》はかがやき  むねはさえぬ。
|浪《なみ》はあらく  |風《かぜ》は|激《はげ》し
この|舟《ふね》みなとに  いつかつくらむ。
いづのみたま  みづの|御魂《みたま》
われらを|守《まも》りて  あかしたまへ。
|山《やま》はくづれ  かははさけて
なやめるときこそ  |神《かみ》はすくはむ。
第五一(四一八)
|瑞《みづ》の|御魂《みたま》は  |月《つき》にしあれば
|暗夜《やみよ》も|清《きよ》く  あかしたまへり
(折返)
いづみたま  みづみたま
いづのめの  みたまきよし。
|世人《よびと》のために  てあしの|爪《つめ》を
ぬかせ|給《たま》ひて  |千座《ちくら》につけり。
うづの|御園《みその》を  ひらきてわれを
またせたまへり  |月日《つきひ》の|御神《みかみ》。
|瑞《みづ》のみたまよ  ましみづたれて
くらきこころを  あらはせたまへ。
第五二(四二三)
|伊都能売《いづのめ》の|神《かみ》の  |天降《あも》ります|日《ひ》
すくはる|信徒《まめひと》  |瑞《みづ》の|霊《たま》
(折返)
|月日《つきひ》のごとく  かがやきます
まことの|神《かみ》の  |盾《たて》とならむ。
きたなきけがれに  そまぬ|魂《たま》を
み|神《かみ》のたからに  くはへられ。
みくににすすみて  |神《かみ》をあがめ
まがつに|染《そ》まざる  |瑞《みづ》の|霊《たま》。
第五三(四二七)
|山《やま》の|尾《を》の|上《へ》  |野辺《のべ》のはたけ
|高田《たかた》|窪田《くぼた》  |狭田《さだ》|長田《ながた》
いそしみまく  いきのたねの
|八束穂《やつかほ》なす  |秋《あき》|来《き》たらむ
(折返)
|獲《と》り|入《い》るる  |秋《あき》ちかし
いさみてまて  やつかのほ
とりいるる  |秋《あき》ちかし
いさみて|待《ま》て  やつかのほ。
みそらかすむ  のどけき|日《ひ》も
|寒《さむ》かぜ|吹《ふ》く  |冬《ふゆ》の|夜《よ》も
いそしみ|蒔《ま》く  いきのたねの
やつかほなす  |秋《あき》|来《き》たらむ。
うきを|忍《しの》び  |身《み》をつくして
きよき|教《のり》の  たねを|蒔《ま》け
たわに|実《み》のる  その|足《た》り|穂《ほ》を
|神《かみ》はめでて  うけたまはむ。
第五四(四二八)
|笹《ささ》のつゆも  すゑつひに
|川《かは》とながれ  |海《うみ》となる。
いとちひさき  ちりさへも
つもればまた  |山《やま》となる。
あだに|暮《くら》す  |息《いき》のまも
たふとき|身《み》の  いのちなり。
ありのあなも  いつとなく
つつみをさく  |種《たね》ぞかし。
あはのちさき  |一粒《ひとつぶ》も
|倉《くら》を|充《み》たす  たまとなる。
第五五(四五一)
|聞《き》けやいづの|御声《みこゑ》  |見《み》よや|御姿《みすがた》
|直霊《なほひ》にかへりみて  |勇《いさ》みすすめよ
|大御神言《おほみかみごと》をば  かしこみまつらひて
|言霊《ことたま》のつるぎを  かざしすすみゆけ
(折返)
|大国常立《おほくにとこたち》の  |尊《みこと》の|御声《みこゑ》に
まなこをよくさまし  |神《うづ》の|御楯《みたて》となりて。
|曲津霊《まがつひ》にかこまれ  |鬼《おに》におそはれ
|逃《に》げまどふ|友《とも》あり  あはやあやふきを
すくはでおくべきや  |言霊《ことたま》つるぎもて
みなことむけやはし  みちに|生《い》かすべし。
|曲軍《まがいくさ》にげちる  |言《こと》たまきよし
きよまれるつはもの  |勇《いさ》みふるひぬ
すめ|神《かみ》の|御座《みくら》に  かちどきをあげよ。
第五六(四五六)
|彼方《かなた》の|岸《きし》に  み|船《ふね》つけて
きよきたふとき  み|許《もと》に|行《ゆ》かむ
|生日《いくひ》まちつつ  み|魂《たま》をきよめ
うからやからや  ともらにあはむ
(折返)
やがてあはなむ
(やがてたのしく|会《あ》はなむ)
うからやからと
したしき|友《とも》に。
めぐみの|露《つゆ》の  しげき|国《くに》に
|昇《のぼ》りてまたも  えにし|結《むす》ばむ
かくれし|月日《つきひ》  |星《ほし》もかがやき
|消《き》えし|望《のぞ》みも  また|生《い》きかへる。
|親子《おやこ》|妹背《いもせ》の  めぐり|会《あ》ひに
|手《て》に|手《て》をとりて  |笑顔《ゑがほ》つくる
|雲霧《くもきり》かすみ  あとなく|消《き》えて
きよき|姿《すがた》を  ながめたのしむ。
第五七(四六二)
|父神《ちちがみ》|母神《ははがみ》  おほみまへに
いやとこしなへに  みさかえあれ。
(大正一二・五・一五 加藤明子録)
第四篇 |善言美詞《ぜんげんびし》
第一四章 |神言《かみごと》〔一五三九〕
(|三五教《あななひけう》の|祝詞《のりと》)
|天津祝詞《あまつのりと》
|高天原《たかあまはら》に|元津御祖皇大神《もとつみおやすめおほかみ》|数多《あまた》の|天使《かみがみ》を|集《つど》へて|永遠《とことは》に|神留《かみつま》ります。
|神漏岐《かむろぎ》|神漏美《かむろみ》の|御言《みこと》|以《も》ちて
|神伊邪那岐尊《かむいざなぎのみこと》|九天《つくし》の|日向《ひむか》の|立花《たちばな》の|小戸《をど》の|阿波岐ケ原《あはぎがはら》に。|御禊《みそぎ》|祓《はら》ひ|玉《たま》ふ|時《とき》に|成《な》り|坐《ま》せる。
|祓戸《はらひど》の|大神等《おほかみたち》
|諸々《もろもろ》の|曲事《まがこと》|罪穢《つみけがれ》を。
|祓《はら》ひ|玉《たま》へ|清《きよ》め|賜《たま》へと|申《まを》す|事《こと》の|由《よし》を
|天津神《あまつかみ》、|国津神《くにつかみ》、|八百万《やほよろづ》の|神等共《かみたちとも》に
|天《あめ》の|斑駒《ふちこま》の|耳振立《みみふりたて》て|聞食《きこしめ》せと
|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|神言《かみごと》
|高天原《たかあまはら》に|神留《かみつま》り|坐《ま》す。|元津御祖皇大神《もとつみおやすめおほかみ》の|命《みこと》|以《もち》て。|八百万《やほよろづ》の|神等《かみたち》を|神集《かむつど》へに|集《つど》へ|賜《たま》ひ|神議《かむはか》りに|議《はか》り|玉《たま》ひて。|伊都《いづ》の|大神《おほかみ》|美都《みづ》の|大神《おほかみ》は|豊葦原《とよあしはら》の|水穂《みづほ》の|国《くに》を。|安国《やすくに》と|平《たひら》けく|所知食《しろしめ》さむと|天降《あまくだ》り|玉《たま》ひき。|如此《かく》|天降《あまくだ》り|賜《たま》ひし|四方《よも》の|国中《くぬち》に|荒振神等《あらぶるかみたち》をば。|神問《かむとは》しに|問《とは》し|玉《たま》ひ|神掃《かむはら》ひに|掃《はら》ひ|給《たま》ひて、|語問《こととひ》し|磐根樹根《いはねきね》|立草之片葉《たちくさのかきは》をも|語止《ことやめ》て。|天之磐座《あめのいはくら》|放《はな》ち、|天之八重雲《あめのやへくも》を|伊頭《いづ》の|千別《ちわき》に|千別《ちわき》て|天降《あまくだ》り|賜《たま》ひき。|如此《かく》|天降《あまくだ》り|賜《たま》ひし|四方《よも》の|国中《くになか》を|安国《やすくに》と|定《さだ》め|奉《まつ》りて|下津磐根《したついはね》に|宮柱太敷立《みやばしらふとしきたて》。|高天原《たかあまはら》に|千木多加《ちぎたか》|知《し》りて|皇大神《すめおほかみ》の|美頭《みづ》の|御舎《みあらか》|仕奉《つかへまつ》りて。|天《あめ》の|御蔭《みかげ》|日《ひ》の|御蔭《みかげ》と|隠《かく》り|坐《ま》して。|安国《やすくに》と|平《たひら》けく|所知食《しろしめ》さむ|国中《くぬち》に|成出《なりいで》む|天《あめ》の|益人等《ますひとら》が、|過《あやまち》|犯《をか》しけむ|雑々《くさぐさ》の|罪事《つみごと》は。|天津罪《あまつつみ》とは。|畔放《あはな》ち|溝埋《みぞう》め|樋放《ひはな》ち|頻蒔《しきま》き|串差《くしさ》し、|生剥《いけは》ぎ|逆剥《さかは》ぎ|屎戸《くそへ》|許々太久《ここたく》の|罪《つみ》を。|天津罪《あまつつみ》と|詔別《のりわけ》て|国津罪《くにつつみ》とは。|生膚断《いきはだだち》、|死膚断《しにはだだち》、|白人胡久美《しらひとこくみ》。|己《おの》が|母《はは》|犯《をか》せる|罪《つみ》、|己《おの》が|子《こ》|犯《をか》せる|罪《つみ》。|母《はは》と|子《こ》と|犯《をか》せる|罪《つみ》、|子《こ》と|母《はは》と|犯《をか》せる|罪《つみ》。|畜《けもの》|犯《をか》せる|罪《つみ》、|昆虫《はふむし》の|災《わざはひ》。|高津神《たかつかみ》の|災《わざはひ》、|高津鳥《たかつとり》の|災《わざはひ》。|畜《けもの》|殪《たふ》し|蠱物《まじもの》せる|罪《つみ》、|許々太久《ここたく》の|罪《つみ》|出《いで》む。|如此《かく》|出《いで》ば|天津宮言《あまつみやこと》|以《も》て。|天津金木《あまつかなぎ》を|本打切《もとうちきり》|末打断《すゑうちたち》て。|千座《ちくら》の|置座《おきくら》に|置足《おきたら》はして。|天津菅曽《あまつすがそ》を|本刈絶《もとかりたち》|末刈切《すゑかりきり》て|八針《やはり》に|取裂《とりさき》て。|天津祝詞《あまつのりと》の|太祝詞言《ふとのりとごと》を|宣《の》れ、|如此《かく》|宣《の》らば。|天津神《あまつかみ》は|天《あま》の|磐戸《いはと》を|推披《おしひら》きて。|天《あめ》の|八重雲《やへくも》を|伊頭《いづ》の|千別《ちわき》に|千別《ちわき》て|所聞食《きこしめさ》む。|国津神《くにつかみ》は|高山《たかやま》の|末《すゑ》|短山《ひきやま》の|末《すゑ》に|上《のぼ》り|坐《まし》て。|高山《たかやま》の|伊保里《いほり》、|短山《ひきやま》の|伊保里《いほり》を|掻分《かきわけ》て|所聞食《きこしめさ》む。|如此《かく》|所聞食《きこしめし》ては|罪《つみ》と|言《い》ふ|罪《つみ》は|不在《あらじ》と。|科戸《しなど》の|風《かぜ》の|天《あめ》の|八重雲《やへくも》を|吹《ふ》き|放《はな》つ|事《こと》の|如《ごと》く。|朝《あした》の|御霧《みきり》|夕《ゆふべ》の|御霧《みきり》を|朝風《あさかぜ》|夕風《ゆふかぜ》の|吹掃《ふきはら》ふ|事《こと》の|如《ごと》く。|大津辺《おほつべ》に|居《を》る|大船《おほふね》を|舳《へ》|解放《ときはな》ち|艫《とも》|解放《ときはな》ちて|大海原《おほわだのはら》に|押放《おしはな》つ|事《こと》の|如《ごと》く。|彼方《をちかた》の|繁木《しげき》が|本《もと》を|焼鎌《やきがま》の|敏鎌《とがま》|以《も》て|打掃《うちはら》ふ|事《こと》の|如《ごと》く。|遺《のこ》る|罪《つみ》は|不在《あらじ》と|祓《はら》ひ|賜《たま》ひ|清《きよ》め|玉《たま》ふ|事《こと》を。|高山《たかやま》の|末《すゑ》|短山《ひきやま》の|末《すゑ》より|佐久那太理《さくなだり》に|落《おち》。|多岐《たき》つ|速川《はやかわ》の|瀬《せ》に|坐《ま》す|瀬織津比売《せおりつひめ》と|言《い》ふ|神《かみ》。|大海原《おほわだのはら》に|持出《もちいで》なむ、|如此《かく》|持出往《もちいでいな》ば。|荒塩《あらしほ》の|塩《しほ》の|八百道《やほぢ》の|八塩道《やしほぢ》の|塩《しほ》の|八百会《やほあひ》に|坐《ま》す|速秋津比売《はやあきつひめ》と|言《い》ふ|神《かみ》。|持《もち》|可々呑《かかのみ》てむ、|如此《かく》|可々呑《かかのみ》ては。|気吹戸《いぶきど》に|坐《ま》す|気吹戸主《いぶきどぬし》と|言《い》ふ|神《かみ》。|根《ね》の|国《くに》|底《そこ》の|国《くに》に|気吹《いぶき》|放《はな》ちてむ、|如此《かく》|気吹《いぶき》|放《はな》ちては。|根《ね》の|国《くに》|底《そこ》の|国《くに》に|坐《ま》す|速佐須良比売《はやさすらひめ》と|言《い》ふ|神《かみ》。|持佐須良比《もちさすらひ》|失《うしな》ひてむ、|如此《かく》|失《うしな》ひては。|現身《うつそみ》の|身《み》にも|心《こころ》にも|罪《つみ》と|言《い》ふ|罪《つみ》は|不在《あらじ》と。|祓給《はらひたま》へ|清玉《きよめたま》へと|申事《まをすこと》を|所聞食《きこしめせ》と。|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
第一五章 |祝詞《のりと》〔一五四〇〕
|祝詞《のりと》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|大本大御神《おほもとおほみかみ》の|宇豆《うづ》の|大前《おほまへ》に、|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひ|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》さく。|大地《とよあしはら》の|千五百秋《ちいほあき》の|瑞穂《みづほ》の|国《くに》は。|天地初発之時《あめつちなりいでしとき》より、|国之常立尊《くにのとこたちのみこと》の|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に|鎮《しづま》り|居坐《ゐま》して。|国《くに》の|本国《もとくに》|浦安国《うらやすくに》と|愛給《めでたま》ひ|守賜《まもりたま》ひて、|〓怜《うまら》に|委曲《つばら》に|開給《ひらきたま》ひし|国《くに》にし|有《あ》れば。|皇大神《すめおほかみ》の|天《あめ》の|石位《いはくら》|放《はな》ち、|天《あめ》の|八重雲《やへくも》を|伊都《いづ》の|千別《ちわき》に|千別《ちわき》て、|天降《あまくだ》り|給《たま》ひてより|動《うご》く|事《こと》|無《な》く|変《かは》る|事《こと》|無《な》く。|人《ひと》の|心《こころ》は|直《なほ》く|正《ただ》しく、|山川《やまかは》は|清《きよ》く|潔《さや》けく。|顕見《うつしき》|蒼生《あをひとぐさ》の|食《くひ》て|活《い》くべき|稲種《いなだね》は、|大御神《おほみかみ》の|大御言《おほみこと》|以《も》て|天《あめ》の|邑君《むらぎみ》を|定給《さだめたま》ひ。|天《あめ》の|狭田《さだ》|長田《ながた》に|植《う》ゑしめ|玉《たま》ひし|稲《いね》を、|天津御饌《あまつみけ》の|遠御饌《とほみけ》と|赤丹《あかに》の|穂《ほ》に|聞食《きこしめし》|詔給《のりたま》ひ|授《さづ》け|賜《たま》ひて。|大地主神《おほとこぬしのかみ》は|五百津斎鋤《いほついむすき》を|採《と》りて、|高田《たかた》|窪田《くぼた》を|耕《たがや》し|賜《たま》ひ、|水分神《みくまりのかみ》は|水《みづ》を|撒《ま》かしめ、|埴安神《はにやすのかみ》は|真埴《まはに》を|肥《こ》やし。|大歳《おほとし》の|神《かみ》は|蝗《いなむし》を|攘《はら》ひ。|秋《あき》の|足穂《たりほ》の|八束穂《やつかほ》の、|重穂《いかしほ》に|成《なし》|幸給《さきはへたま》ひ。|夏冬《なつふゆ》の|暑《あつ》さ|寒《さむ》さも|和《やは》らかに、|悪《あ》しき|疫《やまひ》|少《すく》なく。|打見《うちみ》る|嶋《しま》の|崎々《さきざき》、|掻見《かきみ》る|磯《いそ》の|隈々《くまぐま》。|常世乃波《とこよのなみ》の|重浪《しきなみ》|依来《よせき》て、|生《いき》と|生《い》き|住《すみ》と|住《す》む|人《ひと》の|悉《ことごと》。|高《たか》きも|卑《ひく》きも|老《おい》も|若《わか》きも|嬉《うれ》しみ|尊《たふと》み。|遠津御神《とほつみかみ》の|敷坐《しきま》す|島《しま》の|八十島《やそしま》は。|天《あめ》の|壁立《かべたつ》|極《きは》み、|国《くに》の|退立《そぎたつ》|限《かぎ》り。|狭《さ》き|国《くに》は|広《ひろ》く|峻《さか》しき|国《くに》は|平《たひら》けく。|青雲《あをくも》の|靉《たなび》く|極《きは》み、|白雲《しらくも》の|墜居向伏《おりゐむかふす》|限《かぎ》り。|大野原《おほぬのはら》は|磐根木根《いはねきね》|履佐久美《ふみさくみ》。|馬《こま》の|爪《つめ》の|至《いた》り|留《とどま》る|限《かぎ》り。|荷緒《にのを》|結堅《ゆひかた》めて、|長道《ながぢ》|間無《ひまな》く|立続《たちつづ》き。|青海原《あをみのはら》は|棹舵《さをかぢ》|乾《ほ》さず、|船《ふね》の|舳《へ》の|至《いた》らむ|限《かぎ》り。|真舵《まかぢ》|繁貫《しじぬ》き|浮並《うけなら》べて、|遠近《をちこち》の|国《くに》の|悉《ことごと》、|耳《みみ》|驚《おどろ》き|眼《ま》|輝《かがや》く|種々《くさぐさ》の|珍《うづ》の|宝《たから》を。|霜黒葛《しもくろかづら》|来《く》るや|来《く》るや|川舟《かはふね》の|毛曾呂毛曾呂《もそろもそろ》に|持渡《もちわた》り|来《き》て、|百取《ももとり》の|机《つくゑ》に|横山《よこやま》の|如《ごと》く|置足《おきたら》はして。|皇大神《すめおほかみ》に|献《たてまつ》り。|大御国中《おほみくぬち》に|敷施《しきほど》こし。|学《まなび》の|術《わざ》に|総《すべて》の|法《のり》に、|弥益《いやます》も|開《ひら》け|添《そ》はりて。|天《あめ》の|下《した》|四方《よも》の|国《くに》は、|神《かみ》の|御国《みくに》|浦安国《うらやすくに》と。|国《くに》|富栄《とみさか》えて|都《みやこ》も|鄙《ひな》も|恵良々々《ゑらゑら》に|歓《ゑら》ぎ|賑《にぎ》はひ。|邂逅《わくらは》に|道《みち》|無《な》く|黒《きたな》き|心《こころ》|以《も》て、|射向《いむか》ひ|奉《まつ》る|敵《あだ》|在《あ》る|時《とき》は。|万民《みたから》|挙《こぞ》り、|御祖神《みおやのかみ》の|伝《つた》へ|賜《たま》へる、|言霊《ことたま》の|真心《まごころ》を|振起《ふりおこ》し。|厳《いづ》の|雄健《をたけ》び|踏健《ふみたけ》び。|厳《いづ》の|嘖譲《ころび》を|起《おこ》して、|海《うみ》|往《ゆ》かば|水潜屍《みづくかばね》|山《やま》|往《ゆ》かば|草生屍《くさむすかばね》、|大神《おほかみ》の|辺《へ》にこそ|死《し》なめ|閑《のど》には|死《し》なじ。|顧《かへりみ》は|為《せ》じと、|弥《いや》|進《すす》みに|進《すす》み|弥《いや》|逼《せま》りに|逼《せま》り。|山《やま》の|尾《を》ごとに|追伏《おひふ》せ|河《かは》の|瀬《せ》ごとに|追攘《おひはら》ひて|言向《ことむ》け|和《やは》し、|心《うら》|安《やす》く|心《うら》|楽《たぬ》しきは、|専《もはら》|我《あが》|大神《おほかみ》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|大御恵《おほみめぐみ》と|斎知《ゆし》り|厳知《いづし》り、|細螺《しただみ》の|伊這回《いはひもとほ》り|〓〓《あぎた》ふ|魚《いを》の|打仰《うちあふ》ぎ、|敬礼《ゐやまひよろこび》|奉《まつ》らくを、|真澄《ますみ》の|大御鏡《おほみかがみ》の|面《おも》を|押霽《おしはる》して|見行《みそなは》し。|相諾《あひうづな》ひ|玉《たま》ひて|神《かみ》の|御国《みくに》を。|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に|茂御代《いかしみよ》の|足御代《たらしみよ》に|成《なし》|幸賜《さきはへたま》ひ。|官々《つかさつかさ》に|仕《つか》へ|奉《まつ》る|人等《ひとたち》は|本末《もとすゑ》|内外《うちと》を|過《あやま》たず、|茂鉾《いかしほこ》の|中《なか》|執持《とりも》ちて|愛善信真《まこと》の|政事《まつりごと》をなさしめ|給《たま》ひ。|飛騨人《ひだびと》が|打《う》つ|墨繩《すみなは》の|唯《ただ》|一道《ひとすぢ》に|守《まも》るべき。|三五《おほもと》の|教《をしへ》の|憲《のり》の|随々《まにまに》。|善《よ》き|道《みち》の|正《ただ》しき|道《みち》を、|弥遠《いやとほ》に|弥広《いやひろ》に|弘《ひろ》め|導《みちび》かしめ|給《たま》ひ。|男《をのこ》も|女《をみな》も|老《おい》も|若《わか》きも。|相共《あひとも》に|於与豆礼《およつれ》の|妖言《まがこと》に|黐鳥《もちどり》の|罹《かか》る|事《こと》|無《な》く。|斯道《このみち》を|慕《した》ひ|信《うべな》ひ、|悪《あ》しき|心《こころ》を|持《も》たしめず、|曲《まが》れる|事《こと》を|為《な》さしめず。|過《あやま》ちて|犯《をか》さむ|事《こと》は、|神直日《かむなほひ》|大直日《おほなほひ》に|見正《みなほ》し|聞治《ききなほ》し|坐《ま》し。|百姓《おほみたから》の|天《あめ》の|狭田《さだ》|長田《ながた》に|降《お》りて|手肱《たなひぢ》に|水泡《みなわ》|掻垂《かきた》り。|向股《むかもも》に|泥《ひぢ》|掻寄《かきよ》せて、|取作《とりつく》らむ|水田種子《たなつもの》は。|霖雨《ながめ》|降頻《ふりし》き|河《かは》の|瀬《せ》|溢《あふ》れて|浸《をか》し|損《そこな》ふ|事《こと》|無《な》く。|暴《あら》き|風《かぜ》|吹荒《ふきすさ》びて、|根掘《ねこじ》|倒《たふ》れ|朽損《くちそこな》ふ|事《こと》なく。|毒《あ》しき|虫《むし》の|生出《わきいで》て|喰荒《くひあれ》しめむ|事《こと》|無《な》く。|負持《おひも》てる|国《くに》の|名《な》の、|茂瑞穂《いかしみづほ》に|稔《みの》らしめ|給《たま》ひ。|世《よ》の|長人《ながひと》|世《よ》の|遠人《とほひと》と|名告《なの》らひつつ。|千歳《ちとせ》|万歳《よろづよ》|生存《いきながら》へて。|世《よ》の|為《ため》|人《ひと》の|為《ため》|太《いみ》じき|功績《いさを》を|樹《た》てむと|欲《おも》ふ|人々《ひとびと》の|病煩《やみわづら》はむ|事《こと》あらば、|一日《ひとひ》|片時《かたとき》も|疾《と》く|速《すむや》けく。|惟神《かむながら》の|霊法《みのり》に|威《いづ》の|御霊《みたま》を|寄賜《よせたま》ひ。|著《しる》き|験《しるし》を|効《あら》はして|忽《たちま》ち|癒《い》えしめ|救助《すくひたす》けて。|己《おの》が|手手《じし》|家《いへ》の|業務《なりはひ》|緩《ゆる》ぶ|事《こと》なく|怠《おこた》る|事《こと》|無《な》く。|弥勤《いやつと》めに|勤《つと》め|締《しまり》て。|子孫《うみのこ》の|八十連《やそつづき》|五十橿《いかし》|八桑枝《やくはえ》の|如《ごと》く。|茂木《むく》|栄《さか》に|栄《さか》えしめ|給《たま》ひ、|夜《よ》の|守《まもり》|日《ひ》の|守《まも》りに|守幸《まもりさきは》へ|賜《たま》へと。|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|辞別《ことわ》けて|白《まを》さく。|朝《あさ》に|異《げ》に|身《み》の|罪穢《つみけがれ》を|祓《はら》ひ|清《きよ》めて、|拝《をが》み|仕奉《つかへまつ》らくを。|天《あめ》の|斑駒《ふちこま》の|耳《みみ》|弥高《いやたか》に|聞上《きこえあげ》|賜《たま》ひて。|宣教師《をしへつかさ》が|教《をしへ》の|為《わざ》に|己《おの》が|向々《むきむき》|有《あ》らしめず、|其《その》|程々《ほどほど》の|功績《いさを》を|建《た》てしめ|賜《たま》ひ。|殊《こと》に|之《これ》の|家内《やぬち》を|始《はじ》めて、|三五教《おほもとくに》の|教信徒《まめひと》|諸々《もろもろ》が。|家《いへ》をも|身《み》をも|護《まも》り|恵《めぐ》まひ|幸賜《さきはへたま》へと。|鹿児自物膝折伏《かごじものひざをりふ》せ、|宇自物頸根突抜《うじものうなねつきぬ》|来《き》て、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|祈願《こひのみ》|奉《まつ》らくと|白《まを》す。
|三五教《あななひけう》|本部《ほんぶ》|大祭《たいさい》|祝詞《のりと》
|此《これ》の|神殿《かむどの》に|坐《ま》せ|奉《まつ》り|斎奉《いつきまつ》る、|掛巻《かけま》くも|綾《あや》に|畏《かしこ》き、|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|宇豆《うづ》の|大前《おほまへ》に、|斎主《いはひぬし》(某)|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひ|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》さく、|八十日日《やそかひ》は|有《あ》れども、|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》と|選《えら》み|定《さだ》めて、|皇道三五《かむながらおほもと》の|御教《みをしへ》を|恐《かしこ》み|辱《かたじけな》み、|千々《ちぢ》の|一重《ひとへ》も|報《むく》い|奉《まつ》らむと、|毎年《としごと》の|例《ためし》の|任々《まにまに》、|春《はる》(|秋《あき》)の|大御祭《おほみまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》らむとして、|奥山《おくやま》の|五百枝《いほえ》|真栄木《まさかき》に|木棉《ゆふ》|取垂《とりし》で、|御食《みけ》は|高杯《たかつき》に|盛足《もりた》らはして、|御酒《みき》は|甕《みか》の|戸《へ》|高知《たかし》り|甕《みか》の|腹《はら》|満《み》て|並《なら》べて、|餅《もちひ》の|鏡《かがみ》は|八十比良加《やそひらか》に|積《つ》み|重《かさ》ね、|御水《みもひ》|堅塩《きたし》は|窪手《くぼて》に|盛満《もりみ》たして、|山野《やまぬ》の|物《もの》は|甘菜《あまな》|辛菜《からな》|種々《くさぐさ》の|果実《このみ》、|海川《うみかは》の|物《もの》は|鰭《はた》の|広物《ひろもの》、|鰭《はた》の|狭物《さもの》、|奥津藻菜《おくつもは》、|辺津藻菜《へつもは》に|至《いた》る|迄《まで》、|百取《ももとり》の|机代《つくゑしろ》に|盛高成《もりたかな》して|称言《たたへごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくを、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》し|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》ひて、|天皇《すめらみこと》の|大御寿《おほみいのち》を|手長《たなが》の|大御寿《おほみいのち》と|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に、|天津日継《あまつひつぎ》は|天地《あめつち》の|共《むた》|弥遠永《いやとほなが》に|栄《さか》え|座《ま》さしめ|給《たま》ひ、|直《なほ》く|正《ただ》しく|人《ひと》に|憑《うつ》りて|教《をし》へ|給《たま》ひ|諭《さと》し|給《たま》へる、|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|御教《みをしへ》は、|説《と》く|人《ひと》の|説《と》きの|違《たが》ひ|無《な》く、|聞《き》く|人《ひと》の|聞《き》きの|誤《あやまち》あらしめず、|皇道三五《かむながらおほもと》の|信徒等《まめひとたち》は|老《おい》も|若《わか》きも、|清《きよ》き|明《あか》き|誠《まこと》の|道《みち》をのみ|信《うべな》ひて、|異《け》しき|卑《いや》しき|邪道《よこさのみち》に|惑《まど》ふ|事《こと》なく|入《い》る|事《こと》なく、|神《かみ》を|敬《ゐやま》ひ|君《きみ》を|尊《たふと》み、|親子《おやこ》|夫婦《めをと》|兄弟《はらから》|朋友《ともがき》の|行《おこな》ひ|正《ただ》しく|美《うる》はしく、|己《おの》が|向々《むきむき》|有《あ》らしめず、|家《いへ》の|業《なりはひ》|弥締《いやしま》りに|締《しま》り|弥勤《いやつと》めに|勤《つと》めて、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづき》に|至《いた》るまで|五十橿《いかし》|八桑枝《やくはえ》の|如《ごと》く|茂久栄《むくさか》に|立栄《たちさか》えしめ|給《たま》ひ、|邂逅《わくらは》に|病疾《やみわづ》らはむ|事《こと》あらば、|一日《ひとひ》|片時《かたとき》も|疾《と》く|速《すむや》けく|神随《かむながら》の|神法《みのり》に|伊豆《いづ》の|神霊《みたま》を|蒙《かかぶ》らしめ|給《たま》ひ、|恩頼《みたまのふゆ》を|仰《あふ》がしめ|給《たま》ひ、|夜《よ》の|守《まもり》|日《ひ》の|守《まもり》に|守護《まもり》|幸《さきは》へ|給《たま》へと|祈願《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》の|状《さま》を|聞《き》こし|食《め》し|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|鹿児自物膝折伏《かごじものひざをりふ》せ|鵜自物頸根突抜《うじものうなねつきぬ》きて|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|本部《ほんぶ》|大神《おほかみ》|月次祭《つきなみさい》|祝詞《のりと》
|此《これ》の|神床《かむどこ》に|斎《いつ》き|奉《まつ》り|座《ま》せ|奉《まつ》る、|掛巻《かけまく》も|綾《あや》に|恐《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|宇豆《うづ》の|大前《おほまへ》に、|斎主《いはひぬし》(某)|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく。|今日《けふ》はしも|月毎《つきごと》の|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るとして、|御食《みけ》は|高杯《たかつき》に|盛足《もりた》らはし、|御酒《みき》は|甕《みか》の|戸《へ》|高知《たかし》り|甕《みか》の|腹《はら》|満《み》て|並《なら》べて、|餅《もちひ》の|鏡《かがみ》は|八十比良加《やそひらか》に|積《つ》み|重《かさ》ね、|山野《やまぬ》の|物《もの》は|甘菜《あまな》|辛菜《からな》|種々《くさぐさ》の|果実《このみ》、|海川《うみかは》の|物《もの》は|鰭《はた》の|広物《ひろもの》|鰭《はた》の|狭物《さもの》、|奥津藻菜《おくつもは》|辺津藻菜《へつもは》、|御水《みもひ》|堅塩《きたし》に|至《いた》る|迄《まで》、|横山《よこやま》の|如《ごと》く|置《お》き|足《た》らはして、|称言《たたへごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくを|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》して、|現御神《あきつみかみ》と|大八洲国《おほやしまくに》|知食《しろしめ》す|天皇《すめらみこと》の|大御代《おほみよ》を、|手長《たなが》の|大御代《おほみよ》と|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に、|天地《あめつち》の|共《むた》|弥遠永《いやとほなが》に|栄《さか》え|座《ま》さしめ|給《たま》ひ、|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|御教《みをしへ》は、|説《と》く|人《ひと》の|説《と》きの|違《たがひ》なく、|聴《き》く|人《ひと》の|聴《きき》の|誤《あやまち》あらしめず、|皇道三五《かむながらおほもと》の|信徒等《まめひとたち》は、|各《おの》も|各《おの》も|清《きよ》き|明《あか》き|誠《まこと》の|道《みち》をのみ|信《うべな》ひて、|異《け》しき|卑《いや》しき|邪道《よこさのみち》に|惑《まど》ふ|事《こと》なく|入《い》る|事《こと》なく、|神《かみ》を|敬《ゐやま》ひ|君《きみ》を|尊《たふと》み、|親子《おやこ》|夫婦《めをと》|兄弟《はらから》|朋友《ともがき》の|行《おこな》ひ|正《ただ》しく|美《うる》はしく、|己《おの》が|向々《むきむき》あらしめず、|家《いへ》の|業《なりはひ》|弥締《いやしま》りに|締《しま》り|弥勤《いやつと》めに|勤《つと》めて、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづき》に|至《いた》る|迄《まで》、|五十橿《いかし》|八桑枝《やくはえ》の|如《ごと》く|茂久栄《むくさか》に|立栄《たちさか》えしめ|給《たま》ひ、|夜《よ》の|守《まもり》|日《ひ》の|守《まもり》に|守《まも》り|幸《さきは》へ|給《たま》へと、|祈願《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》の|状《さま》を|聞《き》こし|食《め》し|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|鹿児自物膝折伏《かごじものひざをりふ》せ|鵜自物頸根突抜《うじものうなねつきぬ》きて、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|各家《かくけ》|神床遷座祭《かむどこせんざさい》|祝詞《のりと》
|掛巻《かけまく》も|恐《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|大前《おほまへ》に(某)|由麻波利《ゆまはり》|清麻波里《きよまはり》、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》さく。|八十日日《やそかひ》は|有《あ》れども|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》と|選《えら》み|定《さだ》めて、|此回《こたび》|新《あらた》に|設備《とりまかな》へる|神殿《みあらか》に|遷《うつ》し|奉《まつ》り|座《ま》せ|奉《まつ》り、|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》らむとす。|故《かれ》|御酒《みき》|御饌《みけ》|海川山野《うみかはやまぬの》|種々《くさぐさ》の|物《もの》を、|平《たひ》らかに|安《やす》らかに|聞食《きこしめ》して、|家長《いへをさ》を|始《はじ》め|諸人《もろひと》が|過《あやまち》|犯《をか》しけむ|罪穢《つみけがれ》|有《あ》らむをば、|神直日《かむなほひ》|大直日《おほなほひ》に|見直《みなほ》し|聞直《ききなほ》しまして、|大神《おほかみ》の|御心《みこころ》も|安《やす》く|隠《おだひ》に|鎮《しづま》り|坐《ま》して、|弥《いや》|遠永《とほなが》に|守《まも》り|幸《さきは》へ|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
第一六章 |祈言《いのりごと》〔一五四一〕
|感謝祈願詞《みやびのことば》
|感謝《かんしや》
|至大天球《たかあまはら》の|主宰《つかさ》に|在坐《ましまし》て。|一霊四魂《ひと》、|八力《ふた》、|三元《み》、|世《よ》、|出《いつ》、|燃《むゆ》、|地成《なな》、|弥《や》、|凝《ここの》、|足《たり》、|諸《もも》、|血《ち》、|夜出《よろづ》の|大元霊《もとつみたま》、|天之御中主大神《あめのみなかぬしのおほかみ》、|霊系祖神高皇産霊大神《たかみむすびのおほかみ》。|体系祖神神皇産霊大神《かむみむすびのおほかみ》の|大稜威《おほみいづ》を|以《もつ》て、|無限絶対《かきはに》|無始無終《ときは》に|天地万有《よろづのもの》を|創造《つくり》|賜《たま》ひ。|神人《おほみたから》をして|斯《かか》る|至真至美至善之神国《うるはしきみくに》に|安住《すまは》せ|玉《たま》はむが|為《ため》に、|太陽《ひ》|太陰《つき》|大地《くぬち》を|造《つく》り、|各自々々《おのもおのも》|至粋至醇之魂力体《きよきみたま》を|賦与《さづけ》|玉《たま》ひ。|亦《また》|八百万天使《やほよろづのかみ》を|生成《うみなし》|給《たま》ひて|万物《すべて》を|愛護《まもり》|給《たま》ふ、その|広大無辺《ひろきあつき》|大恩恵《おほみめぐみ》を|尊《たふと》み|敬《ゐやま》ひ|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|大地上《あしはら》の|国《くに》を|知召《しろしめ》します、|言霊《ことたま》の|天照国《あまてるくに》は。|千代万代《ちよよろづよ》に|動《うご》く|事《こと》|無《な》く|変《かは》る|事《こと》|無《な》く。|修理固成《つくりかためなし》|給《たま》ひし、|皇大神《すめおほかみ》の|敷坐《しきま》す|島《しま》の|八十島《やそしま》は。|天《あめ》の|壁立《かべたつ》|極《きは》み|国《くに》の|退立《そぎたつ》|限《かぎ》り。|青雲《あをくも》の|棚引《たなびく》|極《きは》み、|白雲《しらくも》の|堕居向伏《おりゐむかふす》|限《かぎ》り、|伊照透《いてりとほ》らす|大稜威《おほみいづ》は、|日《ひ》の|大御守《おほみまもり》と|嬉《うれ》しみ|尊《たふと》み。|常夜《とこよ》|照《て》る|天伝《あまつた》ふ|月夜見神《つきよみのかみ》の|神光《みひかり》は、|夜《よる》の|守《まもり》と|青人草《あをひとぐさ》を|恵《めぐ》み|撫《な》で|愛《いつく》しみ|賜《たま》ひ。|殊更《ことさら》に|厳《いづ》の|御魂《みたま》|天勝国勝国之大祖国常立尊《あまかつくにかつくにのおほみおやくにとこたちのみこと》は、|天地初発之時《あめつちなりいでしとき》より|独神成坐而隠身《すになりましてすみきり》|賜《たま》ひ。|玉留魂《たまつめむすび》の|霊徳《みいづ》を|以《もつ》て、|海月《くらげ》|如《な》す|漂《ただよ》へる|国土《くに》を|修理固成《つくりかため》て、|大地球《くぬち》の|水陸《うみくが》を|分劃《わか》ち|賜《たま》ひ。|豊雲野尊《とよくもぬのみこと》は|足魂《たるむすび》の|霊徳《みいづ》を|以《もつ》て|植物《きくさ》を|生出《なりいで》、|葦芽彦遅尊《あしかびひこぢのみこと》は|生魂《いくむすび》の|霊徳《みいづ》を|以《もつ》て|動物《いけもの》を|愛育《めでそだ》て。|大戸地《おほとのぢ》、|大戸辺《おほとのべ》、|宇比地根《うひぢね》、|須比地根《すひぢね》、|生杙《いくぐひ》、|角杙《つぬぐひ》、|面足《おもたる》、|惶根《かしこね》の|全力《ちから》を|以《もつ》て。|万有一切《すべてのもの》に|賦《くま》り|与《あた》へ、|天地《あめつち》の|万霊《みたま》をして、|惟神《かむながら》の|大道《おほぢ》に|依《よ》らしめ|賜《たま》ひ。|神伊邪那岐尊《かむいざなぎのみこと》、|神伊邪那美尊《かむいざなみのみこと》は。|天津神《あまつかみ》の|神勅《みこと》を|畏《かしこ》み、|天《あま》の|瓊矛《ぬほこ》を|採持《とりも》ち。|豊葦原《とよあしはら》の|千五百秋《ちいほあき》の|水火国《みづほのくに》を。|浦安国《うらやすくに》と、|〓怜《うまら》に|完全具足《つばら》に|修理固成《つくりかためな》し|賜《たま》ひて。|遠近《をちこち》の|国《くに》の|悉々《ことごと》、|国魂《くにたま》の|神《かみ》を|生《う》み、|産土《うぶすな》の|神《かみ》を|任《ま》け|賜《たま》ひて。|青人草《あをひとぐさ》を|親《した》しく|守《まも》り|賜《たま》ふ。|其《その》|大御恵《おほみめぐみ》を|仰《あふ》ぎ|敬《ゐやま》ひ|喜《よろこ》び|奉《まつ》らくと|白《まを》す。
|現身《うつそみ》の|世《よ》の|習慣《ならひ》として。|枉津神《まがつかみ》の|曲事《まがこと》に|相交《あひまじ》こり、|日《ひ》に|夜《よ》に|罪悪汚濁《つみけがれ》に|沈《しづ》みて。|現界《うつしよ》の|制律《みのり》に|罪《つみ》せられ。|幽界《かくりよ》にては|神《かみ》の|政庁《みかど》の|御神制《みさだめ》の|随々《まにまに》、|根《ね》の|国《くに》|底《そこ》の|国《くに》に|堕行《おちゆか》むとする|蒼生《あをひとぐさ》の|霊魂《みたま》を|隣《あはれ》み|賜《たま》ひて。|伊都《いづ》の|霊《みたま》、|美都《みづ》の|霊《みたま》の|大神《おほかみ》は。|綾《あや》に|尊《たふと》き|豊葦原《とよあしはら》の|瑞穂《みづほ》の|国《くに》の|真秀良場《まほらば》|畳並《たたなは》る、|青垣山《あをかきやま》|籠《こも》れる|下津岩根《したついはね》の|高天原《たかあまはら》に、|現世《うつつ》|幽界《かくりよ》の|統治神《すべかみ》として|現《あら》はれ|給《たま》ひ。|教親《をしへみおや》の|命《みこと》の|手《て》に|依《よ》り|口《くち》に|依《よ》りて、|惟神《かむながら》の|大本《おほもと》を|講《と》き|明《あか》し。|天《あめ》の|下《した》|四方《よも》の|国《くに》を|平《たひら》けく|安《やす》らけく、|豊《ゆた》けく|治《をさ》め|給《たま》はむとして。|日毎《ひごと》|夜毎《よごと》に|漏《もる》る|事《こと》|無《な》く|遺《おつ》る|事《こと》|無《な》く。|最《いと》|懇切《ねもごろ》に|百姓万民《おほみたから》を|教《をし》へ|諭《さと》し|賜《たま》ふ。|神直日《かむなほひ》、|大直日《おほなほひ》の|深《ふか》き|広《ひろ》き|限《かぎ》り|無《な》き|大御恵《おほみめぐみ》を。|嬉《うれ》しみ|忝《かたじけ》なみ、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|称辞《たたへごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくと|白《まを》す。
|祈願《きぐわん》
|天地初発之時《あめつちなりいでしとき》より。|隠身《すみきり》|賜《たま》ひし|国《くに》の|太祖《おほみおや》|大国常立大神《おほくにとこたちのおほかみ》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく。|天《あめ》の|下《した》|四方《よも》の|国《くに》に|生出《なりいで》し|青人草等《あをひとぐさら》の|身霊《みたま》に。|天津神《あまつかみ》より|授《さづ》け|給《たま》へる|直霊魂《なほひのみたま》をして。|益々《ますます》|光華明彩至善至直《ひかりうるはしき》|伊都能売魂《いづのめのみたま》と|成《な》さしめ|賜《たま》へ。|邂逅《わくらは》に|過《あやま》ちて|枉津神《まがつかみ》の|為《ため》に|汚《けが》し|破《やぶ》らるる|事《こと》なく。|四魂五情《たまとこころ》の|全《まつた》き|活動《はたらき》に|由《より》て、|大御神《おほみかみ》の|天業《みわざ》に|仕《つか》へ|奉《まつ》るべく。|忍耐勉強《よくたへしのび》もつて|尊《たふと》き|品位《しな》を|保《たも》ち、|玉《たま》の|緒《を》の|生命《いのち》|長《なが》く。|家門《いへかど》|高《たか》く|富《とみ》|栄《さか》えて、|甘《うま》し|天地《あめつち》の|花《はな》と|成《な》り|光《ひかり》と|成《な》り。|大神《おほかみ》の|神子《みこ》たる|身《み》の|本能《さが》を|発《ひら》き|揚《あげ》しめ|賜《たま》へ。|仰《あふ》ぎ|願《ねが》はくは|大御神《おほみかみ》の|大御心《おほみこころ》に|叶《かな》ひ|奉《まつ》りて、|身《み》にも|心《こころ》にも|罪悪《つみ》|汚穢《けがれ》|過失《あやまち》|在《あ》らしめず。|天授之至霊《もとつみたま》を|守《まも》らせ|給《たま》へ、|凡百《すべて》の|事業《なりはひ》を|為《な》すにも。|大御神《おほみかみ》の|恩頼《みたまのふゆ》を|幸《さきは》へ|給《たま》ひて、|善事《よごと》|正行《まさわざ》には|荒魂《あらみたま》の|勇《いさ》みを|振起《ふりおこ》し、|倍々《ますます》|向進発展《すすみひらき》|完成《まつたき》の|域《さかひ》に|立到《たちいた》らしめ|給《たま》へ。|朝《あさ》な|夕《ゆふ》な|神祇《かみたち》を|敬《ゐやま》ひ。|誠《まこと》の|道《みち》に|違《たが》ふ|事《こと》|無《な》く、|天地《あめつち》の|御魂《みたま》たる|義理責任《つとめ》を|全《まつと》うし。|普《あまね》く|世《よ》の|人《ひと》と|親《した》しみ|交《まじ》こり、|人慾《わたくし》の|為《ため》に|争《あらそ》ふ|事《こと》を|恥《はぢ》らひ。|和魂《にぎみたま》の|親《したし》みに|由《より》て|人々《ひとびと》を|悪《にく》まず、|改言改過《あやまちをくい》、|悪言暴語《ののしること》|無《な》く、|善言美詞《みやび》の|神嘉言《かむよごと》を|以《もつ》て|神人《かみがみ》を|和《なご》め。|天地《あめつち》に|代《かは》るの|勲功《いさをし》を|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に|建《た》て。|幸魂《さちみたま》の|愛《めぐみ》|深《ふか》く。|天地《あめつち》の|間《うち》に|生《いき》とし|生《い》ける|万物《もの》を|損《そこな》ひ|破《やぶ》る|事《こと》|無《な》く。|生成化育《かむながら》の|大道《おほみち》を|畏《かしこ》み、|奇魂《くしみたま》の|智《ひかり》に|由《より》て。|異端邪説《まがのをしへ》の|真理《ことわり》に|狂《くる》へる|事《こと》を|覚悟《さとる》べく。|直日《なほひ》の|御霊《みたま》に|由《より》て|正邪理非直曲《ことのよしあし》を|省《かへり》み。|以《もつ》て|真誠《まこと》の|信仰《あななひ》を|励《はげ》み、|言霊《ことたま》の|助《たすけ》に|依《よ》りて|大神《おほかみ》の|御心《みこころ》を|直覚《さと》り。|鎮魂帰神《みたましづめ》の|神術《みわざ》に|由《より》て|村肝《むらきも》の|心《こころ》を|練《ね》り|鍛《きた》へしめ|賜《たま》ひて。|身《み》に|触《ふる》る|八十《やそ》の|汚穢《けがれ》も|心《こころ》に|思《おも》ふ|千々《ちぢ》の|迷《まよひ》も。|祓《はら》ひに|祓《はら》ひ、|退《やら》ひに|退《やら》ひ、|須弥仙《みせん》の|神山《みやま》の|静《しづ》けきが|如《ごと》く。|五十鈴川《わちがは》の|流《ながれ》の|清《きよ》きが|如《ごと》く。|動《うご》く|事《こと》|無《な》く|変《かは》る|事《こと》|無《な》く。|息長《おきなが》く|偉大《たくまし》く|在《あ》らしめ|賜《たま》ひ。|世《よ》の|長人《ながひと》、|世《よ》の|遠人《とほひと》と|健全《まめまめ》しく。|親子《おやこ》|夫婦《めをと》|同胞《はらから》|朋友《ともがき》|相睦《あひむつ》びつつ。|天《あめ》の|下《した》|公共《おほやけ》の|為《ため》、|美《うる》はしき|人《ひと》の|鏡《かがみ》として。|太《いみ》じき|功績《いさを》を|顕《あら》はし、|天地《すめかみ》の|神子《みこ》と|生《うま》れ|出《い》でたる|其《その》|本分《つとめ》を|尽《つく》さしめ|賜《たま》へ|総《すべて》の|感謝《ゐやひ》と|祈願《いのり》は|千座《ちくら》の|置戸《おきど》を|負《おひ》て、|玉垣《たまがき》の|内津御国《うちつみくに》の|秀津間《ほつま》の|国《くに》の|海中《わだなか》の|沓嶋《おもと》|神嶋《うらと》の|無人島《しまじま》に|神退《かむやら》ひに|退《やら》はれ。|天津罪《あまつつみ》、|国津罪《くにつつみ》、|許々多久《ここたく》の|罪科《つみ》を|祓《はら》ひ|給《たま》ひし、|現世《うつしよ》|幽界《かくりよ》の|守神《まもりがみ》なる、|国《くに》の|御太祖《おほみおや》|国常立大神《くにとこたちのおほかみ》、|豊雲野大神《とよくもぬのおほかみ》。|亦《また》|伊都《いづ》の|御魂《みたま》|美都《みづ》の|御魂《みたま》の|御名《みな》に|幸《さちは》へ|給《たま》ひて|聞食《きこしめ》し、|相《あひ》|宇豆那比《うづなひ》|給《たま》ひ。|夜《よ》の|守《まもり》|日《ひ》の|守《まもり》に|守幸《まもりさきは》へ|給《たま》へと。|鹿児自物膝折伏《かごじものひざをりふ》せ|宇自物頸根突抜《うじものうなねつきぬき》て。|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|祈願奉《こひのみまつ》らくと|白《まを》す。
|祖先拝詞《そせんはいし》
|遠都御祖《とほつみおや》の|御霊《かみ》、|代々《よよ》の|祖等《おやたち》、|家族《うから》|親族《やから》の|霊《みたま》。|総《すべ》て|此《この》|祭屋《まつりや》に|鎮祭《しづめまつ》る、|御魂等《みたまたち》の|御前《みまへ》を|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひ。|家《いへ》にも|身《み》にも|枉事《まがこと》|有《あ》らせず、|夜《よ》の|守《まも》り|日《ひ》の|守《まも》りに|守幸《まもりさきは》へ|宇豆那比《うづなひ》|玉《たま》ひ。|弥孫《いやひこ》の|次々《つぎつぎ》|弥益々《いやますます》に|令栄《さかえしめ》|賜《たま》ひて。|息内《いのち》|長《なが》く|御祭《みまつり》|善《うるはし》く|仕奉《つかへまつ》らしめ|給《たま》へと。|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|拝《をが》み|奉《たてまつ》る。
第一七章 |崇詞《あがめごと》〔一五四二〕
|祖霊社《それいしや》|朝夕《あさゆふ》|日拝《につぱい》|祝詞《のりと》
|是《これ》の|祖霊殿《みたまや》に|斎《いつ》き|奉《まつ》り|鎮《しづ》まり|坐《ま》す|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|宇豆《うづ》の|大前《おほまへ》に、|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひ|畏《かしこ》み|畏《かしこ》み|白《まを》さく、|言巻《いはまく》も|畏《かしこ》けれども、|大神等《おほかみたち》の|深《ふか》き|高《たか》き|御徳《みいづ》を|蒙《かがぶ》りて、|常《つね》も|撫《な》で|給《たま》ひ|愛給《めでたま》へる|青人草等《あをひとぐさら》(|何某家《なにがしけ》|遠祖代々祖等《とほつみおやよよのおやたち》)の|神霊《みたま》|諸々《もろもろ》を、|此《これの》|祖霊殿《みたまや》に|斎《いは》ひ|鎮《しづ》めて、|惟神《かむながら》なる|大道《おほみち》の|随々《まにまに》|恩頼《みたまのふゆ》を|幸《さきは》ひ|給《たま》ふ|事《こと》を、|嬉《うれし》み|忝《かたじけな》み|畏《かしこ》みも|称《たた》へ|言《ごと》|竟奉《をへまつ》らくと|白《まを》す。
|言別《ことわけ》て|此《これ》の|霊舎《みたまや》に|斎《いつ》き|奉《まつ》り|坐《ま》せ|奉《まつ》る|諸々《もろもろ》(|何家《なにけ》|遠祖代々祖等《とほつみおやよよのおやたち》)の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく、|人《ひと》は|皇御祖《すめみおや》の|奇《くしび》に|妙《たへ》なる|造化《むすび》に|依《よ》りて|天津御霊《あまつみたま》を|賜《たま》はり、|伊邪那岐《いざなぎ》、|伊邪那美《いざなみ》|二柱《ふたはしら》の|大神《おほかみ》の|生成《うみな》し|給《たま》ひて、|天照大御神《あまてらすおほみかみ》の|大御光《おほみひかり》の|中《うち》に|養育《やしな》はるる|者《もの》なれば、|顕世《うつしよ》の|心《こころ》の|律法《おきて》、|身《み》の|行《おこなひ》を|惟神《かむながら》|清《きよ》く|正《ただ》しく|務《つと》め|励《はげ》みせば、|天津御国《あまつみくに》の|神《かみ》の|廷《みには》に|帰《かへ》り|坐《ま》して|其《その》|程々《ほどほど》に|天津神《あまつかみ》の|御愛顧《みいつくしみ》を|受《うけ》て、|永《なが》く|久《ひさ》しく|仕《つか》へ|奉《まつ》るべき|神理《ことわり》を|尊《たふと》み、|重《おも》みつつ、|供《そな》へ|奉《まつ》る|幣帛《みてくら》を(|毎日《ひごと》の|御饌《みけ》を)|平《たひ》らけく|安《やす》らけく|聞食《きこしめし》て、|是《これ》の|教《をしへ》の|御廷《みには》に|拝《をろが》み|仕奉《つかへまつ》る|諸人等《もろひとら》は、|異《けし》き|心《こころ》|悪《あし》き|行《おこな》ひ|無《な》く、|病《やま》しき|事《こと》なく、|煩《わづら》はしき|事《こと》なく、|家《いへ》の|業《なりはひ》|緩《ゆる》ぶ|事《こと》なく|怠《おこた》る|事《こと》なく、|弥栄《いやさか》に|栄《さかえ》しめ|給《たま》ひ、|夜《よ》の|守《まも》り|日《ひ》の|守《まも》りに|守《まも》り|幸《さちは》ひ|給《たま》へと、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|祖霊遷座祭《それいせんざさい》
|何々家《なになにのいへ》の|遠津祖《とほつみおや》、|世々《よよ》の|祖等《おやたち》の|御霊《みたま》の|御前《みまへ》に|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく、|此《これ》の|御宮《みあらか》を|祓《はらひ》|清《きよ》めて、|今日《けふ》より|遷《うつ》し|奉《まつ》り|坐《ま》せ|奉《まつ》る|事《こと》を、|平《たひ》らけく|安《やす》らけく|聞食《きこしめし》|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》ひて、|弥《いや》|益々《ますます》に|家門《いへかど》|高《たか》く|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづき》をも|守幸《まもりさきは》へ|給《たま》へと、|種々《くさぐさ》の|神饌物《ためつもの》を|捧《ささ》げ|奉《まつ》りて、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|一年祭《いちねんさい》|祭文《さいぶん》
|此《これ》の|霊殿《みたまや》に|斎《いは》ひ|奉《まつ》り|坐《ま》せ|奉《まつ》る、○○|命《のみこと》|故《もとの》○○|毘古《びこ》の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく。|汝命《ながみこと》や|現世《うつしよ》を|身退《みまかり》|坐《まし》つるは、|昨年《こぞ》の|此《この》|月《つき》の|今日《けふ》と|早《はや》くも|一年《ひととせ》|廻《めぐ》れる|御祭《みまつり》の|日《ひ》に|成《な》りぬ。|故《かれ》|常《つね》も|忘《わす》るる|間《ま》なく、|慕《した》ひつつ|花紅葉《はなもみぢ》の|美麗《うるはし》き|色《いろ》を|見《み》ては|昔《むかし》を|思《おも》ひ、|百鳥《ももどり》の|囀《さへづ》る|声《こゑ》を|聞《きき》ては|其《その》|世《よ》を|恋《こ》ひ、|種々《くさぐさ》に|恋《こひ》しみ|偲《しの》び|奉《まつ》りて、|此《これ》の|家《いへ》の|守神《まもりがみ》と|持斎《もちいつ》き、|御前《みまへ》には|夜《よ》となく|昼《ひる》となく|仕奉《つかへまつ》る|中《なか》にも、|今日《けふ》は|親族《うから》|家族《やから》|諸人等《もろひとら》、|弥集《いやつど》へに|集《つど》へて|広《ひろ》く|厚《あつ》く|祭祀《みまつり》|治《をさ》め|奉《まつ》るが|故《ゆゑ》に、|礼代《いやしろ》の|幣帛《みてくら》と|種々《くさぐさ》の|神饌物《みけつもの》を、|百取《ももとり》の|机《つくゑ》に|横山《よこやま》の|如《ごと》く|供《そな》へ|奉《まつ》りて、|称言《たたへごと》|竟奉《をへまつ》らくを、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめし》て、|弥《いや》|遠永《とほなが》に|世々《よよ》の|祖等《おやたち》と|御心《みこころ》を|一《むつ》び|御力《みちから》を|合《あは》せ|給《たま》ひて、|子孫《うみのこ》の|遠《とほ》き|世《よ》の|守《まも》り、|家《いへ》の|鎮《しづめ》と|坐《ま》す|御徳《みいづ》を|現《あら》はし|給《たま》ひ、|家門《いへかど》|高《たか》く|立栄《たちさかえ》しめ|給《たま》ひ、|家族《うから》|親族《やから》|和《にぎ》び|睦《むつ》び、|浦安《うらやす》く|転楽《うたたたぬ》しく|在《あら》しめ|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|辞別《ことわけ》て|何々《なになに》の|家《いへ》の|遠津御祖《とほつみおや》、|世々《よよ》の|祖等《おやたち》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく、|今日《けふ》はしも○○|毘古《びこ》の|神霊《みたま》の|一年《ひととせ》の|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》るとして、|供《そな》へ|奉《まつ》る|美味物《うましもの》を|相甞《あひなめ》に|聞食《きこしめし》|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|五十日間《ごじふにちかん》|新霊拝詞《あらみたまはいし》
○○|命《のみこと》、|故《もとの》○○の|神霊《みたま》や、|汝命《ながみこと》の|御為《みため》には、|善《よ》き|事《こと》|議《はか》り|為《な》さむと|真心《まごころ》を|尽《つく》して|大神《おほかみ》に|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》り、|善《よ》き|事《こと》は|褒《ほ》め|給《たま》ひ、|過《あやまち》あらむには|宥《なだ》め|給《たま》ひて|其《その》|所《ところ》を|得《え》しめ|給《たま》ひ、|其《その》|楽《たのしみ》を|極《きは》めしめ|給《たま》へと|祈白《のみまを》す|事《こと》を|聞食《きこしめし》て、|只管《ひたすら》に|大神《おほかみ》を|憑頼《たのみ》|坐《ま》して。|惑《まど》はず|多由多《たゆた》はず|平穏《おだひ》に|鎮《しづ》まり|給《たま》へと|白《まを》す。
|家祭祝詞《かさいのりと》
|畏《かしこ》きや、○○|命《のみこと》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく、|汝命《ながみこと》は|百年《ももとせ》|千年《ちとせ》の|齢《よはひ》を|重《かさ》ねて、|世《よ》の|長人《ながひと》の|名《な》を|負《お》ひ|坐《まさ》む|事《こと》をし、|家族《うから》は|更《さら》なり、|諸人《もろひと》も|常《つね》に|多能母志美《たのもしみ》|思《おも》ひつつ|在経《ありへ》し|間《ほど》に、|現身《うつそみ》の|人《ひと》の|慣《ならひ》と(|病《やまひ》には|得堪《えたへ》|給《たまは》ずて)|現《うつ》し|世《よ》を|離《さかり》て、|幽冥《かくりよ》に|隠《かく》り|坐《ま》し|天津御国《あまつみくに》に|昇《のぼ》り|坐《ま》しぬれば、|惟神《かむながら》の|御掟《みおきて》の|任々《まにまに》|事議《ことはか》りて、|神葬《かむはふり》の|礼《わざ》も|既《はや》|功竟《ことをへ》ぬれば、|瑞《みづ》の|殿《みあらか》の|内外《うちと》も|清《きよ》らかに|祓《はら》ひ|清《きよ》めて|種々《くさぐさ》の|物《もの》|供《そな》へ|奉《まつ》りて、|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》る|状《さま》を|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめし》て、|大神《おほかみ》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|御恵《みめぐ》みの|蔭《かげ》に|隠《かくろ》ひ、|浦安《うらやす》く、|浦楽《うらたの》しく|坐《ま》して、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづ》き|遠《とほ》き|世《よ》に|此《これ》の|家《いへ》の|守護神《まもりがみ》と|鎮《しづま》り|坐《ま》して、|時々《ときどき》の|祭《まつり》の|礼《わざ》をも、|絶《たゆ》る|事《こと》なく、|懈《おこた》る|事《こと》なく、|仕奉《つかへまつ》らむ|事《こと》を|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|招魂祓詞《せうこんはらひのことば》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|祓戸四柱《はらひどよはしら》の|大神等《おほかみたち》の|大前《おほまへ》に|謹《つつし》み|敬《ゐやま》ひて|白《まを》さく。|此《この》|郷《さと》に|住《すめ》る、|何某《なにがし》、|此《この》|月《つき》○|日《ひ》に|顕世《うつしよ》を|去《さ》りぬるに|因《よ》りて、|其《そが》|霊魂《みたま》の|為《ため》に|三五皇大神《おほもとすめおほかみ》、|辞別《ことわけ》て|産土《うぶすな》の|大神《おほかみ》に|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》り|霊代《みたましろ》を|造備《つくりそな》へて、|遠《とほ》く|永《なが》く|此《これの》|家《いへ》に|鎮《しづ》め|斎《いは》ひ|奉《まつ》らむとす。|故《かれ》|供《そな》へ|奉《まつ》る|神饌物《みけつもの》は|更《さら》なり、|祭員《まつりつかさ》|及《また》|家族《うから》|親族《やから》|諸人等《もろひとら》が|過《あやまち》|犯《をかし》けむ|罪穢《つみけがれ》|有《あ》らむには|祓《はら》ひ|賜《たま》へ|清《きよ》め|給《たま》ひて、|清々《すがすが》しく|成幸《なしさきは》へ|給《たま》へと、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|発葬祓詞《はつさうはらひのことば》
|掛巻《かけまく》も|恐《かしこ》き|祓戸四柱《はらひどよはしら》の|大神等《おほかみたち》の|宇都《うづ》の|大前《おほまへ》に、|祓主《はらひぬし》、|何某《なにがし》、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》さく、|去《いに》し○|日《ひ》に|顕世《うつしよ》を|神避《かむさ》り|坐《ま》しつる|何某《なにがし》が|葬儀《みはふり》の|祭《まつり》|仕奉《つかへまつ》るとして|供《そな》へ|奉《まつ》る|神饌物《みけつもの》は|更《さら》なり、|仕奉《つかへまつ》る|祭員《まつりつかさ》|及《また》|家族《うから》|親族《やから》|参来《まゐき》|集《つど》へる|諸人等《もろひとら》が|過《あやまち》|犯《をか》しけむ|罪穢《つみけがれ》|有《あ》らむをば、|祓《はら》ひ|給《たま》ひ、|清《きよ》め|給《たま》ひて|行道《ゆくみち》をも|枉神《まがかみ》の|枉事《まがこと》なく、|清々《すがすが》しく|発葬《みはふり》の|式《のり》|仕奉《つかへまつ》らしめ|給《たま》へと、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|五十日間《ごじふにちかん》|及《および》|年祭《ねんさい》|奥都城《おくつき》|祝詞《のりと》
○○|命《のみこと》|故《もとの》○○|毘古《びこ》(|子《こ》)の|奥都城《みはか》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく、|今日《けふ》はしも○|年《とせ》(|日《ひ》)の|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るべき|日《ひ》に|廻《めぐ》り|来《き》ぬれば、|家族《うから》|親族《やから》|諸人《もろひと》|打集《うちつど》ひて、|種々《くさぐさ》の|美味物《うましもの》|供《そな》へ|拝《をろが》み|奉《まつ》る|状《さま》を|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》して、|子孫《うみのこ》の|遠永《とほなが》に|家《いへ》をも|身《み》をも|守《まも》り|幸《さきは》ひ|給《たま》へと|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|幽家《かくりや》|復祭《ふくさい》|奏上詞《そうじやうのことば》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大神《おほもとすめおほかみ》の|大前《おほまへ》に|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく。|何某《なにがし》(|霊《みたま》の|名《な》)の|霊《みたま》は|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》るべき|神胤《みすゑ》の|無《な》きが|故《ゆゑ》に、|今回《こたび》|惟神《かむながら》の|御教《みをしへ》の|任《ま》に|任《ま》に|改《あらた》め|斎《いは》ひて、|幽家《かくりや》に|鎮《しづ》め、|大神《おほかみ》の|知食《しろしめ》す|幽冥《かくりよ》の|神事《みわざ》に|仕奉《つかへまつ》らしめむとして、|今日《けふ》の|生日《いくひ》の|足日《たるひ》の|良辰《よきとき》に|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》らむとす。|故《かれ》|神酒《みき》|御饌《みけ》、|海川山野《うみかはやまぬ》の|種々《くさぐさ》の|物《もの》を|供《そな》へ|奉《まつ》りて|乞祈《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》の|状《さま》を、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめし》|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》ひて、|弥《いや》|遠永《とほなが》に|広《ひろ》く|厚《あつ》く|恩頼《みたまのふゆ》を|蒙《かがぶ》らしめ|給《たま》へと、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|称言《たたへごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくと|白《まを》す。
|復祭合祀祝詞《ふくさいがふしのりと》
|此《これ》の|日茂呂木《ひもろぎ》に|斎《いは》ひ|奉《まつ》り|坐《ま》せ|奉《まつ》る、|何某《なにがし》の|霊《みたま》の|御前《みまへ》に|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく。|汝命等《ながみことたち》は|前《さき》の|御祭《みまつり》に|洩《も》れ|落《お》ち|給《たま》ひしに|依《よ》りて、|今日《けふ》の|吉日《よきひ》の|吉辰《よきとき》に、|何々家代々《なになにのいへのよよ》の|祖等《おやたち》の|鎮《しづま》り|坐《ま》す|霊祠《みたまや》に|合祀《あはせ》の|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》らむとして、|御前《みまへ》には|神酒《みき》、|御饌《みけ》、|種々《くさぐさ》の|物《もの》を|取添《とりそ》へて|仕奉《つかへまつ》らくを、|御心《みこころ》|穏《おだひ》に|聞食《きこしめ》せと|白《まを》す。|抑《そもそも》|現世《うつしよ》の|人《ひと》の|生《い》ける|間《ほど》は|言《い》ふも|更《さら》なり、|死《まか》れる|後《のち》の|霊魂《みたま》は|専《もは》ら|皇大神《すめおほかみ》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|御心《みこころ》に|愛《いつくし》み|給《たま》ひ|恵《めぐ》み|給《たま》ひて、|神《かみ》の|列《つら》に|入《い》らしめ|給《たま》ひ、|歓《よろこ》び|楽《たの》しみをも|得《え》しめ|給《たま》ふ|事《こと》を|丁寧《たし》に|窺《うかが》ひ|覚《さと》りて、|今《いま》も|此《かく》の|如《ごと》く|汝命等《ながみことたち》の|御霊《みたま》の|御為《みため》に、|大神《おほかみ》の|御寵愛《みいつくしみ》を|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》りて、|惟神《かむながら》の|大神国風《おほみくにぶり》に|改《あらた》め|斎《いは》ひ|奉《まつ》らくを、|汝命等《ながみことたち》の|御心《みこころ》にも|嬉《うれ》しみ|悦《よろこ》び|平《たひら》かに|安《やす》らかに|聞食《きこしめ》し|給《たま》ひて、|今日《けふ》より|以後《のち》は|只管《ひたすら》に|大神《おほかみ》に|仕《つか》へ|奉《まつ》りて、|高《たか》き|御位《みくらゐ》に|進《すす》み、|弥広《いやひろ》に|弥《いや》|益々《ますます》に|広所《ひろど》を|得給《えたま》ひ、|何々家代々《なになにのいへのよよ》の|祖等《おやたち》と|御力《みちから》を|合《あは》せ、|御心《みこころ》を|一《むつ》び|給《たま》ひて|春秋《はるあき》の|遠永《とほなが》に、|子孫《うみのこ》の|八十連《やそつづき》に|参出侍《まゐでさもら》ひて、|御祭《みまつり》|美《うるは》しく|仕奉《つかへまつ》らしめ|給《たま》へと、|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》らくを|聞食《きこしめ》して、|御心《みこころ》も|平穏《おだひ》に|鎮《しづ》まり|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》も|白《まを》す。
|祓戸昇降神詞《はらひどしやうかうしんし》
|掛巻《かけまく》も|綾《あや》に|恐《かしこ》き
|瀬織津比売之大神《せおりつひめのおほかみ》
|速秋津比売之大神《はやあきつひめのおほかみ》
|伊吹戸主之大神《いぶきどぬしのおほかみ》
|速佐須良比売之大神《はやさすらひめのおほかみ》
|総《すべ》て|祓戸四柱《はらひどよはしら》の|大神等《おほかみたち》
|是《これ》の|日茂呂木《ひもろぎ》に|降居《おりゐ》|坐《ま》し|坐《ま》せ。
|此《これ》の|日茂呂木《ひもろぎ》に|招《を》ぎ|奉《まつ》り|座《ま》せ|奉《まつ》る|掛巻《かけまく》も|綾《あや》に|恐《かしこ》き
|瀬織津比売之大神《せおりつひめのおほかみ》
|速秋津比売之大神《はやあきつひめのおほかみ》
|伊吹戸主之大神《いぶきどぬしのおほかみ》
|速佐須良比売之大神《はやさすらひめのおほかみ》
|総《すべ》て|祓戸四柱《はらひどよはしら》の|大神等《おほかみたち》
|本津御座《もとつみくら》に|昇《のぼ》り|坐《ま》し|坐《ま》せ。
|祖霊大祭祝詞《それいたいさいのりと》
|畏《かしこ》きや|此《これ》の|霊社《みたまや》に|鎮《しづ》め|奉《まつ》り|斎《いつ》き|奉《まつ》る|神霊等《みたまたち》の|御前《みまへ》に|持《も》ち|由《ゆ》まはり|謹《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく。|八十日日《やそかひ》は|有《あ》れども、|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》と|選《えら》み|定《さだ》めて、|春《はる》(|秋《あき》)の|大御祭《おほみまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るとして、|御前《みまへ》には|奥山《おくやま》の|五百枝《いほえ》|真栄木《まさかき》を|伊伐《いき》り|来《き》て、|時《とき》の|花《はな》をも|折《を》り|添《そ》へて、|御饌《みけ》は|高杯《たかつき》に|盛足《もりた》らはし、|餅《もちひ》の|鏡《かがみ》を|八十平瓮《やそひらか》に|積《つ》み|重《かさ》ね、|御酒《みき》は|甕《みか》の|戸《へ》|高知《たかし》り|甕《みか》の|腹《はら》|満《み》て|並《なら》べて、|海川山野《うみかはやまぬ》の|種々《くさぐさ》の|美味物《うましもの》、|御水《みもひ》|堅塩《きたし》に|至《いた》る|迄《まで》|横山《よこやま》の|如《ごと》く|置《お》き|足《た》らはして、|家族《うから》|親族《やから》|諸人《もろひと》をも|弥集《いやつど》へに|集《つど》へて、|斎廷《ゆには》もとどろに|饒《にぎ》び|笑《ゑ》らぎ、|掌《たなぞこ》もやららに|打上《うちあ》げつつ|称《たた》へ|言《ごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくを、|汝命等《ながみことたち》は|現世《うつしよ》の|事《こと》|成《な》し|竟《を》へまして、|幽冥《かくりよ》の|神《かみ》の|列《つら》に|入《い》りましつれば、|大神《おほかみ》の|大御心《おほみこころ》にも|愛《うるは》しみ|給《たま》ひ|撫《な》で|給《たま》ひて、|弥高《いやたか》に|高《たか》き|位《くらゐ》に|進《すす》み|給《たま》ひ、|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得《え》しめ|給《たま》ひて、|現身《うつそみ》の|世《よ》に|坐《ま》しし|間《ほど》こそ|飽《あ》かず|口惜《くちをし》く|思《おもほ》しし|事《こと》も|有《あ》りけめ、|今《いま》はしも|万《よろづ》の|事等《ことら》|御心《みこころ》のまにまに|足《た》らひ|調《ととの》ひて、|心安《うらやす》く|転《うた》た|楽《たぬ》しき|事《こと》となも|思《おも》ひ|奉《まつ》らくを、|愛《め》で|給《たま》ひ|美《うる》はしみ|給《たま》ふ|子孫等《うみのこら》|家族《うから》|親族《やから》の|悉《ことごと》、|汝命等《ながみことたち》の|創《はじ》め|給《たま》ひ|伝《つた》へ|給《たま》へる|御功業《みいさを》を、|樛木《つがのき》の|次《つ》ぎ|次《つ》ぎ|弥弘《いやひろ》めに|弘《ひろ》め、|言霊《ことたま》の|清《さや》けく|坐《ま》しし|祖《おや》の|名《な》|墜《おと》さず、|勤《つと》め|締《しま》りて|有《あ》る|状《さま》を|聞食《きこしめ》し、|清《きよ》き|名《な》をも|高《たか》き|功《いさを》をも、|今《いま》の|世《よ》に|立《た》ちて|後《のち》の|世《よ》に|伝《つた》へしめ|給《たま》ひ、|幽冥《かくりよ》に|入《い》りなむ|後《のち》の|霊魂《みたま》をも、あななひ|給《たま》ひて、|汝命等《ながみことたち》と|共《とも》に|歓《よろこ》び|楽《たのしみ》を|得《う》べく、|守《まも》り|幸《さきは》へ|給《たま》へと|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》らくを、|御心《みこころ》も|和親《なごやか》に|聞食《きこしめ》して、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづ》き、|弥《いや》|遠長《とほなが》に|毎年《としごと》の|今日《けふ》の|御祭《みまつり》、|美《うるは》しく|仕《つか》へ|奉《まつ》らしめ|給《たま》へと、|家族《うから》|親族《やから》|諸々《もろもろ》|氏子等《うぢこら》が|真心《まごころ》を|取持《とりも》ちて、|称言《たたへごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくと|白《まを》す。
|祖霊社大祭《それいしやたいさい》|斎主《さいしゆ》|祝詞《のりと》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|宇豆《うづ》の|大前《おほまへ》に、|斎主《いはひぬし》|某《ぼう》|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》さく。
|大神等《おほかみたち》の|奇霊《くしび》に|玄妙《たへ》なる|天津御量《あまつみはか》りを|以《も》て、|天地《あめつち》を|〓造《つくり》|堅《かた》め、|万物《すべて》を|造化成《うみな》し|給《たま》ひし|中《なか》にも、|天下《あめがした》の|大公民《おほみたから》はしも、|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|天津御霊《あまつみたま》を|皇産霊《むすび》に|産霊《むすび》|成《な》し|給《たま》へるまにまに、|諾冊《なぎなみ》|二柱《ふたはしら》の|御祖神《みおやかみ》の|生《う》み|成《な》し|給《たま》ひ、|日《ひ》の|大御神《おほみかみ》の|養育《やしな》ひ|給《たま》へる|物《もの》にして、|元《もと》より|清《きよ》き|明《あか》き|神魂《みたま》を|給《たま》はりて、|生《あ》れ|出《い》でたる|事《こと》|著《しる》ければ、|惟神《かむながら》|直《なほ》き|正《ただ》しき|道《みち》に|神習《かむなら》ひ|恪《いそし》まむ|人《ひと》は、|大御神等《おほみかみたち》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|仁恩《みいつくしみ》|以《も》て|弥栄《いやさか》えに|栄《さか》え|往《ゆ》くべく|守《まも》り|給《たま》はん|事《こと》は、|唯《ただ》|斯世《このよ》のみに|限《かぎ》らず、|必《かなら》ず|後《のち》の|世《よ》までも|慈《いつくし》み|育《はぐく》み|守《まも》り|給《たま》はん|事《こと》を|尊《たふと》み|辱《かたじけな》みつつ、|八十日日《やそかひ》は|有《あ》れど|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》と|斎《いは》ひ|定《さだ》めて、|毎年《としごと》の|例《ためし》のまにまに、|大御祭《おほみまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るとして、|奥山《おくやま》の|五百枝《いほえ》|真栄木《まさかき》に|木綿《ゆふ》|取《と》り|垂《しで》て、|御饌《みけ》、|御酒《みき》、|海川山野《うみかはやまぬ》の|種々《くさぐさ》の|美味物《うましもの》、|御水《みもひ》|堅塩《きたし》に|至《いた》るまで、|百取《ももとり》の|机代《つくゑしろ》に|置《お》き|高成《たかな》して|仕《つか》へ|奉《まつ》らくを、|神慮《みこころ》も|和《なごや》かに|聞食《きこしめ》して、|皇大神《すめおほかみ》の|統治《しろしめ》す|大八洲国《おほやしまのくに》は|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に|動《うご》く|事《こと》なく|揺《ゆる》ぐ|事《こと》なく、|敷《し》き|坐《ま》す|御祭政治《みまつりごと》は|春《はる》の|花《はな》の|清《きよ》く|美《うるは》しく、|秋《あき》の|果実《このみ》の|宇麻良《うまら》に|安《やす》らかに|行《おこな》はしめ|給《たま》ひ、|地《ち》の|上《うへ》に|成出《なりい》でむ|天《あめ》の|益人《ますひと》、|弥《いや》|益々《ますます》に|繁殖《うまはりき》て|直《なほ》き|正《ただ》しき|大和心《やまとごころ》の|真心《まごころ》を、|一《ひと》つ|心《こころ》に|治《をさ》めさせ|給《たま》ひ、|是《これ》の|神殿《みあらか》に|斎《いは》ひ|鎮《しづ》め|奉《まつ》る|遠津御祖《とほつみおや》の|神霊等《かみたち》、|及《また》|世々《よよ》の|祖等《おやたち》|諸々《もろもろ》の|御魂等《みたまたち》は、|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得《え》しめ|給《たま》ひ、|高《たか》き|位《くらゐ》に|進《すす》ましめ|給《たま》ひ、|参来《まゐき》|集《つど》へる|子孫《うみのこ》の|弥次々《いやつぎつぎ》、|男女《をのこをみな》の|別《わかち》なく、|老《おい》も|若《わか》きも|心《こころ》|正《ただ》しく|身《み》|健《すこや》かに、|命《いのち》|長《なが》く|君臣《きみおみ》、|師弟《をしへみをやみこ》、|父子《おやこ》、|夫婦《めをと》の|道《みち》を|始《はじ》めて、|人《ひと》の|行《おこな》ふべき|業《なりはひ》は|遺《のこ》る|隅《くま》なく|励《はげ》み|勤《つと》めて、|生涯《いのちのかぎり》は|神《かみ》の|教《をしへ》に|違《たが》ふ|事《こと》なく、|世《よ》の|人《ひと》をも|賛《たす》け|導《みちび》き、|各《おの》も|各《おの》も|罷《まか》らん|後《のち》は、|高天原《たかあまはら》に|復命《かへりごと》|白《まを》さんまにまに、|其《その》|行《おこなひ》の|分々《ほどほど》に、|永《なが》き|世《よ》の|幸福《さきはひ》を|授《さづ》け|給《たま》はん|縁由《ゆえよし》をも、|説《と》き|明《あか》さしめ|給《たま》ひ、|太《ふと》き|雄々《をを》しき|功績《いさを》を|立《た》てしめ|給《たま》ひ、|顕世《うつしよ》も|幽冥《かくりよ》も、|弥《いや》|遠永《とほなが》に|守《まも》り|恵《めぐ》み|幸《さきは》へ|給《たま》へと、|各《おの》も|各《おの》も|玉串《たまぐし》を|持《も》ち|捧《ささ》げ、|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》る|状《さま》を|聞食《きこしめ》せと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|復祭鎮祭祝詞《ふくさいちんさいのりと》
|此《これ》の|日茂呂木《ひもろぎ》に|斎《いは》ひ|鎮《しづ》むる|何某家遠津御祖《なにがしのいへのとほつみおや》|世々《よよ》の|祖等《おやたち》の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に、|神裔《みすゑ》|何某《なにがし》に|代《かは》りて、|何某《なにがし》|慎《つつし》みて|白《まを》さく、|皇大神《すめおほかみ》の|御手風《みてぶり》の|万古《よろづいにしへ》に|復《ふく》し|給《たま》へる|太《いみ》じき|御典《みのり》のまにまに、|今《いま》|此月何日《このつきなにひ》の|朝日《あさひ》の|豊阪登《とよさかのぼ》りを(|夕日《ゆふひ》の|降知《くだち》を)(|夜昼《よるひる》を)|吉時《よきとき》と|此《これ》の|神祠《みあらか》に、|汝命等《ながみことたち》の|神霊《みたま》を|安置《ませ》|奉《まつ》り|斎《いは》ひ|奉《まつ》り、|是《これ》の|小床《をどこ》に|鎮《しづ》め|奉《まつ》りて|真榊木《まさかき》|差《さ》しはやし、|木綿《ゆふ》|取《と》り|垂《し》でて、|礼代《ゐやしろ》の|幣帛《みてくら》と|奠《たてまつ》る|豊御饌《とよみけ》の|大御饌《おほみけ》、|味《うま》し|御酒《みき》の|大御酒《おほみき》を、|高杯《たかつき》|平甕《ひらか》に|満《み》て|並《なら》べて、|海《うみ》の|物《もの》、|野《ぬ》の|物《もの》、|山《やま》の|物《もの》、|種々《くさぐさ》の|果実《このみ》を|取添《とりそ》へて|仕《つか》へ|奉《まつ》らくを、|御心《みこころ》|穏《おだひ》に|聞食《きこしめ》し|給《たま》ひて、|家族《うから》|親族《やから》は|邪悪《よこさ》の|道《みち》に|惑《まど》ふ|事《こと》なく、|諸々《もろもろ》|過《あやま》つ|事《こと》なく、|攘《はら》ひ|給《たま》ひて、|清《きよ》き|赤《あか》き|直《なほ》き|正《ただ》しき|真心《まごころ》に、|誘《さそ》ひ|導《みちび》き|給《たま》ひ、|家《いへ》の|業《なりはひ》をも|弥《いや》|奨《すす》めに|奨《すす》め|給《たま》ひ、|子孫《うみのこ》の|八十連《やそつづき》|五十橿《いかし》|八桑枝《やくはえ》の|如《ごと》く|立栄《たちさか》えしめ|給《たま》ひて、|息《いのち》|長《なが》く|御祭《みまつり》|美《うるは》しく|仕奉《つかへまつ》らしめ|給《たま》へと|乞祈《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》をも、|平《たひら》かに|安《やす》らかに|聞召《きこしめ》して、|夜《よ》の|守《まも》り|日《ひ》の|守《まも》りに|守《まも》り、|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に|恵《めぐ》み|幸《さきは》へ|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|鎮祭日《ちんさいび》より|年祭《ねんさい》の|祝詞《のりと》(|年月日《ねんぐわつぴ》|不明《ふめい》の|霊《れい》)
|是《これ》の|日茂呂木《ひもろぎ》に|斎《いは》ひ|奉《まつ》り|移《うし》し|奉《まつ》る|何某《なにがし》の|命《みこと》(|等《たち》)の|御前《みまへ》に、|斎主《いはひぬし》|何某《なにがし》|慎《つつし》み|敬《うやま》ひも|白《まを》さく、|汝命《ながみこと》(|等《たち》)の|御祭日《みまつりび》|詳《つまびら》かならねば、|惟神《かむながら》の|皇国風《みくにぶり》に|改《あらた》め|奉《まつ》りし|日《ひ》を、|吉日《よきひ》の|良辰《よきとき》と|斎《いは》ひ|定《さだ》めて、|其《そ》が|神霊《みたま》(|等《たち》)を|慰《なぐさ》め|仕《つか》へ|奉《まつ》らむとして、|種々《くさぐさ》の|御饌物《みけつもの》を|備《そな》へ|奉《まつ》りて、|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》る|状《さま》を|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》ひて、|皇神等《すめかみたち》の|任《ま》け|給《たま》ひ|依《よ》さし|給《たま》はん|程々《ほどほど》の|御位《みくらゐ》に|進《すす》み|給《たま》ひて、|枉津神《まがつかみ》の|群《むれ》に|入《い》り|給《たま》はず、|此《こ》の|何々家《なになにのいへ》が|代々《よよ》の|栄《さかえ》を|此上《こよ》なき|幸《さち》と|心安《うらやす》く、|心《うら》|楽《たの》しく、|時々《ときどき》の|御祭《みまつり》を|御心《みこころ》も|閑《のどか》に|享《う》け|聞食《きこしめ》し|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|霊社《れいしや》|月次祭《つきなみさい》|祝詞《のりと》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|宇豆《うづ》の|大前《おほまへ》に|斎主《いはひぬし》|何某《なにがし》|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》さく、|八十日日《やそかひ》は|有《あ》れども、|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》の|良辰《よきとき》と|選《えら》み|定《さだ》めて、|毎月《つきごと》の|例《ためし》のまにまに|月次《つきなみ》の|御祭典《みまつり》|執行《とりおこな》ひ|仕《つか》へ|奉《まつ》らんとして、|御前《みまへ》には|餅《もちひ》の|鏡《かがみ》を|積《つ》み|重《かさ》ね、|大海原《おほうなばら》に|住《す》むものは|鰭《はた》の|広物《ひろもの》、|鰭《はた》の|狭物《さもの》、|奥津藻菜《おきつもは》、|辺津藻菜《へつもは》、|野山《のやま》に|生《お》ふる|物《もの》は|甘菜《あまな》|辛菜《からな》、|及《また》|種々《くさぐさ》の|果実《このみ》、|御水《みもひ》|堅塩《きたし》に|至《いた》るまで|横山《よこやま》の|如《ごと》く|盛《も》り|高成《たかな》して、|平素《つね》に|大神等《おほかみたち》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|威徳《みいづ》を|仰《あふ》ぎ|奉《まつ》り|尊《たふと》み|辱《かたじ》けなみつつ|在《あ》り|経《ふ》るを|畏《かしこ》み|奉《まつ》りて、|言巻《いはまく》も|畏《かしこ》けれど|天皇命《すめらみこと》の|大寿命《おほみいのち》を|手長《たなが》の|大寿命《おほみいのち》と|湯津石村《ゆついはむら》の|如《ごと》く、|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に|茂《いか》し|御代《みよ》の|足御代《たらしみよ》と|成《な》し|幸《さきは》ひ|給《たま》ひて、|遠津御祖《とほつみおや》、|世々《よよ》の|祖等《おやたち》、|親族《うから》|諸々《もろもろ》の|神霊等《みたまたち》の|御栄《みさかえ》を|乞祈《こひのみ》|白《まを》す|状《さま》を|聞食《きこしめ》して、|三五《おほもと》の|御教《みのり》は|天地《あめつち》と|共《とも》に|変《かは》りなく、|月日《つきひ》と|共《とも》に|動《うご》き|傾《かたぶ》く|事《こと》なく、|朝日《あさひ》の|豊栄《とよさか》|登《のぼ》りに|咲《ゑ》み|栄《さか》えしめ|給《たま》ひ、|三五信徒等《おほもとのまめひとたち》は|本末《もとすゑ》|内外《うちと》を|過《あやま》たず、|大神等《おほかみたち》の|深《ふか》き|高《たか》き|慈愛《めぐみ》を|過《あやま》つ|事《こと》なく、|違《たが》ふ|事《こと》なく|広《ひろ》め|導《みちび》かしめ|給《たま》ひ、|恩頼《みたまのふゆ》を|蒙《かがぶ》らしめ|給《たま》へと、|乞祈《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》を|聞食《きこしめ》し、|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|辞別《ことわ》けて|遠津御祖《とほつみおや》、|世々《よよ》の|祖等《おやたち》、|親族《うから》|家族《やから》|諸々《もろもろ》の|神霊等《みたまたち》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく。|今日《けふ》はしも|月次《つきなみ》の|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》り、|御饌物《みけつもの》|供《そな》へ|奉《まつ》りて、|日毎《ひごと》に|恩頼《みたまのふゆ》を|蒙《かがぶ》りつつ、|不意《ゆくり》なくも|過《あやま》ち|犯《をか》しけむ|種々《くさぐさ》の|罪穢《つみけがれ》|在《あ》らんをば、|見直《みなほ》し|聞《き》き|直《なほ》し|坐《ま》して、|親《おや》の|名《な》|汚《けが》さず、|子孫《うみのこ》の|弥《いや》|次々《つぎつぎ》、|山松《やままつ》の|弥《いや》|高々《たかだか》に|立栄《たちさか》えしめ|給《たま》ひ、|夜《よ》の|守《まも》り|日《ひ》の|守《まも》りに|守《まも》り|幸《さきは》へ|給《たま》へと、|五十橿鉾《いかしほこ》の|中《なか》|取持《とりも》ちて|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|新祭殿《しんさいでん》|月次祭《つきなみさい》|祭文《さいぶん》
|此《これ》の|神殿《みあらか》に|斎《いつ》き|奉《まつ》り|坐《ま》せ|奉《まつ》る、|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|御前《みまへ》に|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》さく。|月毎《つきごと》の|例《ためし》のまにまに|今日《けふ》の|生日《いくひ》の|足日《たるひ》に、|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るとして、|奉《たてまつ》る|幣帛《みてくら》は|御饌《みけ》は|高杯《たかつき》に|盛足《もりた》らはし、|御酒《みき》は|甕《みか》の|戸《へ》|高知《たかし》り|甕《みか》の|腹《はら》|満《み》て|並《なら》べて、|大海原《おほうなばら》に|住《す》める|物《もの》は|鰭《はた》の|広物《ひろもの》|鰭《はた》の|狭物《さもの》、|山野《やまぬ》に|生《おふ》る|物《もの》は|甘菜《あまな》|辛菜《からな》|種々《くさぐさ》の|果実《このみ》、|奥津藻菜《おきつもは》、|辺津藻菜《へつもは》、|御水《みもひ》|堅塩《きたし》に|至《いた》る|迄《まで》、|百取《ももとり》の|机《つくゑ》に|横山《よこやま》の|如《ごと》く|置足《おきた》らはして|称言《たたへごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくを、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》して、|此《これ》の|霊殿《みたまや》に|鎮《しづま》ります|家々《いへいへ》の|霊等《みたまたち》をば、|弥《いや》|益《ますます》に|御霊《みたま》|幸《さきは》ひ|給《たま》ひて|弥高《いやたか》に|高《たか》き|位《くらゐ》に|進《すす》ましめ|給《たま》ひ、|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得《え》しめ|給《たま》ひ、|参出《まゐで》|来《こ》む|親族《うから》|家族《やから》が|家《いへ》をも|身《み》をも|守幸《まもりさきは》へ|給《たま》ひ、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづき》に|至《いた》る|迄《まで》|五十橿《いかし》|八桑枝《やくはえ》の|如《ごと》く|茂久栄《むくさか》に|立栄《たちさか》えしめ|給《たま》ひ、|忘《わす》るる|事《こと》なく、|堕《おつ》る|事《こと》なく、|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》らしめ|給《たま》へと|白《まを》す|事《こと》を|聞食《きこしめ》し|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|鵜自物頸根突抜《うじものうなねつきぬ》きて、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|辞別《ことわ》けて|此《これ》の|霊殿《みたまや》に|鎮《しづ》まり|坐《ま》す|諸々《もろもろ》の|家《いへ》の|御霊等《みたまたち》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく。|今日《けふ》はしも|月次《つきなみ》の|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るとして、|御前《みまへ》をも|持斎《もちいつ》き|種々《くさぐさ》の|多米津物《ためつもの》を|備《そな》へ|奉《まつ》らくを|相甞《あひなめ》に|聞食《きこしめ》して、|大神等《おほかみたち》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|大御恵《おほみめぐみ》を|蒙《かがぶ》り|給《たま》ひて、|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得《え》しめ|給《たま》ひ、|永遠《とこしへ》に|安《やす》く|穏《おだひ》に|鎮《しづ》まり|坐《ま》して、|春秋《はるあき》の|歓《よろこ》び|楽《たの》しみをも|極《きは》め|給《たま》ひて、|断《たゆ》る|事《こと》|無《な》く|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》らしめ|給《たま》へと|白《まを》す。
第一八章 |復祭《ふくさい》〔一五四三〕
|復祭奏上詞《ふくさいそうじやうし》
|此《これ》の|神床《かむどこ》に|斎《いつ》き|祭《まつ》り|坐《ま》せ|奉《まつ》る
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大神《おほもとすめおほかみ》の|大前《おほまへ》に|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》さく
|八十日日《やそかひ》は|有《あ》れど|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》の|良辰《よきとき》と|選《えら》み|定《さだ》めて|称言《たたへごと》|竟奉《をへまつ》らくは、|此《この》|里《さと》に|住《す》める|何某《なにがし》が|遠津御祖《とほつみおや》|世々《よよ》の|祖等《おやたち》|家族《うから》|親族《やから》の|霊《みたま》を|惟神《かむながら》の|教《をしへ》のまにまに|改《あらた》め|斎《いは》ひて、|大神《おほかみ》の|知食《しろしめ》す|幽冥《かくりよ》の|神事《かみごと》に|祭《まつ》らしめ|給《たま》ひ、|広《ひろ》き|厚《あつ》き|恩頼《みたまのふゆ》を|蒙《かがぶ》らしめ|玉《たま》へと|乞祈《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》を|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめし》て、|諸々《もろもろ》の|霊等《みたまたち》の|邪道《よこさのみち》に|惑《まど》ひ|異《け》しき|教《をしへ》に|交《まじ》こりてし|罪穢《つみけがれ》は、|朝《あした》の|深霧《みきり》|夕《ゆふべ》の|深霧《みきり》を|朝風《あさかぜ》|夕風《ゆふかぜ》の|吹掃《ふきはら》ふ|事《こと》の|如《ごと》く|掃《はら》ひ|給《たま》ひ|清《きよ》め|給《たま》ひて、|各《おの》も|各《おの》も|現世《うつしよ》に|在経《ありへ》し|時《とき》に|樹《たて》し|功績《いさを》のまにまに、|伊都《いづ》の|御霊《みたま》を|幸《さきは》ひ|給《たま》ひて|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得《え》せしめ|給《たま》ひ、|弥高《いやたか》に|高《たか》き|列《つら》に|進《すす》ましめ|給《たま》ひ、|子孫《うみのこ》の|継々《つぎつぎ》|守《まも》り|幸《さきは》へぬべく|輔《あなな》ひ|給《たま》ひ、|弥《いや》|遠永《とほなが》に|春秋《はるあき》の|歓楽《たのしみ》をも|令得《えしめ》|給《たま》へと、|御酒《みき》|御饌《みけ》を|始《はじ》め|海川山野《うみかはやまぬ》の|物《もの》に、|種々《くさぐさ》の|果実《このみ》|御水《みもひ》|堅塩《きたし》に|至《いた》るまで|机代《つくゑしろ》に|置足《おきたら》はして|奉《たてまつ》らくを|聞食《きこしめ》せと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|復祭祝詞《ふくさいのりと》
|是《これ》の|何某家遠津御祖《なにがしのいへのとほつみおや》|代々《よよ》の|祖等《おやたち》の|御霊《みたま》、|諸々《もろもろ》の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に、|何某《なにがし》|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》さく、|此《これ》の|天地《あめつち》は、|天《あめ》なるや|皇神等《すめかみたち》の|修理固成《つくりかためな》しし|国《くに》にして、|青人草《あをひとぐさ》は|其《その》|大神等《おほかみたち》の|神孫《みすゑ》、|持《も》ち|斎《いつ》く|神事《かみごと》は|神《かみ》と|親《おや》とに|仕《つか》へ|奉《まつ》る|可怜道《うましみち》の|大根元《おほもと》、その|祭《まつり》の|式《のり》は|万《よろづ》の|事《わざ》に|渡《わた》る|礼事《いやごと》の|源《はじめ》にしあれば、|顕世《うつしよ》の|人《ひと》の|命《いのち》の|尽《をへ》ぬる|時《とき》の|神霊《みたま》は|神《かみ》に|斎《いは》ひ、|屍《かばね》は|神葬《かむはふ》りし|御儀式《みのり》にて|在《あ》りしを、|世《よ》の|降《くだ》るに|従《つ》れて|諸《もろもろ》の|法《のり》|興《おこ》り|来《きた》りしより、|汝命等《ながみことたち》の|御葬事《みはふりごと》も|専《もは》らその|法《のり》のまにまに|仕《つか》へ|奉《まつ》り、|春秋《はるあき》の|御祭《みまつり》をも|諸《もろもろ》の|法《のり》の|司等《つかさたち》に|委《ゆだ》ね|治《をさ》め|奉《まつ》りき。|如斯《かく》|治《をさ》め|祭《まつ》る|間《ほど》に、|万《よろづ》の|古《いにしへ》の|正《ただ》しき|神《かみ》の|御法《みのり》に|立帰《たちかへ》るべき|惟神《かむながら》|大道《おほぢ》の|還《かへ》り|来《き》て、|神葬《みはふり》の|道《みち》まで|悉《ことごと》く|古《いにしへ》の|直《なほ》き|正《ただ》しき|御手風《みてぶり》に|復《ふく》し|給《たま》ひて、|広《ひろ》く|厚《あつ》く|治《をさ》め|給《たま》ふ|此《こ》の|大御規《おほみのり》を|畏《かしこ》み|奉《まつ》り、|又《また》|世《よ》の|太元《おほもと》たる|地《ち》の|高天原《たかあまはら》に|鎮《しづま》り|坐《ま》す|三五皇大神等《おほもとすめおほかみたち》の|神諭《みさとし》のまにまに|神霊《みたま》を|乞請《こひう》けて、|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》と|斎《いは》ひ|定《さだ》めて、|天津神《あまつかみ》に|乞願《こひのみ》|奉《まつ》り、|年《とし》|久《ひさ》しく|穢《けが》し|奉《まつ》りし|仇《あだ》し|教《をしへ》の|手風《てぶり》を、|残《のこ》る|隈《くま》なく|改《あらた》め|正《ただ》して、|惟神《かむながら》|三五《おほもと》の|礼事《いやわざ》|以《も》て|斎《いつ》き|奉《まつ》らむと、|此《これ》の|御霊舎《みたまや》を|天《あま》の|磐境《いはやど》と|斎《いは》ひ|定《さだ》めて、|顕世《うつしよ》に|伊坐《いま》しし|時《とき》の|御功績《みいさを》のまにまに|御名《みな》をも|称《たた》へ|奉《まつ》りて、|新《あらた》に|造《つく》り|備《そな》へ|仕奉《つかへまつ》る|御霊代《みたましろ》に|厳《いづ》の|御霊《みたま》を|招《を》ぎ|奉《まつ》り|令坐《ませ》|奉《まつ》りて、|祈《のみ》の|礼代《いやしろ》の|幣帛《みてぐら》と、|御饌《みけ》|御酒《みき》|御水《みもひ》|堅塩《きたし》|海川山野《うみかはやまぬ》の|種々《くさぐさ》の|物《もの》を|供《そな》へ|奉《まつ》りて、|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》る|状《さま》を|平《たひら》かに|安《やす》らかに|聞食《きこしめし》て、|天《あま》|翔《かけ》り|坐《ま》しては|天《あめ》に|坐《ま》す|大神《おほかみ》の|厳《いづ》の|御魂《みたま》を|蒙《かがぶ》り|給《たま》ひ、|御神位《みくらゐ》|高《たか》く|御光《みひかり》|美《うる》はしく|立栄《たちさか》えしめ|給《たま》ひ、|国《くに》|翔《かけ》り|坐《ま》しては|此《これ》の(|何某家主《なにがしかしゆ》)が|総持《すべも》てる|家《いへ》の|業務《なりはひ》をも|恵《めぐ》み|幸《さきは》へ|給《たま》ひ、|子孫《うみのこ》の|弥《いや》|次々《つぎつぎ》に|至《いた》るまで|曲神《まがかみ》の|異《け》しき|教《をしへ》に|惑《まど》ふ|事《こと》|無《な》く、|惟神《かむながら》の|直《おほ》き|正《ただ》しき|真《まこと》の|道《みち》を|尊《たふと》び|祭《まつ》り|畏《かしこ》み|奉《まつ》りて、|春秋《はるあき》の|御祭典《みまつり》、|朝夕《あさゆふ》の|手向《たむけ》|怠《おこた》る|事《こと》|無《な》く、|弥遠《いやとほ》に|弥長《いやなが》に|仕《つか》へ|奉《まつ》らしめ|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|復祭合祀奏上詞《ふくさいがふしそうじやうのことば》
|此《これ》の|神床《かむどこ》に|斎《いつ》き|祭《まつ》り|坐《ま》せ|奉《まつ》る、
|掛巻《かけまく》も|綾《あや》に|畏《かしこ》き|三五皇大神《おほもとすめおほかみ》の|大前《おほまへ》に|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく、
|前《さき》に|何某家遠津祖《なにがしのいへのとほつみおや》、|代々《よよ》の|祖等《おやたち》、|家族《うから》、|親族《やから》の|霊《みたま》を|惟神《かむながら》の|御教《みをしへ》のまにまに|改《あらた》め|斎《まつ》りしを、|其《そ》が|祭《まつり》に|洩《も》れ|落《お》ちたる|霊《みたま》の|有《あ》れば、|今日《けふ》を|生日《いくひ》の|足日《たるひ》と|選《えら》み|定《さだ》めて|合祀《あはせ》の|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》らむとす。|故《かれ》、|御酒《みき》、|御饌《みけ》を|始《はじ》め|海川山野《うみかはやまぬ》の|物《もの》に|雑々《くさぐさ》の|果実《このみ》、|御水《みもひ》、|堅塩《きたし》に|至《いた》るまで、|机代《つくゑしろ》に|盛《も》り|足《たら》はして、|称言《たたへごと》|竟《を》へ|奉《まつ》らくを、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》して、|諸々《もろもろ》の|霊等《みたまたち》の|邪悪《よこさ》の|道《みち》に|惑《まど》ひ、|異《け》しき|教《をしへ》に|交《まじ》こらへし|罪穢《つみけがれ》は|攘《はら》ひ|給《たま》ひ|清《きよ》め|給《たま》ひて、|現世《うつしよ》にあり|経《へ》し|時《とき》に|樹《た》てし|功績《いさを》のまにまに|厳《いづ》の|御霊《みたま》を|幸《さきは》ひ|給《たま》ひて、|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得《え》しめ|給《たま》ひ|輔《あなな》ひ|給《たま》ひて、|乞祈《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》の|状《さま》を|聞食《きこしめ》し、|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|復祭之由乎奏上祝詞《ふくさいのよしをそうじやうのりと》
|何某家《なにがしのいへ》の|遠津御祖《とほつみおや》|世々《よよ》の|祖等《おやたち》、|家族《うから》|親族《やから》の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に|敬《ゐやま》ひて|白《まを》さく、|畏《かしこ》しや|神《かみ》の|祭祀《みまつり》はしも、|三栗《みつぐり》の|中津御代《なかつみよ》より|外国風《とつくにぶり》|以《も》て|祭《まつ》り|仕《つか》へ|来《こ》しを、|此《これ》の|新御世《にひみよ》の|厳《いか》し|御代《みよ》の|万《よろづ》|廃《すた》れたるを|起《おこ》して、|古《いにしへ》に|復《かへ》し|給《たま》へる|中《なか》にも|神《かみ》の|祭祀《みまつり》の|御式《みのり》はも、|大御国風《おほみくにぶり》の|最《いと》も|重《おも》き|大御式《おほみのり》にし|在《あ》れば、|神《かみ》の|御代《みよ》より|伝《つた》へ|来《こ》し|随々《まにまに》|興《おこ》し|給《たま》ひ|定《さだ》め|給《たま》ひて、|天ケ下《あめがした》|公民等《おほみたからら》の|乱《みだ》れ|惑《まど》へる|心《こころ》を|直《なほ》し|正《ただ》し|給《たま》ひ、|専《もは》ら|一心《ひとつこころ》に|治《をさ》め|給《たま》はむと|教《をし》へ|諭《さと》し|給《たま》ふ|事《こと》を|尊《たふと》み|忝《かたじけ》なみ、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|受給《うけたまは》りて|其《その》|真心《まごころ》の|赤《あか》しと、|此《これ》の|小床《をどこ》を|神床《かむどこ》と|定《さだ》め|斎《ゆ》まはり|清《きよ》まはり|招《を》ぎ|奉《まつ》りて、|今日《けふ》を|始《はじ》めと|御祖神《みおやがみ》の|御祭《みまつり》をも|清《きよ》き|潔《さやけ》き|大御国風《おほみくにぶり》に|改《あらた》め|仕《つか》へ|奉《まつ》る|此《これ》の|状《さま》を|具《まつぶさ》に|聞食《きこしめ》して、|怪《あやし》み|給《たま》ふ|事《こと》|無《な》く|荒《あら》び|給《たま》ふ|事《こと》|無《な》く、|御心《みこころ》も|平穏《おだひ》に|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|幽冥家復祭詞《かくりやふくさいのことば》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|幽冥《かくりよ》を|主宰《つかさど》り|給《たま》ふ|大神《おほかみ》の|撫《な》で|給《たま》ひ|愛《うるは》しみ|給《たま》へる|何某《なにがし》の|神霊《みたま》を|是《これ》の|幽冥家《かくりや》に|斎《いは》ひ|鎮《しづ》めて|白《まを》さく、|汝命等《ながみことたち》|現世《うつしよ》の|人《ひと》の|生《いけ》る|間《ほど》は|言《いふ》も|更《さら》なり、|死《まか》れる|後《のち》の|魂《たましひ》は|専《もはら》|幽冥事《かくりごと》を|知食《しろしめ》す|大神《おほかみ》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|御心《みこころ》に|憐《あはれ》み|給《たま》ひ|恵《めぐ》み|給《たま》ひて、|神《かみ》の|列《つら》に|入《い》らしめ|給《たま》ひ|歓《よろこ》び|楽《たのし》みを|得《え》しめ|給《たま》ふ|事《こと》を|丁寧《たし》に|窺《うかが》ひ|覚《さと》りて、|今《いま》も|如此《かく》|汝命《ながみこと》(|等《たち》)の|大神《おほかみ》の|御寵愛《みいつくしみ》を|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》りて、|惟神《かむながら》の|御掟《みおきて》に|改《あらた》め|斎《いつ》き|奉《まつ》らくを、|汝命等《ながみことたち》の|御心《みこころ》にも|嬉《うれ》しみ|喜《よろこ》び|給《たま》ひ、|今《いま》より|後《のち》は|只管《ひたすら》に|三五《おほもと》の|御諭《みさとし》の|幽冥事《かくりごと》に|仕《つか》へ|奉《まつ》り|給《たま》ひて、|弥高《いやたか》に|高《たか》き|位《くら》に|進《すす》ましめ|給《たま》ひ、|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得《え》しめ|給《たま》ひ、|春秋《はるあき》の|遠永《とほなが》に|子孫《うみのこ》の|八十連《やそつづき》に|参出《まゐい》で|侍《さもら》ひて、|御祭《みまつり》|美《うる》はしく|仕奉《つかへまつ》らむと|為《す》る|事《こと》を|聞食《きこしめ》し|給《たま》ひて、|御心《みこころ》も|穏《おだひ》に|鎮《しづ》まり|給《たま》へと|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
第一九章 |復活《ふくくわつ》〔一五四四〕
|帰幽奏上《きいうそうじやう》
|此《これ》の|霊舎《みたまや》に|斎奉《いつきまつ》る。○○の|家《いへ》の|遠津御祖《とほつみおや》|世々《よよ》の|祖等《おやたち》、|親族《うから》、|家族《やから》の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に、|慎《つつし》みて|白《まを》さく、|今日《けふ》はしも、|此家《これのいへ》の○○○○|伊《い》、|幽冥《かくりよ》に|帰《かへ》りぬるが|故《ゆゑ》に、|其《その》|由《よし》|奉告《つげまつ》るとして、|御前《みまへ》には|種々《くさぐさ》の|物《もの》を|置供《おきそな》へて、|奉《たてまつ》る|状《さま》を|聞食《きこしめ》し|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|墓地地鎮祭《ぼちぢちんさい》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》、|辞別《ことわ》けて|此《この》|所《ところ》を|宇斯波岐《うしはぎ》|坐《ま》す、|産土大神《うぶすなのおほかみ》の|御前《みまへ》に、|斎主《いつきぬし》○○○○、|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく、|此《この》|処《ところ》をば|何某《なにがし》が|奥都城所《おくつきどころ》として、|新《あらた》に|荒草《あらくさ》|苅外《かりそ》け、|下津岩根《したついはね》に|蔵《かく》し|治《をさ》むる|事《こと》を、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》して、|鳥《とり》|獣《けもの》、|昆虫《はふむし》の|害《わざはひ》|無《な》く、|大地《おほとこ》の|弥《いや》|遠永《とことは》に|守幸《まもりさきは》へ|給《たま》へと、|請祈《こひのみ》|白《まを》す|事《こと》の|状《さま》を|聞食《きこしめ》せと、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|招魂祭祝詞《せうこんさいのりと》
|阿波礼《あはれ》、○○○|命也《みことや》、|今《いま》|如此《かく》|身退《みまか》り|座《ま》さむとは、|木綿垂《ゆふしで》の|懸《かけ》ても|思《おも》はず、|真栄木《まさかき》の|常磐《ときは》に|堅磐《かきは》に|座《ま》さむ|事《こと》をのみ|思頼《おもひたの》めりし、|親族《うから》、|家族《やから》の|心《こころ》には、|追及《おひしき》て|帰《かへ》すべき|術《すべ》の|有《あ》らむには、|留《とど》め|奉《まつ》らまく|思《おも》ひ、|活《いか》すべき|方《すべ》の|有《あ》らむには、|身《み》にも|替《かへ》まく|欲須礼《ほりすれ》ども、|素《もと》より|幽世《かくりよ》の|契《ちぎり》|有《あ》る|事《こと》にして、|人《ひと》の|力《ちから》に|任《まか》せ|得《え》ぬ|事《こと》にし|有《あ》れば、|今《いま》は|唯《ただ》|後《のち》の|御祭《みまつり》|美《うるは》しく|仕奉《つかへまつ》りて、|御霊《みたま》を|慰《なぐさ》め|奉《まつ》らむ|外《ほか》は|不有《あらじ》と。|汝命《ながみこと》の|霊璽《みたましろ》を|造《つく》り|備《そな》へて、|謹《つつし》み|敬《ゐやま》ひ|招《を》ぎ|奉《まつ》り、|斎《いは》ひ|奉《まつ》る|任《まま》に、|速《すみやか》に|移《うつ》り|来《き》まして|奠《たてまつ》る|御饌《みけ》、|御酒《みき》、|種々《くさぐさ》の|物《もの》を|平《たひら》けく|聞食《きこしめし》て、|家《いへ》の|鎮《しづ》め、|子孫《うみのこ》の|守護神《まもりがみ》と、|遠永《とこしへ》に|鎮《しづま》り|給《たま》ひ、|大本皇大神《おほもとすめおほかみ》の|広《ひろ》き、|厚《あつ》き|御恵《みめぐみ》の|蔭《かげ》に|隠《かく》ろひ、|弥広《いやひろ》に|広所《ひろど》を|得給《えたま》ひ、|弥高《いやたか》に|高《たか》き|位《くらゐ》に|進《すす》み|給《たま》ひて、|平穏《おだひ》に|鎮《しづ》まり|坐《ま》せと|白《まを》す。
|謚号告文《おくりなこくぶん》
|阿波礼《あはれ》、(|官位《くわんゐ》|俗名《ぞくみやう》)|之神霊《のみたま》の|御前《みまへ》に、|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひ|白《まを》さく、|此《この》|月《つき》|何日《なんにち》を|現世《うつしよ》の|限《かぎ》りと|身退《みまか》りまして、|幽冥《かくりよ》の|神《かみ》の|列《つら》に|入《い》り|坐《ま》しぬれば、|今《いま》よりは、|贈修斎《ぞうしうさい》○|等《とう》 |何々命《なになにのみこと》と|御名《みな》を|称《たた》へ|奉《まつ》らんことを|平《たひら》けく、|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》し|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと|白《まを》す。
|霊魂安定詞《みたましづめのことば》
|天晴礼《あはれ》○○|命《のみこと》、|故《もとの》○○|毘古《びこ》の|神霊也《みたまや》、|今《いま》|告申事《つげまをすこと》を|美《うま》らに|聞食《きこしめ》せ。|生《いけ》る|人《ひと》の|死《まか》る|事《こと》は、|現身《うつそみ》の|慣《ならひ》と|得免《えまぬが》れぬ|事《こと》にして、|幽冥《かくりよ》に|入《い》りては、|現世《うつしよ》の|人《ひと》として|其《その》|形《かたち》を|見《み》るべき|術《すべ》なく、|其《その》|言葉《ことば》を|聞《き》くべき|由《よし》も|無《な》きが|故《ゆゑ》に、|憂《うれ》ひ|悲《かなし》まむは|人《ひと》の|真心《まごころ》には|在《あ》れども、|遂《つひ》に|往《ゆ》く|此《この》|一道《ひとみち》の|別《わかれ》は|人《ひと》の|力《ちから》|以《も》て|留《とど》め|安敞《あへ》ず、|又《また》|現身《うつそみ》|古曾《こそ》|身退《みまか》りては|土《つち》に|帰《かへ》れ|霊魂《みたま》は|常久《とこしへ》に|消《き》ゆる|事《こと》|無《な》く、|神《かみ》と|為《な》る|物《もの》にし|有《あ》れば、|今《いま》は|唯《ただ》|神霊《みたま》の|御為《みため》に、|善《よ》き|事《こと》を|議《はか》り|為《なし》て、|只管《ひたすら》に|大神《おほかみ》に|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》るべき|事《こと》になも|在《あ》る。|抑《そ》も|人《ひと》の|生死《いきしに》は|父母《ちちはは》の|心《こころ》にも|任《まか》せ|得《え》ず、|妻子《つまこ》の|力《ちから》にも|留《とど》め|敢《あへ》ず、|総《すべ》て|幽冥《かくりよ》の|契《ちぎり》|有《あ》る|事《こと》にし|在《あ》れば、|現身《うつそみ》の|人《ひと》と|有《あ》りては、|皇神等《すめかみたち》の|恩頼《みたまのふゆ》を|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》りて、|人《ひと》と|在《あ》るべき|大道《おほみち》の|任々《まにまに》|恪《いそし》み|勤《つと》めて、|死《まか》りては|幽冥《かくりよ》の|掟《おきて》に|服《まつ》ろひ|仕《つか》へ|奉《まつ》らむと、|真木柱《まきばしら》|太《いみじ》き|心《こころ》を|築固《つきかた》め、|栲繩《たくなは》の|一筋《ひとすぢ》に|思《おも》ひ|定《さだ》めて、|人《ひと》は|如何《いか》に|毀誉《そしりほ》むとも|拘《かかづら》ふ|事《こと》なく、|唯《ただ》|神《かみ》の|御照覧《みそなは》し|給《たま》ふ|所《ところ》を|愧《は》ぢ|畏《かしこ》み、|辛苦《たしなみ》に|罹《かか》る|事《こと》|有《あ》るとも|思《おも》ひ|惑《まど》ふ|事《こと》なく、|愈々《いよいよ》|益々《ますます》|利心《とごころ》を|起《おこ》して、|賦《さづ》け|給《たま》へる|霊魂《みたま》は|曇《くも》らせじ、|依《よさ》し|給《たま》へる|業《わざ》は|怠《おこた》らじと、|清《きよ》く|堅《かた》く|節操《みさを》を|立《た》てば、|現世《うつしよ》の|人《ひと》も|尊《たふと》み、|大神《おほかみ》も|愛《うる》はしみ|給《たま》ふ|事《こと》なるを、|阿波礼《あはれ》|人《ひと》の|心《こころ》は|浮雲《うきぐも》の|動《うご》き|易《やす》く、|月草《つきぐさ》の|移《うつ》ろひ|易《やす》き|物《もの》にし|在《あ》れば、|花紅葉《はなもみぢ》の|美《うる》はしきを|見《み》ては、|其《その》|色香《いろか》に|目暗《まなこく》れ、|百千鳥《ももちどり》の|囀《さへづ》るを|聞《き》きては、|其《その》|声《こゑ》に|耳《みみ》を|傾《かたむ》くる|事《こと》の|如《ごと》く、|波加奈久《はかなく》|限《かぎ》り|在《あ》る|現世《うつしよ》の|楽《たのしみ》に|惑《まど》ひて、|幽冥《かくりよ》の|遠永《とほなが》き|御恵《みめぐみ》を|思《おも》はず|在《あ》る|類《たぐひ》こそ|憐《あはれ》むべき|事《こと》なりけれ。|然《しか》は|有《あ》れども、|大神《おほかみ》の|厚《あつ》き|大御心《おほみこころ》には|其《その》|過《あやまち》を|見直《みなほ》し|給《たま》ひ、|其《その》|罪《つみ》を|攘《はら》ひ|給《たま》ひ|除《のぞ》き|給《たま》ひて、|深《ふか》き|淵《ふち》に|落《おち》ぬる|人《ひと》を|救《すく》ひ|活《いか》さしめ|給《たま》ふ|事《こと》の|如《ごと》く、|大海《おほわだ》に|依《よ》る|辺《べ》|無《な》く|漂《ただよ》ふ|船《ふね》を|繋《つな》ぎ|留《とど》むる|事《こと》の|如《ごと》く、|助《たす》け|給《たま》ひ|救《すく》ひ|給《たま》ふ|事《こと》にし|有《あ》れば、|其《その》|大御心《おほみこころ》を|窺《うかがひ》|奉《まつ》り、|其《その》|教《をしへ》に|随《したが》ひ|奉《まつ》りて、|死《まかる》も|生《いくる》も|恩頼《みたまのふゆ》の|蔭《かげ》に|隠《かく》るる|事《こと》の|状《さま》を|仰《あふ》ぎ|尊《たふと》み|奉《まつ》るべき|事《こと》になも|有《あ》る。|天晴礼《あはれ》|汝命《ながみこと》は|常《つね》に|神習《かむなら》ひ|恪《いそ》しみ|勤《つと》め|給《たま》ひ、|清《きよ》き|明《あか》き|心《こころ》に|人《ひと》と|有《あ》る|道《みち》の|任《まま》に|忠《まめ》に|直《ただ》しく、|御国《みくに》に|仕奉《つかへまつ》り、|広《ひろ》く|厚《あつ》く|人《ひと》をも|恵《めぐ》みて|坐《ま》しければ、|今《いま》|幽冥《かくりよ》に|復《かへ》り|坐《ま》しても|安《やす》く|楽《たの》しく、|其《その》|所《ところ》を|得《え》て|鎮《しづ》まり|坐《ま》すらめど、|若《も》し|由久利奈久《ゆくりなく》も|過《あやまち》|犯《をか》しけむ|罪穢《つみけがれ》|有《あ》らむには、|祓《はら》ひ|給《たま》ひ|清《きよ》め|給《たま》ひて、|清々《すがすが》しき|霊魂《みたま》と|成《なし》|幸《さきは》へ|給《たま》へと|斎《いは》ひ|鎮《しづ》めて、|只管《ひたすら》に|大神《おほかみ》に|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》らば、|必《かなら》ず|大神《おほかみ》は|守《まも》らひ|恵《めぐ》まひ|給《たま》はむ、|必《かなら》ず|大神《おほかみ》は|広《ひろ》く|厚《あつ》く|量《はか》り|給《たま》はむ、|此《こ》を|善《よ》く|思《おも》ひ、|此《こ》を|善《よ》く|覚《さと》り|給《たま》ひて、|現世《うつしよ》の|飽《あ》かぬ|別《わか》れに|御心《みこころ》を|惑《まど》ひ|給《たま》ふ|事《こと》|無《な》く、|惟神《かむながら》の|本《もと》つ|心《こころ》を|失《うしな》はず、|親族《うから》の|乞祈《こひの》む|事《こと》の|如《ごと》く、|唯《ただ》|一筋《ひとすぢ》に|大神《おほかみ》に|服《まつろ》ひ|給《たま》ひて、|遠永《とほなが》に|安《やす》く|楽《たぬし》く|鎮《しづま》り|給《たま》へと|白《まを》す|事《こと》を|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと|白《まを》す。
|発葬祝詞《はつさうのりと》
|阿波礼《あはれ》○○○|命《のみこと》、|故《もとの》○○○○(|姓名《せいめい》)|毘古《びこ》の|柩《ひつぎ》の|御前《みまへ》に|謹《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく、|現身《うつそみ》の|人《ひと》の|世《よ》は|術《すべ》|無《な》き|物《もの》に|有《あ》るかも、|昨日迄《きのふまで》は|共《とも》に|語《かたら》ひ、|共《とも》に|議《はか》りて|行《おこな》ひしも、|今日《けふ》は|世《よ》に|無《な》き|人《ひと》と|成《な》りて|交《まじら》ふ|由《よし》|無《な》し。|雖然有《しかはあれど》|其《その》|神霊《みたま》は|常久《とこしへ》に|消《き》ゆる|事《こと》|無《な》く、|神《かみ》の|列《つら》に|入《いり》て|弥栄《いやさかえ》に|栄《さか》え、|子孫《うみのこ》の|守護神《まもりがみ》と|有《あ》るべき|物《もの》なれば、|汝命《ながみこと》の|神霊《みたま》は|此《これ》の|家内《やぬち》に|斎《いは》ひ|鎮《しづ》め|奉《まつ》りて|有《あ》るも、|幽冥《かくりよ》の|隔《へだて》|有《あり》て|言問《ことと》ひ|語《かたら》ひ|奉《まつ》る|術《すべ》も|無《な》ければ、|現身《うつそみ》の|慣《ならひ》と|如此《かく》ながら|有《あ》るべき|由《よし》も|無《な》ければ、|今日《けふ》を|御葬《みはふり》の|日《ひ》と|斎《いは》ひ|定《さだ》めて、|内外《うちと》の|柩《ひつぎ》の|板《いた》は|広《ひろ》く|厚《あつ》く、|清《きよ》く|堅《かた》く|作《つく》り|備《そな》へて|瑞《みづ》の|御座所《みあらか》と|仕奉《つかへまつ》りて、|玩《もてあそ》び|給《たま》ひ|賞給《めでたま》ひし|種々《くさぐさ》の|物《もの》をも|取添《とりそへ》て|御輿《みこし》|加伎奉《かきまつ》り、|御館《みやかた》を|出坐《いでま》さしめ|奉《まつ》りて、|御葬所《みはふりどこ》の|底津岩根《そこついはね》に|石垣《いしがき》|築固《つきかた》め、|瑞垣《みづがき》|結廻《ゆひめぐ》らして、|千代《ちよ》の|住所《すみか》と|斎《いは》ひ|定《さだ》めて、|汝命《ながみこと》の|御名《みな》は|放《はふ》らさず|失《うしな》はず、|万代《よろづよ》の|記念《かたみ》に|為《せ》むと|堅石《かたしは》に|彫《えら》しめ、|奥都城《おくつき》の|表《しるし》と|為《し》て|子孫《うみのこ》の|次々《つぎつぎ》、|春秋《はるあき》の|永《なが》き|世《よ》に|参出《まゐいで》|候《さぶら》ひ、|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》るべき|事《こと》|議《はか》り|設《ま》け|置《おき》て、|遷《うつ》し|坐《ま》せ|奉《まつ》らむと|為《す》るが|故《ゆゑ》に、|親族《うから》、|家族《やから》を|始《はじ》め、|常《つね》に|親《した》しみ|給《たま》ひし|諸人等《もろびとたち》は、|蘆垣《あしがき》の|間近《まぢか》き|郷々《さとざと》は|更《さら》なり、|雲居《くもゐ》|成《な》す|遠《とほ》き|境《さかひ》も|風《かぜ》の|音《と》の|疾《と》く|聞伝《ききつた》へて、|村鳥《むらどり》の|群《むらが》り|競《きそ》ひ|来《き》て、|現世《うつしよ》の|御別《みわか》れには|後《おく》れじ、|今日《けふ》を|限《かぎり》の|御供《みとも》には|洩《も》れじと、|各《おの》も|各《おの》も|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひ|仕《つか》へ|奉《まつ》りて、|捧《ささ》げ|持《も》つ|御旗《みはた》の|列《つら》|正《ただ》しく、|並《なら》び|立《た》つ|箒《はうき》|持《も》つ|丁《よぼろ》の|掃清《はききよ》むる|道《みち》の|長手《ながて》も|所狭《ところせき》|迄《まで》|護《まも》り|奉《まつ》り|送《おく》り|奉《まつ》らむとす。|故《かれ》|御送《みおくり》の|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るとして|奉《たてまつ》る|御饌物《みけつもの》を|安御食《やすみけ》の|足御食《たるみけ》と|聞食《きこしめ》して、|出坐《いでま》す|道《みち》の|八十隈《やそくま》|恙《つつ》み|無《な》く、|後《うしろ》も|安《やす》く|罷《まか》り|通《とほ》らして、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|鎮《しづ》まり|坐《ま》せと|白《まを》す。
|埋葬祭《まゐさうさい》
|修斎《しうさい》正准○|等《とう》、○○の|命《みこと》や、|汝命《ながみこと》の|御霊《みたま》をば|家内《やぬち》に|斎《いは》ひ|鎮《しづ》め|置《お》きて、|今《いま》|如此《かく》|遺体《なきがら》を|蔵《をさ》めぬる|御柩《みひつぎ》を、|奥都城《おくつき》の|奥《おく》|深《ふか》く|埋《をさ》め|奉《まつ》らむとす。|今由《いまより》|後《のち》|汝命《ながみこと》の|千代《ちよ》の|住所《すみか》と、|親族《うから》|家族《やから》|参《まゐ》り|拝《をろが》み|仕奉《つかへまつ》らむ|事《こと》を|聞食《きこしめし》て、|石垣《いしがき》の|動《うご》く|事《こと》|無《な》く、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|鎮《しづま》り|坐《ま》せと|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|家祭式祓戸祝詞《かさいしきはらひどのりと》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|祓戸四柱《はらひどよはしら》の|大神等《おほかみたち》の|大前《おほまへ》に|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》さく、|今日《けふ》はしも、|修斎《しうさい》○|等《とう》○○|主《ぬし》の|神葬儀《かむはふりののり》を|仕奉《つかへまつ》りて、|早《はや》|訖《をへ》ぬるに|因《よ》りて、|此《これ》の|家《いへ》の|内外《うちと》|又《また》、|親族九族《うからやから》を|始《はじ》め、|葬場《みはふりのには》に|集《つど》ひし|諸人等《もろひとら》に|至《いた》る|迄《まで》、|祓《はら》ひ|給《たま》ひ|清《きよ》め|給《たま》ひて|清々《すがすが》しく|成《なし》|幸《さきは》へ|給《たま》へと|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》らくを、|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
十日及び四十日祭また|年祭《ねんさい》|奏上《そうじやう》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|大前《おほまへ》に、|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく、|今日《けふ》はしも○○|之命《のみこと》、|故《もとの》○○(|姓名《せいめい》)の○○|年《とし》(|或《あるひ》は|日《ひ》)の|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》るべき|日《ひ》にし|有《あ》れば、|其《その》|祭祀《みまつり》|治《をさ》め|奉《まつ》らむとする|状態《さま》を|聞食《きこしめし》|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》ひて、○○|主《ぬし》の|霊魂《みたま》を|弥高《いやたか》に|弥広《いやひろ》に|御霊《みたま》|幸《さちは》ひ|給《たま》ひて、|遠永《とこしへ》に|御愛憐《みめぐみ》を|蒙《かがぶ》らしめ|給《たま》へ、|御祭《みまつり》|美《うるは》しく|仕奉《つかへまつ》らしめ|給《たま》へと|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|五十日《ごじふにち》|合祀《がふし》|奏上《そうじやう》
|掛巻《かけまく》も|畏《かしこ》き|三五皇大御神《おほもとすめおほみかみ》の|大前《おほまへ》に|慎《つつし》み|敬《ゐやま》ひも|白《まを》さく、|今日《けふ》はしも、|故《もとの》○○|主《ぬし》の|五十日《いそか》の|御祭《みまつり》|仕《つか》へ|奉《まつ》るべき|日《ひ》にし|有《あ》れば、|神霊《みたま》を|合《あは》せ|鎮《しづ》め|奉《まつ》る|状《さま》を|聞食《きこしめ》し|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》ひて○○の|霊魂《みたま》を|弥高《いやたか》に、|弥広《いやひろ》に|御霊《みたま》|幸《さきは》ひて、|遠永《とほなが》に|御愛憐《みめぐみ》を|蒙《かがぶ》らしめ|給《たま》ひ、|御祭《みまつり》|美《うるは》しく|仕奉《つかへまつ》らしめ|給《たま》へと、|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|五十日《ごじふにち》|合祀祭文《がふしさいぶん》
|畏《かしこ》しや、|修斎《しうさい》○|等《とう》○○|命《のみこと》の|神霊《みたま》を|招《を》ぎ|奉《まつ》りて|白《まを》さく、|汝命《ながみこと》の|顕世《うつしよ》を|身罷《みまか》り|給《たま》ひてより、|昨日《きのふ》|今日《けふ》と|過《す》ぎ|来《きた》り、|流《なが》れて|早《はや》き|月日《つきひ》は、|五十日《いそか》と|言《い》う|日《ひ》さへ|過《す》ぎぬれば、|今日《けふ》の|吉日《よきひ》に|此《これ》の|霊舎《みたまや》に|移《うつ》して、|代々《よよ》の|祖等《おやたち》と|共《とも》に|令坐《まさしめ》|奉《まつ》らむと|斎《いは》ひ|奉《まつ》りて、|御饗《みあへ》の|御饌《みけ》|御酒《みき》|種々《くさぐさ》の|物《もの》を|机代《つくゑしろ》に|供《そな》へ|称言《たたへごと》|竟奉《をへまつ》らく、|如斯《かく》|仕奉《つかへまつ》る|状《さま》を|平《たひら》かに|聞食《きこしめし》て、|天地《あめつち》の|共《むた》|無窮《とこしへ》に|志豆宮《しづみや》と|鎮《しづま》り|坐《いま》して、|家長《いへをさ》を|始《はじ》め|家内《やぬち》の|者等《ものら》、|異《け》しき|心《こころ》なく|悪《あし》き|行《おこな》ひなく、|己《おの》が|向々《むきむき》|有《あ》らしめず、|親子《おやこ》の|睦《むつ》び|厚《あつ》く、|妻子《つまこ》の|親《した》しみ|深《ふか》く、|同心《おなじこころ》に|恪《いそ》しみ|勤《つと》めて|祖《おや》の|名《な》|汚《けが》さず、|生《うみ》の|子《こ》の|次々《つぎつぎ》|山松《やままつ》の|弥《いや》|高々《たかだか》に|家門《いへかど》を|令起《おこさしめ》|給《たま》ひ、|伊迦斯屋久波枝《いかしやくはえ》の|如《ごと》く、|牟久佐加《むくさか》に|立栄《たちさか》えしめ|給《たま》ひ、|御祭《みまつり》|美《うるは》しく|仕奉《つかへまつ》らしめ|給《たま》へと、|嶋津鳥頸根《しまつどりうなね》|突《つ》き|抜《ぬ》きて|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|十日祭《とをかさい》および|百日祭《ひやくにちさい》までの|祭文《さいぶん》
|修斎《しうさい》○|等《とう》○○|命《のみこと》、|故《もとの》○○|毘古《びこ》の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく、|汝命伊《ながみことい》、|親族《うから》|家族《やから》は|更《さら》なり|親《した》しき|諸人《もろひと》に|至《いた》る|迄《まで》、|百年《ももとせ》|千年《ちとせ》も|巌《いはほ》なす|堅磐《かきは》に|常磐《ときは》に|坐《ま》さねと、|大船《おほふね》の|思頼《おもひたの》みて|有《あり》しを、|空蝉《うつせみ》は|術《すべ》|無《な》き|者《もの》にかも、|去《い》にし○|年《とし》○|月《つき》○|日《ひ》を|現世《うつしよ》の|限《かぎり》として、|幽冥《かくりよ》に|帰《おもむ》き|給《たま》ひぬれば、|現身《うつそみ》の|習《ならひ》と|甚《いと》も|惜《お》しく、|甚《いと》も|懐《なつか》しく|思《おも》ひ、|慕《した》ふは|道理《ことわり》には|有《あ》れども、|素《もと》より|幽世《かくりよ》の|契《ちぎり》|有《あ》る|事《こと》にし|有《あ》れば、|御葬儀《みはふりののり》をだに|美《うる》はしく|仕奉《つかへまつ》り、|後《のち》の|御祭《みまつり》をも|足《たら》はぬ|事《こと》なく|為《な》さむと|相議《あひはか》り|相定《あひさだ》めて、|心《こころ》の|限《かぎり》|力《ちから》の|至極《きはみ》|仕奉《つかへまつ》りつつも、|見《み》る|物《もの》につけ|聞物《きくもの》に|依《よ》りて|左有《とあり》し、|右有《かくあり》しと|偲草《しのびぐさ》のみ|弥繁《いやしげ》くて|日《ひ》を|経《ふ》る|間《ほど》に、|今日《けふ》は|早《はや》くも○|日《ひ》の|御祭《みまつり》の|日《ひ》に|成《な》りぬ。|倩《つらつら》に|思《おも》へば|汝命伊《ながみことい》、|現世《うつしよ》に|坐《ま》しし|間《ほど》は、|人《ひと》と|有道《あるみち》の|任《まま》に|直《なほ》く|正《ただ》しく、|国《くに》の|為《ため》にも|人《ひと》の|為《ため》にも|忠実《まめ》に|恪《いそ》しく|坐《ま》しつれば、|大神《おほかみ》も|褒《ほ》め|給《たま》ひ|愛《いつく》しみ|給《たま》はむ|事《こと》を|嬉《うれ》しみ|悦《よろこ》び、|弥《いや》|益々《ますます》に|高《たか》き|神《かみ》の|列《つら》に|進《すす》み|給《たま》ひ、|春秋《はるあき》の|歓楽《ゑらぎたのしみ》をも|極《きは》め|給《たま》ふべく、|大神《おほかみ》に|乞祈《こひのみ》|奉《まつ》り、|善《よ》く|神霊《みたま》を|治《をさ》め|奉《まつ》らむとする|状《さま》を|見行《みそなは》し、|聞食《きこしめし》て|平穏《おだひ》に|鎮《しづま》り|坐《ま》して、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづき》|家《いへ》をも|身《み》をも|守幸《まもりさきは》ひ|給《たま》ひ、|今日《けふ》の|御祭《みまつり》に|供《そな》へ|奉《まつ》る|礼代《いやしろ》の|御饌《みけ》|御酒《みき》|種々《くさぐさ》の|物《もの》を、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめ》せと|白《まを》す。
|一年祭《いちねんさい》|以上《いじやう》の|年祭文《ねんさいぶん》
|此《これ》の|霊殿《みたまや》に|斎奉令坐《いつきまつりませ》|奉《まつ》る|修斎《しうさい》○|等《とう》○○|命《のみこと》、|故《もとの》○○|毘古《びこ》の|神霊《みたま》の|御前《みまへ》に|白《まを》さく。|汝命伊《ながみことい》、|去《いに》し○|年《とし》○|月《つき》○|日《ひ》に|現世《うつしよ》を|去《さ》り|坐《ま》して、|今《いま》は|幽冥《かくりよ》の|神《かみ》の|列《つら》に|鎮坐《しづまります》が|故《ゆゑ》に、|此家《これのいへ》の|守神《まもりがみ》と|常《つね》も|尊《たふと》び|敬《ゐやま》ひ|仕奉《つかへまつ》るを、|今日《けふ》は|早《はや》くも○|年《とし》の|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》るべき|日《ひ》にも|廻《めぐ》り|来《き》ぬれば、|御祭《みまつり》の|式《のり》も|既《はや》|事竟《ことを》へぬ。|故《かれ》|此御前《これのみまへ》をも|持由麻波利《もちゆまはり》|拝《をろが》み|仕奉《つかへまつ》らくを|御心《みこころ》も|平穏《おだひ》に|聞食《きこしめし》て、|弥《いや》|遠永《とほなが》に|代々《よよ》の|祖等《おやたち》と|御心《みこころ》を|睦《むつ》び、|御力《みちから》を|合《あは》せ|給《たま》ひて、|子孫《うみのこ》の|遠《とほ》き|世《よ》の|守《まもり》、|家《いへ》の|鎮《しづめ》と|坐《ま》す|御徳《みいづ》を|現《あら》はし|給《たま》へ、|親族《うから》、|家族《やから》|和《にぎ》び|睦《むつ》び|浦安《うらやす》く|転楽《うたたたの》しく|令在《あらしめ》|給《たま》へと、|御饌《みけ》|御酒《みき》を|始《はじ》め、|海川山野《うみかはやまぬ》の|種々《くさぐさ》の|美味物《うましもの》を、|百取《ももとり》の|机《つくゑ》に|置足《おきたら》はして|恐《かしこ》み|恐《かしこ》みも|白《まを》す。
|臨時祖霊拝詞《りんじそれいはいし》
|此《これ》の|神霊殿《みたまや》を|伊都《いづ》の|真屋《まや》と|斎《いは》ひ|鎮《しづ》むる、|何々《なになに》の|家《いへ》の|遠津御祖《とほつみおや》、|世々《よよ》の|祖等《おやたち》|親族《うから》|家族《やから》の|神霊《みたま》の|前《みまへ》に|白《まを》さく。|汝命等《ながみことたち》の|清《きよ》く|明《あか》き|直《なほ》き|正《ただ》しき|心《こころ》を|以《も》て、|大神《おほかみ》の|広《ひろ》き|厚《あつ》き|恩頼《みたまのふゆ》を|信《うづ》なひ|奉《まつ》りて、|奇《くし》き|妙《たへ》なる|神業《みわざ》を|悟《さと》り|奉《まつ》り、|諸々《もろもろ》の|人等《ひとら》を|救《すく》ひ|給《たま》ひ|助《たす》け|給《たま》ひ、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづき》|守幸給《まもりさきはひたま》ひ、|各《おの》も|各《おの》も|神《かみ》を|敬《ゐやま》ひ|君《きみ》を|尊《たふと》び、|親《おや》を|幸《さきは》ひ|夫婦《めをと》|兄弟《はらから》|睦《むつ》まじく、|己《おの》が|向々《むきむき》|有《あ》らしめず、|力《ちから》を|戮《あは》せ|心《こころ》を|一《むつ》び|家《いへ》の|業《なりはひ》|緩《ゆる》ぶ|事《こと》|無《な》く、|弥遠《いやとほ》に|弥長《いやなが》に|守奉《まもりまつ》らむ|事《こと》を|嬉《うれ》しみ、|今日《けふ》の|吉日《よきひ》の|良辰《よきとき》に|御祭《みまつり》|仕奉《つかへまつ》りて、|種々《くさぐさ》の|美味物《うましもの》|捧《ささ》げ|拝《をろが》み|仕《つか》へ|奉《まつ》らくを、|相諾《あひうづな》ひ|給《たま》へと、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
|建碑除幕式祝詞《けんぴぢよまくしきのりと》
|此《これ》の|奥都城《おくつき》を、|千代《ちよ》の|住家《すみか》と|鎮《しづま》り|坐《ま》す○○|命《のみこと》、|故《もとの》○○|毘古《びこ》の|御霊《みたま》の|御前《みまへ》に、|斎主《いはひぬし》○○|畏《かしこ》みも|白《まを》さく、|今回《こたび》|新《あらた》に|太《ふと》く|高《たか》く|厳《いかし》き|石碑《いしぶみ》を|建《た》て|設《もうけ》つるに|依《よ》り、|今日《けふ》の|生日《いくひ》の|足日《たるひ》に(|石碑《いしぶみ》の|被幕《ひばく》|取放《とりはな》ち)|其《その》|由《よし》|告奉《つげまつ》らくを、|平《たひら》けく|安《やす》らけく|聞食《きこしめし》て、|弥《いや》|遠永《とほなが》に|鎮《しづ》まり|坐《ま》して、|何々《なになに》が|家《いへ》を、|石碑《いしぶみ》の|弥堅《いやかた》らに、|石垣《いしがき》の|動《うご》く|事《こと》|無《な》く|揺《ゆる》ぐ|事《こと》|無《な》く、|子孫《うみのこ》の|八十続《やそつづき》|五十橿《いかし》|八桑枝《やくはえ》の|如《ごと》く|茂久栄《むくさか》に|栄《さか》えしめ|給《たま》へ、|夜《よ》の|守《まもり》|日《ひ》の|守《まも》りに|守《まも》り|幸《さきは》へ|給《たま》へと、|御饌《みけ》|御酒《みき》を|始《はじ》め|種々《くさぐさ》の|味物《うましもの》を|百取《ももとり》の|机《つくゑ》に|置足《おきたら》はして、|畏《かしこ》み|畏《かしこ》みも|白《まを》す。
第五篇 |金言玉辞《きんげんぎよくじ》
第二〇章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その一〔一五四五〕
明治二十五年旧正月…日
|三《さん》ぜん|世界《せかい》|一度《いちど》に|開《ひら》く|梅《うめ》の|花《はな》、|艮《うしとら》の|金神《こんじん》の|世《よ》に|成《な》りたぞよ。|梅《うめ》で|開《ひら》いて|松《まつ》で|治《をさ》める、|神国《しんこく》の|世《よ》になりたぞよ。この|世《よ》は|神《かみ》が|構《かま》はな|行《ゆ》けぬ|世《よ》であるぞよ。|今日《いま》は|獣類《けもの》の|世《よ》、|強《つよ》いもの|勝《が》ちの、|悪魔《あくま》ばかりの|世《よ》であるぞよ。|世界《せかい》は|獣《けもの》の|世《よ》になりてをるぞよ。|邪神《あくがみ》にばかされて、|尻《しり》の|毛《け》まで|抜《ぬ》かれてをりても、まだ|眼《め》が|覚《さ》めん|暗《くら》がりの|世《よ》になりてをるぞよ。これでは、|世《よ》は|立《た》ちては|行《ゆ》かんから、|神《かみ》が|表《おもて》に|現《あら》はれて、|三千世界《さんぜんせかい》の|天之岩戸開《あまのいはとびら》きを|致《いた》すぞよ。|用意《ようい》をなされよ。この|世《よ》は|全然《さつぱり》、|新《さら》つに|致《いた》して|了《しま》ふぞよ。|三千世界《さんぜんせかい》の|大洗濯《おほせんたく》、|大掃除《おほさうじ》を|致《いた》して、|天下泰平《てんかたいへい》に|世《よ》を|治《をさ》めて、|万古末代《まんごまつだい》つづく|神国《しんこく》の|世《よ》に|致《いた》すぞよ。|神《かみ》の|申《まを》した|事《こと》は、|一分一厘《いちぶいちりん》|違《ちが》はんぞよ。|毛筋《けすぢ》の|横巾《よこはば》ほども|間違《まちが》ひは|無《な》いぞよ。これが|違《ちが》ふたら、|神《かみ》は|此《こ》の|世《よ》に|居《を》らんぞよ。
|何《いづ》れの|教会《けうくわい》も|先走《さきばし》り、とどめに|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|現《あら》はれて、|天《あま》の|岩戸《いはと》を|開《ひら》くぞよ。|岩戸開《いはとびら》きのあるといふ|事《こと》は、|何《ど》の|神柱《かむばしら》にも|判《わか》りてをれど、どうしたら|開明《かいめい》になるといふ|事《こと》は、|判《わか》りてをらんぞよ。|九分九厘《くぶくりん》までは|知《し》らしてあるが、モウ|一厘《いちりん》の|肝心《かんじん》の|事《こと》は、|判《わか》りてをらんぞよ。|三千世界《さんぜんせかい》の|事《こと》は、|何一《なにひと》つ|判《わか》らん|事《こと》の|無《な》い|神《かみ》であるから、|淋《さび》しくなりたら、|綾部《あやべ》の|大本《おほもと》へ|出《で》て|参《まゐ》りて、お|話《はなし》を|聞《き》かして|頂《いただ》けば、|何《なに》も|彼《か》も|世界《せかい》|一目《ひとめ》に|見《み》える|神徳《しんとく》を|授《さづ》けるぞよ。
|神《かみ》となれば、スミスミまでも、|気《き》をつけるが|神《かみ》の|役《やく》、かみばかり|好《よ》くても|行《ゆ》けぬ、かみしも|揃《そろ》はねば|世《よ》は|治《をさ》まらんぞよ。|不公平《むちや》では|治《をさ》まらん、かみしも|揃《そろ》へて|人民《じんみん》を|安心《あんしん》させて、|末代《まつだい》|潰《つぶ》れぬ|神国《しんこく》の|世《よ》に|致《いた》すぞよ。|用意《ようい》を|為《な》されよ、|脚下《あしもと》から|鳥《とり》がたつぞよ。
|天地《てんち》までも|自由《じいう》に|致《いた》して、|神《かみ》は|残念《ざんねん》なぞよ。|今《いま》の|人民《じんみん》、|盲者《めくら》|聾者《つんぼ》ばかり、|神《かみ》が|見《み》てをれば、|井戸《ゐど》の|端《はた》に|茶碗《ちやわん》を|置《お》いたごとく、|危《あぶ》なうて|見《み》てをれんぞよ。サタンよ。|今《いま》に|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|返報返《へんぱうがへ》しを|致《いた》すぞよ。
|根《ね》に|葉《は》の|出《で》るは|虎耳草《ゆきのした》、|上《うへ》も|下《した》も|花《はな》|咲《さ》かねば、|此《この》|世《よ》は|治《をさ》まらぬ。|上《うへ》ばかり|好《よ》くても|行《ゆ》けぬ|世《よ》。|下《した》ばかり|宜《よ》くても|此《この》|世《よ》は|治《をさ》まらぬぞよ。
|天使《てんし》は|綾部《あやべ》に|出現《しゆつげん》されてあるぞよ。|至治太平《みろく》の|世《よ》を|開《ひら》いて、|元《もと》の|昔《むかし》に|返《かへ》すぞよ。|神柱会開《こくくわいびら》きは|人民《じんみん》が|何時《いつ》までかかりても|開《ひら》けんぞよ。|神《かみ》が|開《ひら》かな、|開《ひら》けんぞよ。|開《ひら》いて|見《み》せうぞよ。|世界《せかい》をこのままおいたなら|暗黒《やみくも》に|成《な》るぞよ。|永久《ながう》は|続《つづ》かんぞよ。|今《いま》に|気《き》の|附《つ》く|人民《じんみん》ないぞよ。|神《かみ》は|急《せ》けるぞよ。|此《この》|世《よ》の|鬼《おに》を|往生《わうじやう》さして、|邪神《じやしん》を|慈神《じしん》|神也《かみなり》|慈悲《じひ》の|雨《あめ》|降《ふ》らして、|戒《いまし》めねば、|世界《せかい》は|神国《しんこく》にならんから、|昔《むかし》の|大本《おほもと》からの|神《かみ》の|仕組《しぐみ》が、|成就《じやうじゆ》いたす|時節《じせつ》が|廻《まは》りて|来《き》たから、|苦労《くらう》はあれど、バタバタと|埒《らち》を|付《つ》けるぞよ。|判《わか》りた|守護神《しゆごじん》は|一柱《ひとはしら》なりと|早《はや》く|大本《おほもと》へ|出《で》て|参《まゐ》りて、|神界《しんかい》の|御用《ごよう》を|致《いた》して|下《くだ》されよ。さる|代《かは》りに|勤《つと》め|上《あ》がりたら、|万古末代《まんごまつだい》の|大事業完成者《かみばしら》であるから、|神《かみ》から|結構《けつこう》に|御礼《おんれい》|申《まを》すぞよ。
|世界中《せかいぢう》の|事《こと》であるから、|何《なに》ほど|知恵《ちゑ》や|学《がく》がありても、|人民《じんみん》では|判《わか》らん|事《こと》であるぞよ。この|仕組《しぐみ》|判《わか》りてはならず、|判《わか》らねばならず、|判《わか》らぬので、|改信《かいしん》が|出来《でき》ず、|岩戸開《いはとびら》きの、|末代《まつだい》に|一度《いちど》の|仕組《しぐみ》であるから、|全然《さつぱり》、|学《がく》や|知恵《ちゑ》を|捨《す》てて|了《しま》うて、|生《うま》れ|赤児《あかご》の|心《こころ》に|立返《たちかへ》らんと、|見当《けんたう》が|取《と》れん、|六ケ敷《むつかしい》|仕組《しぐみ》であるぞよ。|今《いま》までの|腹《はら》の|中《なか》の|垢塵《ごもく》を、さつぱり|放《ほ》り|出《だ》して|了《しま》はんと、|今度《こんど》の|実地《じつち》まことは|分《わか》りかけが|致《いた》さん、|大望《たいまう》な|仕組《しぐみ》であるぞよ。
|氏神様《うぢがみさま》の|庭《には》の|白藤《しらふぢ》、|梅《うめ》と|桜《さくら》は、|出口《でぐち》|直《なほ》の|御礼《おんれい》の|庭木《にはき》に、|植《う》ゑさしたのであるぞよ。|白藤《しらふぢ》が|栄《さか》えば、|綾部《あやべ》よくなりて|末《すゑ》で|都《みやこ》と|致《いた》すぞよ。|福知山《ふくちやま》|舞鶴《まひづる》は|外囲《そとがこ》ひ、|十里四方《じふりしはう》は|宮垣内《みやがいち》、|綾部《あやべ》はまん|中《なか》になりて、|黄金世界《わうごんせかい》に|世《よ》が|治《をさ》まるぞよ。|綾部《あやべ》は|結構《けつこう》な|所《ところ》、|昔《むかし》から|神《かみ》が|隠《かく》しておいた、|真誠《まこと》の|仕組《しぐみ》の|地場《ぢば》であるぞよ。
|世界《せかい》|国《くに》ぐに|所《ところ》どころに、|岩戸開《いはとびら》きを|知《し》らす|神柱《かむばしら》は|沢山《たくさん》|現《あら》はれるぞよ。みな|艮之金神《うしとらのこんじん》|国常立尊《くにとこたちのみこと》の|仕組《しぐみ》で、|世界《せかい》へ|知《し》らしてあるぞよ。おほかた|行《ゆ》き|渡《わた》りた|時分《じぶん》に、|高天原《たかあまはら》へ|諸国《しよこく》の|神《かみ》、|守護神《しゆごじん》を|集《あつ》めて、それぞれの|御用《ごよう》を|申《まを》し|付《つ》ける、|尊《たふと》い|世《よ》の|根《ね》の|世《よ》の|本《もと》の、|竜門館《りうもんやかた》の|神屋敷《かみやしき》、|地上《ちじやう》の|高天原《たかあまはら》であるから、|何《なに》を|致《いた》しても|大本《おほもと》の|教《をしへ》を|守《まも》らねば、|九分九厘《くぶくりん》で|転覆《ひつくりかへ》るぞよ。
|皆《みな》|神《かみ》の|仕組《しぐみ》であるから、|吾《われ》が|吾《われ》がと|思《おも》ふて|致《いた》してをるが、|皆《みな》|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|化《ば》かして|使《つか》ふてをるのであるぞよ。この|神《かみ》は、|独《ひと》り|手柄《てがら》をして|喜《よろこ》ぶやうな|神《かみ》でないぞよ。|仕組《しぐみ》の|判《わか》る|守護神《しゆごじん》でありたら、たがひに|手《て》を|曳《ひ》き|合《あ》ふて、|世《よ》の|本《もと》の|御用《ごよう》を|致《いた》さすから、|是《これ》までの|心《こころ》を|入替《いれか》へて、|大本《おほもと》へ|来《き》て|肝腎《かんじん》の|事《こと》を|聞《き》いて、|御用《ごよう》を|勤《つと》めて|下《くだ》されよ。|三千世界《さんぜんせかい》の|神々様《かみがみさま》、|守護神殿《しゆごじんどの》に|気《き》を|附《つ》けるぞよ。|谷々《たにだに》の|小川《をがは》の|水《みづ》も|大川《おほかは》へ、|末《すゑ》で|一《ひと》つに|成《な》る|仕組《しぐみ》。ここは|世《よ》の|本《もと》。|誠《まこと》の|神《かみ》の|住《す》まひどころ。
|神《かみ》と|悪魔《あくま》との|戦《たたか》ひがあるぞよ。|此《この》いくさは|勝《か》ち|軍《いくさ》、|神《かみ》が|蔭《かげ》から、|仕組《しぐみ》が|致《いた》してあるぞよ。|神《かみ》が|表《おもて》に|現《あら》はれて、|善《ぜん》へ|手柄《てがら》いたさすぞよ。|邪神《あくがみ》の|国《くに》から|始《はじ》まりて、モウ|一《ひ》と|戦《いくさ》があるぞよ。あとは|世界《せかい》の|大《おほ》たたかひで、これは|段々《だんだん》|判《わか》りて|来《く》るぞよ。
この|世《よ》は|神国《しんこく》、|世界《せかい》を|一《ひと》つに|丸《まる》めるぞよ。そこへ|成《な》るまでには、|中々《なかなか》|骨《ほね》が|折《を》れるなれど、|三千年《さんぜんねん》あまりての|仕組《しぐみ》であるから、うへに|立《た》ちて|居《を》れる|守護神《しゆごじん》に、チツと|判《わか》りかけたら、|神《かみ》が|力《ちから》を|附《つ》けるから|大丈夫《だいぢやうぶ》であるぞよ。|世界《せかい》の|大峠《おほたうげ》を|越《こ》すのは、|神《かみ》の|申《まを》すやうに、|素直《すなほ》に|致《いた》して、どんな|苦労《くらう》も|致《いた》す|人民《じんみん》でないと、|世界《せかい》の|物事《ものごと》は|成就《じやうじゆ》いたさんぞよ。|神《かみ》はくどう|気《き》を|附《つ》けるぞよ。
|此《この》|事《こと》|判《わ》ける|身霊《みたま》は、|東《ひがし》から|出《で》て|来《く》るぞよ。このお|方《かた》がお|出《い》でになりたら|全然《さつぱり》|日《ひ》の|出《で》の|守護《しゆご》と|成《な》るから、|世界中《せかいぢう》の|神徳《しんとく》が|光《ひか》り|輝《かがや》く|神世《かみよ》になるぞよ。なかなか|大事業《たいもう》であれども、|昔《むかし》からの|生神《いきがみ》の|仕組《しぐみ》であるから|別条《べつでう》は|無《な》いぞよ。
|一旦《いつたん》たたかひ|治《をさ》まりても、|後《あと》の|悶着《もんちやく》はなかなか|治《をさ》まらんぞよ。|神《かみ》が|表《おもて》に|現《あら》はれて、|神《しん》と|学《がく》との|力競《ちからくら》べを|致《いた》すぞよ。|学《がく》の|世《よ》はモウ|済《す》みたぞよ。|神《かみ》には|勝《か》てんぞよ。
明治二十六年…月…日
お|照《てら》しは|一体《いつたい》、|世界《せかい》|一《ひと》つに|治《をさ》める|経綸《しぐみ》が|致《いた》してあるぞよ。この|世《よ》は|神《かみ》の|国《くに》であるから、|汚食《をじき》なぞは|成《な》らぬ|国《くに》を、あまり|汚《けが》して、|神《かみ》は|此《こ》の|世《よ》に|居《を》れんやうに|成《な》りたぞよ。|世界《せかい》の|人民《じんみん》よ、|改信《かいしん》いたされよ。|元《もと》の|昔《むかし》に|戻《もど》すぞよ。ビツクリ|箱《ばこ》が|明《あ》くぞよ。|神国《しんこく》の|世《よ》に|成《な》りたから、|信心《しんじん》|強《つよ》きものは|神《かみ》の|御役《おやく》に|立《た》てるぞよ。|今《いま》までは|内《うち》と|外《そと》とが|立別《たてわか》れて|在《あ》りたが、|神《かみ》が|表《おもて》に|現《あら》はれて、カラも|天竺《てんぢく》も|一《ひと》つに|丸《まる》めて、|万古末代《まんごまつだい》|続《つづ》く|神国《しんこく》に|致《いた》すぞよ。|艮《うしとら》の|金神《こんじん》は|此《この》|世《よ》の|閻魔《えんま》と|現《あら》はれるぞよ。
|世界《せかい》に|大《おほ》きな|事《こと》や|変《かは》りた|事《こと》が|出《で》て|来《く》るのは、|皆《みな》|此《こ》の|金神《こんじん》の|渡《わた》る|橋《はし》であるから、|世界《せかい》の|出来事《できごと》を|考《かんが》へたら、|神《かみ》の|仕組《しぐみ》が|判《わか》りて|来《き》て、|誠《まこと》の|改信《かいしん》が|出来《でき》るぞよ。|世界《せかい》には|誠《まこと》の|者《もの》を|神《かみ》が|借《か》りてをるから、|漸々《だんだん》|結構《けつこう》が|判《わか》りて|来《く》るぞよ。|善《よ》き|目醒《めざま》しもあるぞよ。また|悪《あ》しき|目醒《めざま》しもあるから、|世界《せかい》の|事《こと》を|見《み》て|改信《かいしん》|致《いた》されよ。|新《さら》たまりての|世《よ》になるぞよ。|今《いま》まで|宜《よ》かりた|所《ところ》はチト|悪《わる》くなり、|悪《わる》かりた|所《ところ》は|善《よ》くなるぞよ。|上《うへ》へお|土《つち》が|上《あ》がる|所《ところ》もあるぞよ。お|土《つち》が|下《さ》がりて|海《うみ》となる|所《ところ》もあるぞよ。|是《これ》も|時節《じせつ》であるから、ドウも|致《いた》しやうが|無《な》いなれど、|一人《ひとり》なりと|改信《かいしん》を|為《さ》して、|世界《せかい》を|助《たす》けたいと|思《おも》ふて、|天地《てんち》の|元《もと》の|大神様《おほかみさま》へ、|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|昼夜《ちうや》にお|詫《わび》を|致《いた》してをるぞよ。
この|神《かみ》が|天晴《あつぱ》れ|表面《おもて》に|成《な》りたら、|世界《せかい》を|水晶《すゐしやう》の|世《よ》に|致《いた》すのであるから、|改信《かいしん》を|致《いた》したものから|早《はや》く|宜《よ》く|致《いた》すぞよ。|水晶《すゐしやう》の|神代《かみよ》に|成《な》れば、|何事《なにごと》も|世《よ》の|中《なか》は|思《おも》ふやうになるぞよ。|水晶《すゐしやう》の|霊魂《みたま》を|調査《あらた》めて|神《かみ》が|御用《ごよう》に|使《つか》ふぞよ。|身霊《みたま》の|審判《あらため》を|致《いた》して、|神《かみ》が|綱《つな》を|掛《か》けるぞよ。|綱《つな》かけたら|神《かみ》は|離《はな》さぬぞよ。|元《もと》は|神《かみ》の|直系《ぢきぢき》の|分霊《わけみたま》が|授《さづ》けてあるぞよ。
|是《これ》から|世界中《せかいぢう》|神国《しんこく》と|神民《しんみん》とに|致《いた》して、|世界《せかい》の|神《かみ》も|仏《ぶつ》も|人民《じんみん》も、|勇《いさ》んで|暮《くら》さすぞよ。|神《かみ》、|仏事《ぶつじ》、|人民《じんみん》なぞの|世界中《せかいぢう》の|洗濯《せんたく》|致《いた》して、|此《この》|世《よ》を|直《なほ》すぞよ。|信心《しんじん》|強《つよ》き|者《もの》は|助《たす》けるぞよ。|信心《しんじん》なきものは|気《き》の|毒《どく》ながらお|出直《でなほ》しでござるぞよ。|神《かみ》は|気《き》を|附《つ》けた|上《うへ》にも|気《き》を|附《つ》けるぞよ。モ|一《ひと》ツ|世界《せかい》の|大洗濯《おほせんたく》を|致《いた》して、|根本《こつぽん》から|世《よ》を|立直《たてなほ》すから、|世界《せかい》が|一度《いちど》に|動《うご》くぞよ。|世界《せかい》には|何《なん》でなりとも、|見《み》せしめがあるぞよ。
|天地《てんち》の|神々《かみがみ》のお|宮《みや》を|建《た》てて、|三千世界《さんぜんせかい》を|守《まも》るぞよ。|世界《せかい》がウナルぞよ。|世界《せかい》は|上下《うへした》へ|覆《かへ》るぞよ。|此《この》|世《よ》は|神国《しんこく》の|世《よ》であるから、|善《よ》き|心《こころ》を|持《も》たねば、|悪《あく》では|永《なが》うは|続《つづ》かんぞよ。|金神《こんじん》の|世《よ》になれば|何《ど》んな|事《こと》でも|致《いた》すぞよ。|珍《めづら》しき|事《こと》が|出来《でき》るぞよ。
明治二十七年旧正月三日
|燈台下《とうだいもと》は|真暗黒《まつくらがり》。|遠国《ゑんごく》から|判《わか》りて|来《き》て、アフンと|致《いた》す|事《こと》が|出来《でき》るぞよ。|綾部《あやべ》は|世《よ》の|本《もと》の|太古《おほむかし》から、|神《かみ》の|経綸《しぐみ》の|致《いた》してある|結構《けつこう》な|所《ところ》であるから、|誠《まこと》の|者《もの》には|流行病《はやりやまひ》は|封《ふう》じてあるぞよ。|此《この》|事《こと》|知《し》りた|人民《じんみん》は|今《いま》に|一人《ひとり》も|無《な》いぞよ。あまり|改信《かいしん》を|致《いた》さんと、|世《よ》が|治《をさ》まりたら|万古末代《まんごまつだい》|悪《あく》の|鏡《かがみ》と|致《いた》すぞよ。|出口《でぐち》を|引《ひ》き|裂《さ》きに|来《く》るものも|出来《でき》るぞよ。
|本宮《ほんぐう》|坪《つぼ》の|内《うち》|出口《でぐち》|竹蔵《たけざう》、お|直《なほ》の|屋敷《やしき》には、|金《きん》の|茶釜《ちやがま》と|黄金《こがね》の|玉《たま》が|埋《い》けてあるぞよ。|是《これ》を|掘出《ほりだ》して|三千世界《さんぜんせかい》の|宝《たから》と|致《いた》すぞよ。|黄金《こがね》の|璽《たま》が|光《ひか》り|出《だ》したら、|世界中《せかいぢう》が|日《ひ》の|出《で》の|守護《しゆご》となりて、|神《かみ》の|神力《しんりき》は|何《なに》|程《ほど》でも|出《で》るぞよ。|開《あ》いた|口《くち》が|閉《すぼ》まらぬぞよ。|牛《うし》の|糞《くそ》が|天下《てんか》を|取《と》ると|申《まを》すのは|今度《こんど》の|事《こと》の|譬《たとへ》であるぞよ。|昔《むかし》から|未《ま》だ|斯世《このよ》が|始《はじ》まりてから|無《な》き|珍《めづら》しき|事《こと》であるぞよ。
|大地《だいち》の|金神様《こんじんさま》を|金勝要《きんかつかね》の|神様《かみさま》と|申《まを》すぞよ。|今度《こんど》|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|表《おもて》になるに|就《つ》いて、この|神様《かみさま》を|陸地表面《あげ》へお|上《あ》げ|申《まを》して、|結構《けつこう》にお|祭《まつ》り|申《まを》さな|斯世《このよ》は|治《をさ》まらんぞよ。|昔《むかし》から|結構《けつこう》な|霊魂《みたま》の|高《たか》い|神様《かみさま》ほど、|世《よ》に|落《お》ちて|御座《ござ》るぞよ。
|時節《じせつ》|参《まゐ》りて|煎豆《いりまめ》にも|花《はな》が|咲《さ》きて|上下《うへした》にかへりて、|万古末代《まんごまつだい》|続《つづ》く|世《よ》になりて、|神《かみ》は|厳《はげ》しく|人民《じんみん》は|穏《おだや》かになるぞよ。これを|誠《まこと》の|神世《かみよ》と|申《まを》すぞよ。|神世《かみよ》になれば|人民《じんみん》の|寿命《じゆみやう》も|長《なが》くなるぞよ。|世界中《せかいぢう》|勇《いさ》んで|暮《くら》すやうになるぞよ。|今《いま》の|人民《じんみん》はこんな|結構《けつこう》な|世《よ》は|無《な》いと|申《まを》してをれど、|神《かみ》から|見《み》れば、|是《これ》くらゐ|悪《わる》い|世《よ》は|斯世《このよ》の|元《もと》から|無《な》いのであるぞよ。|人民《じんみん》と|申《まを》すものは|目《め》の|前《まへ》の|事《こと》より|何《なに》も|判《わか》らんから|無理《むり》も|無《な》いぞよ。
明治二十九年旧十二月二日
|昔《むかし》の|初《はじま》りと|申《まを》すものは、|誠《まこと》に|難渋《なんじう》な|世《よ》でありたぞよ。|木《こ》の|葉《は》を|衣類《きるゐ》に|致《いた》し、|草《くさ》や|笹《ささ》の|葉《は》を|食物《たべもの》に|致《いた》して、|刃物《きれもの》|一《ひと》つ|在《あ》るでなし、|土《つち》に|穴《あな》を|掘《ほ》りて|住居《すまゐ》を|致《いた》したものでありたが、|天地《てんち》の|神々《かみがみ》の|御恵《おかげ》で|段々《だんだん》と|住家《すみか》も|立派《りつぱ》になり、|衣類《きるゐ》も|食物《たべもの》も|結構《けつこう》に|授《さづ》けて|戴《いただ》くやうになりたのは、|皆《みな》|此《この》|世《よ》を|創造《こしらへ》た、|元《もと》の|活神《いきがみ》の|守護《しゆご》で|人民《じんみん》が|結構《けつこう》になりたのであるぞよ。|人民《じんみん》は|世《よ》が|開《ひら》けて|余《あま》り|結構《けつこう》になると、|元《もと》の|昔《むかし》の|活神《いきがみ》の|苦労《くらう》を|忘《わす》れて、|勝手《かつて》|気儘《きまま》になりて、|全然《さつぱり》|世《よ》が|頂上《てつぺん》へ|登《のぼ》りつめて、|誠《まこと》の|神《かみ》の|思《おも》ひを|知《し》りた|人民《じんみん》は|漸々《だんだん》に|無《な》くなりて、|利己主義《われよし》の|行方《やりかた》ばかり|致《いた》して、|此《この》|世《よ》を|強《つよ》い|者《もの》|勝《が》ちの|畜生原《ちくしやうばら》にして|了《しま》ふて、|神《かみ》の|居《を》る|所《ところ》も|無《な》いやうに|致《いた》したから、モウ|此《この》|儘《まま》にしておいては、|世界《せかい》が|潰《つぶ》れて、|餓鬼《がき》と|鬼《おに》との|世《よ》になるから、|岩戸《いはと》を|開《ひら》かなならん|事《こと》に、|世《よ》が|迫《せま》りて|来《き》たのであるぞよ。|邪神《あくがみ》が|覇張《はば》りて|神《かみ》の|国《くに》を|汚《けが》して|了《しま》ふて、|此《この》|世《よ》は|真暗闇《まつくらやみ》であるぞよ。|神《かみ》が|表《おもて》に|現《あら》はれて、|神力《しんりき》を|現《あら》はして、|三千世界《さんぜんせかい》を|日《ひ》の|出《で》の|守護《しゆご》と|致《いた》して、|世界《せかい》を|守《まも》るぞよ。
この|世《よ》は|一旦《いつたん》|泥海《どろうみ》に|成《な》る|所《ところ》であれども、|金神《こんじん》が|天《てん》の|大神様《おほかみさま》へお|詫《わ》びを|申《まを》して、|助《たす》けて|戴《いただ》かねば、|世界《せかい》の|人民《じんみん》が|可哀相《かはいさう》であるから、なんでも|人民《じんみん》を|助《たす》けたさに、|神《かみ》が|永《なが》らく|艱難苦労《かんなんくらう》を|致《いた》してをれども、|知《し》りた|人民《じんみん》は|読《よ》む|程《ほど》より|無《な》いので、|神《かみ》の|経綸《しぐみ》は|延《の》びるばかりであるから、この|大本《おほもと》へ|立《た》ち|寄《よ》りて|神《かみ》のお|話《はなし》を|聞《き》かして|貰《もら》ふた|人民《じんみん》だけなりと、|改心《かいしん》を|致《いた》して、|元《もと》の|水晶魂《すゐしやうだま》に|立復《たちかへ》りて|下《くだ》されよ。
|世《よ》が|迫《せま》りて|来《き》たから、モウ|何時《いつ》|始《はじ》まるか|知《し》れんから、|後《あと》でヂリヂリ|悶《もだ》え|致《いた》しても、モウ|仕様《しやう》が|無《な》いから、|何時《いつ》までも|気《き》を|附《つ》けたが、モウ|気《き》の|附《つ》けやうが|無《な》いぞよ。|解《わか》りた|人民《じんみん》から|改信《かいしん》をして|下《くだ》さらんと、|世界《せかい》の|人民《じんみん》|三分《さんぶ》になるぞよ。
(大正一二・四・二五 旧三・一〇 北村隆光再録)
第二一章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その二〔一五四六〕
明治三十二年…月…日
|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|出口《でぐち》|直《なほ》の|手《て》を|借《か》りて、|何彼《なにか》の|事《こと》を|知《し》らすぞよ。|今《いま》までは|世《よ》の|本《もと》の|神《かみ》を、|北《きた》の|隅《すみ》へ|押籠《おしこ》めておいて、|北《きた》を|悪《わる》いと|世界《せかい》の|人民《じんみん》が|申《まを》してをりたが、|北《きた》は|根《ね》の|国《くに》、|元《もと》の|国《くに》であるから、|北《きた》が|一番《いちばん》に|善《よ》くなるぞよ。|力《ちから》のある|世《よ》の|本《もと》の|真正《まこと》の|水火神《いきがみ》は、|今《いま》までは|北《きた》の|極《はし》に|落《お》とされて、|神《かみ》の|光《ひかり》を|隠《かく》して|居《を》りたから、|此《この》|世《よ》は|全然《さつぱり》|暗黒《くらがり》でありたから、|世界《せかい》の|人民《じんみん》の|思《おも》ふ|事《こと》は、|一《ひと》つも|成就《じやうじゆ》いたさなんだのであるぞよ。|是《これ》に|気《き》のつく|神《かみ》も、|人民《じんみん》も、|守護神《しゆごじん》も|無《な》かりたぞよ。
|人民《じんみん》は|北《きた》が|光《ひか》ると|申《まを》して、|不思議《ふしぎ》がりて、いろいろと|学《がく》や|知識《ちしき》で|考《かんが》へてをりたが、|誠《まこと》の|神々《かみがみ》が|一所《ひととこ》に|集《よ》りて、|神力《しんりき》の|光《ひか》りを|現《あら》はしてをると|申《まを》す|事《こと》を|知《し》らなんだぞよ。モウ|是《これ》からは、|世《よ》に|落《お》とされて|居《を》りた|活神《いきがみ》の|光《ひか》りが|出《で》て、|日《ひ》の|出《で》の|守護《しゆご》となるから、|其処辺中《そこらぢう》が|光《ひか》り|輝《かがや》いて、|眩《まぶ》うて|目《め》を|明《あ》けて|居《を》れんやうに、|明《あき》らかな|神世《かみよ》になるぞよ。
|今《いま》までの|夜《よる》の|守護《しゆご》の|世界《せかい》は、|明《あけ》の|烏《からす》となりて|来《き》て、|夜《よ》が|明《あ》けるから、それまでに|改信《かいしん》を|致《いた》して、|身霊《みたま》を|研《みが》いて|水晶魂《すゐしやうだま》に|立復《たちかへ》りてをらんと、ヂリヂリ|悶《もだ》える|事《こと》が|出来《しゆつたい》|致《いた》すから、|今年《ことし》で|八年《はちねん》の|間《あひだ》、|神《かみ》は|気《き》を|附《つ》けたなれど、あまり|世界《せかい》の|人民《じんみん》の|心《こころ》の|曇《くも》りがきつきゆゑに、|何《なに》を|言《い》ふて|聞《き》かしても、|筆先《ふでさき》に|書《か》いて|見《み》せても|誠《まこと》にいたさぬから、|出口《でぐち》|直《なほ》は|日々《にちにち》|咽喉《のど》から|血《ち》を|吐《は》くやうな|思《おも》ひを|致《いた》して、|世界《せかい》の|為《ため》に|苦労《くらう》を|致《いた》してをるのを、|見《み》てをる|艮《うしとら》の|金神《こんじん》も|辛《つら》いぞよ。|胸《むね》に|焼鉄《やきがね》あてるごとく、|一人《ひとり》|苦《くる》しみて|居《を》るぞよ。
|人民《じんみん》は|万物《ばんぶつ》の|長《ちやう》とも|申《まを》して、|豪《えら》さうに|致《いた》して|居《を》るでは|無《な》いか。|鳥《とり》|獣《けだもの》でも、|三日先《みつかさき》の|事《こと》ぐらゐは|知《し》りてをるのに、|人民《じんみん》は|一寸先《いつすんさき》が|見《み》えぬ|所《ところ》まで|曇《くも》りてをるから、|脚下《あしもと》へ|火《ひ》が|燃《も》えて|来《き》て|居《を》りても、|未《ま》だ|気《き》が|附《つ》かぬぞよ。ようも|是《これ》だけ|人民《じんみん》の|霊魂《みたま》も、|曇《くも》りたものであるぞよ。|障子《しやうじ》|一枚《いちまい》ままならぬ|所《とこ》まで|精神《せいしん》を|汚《よご》しておいて、|何《なに》も|判《わか》らぬ|癖《くせ》に|神《かみ》を|下《した》に|見降《みくだ》して|居《を》る、|人民《じんみん》の|中《なか》の|鼻高《はなだか》が、|上《うへ》へのぼりて|此《この》|世《よ》の|守護《しゆご》をいたしても、|一《ひと》つも|思《おも》ふやうに|行《ゆ》きはいたさんぞよ。|此《この》|世《よ》は、|元《もと》の|生神《いきがみ》の|守護《しゆご》が|無《な》かりたら、|何《なに》|程《ほど》|知識《ちゑ》や|学《がく》で|考《かんが》へても、|何時《いつ》までも|世界《せかい》は|治《をさ》まらんぞよ。|一日《いちにち》も|速《はや》く|往生《わうじやう》|致《いた》して、|神《かみ》の|申《まを》すやうに|致《いた》さねば|世界《せかい》の|人民《じんみん》が|可哀相《かあいさう》で、|神《かみ》が|黙《だま》つて|見《み》て|居《を》れんから、|今度《こんど》は|北《きた》から|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|現《あら》はれて、|世界《せかい》を|水晶《すゐしやう》の|世《よ》にいたして、|善《ぜん》と|悪《あく》とを|立別《たてわ》けて、|善悪《ぜんあく》の|懲戒《みせしめ》を|明白《ありやか》にいたして、|世界《せかい》の|人民《じんみん》を|改信《かいしん》させて、|万古末代《まんごまつだい》|動《うご》きの|取《と》れん、|善一筋《ぜんひとすぢ》の|世《よ》の|持方《もちかた》を|致《いた》すから、|是《これ》までの|世《よ》とは|打《う》つて|変《かは》りての|善《よ》き|世《よ》といたして、|神《かみ》も|仏《ほとけ》も|人民《じんみん》も、|勇《いさ》んで|暮《くら》す|松《まつ》の|世《よ》、|神世《かみよ》といたして、|天《てん》の|大神様《おほかみさま》へ|御目《おんめ》に|掛《か》けるのであるぞよ。それまでに|一《ひと》つ|大峠《おほたうげ》があるから、|人民《じんみん》は|速《はや》く|改信《かいしん》いたして、|神心《かみごころ》に|立還《たちかへ》りて|下《くだ》されよ。|神《かみ》は|世界《せかい》を|助《たす》けたさの、|永《なが》い|間《あひだ》の|苦労《くらう》であるぞよ。|昔《むかし》の|神世《かみよ》に|立替《たてか》へる|時節《じせつ》が|来《き》たぞよ。
|今《いま》までは|日没《ひのくれ》が|悪《わる》いと|申《まを》したが、|世《よ》が|代《かは》ると|日没《ひのくれ》が|一番《いちばん》|善《よ》くなるぞよ。|日没《ひのくれ》に|始《はじ》めた|事《こと》は、|是《これ》から|先《さき》の|世《よ》は、|何事《なにごと》も|善《よ》き|事《こと》なれば|成就《じやうじゆ》いたすぞよ。それも|神《かみ》をそつち|除《の》けにいたしたら、|物事《ものごと》|一《ひと》つも|成就《じやうじゆ》いたさぬ|世《よ》に|変《か》はるから、|何《なに》よりも|改信《かいしん》|致《いた》して、|霊魂《みたま》を|研《みが》くが|一等《いつとう》であるぞよ。|時節《じせつ》が|来《き》たぞよ。モウ|間《ま》が|無《な》いぞよ。
明治三十二年旧七月一日
|竜門《りうもん》の|宝《たから》を|艮《うしとら》の|金神《こんじん》がお|預《あづ》かり|申《まを》すぞよ。|竜門《りうもん》には|宝《たから》は|何《なに》|程《ほど》でも|貯《たくは》へてあるぞよ。|岩戸開《いはとびら》きが|済《す》みて|立直《たてなほ》しの|段《だん》になりたら、|間《ま》に|合《あ》ふ|宝《たから》であるぞよ。|昔《むかし》から|此《この》|乱《みだ》れた|世《よ》が|来《く》るから、|隠《かく》してありたのぢやぞよ。|御安心《ごあんしん》なされ。
|艮金神《うしとらのこんじん》|国常立尊《くにとこたちのみこと》が、|神功皇后殿《じんぐうくわうごうどの》と|出《で》て|参《まゐ》る|時節《じせつ》が|近《ちか》よりて|来《き》たぞよ。|此《この》|事《こと》が|天晴《あつぱ》れ|表《おもて》に|現《あら》はれると、|世界《せかい》|一度《いちど》に|動《うご》くぞよ。モウ|水《みづ》も|漏《もら》さぬ|経綸《しぐみ》がいたしてあるぞよ。|開《あ》いた|口《くち》が|塞《ふさ》がらぬ、|牛糞《うしくそ》が|天下《てんか》を|取《と》るぞよ。|珍《めづら》しい|事《こと》が|出来《でき》るぞよ。アンナものがコンナものに|成《な》りたと、|世界《せかい》の|人民《じんみん》に|改信《かいしん》|致《いた》させる|仕組《しぐみ》であるから、チト|大事業《たいもう》であれども、|成就《じやうじゆ》いたさして、|天地《てんち》の|大神《おほかみ》へ|御目《おんめ》に|掛《か》けるから、|艮《うしとら》の|金神《こんじん》はカラ|天竺《てんぢく》までも|鼻《はな》が|届《とど》くぞよ。
この|仕組《しぐみ》は|永《なが》らく|世《よ》に|落《お》ちて|居《を》りての、|艮《うしとら》の|金神《こんじん》の|経綸《しぐみ》であるから、|神々《かみがみ》にも|御存知《ごぞんぢ》ない|事《こと》があるから、|人民《じんみん》は|実地《じつち》が|出《で》て|来《く》るまではヨウ|承知《しようち》を|致《いた》さんぞよ。|是《これ》でも|解《わ》けて|見《み》せてやるぞよ。
|今度《こんど》の|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびらき》は、|因縁《いんねん》のある|身霊《みたま》でないと、|御用《ごよう》には|使《つか》はんぞよ。|神《かみ》の|御役《おやく》に|立《た》てるのは|水晶魂《すゐしやうだま》の|選抜《よりぬき》ばかり、|神《かみ》が|綱《つな》を|掛《か》けて|御用《ごよう》を|致《いた》さすのであるから、|今《いま》まで|世《よ》に|出《で》て|居《を》れた|守護神《しゆごじん》は、|思《おも》ひが|大分《だいぶ》|違《ちが》ふぞよ。|是《これ》も|時節《じせつ》であるぞよ。|時節《じせつ》には|何《なに》も|敵《かな》はんぞよ。|上下《うへした》にかへるぞよ。
|艮金神《うしとらのこんじん》|国常立尊《くにとこたちのみこと》の|三千年《さんぜんねん》の|経綸《しぐみ》は、|根本《こつぽん》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きであるから、|悪《あく》の|霊魂《みたま》を|往生《わうじやう》さして、|万古末代《まんごまつだい》|善《ぜん》|一《ひと》つの|世《よ》にいたすのであるから、|神《かみ》の|国《くに》に|只《ただ》の|一輪《いちりん》|咲《さ》いた|誠《まこと》の|梅《うめ》の|花《はな》の|仕組《しぐみ》で、|木花咲哉姫《このはなさくやひめ》の|霊魂《みたま》の|御加護《おてつだひ》で、|彦火々出見尊《ひこほほでみのみこと》とが、|守護《しゆご》を|遊《あそ》ばす|時節《じせつ》が|参《まゐ》りたから、モウ|大丈夫《だいぢやうぶ》であるぞよ。|梅《うめ》で|開《ひら》いて|松《まつ》で|治《をさ》める、|竹《たけ》は|邪神《あくがみ》の|守護《しゆご》であるぞよ。この|経綸《しぐみ》を|間違《まちが》はしたら、モウこの|先《さき》はどうしても、|世《よ》が|立《た》ちては|行《ゆ》かんから、|神《かみ》が|執念《くど》う|気《き》を|付《つ》けておくぞよ。
|明治《めいぢ》|二十八年《にじふはちねん》から、|三体《さんたい》の|大神《おほかみ》が|地《ち》に|降《くだ》りて|御守護《ごしゆご》|遊《あそ》ばすと、|世界《せかい》は|一度《いちど》に|夜《よ》が|明《あ》けるから、|三人《さんにん》の|霊魂《みたま》を|神《かみ》が|使《つか》ふて、|三人《さんにん》|世《よ》の|元《もと》と|致《いた》して、|珍《めづら》しき|事《こと》を|致《いた》さすぞよ。
いろは|四十八文字《しじふはちもじ》で、|世《よ》を|新《さら》つに|致《いた》すぞよ。|此《この》|中《なか》に|居《を》る|肝腎《かんじん》の|人《ひと》に、|神《かみ》の|経綸《しぐみ》が|解《わか》りて|来《き》て|改信《かいしん》が|出来《でき》たら、|世界《せかい》に|撒配《まくば》りてある|身霊《みたま》を、この|大本《おほもと》へ|引寄《ひきよ》せて、|神《かみ》の|御用《ごよう》を|致《いた》さすから、|左程《さほど》|骨《ほね》を|折《を》らいでも|経綸《しぐみ》は|成就《じやうじゆ》いたすから、|何事《なにごと》も|神《かみ》の|申《まを》す|様《さま》にして|居《を》りて|下《くだ》されよ。|今度《こんど》の|事《こと》は|知識《ちゑ》や|学《がく》では|到底《たうてい》いかんから、|神《かみ》の|申《まを》す|事《こと》を|素直《すなほ》に|聞《き》いて|下《くだ》さる|身魂《みたま》でないと、|神界《しんかい》の|御用《ごよう》には|使《つか》はんぞよ。この|大本《おほもと》は|外《ほか》の|教会《けうくわい》のやうに、|人《ひと》を|多勢《おほぜい》|寄《よ》せて、それで|結構《けつこう》と|申《まを》すやうな|所《とこ》でないから、|人《ひと》を|引張《ひつぱ》りには|行《い》つて|下《くだ》さるなよ。|因縁《いんねん》ある|身魂《みたま》を|神《かみ》が|引寄《ひきよ》せて、|夫《そ》れぞれに|御用《ごよう》を|申《まを》し|附《つ》けるのであるぞよ。
|大本《おほもと》の|経綸《しぐみ》は|病気直《びやうきなほ》しで|無《な》いぞよ。|神《かみ》から|頂《いただ》いた|結構《けつこう》な|身魂《みたま》を、|悪《あく》の|霊魂《みたま》に|汚《けが》されて|了《しま》ふて、|肉体《にくたい》まで|病魔《やまひ》の|容器《いれもの》になりて、|元《もと》の|大神《おほかみ》に|大変《たいへん》な|不孝《ふかう》をかけて|居《を》る|人民《じんみん》が|病神《やまひがみ》に|憑《つ》かれて|居《を》るのであるから、|素《もと》の|水晶魂《すゐしやうだま》に|捻《ね》じ|直《なほ》して、チツトでも|霊魂《みたま》が|光《ひか》り|出《だ》したら、|病神《やまひがみ》は|恐《こは》がりて|逃《に》げて|了《しま》ふぞよ。この|大本《おほもと》は|医者《いしや》や|按摩《あんま》の|真似《まね》は|為《さ》さんぞよ。|取次《とりつ》ぎの|中《なか》には、この|結構《けつこう》な|三千世界《さんぜんせかい》の|経綸《しぐみ》を|取違《とりちが》ひ|致《いた》して、|病直《やまひなほ》しに|無茶苦茶《むちやくちや》に|骨《ほね》を|折《を》りて、|肝腎《かんじん》の|神《かみ》の|教《をしへ》を|忘《わす》れて|居《を》る|取次《とりつぎ》が|多数《たつぴつ》あるが、|今《いま》までは|神《かみ》は|見《み》て|見《み》ん|振《ふ》りを|致《いた》して|来《き》たが、モウ|天《てん》から|何彼《なにか》の|時節《じせつ》が|参《まゐ》りて|来《き》たから、|今《いま》までのやうな|事《こと》はさしてはおかんから、|各自《めんめ》に|心得《こころえ》て|下《くだ》されよ。|是《これ》ほど|事解《ことわ》けて|申《まを》す|神《かみ》の|言葉《ことば》を|反古《ほうぐ》に|致《いた》したら、|已《や》むを|得《え》ず|気《き》の|毒《どく》でも、|天《てん》の|規則《きそく》に|照《て》らして|懲戒《いましめ》を|致《いた》すぞよ。
|今《いま》の|神《かみ》の|取次《とりつぎ》は、|誠《まこと》と|言《い》ふ|事《こと》がチツトも|無《な》いから、|吾《われ》の|目的《もくてき》ばかり|致《いた》して、|神《かみ》を|松魚節《かつぶし》に|致《いた》して、|却《かへ》つて|神《かみ》の|名《な》を|汚《けが》して|居《を》る、|天《てん》の|罪人《とがにん》に|成《な》りて|居《を》るぞよ。|大本《おほもと》の|取次《とりつぎ》する|人民《じんみん》は、その|覚悟《かくご》で|居《を》らんと、|世界《せかい》から|出《で》て|来《き》だすから|恥《は》づかしくなりて、|大本《おほもと》へは|早速《さつそく》に|寄《よ》せて|貰《もら》へん|事《こと》が|出来《しゆつたい》いたすから、|永《なが》らく|神《かみ》が|出口《でぐち》に|気《き》を|付《つ》けさしたぞよ。モウ|改信《かいしん》の|間《ま》が|無《な》いぞよ。|神《かみ》はチツとも|困《こま》らねど、|取次《とりつぎ》が|可愛相《かはいさう》なから。
|艮金神《うしとらのこんじん》が|表《おもて》になると、|一番《いちばん》に|悪所遊《あくしよあそ》びを|止《や》めさすぞよ。|賭博《ばくち》も|打《う》たさんぞよ。|家《いへ》の|戸締《とじま》りも|為《せ》いでもよきやうに|致《いた》して、|人民《じんみん》を|穏《おだや》かに|致《いた》さして、|喧嘩《けんくわ》も|無《な》き|結構《けつこう》な|神世《かみよ》に|致《いた》して、|天地《てんち》の|神々様《かみがみさま》へ|御目《おんめ》に|掛《か》けて、|末代《まつだい》|続《つづ》かす|松《まつ》の|世《よ》と|致《いた》すぞよ。
明治三十三年旧五月五日
|今《いま》の|世界《せかい》の|人民《じんみん》は、|服装《みなり》ばかりを|立派《りつぱ》に|飾《かざ》りて、|上《うへ》から|見《み》れば|結構《けつこう》な|人民《じんみん》で、|神《かみ》も|叶《かな》はんやうに|見《み》えるなれど、|世《よ》の|元《もと》を|創造《こしら》へた|誠《まこと》の|神《かみ》の|眼《め》から|見《み》れば、|全然《さつぱり》|悪神《あくがみ》の|守護《しゆご》となりて|居《を》るから、|頭《かしら》に|角《つの》が|生《は》えたり、|尻《しり》に|尾《を》が|出来《でき》たり、|無暗《むやみ》に|鼻《はな》ばかり|高《たか》い|化物《ばけもの》の|覇張《はば》る、|暗黒《やみくも》の|世《よ》になりてをるぞよ。|虎《とら》や|狼《おほかみ》は|吾《われ》の|食物《たべもの》さへありたら、|誠《まこと》に|温順《おとな》しいなれど、|人民《じんみん》は|虎《とら》|狼《おほかみ》よりも|悪《あく》が|強《つよ》いから、|慾《よく》に|限《き》りが|無《な》いから、なんぼ|物《もの》が|有《あ》りても、|満足《たんのう》といふ|事《こと》を|致《いた》さん、|惨酷《むご》い|精神《こころ》に|成《な》りて|了《しま》ふて、|鬼《おに》か|大蛇《をろち》の|精神《こころ》になりて、|人《ひと》の|国《くに》を|奪《と》つたり、|人《ひと》の|物《もの》を|無理《むり》しても|強奪《ひつた》くりたがる、|悪道《あくだう》な|世《よ》に|成《な》りてをるぞよ。|是《これ》も|皆《みな》|悪神《あくがみ》の|霊《れい》の|所行《しわざ》であるぞよ。
モウ|是《これ》からは|改信《かいしん》を|致《いた》さんと、|艮金神《うしとらのこんじん》が|現《あら》はれると、|厳《きび》しうなるから、|今《いま》までのやうな|悪《あく》のやりかたは、|何時《いつ》までもさしてはおかんぞよ。|善《よ》し|悪《わる》しの|懲戒《みせしめ》は、|覿面《てきめん》に|致《いた》すぞよ。|今《いま》まで|好《す》きすつ|法《ぱふ》、|仕放題《しはうだい》の|利己主義《われよし》の|人民《じんみん》は、|辛《つら》くなるぞよ。|速《はや》く|改信《かいしん》|致《いた》さんと、|大地《だいち》の|上《うへ》には|置《お》いて|貰《もら》へん|事《こと》に、|変《か》はりて|来《く》るから、|神《かみ》が|執念《くどう》|気《き》を|附《つ》けるなれど、|知恵《ちゑ》と|学《がく》とで|出来《でき》た、|今《いま》の|世《よ》の|人民《じんみん》の|耳《みみ》には、|這入《はいり》かけが|致《いた》さんぞよ。|一度《いちど》に|岩戸開《いはとびら》きを|致《いた》せば、|世界《せかい》に|大変《たいへん》が|起《お》こるから、|時日《ひにち》を|延《の》ばして、|一人《ひとり》なりとも|余計《よけい》に|改信《かいしん》さして、|助《たす》けてやりたいと|思《おも》へども、どの|様《やう》に|申《まを》しても、|今《いま》の|人民《じんみん》は|聞入《ききい》れんから、|世界《せかい》に|何事《なにごと》が|出来《しゆつたい》|致《いた》しても、|神《かみ》はモウ|高座《たかみ》から|見物《けんぶつ》いたすから、|神《かみ》を|恨《うら》めて|下《くだ》さるなよ。|世界《せかい》の|神々様《かみがみさま》|守護神殿《しゆごじんどの》、|人民《じんみん》に|気《き》を|附《つ》けるぞよ。
|無間《むげん》の|鐘《かね》を|打鳴《うちな》らして、|昔《むかし》の|神《かみ》が|世界《せかい》の|人民《じんみん》に|知《し》らせども、|盲目《めくら》と|聾者《つんぼ》との|暗黒《やみくも》の|世《よ》であるから、|神《かみ》の|誠《まこと》の|教《をしへ》は|耳《みみ》へ|這入《はい》らず、|獣《けもの》の|真似《まね》を|致《いた》して、|牛馬《うしうま》の|肉《にく》を|喰《くら》ひ、|一《いち》も|金銀《かね》、|二《に》も|金銀《かね》と|申《まを》して、|金銀《かね》でなけら|世《よ》が|治《をさ》まらん、|人民《じんみん》は|生命《いのち》が|保《たも》てんやうに|取違《とりちが》ひ|致《いた》したり、|人《ひと》の|国《くに》であらうが、|人《ひと》の|物《もの》であらうが、|隙間《すきま》さへありたら|略取《とる》ことを|考《かんが》へたり、|学《がく》さへ|有《あ》りたら、|世界《せかい》は|自由自在《じいうじざい》になるやうに|思《おも》ふて、|物質上《ぶつしつじやう》の|学《がく》に|深《ふか》はまり|致《いた》したり、|女《をんな》と|見《み》れば|何人《なんにん》でも|手《て》にかけ、|妾《めかけ》や|足懸《あしかけ》を|沢山《たくさん》に|抱《かか》へて、|開《ひら》けた|人民《じんみん》の|行《や》り|方《かた》と|考《かんが》へたり、|恥《はぢ》も|畏《おそ》れも|知《し》らぬばかりか、|他人《ひと》はどんな|難儀《なんぎ》を|致《いた》して|居《を》りても、|見《み》て|見《み》ん|振《ふ》りをいたして、|吾《わ》が|身《み》さへ|都合《つがふ》が|善《よ》ければ|宜《よ》いと|申《まを》して、|水晶魂《すゐしやうだま》を|悪神《あくがみ》へ|引抜《ひきぬ》かれて|了《しま》ふたり、|徴兵《ちようへい》を|免《のが》れようとして、|神《かみ》や|仏事《ぶつじ》に|願《ぐわん》をかける|人民《じんみん》、|多数《たつぴつ》に|出来《でき》て、|国《くに》の|事《こと》ども|一《ひと》つも|思《おも》はず、|国《くに》を|奪《と》られても|別《べつ》に|何《なん》とも|思《おも》はず、|心配《しんぱい》も|致《いた》さぬ|人民《じんみん》ばかりで、|此《この》|先《さき》はどうして|世《よ》が|立《た》ちて|行《ゆ》くと|思《おも》ふて|居《を》るか、|判《わか》らんと|申《まを》しても|余《あま》りであるぞよ。
|病神《やまひがみ》がそこら|一面《いちめん》に|覇《は》を|利《き》かして、|人民《じんみん》を|残《のこ》らず|苦《くる》しめやうと|企《たく》みて、|人民《じんみん》のすきまをねらひ|詰《つ》めてをりても、|神《かみ》に|縋《すが》りて|助《たす》かる|事《こと》も|知《し》らずに、|毒《どく》にはなつても|薬《くすり》にはならぬものに、|沢山《たくさん》の|金《かね》を|出《だ》して、|長命《ながいき》の|出来《でき》る|身体《からだ》を、ワヤに|為《し》られてをりても、|夢《ゆめ》にも|悟《さと》らん|馬鹿《ばか》な|人民《じんみん》ばかりで、|水晶魂《すゐしやうだま》の|人民《じんみん》は、|指《ゆび》で|数《かぞ》へる|程《ほど》よりか|無《な》いとこまで、|世《よ》が|曇《くも》りて|来《き》てをりても、|何《ど》うも|此《こ》うも、|能《よ》う|致《いた》さんやうに|成《な》りてをるくせに、|弱肉強食《つよいものがち》の|世《よ》の|行《や》り|方《かた》を|致《いた》して、|是《これ》より|外《ほか》に|結構《けつこう》な|世《よ》の|治方《もちかた》は|無《な》いと|申《まを》してをるぞよ。
|今《いま》の|世《よ》の|上《かみ》に|立《た》ちてをりて、|今《いま》までけつこうに|暮《くら》して|居《を》りて、|神《かみ》の|御恩《ごおん》といふ|事《こと》を|知《し》らずに、|口先《くちさき》ばかり|立派《りつぱ》に|申《まを》してをりても、サア|今《いま》といふ|所《とこ》になりたら、|元来《もとから》|利己主義《われよし》の|守護神《しゆごじん》であるから、チリチリバラバラに、|逃《に》げて|了《しま》ふものばかりが|出《で》て|来《く》るぞよ。|今《いま》の|人民《じんみん》は、サツパリ|悪魔《あくま》の|精神《こころ》に|化《な》りて|居《を》るから、|何《なに》ほど|結構《けつこう》な|事《こと》を|申《まを》して|知《し》らしてやりても、|今《いま》の|今《いま》まで|改信《かいしん》を|能《よ》う|致《いた》さんやうに、|曇《くも》り|切《き》りて|了《しま》ふたから、|神《かみ》もモウ|声《こゑ》を|揚《あ》げて、|手《て》を|切《き》らな|仕様《しやう》が|無《な》いが、|是《これ》だけ|神《かみ》が|気《き》を|附《つ》けるのに|聞《き》かずにおいて、|後《あと》で|不足《ふそく》は|申《まを》して|下《くだ》さるなよ。|神《かみ》はモウ|一限《ひときり》に|致《いた》すぞよ。
|今《いま》の|人民《じんみん》は|悪《あく》が|強《つよ》いから、|心《こころ》からの|誠《まこと》といふ|事《こと》が|無《な》きやうになりて、|人《ひと》の|国《くに》まで|弱《よわ》いと|見《み》たら、|無理《むり》に|取《と》つて|了《しま》ふて、|取《と》られた|国《くに》の|人民《じんみん》は、|在《あ》るに|在《あ》られん|目《め》に|遭《あ》はされても、|何《なに》も|言《い》ふ|事《こと》は|出来《でき》ず。|同《おな》じ|神《かみ》の|子《こ》で|有《あ》りながら、あまり|非道《ひど》い|施政《やりかた》で、|畜生《ちくしやう》よりもモ|一《ひと》つ|惨《むご》いから、|神《かみ》が|今度《こんど》は|出《で》て、|世界《せかい》の|苦《くる》しむ|人民《じんみん》を|助《たす》けて、|世界中《せかいぢう》を|桝掛《ますか》け|曳《ひ》きならすのであるぞよ。
|今《いま》の|人民《じんみん》は|段々《だんだん》|世《よ》が|迫《せま》りて|来《き》て、|食物《くひもの》に|困《こま》るやうになりたら、|人民《じんみん》を|餌食《ゑじき》に|致《いた》してでも、|徹底的《とことん》|行《や》り|抜《ぬ》くといふ|深《ふか》い|仕組《しぐみ》を|致《いた》して、|神《かみ》の|国《くに》を|取《と》らうと|致《いた》して、|永《なが》らくの|仕組《しぐみ》をして|居《を》るから、|余程《よほど》|確《しつか》りと|腹帯《はらおび》を|締《し》めて|居《を》らんと、|末代《まつだい》|取戻《とりもど》しの|成《な》らん|事《こと》が|出来《しゆつたい》して、|天地《てんち》の|神々様《かみがみさま》へ、|申訳《まをしわけ》の|無《な》き|事《こと》になるから、|艮《うしとら》の|金神《こんじん》が|三千年《さんぜんねん》|余《あま》りて、|世《よ》に|落《お》ちて|居《を》りて、|蔭《かげ》から|世界《せかい》を|潰《つぶ》さんやうに|辛《つら》い|行《ぎやう》をいたして、|経綸《しぐみ》をいたしたので、モウ|水《みづ》も|漏《も》らさんやうに|致《いた》してあるなれど、|神《かみ》は|其《その》|儘《まま》では|何《なに》も|出来《でき》んから、|因縁《いんねん》ある|身魂《みたま》を|引《ひ》きよせて、|懸《かか》りて|此《この》|世《よ》の|守護《しゆご》をいたすのであるから、|中々《なかなか》|大事業《たいもう》であれど、|時節《じせつ》|参《まゐ》りて、|変性男子《へんじやうなんし》と|変性女子《へんじやうによし》の|身魂《みたま》が、|揃《そろ》ふて|守護《しゆご》があり|出《だ》したから、いろは|四十八文字《しじふはちもじ》の|霊魂《みたま》を、|世界《せかい》の|大本《おほもと》、|綾部《あやべ》の|竜宮館《りうぐうやかた》にボツボツと|引《ひ》き|寄《よ》せて、|神《かみ》がそれぞれ|御用《ごよう》を|申《まを》し|付《つ》けるから、|素直《すなほ》に|聞《き》いて|下《くだ》さる|人民《じんみん》が|揃《そろ》ふたら、|三千年《さんぜんねん》|余《あま》りての|仕組《しぐみ》が、|一度《いちど》に|実現《なり》て|来《き》て|一度《いちど》に|開《ひら》く|梅《うめ》の|花《はな》、|万古末代《まんごまつだい》|萎《しほ》れぬ|花《はな》が|咲《さ》いて、|三千世界《さんぜんせかい》は|勇《いさ》んで|暮《くら》す|神国《しんこく》になるぞよ。
|人民《じんみん》の|天《てん》からの|御用《ごよう》は、|三千世界《さんぜんせかい》を|治《をさ》め、|神《かみ》の|手足《てあし》となりて、|吾《わ》が|身《み》を|捨《す》てて、|神《かみ》の|御用《ごよう》を|致《いた》さな|成《な》らぬのであるから、|悪《あく》には|従《したが》はれぬ、|尊《たふと》い|身魂《みたま》であるのに、|今《いま》の|世界《せかい》の|人民《じんみん》は、|皆《みな》|大《おほ》きな|取違《とりちが》ひを|致《いた》してをるぞよ。
明治三十四年旧三月七日
|元伊勢《もといせ》のうぶだらひと、|産釜《うぶがま》の|水晶《すゐしやう》の|御水《おみづ》は、|昔《むかし》から|傍《そば》へも|行《ゆ》かれん|尊《たふと》い|清《きよ》き|産水《うぶみづ》でありたなれど、|今度《こんど》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きについて、|因縁《いんねん》のある|霊魂《みたま》に|御用《ごよう》をさして、|世《よ》を|立直《たてなほ》すには、|昔《むかし》の|元《もと》の|水晶《すゐしやう》の|変《か》はらん|水《みづ》を|汲《と》りに|遣《や》らしてあるぞよ。|艮金神《うしとらのこんじん》の|指図《さしづ》でないと、この|水《みづ》は|滅多《めつた》に|汲《と》りには|行《ゆ》けんのであるぞよ。|神《かみ》が|許可《ゆるし》を|出《だ》したら、|何処《どこ》からも|指《ゆび》|一本《いつぽん》|触《さへ》る|者《もの》もないぞよ。
|今度《こんど》の|元伊勢《もといせ》の|御用《ごよう》は、|世界《せかい》を|一《ひと》つに|致《いた》す|経綸《しぐみ》の|御用《ごよう》であるぞよ。もう|一度《いちど》|出雲《いづも》へ|行《い》て|下《くだ》されたら、|出雲《いづも》の|御用《ごよう》を|出来《しゆつたい》さして、|天《てん》も|地《ち》も|世界《せかい》を|平均《なら》すぞよ。この|御用《ごよう》を|済《す》まして|下《くだ》さらんと、|今度《こんど》の|御用《ごよう》は|分明《わかり》かけが|致《いた》さんぞよ。|解《わか》りかけたらば|速《はや》いぞよ。|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きは|水《みづ》の|守護《しゆご》と|火《ひ》の|守護《しゆご》とで|致《いた》すぞよ。|岩戸開《いはとびら》きを|致《いた》すと|申《まを》して|居《を》りても、|如何《どう》したら|世《よ》が|変《か》はるといふ|事《こと》は、|世《よ》に|出《で》て|御出《おい》でる|神様《かみさま》も|御存知《ごぞんぢ》はないぞよ。|肝腎《かんじん》の|仕組《しぐみ》は|今《いま》の|今《いま》まで|申《まを》さぬと|出口《でぐち》に|申《まを》してあるぞよ。まだまだ|在《あ》るぞよ。
|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きといふやうな|大望《たいもう》な|事《こと》には、|誰《たれ》にも|言《い》はれん|事《こと》があるのぢやが、その|御用《ごよう》は|出口《でぐち》でないと|出来《でき》んぞよ。|今度《こんど》の|御用《ごよう》をさす|為《ため》に、|昔《むかし》から|生代《いきか》はり|死代《しにか》はり、|苦労《くらう》ばかりが|為《さ》して|在《あ》りた、|変性男子《へんじやうなんし》の|身魂《みたま》であるぞよ。この|変性男子《へんじやうなんし》が|現《あら》はれんと|世界《せかい》の|事《こと》が|出《で》て|来《こ》んぞよ。
|神柱会開《こくくわいびら》きは|人民《じんみん》が|何時《いつ》まで|掛《かか》りても|開《ひら》けんと|申《まを》してあるぞよ。|神《かみ》が|開《ひら》いて|見《み》せると|申《まを》して、|先《さき》に|筆先《ふでさき》に|出《だ》してあらうがな。|時節《じせつ》が|近寄《ちかよ》りたぞよ。
|世界《せかい》|一度《いちど》に|開《ひら》くぞよ。|一度《いちど》に|開《ひら》く|梅《うめ》の|花《はな》、|金神《こんじん》の|世《よ》に|致《いた》して|早《はや》く|岩戸開《いはとびら》きをいたさんと、|悪《わる》く|申《まを》すでなけれども、|此《この》|世《よ》は|此《こ》の|先《さき》は|如何《どう》なるかといふ|事《こと》を、|御存知《ごぞんぢ》の|無《な》い|神《かみ》ばかりであるぞよ。
(大正一二・四・二五 旧三・一〇 北村隆光再録)
第二二章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その三〔一五四七〕
明治三十四年旧六月三日
|斯世《このよ》の|行《ゆ》く|先《さき》の|解《わか》るのは、|綾部《あやべ》の|大本《おほもと》の|竜門館《りうもんやかた》でないと、なんぼ|知識《ちゑ》で|考《かんが》へても、|何《なに》ほど|学《がく》がありたとて、|学《がく》があるほど|利口《りこう》が|出《で》て、|解《わか》りは|致《いた》さんぞよ。|永《なが》くかかりて|仕組《しぐ》んだ|此《こ》の|大望《たいもう》、|解《わか》りかけたら|速《はや》いから、|改信《かいしん》が|一等《いつとう》であるぞよ。|変性男子《へんじやうなんし》の|因縁《いんねん》の|解《わか》る|世《よ》が|参《まゐ》りて|来《き》たから、|世界《せかい》にある|事《こと》を|先繰《せんぐり》に、|前途《さき》の|事《こと》を|知《し》らせる|御役《おんやく》であるぞよ。|今度《こんど》は|世《よ》に|落《お》ちておいでる|神々《かみがみ》を、|皆《みな》|世《よ》に|上《あ》げねばならん|御役《おやく》であるから、|順《じゆん》に|御上《おあが》りに|成《な》るぞよ。
それについては|世《よ》に|出《で》て|御《お》いでます|万《よろづ》の|神様《かみさま》に、|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から|申《まを》し|付《つ》けてあるが、|是《これ》までのやうな|世《よ》の|持方《もちかた》では|行《ゆ》けんから、|岩戸《いはと》を|開《ひら》くについては、|高処《たかみ》から|見物《けんぶつ》では|可《い》けませんぞえと|申《まを》しておいたが、|時節《じせつ》が|参《まゐ》りたから、|一旦《いつたん》は|世界《せかい》に|言《い》ふに|言《い》はれん|事《こと》が|出来《しゆつたい》いたすぞよ。
明治三十五年旧七月十一日
|永《なが》らく|筆先《ふでさき》に|出《だ》して|知《し》らしてやりても、|今《いま》の|人民《じんみん》は|疑《うたが》ひ|強《つよ》きゆゑに|真《まこと》に|致《いた》さぬから、|此《この》|中《なか》に|実地《じつち》を|為《し》て|見《み》せてあるから、よく|見《み》ておかんと、|肝腎《かんじん》の|折《を》りに|何《なに》も|咄《はな》しが|無《な》いぞよ。|霊魂《みたま》の|調査《あらため》いたして、|因縁《いんねん》ある|身魂《みたま》を|引寄《ひきよ》して|御用《ごよう》に|使《つか》ふと|申《まを》して、|筆先《ふでさき》に|出《だ》してあらうがな。
|今度《こんど》の|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびらき》と|申《まを》すのは、|天《あま》の|岩戸《いはと》を|閉《し》める|役《やく》と、|開《ひら》く|役《やく》とが|出来《でき》るのであるが、|神《かみ》の|差添《さしぞへ》の|種《たね》は、|自己《われ》が|充分《じうぶん》|苦労《くらう》をして|人《ひと》を|助《たす》ける|心《こころ》でないと、|天地《てんち》の|岩戸《いはと》はなかなか|開《ひら》けんぞよ。|差添《さしぞへ》の|種《たね》になるのは、|二十五年《にじふごねん》からの|筆先《ふでさき》を|腹《はら》へ|締込《しめこ》みておいたら|宜《よ》いのであるぞよ。
|此《この》|中《うち》の|結構《けつこう》な|経綸《しぐみ》が|判《わか》りて|来《き》かけるほど、|世界《せかい》から|鼻高《はなだか》が|出《で》て|来《く》るから、|筆先《ふでさき》でどんな|弁解《べんかい》も|出来《でき》るやうに|書《か》かしてあるから、|調戯心《なぶりごころ》で|参《まゐ》りて|赤恥《あかはぢ》かいて|帰《かへ》るものも|出来《でき》るし、また|誠《まこと》で|出《で》て|来《く》るものもあるぞよ。|目的《もくてき》を|立《た》てやうと|思《おも》ふて|出《で》て|来《く》るものもあるし、|世間《せけん》に|解《わか》るほど|忙《せは》しくなるから、ここ|寂《さび》しく|致《いた》して、|誠《まこと》を|細《こま》かう|判《わか》るやうに|書《か》かしてあるから、|他《ほか》の|教会《けうくわい》とは|精神《せいしん》が|違《ちが》ふと|申《まを》すのぢやぞよ。
|世界《せかい》の|鏡《かがみ》の|出《で》る|所《とこ》であるから、|是《これ》まで|何《なに》|程《ほど》|言《い》ふて|聞《き》かしたとて、あまり|出口《でぐち》を|世《よ》に|墜《おと》して|御用《ごよう》が|為《さ》してありたから、|疑《うたが》ふ|者《もの》ばかりで、|此《この》|中《なか》の|行《おこな》ひがチツとも|出来《でき》んゆゑ、|誠《まこと》の|教《をしへ》も|未《ま》だ|今《いま》にさして|無《な》きやうな|事《こと》であるから、この|闇《やみ》の|世《よ》に|夜《よ》の|明《あ》ける|教《をしへ》を|致《いた》しても、|誰《たれ》も|真《まこと》に|致《いた》さねど、もう|夜《よ》の|明《あ》けるに|近《ちか》うなりたぞよ。
|夜《よ》が|明《あ》けると|神《かみ》の|教通《をしへどほ》りに|世界《せかい》から|何事《なにごと》も|出《で》て|来《く》るから、|世界《せかい》は|一旦《いつたん》は|悪《わる》なるから、|喜《よろこ》ぶものと|悲《かな》しむものとが|出来《でき》るから、|大本《おほもと》さへ|信神《しんじん》|致《いた》して|居《を》りたら、|善《よ》き|事《こと》が|出来《でき》るやうに|思《おも》ふて、|薩張《さつぱ》り|嘘《うそ》ぢやつたと|申《まを》してゐるなれど、|出口《でぐち》の|日々《にちにち》の|願《ねが》ひで、|大難《だいなん》を|小難《せうなん》にまつり|替《か》へたところで、|何《なん》なりと|神国《しんこく》の|中《なか》にも|夫々《それぞれ》の|見《み》せしめはあるぞよ。
|是《これ》から|先《さき》になりたら、|斯様《こん》な|事《こと》が|在《あ》るのに|何故《なぜ》|知《し》らせなんだと|小言《こごと》を|申《まを》すなり、|知《し》らせねば|不足《ふそく》を|申《まを》すであらうし、また|知《し》らせてやれば|色々《いろいろ》と|疑《うたが》うて|悪《わる》く|申《まを》すし、|人民《じんみん》の|心《こころ》が|薩張《さつぱ》り|覆《かへ》つてゐるから、|善《よ》き|事《こと》は|悪《わる》く|見《み》えるし、|悪《わる》きこと|致《いた》すものは|却《かへ》つて|今《いま》の|時節《じせつ》は|善《よ》く|見《み》えるが、|全然《さつぱり》|世《よ》が|逆《さか》さまであるぞよ。
|今《いま》の|世界《せかい》に|立《た》つ|人《ひと》は、|一《ひと》つも|誠《まこと》の|善《ぜん》の|事《こと》は|致《いた》して|居《を》らんぞよ。|艮金神《うしとらのこんじん》が|表《おもて》に|現《あら》はれて|世界《せかい》の|洗《あら》ひ|替《が》へをいたすから、|是《これ》からは|何事《なにごと》も|神《かみ》から|露見《あらは》れて|来《く》るぞよ。|今《いま》の|世界《せかい》の|落《お》ちてゐる|人民《じんみん》は、|高《たか》い|処《ところ》へ|土持《つちも》ちばかり|致《いた》して、|年《ねん》が|年中《ねんじう》|苦《くる》しみてゐるなり。|上《うへ》に|立《た》ちてゐる|神《かみ》は|悪《あく》の|守護《しゆご》であるから、|気儘放題《きままはうだい》|好《す》き|寸法《すつぱふ》。|強《つよ》い|者勝《ものが》ちの|世《よ》の|中《なか》でありたなれど|見《み》てござれよ、|是《これ》から|従来《これまで》の|行方《やりかた》を|根本《こつぽん》から|改正《かへ》さして|了《しま》ふて、|刷新《さらつ》の|世《よ》の|行方《やりかた》に|致《いた》すから、|今《いま》までに|上《かみ》に|立《た》ちて|居《を》りた|神《かみ》は|大分《だいぶ》|辛《つら》う|成《な》りて|来《く》るから、|初発《しよつぱつ》から|出口《でぐち》|直《なほ》の|手《て》と|口《くち》とを|藉《か》りて、|色々《いろいろ》と|世界《せかい》の|霊魂《みたま》に|申《まを》し|聞《き》かしたら、|近所《きんじよ》の|者《もの》が|驚《おどろ》いて、|出口《でぐち》を|警察《けいさつ》へ|連《つ》れ|参《まゐ》りたをりに、|警察《けいさつ》で|三千世界《さんぜんせかい》の|大気違《おほきちが》ひであると|申《まを》してあるぞよ。それでも|気違《きちが》ひが|何《なに》を|申《まを》すくらゐにより|取《と》りては|居《を》らんぞよ。|何《なん》でもない|手《て》に|合《あ》ふ|者《もの》ほか|能《よ》う|吟味《ぎんみ》を|致《いた》さんのか、モチト|大《おほ》きな|者《もの》を|吟味《ぎんみ》いたして|世《よ》の|潰《つぶ》れんやうに|致《いた》さねば、|此《この》|儘《まま》でおいたら、|警察《けいさつ》のいふことども|聞《き》く|者《もの》が|無《な》きやうになるぞよ。
|艮金神《うしとらのこんじん》が|現《あら》はれて|守護《しゆご》をしてやらねば、|神《かみ》の|国《くに》は|此《この》|状態《なり》で|置《お》いたら、|全部《さつぱり》|悪神《あくがみ》に|略取《とら》れて|了《しま》ふぞよ。|斯様《かやう》な|時節《じせつ》が|参《まゐ》りてゐるに、|上《かみ》に|立《た》ちてをる|守護神《しゆごじん》が|先《さき》が|解《わか》らんから、|岩戸《いはと》を|開《ひら》いて|先《さき》の|判《わか》る|世《よ》に|致《いた》すから、|自己《われ》の|心《こころ》から|発根《ほつごん》と|改信《かいしん》を|為《す》るやうになるぞよ。|艮金神《うしとらのこんじん》が|表《おもて》になると|物事《ものごと》|速《はや》いぞよ。
明治三十六年旧七月十三日
|悪神《あくがみ》の|国《くに》から|始《はじ》まりて、|大戦争《おほいくさ》があると|申《まを》してあるが、|彼方《あちら》には|深《ふか》い|大《おほ》きな|計画《たくみ》をいたして|居《を》るなれど、|表面《うへ》からは|一寸《ちよつと》も|見《み》えん、|艮金神《うしとらのこんじん》は|日《ひ》の|下《もと》に|経綸《しぐみ》が|致《いた》して|在《あ》るぞよ。|日《ひ》の|下《もと》は|神国《しんこく》で、|結構《けつこう》な|国《くに》ぢやといふ|事《こと》は|判《わか》りて|居《を》れど、|何《なに》を|申《まを》しても|国《くに》が|小《ちひ》さいので、|一呑《ひとのみ》に|為《し》てをるから、|今《いま》の|精神《せいしん》では、|戦争《たたかひ》が|始《はじ》まりたら、|神国魂《みくにだましひ》がちつとも|無《な》いから、|狼狽《うろたへ》て|了《しま》ふぞよ。|是《これ》から|段々《だんだん》と|世《よ》が|迫《せま》りて|来《き》て、|世界中《せかいぢう》の|大戦争《おほたたかひ》となりて、|窮極《とことん》まで|行《ゆ》くと、|悪魔《あくま》が|一《ひと》つになりて、|皆《みな》|攻《せ》めて|来《き》たをりには、とても|敵《かな》はんといふ|人民《じんみん》が、|神《かみ》から|見《み》ると|九分《くぶ》まであるが、|日《ひ》の|下《もと》はモウ|敵《かな》はんと|申《まを》すとこで、|神国魂《みくにだましひ》の|生神《いきがみ》の|本《もと》の|性来《しやうらい》を|出《だ》して|見《み》せてやると、|神国魂《みくにだましひ》は|胸《むね》に|詰《つま》りて|呑《の》めぬから、|悪神《あくがみ》の|守護神《しゆごじん》が、|元《もと》の|霊魂《みたま》の|力《ちから》はエライものぢや、|誠《まこと》ほど|恐《こは》いものは|無《な》いと|申《まを》して、|往生《わうじやう》するとこまで|神国《しんこく》の|人民《じんみん》は|堪忍《こばら》な、|今度《こんど》|悪神《あくがみ》が|強《つよ》いと|見《み》たら、|皆《みな》それへ|属《つ》いて|了《しま》ふから、ソコデ|此《こ》の|本《もと》に|仕組《しぐみ》てある|事《こと》を、|神国《しんこく》の|人民《じんみん》が|能《よ》く|腹《はら》へ|入《い》れて、|御用《ごよう》を|致《いた》さす|身霊《みたま》が|二三分《にさんぶ》|出来《でき》たら、そこで|昔《むかし》からの|経綸《しぐみ》の|神《かみ》が|現《あら》はれて、|世界《せかい》を|誠《まこと》|一《ひと》つの|神力《しんりき》で|往生《わうじやう》|致《いた》さして、|世界中《せかいぢう》の|安心《あんしん》が|出来《でき》るやうに|致《いた》して、|昔《むかし》の|元《もと》の|神代《かみよ》に|復《かへ》すぞよ。
|邪神《あくがみ》の|侵略主義《やりかた》はモウ|世《よ》が|終結《すみた》ぞよ。|何《なに》|程《ほど》|人民《じんみん》に|知恵《ちゑ》|学力《がくりき》が|在《あ》りても、|兵隊《へいたい》が|何《なに》|程《ほど》|沢山《たくさん》ありても、|今度《こんど》は|人民《じんみん》|同士《どうし》の|戦争《たたかひ》でありたら、|到底《たうてい》|敵《かな》はんなれど、|三千年《さんぜんねん》|余《あま》りての|経綸《しぐみ》の|時節《じせつ》が|来《き》たのであるから、|世界中《せかいぢう》から|攻《せ》めて|来《き》ても、|誠《まこと》には|敵《かな》はん|仕組《しぐみ》が|為《し》てあるなれど、|艮金神《うしとらのこんじん》、|竜宮乙姫《りうぐうのおとひめ》どの、|日出《ひので》の|神《かみ》が|表《あら》はれんと、そこまでの|神力《しんりき》は|見《み》せんから、この|大本《おほもと》には|揃《そろ》ふて|神力《しんりき》を|積《つ》みておかんと、|如何為様《どうしやう》にも|激烈《はげし》うて、|傍《そば》へは|寄附《よりつ》かれんやうな|事《こと》が|出来《でき》てくるから、|身魂《みたま》を|能《よ》く|磨《みが》いておけと|申《まを》すのであるぞよ。
|身慾信仰《みよくしんじん》してをる|人民《じんみん》、そこへ|成《な》りてから|助《たす》けて|呉《く》れと|申《まを》しても、|其様《そん》な|人民《じんみん》は|醜《みぐる》しいから、|傍《そば》へは|寄《よ》せ|附《つ》けんぞよ。よく|神《かみ》の|心《こころ》を|汲取《くみと》らんと、|大本《おほもと》は|天地《てんち》の|誠《まこと》|一《ひと》つの|先祖《せんぞ》の|神《かみ》の|経綸《しぐみ》の|尊《たふと》い|場所《とこ》であるから、|迂濶《うくわつ》に|出《で》て|来《き》ても、チト|異《ちが》う|所《とこ》であるから、そこにならんと|眼《め》が|覚《さ》めんから、|眼醒《めざま》しのあるまでに、|腹《はら》の|中《なか》の|埃《ごもく》を|出《だ》しておかんと、|地部下《ぢぶした》に|成《な》るから、|執念《くどう》|言《い》ふて|気《き》を|附《つ》けるぞよ。
明治三十七年旧正月十日
|艮金神《うしとらのこんじん》|稚日女岐美命《わかひめぎみのみこと》が、|出口《でぐち》の|守《かみ》と|現《あら》はれて、|変性男子《へんじやうなんし》の|身魂《みたま》が|全部《すつくり》|現《あら》はれて|斯世《このよ》を|構《かま》ふと、|余《あま》り|速《すみ》やかに|見《み》え|透《す》いて、|出口《でぐち》の|傍《そば》へは|寄《よ》れんやうに|成《な》ると|申《まを》してあるが、|何彼《なにか》の|時節《じせつ》が|参《まゐ》りたから、|気遣《きづか》ひになるぞよ。|水晶《すゐしやう》の|身魂《みたま》でありたら、|岩戸開《いはとびら》きの|折《を》りにも|安心《あんしん》で|何《なに》も|無《な》いなれど、|一寸《ちよつと》でも|身魂《みたま》に|曇《くも》りがありたり、|違《ちが》ふた|遣方《やりかた》いたしたり、|混《まぜ》りがありたり|致《いた》したら、|直《す》ぐその|場《ば》で|陶汰《わけ》られて、ザマを|晒《さら》されるぞよ。|人民《じんみん》からは|左程《さほど》にないが、|神《かみ》の|眼《め》からは|見苦《みぐる》しきぞよ。
|変性男子《へんじやうなんし》は|大望《たいもう》な|御役《おやく》であるから、|今度《こんど》の|御用《ごよう》をさすために、|神代一代《かみよいちだい》の|苦労《くらう》がさしてありての|事《こと》であるから、|何《なに》|程《ほど》でも|此《この》|筆先《ふでさき》は|湧《わ》いて|来《く》るぞよ。|岩戸開《いはとびら》きの|筆先《ふでさき》と|立直《たてなほ》しの|筆先《ふでさき》とを、|世《よ》が|治《をさ》まるまで|書《か》かすなり、|斯世《このよ》|一切《いつさい》の|事《こと》を|皆《みな》|書《か》かせるから、どんな|事《こと》も|皆《みな》|解《わか》りて|来《く》るから、|誰《たれ》も|恥《は》づかしうなるから、|改信《かいしん》いたせ、|身魂《みたま》の|洗濯《せんたく》いたせよと、|出口《でぐち》|直《なほ》の|手《て》で|知《し》らしてあるのを、|疑《うたが》ふて|居《を》りた|人民《じんみん》、|気《き》の|毒《どく》が|出来《でき》て|来《く》るぞよ。|斯世《このよ》が|末《すゑ》になりて、|一寸《ちよつと》も|前《さき》へ|行《ゆ》けんやうになりて、|変性男子《へんじやうなんし》と|女子《によし》とが|現《あら》はれて、|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸《いはと》を|開《ひら》く|大望《たいもう》な|御役《おやく》であるぞよ。|今《いま》|迄《まで》の|教《をしへ》は|魔法《まつぱふ》の|遣方《やりかた》で、|金輪際《こんりんざい》の|悪《あ》しき|世《よ》の|終《をは》りであるぞよ。
明治三十七年旧七月十二日
|今《いま》の|役員《やくゐん》|信者《しんじや》は、|今度《こんど》の|戦争《たたかひ》で|世《よ》が|根本《こつぽん》から|立替《たてか》はるやうに|信《しん》じて、|周章《あわて》てゐるなれど、|世界中《せかいぢう》の|修斎《たてなおし》であるから、さう|着々《ちやくちやく》とは|行《ゆ》かんぞよ。|今度《こんど》の|戦争《たたかひ》は|門口《かどぐち》であるから、その|覚悟《かくご》で|居《を》らんと、|後《あと》で|小言《こごと》を|申《まを》したり、|神《かみ》に|不足《ふそく》を|申《まを》して、|折角《せつかく》の|神徳《しんとく》を|取外《とりはづ》す|事《こと》が|出来《しゆつたい》いたすぞよ。|変性女子《へんじやうによし》の|筆先《ふでさき》は|信用《しんよう》せぬと|申《まを》して、|肝腎《かんじん》の|役員《やくゐん》が|反対《はんたい》いたして、|書《か》いたものを|残《のこ》らず|一所《ひとところ》へ|寄《よ》せて|灰《はひ》に|致《いた》したり、|悪魔《あくま》の|守護神《しゆごじん》ぢやと|申《まを》して、|京《きやう》、|伏見《ふしみ》、|丹波《たんば》、|丹後《たんご》などを|言触《ことぶれ》に|廻《まは》りて|神《かみ》の|邪魔《じやま》を|致《いた》したり、|悪神《あくがみ》ぢやと|申《まを》して|力一杯《ちからいつぱい》|反対《はんたい》いたして、|四方《しはう》から|苦《くる》しめてゐるが、|全然《さつぱり》|自己《われ》の|眼《め》の|玉《たま》が|眩《くら》んでゐるのであるから、|自己《われ》の|事《こと》を|人《ひと》の|事《こと》と|思《おも》ふて、|恥《はぢ》とも|知《し》らずに、|狂人《きちがひ》の|真似《まね》をしたり、|馬鹿《ばか》の|真似《まね》を|致《いた》して、|一廉《いつかど》|改信《かいしん》が|出来《でき》たと|申《まを》してゐるが、|気《き》の|毒《どく》であるから、|何時《いつ》も|女子《によし》に|気《き》を|附《つ》けさすと、|悪神《あくがみ》|奴《め》が|大本《おほもと》の|中《なか》へ|来《き》て|何《なに》を|吐《ぬか》すのぢや、|吾々《われわれ》は|悪魔《あくま》を|平《たひ》らげるのが|第一《だいいち》の|役《やく》ぢやと|申《まを》して、|女子《によし》を|獣類扱《けものあつか》ひに|致《いた》して、|箒《はうき》で|叩《たた》いたり、|塩《しほ》を|振《ふ》りかけたり、|啖唾《たんつば》を|吐《は》きかけたり、|種々《いろいろ》として|無礼《ぶれい》を|致《いた》してをるぞよ。|是《これ》でも|神《かみ》は、|何《なに》も|知《し》らぬ|盲《めくら》|聾《つんぼ》の|人民《じんみん》を|改信《かいしん》さして|助《たす》けたい|一杯《いつぱい》であるから、|温順《おとな》しく|致《いた》して|誠《まこと》を|説《と》いて|聞《き》かしてやるのを|逆様《さかさま》に|聞《き》いて|居《を》れど、|信者《しんじや》の|者《もの》に|言《い》ひ|聞《き》かして|邪魔《じやま》を|致《いた》すので、|何時《いつ》までも|神《かみ》の|思惑《おもわく》|成就《じやうじゆ》いたさんから、|是《これ》から|皆《みな》の|役員《やくゐん》の|目《め》の|醒《さ》めるやうに、|変性女子《へんじやうによし》の|御魂《みたま》の|肉体《にくたい》を、|神《かみ》から|大本《おほもと》を|出《だ》して|経綸《しぐみ》を|致《いた》すから、その|覚悟《かくご》で|居《を》るがよいぞよ。|女子《によし》が|出《で》たら|後《あと》は|火《ひ》の|消《き》えた|如《ごと》く、|一人《ひとり》も|立寄《たちよ》る|人民《じんみん》|無《な》くなるぞよ。さうして|見《み》せんと|此《こ》の|中《なか》は|思《おも》ふ|様《さま》に|行《ゆ》かんぞよ。|明治《めいぢ》|四十二年《しじふにねん》までは|神《かみ》が|外《そと》へ|連《つ》れ|参《まゐ》りて、|経綸《しぐみ》の|橋掛《はしかけ》をいたすから、|後《あと》に|恥《は》づかしくないやうに、|今一度《いまいちど》|気《き》を|附《つ》けておくぞよ。
この|大本《おほもと》の|中《なか》の|者《もの》が|残《のこ》らず|改信《かいしん》いたして、|女子《によし》の|身上《みじやう》が|解《わか》りて|来《き》たら、|物事《ものごと》は|箱差《はこさ》したやうに|進《すす》むなれど、|今《いま》のやうな|慢心《まんしん》や|誤解《とりちがひ》ばかりいたしてをるもの|許《ばか》りでは、|片輪車《かたわぐるま》であるから、|一寸《ちよつと》も|動《うご》きが|取《と》れん、|骨折損《ほねをりぞん》の|草臥儲《くたびれまう》けになるより|仕様《しやう》は|無《な》いから、|皆《みな》の|役員《やくゐん》の|往生《わうじやう》いたすまでは|神《かみ》が|連《つ》れ|出《だ》して、|外《そと》で|経綸《しぐみ》をいたして|見《み》せるから、|其《その》|時《とき》には|又《また》|出《で》て|御出《おい》でなされよ、|手《て》を|引《ひ》き|合《あ》ふて|神界《しんかい》の|御用《ごよう》をいたさすぞよ。
|今度《こんど》の|戦争《たたかひ》で|何《なに》も|彼《か》も|埒《らち》がついて、|二三年《にさんねん》の|後《のち》には|天下泰平《てんかたいへい》に|世《よ》が|治《をさ》まるやうに|申《まを》して、エライ|力味《りきみ》やうであるが、そんな|心易《こころやす》い|事《こと》で|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きは|出来《しゆつたい》いたさんぞよ。|今《いま》の|大本《おほもと》の|中《なか》に|唯《ただ》の|一人《ひとり》でも、|神世《かみよ》に|成《な》りた|折《を》りに|間《ま》に|合《あ》ふものがあるか。|誤解《とりちがひ》するも|自惚《うぬぼれ》にも|程《ほど》があるぞよ。まだまだ|世界《せかい》は|是《これ》から|段々《だんだん》と|迫《せま》りて|来《き》て、|一寸《ちよつと》も|動《うご》きの|取《と》れんやうな|事《こと》が|出来《しゆつたい》するのであるから、|其《その》|覚悟《かくご》で|居《を》らんと、|後《あと》でアフンとする|事《こと》が|今《いま》から|見透《みえす》いて|居《を》るぞよ。
|今一度《いまいちど》|変性女子《へんじやうによし》の|身魂《みたま》を|連出《つれだ》す|土産《みやげ》に、|前《まへ》の|事《こと》を|概略《あらまし》|書《か》き|残《のこ》さしておくから、|大切《たいせつ》にいたして|保存《のこ》しておくが|宜《よ》いぞよ。|一分一厘《いちぶいちりん》|違《ちが》ひは|無《な》いぞよ。|明治《めいぢ》|五十年《ごじふねん》を|真中《まんなか》として|前後《あとさき》|十年《じふねん》の|間《あひだ》が|岩戸開《いはとびら》きの|正念場《しやうねんば》であるぞよ。それまでに|神《かみ》の|経綸《しぐみ》が|急《せ》けるから、|何《なん》と|申《まを》しても|今度《こんど》は|止《と》めては|下《くだ》さるなよ。|明治《めいぢ》|五十五年《ごじふごねん》の|三月三日《さんぐわつみつか》|五月五日《ごぐわついつか》は|誠《まこと》に|結構《けつこう》な|日《ひ》であるから、それ|迄《まで》はこの|大本《おほもと》の|中《なか》は|辛《つら》いぞよ。|明治《めいぢ》|四十二年《しじふにねん》になりたら、|変性女子《へんじやうによし》がボツボツと|因縁《いんねん》の|身魂《みたま》を|大本《おほもと》へ|引寄《ひきよ》して、|神《かみ》の|仕組《しぐみ》を|始《はじ》めるから、|気《き》の|小《ちひ》さい|役員《やくゐん》は|吃驚《びつくり》いたして、|逃出《にげだ》すものが|出来《でき》て|来《く》るぞよ。さうなりたら|世界《せかい》の|善悪《ぜんあく》の|鏡《かがみ》が|出《で》る|大本《おほもと》であるから、|色々《いろいろ》の|守護神《しゆごじん》が|肉体《にくたい》を|連《つ》れ|参《まゐ》りて、|目的《もくてき》を|立《た》てやうといたして、また|女子《によし》の|身魂《みたま》に|反対《はんたい》いたすものが|現《あら》はれて|来《く》るなれど、|悪《あく》の|企謀《たくみ》は|九分九厘《くぶくりん》で|掌《てのひら》が|覆《かへ》りて、|赤恥《あかはぢ》かいて|帰《かへ》るものも|沢山《たくさん》あるぞよ。|今《いま》の|役員《やくゐん》は|皆《みな》|抱込《だきこ》まれて|了《しま》ふて、また|女子《によし》に|反対《はんたい》をいたすやうになるなれど、|到底《たうてい》|敵《かな》はんから|往生《わうじやう》いたして|改心《かいしん》いたしますから、お|庭《には》の|掃除《さうじ》になりと|使《つか》ふて|下《くだ》されと、|泣《な》いて|頼《たの》むやうになるぞよ。|腹《はら》の|底《そこ》に|誠意《まこと》が|無《な》いと、|慾《よく》に|迷《まよ》ふて|大《おほ》きな|取違《とりちが》ひを|致《いた》して、ヂリヂリ|悶《もだ》えをいたさなならんから、|今《いま》の|内《うち》に|胸《むね》に|手《て》を|当《あ》てて|考《かんが》へて|見《み》るが|宜《よ》いぞよ。もう|是限《これぎ》り|何《なに》も|申《まを》さんから、この|筆先《ふでさき》も|今度《こんど》は|焼捨《やきす》てぬやうに、|後《のち》の|証拠《しようこ》にするが|宜《よ》いぞよ。|何方《どちら》が|取違《とりちが》ひであつたか|判《わか》るやうに|書《か》かしておくぞよ。
|盲目《めくら》|聾《つんぼ》が|目《め》が|明《あ》いたつもり、|心《こころ》の|聾《つんぼ》が|耳《みみ》が|聞《き》こえるつもりで|居《を》るのであるから、|薩張《さつぱ》り|始末《しまつ》が|附《つ》かんぞよ。|力一杯《ちからいつぱい》|神界《しんかい》の|御用《ごよう》をいたしたつもりで、|力一杯《ちからいつぱい》|邪魔《じやま》をいたしてをるのであるから、|何《ど》うも|彼《か》うも|手《て》の|出《だ》しやうが|無《な》いから、やむを|得《え》ず、|余所《よそ》へ|暫《しばら》くは|連《つ》れ|参《まゐ》りて、|経綸《しぐみ》をいたすぞよ。|今《いま》の|役員《やくゐん》チリヂリバラバラになるぞよ。
明治三十七年旧八月十日
|天《てん》も|地《ち》も|世界中《せかいぢう》|一《ひと》つに|丸《まる》め、|桝掛《ますか》けひいた|如《ごと》く、|誰一人《たれひとり》つづぼには|落《お》とさぬぞよ。|種《たね》|蒔《ま》きて|苗《なへ》が|立《た》ちたら|出《で》て|行《ゆ》くぞよ。|苅込《かりこ》みになりたら、|手柄《てがら》をさして|元《もと》へ|戻《もど》すぞよ。|元《もと》の|種《たね》、|吟味《ぎんみ》|致《いた》すは|今度《こんど》の|事《こと》ぞよ。|種《たね》が|宜《よ》ければ、|何《ど》んな|事《こと》でも|出来《でき》るぞよ。
(大正一二・四・二六 旧三・一一 於竜宮館 北村隆光再録)
第二三章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その四〔一五四八〕
明治三十八年旧四月十六日
|艮金神《うしとらのこんじん》|国常立尊《くにとこたちのみこと》|出口《でぐち》の|守《かみ》と|現《あら》はれて、|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きを|致《いた》すについては、|昔《むかし》の|世《よ》の|本《もと》から|拵《こしら》へてある|因縁《いんねん》の|身魂《みたま》を|引寄《ひきよ》して、|夫々《それぞれ》に|御用《ごよう》を|申《まを》し|付《つ》けるぞよ。|今度《こんど》の|御用《ごよう》は|因縁《いんねん》|無《な》くては|勉《つと》まらんぞよ。|先《さき》になりたら|金銀《きんぎん》は|降《ふ》る|如《ごと》くに|寄《よ》りて|来《く》るから、さうなりたら|吾《われ》も|私《わし》もと|申《まを》して、|金《かね》|持《も》つて|御用《ごよう》さして|下《くだ》されと|申《まを》して|出《で》て|来《く》るなれど、|因縁《いんねん》なき|身魂《みたま》には、|何《なに》ほど|結構《けつこう》に|申《まを》しても、|一文《いちもん》も|使《つか》ふ|事《こと》は|出来《でき》んぞよ。|是《これ》から|先《さき》になると|金銀《きんぎん》を|積《つ》んで|神《かみ》の|御用《ごよう》を|致《いた》さして|欲《ほ》しいと、|頼《たの》みに|来《く》るもの|計《ばか》りであれど、|一々《いちいち》|神《かみ》に|伺《うかが》ひ|致《いた》してからでないと、|受取《うけと》る|事《こと》はならんぞよ。|金銀《きんぎん》に|目《め》を|掛《か》ける|事《こと》は|相成《あひな》らんから、|何程《なにほど》|辛《つら》くても、|今《いま》の|内《うち》は|木《き》の|葉《は》なりと、|草《くさ》なりと|食《た》べてでも、|凌《しの》ぎて|御用《ごよう》を|致《いた》して|居《を》りて|下《くだ》さりたら、|神《かみ》が|性念《しやうねん》を|見届《みとど》けた|上《うへ》では、|何事《なにごと》も|思《おも》ふやうに、|金《かね》の|心配《しんぱい》も|致《いた》さいでも|善《よ》きやうに|守護《しゆご》が|致《いた》してあるぞよ。|今《いま》が|金輪際《こんりんざい》の|叶《かな》はん|辛《つら》いとこであるから、|茲《ここ》を|一《ひと》つ|堪《こば》りて|誠《まこと》を|立抜《たてぬ》きて|下《くだ》さりたら、|神《かみ》が|是《これ》で|善《よ》いといふやうに|成《な》りたら、|楽《らく》に|御用《ごよう》が|出来《でき》るやうにチヤンと|仕組《しぐみ》てあるから、|罪穢《めぐり》のある|金《かね》は|神《かみ》の|御用《ごよう》には|立《た》てられんぞよ。
いつも|筆先《ふでさき》で|気《き》を|附《つ》けてあるが、|大本《おほもと》は|艮金神《うしとらのこんじん》の|筆先《ふでさき》で|世《よ》を|開《ひら》くところであるから、あまり|霊学《れいがく》ばかりに|凝《こ》ると|筆先《ふでさき》が|粗略《およそ》になりて、|誠《まこと》が|却《かへ》つて|解《わか》らんやうになりて、|神《かみ》の|神慮《きかん》に|叶《かな》はんから、|筆先《ふでさき》を|七分《しちぶ》にして|霊学《れいがく》を|三分《さんぶ》で|開《ひら》いて|下《くだ》されよ。|神《かむ》がかりばかりに|凝《こ》ると、|最初《はじめ》は|人《ひと》が|珍《めづら》しがりて|集《よ》りて|来《く》るなれど、あまり|碌《ろく》な|神《かみ》は|出《で》て|来《き》んから、|終《しまひ》には|山子師《やまし》、|飯綱使《いひづなつかひ》、|悪魔使《あくまづかひ》と|言《い》はれて、|一代《いちだい》|思《おも》はくは|立《た》たんぞよ。|思《おも》はくが|建《た》たんばかりか、|神《かみ》の|経綸《しぐみ》を|取違《とりちが》ひ|致《いた》す|人民《じんみん》が|出来《でき》て|来《き》て、この|誠《まこと》の|正味《しやうみ》の|教《をしへ》をワヤに|致《いた》すから、|永《なが》らく|気《き》を|附《つ》けて|知《し》らしたなれど、|今《いま》に|霊学《れいがく》が|結構《けつこう》ぢや、|筆先《ふでさき》ども|何《なん》に|成《な》ると|申《まを》して|一寸《ちよつと》も|聞《き》き|入《い》れぬが、どうしても|諾《き》かな|諾《き》くやうにして、|改信《かいしん》さして|見《み》せるぞよ。
|神《かみ》の|申《まを》す|事《こと》を|反《そむ》いて|何《なん》なりと|行《や》りて|見《み》よれ、|足元《あしもと》から|鳥《とり》が|飛《と》つやうな|吃驚《びつくり》が|出《で》て|来《く》るぞよ。|世間《せけん》からは|悪《わる》く|申《まを》され、|神《かみ》には|気障《きざは》りとなるから、|何《なに》も|成就《じやうじゆ》いたさずに|大《おほ》きな|気《き》の|毒《どく》が|出来《でき》るのが|見透《みえす》いてをるから、それを|見《み》るのが|可哀相《かはいさう》なから、|毎度《まいど》|出口《でぐち》の|手《て》で|神《かみ》が|知《し》らせば、|肉体《にくたい》で|出口《でぐち》|直《なほ》が|書《か》くのぢやと|申《まを》してござるが、|茲《ここ》|暫《しばら》く|見《み》てをりたら|解《わか》りて|来《き》て、|頭《あたま》を|逆様《さかさま》にして|歩《ある》かんならん|事《こと》が|出来《しゆつたい》するぞよ。|誰《たれ》も|皆《みな》|神《かむ》がかりで|開《ひら》きたいのが|病癖《やまひ》であるから、|一番《いちばん》にこの|病癖《やまひ》を|癒《なほ》してやるぞよ。|心《こころ》から|発根《ほつごん》と|癒《なほ》せば|宜《よ》いなれど、|如何《どう》しても|肯《き》かねば、|激《はげ》しき|事《こと》をして|見《み》せて|眼《め》を|開《あ》けさしてやるぞよ。|狐狸《こり》|野天狗《のてんぐ》などの|霊魂《みたま》に|嘲弄《もてあそび》にしられて、それで|神国《しんこく》の|御用《ごよう》が|出来《でき》ると|思《おも》ふのか。それでも|神国《しんこく》の|人民《じんみん》ぢやと|思《おも》ふてをるのか。|畜生《ちくしやう》の|容器《いれもの》にしられて|夫《それ》を|結構《けつこう》と|思《おも》ふのか、|神界《しんかい》の|大罪人《だいざいにん》となりても|満足《まんぞく》なのか。|訳《わけ》が|解《わか》らんと|申《まを》しても|余《あま》りであるぞよ。
こうは|言《い》ふものの|是《こ》の|霊魂《みたま》は|何時《いつ》も|申《まを》す|通《とほ》り、|世界《せかい》|一切《いつさい》の|事《こと》が|写《うつ》るのであるから、この|大本《おほもと》へ|立寄《たちよ》る|人民《じんみん》はこの|遣方《やりかた》を|見《み》て、|世界《せかい》はこんな|事《こと》に|成《な》りてをるのかと|改信《かいしん》を|為《す》るやうに、|神《かみ》からの|身魂《みたま》が|拵《こしら》へてあるのであるから、|誤解《とりちがひ》をいたさぬやうに|御庇《おかげ》を|取《と》りて|下《くだ》されよ。|他人《ひと》が|悪《わる》い|悪《わる》いと|思《おも》ふて|居《を》ると、|全部《さつぱり》|自己《われ》の|事《こと》が|鏡《かがみ》に|映《うつ》りてをるのであるから、|他人《ひと》が|悪《わる》く|見《み》えるのは、|自己《われ》に|悪《わる》い|所《ところ》や|霊魂《みたま》に|雲《くも》が|掛《かか》りて|居《を》るからであるから、|鏡《かがみ》を|見《み》て|自己《われ》の|身魂《みたま》から|改信《かいしん》いたすやうに、|此《この》|世《よ》の|本《もと》から|御用《ごよう》の|霊魂《みたま》が|拵《こしら》へてありての、|今度《こんど》の|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きであるから、|一寸《ちよつと》やソツトには|解《わか》るやうな|浅《あさ》い|経綸《しぐみ》でないから、|改信《かいしん》いたして|身魂《みたま》を|研《みが》くが|一等《いつとう》であるぞよ。
|世《よ》の|本《もと》の|誠《まこと》の|生神《いきがみ》は|今《いま》まではものは|言《い》はなんだぞよ。|世《よ》の|替《かは》り|目《め》に|神《かみ》がうつりて、|世界《せかい》の|事《こと》を|知《し》らせねばならぬから、|出口《でぐち》|直《なほ》は|因縁《いんねん》ある|霊魂《みたま》であるから、うつりて|何事《なにごと》も|知《し》らせるぞよ。|世《よ》が|治《をさ》まりたら|神《かみ》は|何《なに》も|申《まを》さんぞよ。|狐狸《こり》や|天狗《てんぐ》ぐらゐは|何時《いつ》でも|誰《たれ》にでも|憑《うつ》るが、この|金神《こんじん》は|禰宜《ねぎ》や|巫子《みこ》にはうつらんぞよ。|何《なに》|程《ほど》|神《かむ》がかりに|骨《ほね》を|折《を》りたとて、|真《まこと》の|神《かみ》は|肝腎《かんじん》の|時《とき》でないとうつらんぞよ。|何《なに》も|解《わか》らん|神《かみ》が|憑《うつ》りて|参《まゐ》りて、|知《し》つた|顔《かほ》を|致《いた》して|種々《いろいろ》と|口走《くちばし》りて、|肝腎《かんじん》の|仕組《しぐみ》も|解《わか》らずに、|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きの|邪魔《じやま》をいたすから、|一寸《ちよつと》の|油断《ゆだん》も|出来《でき》んから、|不調法《ぶてうはふ》の|無《な》いやうに|気《き》を|附《つ》けてやるのを、|野蛮神《やばんがみ》が|何《なに》を|吐《ぬか》すくらゐにより|解《と》りてくれんから、|誠《まこと》の|神《かみ》も|苦労《くらう》をいたすぞよ。
|神懸《かむがかり》で|何《なに》も|彼《か》も|世界中《せかいぢう》の|事《こと》が|解《わか》るやうに|思《おも》ふてをると|全然《さつぱり》|量見《りやうけん》が|違《ちが》ふぞよ。|神《かみ》の|申《まを》す|中《うち》に|聞《き》いておかんと、|世間《せけん》へ|顔出《かほだ》しが|出来《でき》んやうな、|恥《は》づかしき|事《こと》が|出来《しゆつたい》いたすぞよ。この|神《かみ》|一言《ひとこと》|申《まを》したら、|何時《いつ》になりても、|一分一厘《いちぶいちりん》|間違《まちが》ひはないぞよ。|髪《かみ》の|毛《け》|一本《いつぽん》|程《ほど》でも|間違《まちが》ふやうな|事《こと》では、|三千年《さんぜんねん》かかりて|仕組《しぐ》んだ|事《こと》が|水《みづ》の|泡《あわ》になるから、そんな|下手《へた》な|経綸《しぐみ》は|世《よ》の|元《もと》から、|元《もと》の|生神《いきがみ》は|致《いた》して|無《な》いから、|素直《すなほ》に|神《かみ》の|申《まを》す|事《こと》を|肯《き》いて|下《くだ》されよ。|世界《せかい》の|神《かみ》、|仏事《ぶつじ》、|人民《じんみん》を|助《たす》けたさの、|永《なが》らくの|神《かみ》は|苦労《くらう》であるぞよ。|誰《たれ》によらず|慢心《まんしん》と|誤解《とりちがひ》が|大怪我《おほけが》の|元《もと》となるぞよ。
大正元年旧八月十九日
|大国常立尊《おほくにとこたちのみこと》が|天晴《あつぱ》れ|表面《おもて》になりて|守護《しゆご》にかかると、|一旦《いつたん》は|神《かみ》の|経綸通《しぐみどほ》りに|致《いた》すから、|改信《かいしん》|致《いた》して|神心《かみごころ》になりて|居《を》らんと、これから、|人気《ひとぎ》の|悪《わる》い|所《ところ》は|何処《どこ》でも|飛火《とびひ》がいたすから、|今度《こんど》は|是《これ》までの|見苦《みぐる》しき|心《こころ》を|全然《さつぱり》|捨《す》てて|了《しま》ふて、|産《うぶ》の|精神《こころ》になりたらば、|安全《らく》な|道《みち》が|造《つく》り|替《か》へてあるから、|霊魂《みたま》を|研《みが》いて|善《よ》い|道《みち》へ|乗《の》り|替《か》へるやうに|仕組《しぐ》んであれども、|霊魂《みたま》に|曇《くも》りがありては、|善《よ》い|道《みち》へ|乗替《のりか》へたとて|辛《つら》ふて|御用《ごよう》が|出来《でき》んから、|発根《ほつごん》の|改信《かいしん》、|腹《はら》の|底《そこ》からの|改信《かいしん》でないと、|誠《まこと》の|御用《ごよう》は|出来《でき》んぞよ。
|竜宮様《りうぐうさま》を|見《み》て|皆《みな》|改信《かいしん》をいたされよ。|昔《むかし》から|誠《まこと》に|慾《よく》な|見苦《みぐる》しき|御心《おこころ》でありたなれど、|今度《こんど》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きには|慾《よく》を|捨《す》てて|了《しま》はねば、|神界《しんかい》の|御用《ごよう》が|勤《つと》まらんといふ|事《こと》が、|一番《いちばん》に|早《はや》く|御合点《ごがてん》が|参《まゐ》りたから、|竜門《りうもん》のお|宝《たから》を|残《のこ》らず|艮金神《うしとらのこんじん》に|御渡《おわた》し|遊《あそ》ばして、|活溌《くわつぱつ》な|御働《おはたら》きを|神界《しんかい》で|一生懸命《いつしやうけんめい》になりて、|力量《ちから》も|充分《じうぶん》にあるなり、この|方《はう》の|片腕《かたうで》になつて、|今度《こんど》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きの|御用《ごよう》を|遊《あそ》ばすから、|他《ほか》の|守護神《しゆごじん》も|竜宮様《りうぐうさま》の|御改信《ごかいしん》を|見《み》て、|一日《いちにち》も|早《はや》く|自己《われ》の|心《こころ》の|中《うち》を|考《かんが》へて|改信《かいしん》なされよ。
|大国常立尊《おほくにとこたちのみこと》が|今《いま》|表《おもて》になりたとこで、|神界《しんかい》の|役《やく》に|立《た》てる|霊魂《みたま》は|一《ひと》つも|無《な》いが、よくも|是《これ》だけ|曇《くも》りたものであるぞよ。もう|神《かみ》は|構《かま》はんから、|何彼《なにか》の|事《こと》を|急速《いつさく》にいたして|後《あと》の|立直《たてなほ》しに|掛《かか》らんと、|世界中《せかいぢう》の|大事《だいじ》であるから、|解《わか》らぬ|守護神《しゆごじん》に|何時《いつ》までもかかりて|居《を》りたら、|世界《せかい》の|人民《じんみん》が|皆《みな》|難渋《なんじふ》をいたして|往《ゆ》きも|戻《もど》りも|成《な》らんやうに|成《な》りて、|戦争《いくさ》も|済《す》みたでも|無《な》し、|止《とど》めも|刺《さ》さん|事《こと》になりて、|世界中《せかいぢう》の|大難渋《だいなんじふ》となるから、|是《これ》まで|耳《みみ》に|蛸《たこ》が|出来《でき》るほど|注意《きをつけ》てあるが、|何彼《なにか》の|時節《じせつ》が|迫《せま》りて|来《き》て、|動《うご》きもにじりも|出来《でき》ん|事《こと》に|世界中《せかいぢう》がなるから、|諄《くど》う|守護神《しゆごじん》|人民《じんみん》に|気《き》を|附《つ》けるぞよ。
|神国《しんこく》の|人民《じんみん》に|元《もと》の|神国魂《みくにだましひ》が|些《ちつ》とありたら、|茲《ここ》までの|難渋《なんじふ》は|無《な》いなれど、|誠《まこと》|一《ひと》つの|御魂《みたま》により|明《あか》されず、|肝腎《かんじん》の|事《こと》を|任《まか》して|為《さ》せる|事《こと》も|出来《でき》ず、テンで|経綸《しぐみ》が|解《わか》りてをらんから、|神《かみ》が|使《つか》ふ|身魂《みたま》が|無《な》いぞよ。この|方《はう》が|世界中《せかいぢう》の|事《こと》をいたさなならんから、|何彼《なにか》の|事《こと》が|一度《いちど》になりて|忙《せわ》しうなると|申《まを》すことが、|毎度《まいど》|筆先《ふでさき》で|知《し》らしてあらうがな。
|艮《とどめ》になりたら|神霊活機臨々発揮日月《ひのでのかみ》と|現《あら》はれて、|三千世界《さんぜんせかい》の|艮《とどめ》を|刺《さ》すぞよ。|其《その》|折《を》りに|間《ま》に|合《あ》ふやうに、|早《はや》うから|有難《ありがた》がりて、|大本《おほもと》へ|来《き》て|辛《つら》い|修業《しうげふ》をして|居《を》りても、|肝腎《かんじん》の|処《とこ》が|能《よ》く|解《わか》りて|居《を》らんと、|善《よ》い|御用《ごよう》は|出来《でき》んぞよ。|何《ど》うなりとして|引着《ひつつ》いて|居《を》りたら、|善《よ》い|御用《ごよう》が|出来《でき》ると|思《おも》ふて|居《を》ると、|大間違《おほまちが》ひであるぞよ。
|艮金神《うしとらのこんじん》が|初発《しよつぱつ》から|一言《ひとこと》|申《まを》した|事《こと》は|一分一厘《いちぶいちりん》|違《ちが》はんぞよ。|途中《とちう》から|変《か》はるのは|矢張《やつぱ》り|霊魂《みたま》に|因縁《いんねん》が|無《な》いのぢやぞよ。|因縁《いんねん》のある|身魂《みたま》は|截《き》りても|断《き》れん、|如何《どん》な|辛《つら》い|目《め》をいたしても|左程《さほど》|苦《くる》しい|事《こと》は|無《な》いぞよ。|因縁《いんねん》|性来《しやうらい》と|申《まを》すものは、エライものであるぞよ。それで|今度《こんど》は|因縁《いんねん》ある|身魂《みたま》が|集《よ》りて|来《き》て、|辛《つら》い|辛抱《しんばう》をいたして、|天地《てんち》の|光《ひかり》を|出《だ》して|呉《く》れんならん、|変性男子《へんじやうなんし》と|変性女子《へんじやうによし》との|身魂《みたま》を、|茲《ここ》まで|化《ば》かして|神《かみ》の|御役《おやく》に|立《た》てるぞよ。|変性男子《へんじやうなんし》と|女子《によし》の|身魂《みたま》が|誰《たれ》も|能《よ》う|為《せ》ぬ|辛抱《しんばう》をいたして、|此《この》|世《よ》には|神《かみ》は|無《な》きものと、|学《がく》で|神力《しんりき》をないやうに|仕《し》て|居《を》りたのを、|此《この》|世《よ》に|神《かみ》が|有《あ》るか|無《な》いかといふ|事《こと》を、|三千世界《さんぜんせかい》へ|天晴《あつぱ》れと|天地《てんち》の|神力《しんりき》を|表《あら》はせて|見《み》せて、この|先《さき》は|神力《しんりき》の|世《よ》に|致《いた》すから、|是《これ》からは|学力《がくりき》で、|何麼事《どんなこと》を|致《いた》しても、|世《よ》の|本《もと》の|根本《こつぽん》の|生神《いきがみ》の|神力《しんりき》には|敵《かな》はんから、|今《いま》の|中《うち》に|悪神《あくがみ》のエライ|企《たく》みを|砕《くだ》いて|了《しま》ふから、|一日《いちにち》も|早《はや》く|往生《わうじやう》いたすが|得《とく》であるぞよ。
|今度《こんど》の|戦争《たたかひ》は|人民《じんみん》|同士《どうし》の|戦争《たたかひ》ではないぞよ。|国《くに》と|国《くに》、|神《かみ》と|邪神《あくがみ》との|大戦争《おほたたかひ》であるから、|悪神《あくがみ》の|策戦計画《しぐみ》は|人民《じんみん》では|誰《たれ》も|能《よ》う|為《せ》ん|仕組《しぐみ》であれど、|世《よ》の|本《もと》の|生神《いきがみ》には|敵《かな》はんぞよ。|充分《じうぶん》|戦《たたか》ふたとこで|金《かね》の|要《い》るのは|程知《ほどし》れず、|人《ひと》の|減《へ》るのも|程《ほど》は|判《わか》らんぞよ。けれども|出《で》かけた|船《ふね》ぢや。|何方《どちら》の|船《ふね》も|後方《あと》へは|退《ひ》けんから、トコトンまで|行《ゆ》くぞよ。|今《いま》までの|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》よ、|神《かみ》の|国《くに》を|茲《ここ》まで|自由《じいう》にいたしたら、|是《これ》に|不足《ふそく》はもう|在《あ》ろまいから、|充分《じうぶん》に|敵対《てきた》ふて|御座《ござ》れよ。|神力《しんりき》と|学力《がくりき》との|力較《ちからくら》べの|大戦争《おほたたかひ》であるから、|負《ま》けたら|従《したが》ふてやるし、|勝《か》つたら|従《したが》はして、|末代《まつだい》|手《て》は|出《だ》しませぬと|申《まを》すとこまで、|往生《わうじやう》をさせてやるぞよ。|何程《なにほど》|学力《がくりき》がエラウても、|神力《しんりき》には|勝《か》てんぞよ。|大《おほ》きな|見誤《みそこな》ひを|為《し》て|居《を》りたと|言《い》ふ|事《こと》が|後《あと》で|気《き》が|附《つ》いて、|死物狂《しにものぐるひ》を|致《いた》さうよりも、|脚下《あしもと》の|明《あか》るい|中《うち》に|降伏《わうじやう》いたす|方《はう》が|宜《よ》いぞよ。|永引《ながび》くほど|国土《くに》はチリヂリと|無《な》く|為《な》りて|了《しま》ふぞよ。
|邪神《あくがみ》の|企謀《たくみ》は|何麼計略《どんなたくみ》も|為《し》てゐるなれど、|悪《あく》では|此《この》|世《よ》は|立《た》ちては|行《ゆ》かんぞよ。|神《かみ》の|経綸《しぐみ》は|善《ぜん》|一《ひと》つの|誠《まこと》|実地《じつち》の|御道《おみち》に|造《つく》り|代《か》へてあるから、|気《き》の|附《つ》いた|守護神《しゆごじん》は、|善《ぜん》の|道《みち》へ|立帰《たちかへ》りて|安心《あんしん》なされよ。|悪《あく》の|身霊《みたま》は|平《たひ》らげて|了《しま》ふから、|早《はや》う|覚悟《かくご》を|致《いた》さんと、もう|一日《いちにち》の|日《ひ》の|間《ま》にも|代《か》はるから、|是迄《これまで》のやうに|思《おも》ふてをると、みな|量見《りやうけん》が|違《ちが》ふぞよ。
|毎度《まいど》|出口《でぐち》|直《なほ》に|兵糧《ひやうろう》をとつて|置《お》かねばならんといふ|事《こと》が、|諄《くど》う|申《まを》してあらうがな。|米《こめ》が|有《あ》ると|申《まを》して|油断《ゆだん》をいたすで|無《な》いぞよ。|人民《じんみん》は|悧巧《りかう》なものであるなれど、|先《さき》のチツトモ|解《わか》らんものであるから、|筆先《ふでさき》で|何《なに》も|知《し》らすから、この|筆先《ふでさき》を|大切《たいせつ》にいたさんと、|粗末《そまつ》にいたしたら、|其《その》|場《ば》で|変《か》はるやうに|厳《きび》しくなるぞよ。この|筆先《ふでさき》は|世界《せかい》の|事《こと》を、|気《け》もない|中《うち》から|知《し》らしてあるから、|疑《うたが》ふてをると|後《あと》で|取返《とりかへ》しの|出来《でき》ん|事《こと》になるぞよ。|後《あと》の|後悔《こうくわい》は|間《ま》に|合《あ》はんぞよ。
大正三年旧七月十一日
|大国常立尊《おほくにとこたちのみこと》が|表《おもて》に|現《あら》はれて|日出《ひので》の|守護《しゆご》となるから、|人民《じんみん》が|各自《めいめい》に|力一杯《ちからいつぱい》|気張《きば》りて|為《し》て|来《き》た|事《こと》が、|皆《みな》|天地《てんち》の|神《かみ》から|為《さ》せられて|居《を》りたと|申《まを》すことが、|世界《せかい》の|人民《じんみん》に|了解《わか》る|時節《じせつ》が|参《まゐ》りて|来《き》たぞよ。
|日出《ひので》の|守護《しゆご》になると、|変性男子《へんじやうなんし》の|霊魂《みたま》が|天晴《あつぱ》れ|世界《せかい》へ|現《あら》はれて、|次《つぎ》に|変性女子《へんじやうによし》が|現《あら》はれて、|女島《めしま》|男島《をしま》へ|落《お》ちて|居《を》りた|昔《むかし》からの|生神《いきがみ》ばかりが|揃《そろ》ふて|天晴《あつぱ》れ|世《よ》に|現《あら》はれて、この|泥海《どろうみ》|同様《どうやう》の|世界《せかい》へ、|水晶《すゐしやう》の|本《もと》の|生神《いきがみ》が|揃《そろ》うて、|三千世界《さんぜんせかい》の|岩戸開《いはとびら》きを|致《いた》すから、|天地《てんち》の|岩戸《いはと》が|開《ひら》けて|松《まつ》の|世《よ》、|神世《かみよ》と|相成《あひな》るぞよ。
|綾部《あやべ》の|神宮《しんぐう》|坪《つぼ》の|内《うち》の|本《もと》の|宮《みや》は|出口《でぐち》の|入口《いりぐち》、|竜門館《りうもんやかた》が|高天原《たかあまはら》と|相定《あひさだ》まりて、|天《てん》の|御三体《ごさんたい》の|大神《おほかみ》が|天地《てんち》へ|降《お》り|昇《あが》りを|為《な》されて、この|世《よ》の|御守護《ごしゆご》|遊《あそ》ばすぞよ。この|大本《おほもと》は|地《ち》からは|変性男子《へんじやうなんし》と|変性女子《へんじやうによし》との|二《ふた》つの|身魂《みたま》を|現《あら》はして、|男子《なんし》には|経糸《たていと》、|女子《によし》には|緯糸《よこいと》の|意匠《しぐみ》をさして、|錦《にしき》の|旗《はた》を|織《お》らしてあるから、|織上《おりあが》りたら|立派《りつぱ》な|模様《もやう》が|出来《でき》てをるぞよ。|神界《しんかい》の|意匠《しぐみ》を|知《し》らぬ|世界《せかい》の|人民《じんみん》は、|色々《いろいろ》と|申《まを》して|疑《うたが》へども、|今度《こんど》の|大事業《たいもう》は|人民《じんみん》の|知《し》りた|事《こと》では|無《な》いぞよ。|神界《しんかい》へ|出《で》てお|出《いで》ます|神《かみ》にも|御存知《ごぞんぢ》の|無《な》いやうな、|深《ふか》い|仕組《しぐみ》であるから、|往生《わうじやう》いたして|神心《かみごころ》になりて、|神《かみ》の|申《まを》すやうに|致《いた》すが|一番《いちばん》|悧巧《りかう》であるぞよ。まだ|此《この》|先《さき》でも、トコトンのギリギリまで|反対《はんたい》いたして、|変性女子《へんじやうによし》を|悪《わる》く|申《まを》して、|神《かみ》の|仕組《しぐみ》を|潰《つぶ》さうと|掛《か》かる|守護神《しゆごじん》が、|京《きやう》、|大阪《おほさか》にも|出《で》て|来《く》るなれど、もう|微躯《びく》とも|動《うご》かぬ|仕組《しぐみ》が|致《いた》して、|神《かみ》が|附添《つきそ》うて|御用《ごよう》を|為《さ》すから|別条《べつでう》は|無《な》いぞよ。
|変性女子《へんじやうによし》の|霊魂《みたま》は|月《つき》と|水《みづ》との|守護《しゆご》であるから、|汚《きたな》いものが|参《まゐ》りたら|直《す》ぐに|濁《にご》るから、|訳《わけ》の|解《わか》らぬ|身魂《みたま》の|曇《くも》りた|守護神《しゆごじん》は|傍《そば》へは|寄《よ》せんやうに、|役員《やくゐん》が|気《き》を|附《つ》けて|下《くだ》されよ。|昔《むかし》から|今度《こんど》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きの|御用《ごよう》|致《いた》さす|為《ため》に、|坤《ひつじさる》に|落《お》としてありた|霊魂《みたま》であるぞよ。|此《この》|者《もの》と|出口《でぐち》|直《なほ》との|霊魂《みたま》が|揃《そろ》ふて|御用《ごよう》を|致《いた》さねば、|今度《こんど》の|大望《たいもう》は、|何程《なにほど》|悧巧《りかう》な|人民《じんみん》の|考《かんが》へでも、|物事《ものごと》|出来《しゆつたい》は|致《いた》さんぞよ。
この|大本《おほもと》は|世界《せかい》に|在《あ》る|事《こと》が|皆《みな》|映《うつ》るから、|大本《おほもと》に|在《あ》りた|事《こと》は|大《おほ》きな|事《こと》も|小《ちひ》さい|事《こと》も、|善《よ》き|事《こと》も|悪《あ》しき|事《こと》も、|皆《みな》|世界《せかい》に|現《あら》はれて|来《く》るから、|変性女子《へんじやうによし》をねらふものが、|是《これ》からまだまだ|出来《でき》て|来《く》るから、|確《しつか》りと|致《いた》して|居《を》らんと|此《この》|中《なか》は|治《をさ》まらんぞよ。|大事《だいじ》の|仕組《しぐみ》の|身魂《みたま》であるから、|悪《あく》の|霊《みたま》がねらひ|詰《つ》めて|居《を》るから、|何処《どこ》へ|行《ゆ》くにも|一人《ひとり》で|出《だ》す|事《こと》は|成《な》らんぞよ。|変性女子《へんじやうによし》は|人民《じんみん》からは|赤《あか》ン|坊《ばう》なれど、|神《かみ》がうつりたら|誰《たれ》の|手《て》にも|合《あ》はん|身魂《みたま》であるぞよ。|昔《むかし》の|元《もと》から|見届《みとど》けてありての、|今度《こんど》の|大望《たいもう》な|御用《ごよう》がさしてあるぞよ。
|人民《じんみん》は|表面《うはべ》だけより|見《み》えんから、|何時《いつ》も|大《おほ》きな|取違《とりちが》ひを|致《いた》すが、|是《これ》も|尤《もつと》もの|事《こと》であるぞよ。|永《なが》らく|大本《おほもと》へ|来《き》て|日々《にちにち》|御用《ごよう》に|使《つか》はれてをるものでも、|女子《によし》の|事《こと》は|取違《とりちが》ひ|致《いた》して、|未《いま》だに|反対《はんたい》|致《いた》してをるくらゐであるから、|何《なん》にも|聞《き》かぬ|世界《せかい》の|人民《じんみん》が|取違《とりちが》ひをいたすのは、|無理《むり》も|無《な》いぞよ。かう|申《まを》すと|亦《また》|訳《わけ》の|解《わか》らぬ|守護神《しゆごじん》の|宿《やど》りてゐる|肉体《にくたい》の|人民《じんみん》が、|肉体心《にくたいごころ》を|出《だ》して、|出口《でぐち》は|変性女子《へんじやうによし》に|抱込《だきこ》まれて|居《を》ると|申《まを》すであらうが、|其《その》|様《やう》な|事《こと》の|解《わか》らぬ|艮金神《うしとらのこんじん》|出口《でぐち》|直《なほ》でありたら、|三千年《さんぜんねん》|余《あま》りての|永《なが》らくの|苦労《くらう》が|水《みづ》の|泡《あわ》に|成《な》るから、|滅多《めつた》に|見違《みちが》ひはいたさんぞよ。|人民《じんみん》の|知識《ちゑ》や|学《がく》や|考《かんが》へで|判《わか》るやうな|浅《あさ》い|仕組《しぐみ》は|致《いた》してないぞよ。|何方《どちら》の|身魂《みたま》が|一《ひと》つ|欠《か》けても、|今度《こんど》の|経綸《しぐみ》は|成就《じやうじゆ》いたさんのであるから、|世《よ》の|本《もと》の|根本《こつぽん》から|仕組《しぐみ》て、|色々《いろいろ》と|化《ば》かしてをれば、|自己《われ》の|霊魂《みたま》が|汚《きたな》いから、|竪《たて》からも|横《よこ》からも|汚《きたな》う|見《み》えるのであるぞよ。
|変性男子《へんじやうなんし》の|身魂《みたま》も|変性女子《へんじやうによし》の|身魂《みたま》も、|三千世界《さんぜんせかい》の|大化物《おほばけもの》であるから、|霊魂《みたま》に|曇《くも》りの|有《あ》る|人民《じんみん》には|見当《けんたう》が|取《と》れんぞよ。この|大化物《おほばけもの》を|世界《せかい》へ|現《あら》はして|見《み》せたら、|如何《どない》に|悪《あく》に|強《つよ》い|守護神《しゆごじん》も|人民《じんみん》も、アフンとして|吃驚《びつくり》いたして、|早速《さつそく》には|物《もの》も|能《よ》う|言《い》はん|事《こと》が|出来《しゆつたい》するぞよ。|昔《むかし》の|根本《こつぽん》の|世《よ》の|本《もと》から|末代《まつだい》の|世《よ》まで、|一度《いちど》あつて|二度《にど》ないと|言《い》ふやうな、|大望《たいもう》な|神界《かみ》と|現界《このよ》の|岩戸開《いはとびら》きであるから、アンナものがコンナものに|成《な》りたと|申《まを》す|経綸《しぐみ》であるから、|人民《じんみん》では|見当《けんたう》は|取《と》れん|筈《はず》であれども、|改信《かいしん》いたして|神心《かみごころ》に|立復《たちかへ》りた|人民《じんみん》には、|明白《ありやか》に|能《よ》く|判《わか》る|仕組《しぐみ》であるぞよ。|世《よ》の|変《か》はり|目《め》には|変《へん》な|処《ところ》へ|変《へん》な|人《ひと》が|現《あら》はれて、|変《へん》な|手柄《てがら》をいたすぞよと、|明治《めいぢ》|三十一年《さんじふいちねん》の|七月《しちぐわつ》に|筆先《ふでさき》に|書《か》いて|知《し》らしてありたぞよ。|時節《じせつ》が|近寄《ちかよ》りたぞよ。
(大正一二・四・二六 旧三・一一 於竜宮館 北村隆光再録)
第二四章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その五〔一五四九〕
大正四年旧十一月二十六日
|大国常立尊《おほくにとこたちのみこと》が|三千世界《さんぜんせかい》の、|上中下《じやうちうげ》と|三段《さんだん》に|分《わ》けてある|霊魂《みたま》を、それぞれに|目鼻《めはな》を|付《つ》けて、|皆《みな》を|喜《よろこ》ぶやうに|致《いた》すのは、|根本《こつぽん》の|此《この》|世《よ》を|創造《こしら》へるよりも|何《なに》|程《ほど》|気骨《きぼね》の|折《を》れる|事《こと》ぢや、|人民《じんみん》では|分《わか》らん|事《こと》であるぞよ。|初発《はじめ》の|悪《あく》の|霊魂《みたま》は|悪《あく》の|事《こと》なら|何《ど》んな|事《こと》でも|出来《でき》るから、|茲《ここ》まで|世界中《せかいぢう》を|悪《あく》で|搦《から》みて|了《しま》ふて、|善《ぜん》といふ|道《みち》は|通《とほ》らぬやうに|致《いた》して|来《き》た|悪神《あくがみ》の|頭《かしら》を|露《あら》はして、トコトン|往生《わうじやう》を|為《さ》せて、|又《また》|次《つぎ》に|中《ちう》の|守護神《しゆごじん》を|改信《かいしん》さして、|下《げ》の|守護神《しゆごじん》も|続《つづ》いて|改信《かいしん》させねば|神世《かみよ》には|成《な》らんぞよ。|下《げ》の|守護神《しゆごじん》が|一番《いちばん》に|何彼《なにか》のことが|解《わか》らんなれど、|改信《かいしん》を|致《いた》さねば、|何《ど》うしても|改信《かいしん》いたすやうに、|喜《よろこ》ばして|改信《かいしん》させねば、|叱《しか》る|計《ばか》りでは|改信《かいしん》の|出来《でき》ぬ|守護神《しゆごじん》も|在《あ》るなり、|何《なに》も|解《わか》らん|守護神《しゆごじん》の|如何《どない》にも|成《な》らぬドウクヅは、|天地《てんち》の|規則通《きそくどほ》りに|致《いた》して、|埒《らち》よく|致《いた》さねば|仕様《しやう》はモウ|無《な》いぞよ。
この|先《さき》で|何時《いつ》までも|改信《かいしん》の|出来《でき》ぬ|悪魔《あくま》に|永《なが》う|掛《かか》りて|居《を》りて、|岩戸開《いはとびら》きの|出来《でき》んやうな|邪魔《じやま》を|致《いた》した|守護神《しゆごじん》は、|気《き》の|毒《どく》が|今《いま》に|出来《しゆつたい》|致《いた》すぞよ。|是《これ》だけ|気《き》を|附《つ》けて|知《し》らして|居《を》るのに、|改信《かいしん》の|出来《でき》ん|悪魔《あくま》に|成《な》り|切《き》りて|居《を》る|霊魂《たましひ》の|宿《やど》りた|肉体《にくたい》は、|可哀《かあい》さうでも、|天地《てんち》から|定《さだ》まりた|規則通《きそくどほ》りの|成敗《せいばい》に|致《いた》すぞよ。もう|何時《いつ》までも|解《わか》らんやうな|守護神《しゆごじん》を|助《たす》けておいたら、|世界《せかい》が|総損害《そうぞこない》に|成《な》りて、|茲《ここ》まで|神《かみ》が|苦労《くらう》いたした|骨折《ほねをり》が、|水《みづ》の|泡《あわ》に|成《な》りて|了《しま》ふぞよ。それでは|永《なが》らく|神《かみ》が|苦労《くらう》いたした|甲斐《かひ》が|無《な》くなりて、|天《てん》の|大神様《おほかみさま》へ|申訳《まをしわけ》が|立《た》たんなり、|神《かみ》は|守護神《しゆごじん》|人民《じんみん》を|助《たす》けたいのは、|胸《むね》に|一杯《いつぱい》であるから、もう|一度《いちど》|気《き》を|附《つ》けておくから、|何事《なにごと》が|出《で》て|来《き》ても|神《かみ》に|不足《ふそく》は|申《まを》されまいぞよ。|是《これ》からは|悪神《あくがみ》の|守護神《しゆごじん》の|好《す》きな|事《こと》も、|悪《わる》き|事《こと》も|出来《でき》んやうに、|天地《てんち》から|埒《らち》を|附《つ》けるから、|何処《どこ》を|恨《うら》む|事《こと》も|出来《でき》ず、|自己《われ》の|心《こころ》を|恨《うら》める|事《こと》も|出来《でき》んやうになるぞよ。
|天地《てんち》の|先祖《せんぞ》の|神《かみ》は、|善《ぜん》の|守護神《しゆごじん》も|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》も|皆《みな》を|喜《よろこ》ばしたいと|思《おも》ふて、|色々《いろいろ》と|永《なが》らく|気《き》を|附《つ》けたなれど、ドウクヅの|蛆虫《うじむし》|同様《どうやう》の|醜《みぐる》しき|聞解《ききわけ》の|無《な》いものは、|一処《ひととこ》へ|集《よ》して|固《かた》めて|灰《はひ》にして|了《しま》ふから、|悪《わる》いものに|悩《なや》められて|生命《いのち》を|取《と》られるやうな|肉体《にくたい》は|蛆虫《うじむし》|同様《どうやう》、|悪神《あくがみ》の|眷族《けんぞく》と、も|一《ひと》つ|下《した》な|豆狸《まめだぬき》といふやうな、|論《ろん》にも|杭《くひ》にもかからんものに|弄《もてあそ》びに|遇《あ》うて|居《ゐ》るのは、|肝腎《かんじん》の|神《かみ》の|綱《つな》の|切《き》れて|居《を》る|身魂《みたま》であるぞよ。こんな|守護神《しゆごじん》の|宿《やど》りて|居《を》る|肉体《にくたい》は|取払《とりはら》ひに|為《し》て|了《しま》ふて、|此《この》|世界《せかい》の|大掃除《おほさうじ》を|初《はじ》めるぞよ。
|天地《てんち》の|先祖《せんぞ》の|苦労《くらう》の|解《わか》らん|身魂《みたま》は、|蛆虫《うじむし》|同様《どうやう》であるから、こんな|身魂《みたま》は|世《よ》の|汚穢《けがれ》と|成《な》るから、|神界《しんかい》の|経綸通《しぐみどほ》りに|致《いた》して|埒《らち》|能《よ》く|岩戸《いはと》を|開《ひら》かな、|後《のち》の|立直《たてなほ》しが|中々《なかなか》|大望《たいもう》であるから、|経綸通《しぐみどほ》りにして|見《み》せるぞよ。さう|致《いた》すと、|神《かみ》は|善《ぜん》|一《ひと》つなれど、|何《なに》も|解《わか》らん|世界《せかい》の|人民《じんみん》が|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》に|引《ひ》かされて、|矢張《やつぱ》り|艮金神《うしとらのこんじん》は|悪神《あくがみ》でありたと|申《まを》すぞよ。|細工《さいく》は|流々《りうりう》|仕上《しあげ》が|肝腎《かんじん》であるぞよ。|天地《てんち》の|神《かみ》の|御恩《ごおん》も|判《わか》らぬやうな、|畜生《ちくしやう》より|劣《おと》りた、|名《な》の|附《つ》けやうの|無《な》いものは、|末代《まつだい》の|邪魔《じやま》になるから、|天地《てんち》の|規則通《きそくどほ》り|規《き》めるから、|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》の|中《なか》でも|改信《かいしん》の|出来《でき》たのは、|今度《こんど》の|岩戸開《いはとびら》きに|焼払《やきはら》ひになる|所《ところ》を|救《たす》けてやるぞよ。|蛆虫《うじむし》の|中《なか》からでも|救《たす》かるべき|身魂《みたま》が|在《あ》れば、|択出《よりだ》して|善《ぜん》の|方《はう》へ|廻《まは》してやるぞよ。
|天《てん》の|大神様《おほかみさま》が、いよいよ|諸国《しよこく》の|神《かみ》に|命令《めいれい》を|降《くだ》しなされたら、|艮金神《うしとらのこんじん》|国常立尊《くにとこたちのみこと》が|総大将《そうだいしやう》となりて、|雨《あめ》の|神《かみ》、|風《かぜ》の|神《かみ》、|岩《いは》の|神《かみ》、|荒《あれ》の|神《かみ》、|地震《ぢしん》の|神《かみ》、|八百万《やほよろづ》の|眷属《けんぞく》を|使《つか》ふと、|一旦《いつたん》は|激《はげ》しいから、なるべくは|鎮《しづ》まりて|世界《せかい》の|守護《しゆご》を|為《さ》せるなれど、|昔《むかし》の|生粋《きつすゐ》の|神国魂《みくにだましひ》の|活神《いきがみ》の|守護《しゆご》と|成《な》りたら、|此《この》|中《なか》へ|来《き》て|居《を》る|身魂《みたま》に|申附《まをしつ》けてある|事《こと》を、|皆《みな》|覚《おぼ》へて|居《を》るであらうが、|一度《いちど》|申《まを》した|事《こと》は|其《その》|様《やう》に|致《いた》すから、|神《かみ》の|申《まを》す|事《こと》を|一度《いちど》で|聞《き》く|身魂《みたま》でないと、|充分《じうぶん》の|事《こと》は|無《な》いぞよ。もう|神《かみ》からは|此《こ》の|上《うへ》|人民《じんみん》に|知《し》らせる|事《こと》は|無《な》いから、|大峠《おほたうげ》が|出《で》て|来《き》てから、|如何様《どない》でも|改信《かいしん》をしますで|赦《ゆる》して|下《くだ》されと|何程《なにほど》|申《まを》しても、|赦《ゆる》す|事《こと》は|出来《でき》んぞよ。
|是程《これほど》|大望《たいもう》な|昔《むかし》からの|仕組《しぐみ》を、|今《いま》になりて|変《か》へるやうな|事《こと》を|致《いた》して|居《を》りたら、|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きの|大《おほ》きな|経綸《しぐみ》が|成就《じやうじゆ》|致《いた》さんぞよ。|根本《こつぽん》から|大洗濯《おほせんだく》を|致《いた》して、|末代《まつだい》|世界《せかい》の|口舌《くぜつ》が|無《な》いやうに|致《いた》して、|神界《しんかい》の|害《がい》をする|霊魂《みたま》が、|学《がく》で|此《この》|世《よ》を|暗闇《くらやみ》にして|了《しま》ふて、|正味《しやうみ》のない|教《をしへ》やら、やりかたは、|世《よ》の|大本《おほもと》からの|教《をしへ》でないから、|途中《とちう》から|出来《でき》たものは、|末代《まつだい》の|世《よ》の|遣《や》り|方《かた》には|用《もち》ゐんぞよ。
|今《いま》の|上《うへ》に|立《た》ちて|居《を》る|守護神《しゆごじん》は、|科学《がく》ほど|結構《けつこう》なものは|無《な》いと|申《まを》して、|渡《わた》りて|来《こ》られん|霊魂《みたま》が|神《かみ》を|抱込《だきこ》みて、|好《す》き|寸法《すつぱふ》に|致《いた》して、|此《この》|先《さき》をモ|一《ひと》つ|悪《あく》を|強《つよ》くして、|悪《あく》で|末代《まつだい》|建《た》てて|行《ゆ》かうとのエライ|目的《もくてき》でありたなれど、もう|悪《あく》の|霊《みたま》や|学《がく》の|世《よ》の|終《をは》りと|成《な》りたぞよ。|本《もと》の|神世《かみよ》へ|戻《もど》りて、|天《てん》と|地《ち》との|先祖《せんぞ》が|末代《まつだい》の|世《よ》を|持《も》たねば、|他《ほか》の|霊魂《みたま》では|此《この》|世《よ》は|続《つづ》かん、|口舌《くぜつ》の|絶《た》えるといふ|事《こと》は|無《な》いぞよ。
|大国常立尊《おほくにとこたちのみこと》が、|変性男子《へんじやうなんし》の|霊魂《みたま》の|宿《やど》りて|居《を》る|肉体《にくたい》を|借《か》りて、|末代《まつだい》の|世《よ》を|受取《うけと》りて、|世《よ》の|本《もと》の|生粋《きつすゐ》の|誠《まこと》の|生神《いきがみ》ばかりが|表《おもて》に|現《あら》はれて、|天地《てんち》の|先祖《せんぞ》の|御手伝《おてつだ》ひで、|数《かず》は|尠《すくな》いなれど、|神力《しんりき》は|御一柱《おひとかた》の|生神《いきがみ》の|御手伝《おてつだ》ひが|在《あ》り|出《だ》しても、|霊魂《みたま》の|神《かみ》が|何程《なにほど》|沢山《たくさん》でも、|本《もと》の|生神《いきがみ》の|力《ちから》には|敵《かな》はんから、|同《おな》じ|様《やう》な|事《こと》を|申《まを》して|細々《こまごま》と|今《いま》に|続《つづ》いて|知《し》らして|居《を》るなれど、|途中《とちう》に|出来《でき》た|枝《えだ》の|神《かみ》やら、|渡《わた》りて|来《き》て|居《を》る|修業《しゆげふ》なしの|利己主義《われよし》の|遣方《やりかた》の|守護神《しゆごじん》では、|肝腎《かんじん》の|事《こと》は|解《わか》りは|致《いた》さんぞよ。|誠《まこと》の|事《こと》の|解《わか》る|大本《おほもと》へ|出《で》て|来《き》て、【いろは】からの|勉強《べんきやう》を|致《いた》さねば、|学《がく》は|金《かね》を|入《い》れただけの|力《ちから》は|出《で》るなれど、|天《てん》から|貰《もら》うた|霊魂《みたま》に|附《つ》いた|生来《うまれつき》の|力《ちから》でないから、|物質《ぶつしつ》の|世《よ》の|間《あひだ》は|結構《けつこう》でありたなれど、もう|物質《ぶつしつ》の|世《よ》の|終《をは》りとなりたから、|今《いま》までの|学《がく》では|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きには|些少《すこし》も|間《ま》に|合《あ》はんぞよ。
大正四年旧十二月二日
|大国常立尊《おほくにとこたちのみこと》|変性男子《へんじやうなんし》の|霊魂《みたま》が|現《あら》はれて、|三千世界《さんぜんせかい》の|三段《さんだん》に|別《わ》けて|在《あ》る|御魂《みたま》を、それぞれに|立替《たてか》へ|立別《たてわ》けて、|目鼻《めはな》を|附《つ》けて、|先《ま》づ|是《これ》で|楽《らく》ぢやと|申《まを》すやうに|成《な》るのは、|大事業《たいもう》であるぞよ。|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きは、|戦争《いくさ》と|天災《てんさい》とで|済《す》むやうに|思《おも》ふて、|今《いま》の|人民《じんみん》はエライ|取違《とりちが》ひを|致《いた》して|居《を》るなれど、|戦争《いくさ》と|天災《てんさい》とで|人《ひと》の|心《こころ》が|直《なほ》るのなら、|埒《らち》よう|出来《でき》るなれど、|今度《こんど》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きは、そんな|容易《たやす》い|事《こと》でないぞよ。
|昔《むかし》からたてかへは|在《あ》りたなれど、|臭《くさ》い|物《もの》に|蓋《ふた》をしたやうな|事《こと》ばかりが|仕《し》て|有《あ》りたので、|根本《こんぽん》からの|動《うご》きの|取《と》れんたてかへは|致《いた》して|無《な》いから、これまでのやりかたは、|身魂《みたま》は|尚《なほ》|悪《わる》くなりて、|総曇《そうぐも》りに|成《な》りて|居《を》るから、|今度《こんど》は|一番《いちばん》に、|霊魂界《みたま》の|岩戸開《いはとびら》きであるから、|何《なに》につけても|大望《たいもう》であるぞよ。|是程《これほど》|曇《くも》り|切《き》りて|居《を》る、|三千世界《さんぜんせかい》の|身魂《みたま》を|水晶《すゐしやう》の|世《よ》に|致《いた》して、モウこの|后《さき》は|曇《くも》りの|懸《かか》らんやうに、|万古末代《まんごまつだい》、|世《よ》を|持《も》ちて|行《ゆ》かねば|成《な》らんから、|中々《なかなか》|骨《ほね》の|折《を》れる|事《こと》であるぞよ。
|天地《てんち》の|大神《おほかみ》の|思《おも》ひと、|人民《じんみん》の|思《おも》ひとは、|大《おほ》きな|違《ちが》ひであるから、|何《なに》につけても|今度《こんど》の|仕組《しぐみ》は、|人民《じんみん》では|汲《く》み|取《と》れんぞよ。|人民《じんみん》|一人《ひとり》を|改信《かいしん》させるのにも、|中々《なかなか》に|骨《ほね》が|折《を》れようがな。|今度《こんど》の|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きは、|昔《むかし》の|初《はじ》まりから|出来《でき》て|居《を》る、|霊魂《みたま》の|立替立直《たてかへたてなほ》しで|在《あ》るから、|悪《わる》い|霊魂《みたま》を|絶滅《のう》して|了《しま》ふてするなら、|容易《たやす》く|出来《でき》るなれど、|悪《あく》の|霊魂《みたま》を|善《ぜん》へ|立替《たてか》へて、|此《この》|世《よ》|一切《いつさい》の|事《こと》の|行《や》り|方《かた》を|替《か》へて、|神法《おきて》をかへて、|新《さら》つの|世《よ》の|純粋《きつすゐ》の|元《もと》の|水晶魂《すゐしやうだましひ》にして|了《しま》ふのであるから、|今《いま》の|人民《じんみん》の|思《おも》ふて|居《を》る|事《こと》とは、|天地《てんち》の|大違《おほちが》ひであるから、|毎度《まいど》|筆先《ふでさき》で|気《き》を|附《つ》けてあるぞよ。
あやべの|大本《おほもと》の|中《なか》には、|世界《せかい》の|人民《じんみん》の|心《こころ》の|通《とほ》りが、|皆《みな》に|仕《し》て|見《み》せてあるぞよ。|世界《せかい》の|鏡《かがみ》の|出《で》る|所《ところ》であるから、|世界《せかい》に|在《あ》る|実地正末《じつちしやうまつ》が、|皆《みな》にさして|見《み》せて|在《あ》るから、|色々《いろいろ》と|心配《しんぱい》をいたして|居《を》るなれど、どんなかがみも|仕《し》て|見《み》せて|在《あ》るから、|世界《せかい》が|良《よ》くなるほど、この|大本《おほもと》は|善《よ》くなるぞよ。|今《いま》ではモチツト、|何事《なにごと》も|思《おも》ふやうに|無《な》いのであるぞよ。|世界《せかい》の|事《こと》が、|皆《みな》|大本《おほもと》に|写《うつ》るから、それで、|此《この》|中《なか》から|行状《おこなひ》を|善《よ》く|致《いた》さんと、|世界《せかい》の|大本《おほもと》となる|尊《たふと》い|所《とこ》であるから、|何事《なにごと》も|筆先通《ふでさきどほ》りに|為《し》て|行《ゆ》かねばならんぞよ。
|是《これ》までの|世《よ》のやりかたは、|神《かみ》の|国《くに》では|用《もち》ゐられん、|邪神《あくがみ》の|極悪《ごくあく》のやり|方《かた》に、|変《か》はりて|了《しま》ふて|居《を》るのを、|盲者《めくら》|聾者《つんぼ》のやうな|世界《せかい》の|人民《じんみん》は、|知《し》らず|知《し》らずに、させられて|居《を》りたのであるから、|分《わか》らんのは|尤《もつと》もの|事《こと》であるぞよ。|誠《まこと》の|神《かみ》が|抱込《だきこ》まれて、|神《かみ》の|精神《せいしん》が|狂《くる》ふて|居《を》るのであるから、|人民《じんみん》が|悪《わる》うなるのは|当然《あたりまへ》であるぞよ。
モ|一《ひと》つ|此《こ》の|先《さき》を|悪《あく》を|強《つよ》く|致《いた》して、この|現状《なり》で|世《よ》を|建《た》てて|行《ゆ》くどいらい|仕組《しぐみ》をして|居《を》るなれど、モウ|悪《あく》の|霊《みたま》の|利《き》かん|時節《じせつ》が|循環《めぐり》てきて、|悪神《あくがみ》の|降服《わうじやう》いたす|世《よ》になりて|来《き》たから、|吾《われ》の|口《くち》から|吾《われ》が|企《たく》みて|居《を》りた|事《こと》を、|全然《さつぱり》|白状《はくじやう》いたす|世《よ》になりたぞよ。
|世界《せかい》の|御魂《みたま》が、|九分《くぶ》まで|悪《あく》に|化《な》りて、|今《いま》まで|世《よ》を|持《も》ち|荒《あら》して|来《き》た|守護神《しゆごじん》に、|改信《かいしん》の|出来《でき》かけが、どのやうにも|出来《でき》んから、|神《かみ》も|堪忍袋《かんにんぶくろ》を|切《き》らして、|一作《いつさく》に|致《いた》せば|八九分《はちくぶ》の|霊魂《みたま》が|悪《わる》く|成《な》るし、|改信《かいしん》|致《いた》さす|暇《ま》がモウ|無《な》いし、|是程《これほど》この|世《よ》に|大望《たいもう》な|事《こと》は、|昔《むかし》から|未《ま》だ|無《な》い、|困難《こんなん》な|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きであるのに、|何《なに》も|分《わか》らぬ|厄雑神《やくざがみ》に|使《つか》はれて|居《を》ると、|何《なに》も|判《わか》らんやうになるぞよ。
まことの|行《ぎやう》も|致《いた》さずに、|天地《てんち》の|先祖《せんぞ》を|無視《なく》して、|悪《あく》のやりかたで|世界《せかい》の|頭《かしら》になりて、|此《この》|先《さき》を|悪《あく》をモ|一《ひと》つ|強《つよ》く|致《いた》して、まぜこぜで|行《や》りて|行《ゆ》ことの|初発《しよつぱつ》の|目的通《もくてきどほ》りに、|此所《ここ》まではとんとん|拍子《びやうし》に|面白《おもしろ》いほど|上《のぼ》り|来《き》たなれど、この|神国《しんこく》には|深《ふか》い|経綸《しぐみ》が|世《よ》の|元《もと》から|致《いた》して|在《あ》りて、|九分九厘《くぶくりん》まで|来《き》たぞよ。
|悪神《あくがみ》の|仕組《しぐみ》も、|九分九厘《くぶくりん》まで|来《き》たなれど、モウ|輪止《りんどま》りとなりて、|前《さき》へ|行《ゆ》く|事《こと》も|出来《でき》ず、|後《あと》へ|戻《もど》る|事《こと》も|出来《でき》んのが、|現今《いま》の|事《こと》であるぞよ。|仕放題《しはうだい》の|利己主義《われよし》の|行方《やりかた》で、|末代《まつだい》の|世《よ》を|悪《あく》で|建《た》てて|行《ゆ》くことの|目的《もくてき》が、|今《いま》までは|面白《おもしろ》い|程《ほど》のぼれたなれど。
|神《かみ》の|国《くに》には、チツと|外《ほか》の|御霊《みたま》には|判《わか》らん|経綸《しぐみ》が|為《し》てあるから、|人《ひと》も|善《よし》、|吾《われ》も|善《よし》、|上下《うへした》|揃《そろ》ふて|行《ゆ》かねば、|国《くに》の|奪《と》り|合《あ》ひを|為《す》るやうな|見苦《みぐる》しい|性来《しやうらい》では、|世《よ》は|永久《ながく》は|続《つづ》かんぞよと|申《まを》して、|筆先《ふでさき》に|出《だ》して、|気《き》を|附《つ》けてあるぞよ。
|斯世《このよ》は|善《ぜん》と|悪《あく》とが|有《あ》りて、|何方《どちら》でこの|世《よ》が|立《た》つかと|言《い》ふことを、|末代《まつだい》|続《つづ》かせねば|成《な》らん|世《よ》であるから、|何事《なにごと》も|天地《てんち》から|為《さ》してあるのであるぞよ。|吾《われ》が|為《し》て|居《を》るのなら、|何事《なにごと》も|思《おも》ふたやうに|行《ゆ》けんならんのに、どうしても|行《ゆ》けんのが、|神《かみ》から|皆《みな》|為《さ》せられて|居《を》る|証拠《しようこ》であるぞよ。|善《ぜん》の|道《みち》は|苦労《くらう》が|永《なが》いなれど、この|先《さき》は|末代《まつだい》の|世《よ》を|続《つづ》かすので、|中々《なかなか》|念《ねん》に|念《ねん》が|入《い》るぞよ。
|善《ぜん》の|行《ぎやう》は|永《なが》いなれど、|善《ぜん》の|方《はう》には、|現界幽界《このよ》に|何一《なにひと》つ|知《し》らん|事《こと》の|無《な》いやうに、|世《よ》の|元《もと》から|行《ぎやう》が|為《さ》してあるから、|此《この》|先《さき》は、|悪《あく》の|仕放題《しはうだい》に|行《ぎやう》|無《な》しに|出《で》て|来《き》た|守護神《しゆごじん》が|辛《つら》くなるぞよ。|如何《どん》な|事《こと》も|為《し》ておくと、|何事《なにごと》も|堪《こば》れるなれど、|行《ぎやう》|無《な》しの|守護神《しゆごじん》に|使《つか》はれて|居《を》ると、|世《よ》の|終《しま》ひの|初《はじ》まりの|御用《ごよう》は|勤《つと》まらんぞよ。
|善《ぜん》と|悪《あく》との|変《かは》り|目《め》であるから、|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》はヂリヂリ|悶《もだ》えるやうになるから、|一日《いちにち》も|早《はや》く|改信《かいしん》|致《いた》して、|善《ぜん》の|道《みち》に|立《た》ち|帰《かへ》らねば、モウこれからは|貧乏動《びんばふうご》きも|為《さ》さんぞよ。|善《ぜん》の|守護神《しゆごじん》は|数《かず》は|尠《すくな》いなれど、|何《ど》んな|行《ぎやう》も|為《さ》してあるから、サア|今《いま》といふやうに|成《な》りて|来《き》たをりには、|何程《なにほど》|烈《はげ》しきことの|中《なか》でも、|気楽《きらく》に|神界《しんかい》の|御用《ごよう》が|出来《でき》るから、|一厘《いちりん》の|御手伝《おてつだ》ひで、|神《かみ》の|本《もと》には、|肝腎《かんじん》の|時《とき》に|間《ま》に|合《あ》ふ|守護神《しゆごじん》が|拵《こしら》へてありて、|世界《せかい》の|止《とど》めを|刺《さ》すのであるぞよ。
|神《かみ》の|国《くに》は|小《ちひ》さうても、|大《おほ》きな|国《くに》にも|負《ま》けは|致《いた》さんぞよ。|神国《しんこく》は|世界《せかい》から|見《み》れば、|小《ちひ》さい|国《くに》であれど、|天《てん》と|地《ち》との、|神力《しんりき》の|強《つよ》い|本《もと》の|先祖《せんぞ》の|神《かみ》が、|三千世界《さんぜんせかい》へ|天晴《あつぱ》れと|現《あら》はれて、|御加勢《ごかせい》あるから、|数《かず》は|少《すく》なうても|正味《しやうみ》の|御魂《みたま》ばかりで、どんな|事《こと》でも|致《いた》すぞよ。|何《なに》|程《ほど》|人数《にんずう》が|多《おほ》くても、|何《なん》の|役《やく》にも|立《た》たぬ|蛆虫《うじむし》ばかりで、|善《よ》い|事《こと》は|一《ひと》つも|能《よ》う|為《せ》ずに、|邪魔《じやま》ばかりを|致《いた》すから、|世界《せかい》の|物事《ものごと》が|遅《おそ》くなりて、|世界中《せかいぢう》の|困難《こんなん》であるが、|未《ま》だ|気《き》の|附《つ》く|守護神《しゆごじん》が|無《な》いゆゑに、|何時《いつ》までも|筆先《ふでさき》で|知《し》らすのであるぞよ。
|天地《てんち》の|御恩《ごおん》も|知《し》らずに、|利己主義《われよし》で|茲《ここ》まで|昇《のぼ》りつめて|来《き》た|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》に、|改信《かいしん》の|為《さ》せかけが|出来《でき》んので、|何事《なにごと》も|遅《おそ》くなりて、|総損害《そうぞこなひ》に|上《うへ》から|下《した》までの|難渋《なんじふ》となるから、|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から、|今《いま》ぢや|早《はや》ぢやと|申《まを》して、|引掛戻《ひつかけもど》しに|致《いた》して|気附《きづ》くやうに|知《し》らしても、|元《もと》からの|思《おも》ひが|大間違《おほまちが》ひで|在《あ》るから、|世界《せかい》の|岩戸開《いはとびら》きの|九分九厘《くぶくりん》と|成《な》りたところで、ジリジリ|舞《ま》ふ|事《こと》が|見《み》え|透《す》いて|居《を》るから、|気《き》を|附《つ》けるぞよ。
|天地《てんち》の|先祖《せんぞ》の、|思《おも》ひの|判《わか》りて|居《を》る|守護神《しゆごじん》と|人民《じんみん》は、|今《いま》に|無《な》いぞよ。|是《これ》ほど|暗《くら》がりの|世《よ》の|中《なか》へ、|世《よ》の|元《もと》の|正真《しやうまつ》の|水火神《いきがみ》が|揃《そろ》ふて|表《あら》はれても、|恐《こは》いばかりで、|腰《こし》の|抜《ぬ》けるものやら、|顎《あご》が|外《はづ》れて|早速《さつそく》にものも|能《よ》う|言《い》はんやうな|守護神《しゆごじん》や、|人民《じんみん》が|沢山《たくさん》|出来《でき》るばかりで、|神《かみ》の|目《め》からは|間《ま》に|合《あ》ひさうに|無《な》いぞよ。
|判《わか》りた|御魂《みたま》の|宿《やど》りて|居《を》る|肉体《にくたい》でありたら、どんな|神徳《しんとく》でも|授《さづ》けるから、この|神徳《しんとく》を|受《う》ける|御魂《みたま》に|使《つか》はれて|居《を》りたら、|一荷《いつか》に|持《も》てんほど、|神徳《しんとく》を|渡《わた》すから、その|貰《もら》ふた|神徳《しんとく》に|光《ひかり》を|出《だ》して|呉《く》れる|人民《じんみん》で|無《な》いと、|持切《もちき》りにしては|天地《てんち》へ|申訳《まをしわけ》が|無《な》いぞよ。
大正五年旧十一月八日
あまり|此《この》|世《よ》に|大《おほ》きな|運否《うんぷ》があるから、|口舌《くぜつ》が|絶《た》えんから、|世界中《せかいぢう》を|桝掛《ますかけ》を|引《ひ》いて、|世界《せかい》の|大本《おほもと》を|創造《こしらへ》た、|天《てん》と|地《ち》との|先祖《せんぞ》の|誠《まこと》で、|万古末代《まんごまつだい》|善《ぜん》|一《ひと》つの|道《みち》で|世《よ》を|治《をさ》めて、|口舌《くぜつ》の|無《な》いやうに|致《いた》すぞよ。|天《てん》は|至仁至愛真神《みろくさま》の|神《かみ》の|王《わう》なり、|地《ち》の|世界《せかい》は|根本《こつぽん》の|国常立尊《くにとこたちのみこと》の|守護《しゆご》で、|神国《しんこく》の、|万古末代《まんごまつだい》|動《うご》かぬ|神《かみ》の|道《みち》で|治《をさ》めるぞよ。|吾好《われよ》しの|行《や》り|方《かた》では、|此《この》|世《よ》は|何時《いつ》までも|立《た》たんぞよ。この|世界《せかい》は|一《ひと》つの|神《かみ》で|治《をさ》めん|事《こと》には、|人民《じんみん》では|治《をさ》まりは|致《いた》さんぞよ。
|悪神《あくがみ》の|仕組《しぐみ》は|世《よ》が|段々《だんだん》と|乱《みだ》れるばかりで、|人民《じんみん》は|日《ひ》に|増《まし》に、|難渋《なんじふ》を|致《いた》すものが|殖《ふ》えるばかりで、|誠《まこと》の|神《かみ》からは|目《め》を|明《あ》けて|見《み》て|居《を》られんから、|天《てん》からは|御三体《ごさんたい》の|大神様《おほかみさま》なり、|地《ち》は|国常立尊《くにとこたちのみこと》の|守護《しゆご》で、|竜宮様《りうぐうさま》の|御加勢《おてつだひ》で、|元《もと》の|昔《むかし》の|神《かみ》の|経綸通《しぐみどほ》りの|松《まつ》の|世《よ》に|立替《たてかへ》|致《いた》して、|世界中《せかいぢう》を|助《たす》けるのであるから、|中々《なかなか》|骨《ほね》が|折《を》れるぞよ。モウ|時節《じせつ》が|近《ちか》よりたぞよ。|用意《ようい》をなされよ。|脚下《あしもと》から|鳥《とり》が|立《た》つぞよ。
|天地《てんち》の|先祖《せんぞ》の|神々《かみがみ》を|粗略《そりやく》に|致《いた》して、|神《かみ》は|此《この》|世《よ》に|無《な》い|同様《どうやう》にして|東北《うしとら》へ|押込《おしこ》めておいて、|世界《せかい》の|大将《たいしやう》に|成《な》りて、|悪《あく》の|血統《ちすぢ》と|眷属《けんぞく》の|何《なに》も|知《し》らぬ|悪魔《あくま》を|使《つか》ふて、|末代《まつだい》|世《よ》を|立《た》てやうと|思《おも》ふて、エライ|経綸《しぐみ》をして|居《を》れど、|世《よ》の|本《もと》からの|天地《てんち》を|創《こし》らへた、|其《その》|儘《まま》で|肉体《にくたい》の|続《つづ》いてある、|煮《に》ても|焼《や》いても|引裂《ひきさ》いてもビクともならん|生神《いきがみ》が、|天《てん》からと|地《ち》からと|両鏡《りやうかがみ》で、|世界《せかい》の|事《こと》を|帳面《ちやうめん》に|附《つ》け|止《と》めてある|同様《どうやう》に|判《わか》りて|居《を》るから、モウ|神界《かみ》には|動《うご》かぬ|仕組《しぐみ》が|致《いた》してあるから、|世界《せかい》の|人民《じんみん》は|一人《ひとり》なりと、|一日《いちにち》も|早《はや》く|大本《おほもと》へ|参《まゐ》りて、|神《かみ》の|御用《ごよう》を|致《いた》して、|世界中《せかいぢう》を|神国《しんこく》に|致《いた》す|差添《さしぞ》へに|成《な》りて|下《くだ》されよ。|上下揃《かみしもそろ》ふて|神国《しんこく》の|世《よ》に|世界中《せかいぢう》を|平均《なら》すぞよ。
|今《いま》の|世界《せかい》の|人民《じんみん》は、|現世《このよ》に|神《かみ》は|要《い》らんものに|致《いた》して、|神《かみ》を|下《した》に|見降《みくだ》し、|人民《じんみん》よりエライものは|無《な》きやうに|思《おも》ふて|居《を》るが、|見《み》て|御座《ござ》れよ、|岩戸開《いはとびら》きの|真最中《まつさいちう》に|成《な》りて|来《く》ると、|知識《ちしき》でも|学《がく》でも、|金銀《きんぎん》を|何《なに》ほど|積《つ》みて|居《を》りても、|今度《こんど》は|神《かみ》にすがりて、|誠《まこと》の|神力《しんりき》でないと|大峠《おほたうげ》が|越《こ》せんぞよ。|今度《こんど》は|神《かみ》が|此《この》|世《よ》に|有《あ》るか|無《な》いかを、|解《わ》けて|見《み》せて|遣《や》るから、|悪《あく》に|覆《かへ》りて|居《を》る|身魂《みたま》でも|善《ぜん》へ|立《た》ち|返《かへ》らな、|神《かみ》の|造《つく》りた|陸地《おつち》の|上《うへ》には|居《を》れんやうになるから、|改信《かいしん》を|致《いた》して|身魂《みたま》を|能《よ》く|研《みが》いて|居《を》らんと、|何彼《なにか》の|時節《じせつ》が|迫《せま》りて|来《き》たから、|万古末代《まんごまつだい》|取戻《とりもど》しの|成《な》らん|事《こと》が|出来《しゆつたい》|致《いた》すから、|今《いま》に|続《つづ》いてクドウ|気《き》を|附《つ》けるのであるぞよ。
|是《これ》だけに|気《き》を|附《つ》けて|居《を》るのに|聞《き》かずして、|吾《われ》と|吾《わ》が|身《み》を|苦《くる》しめて|最後《どんじり》で|改信《かいしん》を|致《いた》しても、モウ|遅《おそ》いぞよ。|厭《いや》な|苦《くる》しい|根《ね》の|国《くに》|底《そこ》の|国《くに》へ|落《お》とされるから、さう|成《な》りてから|地団太《ぢだんだ》|踏《ふ》みてジリジリ|悶《もだ》えても、そんなら|赦《ゆる》してやるといふ|事《こと》は|出来《でき》んから、|十分《じふぶん》に|落度《おちど》の|無《な》いやうに、|神《かみ》がいやになりても、|人民《じんみん》を|助《たす》けたい|一心《いつしん》であるから、|何《なん》と|言《い》はれても|今《いま》に|気《き》を|附《つ》けるぞよ。
これからは|筆先通《ふでさきどほ》りが、|世界《せかい》に|現《あら》はれて|来《く》るから、|心《こころ》と|口《くち》と|行《おこな》ひと|三《みつ》つ|揃《そろ》ふた|誠《まこと》でないと、|今度《こんど》|神《かみ》から|持《も》たす|荷物《にもつ》は|重《おも》いから、|高天原《たかあまはら》から|貰《もら》ふた|荷《に》が|持《も》てんやうな|事《こと》では、|余所《よそ》から|人《ひと》が|沢山《たくさん》|出《で》て|来《き》だすから、|其《その》|時《とき》に|恥《は》づかしう|無《な》いやうに、|腹帯《はらおび》を|確《しつか》り|締《し》めて|居《を》らんと、|肝腎《かんじん》の|宝《たから》を|取外《とりはづ》す|事《こと》が|出来《でき》るぞよ。|今度《こんど》は|此《この》|大本《おほもと》に|立寄《たちよ》る|人民《じんみん》に、|神《かみ》からの|重荷《おもに》を|持《も》たすから、|各々《めんめ》に|身魂《みたま》を|十分《じふぶん》に|研《みが》いておいて|下《くだ》されよ。ドンナ|神徳《しんとく》でも|渡《わた》して、|世界《せかい》の|鑑《かがみ》に|成《な》るやうに|力《ちから》を|附《つ》けてやるぞよ。
|改信《かいしん》と|申《まを》すのは|何事《なにごと》に|由《よ》らず、|人間心《にんげんごころ》を|捨《す》てて|了《しま》ふて、|知識《ちしき》や|学《がく》を|便《たよ》りに|致《いた》さず、|神《かみ》の|申《まを》す|事《こと》を|一《ひと》つも|疑《うたが》はずに|生《うま》れ|赤子《あかご》のやうになりて、|神《かみ》の|教《をしへ》を|守《まも》る|事《こと》であるぞよ。|霊魂《みたま》を|研《みが》くと|申《まを》すのは、|天《てん》から|授《さづ》けて|貰《もら》ふた|元《もと》の|霊魂《みたま》の|命令《めいれい》に|従《したが》ふて、|肉体《にくたい》の|心《こころ》を|捨《す》て、|本心《ほんしん》に|立返《たちかへ》りて、|神《かみ》の|申《まを》す|事《こと》を|何一《なにひと》つ|背《そむ》かんやうに|致《いた》すのであるぞよ。|学《がく》や|知識《ちゑ》や|金《かね》を|力《ちから》に|致《いた》す|内《うち》は、|誠《まこと》の|霊魂《みたま》は|研《みが》けて|居《を》らんぞよ。
この|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きを|致《いた》すには、|学《がく》でも、|悧巧《りかう》でも、|知識《ちゑ》でも、|金銀《きんぎん》でも、|法律《はふりつ》でも、|行《ゆ》かんぞよ。|兵隊《へいたい》ばかりの|力《ちから》でも|行《ゆ》かず、|今《いま》の|政治《せいぢ》の|行《や》り|方《かた》では、|猶《なほ》|行《ゆ》かず、|今《いま》|迄《まで》の|色々《いろいろ》の|宗教《しうけう》でも|猶《なほ》|行《ゆ》かず、|今《いま》の|学校《がくかう》の|教《をしへ》でも|行《ゆ》かず、|根本《こんぽん》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きであるから、|今《いま》の|人民《じんみん》の|思《おも》ふて|居《を》る|事《こと》とは、|天地《てんち》の|相違《さうゐ》であるから、|世界《せかい》の|人民《じんみん》が|誠《まこと》にいたさんから、|神《かみ》は|骨《ほね》が|折《を》れるのであるぞよ。|天地《てんち》の|間《あひだ》の|只《ただ》の|一輪《いちりん》|咲《さ》いた|梅《うめ》の|花《はな》の|経綸《しぐみ》で、|万古末代《まんごまつだい》|世《よ》を|続《つづ》かすのであるから、|人民《じんみん》には|判《わか》らんのも|尤《もつと》もの|事《こと》であるぞよ。
|九《ここの》つ|花《ばな》が|咲《さ》きかけたぞよ。|九《ここの》つ|花《ばな》が|十曜《とえう》に|成《な》りて|咲《さ》く|時《とき》は、|万古末代《まんごまつだい》しほれぬ|神国《しんこく》の|誠《まこと》の|花《はな》であるぞよ。|心《こころ》の|善《よ》きもの、|神《かみ》の|御役《おやく》に|立《た》てて、|末代《まつだい》|神《かみ》に|祭《まつ》りて|此《この》|世《よ》の|守護神《しゆごじん》といたすぞよ。|此《この》|世《よ》|初《はじ》まりてから、|前《さき》にも|後《あと》にも|末代《まつだい》に|一度《いちど》より|無《な》い、|大謨《たいもう》な|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きであるから、|一《ひと》つなりとも|神《かみ》の|御用《ごよう》を|勤《つと》めたら、|勤《つと》め|徳《どく》であるぞよ。それも|其《その》|人《ひと》の|心《こころ》|次第《しだい》であるぞよ。|神《かみ》は|無理《むり》に|引張《ひつぱ》りは|致《いた》さんぞよ。
|是《これ》だけ|蔓《はびこ》りた|悪《あく》の|世《よ》を|治《をさ》めて、|善《ぜん》|一《ひと》つの|神世《かみよ》に|致《いた》すのであるから、この|変《か》はり|目《め》に|辛《つら》い|身魂《みたま》が|多人数《たつぴつ》あるから、|改信《かいしん》|改信《かいしん》と|一点張《いつてんばり》りに|申《まを》して、|知《し》らしたのであるぞよ。|早《はや》い|改信《かいしん》は|結構《けつこう》なれど、|遅《おそ》い|改信《かいしん》は|苦《くる》しみが|永《なが》いばかりで、|何《なん》にも|間《ま》に|合《あ》はん|事《こと》になるぞよ。|艮金神《うしとらのこんじん》で|仕組《しぐみ》|致《いた》して、|国常立尊《くにとこたちのみこと》と|現《あら》はれて、|善《ぜん》|一《ひと》つの|道《みち》へ|立替《たてかへ》るのであるから、|経綸通《しぐみどほ》りが|世界《せかい》から|出《で》て|来《き》だすと、|物事《ものごと》が|早《はや》くなるから、|身魂《みたま》を|磨《みが》いて|居《を》らんと、|結構《けつこう》な|事《こと》が|出《で》て|来《き》ても、|錦《にしき》の|旗《はた》の|模様《もやう》が、|判《わか》らんやうな|事《こと》ではならんぞよ。|今《いま》まで|苦労《くらう》いたした|事《こと》が、|水《みづ》の|泡《あわ》になりてはつまらんから、|大本《おほもと》の|辛《つら》い|行《ぎやう》を|勇《いさ》んでいたす|人民《じんみん》でありたら、|神《かみ》が|何《なに》|程《ほど》でも|神力《しんりき》を|授《さづ》けるから、ドウゾ|取違《とりちが》ひをせぬやう、|慢心《まんしん》の|出《で》ぬやうに|心得《こころえ》て|居《を》りて|下《くだ》されよ。|世界《せかい》の|神《かみ》、|仏《ぶつ》、|耶《や》、|人民《じんみん》の|為《ため》に、|神《かみ》が|永《なが》らく|苦労《くらう》を|致《いた》して|居《を》るぞよ。
(大正一二・四・二七 旧三・一二 於竜宮館 北村隆光再録)
第二五章 |三五神諭《おほもとしんゆ》その六〔一五五〇〕
大正六年旧二月九日
|神《かみ》の|国《くに》には、|世《よ》の|根本《こつぽん》の|大昔《おほむかし》から、|天地《てんち》の|先祖《せんぞ》が|仕組《しぐみ》が|致《いた》してあるので、|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きは|末代《まつだい》に|一度《いちど》より|為《し》られんのであるから、|何《なん》につけても|大謨《たいもう》な|事《こと》であるぞよ。|肝腎《かんじん》の|事《こと》は、あとへまはして、|何《なに》も|知《し》らぬ|厭《いや》な|方《はう》の|神《かみ》や、|下劣《げす》の|守護神《しゆごじん》が|大事《だいじ》の|仕組《しぐみ》も|知《し》らずに、|利己主義《われよし》の|経綸《やりかた》で、ここまでトントン|拍子《びやうし》に|出《で》て|来《き》たなれど、|九分九厘《くぶくりん》といふとこで|往生《わうじやう》|致《いた》さなならん|世《よ》になりたぞよ。
|九分九厘《くぶくりん》の|御霊《みたま》が、|天地《てんち》の|御恩《ごおん》といふ|事《こと》が|判《わか》りて|来《き》たなれば、|現世《このよ》はこんな|惨《むご》い|事《こと》に|成《な》りはせんなれど、|盲目《めくら》や|聾《つんぼ》と|同《おな》じ|事《こと》で、|全然《さつぱり》|暗黒界《くらやみ》であるぞよ。|今《いま》の|守護神《しゆごじん》と|人民《じんみん》とは、|岩戸開《いはとびら》きの|手伝《てつだひ》ひ|致《いた》すどころか、|大《おほ》きな|邪魔《じやま》を|致《いた》すぞよ。|悪《あく》の|方《はう》から|見《み》れば、|誠《まこと》の|方《はう》が|悪《あく》に|見《み》えて、|悪《あく》の|方《はう》が|善《よ》く|見《み》えるので、|何事《なにごと》も|皆《みな》|逆様《さかさま》ばかりより|出来《でき》んのであるぞよ。|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》が|大本《おほもと》の|中《なか》へ|這入《はい》りて|来《き》て、|何彼《なにか》の|邪魔《じやま》を|致《いた》すから、|気《き》ゆるしは|些《ちつ》とも|出来《でき》んから、|物事《ものごと》が|遅《おそ》くなりて、|世界中《せかいぢう》の|苦《くる》しみが|永《なが》うなると|申《まを》す|事《こと》が、|毎度《まいど》|筆先《ふでさき》に|出《だ》して|知《し》らしてあるぞよ。
|大本《おほもと》には、|世界《せかい》の|事《こと》が|映《うつ》るから、|大本《おほもと》の|中《なか》の|様子《やうす》を|見《み》て|居《を》りたら、|世界《せかい》の|事《こと》の|見当《けんたう》が、|明白《ありやか》に|判《わか》りて|来《く》るぞよ。|筆先《ふでさき》に|一度《いちど》|出《だ》した|事《こと》は、チト|速《はや》し|遅《おそ》しはあるなれど、|毛筋《けすぢ》も|違《ちが》はん|事《こと》ばかりであるから、|皆《みな》|出《で》て|来《く》るぞよ。
|霊《ひ》の|本《もと》の|国《くに》と|申《まを》しても、|惨《むご》い|事《こと》に|成《な》りて|居《を》るのを、|知《し》りて|居《を》る|守護神《しゆごじん》も|人民《じんみん》も、|誠《まこと》になさけ|無《な》いほど|尠《すくな》いから、|今《いま》の|世界《せかい》の|困難《こんなん》であるぞよ。|神国魂《みくにだましひ》と|申《まを》して|威張《ゐば》りて|居《を》れど、|神国魂《みくにだましひ》の|性来《しやうらい》はチツとも|無《な》いやうに|惨《むご》い|事《こと》になりて|居《を》るぞよ。
|世界《せかい》を|一《ひと》つに|丸《まる》めて、|神国《しんこく》の|世《よ》に|致《いた》すには、|此《この》|世《よ》を|拵《こしら》へた|天《てん》と|地《ち》との|根本《こつぽん》の|真《まこと》で|治《をさ》める|時節《じせつ》が|参《まゐ》りて|来《き》たから、|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から|今《いま》に|続《つづ》いて|知《し》らしてあるぞよ。|世界《せかい》の|今度《こんど》の|大戦争《おほいくさ》は|世界中《せかいぢう》の|人民《じんみん》の|改信《かいしん》の|為《ため》であるぞよ。まだまだ|是《これ》では|改信《かいしん》が|出来《でき》ずに、|神《かみ》の|国《くに》を|取《と》る|考《かんが》へを|致《いた》して|居《を》るぞよ。|神《かみ》の|国《くに》は|神《かみ》の|誠《まこと》の|守護《しゆご》|致《いた》してある|国《くに》であるから、|何《なに》ほど|邪神《あくがみ》に|神力《しんりき》が|沢山《たくさん》ありたとて、|知識《ちゑ》や|学《がく》がありたとて、|神国《しんこく》には|到底《とて》も|叶《かな》はん|仕組《しぐみ》が|世《よ》の|本《もと》から|致《いた》してあるから、|九分九厘《くぶくりん》で|掌《てのひら》を|返《かへ》して、|万古末代《まんごまつだい》|潰《つぶ》れぬ|守護《しゆご》を|致《いた》して、|三千世界《さんぜんせかい》を|丸《まる》めて|人民《じんみん》を|安心《あんしん》させ、|松《まつ》の|世《よ》、|仁愛神《みろく》の|世《よ》、|神世《かみよ》といたして、|天地《てんち》へ|御目《おめ》に|掛《か》ける|時節《じせつ》が|近《ちか》うなりたぞよ。
|天地《てんち》の|間《あひだ》に|一輪《いちりん》|咲《さ》いた|梅《うめ》の|花《はな》、|三千世界《さんぜんせかい》を|一《ひと》つに|丸《まる》めて|一《ひと》つの|王《わう》で|治《をさ》めるぞよ。|悪神《あくがみ》のしぐみは、|今《いま》まではトントン|拍子《びやうし》に|来《き》たなれど、|九分九厘《くぶくりん》でもう|一足《ひとあし》も|先《さき》へも|行《ゆ》けず、|後《あと》へも|戻《もど》れず、|往《ゆ》きも|帰《かへ》りも|成《な》らんといふのが、|今《いま》の|事《こと》であるぞよ。|茲《ここ》へ|成《な》りた|所《ところ》で、|悪神《あくがみ》の|頭《かしら》が|充分《じうぶん》|改信《かいしん》を|致《いた》して、|善《ぜん》へ|立返《たちかへ》りて、|善《ぜん》の|働《はたら》きをいたさんと、|世界中《せかいぢう》の|何《なに》も|知《し》らん|人民《じんみん》が、|此《この》|先《さき》でエライ|苦《くる》しみを|致《いた》すぞよ。この|大本《おほもと》の|中《なか》にも、|悪《あく》の|身霊《みたま》の|守護神《しゆごじん》が|化《ば》けて|来《き》て|居《を》るが、もう|化《ば》けを|現《あら》はして、|皆《みな》に|見《み》せてやるぞよ。
大正七年旧正月十二日
|三千世界《さんぜんせかい》|一度《いちど》に|開《ひら》く|梅《うめ》の|花《はな》、|艮金神《うしとらのこんじん》の|守護《しゆご》の|世《よ》になりたぞよ。|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から|出口《でぐち》|直《なほ》の|手《て》を|借《か》り|口《くち》を|借《か》りて|知《し》らした|事《こと》の、|実地《じつち》が|現《あら》はれる|時節《じせつ》が|近寄《ちかよ》りて|来《き》たぞよ。|今《いま》までの|世《よ》は|悪神《あくがみ》の|覇張《はば》る|世《よ》で、|何事《なにごと》も|好《す》き|寸法《すつぱふ》、|利己主義《われよし》の|行《や》り|方《かた》で、|此《この》|世《よ》を|乱《みだ》して|来《き》たが、モウ|是《これ》からは|昔《むかし》の|元《もと》の|生神《いきがみ》が|世《よ》に|現《あら》はれて、|三千世界《さんぜんせかい》を|守護《かまふ》やうに|時節《じせつ》が|参《まゐ》りたから、|思《おも》ひの|違《ちが》ふ|守護神《しゆごじん》|人民《じんみん》が|大多数《たつぴつ》に|出来《でき》て|来《く》るぞよ。|今度《こんど》の|二度目《にどめ》の|天《あま》の|磐戸開《いはとびら》きは、|悪《あく》の|身魂《みたま》が|毛筋《けすぢ》の|横巾《よこはば》でも|混《まじ》りてありたら|成就《じやうじゆ》いたさぬ、|大謨《たいもう》な|末代《まつだい》に|一度《いちど》より|為《し》られん|神界《しんかい》の|経綸《しぐみ》であるから、|茲《ここ》まで|悪神《あくがみ》の|覇張《はば》りた|暗黒《くらがり》の|世《よ》を、|生粋《きつすゐ》の|水晶《すゐしやう》のやうな|明《あき》らかな、|何時《いつ》までも|変《か》はらぬ|神世《かみよ》に|致《いた》さねば|成《な》らぬから、|神《かみ》も|中々《なかなか》|骨《ほね》の|折《を》れる|事《こと》であるぞよ。
|昔《むかし》のミロク|様《さま》の|純粋《きつすゐ》の、|何時《いつ》になりても|変《か》はらぬ|其《その》|儘《まま》の|秘密《ひみつ》の|経綸《しぐみ》の|凝結《かたまり》で、|末代《まつだい》|動《うご》かん|巌《いは》に|松《まつ》の|仕組《しぐみ》、|何神《どのかみ》にも|解《わか》らぬやうに|為《し》てある|善《ぜん》|一《ひと》つの|誠《まこと》の|道《みち》であるから、|途中《とちう》に|精神《こころ》の|変《か》はるやうな|身魂《みたま》では|出来《でき》も|致《いた》さず、|判《わか》りもせぬぞよ。|此《この》|世《よ》の|元《もと》を|創造《こしら》へて、|世界中《せかいぢう》の|一切《いつさい》の|事《こと》、|何一《なにひと》つ|知《し》らんといふ|事《こと》のない|身魂《みたま》でないと、|今度《こんど》の|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きは、|世界《せかい》を|創造《こしら》へるよりも、|何程《どれほど》|骨《ほね》が|折《を》れるか|知《し》れんぞよ。|限《かぎ》り|無《な》しの|潰《つぶ》されぬ|末代《まつだい》の|経綸《しぐみ》、|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きといふことは、|爰《ここ》まで|悪神《あくがみ》が|覇張《はば》りて、モ|一《ひと》つ|奸賢《わるが》しこう|人民《じんみん》をいたして、まだまだ|悪神《あくがみ》の|力《ちから》を|強《つよ》くして、|善神《ぜんのかみ》の|道《みち》は|立《た》てさせぬやうに、|体主霊従主義《あくばかり》で|貫《つらぬ》く|仕組《しぐみ》を|致《いた》して|居《を》るから、|神国《しんこく》の|人民《じんみん》は|余程《よほど》|魂《たま》を|研《みが》いて、|水晶魂《すゐしやうだま》を|元《もと》に|研《みが》いて|光《ひかり》を|出《だ》しておかねば、|万古末代《まんごまつだい》|邪神《あくがみ》の|自由《じいう》に|為《し》られて|了《しま》ふぞよ。
|昔《むかし》から|露国《ろこく》へ|上《あが》りて|居《を》りた|悪神《あくがみ》の|頭目《かしら》が、モ|一《ひと》つ|向《む》かふの|国《くに》へ|渡《わた》りて|人民《じんみん》の|頭《かしら》を|自由自在《じいうじざい》に、|吾《われ》の|思惑《おもわく》どほりに|悪《あく》を|働《はたら》き、|世界中《せかいぢう》の|大困難《だいこんなん》をかまはず、|何処《どこ》までも|暴《あ》れて|暴《あ》れて|暴《あ》れまはして|世界《せかい》を|苦《くる》しめ、また|露国《ろこく》を|自由《じいう》に|致《いた》して|吾《われ》の|手下《てした》に|附《つ》けて、|今《いま》に|神国《しんこく》へ|出《で》て|来《く》る|経綸《しぐみ》を|致《いた》して|居《を》るが、そんな|事《こと》にビクつくやうな|守護神《しゆごじん》、|人民《じんみん》でありたら、|到底《たうてい》|続《つづ》きは|致《いた》さんぞよ。|是《これ》から|神《かみ》が|蔭《かげ》から|手伝《てつだ》ふて|軍隊《いくさ》に|神力《しんりき》を|附《つ》けて|与《や》るから、|今度《こんど》は|大丈夫《だいぢやうぶ》であれども、|国《くに》と|国《くに》|同士《どうし》が|戦争《いくさ》は|到底《たうてい》|叶《かな》はんと|申《まを》して、|可《よ》い|加減《かげん》な|事《こと》で|仲直《なかなほ》りを|致《いた》して、|一腹《ひとはら》になつて、|今度《こんど》は|押詰《おしつ》めて|来《く》るから、|守護神《しゆごじん》も|人民《じんみん》も|腹帯《はらおび》を|締《しめ》て|掛《かか》らな、|万古末代《まんごまつだい》|取返《とりかへ》しの|出来《でき》ん|事《こと》になるぞよ|申《まを》して、|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から、|出口《でぐち》|直《なほ》の|手《て》を|藉《か》り|口《くち》を|藉《か》りて、|知《し》らしておいた|事《こと》の|実地《じつち》が、|迫《せま》りて|来《き》たぞよ。
|邪神《あくがみ》は|悪《あく》が|強《つよ》いから、ドコまでも|執念深《しつこ》う|目的《もくてき》の|立《た》つまで|行《や》り|通《とほ》すなれど、|九分九厘《くぶくりん》といふ|所《とこ》まで|来《き》た|折《を》りに、|三千年《さんぜんねん》の|神《かみ》が|経綸《しぐみ》の|奥《おく》の|手《て》を|出《だ》して、|邪神《あくがみ》を|往生《わうじやう》いたさすのであるから、|大丈夫《だいぢやうぶ》であれども、|罪穢《めぐり》の|深《ふか》い|所《とこ》には|罪穢《めぐり》の|借銭済《しやくせんな》しがあるから、|今《いま》の|中《うち》に|改信《かいしん》を|致《いた》さんと、|神国《しんこく》にも|酷《きび》しい|懲罰《いましめ》が|天地《てんち》からあるぞよ。|霊主体従主義《ひのもと》の|行《や》り|方《かた》で、|末代《まつだい》の|世《よ》が|立《た》つか、|体主霊従《みのもと》の|施政方針《やりかた》で|世《よ》が|末代《まつだい》|続《つづ》く|乎《か》、|今度《こんど》は|善《ぜん》と|悪《あく》との|力量比《ちからくら》べであるから、|勝《か》ちた|方《はう》へ|末代《まつだい》|従《したが》ふて|来《こ》ねばならぬぞよ。それで|神界《しんかい》は|茲《ここ》まで|煉《ね》りに|煉《ね》りたのであるぞよ。
この|先《さき》に|善《ぜん》|一《ひと》つの|誠《まこと》の|道《みち》を|立貫《たてぬ》かねば、|斯世《このよ》に|安住《おい》て|貰《もら》へんやうに|酷《きび》しく|成《な》るから、|爰《ここ》まで|永《なが》らく|言《い》ひ|聞《き》かしたのであるぞよ。|善《ぜん》と|悪《あく》との|境界《さかひ》の|大峠《おほたうげ》であるから、|爰《ここ》まで|充分《じうぶん》に|煉《ね》らねば、|悪《あく》の|性来《しやうらい》には|聞《き》けんから|今《いま》の|今《いま》まで|煉《ね》りたのであるが、チツとは|腹《はら》へ|浸《し》み|切《き》りて|居《を》る|身魂《みたま》が|在《あ》るであらう。|爰《ここ》まで|言《い》ひ|聞《き》かしても|判《わか》らんやうな|身魂《みたま》は、|体《てい》よく|覚悟《かくご》をいたさんと、|是《これ》までのやうな|心《こころ》で|居《を》りたなら、また|天地《てんち》を|汚《けが》して|了《しま》ふから、|善《ぜん》へ|心底《しん》から|従《したが》ふ|身魂《みたま》で|無《な》いと、|今《いま》までの|如《や》うな|心《こころ》の|人民《じんみん》が|在《あ》りたら|総損害《そうぞこなひ》になりて、モ|一《ひと》つ|遅《おく》れるから、|艮金神《うしとらのこんじん》も|助《たす》けてやる|事《こと》も|出来《でき》ず、|天《てん》の|御三体《ごさんたい》の|大神様《おほかみさま》へ|申訳《まをしわけ》が|無《な》いやうな|事《こと》になりて|来《く》るから、|止《や》むを|得《え》ず|気《き》の|毒《どく》でも、モウ|経綸《しぐみ》どほりに|致《いた》すぞよ。
|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きが|段々《だんだん》と|近寄《ちかよ》りたから、|是《これ》までのやうな|事《こと》には|行《ゆ》かんから、|一《いち》か|八《ばち》かといふ|事《こと》を、|悪《あく》の|頭《かしら》に|書《か》いて|見《み》せておくが|良《よ》いぞ。|今《いま》の|番頭《ばんとう》のフナフナ|腰《ごし》では、とても|恐《こは》がりて、コンナ|事《こと》を|書《か》いて|見《み》せて|遣《や》るだけの|度胸《どきよう》はありは|致《いた》すまいなれど、|神《かみ》の|申《まを》すやうに|致《いた》したら|間違《まちが》ひは|無《な》いぞよ。|一《いち》の|番頭《ばんとう》の|守護神《しゆごじん》が|改信《かいしん》が|出来《でき》たら、|肉体《にくたい》に|胴《どう》が|据《す》わるなれど、|到底《たうてい》|六ケ敷《むつかし》いから、|今《いま》に|番頭《ばんとう》が|取替《とりか》へられるぞよ。モウ|悪《あく》の|頭《かしら》の|年《ねん》の|明《あ》きであるから、|悪《わる》い|頭《かしら》から|取払《とりはら》ひに|致《いた》すぞよ。
|何事《なにごと》も|時節《じせつ》が|一度《いちど》に|参《まゐ》りて|来《き》て、|世界中《せかいぢう》の|困難《こんなん》が|到来《たうらい》するといふ|事《こと》が、|毎度《まいど》|申《まを》して|知《し》らした|事《こと》が|実地《じつち》になりて、|一度《いちど》に|開《ひら》く|梅《うめ》の|花《はな》、|追々《おひおひ》|分《わか》らなんだ|事《こと》が|明白《ありやか》に|判《わか》りて|来《き》て、キリキリ|舞《まひ》を|致《いた》さな|成《な》らん、|夜《よ》の|目《め》も|眠《ねむ》られんやうな|事《こと》に|成《な》ると|申《まを》しておいたが、|一度《いちど》|筆先《ふでさき》に|出《だ》した|事《こと》は|皆《みな》|出《で》て|来《く》るぞよ。よく|念《ねん》を|押《お》しておくぞよ。|念《ねん》に|念《ねん》を|押《お》して、クドイと|言《い》はれて|復《また》|念《ねん》を|押《お》してあるから、モウ|是《これ》からは|神界《かみ》の|事情《こと》も|能《よ》く|解《わか》るやうに|一度《いちど》に|成《な》りて|来《く》るから、|誠《まこと》で|無《な》いと、|此《この》|先《さき》は|誠《まこと》|一《ひと》つの|善《ぜん》の|道《みち》が|拵《こしら》へて|在《あ》るから、|一日《いちにち》も|早《はや》く|善《ぜん》の|道《みち》へ|立復《たちかへ》りて、|神国魂《みくにだましひ》に|捻《ね》ぢ|直《なほ》して|下《くだ》されよ。|悪《あく》の|世《よ》は|齢《よはひ》が|短《みじか》いから、|体主霊従《あく》の|身魂《みたま》が|大変《たいへん》|困《くる》しむ|事《こと》が|出来《でき》るから、|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から|怒《おこ》られるほど|申《まを》して|在《あ》りたぞよ。|人民《じんみん》は|男《をとこ》も|女《をんな》も|腹帯《はらおび》を|確《しつか》り|締《し》めて|掛《かか》らんと、|一旦《いつたん》は|堪《こば》れんやうな|混雑《こんざつ》になるぞよ。
|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から|煩《くど》いと|申《まを》して|怒《おこ》られもつて、|今《いま》に|岩戸開《いはとびら》きの|筆先《ふでさき》を|書《か》かして|居《を》るぞよ。|何時《いつ》までも|同《おな》じ|事《こと》に|間々《あひだあひだ》に|細々《こまごま》よく|判《わか》るやうに、|抜目《ぬけめ》の|無《な》いやうに|知《し》らしたなれど、ソンナ|事《こと》が|在《あ》るものかと|申《まを》して、|今《いま》に|疑《うたが》ふて|居《を》る|人民《じんみん》ばかり、|実地《じつち》が|出《で》て|来《き》て|青白《あを》い|顔《かほ》をして、|腰《こし》が|抜《ぬ》けて|足《あし》も|立《た》たず、|腮《あご》が|外《はづ》れて|足《あし》が|上《うへ》に|成《な》り、|頭《あたま》が|下《した》に|成《な》りて、ソコラ|中《ぢう》をヌタクラな|成《な》らん|事《こと》が|出《で》て|来《く》るぞよと|知《し》らして|在《あ》るが、モウ|近《ちか》うなりて|来《き》たぞよ。|悪《あく》の|昇《のぼ》るのは|迅《はや》いなれど、|降《くだ》るのも|亦《また》|速《はや》いぞよ。|善《ぜん》の|分《わか》るのは|手間《てま》が|要《い》るなれど、|善《ぜん》の|道《みち》の|開《ひら》けたのは、|万古末代《まんごまつだい》の|栄《さか》えであるから、ここまで|悪開《わるびら》けに|開《ひら》けた|世界《せかい》を、|根本《こつぽん》からあらためて、|今後《このさき》は|体主霊従主義《あく》といふやうな|醜《みぐる》しき|世《よ》は|無《な》いやうに|致《いた》すのであるから、|是《これ》ほど|大望《たいもう》な|事《こと》は|末代《まつだい》に|一度《いちど》ほか|為《し》られんのであるから、|神《かみ》も|中々《なかなか》|骨《ほね》が|折《を》れるぞよ。|是程《これほど》|世界中《せかいぢう》が|曇《くも》り|切《き》りて|居《を》る|世《よ》の|中《なか》を、|水晶《すゐしやう》に|致《いた》すのであるから、|骨《ほね》が|折《を》れるのも|当然《あたりまへ》であるぞよ。この|極悪《ごくあく》の|世《よ》の|岩戸《いはと》を|開《ひら》いて、|末代《まつだい》|口舌《くぜつ》のないやうに、|大神様《おほかみさま》の|善《ぜん》|一《ひと》つの|世《よ》に|立直《たてなほ》しをいたさねば、|世界《せかい》の|苦舌《くぜつ》が|絶《た》えんから、|人民《じんみん》の|心《こころ》が|悪《わる》なるばかり、|何時《いつ》になりても|国《くに》の|奪《と》り|合《あ》ひばかりで、|治《をさ》まりは|致《いた》さんぞよ。
|神《かみ》の|国《くに》は|本《もと》が|霊主体従《ひのもと》であるから、|誠《まこと》に|穏《おだや》かにありたなれど、|世《よ》が|逆様《さかさま》に|覆《かへ》りて|今《いま》の|状態《ありさま》であるぞよ。|薩張《さつぱ》り|上下《うへした》へ|世《よ》が|覆《かへ》りて|了《しま》ふて、|神国《しんこく》に|悪神《あくがみ》が|渡《わた》りて|来《き》て、|上《うへ》から|下《した》まで|醜《みぐる》しさと|言《い》ふものは、|天地《てんち》の|誠《まこと》の|神《かみ》からは、|眼《め》を|開《あ》けて|見《み》る|事《こと》が|出来《でき》んぞよ。|斯世《このよ》を|結構《けつこう》と|申《まを》して|大《おほ》きな|取違《とりちが》ひを|為《し》て|居《を》りて、|良《よ》いといふ|事《こと》も|悪《わる》いといふ|事《こと》も、|可非《よしあし》の|判《わか》らん|見苦《みぐる》しき|世《よ》が、|一旦《いつたん》は|出《で》て|来《く》ると|申《まを》す|事《こと》は、|地球《せかい》を|創造《こしら》へる|折《を》りから|良《よ》く|判《わか》りて|居《を》るので、|外《ほか》の|身魂《みたま》では|能《よ》う|為《し》もせず|解《わか》りも|致《いた》さんぞよ。|一輪《いちりん》の|火水《ひみづ》(|言霊《ことたま》)の|経綸《しぐみ》がいたして|在《あ》りて|先《さき》が|見《み》え|透《す》いて|居《を》るから、|爰《ここ》まで|辛《つら》い|事《こと》も|堪《こば》り|詰《つ》めて|来《こ》られたのであるぞよ。
|今度《こんど》の|二度目《にどめ》の|岩戸開《いはとびら》きは、|知識《ちゑ》でも|学《がく》でも|機械《きかい》でも、|世界中《せかいぢう》の|大戦《おほたたか》ひには、|手柄《てがら》は|出来《でき》んぞよ。|何《なに》ほど|悪《あく》の|頭《かしら》でも、|到底《とても》|是《これ》からの|世《よ》は|今《いま》までの|行方《やりかた》では|行《ゆ》かんといふ|事《こと》に|気《き》が|附《つ》いて、|綾部《あやべ》の|大本《おほもと》へ|今《いま》の|内《うち》に|願《ねが》ひに|来《く》る|守護神《しゆごじん》でありたら、|善《ぜん》|一《ひと》つの|道《みち》へ|乗替《のりか》へさして、|末代《まつだい》の|世《よ》を|構《かま》はして、|毛筋《けすぢ》の|横巾《よこはば》も|悪《あく》の|性来《しやうらい》の|混《まじ》りの|無《な》い|結構《けつこう》な|神代《かみよ》に|助《たす》けて|遣《や》るから、|早《はや》く|改信《かいしん》なされよ。|何《なに》|程《ほど》|我《が》を|張《は》りて|見《み》ても、|時節《じせつ》には|叶《かな》はんぞよ。
|善一筋《ぜんひとすぢ》の|純粋《きつすゐ》で|末代《まつだい》の|世《よ》を|立《た》てて|行《ゆ》く|結構《けつこう》な|仕組《しぐみ》の|解《わか》る|世《よ》が|参《まゐ》りて|来《き》たから、|爰《ここ》までに|知《し》らしても、|未《ま》だ|今《いま》に|成《な》つて|疑《うたが》ふて|居《を》る|守護神《しゆごじん》や|人民《じんみん》ばかりで、|可憐《かはい》さうなものなれど、モウ|神《かみ》からは|人民《じんみん》に|知《し》らせやうが|無《な》いから、|何時《いつ》までも|邪魔《じやま》を|致《いた》す|極悪《ごくあく》の|頭《かしら》から|平《たひ》らげるといふ|事《こと》を、|永《なが》らく|筆先《ふでさき》で|知《し》らしてある|通《とほ》りに、|時節《じせつ》が|迫《せま》りて|来《く》るぞよ。あまり|何時《いつ》までも|高上《たかあが》りをして|居《を》ると、|時分《じぶん》の|過《す》ぎた|色花《いろばな》の|萎《しほ》れる|如《ごと》く、|今日《けふ》の|間《ま》にも|手《て》の|掌《ひら》が|覆《かへ》るぞよ。|今《いま》の|中《うち》に|発根《ほつごん》からの|改信《かいしん》が|一等《いつとう》であるぞよ。|疑《うたが》ふて|居《を》りて|何事《なにごと》が|出来《しゆつたい》しても|神《かみ》はモウ|知《し》らんぞよ。
|悪《あく》の|霊《れい》を|抽抜《ひきぬ》いて|元《もと》の|水晶《すゐしやう》の|霊《みたま》と|入替《いれか》へて|遣《や》ると|申《まを》して、|爰《ここ》まで|知《し》らして|在《あ》るなれど、あまり|世界《せかい》の|霊魂《みたま》が|悪渋《わるしぶ》とうて|手《て》に|合《あ》はんから、|皆《みな》の|霊魂《みたま》が|悪《わる》シブトい|性来《しやうらい》に|成《な》り|切《き》りて|居《を》るから、|言《い》ひ|聞《き》かしたくらゐに|聞《き》くやうな|優《やさ》しい|霊魂《みたま》はありはせんぞよ。|今《いま》の|人民《じんみん》は|悪《あく》のやり|方《かた》が|良《よ》く|見《み》えるのであるから、|何《なに》|程《ほど》|言《い》ひ|聞《き》かしても|聞《き》きはせぬぞよ。|困《こま》つたものであるぞよ。|是《これ》ほど|良《よ》い|国《くに》は|無《な》いと|心《こころ》に|錠《ぢよう》を|降《おろ》して|了《しま》ふて|居《を》るから、|何《なに》|程《ほど》|実地《じつち》の|事《こと》を|言《い》ひ|聞《き》かしても、|逆様《さかさま》ばかりに|取《と》るから、|助《たす》けてやりやうが|無《な》いぞよ。これもモチト|先《さき》に|成《な》りたら、|大《おほ》きな|取違《とりちが》ひを|致《いた》して|居《を》りたといふ|事《こと》が、|上《うへ》へあがりて|覇《は》の|利《き》いて|居《を》りた|神《かみ》に|自然的《ぬしがで》に|判《わか》りて|来《く》るぞよ。|今《いま》までのやうに|自分好《われよ》しの|目的《やりかた》は、トントン|拍子《びやうし》には|行《ゆ》かぬやうになるぞよ。|世界《せかい》の|人民《じんみん》|確《しつか》り|致《いた》さんと、|今《いま》に|大変《たいへん》な|事《こと》になりて|来《く》るから、|何《いづ》れの|国《くに》も|危《あぶ》ないと|申《まを》して、|彼方《あちら》|此方《こちら》へと|狼狽《うろた》へまはりて、|行《ゆ》く|所《とこ》に|迷《まよ》ふぞよ。
|神道《しんだう》を|守護《しゆご》|致《いた》す|誠《まこと》の|所《ところ》は、|綾部《あやべ》の|大本《おほもと》より|外《ほか》には|無《な》いぞよ。|綾部《あやべ》は|三千年《さんぜんねん》|余《あま》りて、|昔《むかし》からの|神《かみ》の|経綸《しぐみ》の|致《いた》してある|結構《けつこう》な|所《とこ》であるから、|大本《おほもと》の|教《をしへ》を|聞《き》いて|居《を》る|守護神《しゆごじん》は|余程《よほど》シツカリいたして|居《を》らんと、|油断《ゆだん》が|在《あ》りたら、|肝腎《かんじん》の|経綸《しぐみ》を|他国《よそ》から|取《と》りに|来《く》るぞよ。|何程《なにほど》|奪《と》らうと|致《いた》しても|神《かみ》が|奪《と》らしは|致《いた》さんなれど、|物事《ものごと》が|遅《おく》れるだけ|世界《せかい》の|困難《こんなん》が|永《なが》びくから、|充分《じうぶん》に|覚悟《かくご》をいたして、|正勝《まさか》の|時《とき》の|御用《ごよう》を|勤《つと》めて|下《くだ》されよ。
|三千世界《さんぜんせかい》の|鏡《かがみ》の|出《で》る|大本《おほもと》であるぞよ。|今《いま》の|人民《じんみん》は|神《かみ》がいつまで|言《い》ふて|聞《き》かしても、|人《ひと》を|威《おど》すくらゐにほか|能《よ》う|取《と》らんから、|一度《いちど》にバタツイても|間《ま》に|合《あ》はんぞよ。|俄《にはか》の|信心《しんじん》は|役《やく》に|立《た》たぬから、|常《つね》から|信心《しんじん》いたせと|申《まを》して|爰《ここ》まで|気《き》を|附《つ》けてあるぞよ。|善《ぜん》の|行《や》り|方《かた》と|悪《あく》の|行《や》り|方《かた》とを|末代《まつだい》|書《か》いて|遺《のこ》す|綾部《あやべ》の|大本《おほもと》であるから、|変性男子《へんじやうなんし》の|書《か》いた|筆先《ふでさき》を、|坤金神《ひつじさるのこんじん》が|変性女子《へんじやうによし》と|現《あら》はれて|説《と》いて|聞《き》かして、|守護神《しゆごじん》|人民《じんみん》に|改信《かいしん》を|致《いた》さす|御役《おやく》であるから、|世界《せかい》の|人民《じんみん》よ、|真《まこと》の|事《こと》が|聞《き》きたくば|綾部《あやべ》の|大本《おほもと》へ|参《まゐ》りて|来《き》て、|細々《こまごま》と|聞《き》かして|貰《もら》ふたら、|世界《せかい》の|事《こと》が|心相応《こころしだい》に|解《わか》りて|来《き》て、|世界《せかい》に|何事《なにごと》ありても|驚《おどろ》きは|致《いた》さんやうになるぞよ。
|昔《むかし》からの|極悪神《ごくあくがみ》の|頭《かしら》が、|神国《しんこく》の|人民《じんみん》を|一人《ひとり》も|無《な》いやうに|致《いた》す|仕組《しぐみ》を|為《し》て|居《を》るなれど、|神国《しんこく》にも|根本《こつぽん》から|動《うご》かぬ|経綸《しぐみ》が|致《いた》して|在《あ》るから、|国《くに》も|小《ちひ》さいし、|人民《じんみん》も|尠《すくな》いなれど、|初発《しよつぱつ》から|一厘《いちりん》と|九分九厘《くぶくりん》との|大戦《おほたたか》ひで|在《あ》ると|申《まを》して、|何時《いつ》までも|同《おな》じやうな|事《こと》を|書《か》かして|在《あ》る|通《とほ》り、|口《くち》で|言《い》はしてある|事《こと》がドチラの|国《くに》にもあるから、|神力《しんりき》と|学力《がくりき》との|力比《ちからくら》べの|大戦《おほたたか》ひであるから、|負《ま》けた|方《はう》が|従《したが》はねば|成《な》らんと|申《まを》して、|筆先《ふでさき》に|出《だ》してある|通《とほ》り|実地《じつち》に|実現《なり》て|来《く》るから、|此《この》|先《さき》で|神《かみ》から|不許《ならん》と|申《まを》す|事《こと》を|致《いた》したり、|吾《われ》の|一力《いちりき》で|行《や》らうと|思《おも》ふても、|世《よ》が|薩張《さつぱ》り|変《か》はりて|了《しま》ふから、|是《これ》までの|事《こと》はチツトも|用《もち》ゐられんぞよと、|度《たび》たび|気《き》を|附《つ》けてあるのに、|聞《き》かずに|吾《われ》の|我《が》で|行《や》りたら、|彼方《あちら》へ|外《はづ》れ、|此方《こちら》へ|外《はづ》れて、|一《ひと》つも|思《おも》ふやうには|行《ゆ》かんぞよ。
|素直《すなほ》にさへ|致《いた》せば、|何事《なにごと》も|思《おも》ふやうに|箱《はこ》|差《さ》した|様《やう》に|行《ゆ》くのが|神代《かみよ》であるぞよ。|今《いま》の|人民《じんみん》は|余《あま》り|我《が》が|強《つよ》いから、|是《これ》までは|神《かみ》の|申《まを》す|事《こと》も|聞《き》かずに、|守護神《しゆごじん》の|自由《じいう》に|一力《いちりき》で|思惑《おもわく》に|行《ゆ》けたのは、|地《ち》の|上《うへ》に|誠《まこと》と|申《まを》すものが|無《な》かりたから、|世《よ》に|出《で》て|居《を》る|方《はう》の|守護神《しゆごじん》が、|悪神《あくがみ》の|大将《たいしやう》に|気《き》に|入《い》るやうな|悪《わ》る|力《ぢから》がありたなら、|何処《どこ》までも|上《あ》げて|貰《もら》へる|世《よ》と|成《な》りてをりたから、|悪《わる》い|事《こと》の|仕放題《しはうだい》、|悪神《あくがみ》の|自由《じいう》で|在《あ》りたなれど、モウ|時節《じせつ》が|廻《まは》りて|来《き》たから、|其《その》|時節《じせつ》の|事《こと》を|致《いた》さな|世《よ》は|立《た》ちては|行《ゆ》かんぞよ。|今《いま》までは|物質《ぶつしつ》の|世《よ》でありたから、|学《がく》が|茲《ここ》まで|蔓《はびこ》りて、|学力《がくりき》でドンナ|事《こと》でも|九分九厘《くぶくりん》までは|成就《じやうじゆ》いたしたなれど、モウ|往生《わうじやう》いたさなならんやうに|成《な》りて|来《き》たぞよ。
|茲《ここ》に|成《な》るまでに|悪《あく》の|守護神《しゆごじん》を|改信《かいしん》さして、|助《たす》けて|遣《や》りたいと|思《おも》ふて、|明治《めいぢ》|二十五年《にじふごねん》から|深《ふか》い|因縁《いんねん》のある|出口《でぐち》|直《なほ》の|身魂《みたま》に|知《し》らさしたのであるなれど、|吾《われ》ほど|豪《えら》いものは|無《な》きやうに|思《おも》ふて、チツとも|改信《かいしん》の|出来《でき》ん|罪人《ざいにん》ばかり、|神《かみ》も|是《これ》には|往生《わうじやう》いたさな|仕様《しやう》がないぞよ。|現世《このよ》の|鬼《おに》を|平《たひ》らげて、|世界《せかい》のものに|安心《あんしん》を|致《いた》さすぞよといふ|事《こと》が、|初発《しよつぱつ》に|筆先《ふでさき》にかかしてあるが、|世界《せかい》の|大洗濯《おほせんだく》を|致《いた》して、|元《もと》の|水晶《すゐしやう》の|身魂《みたま》やら、|天地《てんち》の|大神《おほかみ》の|教《をしへ》どほりの|世《よ》に|致《いた》して、|天《てん》に|坐《い》ます|御三体《ごさんたい》の|大神様《おほかみさま》に、|御目《おんめ》にかけねば|成《な》らぬ|御役《おやく》であるぞよ。
|来《お》いで|来《お》いでと|松《まつ》の|世《よ》を|待《ま》ちて|居《を》りたら、|松《まつ》の|世《よ》の|始《はじ》まりの|時節《じせつ》が|参《まゐ》りて|来《き》たなれど、|肝腎《かんじん》の|悪《あく》の|性来《しやうらい》の|改信《かいしん》をいたして|貰《もら》はんと、|何時《いつ》までも|頑張《がんば》るやうな|事《こと》では、この|世《よ》は|水晶《すゐしやう》にならんから、ドウシテも|聞《き》かねば|聞《き》くやうに|致《いた》すより|仕様《しやう》は|無《な》いぞよ。|世界《せかい》には|代《か》へられんから、|此《この》|先《さき》の|規則通《きそくどほ》りに|制配《せいばい》を|致《いた》さねば、|御三体《ごさんたい》の|大神様《おほかみさま》へ|申訳《まをしわけ》がないから、|二度目《にどめ》の|天《あま》の|岩戸開《いはとびら》きをいたしたら、|悪《あく》の|性来《しやうらい》は|微塵《みぢん》も|無《な》いやうに|洗《あら》ひ|替《かへ》をして、|巌《いは》に|松《まつ》の|動《うご》かぬ|世《よ》にいたす、|世界《せかい》の|大橋《おほはし》と|成《な》る|尊《たふと》い|所《ところ》であるから、あまり|何時《いつ》|迄《まで》も|疑《うたが》ふて|居《を》ると、|天地《てんち》の|大神様《おほかみさま》へ|大《おほ》きな|御無礼《ごぶれい》になるから、|今一度《いまいちど》|気《き》を|附《つ》けておくから、|素直《すなほ》に|致《いた》すが|徳《とく》であるぞよ。
(大正一二・四・二七 旧三・一二 北村隆光再録)
(昭和一〇・六・一五 王仁校正)
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霊界物語 第六〇巻 真善美愛 亥の巻
終り