2001年12月17日
「現代味噌汁の具」
「味噌汁の具といえば?」という問いに対して「えー!?」という声があがらない、
つまり大多数が頷ける限界はなんだろう?豆腐、わかめ、あさり、しじみ、あたりは問題ない。
キャベツはどうだろう。
僕がキャベツの味噌汁を始めて知ったのは、藤子不二雄先生の自伝的漫画「まんが道」の中で、
寺さんこと寺田ヒロオ先生が作っていたシーンを見たのが最初だから、昭和50年頃だと思われる。
が、しかしこの寺さんのアイデア料理「キャベツの味噌汁」を見て実際に藤子不二雄先生が驚いたのは、
その実録漫画の舞台となる昭和30年代終盤のことだから、
少なくとも出現からすでに半世紀近くが経っている事になるわけで、
すでに古典の域に達していると思われる。
今や「えー!?」とはならないだろう。
「コーン」は「えー!?」だろう。
でも全員に「えー!?」といわれたところで
「みそバターコーンラーメンってあるでしょう、あれと同じ。
お味噌汁にコーンを入れて少しバターを入れると美味しいんだから。」
と言われると「ほー。」とも言うだろう。
問題は「エリンギの味噌汁」だ。
先日友人と温泉旅行に行ったとき、晩御飯の献立の中に「エリンギの味噌汁」があった。
美味しかったし、あること自体に問題はないのだが、その時の仲居さんの態度に驚いたのだ。
たまの旅行なので少し奮発してとった宿のせいもあり、食事はかなり高級で、
一品運び込まれるたびに仲居さんはその料理を説明してくれた。
「こちらはえび芋の生うにのせでございます。」
「こちらはキヌガサ茸の中にひき肉とクワイを詰めたものに焼いたハゼでとっただし汁をかけたものでございます。」
といった具合だ。
40歳代中盤と見受けられる仲居さんは饒舌に一つ一つ、
時には飽きるくらい事細かに自慢の料理を説明してくれた。
そして中盤にでてきたのがエリンギの味噌汁なのだが、これだけは
「お味噌汁でございます。」の一言で終わりなのだ。
てっきり豆腐あたりが入っているものと思ったら、ふたを開けた中にはエリンギ。
食感のシャクシャクした新種のきのこで、
つい数ヶ月前買い物先の小じゃれたスーパーでかみさんから教わったばかりの新入りのあいつだ。
バター焼きにしたら美味しかった期待の新人だ。僕の中ではバター焼きになるために来日したやつだ。
そいつが味噌汁に?大丈夫か?、、、
繰り返しになるがこれが意外に美味しい。
美味しいのだから問題は無いが、説明なしでいいのだろうか?
説明して欲しいわけではないのだが、なんというか、
これはただ「お味噌汁でございます。」と言うほど普通の具なのか?
周りのみんなは違和感無く飲んでいる。
僕だけが「笑っていいともの会場で、みんなが黙っている時に一人奇声をあげて浮き上がっている馬鹿女」になった気がした。
ねえみんな?
エリンギって普通?
※7文字丁度の「現代味噌汁の具」というテーマ、センスを感じました。
ありがとうございました。
(以上、全文1,187文字÷テーマ「現代味噌汁の具」7文字、169倍返しでお送りしました。)