「ラヴクラフト全集1」 H・P・ラヴクラフト
〈インスマウスの影〉
[#ここから3字下げ]
1927年の暮れから1928年の初頭、連邦政府の役人たちは、マサチュセッツ州の港町インスマウスで奇怪な秘密調査を行った。その結果、多くの逮捕者と住人のない家の取り壊しが行われた。これについて人々は、内情を知らされていなかった。しかし、私はすべてを知っている。なぜなら、1927年7月16日の朝早く、インスマウスから命からがら逃げ出した人物こそ、この私だからだ。
[#ここで字下げ終わり]
〈壁のなかの鼠〉
[#ここから3字下げ]
1923年7月16日、私はウェールズのイグザム修道院跡の屋敷に移ってきた。この館に長く人が住んでいなかったのは、ジェームズ1世の時代、この館の主人と子供が5人、それに何人かの召使が殺されるという悲劇があったからだ。この時、犯人であると疑われ、申し開きもしないままアメリカに渡ったこの家の三男こそが、私の祖父にあたる人だった。
[#ここで字下げ終わり]
〈死体安置所にて〉
[#ここから3字下げ]
バーチは1881年まで、ペック・ヴァレー村で葬儀屋をやっていたが、翌年には職業を変えることにした。それは死体安置所に閉じこめられてしまうという、あの事件があったからである。
[#ここで字下げ終わり]
〈闇に囁くもの〉
[#ここから3字下げ]
そもそもの始まりは、1927年11月3日、ヴァーモント州の洪水で、あの奇怪な生物が川で目撃された事件からだった。身の丈が5フィートほどで薄桃色、数対の広い背びれか翼のようなものをつけた甲殻類のような胴体に、短いアンテナのようなものをたくさんつけた楕円形の頭らしきものが載っている、得体の知れないもの。
マサチュセッツ州アーカムのミスカトニック大学で教師をする私は、民俗学の研究家でもあったので、その生物について自分の見解を述べた。それがもとで、ヘンリー・W・エイクリーから手紙を受けとることになったのだ。
[#ここで字下げ終わり]
「ラヴクラフト全集2」 H・P・ラヴクラフト
〈クトゥルフの呼び声〉
[#ここから3字下げ]
1926年冬、大伯父であるジョージ・ガムメル・エインジェル教授が亡くなって、唯一の後継者で遺言執行者でもあるぼくは、大伯父の遺した書類をすべてボストンの家に持ち帰った。そのなかには、表紙に「クトゥルフ教のこと」と書かれたノートがあった。1925年に若き彫刻家ウィルコックス青年の見た不思議な夢、1908年にルグラース警部がヴードゥー教徒の不法集会らしきもので入手したグロテスクな石像、そして、1925年に海賊船に襲われ、その後、あるはずのない島に行ったという船員の話・・・これらは一体なにを意味するのか。
[#ここで字下げ終わり]
〈エーリッヒ・ツァンの音楽〉
[#ここから3字下げ]
わたしは学生の頃、オーゼイユ街というところにある古家の5階に住んでいた。その家の屋根裏には、エーリッヒ・ツァンというドイツ人の老人が住んでいて、ヴィオル(ヴァイオリン以前に愛好された6絃の楽器)でこの世ならぬ調べを奏でていた。
[#ここで字下げ終わり]
〈チャールズ・ウォードの奇怪な事件〉
[#ここから3字下げ]
ロード・アイランドのプロヴィデンスに近い精神病院に収容されていた、26才の青年チャールズ・ウォードが失踪した。チャールズは子供の頃から古物愛好家の傾向にあり、1919年8月、自分の先祖でありながら、その存在をひた隠しにされていたジョゼフ・カーウィンという謎の男が遺した2つの品を発見してからは、その研究に文字どおり、すべてを捧げるようになってしまった。
[#ここで字下げ終わり]
「ラヴクラフト全集3」 H・P・ラヴクラフト
〈ダゴン〉
[#ここから3字下げ]
わたしは今日、自殺しようとしている。船荷監督として乗りこんでいた定期船がドイツの商船隊襲撃艇に拿捕され、5日後にボートで逃げ出した私は、見知らぬ地に打ち上げられていた。そこで見た生物の怖ろしさを忘れられないからだ。
[#ここで字下げ終わり]
〈家のなかの絵〉
[#ここから3字下げ]
1896年11月のある日の午後、自転車に乗ってでかけている時に急な雨に襲われ、二百年以上も前に建てられたらしき木造家屋に立ち寄った。陰気で気味悪く、朽ちて無人かと思われたその家には、驚くような古い稀覯本があり、奥から老人が現れた。
[#ここで字下げ終わり]
〈無名都市〉
[#ここから3字下げ]
アラビアの砂漠の彼方にあるという名のない廃都を求め、一頭の駱駝とともにたった一人で未踏の砂漠に乗りこんだ私は、ついにその廃墟を発見し、足を踏み入れた。
[#ここで字下げ終わり]
〈潜み棲む恐怖〉
[#ここから3字下げ]
潜み棲む恐怖の正体をあばくため、私とジョージ・ベネットとウィリアム・トビイは、テンペスト山の頂にある無人のマーテンス館に泊まり込んだ。恐怖の夜が過ぎ去ると、両側で寝ていた二人の姿はなく、なぜか真ん中で寝ていた私だけが残されていた。
[#ここで字下げ終わり]
〈アウトサイダー〉
[#ここから3字下げ]
記憶がないので、どれほどの歳月に及ぶのかはわからないが、「余」は人に会うこともなく、城に閉じこもって暮らしている。書物を読み、城の外に出て暮らす自分を想像する日々だった。
[#ここで字下げ終わり]
〈戸口にあらわれたもの〉
[#ここから3字下げ]
私は、8つ年下の親友エドワード・ビックマン・ダービイに6発の弾丸を撃ち込み、射殺した。わたしが16才、エドワードが8才の時から、私はエドワードの類い希な才能に敬意を抱き、親しくつきあってきたのだが、エドワードが大学で知り合ったアセナス・ウェイトと結婚した時から、すべてがおかしくなり始めた。
[#ここで字下げ終わり]
〈闇をさまようもの〉
[#ここから3字下げ]
ロバート・ブレイクは落雷のために死んだ。ある日、ブレイクは部屋の窓から見える黒々とした巨大な教会に行ってみることにした。その教会のまわりに住む人々は、教会についてなにも語ろうとしなかったが、どうやらかつて邪悪な宗派の巣窟となっていた教会らしい。足を踏み入れてみると、そこには邪悪な稀覯書の数々、それにずっと昔に亡くなったらしき記者の白骨死体があった。
[#ここで字下げ終わり]
〈時間からの影 〉
[#ここから3字下げ]
ナサニエル・ウィンゲイト・ピースリーは経済学の教授だったが、1908年のある日、講義の最中に突然、記憶を失い、その後の5年間はまるで別人のようだった。ようやくもとの人格に戻ったナサニエルは、自分が得体の知れない巨大な生き物で、巨大な建物の並ぶ都市で暮らす夢を繰りかえし見るようになった。それは、夢というより、失われた記憶が戻ってきているようだった。
[#ここで字下げ終わり]
「ラヴクラフト全集4」 H・P・ラヴクラフト
〈宇宙からの色〉
[#ここから3字下げ]
アーカムの西の丘陵地帯には、「焼け野」と呼ばれる人の住まない場所がある。なぜそうなってしまったかは、アミ・ピアースという老人が詳しく知っていた。それは1882年6月、アミの親友ネイハム・ガードナーの家の井戸のそばに、空から大きな石が落ちてきたことから始まる。
[#ここで字下げ終わり]
〈眠りの壁の彼方〉
[#ここから3字下げ]
1900年から1901年にかけて、私がインターンとして勤めていた州立精神病院に、ジョー・スレイターという男が収容されていた。南部における「貧乏白人」に相当する、蛮的な衰退をした一族の末裔であるこの男は、身の程にあわないとしか思えないほど絢爛たるヴィジョンを持った夢に支配されているようだった。
[#ここで字下げ終わり]
〈故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実〉
[#ここから3字下げ]
アーサー・ジャーミン卿は自殺した。その理由について説明するためには、ジャーミン家の狂気が、ウェイド卿から始まったところから語らなければならない。ウェイドはアフリカへ行き、そこで知り合ったポルトガル商人の娘と結婚したが、屋敷に戻っても、だれにも妻の姿を見せようとしなかった。
[#ここで字下げ終わり]
〈冷気〉
[#ここから3字下げ]
1923年の春、私はニューヨークの西14丁目にある、古い四階建てのアパートに住むことにした。私の部屋の上に住んでいたのは、自分の特殊な病気の治療のために部屋を塩化アンモニウムで冷やしている医師、ムニョス博士だった。
[#ここで字下げ終わり]
〈彼方より〉
[#ここから3字下げ]
クロフォード・ティリンギャーストと私は仲違いをして、2ヶ月半ほど会っていなかった。そのティリンギャーストから会いたいと手紙が来て、私はティリンギャーストの自宅の研究室におもむいた。出迎えたティリンギャーストは10週前とはまるで別人のようで、長く使えていた召使いたちもいなくなっていた。
[#ここで字下げ終わり]
〈ピックマンのモデル〉
[#ここから3字下げ]
見る者の嫌悪感を呼び起こすほど迫力のある絵を描くビックマンは、それゆえに知人たちにも嫌われがちだった。しかし、私がピックマンと疎遠になったのは、他の理由からだった。
[#ここで字下げ終わり]
〈狂気の山脈にて〉
[#ここから3字下げ]
ミスカトニック大学探検隊は、工学科のフランク・H・ピーバディ教授の考案した驚くべきドリルで、南極大陸のさまざまな場所から、深層部の岩石や土壌を確保するために探検に出発した。調査は順調で、南極にかつて多くの生物が棲んでいた痕跡を発見したが、巨大な山脈で、まったく未知なる生命体の標本を発見したことにより、様相は一変した。
[#ここで字下げ終わり]
「ラヴクラフト全集 5」 H・P・ラヴクラフト
〈神殿〉
[#ここから3字下げ]
1917年8月20日に投げ込まれたメッセージボトルには、潜水艦U29の艦内で起きた、恐るべき出来事について書かれた文章が入っていた。すべては6月18日の午後、U29がイギリス貨物船ヴィクトリー号の沈没を目撃したことから始まる。
U29の甲板に打ち上げられた死んだ船員のポケットには、月桂冠をいただく若者の東部をあしらった、きわめて奇態な象牙細工が入っていた。
[#ここで字下げ終わり]
〈ナイアルラトホテップ〉
[#ここから3字下げ]
ナイアルラトホテップがエジプトからやって来た。ファラオのごときその人物を見かけた者はみなひざまずくが、その理由は自分にさえわからなかった。
[#ここで字下げ終わり]
〈魔犬〉
[#ここから3字下げ]
セント・ジョンがずたずたの死体になりはててしまった。500年前の墓場荒らしだった男の墓を掘り起こした私たちは、その白骨の首に奇妙な魔よけのようなものがさげられていることに気づいた。
[#ここで字下げ終わり]
〈魔宴〉
[#ここから3字下げ]
一般の人がクリスマスと呼ぶその日、ユールの日に、私は故郷に戻った。その海辺の古びた町に我が一族は墨付き、1世紀に1度、祝祭を行うことになっていた。
[#ここで字下げ終わり]
〈死体蘇生者ハーバート・ウェスト〉
[#ここから3字下げ]
ハーバート・ウェストとは、アーカムのミスカトニック大学医学部の時代から友人であった私は、ハーバートが研究する死体蘇生の実験を手伝ってきた。教授たちから禍々しい研究であると賛同を得られなかったため、私たち二人はメドウ・ヒルの奥のチャップマン農場の廃屋でひそかに実験を続けることにした。
[#ここで字下げ終わり]
〈レッド・フックの恐怖〉
[#ここから3字下げ]
ニューヨーク警察の刑事トーマス・F・マロウンは、ブルックリンのバトラー・ストリート署に配属されていたとき、レッド・フックの問題に気づいた。そこは混血の者たちが澄むむさ苦しい地区で、ロバート・サイダムという博学の隠者がフラットを持っていた。そこでは悪魔的な儀式が行われているのではないかという噂があった。
[#ここで字下げ終わり]
〈魔女の家の夢〉
[#ここから3字下げ]
アーカムのミスカトニック大学の学生であるウォルター・ギルマンは、かつて刑務所を逃げ出した魔女キザイア・メイスンが隠れ住んだといういわれのある屋根裏部屋に住んでいた。ギルマンはそこで、不気味な夢ばかり見るようになってきた。
[#ここで字下げ終わり]
〈ダニッチの怪〉
[#ここから3字下げ]
ダニッジの村のはずれにある大きな農家で1913年2月2日、ウィルバー・ウェイトリイが生まれた。ウェイトリイ家は近親相姦を繰り返し、血筋は汚れていた。ウィルバーの母は35才の白化症で、魔法使いと噂される、なかば狂った老齢の父親と暮らしていた。父親のはっきりしないウィルバーは、生まれて7ヶ月めに歩きはじめ、11ヶ月めにはしゃべりはじめて、大人のような話し方をしだした。
[#ここで字下げ終わり]
「ラヴクラフト全集 6」 H・P・ラヴクラフト
〈白い帆船〉
[#ここから3字下げ]
灯台守のバザル・エルトンは満月の夜、南方からやってきた白い帆船に乗りこんだ。帆船はバザルを、満月の輝きで金色に染まる神秘的な南方へと運んでいった。
[#ここで字下げ終わり]
〈ウルタールの猫〉
[#ここから3字下げ]
スカイ河の彼方に位置するウルタールでは、なんびとも猫を殺してはならなかった。その掟は、猫を罠にかけて殺すのを好む年老いた夫婦と、この地にやってきた放浪者のキャラヴァンに暮らす一人の病んだ少年が飼う、一匹の黒い仔猫の失踪に端を発する。
[#ここで字下げ終わり]
〈蕃神〉
[#ここから3字下げ]
大地の神々は人に見られることを嫌い、カダスの高い峰に移り住んだ。なかば神とみなされるほど神々の秘密を知り尽くしたバルザイは、若き神官アタルを伴い、神々の顔容を目にしようと山に登った。
[#ここで字下げ終わり]
〈セレファイス〉
[#ここから3字下げ]
夢の世界でクラネスは美を追い求めた。クラネスが訪れた都セレファイスにはトルコ石の神殿があり、蘭の花冠を抱く神官たちが、オオス=ナルガイには時は存在せず、永遠の若さがあるだけだと教えてくれた。クラネスは海と空が出会う魅惑の地へ向かう金色のガレー船を待った。
[#ここで字下げ終わり]
〈ランドルフ・カーターの陳述〉
[#ここから3字下げ]
ランドルフ・カーターの友人ハリイ・ウォーランは、古さびた墓場で、平石を取り除いて現れた開口部へ入っていき、そのまま戻ってはこなかった。
[#ここで字下げ終わり]
〈名状しがたいもの〉
[#ここから3字下げ]
ランドルフ・カーターの友人ジョウエル・マントンは非科学的なものには否定的だった。カーターはマントンに、1793年に発狂し、屋根裏に閉じこめられた少年の姿が窓に映るという無人の廃屋の話をした。
[#ここで字下げ終わり]
〈銀の鍵〉
[#ここから3字下げ]
ランドルフ・カーターは30才になったとき、夢の世界の門を開く鍵をなくしてしまった。カーターは祖先たちが住んでいたアーカムの街に戻り、50才を迎えた。
[#ここで字下げ終わり]
〈銀の鍵の門を越えて〉
[#ここから3字下げ]
4年前に消えてしまったランドルフ・カーターの財産処分のために集まった人たちのもとに、謎のヒンドゥ人が現れ、ランドルフ・カーターは夢の国でまだ生きているので、まだ財産を処分する必要はないと告げた。
[#ここで字下げ終わり]
〈未知なるカダスを夢に求めて〉
[#ここから3字下げ]
夢の国にも慣れたランドルフ・カーターは、神々の住むカダスの峰をめざし、〈深き眠りの門〉から魔法の森へと踏みこんだ。カーターとは馴染みの、森に棲むズーグ族が行く道を教えてくれた。
[#ここで字下げ終わり]
「ラヴクラフト全集 7」 H・P・ラヴクラフト
〈サルナスの滅亡〉
[#ここから3字下げ]
世界が若かった遠い昔、サルナスの民がムナールの地に到着する前、イブという灰色の石像都市があった。そこには見るも不快な醜い生物が住んでいた。
[#ここで字下げ終わり]
〈イラノンの探求〉
[#ここから3字下げ]
蔓の頭飾りを付け、黄色の髪を没薬で輝かせ、紫色のローブを着た若者イラノンは、美しい歌を歌いながら旅をしていた。イラノンはアイラという都市を探していた。そこではイラノンは王子だった。
[#ここで字下げ終わり]
〈木〉
[#ここから3字下げ]
遙か昔、アルカディアのマエナルスヤマの斜面に邸宅に、カロースとムーシデスという二人の彫刻家が住んでいた。二人は仲が良かったが、カロースは内向的、ムーシデスは外向的で、性格は正反対だった。
[#ここで字下げ終わり]
〈北極星〉
[#ここから3字下げ]
北の窓に北極星が輝く部屋で、わたしは奇異な山峰に挟まれた谷間の高原にある、大理石の都市の夢を見た。その都市が頭に刻みこまれた私は、前とは違う自分になったことに気づいた。
[#ここで字下げ終わり]
〈月の湿原〉
[#ここから3字下げ]
かつて先祖のものだった、キルデリイの湿原に近い古城を買い戻したデニス・バリイは、青く輝く湿原を干拓することにした。ところが、地元の農夫たちはキルデリイが呪われているといって、湿原を干拓する前に去っていった。
[#ここで字下げ終わり]
〈緑の草原〉
[#ここから3字下げ]
1913年8月27日、アメリカのポトワンケットという村のそばの海に巨大な火球が落下した。その塊のなかには尋常ならざる素材でできた手帳が入っていた。そこには、海のそばに広がる緑の草原と、そこで聴こえる不思議な歌声についての記述があった。
[#ここで字下げ終わり]
〈眠りの神〉
[#ここから3字下げ]
鉄道の駅で、わたしは四十に近い年齢と思われる男と出会った。わたしはすぐに男が神秘を教えてくれる者だと見抜き、自宅に招いた。友となった私たちは新種の薬草をいくつか使って夢を旅した。
[#ここで字下げ終わり]
〈あの男〉
[#ここから3字下げ]
眠れない夜、グリニッジ・ヴィレッジの目立たない中庭で、わたしはあの男に出会った。あの男に招かれた部屋の窓から見えたのは、驚愕すべき光景だった。
[#ここで字下げ終わり]
〈忌み嫌われる家〉
[#ここから3字下げ]
プロヴィデンスの街でエドガー・アラン・ポーが散歩をしていたとおりには、ポウに気づかれることはなかったが、近隣の住民から「不吉な家」だと噂されている家があった。そこに住む家族が次々と死んでいくのだ。その秘密を暴き、不吉な連鎖を食い止めたいという伯父とともに、わたしはその家を訪れた。
[#ここで字下げ終わり]
〈霊廟〉
[#ここから3字下げ]
年少の頃から同年代の子供と遊ぶより、古書を読んだり、野原や林を一人で散策することを好んでいたジャーヴァス・ダトリイは、はるか昔の途絶えたハイド家の霊廟を見つけ、惹かれていった。
[#ここで字下げ終わり]
〈ファラオとともに幽閉されて〉
[#ここから3字下げ]
エジプトへの船旅を楽しんでいた私は、つい高名なマジシャンであることを漏らしてしまった。そのために私たち夫婦は見ることより見られることの多い旅をすることになってしまった。エジプトでアブドゥルというガイドのせいで怖ろしい目に遭ったのも、このマジシャンという肩書きのためだった。
[#ここで字下げ終わり]
〈恐ろしい老人〉
[#ここから3字下げ]
アンジェロ・リッチ、ジョウ・チャネク、マヌエル・シルヴァの3人は根っからの強盗だった。3人はウォーター・ストリートの古びた家に住む、並はずれた金持ちで体が衰弱した老人を襲うことにした。
[#ここで字下げ終わり]
〈霧の高みの不思議な家〉
[#ここから3字下げ]
キングスポートの海岸線にそびえ立つ崖の上には、古い家が一軒あった。夜になると灯りがともり、住む人があるのだとわかるが、近づく者はなかった。ある夏にやってきた哲学者トマスは、崖の上のその家に行くことを試みた。
[#ここで字下げ終わり]
〈初期作品〉
[#ここから3字下げ]
洞窟の獣/錬金術師/フアン・ロメロの変容/通り/詩と神々
[#ここで字下げ終わり]