罪滅し編 ※本編使用バージョン
一度目なら、今度こそはと私も思う。
避けられなかった惨劇に。
二度目なら、またもかと私は呆れる。
避けられなかった惨劇に。
三度目なら、呆れを超えて苦痛となる。
七度目を数えるとそろそろ喜劇となる。
Frederica Bernkastel
罪滅し編 ※開発中作者公開バージョン
運命に泣かず、挫けることを知らない。
そんな彼女は美しかった。
誰にも媚びず、最後まで1人で戦った。
そんな彼女は気高かった。
彼女は眩しくて、ただただ神々しくて。
私には、そんな彼女が必要だった。
Frederica Bernkastel
**********犠牲者リスト
雛見沢営林署人質篭城事件
発生
昭和58年6月25日正午頃
場所
鹿骨市雛見沢×丁目 営林署雛見沢事務所内
概要
6月25日正午頃、犯人(竜宮礼奈)は、営林署雛見沢事務所に侵入。
同事務所内の雛見沢分校、教室に押入り、生徒25名を人質に取った。
その後、教室内に大量のガソリンを散布して7時間以上にわたり篭城した。
一時現場は膠着状態となったが、同日18時45分頃、人質数名が抵抗し逃走。
同時に大阪府警第2機動隊所属の特殊部隊が突入。人質24名を救出した。
犯人は、屋根へ逃れた人質1名を追い、一時格闘となったが、
同日19時10分頃、武装解除に応じ最後の人質を解放。警官隊に投降した。
負傷者4名(内軽症4名)詳細は以下のとおり。
園崎魅音
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日18時45分頃に逃走、保護される。
犯人に暴行を受け負傷。軽症を追う。
古手梨花
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日18時45分頃に逃走、保護される。
犯人との格闘時に負傷。軽症を追う。
北条沙都子
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日18時45分頃に逃走、保護される。
逃走時に転倒し負傷。軽症を追う。
前原圭一
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日19時10分頃に犯人が身柄を解放。
犯人との格闘時に負傷。軽症を追う。
逮捕者(竜宮礼奈)
同日19時10分頃、武装解除に応じ投降。同時刻、緊急逮捕。
即日、身柄を興宮署に移し事情聴取。犯行を大筋で認めた。
容疑者の責任能力を巡って激しい議論が行われたが、検察
は慎重に精神鑑定を行った結果、犯行時に責任能力はあっ
たとして起訴に踏み切った。
弁護側はこれに真っ向から対立し、責任能力を否定する精神
鑑定書を提出した。
裁判所にて現在、審判中。
『ひぐらしのなく頃に』連続殺人ノベル第6弾 罪滅し編
■罪滅し編TIPS
*Sub_Tips_024
1■いいお天気
風通しの良さだけは自慢だった。
少なくとも風が吹いている時は、冷房などなくても充分に涼めるのだった。
大きく開けた窓に干してあった布団を引っ込めると、私はそこに座布団を敷いて、縁側の夕涼みと洒落込むのだった。
日めくりのカレンダーは昭和の58年、6月であることを示していた。
6月にも関わらず、今年は空梅雨でもう夏本番の到来のようだった。……異常気象というやつらしい。
百年に一度の異常気象だったとしても、それが昭和58年に必ず起こることなら別に珍しいことでもなんでもない。
それは必然だということ。
そんなことより、下校時に突然振り出す夕立の方が、どれほど予想不能で珍しいことか。
全てが何から何まで予定調和の日々だけど。
何だか今年は色々と幸先がいい気がする。
…何て言うのかな。
スゴロクゲームで一番最初のサイコロで6が出て、自分ひとりだけたくさんのリードで始まった時のようないい気分、というのかな。
もっとも、サイコロというのは振れば振るほど、そのトータルは平均値に近付く。
私たちの人生は日々、あらゆるところでサイコロをたくさん投げている。
だから、ささやかな幸運の1つ程度で浮かれることもないのだけど。
……最初のサイコロが6でも次が1なら、7で、平均値。
運命主義者なら、次に出るサイコロは1の確率が高いとでも言い出すのか。
でも、次に振るサイコロは1から6まで何が出るかわからない。それが、運命というもの。
……次も6が出るかもしれないな。
全体で見れば36分の1の奇跡だけど、…1つ1つ積み立てて行こうと思えば、たったの6分の1程度の奇跡でしかないのだから。
沙都子が昨日くくりつけたガラス風鈴が、とても涼しい音色を聞かせてくれるのだった…。
*Sub_Tips_025
2■名刺
☆リナ☆
身長168cm B89W60H87
趣味:最近は室内ガーデニングに興味があって、目標は手作りハーブで紅茶を飲むこと☆
「いっつも楽しくて為になるお話をいっぱい聞かせてくれてありがと〜☆ 今度お店に内緒で一緒にどっか遊びに行こうね☆」
紳士倶楽部 ブルー・マーメイド
専属マネージャー 間宮リナ
*Sub_Tips_026
3■夏休みの絵日記
きょうは、お母さんといっしょにプールリゾートにあそびに行きました。
そしたらアキヒトおじさんもいっしょでした。
たまに礼奈にいじわるするからきらいだけど、とてもやさしくておもしろいおじさんです。
プールにいるときはアキヒトおじさんがお父さんになってあげるから、礼奈ちゃんはおじさんのことをパパってよぶんだよと言われました。
お母さんもパパってよんだので礼奈もパパとよんだら、アキヒトおじさんはすごいうれしそうで、礼奈にいっぱいいっぱいおこずかいをくれました。
お母さんもすごいうれしそうで、礼奈もすごいうれしかったです。
またあそびにきたいです。こんどはお父さんもいっしょがいいなと思いました。
*Sub_Tips_027
3■雨雲の予感
私はお気に入りの窓を開け、いつものように座布団をそこに敷くと、ささやかな縁側を楽しむのだった。
…なのに、せっかくの夕方の静かなひと時を、どたどたと騒がしいのが一匹。
お陰で涼やかな夕方のひと時が台無しだ。
「………幸せそうね。そっか、今日はあんたの大好きな甘いものがたくさん食べられたものね。」
この子は甘いのに目がないからな。
…私も嫌いじゃないけど、今日くらいの量があったら胸焼けがしてしまう。
取り合えず、幸せそうなのでしばらく放っておいてやることにする。
ここしばらく、私好みの辛いものやしょっぱいものばかりを食べさせてたから、さぞや嬉しかったのだろう。
もちろん、私にとっても今日は本当に楽しい一日だった。
私はその喜びを、こうして夕涼みしながらかみ締めていれば充分だった。
でも、空を見上げるとほんの少しだけ重みのある雲が見えた。
…少し風も涼しすぎるように思う。
夕立にでもなるかもしれない。
「………大地震や大津波などの報せとして、浅瀬に普段は絶対に見かけることができない深海の魚が現れることがある。…っていう話があるらしいわね。」
今日、私たちの浅瀬に、普段は絶対に見かけることができない珍しい深海魚が現れたのを見た。
海のバケモノの伝説のほとんどがそうであるように、人は深海の生物を忌み嫌い、不吉の前兆としたがる。
それが生きて現れようとも、死んで死体が打ち上げられようとも。
あぁ、それって言い得ていて面白いかもしれない。
生きて現れようとも、死んで死体が打ち上げられようとも。不吉の徴、か。
あぁ、……雨が降るかもしれない。
「……うるさいな、言われなくてもわかってる。洗濯物を取り入れるわよ。」
私は表の物干し竿ではためいている洗濯物を取り込むために、洗濯籠を掴むと表へ向かうのだった。
雲はますますに鉛色になってくる。
雨は好きだけど、…今日は好きになれそうになかった。
*Sub_Tips_028
4■お見積書
間宮律子さま
株式会社エグゼクティハウジング
お見積書の送付について
この度は、弊社をご愛顧いただきまして誠に有難うございます。
お問い合わせの物件について、以下にお見積もりをお送りさせていただきます。
物件名  パレスオブベルサイユ 707号室
物件番号 14M1421
物件タイプ 新築マンション
間取り  2LDK
所在地  鹿骨市小岩町2丁目
交通   ×××線 穀倉駅  徒歩5分
価格  4980万円  管理費 20000円
その他  東南角部屋・エレベーター停止階
マンション内フィットネスクラブの会員権付
この度はお問い合わせをありがとうございます。
こちらの物件は現在、急発展を遂げている穀倉駅近くの高級分譲マンションでございまして、今後、穀倉駅周辺の地価上昇に伴い、さらに価値が上がることが予想される優良物件でございます。
すでに募集数の数倍のお客様からのお問い合わせをいただいております。
そのため抽選制となりますことを予めご容赦ください。
また、抽選の口数で格段の優遇を得られる「セレブリティ会員様優待枠」もございます。
どうぞお気軽に担当までお問い合わせください。
株式会社エグゼクティハウジング
セレブリティ担当マネージャ 川畑
*Sub_Tips_029
5■お気に入りのワイン
沙都子は、校庭で遊んでいる子たちと混ざりに行った。
私はそういう気分ではなかったので沙都子を見送り、留守番に残ることにした。
……多分、夕方になるまで帰っては来ないだろうな。
沙都子がいないなら、…いないなりの過ごし方が私にはある。
それに、そういう気分だったから。
私は押入れの冬用の布団の山の一番奥に手を突っ込み、それを引っ張り出す。
それからちょっと洒落たグラスに、製氷室で作った氷をいっぱいに詰め込む。
だが、製氷室で作った氷は塩素臭くておいしくない。
ロックアイスが一番いいのだけど、沙都子が何に使うのかとうるさく聞くから、最近はすっかり買えずにいる。
……その口実をうまく思いつくだけで、この塩素臭さを未来永劫に脱臭できるなら、なるほどそれは考えるのに時間を費やす価値がありそうだった。
ミネラルウォーターで満たして、……それを少しだけ注ぎ込む。
透明な水の中に混じっていく色の付いた影を眺めるのは、とても乙なものだった。
本当はこういう飲み方は正しくないらしいが、私にはこれがちょうどいい飲み方なのだからとやかく言われたくない。
この便利な体は、わずかの量であっても私を酔わせてくれる。
だから少量をたっぷりと薄めるわけだ。
そのお陰で一瓶を長く楽しめると思えば悪くはない。
お気に入りの窓辺に座布団を敷き、……私はグラス片手に見慣れた景色と髪を撫でる風を肴にする。
ほんのりと甘い熟成した匂いが鼻をくすぐってくれた。
…………そんな風情をまさにこれから楽しもうというタイミングで、うるさいのが帰って来るのを感じた。
私のこの癖が許せないらしく、私がグラスを傾けようとするといつも文句を言うのだ。
案の定、ガミガミとうるさく騒ぎ始めた。
「……うるさいな。少しくらい我慢なさい。何を飲もうと食おうと、私の勝手でしょう。」
「だ、だめなのです…! お酒は、子供は飲んでは駄目なのです!」
無視を決め込もうとするが、風情を台無しにするかのように賑やかに騒ぎ始める。
……こんなんじゃ、とても酔いを楽しむ気にもなれない。
私は憎々しげにその様子を見ながら、窓の外へグラスの中身を投げ捨てた。
「……何で私が憂鬱か知りたい? …私の死に方が決まったからよ。」
ようやくそいつにも、私がどうして酒に溺れたかったか理解できたようだった。
「そんなに落ち込まなくてもいいのよ。割と一瞬で死ねるからそんなに怖くないわ。」
死体は黒コゲのバラバラだろうけど、死ぬ瞬間は一瞬だから、まぁまぁの部類だ。
「…………でも、……また、…駄目なのです。」
「そうね。……また駄目ね。………これだと、私の命日はいつだっけ?」
「…………………6月の、25日の夜だと思いましたです。」
「綿流しの祭りが終わってから、大体1週間後か。………まぁ妥当な辺りね。」
「やっぱり、……………………私のせいなのでしょうか。」
「決まってるでしょ。あんた自覚ないの?」
「…ぁぅあぅぁぅ。」
自分で振ってきたくせに、その通りだと言ってやったら涙目になる。…あぁもぅ、暑っ苦しいやつ。
「がんばりましょ。…次のスゴロクではきっと、6が立て続けに出てくれることもあるわよ。」
6月25日か。
……まだ10日以上もある。…のんびり過ごすさ。
ワインだってまだあるんだし…。
*Sub_Tips_030
6■営林署便り
6月なのに、早くもセミの声が聞こえる今日この頃、雛見沢の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
今年も綿流しのお祭りが近付いてまいりました。
昨年、大変ご好評をいただきました雛見沢営林署職員による木彫りマスコットの実演販売も行なわれます。
保護者の同伴があればお子様にも道具をお貸しできますので、どうか親子の素敵な記念にされてはいかがでしょうか。
さて、××第4次森林施業計画に基づき、本年夏季に山林の伐採を行なうことになりました。
この伐採は、老齢木や枯木を伐採することにより山林の美観を守り、新たに植樹を行なうことで山林の若返りを目的とするものです。
営林署では、この伐採作業に参加するボランティアを募集しております。
青空の下での林業体験を通じて、自然の素晴らしさを満喫される貴重な経験をされてはいかがでしょうか。
時期はちょうど夏休みを挟み、お子様との親子での参加も可能です。
夏の野山での貴重なボランティア体験を通じて、お子様の健全な育成に貢献できればと思います。
なお、伐採予定地は高津戸地区、谷河内地区の山林になります。
*Sub_Tips_031
7■昼の出前リスト
黒田メンタルクリニック殿
前略。
まず結論から申し上げて、急性の心的外傷後ストレス障害の一種であると考えられます。
両親の突然の離婚により、どちらかの親を選択しなければならない葛藤が、患者に強いストレスを与えたものと推測します。
加えて、患者は両親の離婚に対し自身に責任があると強い思い込みがあり、それが自己破壊願望を助長しているものと思われます。
患者にとって最大のショックは、両親の離婚によって、絶対に安全だと心を許していた家庭という居場所に裏切られたことによります。
よって今後、親子の居場所に対して、偏執的な防衛をする傾向が予想されます。
(例えば、父親に対して特に異性の接近を嫌う。自宅に他人を招き入れることを嫌う。もしくは招き入れられないように何らかの奇抜な行為を行なう可能性もあります。事例では、意識せずして自宅内にゴミを溜め込んだケースがあります)
まず大切なことは、患者が同居を決めた父親とのコミュニケーションです。
父親は患者とのコミュニケーションを深めることで、家族仲を一層強めて、その不安を和らげることが何よりも大切となります。
今回の患者のケースでは、おそらくは急性のものと思われますので、父親の協力があればおそらく、然るべき薬物との併用で、3ヶ月以内に治癒するものと思います。
ただし、一見治癒したかに見えても、トラウマ体験から10年以上を経てなお再体験(フラッシュバック)を起こすケースも少なくありません。
父親はまだ若く、再婚の可能性も将来、充分に残っています。
ですが、再婚によって見知らぬ異性を見ることは、患者に再体験を引き起こし、回避行為、過覚醒を誘発するものと考えられます。
父親にこの辺りをよく説明し、患者のケアに理解を得るようにしてください。
もしも父親に再婚が内定していた場合、最低でも患者が独立して親離れをするまで打ち明けるべきではありません。
そして今回の患者のケースで重要な点は、患者の自傷の原因であると思われる「寄生虫妄想症」には、「文化依存症候群」も関係していると思われる点です。
患者は郷里の村を離れることで祟りがあると妄信しており、この祟りの結果によって両親が離婚したとしています。
これにより、自己の責任から郷里の祟りに責任を転嫁することで、心的損傷の軽減・防衛を無意識に行なっているものと思います。
問題となるのは、この郷里の風習が非常に厳格かつ閉鎖的である点です。
患者の話によるならば、郷里に戻る以外に祟りから逃れる術はなく、現在の環境に居続ける限り、その祟りは続くとしています。
これには人格変容の傾向が見られ、以後、現実を改変し続ける高い可能性があります。
(人格変容:人格の低レベル化により現実を改変、妄想化するケースです)
患者の自傷行為の理由であるとする、血の中に虫が潜んでいるという妄想は、まさにその最たるものと言えるでしょう。
妄想と自傷が関連しているケースは、患者にとって極めて危険な状態であることを意味しています。
もしも父親に経済的な余裕があるならば郷里への引越し。もしくは郷里の親類の下へ患者の生活環境を移すことも重要なポイントになると思われます。
また、これほど顕著な症状を引き起こす「信仰」ならば、本件以外にも事例が多数存在する可能性があります。
ひょっとすると、郷里の大病院等に文化依存症候群に関する資料があるかもしれません。
それを取り寄せることで、効果的なメンタルケアが可能になるものと思います。
※このB5の便箋は、裏面使用のメモ帳の束の中に含まれていた。
なお、裏面白紙部分に書かれたメモは以下のとおり。
中華丼1、上海風五目やきそば3、チャーハン大盛り1
*Sub_Tips_032
8■昼の出前リスト2
また、父親に関しても注意を払う必要があります。
父親も離婚を経験して少なからずの精神的打撃を受けている上、患者に親身になろうとする余り、感応性妄想性障害を起こす可能性があります。
メンタルケアの第一歩として、相手の話を充分に聞き、頭ごなしに否定しないことは初歩の初歩でありますが、特に家族の場合、これによって感応してしまうことが少なくありません。
また、寄生虫妄想症は感応を起こすことが広く知られており、時に1つのコミュニティ全体に広がることも少なくありません。
(よって複数人から訴えがあったとしても、必ずしも寄生虫が存在するとは限りません。保健所などへの害虫駆除の訴えにはしばしば、こうした集団妄想が含まれます)
しかも今回のケースでは、共有される妄想の内容が非常に過激であるため、最悪の場合、寄生虫の治療と称して、感応者同士が異常な方法で相互を傷付けあい死に至らしめる、もしくは悲観して心中するなどの行為に走ることも考えられます。
また、この感応性妄想性障害は、二人組精神病の呼び名もあり、親身な相方に対して特に強い感応性を示します。
患者に接する人間には、患者が現在治療中であることを理解させ、妄想に感応しないよう充分に注意を促す必要があるでしょう。
なお、感応しやすい人間としては、家族、もしくは恋人のような親身になってくれる人間が挙げられます。
*Sub_Tips_033
9■昼の出前リスト3
「文化依存症候群」の危険性は、「解釈妄想病」を誘発しやすい点にあります。
つまりこの度のケースでは、患者は瑣末な何かを見る度に、それを「祟り」であると解釈しようとします。
そしてそれらが了解可能な形で累積した結果、妄想体系を作り上げ、パラノイアに至ると思われます。
また、患者にはわずかですが人格性精神障害の傾向も見られます。
もちろんこれは極めて軽微なレベルであり一般的な生活に何の支障もありません。
健常な人間であっても、日常生活において一次妄想(真性妄想)をすることは少なくありません。
ただしその内容が支離滅裂であるため、当人にも了解できず自然と無視されるのが普通です。
ところが、了解不能にも関わらず累積していくケースが存在します。
これは素質によるものが大きいとされ、患者は比較的この素質が大きいと思われます。
さて、一次妄想は3つのケースに分類されることは黒田先生に置かれましてもご存知のことと思います。
「妄想気分」は根拠なき危機感の切迫を感じ、「妄想着想」は根拠なき使命感や目的を感じ、「妄想知覚」は根拠なき現象に対し根拠なき理由を感じるとされています。
患者のケースでは、これら了解不能な妄想が累積し、「文化依存症候群」と併発することで「解釈妄想病」を誘発し、了解不能な妄想を「祟り」と解釈することで了解可能としたと思われます。
了解可能な妄想体系は了解可能な二次妄想(妄想様観念)を誘発し、自らの妄想体系を時間と共にますます強固にしていきます。
(この二次妄想の中に、先の「寄生虫妄想症」も含まれると考えられます)
パラノイアの患者に共通することは、発症後も人格の変化はなく、一見して極めて正常である点です。
本人にも罹患の自覚はなく、また妄想体系を本人なりの解釈により了解しているため、高度な理論武装をしているケースが少なくなく、第3者がそれを妄想であると指摘することは極めて困難です。
また、妄想の傾向にもよりますが、「被害妄想」から「追跡妄想」「陰謀妄想」に転じることもあり、結果、架空の敵を作り上げ反社会的な行為に踏み切ることもあります。
(例えば、カルト教壇の教祖のパラノイアに集団感応した信者たちが、集団で「陰謀妄想」に転じ、自衛と称して反社会的な行為に踏み切ることは、まだ日本では報告例がありませんが、近い将来にありえるかもしれません)
幸い、現在の患者はここまで重度には至っていません。
適切な治療を受けることで、容易に社会復帰を果たせるでしょう。
父親にも、これが極めて異常なケースではなく、いくつかのささやかな要因の積み重なった、人間誰しも起こり得るケースであることをよく理解させてください。
父親との絆を深めることでしか治療できず、また父親の絆があれば必ず治療できるのです。
以上の理由から、郷里へ帰郷されるならば、その後も専門の医療機関で継続的な指導を受けられることを強く勧めていただきたいと思います。
長文を大変申し訳ございませんでした。
最後までお読みいただきましたことを感謝いたします。
*Sub_Tips_034
10■やつら
※レナ目線だよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
大石との電話を終えて電話ボックスを出た瞬間。
………私は今さらのようにそれに気付き、ぞっとした。
この暗闇の中で、これだけ目立つ電話ボックスにいたのだ。
誰にも見られていないわけがない。
いや、見られていないわけがないんじゃなくて、見ラレテイタ。
暗闇からじっとこちらを覗く、光る目…。
………それが人間であるはずはない。
幻覚? 違う。やつらの正体はすでに知っている。
……それは雛見沢を支配する御三家を、真の意味で支配するやつら。
その目の位置は低く、……薄っすらと見える輪郭も貧弱だった。
……そう、やつらが体格的に貧弱であることはすでに過去の記録から明らかなのだ。
その、人間ではないことを示すシルエットは、信じられないくらいに非現実的だった。
…特に頭部のシルエットが異常で、突起物のような何かがあり、明らかに人のそれではない。
……やつらの外見については、三四さんに預かったもう1冊のスクラップ帖の方が詳しかった。
……その眼球は血のように真っ赤で、…身体にはアンモニア臭があり、………過去において世界で何度か捕獲の例があるはずなのに、……みな、溶けたりして消えてしまい、跡形も残さない。
……残るのは、やつらが確かに「降臨」したことを示す跡だけ………。
その時、ありえない非現実的なシルエットが一歩、
歩み寄り…、じゃりりと現実的な音を立てた。
その音のあまりに残酷なくらいの現実感が、私を現実に引き戻す。
「ち、……近寄らないで、バケモノめッ!!」
じゃりり、ガッ、ジャララララ!!
道路の砂利が、爆ぜたり、飛び散ったりして、奇怪な音を立てた。
しかもそれは徐々に、私に迫ってくるのだ。
……私は恐怖に駆られてもう一度同じ言葉を口にする。
すると今度は、私がたった今まで使っていた電話ボックスのガラス扉がびりびりと振るえ、バン!
バン!
と打ち付けるような怪奇音を立て始めるのだった。
私は絹を裂くような悲鳴を挙げ、駆け出す。
そして肺が爆発しそうになるまで走ってから振り返り、……もうあの奇怪な気配がそこにいないことを悟る。
…………気のせい………?
気のせいなものか、砂利を蹴散らすような音、電話ボックスを鳴らす怪奇音は確かに聞いたじゃないか!!
でも落ち着け竜宮レナ…!
……気のせいということにしてもいいから、今は心臓を落ち着けるんだ。
……どうせ、…いつか戦う相手じゃないか。
…次に現れたら、刃向かってやれ…。分厚い鉈を頭に叩き込んでやれ…!
雛見沢は私が守る、それが私の使命なんだ。…やつらの好きになんかさせるものか…ッ!!
チリチリチリチリ……チリチリチリチリ。
*Sub_Tips_035
11■雛見沢だった訳
あれは、何年前だったかな。
ある田舎の自然が綺麗な村があってね。
そこがダムに沈むとか何とかで住民運動があったんだ。
その住民団体が、豊かな自然を知ってもらおうと、大自然ウォッチングという名のツアーを開催していたことがあってね。
やがてダムに沈むかもしれない、失われていく自然という雰囲気に引かれて、本当に軽い気持ちで参加したんだよ。
でもね、行って本当に息を呑んだんだよ。
そこは本当に空気が透き通っていて、自然が美しい本当に素晴らしいところだったんだ。
それ以来、お父さんはあの自然にすっかり虜になってしまっていてなぁ。
…ダム計画が中止されたと聞いて喜んでたくらいなんだよ。
あの時、訪れたのがまさに今、家を建てている場所なんだけどね。
あの時は野花が美しい原っぱだったんだ。
その原っぱで、二人組の小さな女の子たちが遊んでいたんだ。
二人とも髪が長くてとても美しい少女たちだった。
ご近所の友達同士だったんだろうね。
幼いながらもきりっとした表情の子と、あどけなさを残す表情の子の顔、今でもよく覚えてるよ。
どちらも将来、それぞれ個性的な美人になるだろうなぁ。
少女たちはくるくると踊るように走り回ってた。
ここは君たちの遊び場なのかいって聞いたらこう言うんだ。
早くここに引っ越してくる人が現れますように、ってね。
見ればそこには「別荘地・売出し中」の看板が立っていた。
その時、あぁ、ここに住んでみるのもいいかもしれないなぁって思ったんだ。
確かにここには何もないし、都会での生活に比べると不便かもしれない。
でも、……父さんなぁ、家族でもう一度生活をやり直すならここしかないって思ったんだ。
前の町では確かにいろいろあったけど、それはもう全部終わったんだから、忘れてしまおう。
過ちから教訓を汲み取り、この村で理想の生活をやり直そう。
だから、圭一がここでの生活を気に入ってくれてると嬉しいんだけどなぁ。
…………そうか。
気に入ってくれてるなら嬉しい。
父さんも、ここに引っ越してきてから家族の仲がとてもよくなって嬉しいんだ。
前の町では、家族はみんなばらばらだったと思う。
…だから、やり直せて本当によかったと思ってるよ。こうして、圭一と話をする機会も全然なかったしなぁ。
そうだ、圭一。
圭一の学校には、髪の長くて綺麗な二人組の女の子はいないか?
年齢は……多分、圭一よりもっと年下だと思うなぁ。
髪の短い子と長い子ならいる? ううん、多分違うと思うなぁ。
何で探してるかって?
いやいや、写生のモデルになってもらいたくてねぇ。
色々なコスチュ、げほんげほん! と、とにかく芸術的な興味でだよ。見かけたら父さんにも教えてくれよ。きっとだぞー!
ぐほぐぎぇッ?!
*Sub_Tips_036
12■前夜
「………………もう、……明日なのです。」
「ん? ………………あぁ、私たちの命日?」
「…………今回も、同じ顛末なのです。」
「そうかしら。………よく似てるけど、いろいろと違うところもあったわ。……圭一、前のことを覚えてたし。」
「……そんなことはありえないのです。覚えているわけ、いや、知っているわけはないのです。」
「くすくすくす…。あんたが絶対にありえないと言ってくれればくれるほど、…じゃあこれは本当に奇跡なんだって思えるわね。」
「どうせ、今回もおしまいです。」
「おしまい、かしら。」
「もうすぐ終わる。全部、終わる。……そう、ひぐらしのなく頃に。」
………どうせ、もう終わるのだろうか。
サイコロは、振れば振るほどにその合計を平均値に近付いていく。
100回も振ったなら、その過程において、6が連続して出るという奇跡があったとしても、全て合計すれば平均値。
…予定調和に内包されてしまう程度のもの。
でも、100回も振ったなら、その下限と上限は100〜600にも及ぶ。
振れば振るほどに未来は1つの平均値に集合しようとするのに、振れば振るほどに、実は未来の可能性は増えていっている。
100回振るなら約500通りの未来。
1000回振るなら5000通りの未来。
その中の1つには、この終わりのないスゴロクからアガリになる結末もあるのではないか。
……圭一が見せた奇跡は、サイコロを振り続けることは決して徒労ではないことを教えてくれる、目の覚めるような出来事。
平均値なんかに、屈するな。
「……………………………。」
「……………いらつく背中を見せるわね。……どうせ今回も駄目だろうって、そういう哀愁でいっぱいよ。」
「……………………………。」
「……私だって、……どうせ駄目だろうと思ってる…。…でもね、最後のサイコロを投げるまで、私は諦めない。圭一が教えてくれた。今回は何かが違うの。……だからそれを信じてみる。」
「……………梨花は、…………本当に強いのです。」
「まぁね。あんたよりはずっと若いし。」
「………うぅん、…むにゃむにゃ……、………梨花ぁ…?」
「……みー。」
「こんな時間に起きてて、…ふわぁ……、夜更かしは駄目でございましてよぉ…。」
「……ごめんなさいなのです。寝苦しかったので星を見ていただけなのですよ。もう寝ますです。」
「そうなさいませ………。……おやすみ梨花ぁ……。」
「……おやすみなのです、沙都子。」
*Sub_Tips_037
■悪魔の脚本
舗装道路が終わり、砂利道がガタンガタンと車を揺らし始める。
セミの声が窓をぴったり閉めていても車内に滲んでくるのだった。
本当なら、こんなにもいい天気なら、窓を全開に開けてセミの声を浴びながらというのも悪くない。
だが、…贅沢になれるというのは恐ろしい。
窓を開けてセミの声を浴びたいという健全な欲求は、夏バテ気味の体にカーエアコンの方がいいと却下される。
今年は空梅雨だった。
しっとりと雨を楽しめるはずの6月からもう真夏日が訪れている。
……20年以上も前のあの年も、こんな空梅雨の夏だったことを思い出していた。
「ここはやっぱり空気のいいところだよな。」
「えぇ。風光明媚ないい土地です。ひょっとしたら岐阜の村みたいに、世界文化遺産に指定されることもあったかもしれないのに、惜しいですね。」
「そのお陰で観光客がいない。実に快適じゃないか。……どうして旅行者ってのは田舎じゃ交通法規を忘れられるんだ? 道路いっぱいに横になりやがって。」
「あっはっはっは。赤坂先輩はアウトドアは今も?」
「最近はさっぱりだな。何しろ暇のない稼業だからな。」
「あっはっはっはっは。それはお互い様です。………………お、いたいた。早いな。」
クラクションを鳴らすよりも早く、相手はこちらに気付き手を振った。
荒地を走破できそうなバイクに、そのままキャンプができそうなリュックサックを背負った若者だった。
赤坂たちは車を降りると、その若者と握手を交わす。
「小隊長殿! ご無沙汰いたしております。」
「おう! 今のとこはどうだ。元気にやってるか! 今日は楽にしてくれていいぞ。こちらは俺が大学時代に大変お世話になった赤坂先輩だ。」
「どうも、赤坂です。今日はもう1人、大石という者とご一緒するお約束でしたが、直前に検査入院が入ってしまいまして同行できませんでした。この度はお世話になりますが、よろしく。」
「よろしくお願いします!」
「さて、赤坂先輩、どこから回りますか?」
彼の名は赤坂衛。
東京の警視庁に勤めるベテランの刑事だった。
定年までの残り年数が見えてきたにも関わらず、精悍なカミソリのような眼差しは消えることがない。
数々の修羅場で育んだ経験と自信はその表情に滲み出し、筋骨隆々な肉体はいかなる暴力に対しても怯まない頼もしさを感じさせた。
彼と雛見沢の縁は、遠く30年近く前の昭和53年に遡る。
当時の彼は警視庁公安部に所属し、犬飼建設大臣の孫の誘拐事件に臨み、この雛見沢を訪れたのだった。
そこで大石と出会い、……そして古手梨花と出会った。
古手梨花が予言した自らの死の運命。
…赤坂にとっては、この少女を運命から救い出せなかったことは、今になってもなお忘れられない痛恨の悔やみだった。
やがて彼は雛見沢大災害をテレビで知り、当時世話になった大石と再会。
少女を襲った惨劇を、雛見沢村連続怪死事件の謎を、例え今からであっても暴こうと誓い合ったのである。
だが雛見沢は気が遠くなるほど長い時間に渡り封鎖され続けていた。
よって赤坂たちはこの20年間の間、自分たちの持つ情報を手記にまとめて発表し、読んだ読者に当時の記憶を辿ってもらって情報を寄せてもらう以上のことはできずにいた。
しかし、ようやく雛見沢村の封鎖は解かれた…。
だが、激務を極める赤坂と、体調を崩し気味な大石の足並みがなかなか揃わず、ようやく今日になって雛見沢を訪れることができたのだった。
本当なら大石と来る予定だったのだが、大石の検査入院が急に決まり、赤坂は1人で訪れることとなった。
同伴している2人は、赤坂の大学時代の後輩で、現在は陸上自衛隊に務める男と、その元部下で、雛見沢の封鎖中、その任務に関わり村内を熟知する男だった。
赤坂は自分の荷物の中から、スクラップ帖を取り出す。
…角はよれよれになり、相当の劣化がうかがえた。
スクラップ帖をバラバラとめくり、しばし黙考した赤坂は最初の行き先を口にした。
「……では、鬼ヶ淵沼をお願いします。」
「了解いたしました。それではご案内いたします!」
若者はバイクに跨り、赤坂たちが車に戻るのを待つ。
それから互いにクラクションで応えあった後、バイクの先導で鬼ヶ淵沼に向かった…。
森が開けると、大地をコンクリートで固められたとても不自然な土地が姿を現す。
沼どころか、水一滴もない。
水の代わりにコンクリートで満たしたのだ。
……そう、ここが鬼ヶ淵沼跡だった。
「はははは、沼どころか、水溜りもないな。」
「大災害後のだいぶ初期に埋め立てられたと聞いています。自分がここへ着任した時はすでに埋め立てられていました。」
「ちょっと降りてみよう。」
赤坂は車を降りると、コンクリートで固められた死んだ沼の中央に歩いていく。
駐車場にするわけでもなければ、ヘリポートがあるわけでもない。
……ただただ、広大な森の空き地に現れたコンクリートの巨大な大地。
「……なるほど、これがネットでよくいうUFOの着陸場というやつか。」
「そんなこと言われてるんですか。」
「ここの写真がよくミステリー系のサイトに紹介されてるよ。ここで政府と宇宙人が交流してたって言うんだ。確かに、こんな森の中に、ポカンとこんなコンクリートの空き地があれば、不審に思うよな。」
「わっはっはっはっはっは。」
この沼は、昭和58年の6月末に突如湧き出した火山性ガスの発生場所だ。
致死性の極めて高い、硫化水素と二酸化炭素の混合ガスは深夜の内に村を丸ごと飲み込み、雛見沢という村を一夜にして滅ぼしたのである。
そして、封鎖された後、ここを管理していた自衛隊によって沼は埋め立てられた。
「ネットで騒いでる連中にも、連中なりの根拠があるらしい。地質学的に言って、ガスの発生源を塞ぐために沼をコンクリートで固めるなんてのは、何の意味もないかららしいんだ。」
「なるほど、確かに活火山の火口をコンクリートで埋めたという話は聞かないですね。でもまぁ、税金での無駄な工事は我が国の伝統ですから。」
ネット上で、怪現象やUFOなどをこよなく愛するミステリーマニアたちの間で近年、話題になっているのが、この雛見沢大災害なのだ。
雛見沢大災害は、マグマ溜りから噴出した火山ガスが湧き出して発生したことがすでに確認されている。
昭和61年にはアフリカのカメルーンにあるニオス湖でも同様の災害があったこともあり、地球規模でどこにでも起こり得る不幸な災害ということで決着した。
だが、近年になって、ネット上である風説が流れるようになっていた。
それは、この雛見沢大災害が実は、政府が事実を隠蔽するために作ったカバーストーリーで、その実態は宇宙人による細菌テロだった…というのだ。
なぜ近年になってこんな話が…?
ミステリーマニアたちが根拠とするのは「34号文書」と呼ばれるある秘密ファイルの存在だった。
この「34号文書」という名称はネット上である個人が便宜的に付けた名称だったが、国家陰謀をイメージさせるネーミングが受けたのか、瞬く間に広がり定着した。
彼らはどこそこで入手したと称しては、その画像や内容を転載したが、どれも出自不明ないい加減な内容だった。
捏造が相次ぎ、その存在さえ疑われている。
ここで、彼らが言う「34号文書」について説明しなければならない。
ただしインターネットの世界でのこと、風説が入り混じり、もはや都市伝説と化した感もあるため、諸説に別れ、諸派が互いを否定しあっている状況にあるのだが、概ね以下の内容であることを前提にしている。
「34号文書」は、雛見沢の診療所に勤務していた鷹野三四という看護婦が残した手記である。
34号とは、連番を示すものではなく、この女性の名前をもじったものらしい。
この女性は、雛見沢に伝わる奇妙な鬼伝説の歴史を追い、その伝説が何を意味するかを解き明かそうとする個人研究者であったと伝えられる。
その内容によれば、昭和58年の雛見沢大災害は事前に予見されていた、というのである。
彼女の研究によるならば、雛見沢には太古の昔、宇宙から飛来したUFOが墜落し、鬼ヶ淵沼に沈んだという。
そのUFOには、地球には存在しない、宇宙の寄生細菌が漂着しており、村人たちは次々感染したという。
この細菌に寄生された人間は凶暴化し、「鬼」と呼ばれるに相応しい存在と化したという。
鷹野三四はこれこそが、沼から湧き出した鬼の正体だとしている。
墜落したUFOに乗っていた宇宙人は、地球人たちが自分の持ち込んだ宇宙からの細菌に感染して大変なことになっていることを知り、その姿を村人の前に現す決意をした。…これがオヤシロさまの降臨であるという。
宇宙人は、地球外文明の高度な方法で村人を治療したが、対症療法にしかならなかった。
その為、宗教的シンボルとして、オヤシロさまの名で崇められていた宇宙人は、症状を悪化させないためにルールを作り村に課したという。
細菌たちは、雛見沢の風土にのみ馴染んでいたため、宿主が雛見沢を離れると症状を悪化させてしまうのだった。
その為、村から離れるなという規則を作ったのだ。
これがその後の鬼ヶ淵村の仙人を巡る伝説につながっていく。
つまり、仙人たちが持っていたという仙術や奇跡の技は、全て宇宙人がもたらした地球外文明の英知だったのだ。
「わっはっはっはっは。そういうののマニアな人たちは、つくづくそういうのが好きですよね。ノストラダムスの大予言だって、99年にはあんなに騒いだのに、7月が過ぎたら何事もなかったかのようにみんな過ごしてる。民放もあれだけ煽っておいて無責任ったらありゃしない。」
「でも、鷹野三四は雛見沢大災害を予見したらしい。それは嘘じゃない。確かにこのスクラップ帖に書いてある。」
「そんなまさか。あっはっはっは……、……。…赤坂先輩、それ本当に…?」
仙人たちの時代から長い時間を経る内に、人々に寄生した細菌は非常に安定したものになり、人体に無害なものとなった。
宇宙人も細菌も、人々の記憶から薄れていく…。
だが、宇宙人たちは御三家に守られながら何百年もの間、生き続けてきたというのである。
古手神社の秘密神殿の中で代々、ご神体として崇められながら生きてきたのである。
その宇宙人は、寄生している細菌たちを操り、その結果、村人たちを何百年にも渡って支配していた。
そしてその支配を取り戻すため、彼らは再び寄生細菌の太古の力を取り戻すべく、研究を初め、……うんぬんかんぬん。
ここで諸説が入り混じり、つまりは、寄生細菌を地球規模でバラ撒き地球支配を目論もうとした宇宙人の地球侵略計画こそが雛見沢大災害の正体である、というらしい。
それで、実は日本政府内には宇宙人の侵略と戦うための秘密部門があって、彼らはアメリカの秘密基地、エリア51で訓練を受けていてうんぬんかんぬん。
そして彼らが動き出し、この宇宙人の地球侵略を食い止めるため、村を全て封鎖して毒ガス攻撃で完全に封殺した…というのである。
「わっはっはっはっは!! 映画でそんなのありましたね。ほら、黒人の俳優が主演の。何て言ったっけなぁ。MI…なんだっけ!」
「この辺まで来ると俺もそろそろ滅茶苦茶だなとは思う。ただ、この滅茶苦茶を書いた鷹野三四は昭和58年の6月中旬。正体不明の怪死を遂げる。そしてその死の直前に、自らの死を悟ったかのように、村の1人の少女にこのスクラップ帖を預けて意思を託したというんだ。」
その少女の名は「少女A」。
……ネット上で諸説が飛び交っているが、当時の事件を詳細に調べた人間が「竜宮礼奈」という個人名を特定したとされ、最近は「竜宮礼奈説」でほぼ定着しているようだ。
竜宮礼奈は鷹野三四の意思を継ぎ、宇宙人たちの侵略計画を打ち砕くため、学校を占拠して、警察に陰謀を暴くよう要求したらしい。
もちろん、当時は誰もがそれを世迷言だと笑い捨てたし、彼女が正常な心理状態にあったのかどうかも疑った。
結局、竜宮礼奈は、鷹野三四というミステリーマニアの妄想を真に受け、稚拙な犯行に走ってしまったのではないかというのが当時の見解だったのだが。
「竜宮礼奈は学校占拠時から警察に対し、宇宙人に支配された御三家が、細菌テロを行なおうとしていると訴えていた。
そしてその翌日なんだ。雛見沢大災害が起こるのは。」
「まさか! そりゃ偶然じゃないんですか。」
「わからない。偶然ではないと思う連中に言わせると、その後の自衛隊による封鎖はおかしなことだらけらしい。例えばこの沼の埋め立てが一例だ。そして埋め立てる前に、明らかに通常の地質調査とは異なる秘密の調査を行なっていたとされていて、当時、ここの封鎖に関わっていた自衛隊員たちがそれを何人も証言している。……否定派はそれを、単にガスの発生地なので、危険に備えて立入を制限していただけだと主張するんだがね。」
「それは多分、…否定派の言うのが正しいんじゃないかと思いますね。」
「他にも、異常に長かった封鎖期間も疑惑の目が向けられている。近年の東京都三宅島の火山ガス災害の例を見てもわかるように、4〜5年で立入禁止を解いている。雛見沢のケースは例外中の例外のケースのはずなのに、封鎖は極めて長期に及んだ。」
「三宅島のケースは島民が帰島を強く希望したからと聞いています。雛見沢には帰る人がそもそもいないんだから、充分安全が確認できるまでたっぷり期間を置いただけなのでは?」
「ふむ。あとこんな話もあるぞ。雛見沢を封鎖していた自衛隊員たちは定期的に血を抜かれての厳密な検査を受けていたといい、何らかの結果によって、自他ともに理解できない理由で任務を解かれることがあったという。それは実は、細菌感染の陽性反応を見るもので、自衛隊員たちを留まらせることによる何らかの人体実験だったと囁かれているらしい。」
「それは、やはりガスが湧き出す危険性があっただけに健康管理には気を遣ったということでしょう。それに、普通のサラリーマンだって、年に一度は健康診断を受け、その時に血を抜かれてるはずです。」
「まぁ、君の言うことももっともだと思う。あともっと面白い話もあるぞ。雛見沢大災害時に火山ガスは発生していないと主張する連中がいる。」
「火山ガスは発生していない? どういう意味ですか。」
「つまり、元々火山ガスなんか噴出してなくて、ガス災害というのが政府の嘘であると主張してるらしい。ほら、スピルバーグの人類とUFOがコンタクトする某映画でも、同じ設定だったじゃないか。」
「それこそミステリー狂のこじつけだと思いますね。で、その連中は何を根拠に火山ガスが発生しなかったと言っているんです?」
「封鎖解除後、ミステリーマニアがどっと押し寄せて、UFO説を補強するためにいろいろ調べたらしい。で、連中の主張はこうだ。政府発表の火山ガス成分によるならば、硫化水素によって金属が腐食されたり、自然体系に大きなダメージが残るはずだ。にも関わらず雛見沢にはそういう痕跡が残っておらず、よって、火山ガスが噴出したとはとうてい思えない、とか何とか言ってる。……もっともあれから20年も放置された村なんだ。そんな痕跡を発見できたかどうかは疑わしいな。」
「はっはっは、やはりつくづくインターネットというのは信用できませんねぇ。……で、まさか赤坂先輩は、その怪しげな話を信じてるわけですか?」
「最初は信じなかったが、最近は俺もわからない。何割かは真実が含まれているかもしれないと思うようになっている。」
「赤坂先輩ともあろうお方がUFO話を信じるんですか?」
「このスクラップ帖。これが本物の『34号文書』だとしたら?」
「え?」
「昭和58年6月25日に雛見沢営林署に人質を取って篭城した、竜宮礼奈が所持していた、正真正銘、本物の『34号文書』だ。雛見沢大災害の混乱で長いこと行方不明だったが、近年、大石さんの古い友人が県警の保存庫で発見したらしい。」
当時は妄想と思った大石ですら、…雛見沢大災害の後に読み直すと、決して笑い捨てられる内容ではなかった。
宇宙人の部分ではなく、雛見沢に土着の寄生細菌による風土病が「オヤシロさまの祟り」であったという部分だ。
もちろん、病原体は発見されていないので仮説の域を出ない。
「大石さんの仮説なんだが、御三家が過去の信仰心を村に取り戻すために、大昔の毒性の強い病原体を研究していたのは本当じゃないか、って言うんだ。雛見沢大災害は、実はその結果の失敗じゃないかってな。」
もちろんこの辺りには、ネット上の仮説や珍説も入り混じる。
雛見沢大災害の直前に謎の死を遂げた診療所長。
そして、篭城事件の夜に惨殺された古手梨花という少女の謎…。
診療所の地下に秘密の研究施設があり、そこで入江は細菌の研究をさせられていたが、罪の意識に耐えかねて自殺。
……オヤシロさまの復活という宗教的セレモニーの何らかの意味のため、梨花は宗教的儀式で惨殺されて生贄に…。
だが、彼らが研究した細菌は失敗作だった。
……それは村人たちに寄生するどころか、そのまま死に至らしめてしまう殺人ウィルスだったのだ。
かくして村は、一夜にして滅びてしまうことになる…。
「ただのガス災害じゃないことは明白なんだ。ガスが湧く直前に、1人の少女が細菌テロを予告し、数人の村人が怪死を遂げている。それをスクラップ帖にまとめた鷹野三四本人も含めてね。あれを偶然の予見不可能な災害だとするには、どうも腑に落ちない要素が少なくない。この『34号文書』を読めば、それらは明らかにはっきりしてくる。」
「じゃあ…、雛見沢大災害は自然災害ではなく、カルト集団による細菌テロ?」
某サリン事件で知られるカルト集団が、毒ガスや危険なウィルスを研究し散布していたらしいという話は、この平成の時代には誰もが知ることだった。
だが昭和の時代なら、カルト集団が細菌テロに及ぶ…などとは誰も想像できなかった。
「その後の自衛隊の長い封鎖は、その殺人ウィルスを調査するためではないかと囁かれているんだが、すっきりしないな。」
「はははははは。UFOに乗った宇宙人がって話よりは、カルト集団がって方が近年は信憑性がありますからね。」
「本当にUFOが墜落した可能性もあるかもしれないな。……竜宮礼奈が人質篭城時に出した要求の筆頭は、鬼ヶ淵沼の底には墜落したUFOの残骸があるから引き上げろ、というものだったらしい。」
「馬鹿馬鹿しい…。」
「それが馬鹿馬鹿しいか調べたくても、見ろ。沼はコンクリートで数メートルの厚さで固められ、確かめる術もない。地質学的にはガスを防ぐ効果は何も期待できないはずの馬鹿馬鹿しい工事によってだ。」
「赤坂先輩がそれを立証するには、あとはここの住民の生き残りを見つけて、体内からその特殊な病原体ってやつを見付け出す他、ないんじゃないですか。」
「…それも致命的だ。雛見沢大災害後の雛見沢出身者に対する魔女狩りのせいで今や出身者の存在は不明だ。彼らは名乗りなどあげまい。」
雛見沢大災害の直後から、雛見沢出身者たちの間に、オヤシロさまの祟りと称して奇行に走る人間が現れた。
その一部が、猟奇事件や奇怪な方法での自殺を遂げ始めると、全国で近所の雛見沢出身者を排斥する一種の魔女狩りが発生した。
この当時の政府のプライバシー保護の甘さもあり、今や雛見沢出身者は頑なに口を閉ざし、自らの出身を隠し続けているという。
「じゃあ、お手上げじゃないですか。」
「それでも諦めないのが刑事魂ってもんだよ。……あれが自然災害じゃなかったっていう状況証拠はいくらでもあるんだ。何か1つの具体的証拠が見付かれば、芋づる式に全てを白日の下に晒せるかもしれない。」
「まぁ、あれから20年経過してますからね。真相はあまりに遠い闇の中かもしれません。」
「そうだな。………21世紀の今頃になってここを訪れても、何もわかりはしないのかもな。」
昭和58年の6月に。
一体、雛見沢で何があったと言うんだ。
確実にわかっていることは、鷹野三四が細菌テロを予見して怪死を遂げて。
それを主張した少女が学校を占拠してまで訴えたが誰も耳を貸さず。
診療所の所長が怪死を遂げ、オヤシロさまの生まれ変わりと村人たちに信じられていた古手梨花という少女が、惨殺されたという事実のみ。
このスクラップ帖は一体何なのか。
内容が示すとおり、それは壮大な陰謀を暴いた一大告発書なのか。
当時、誰もが思ったように、これは偏執的マニアによる妄想のでっち上げなのか。
これが事実なら、我々は1人の少女の訴えに耳を貸すことであの大災害を免れた。
これが虚実なら、じゃあ誰がこのスクラップ帖に沿うように災害を引き起こしたんだ。
あの某サリン事件のカルト集団以降、世間に流行った言葉に「マインドコントロール」というものがある。
「洗脳」が短絡的手段によって短期間の間に強制的に行なわれることに対して、「マインドコントロール」はより時間をかけてじわじわと行い、本人がそれを正義と信じて自発的に行なうようになる点で、洗脳よりも格段に恐ろしい人格侵食であると言われている。
カルト集団は終末思想で信者たちに常に不安と恐怖を植え付け、それから救済される方法として何かを命じられ、それに自発的に従わせようとする。
その図式は、どことなく、「34号文書」に踊らされた竜宮礼奈に似なくもない。
では、竜宮礼奈は何者かに「マインドコントロール」を受けていたのか?
そして彼女をマインドコントロールしたカルト集団は、まさに某カルト集団がそうだと吹聴していたように世界の終末を引き起こして、教義の信憑性を訴えたのか?
ならば、この「34号文書」はカルトにとっての経典なのか?
何が真相かわからなくなる時、…この惨劇を見て誰が楽しんでいるのかを思うときがある。
このスクラップ帖は、そう、脚本なのだ。
数千人もの村人の命を一夜にして奪う、惨劇の舞台脚本。
人の死を見て笑う地獄の観劇者のための、悪魔たちの脚本。
この脚本を誰かが書いた。そして誰かが上演した。それを見て誰かが笑った。
くそ……!!
……昭和58年の6月に雛見沢で、一体何が起こったって言うんだ……!!
■おしまい
■スタッフルーム(真面目ルーム)
こんにちは、竜騎士07です。
この度は『ひぐらしのなく頃に解』罪滅し編をお楽しみいただき、誠にありがとうございます。
今回のシナリオの中で、テーマとしたかったものがいくつかありますが、ここではその内のひとつ。
殺人の否定について書かせていただこうと思います。
これは、連続殺人ノベルという物騒なカテゴリーを標榜している以上、いつか書かなければならないことでした。
近年、特に未成年者に多い短絡的な問題解決手段に、「殺人」と「自殺」の2つがあります。
私たちはストレスを受けると、その発生源を取り除くか、その発生源から逃れるかの2つを選ばされます。
例えば、学校である人にいじめられているとする。
すると解決策は2つあり、そのいじめっ子を現在の環境から「取り除く」か、自分がその環境から「逃れる」かを選ばされることになります。
いじめっ子は大抵、喧嘩にも強く人数も多いでしょうから、自分一人が挑んだところで「取り除く」ことはできません。
また、クラスを変わる、学校を辞めるなどということは、なかなかできることではなく「逃れる」ことも普通はできません。
その結果、日々状況は悪化し続け、強まるストレスは自身に早期の解決を促します。
その結果、短絡的解決策として「殺人」と「自殺」の2つが浮上するわけです。
「自殺」が敗北に当るなら、せめて相討ち覚悟で「殺人」に訴えたい。
最近はそう思われる方も少なくないように思います。
ですが、現実的に「殺人」を犯したなら、それは容易に償える罪ではありません。
それは殺す側の方も重々ご存知と思います。
殺す他ないくらいに追い詰めたアイツが憎くて悔しくて、自分の人生全てを引っくり返す壮大な覚悟の末、行なうわけです。
ですが、そこまでの壮大な覚悟をされているなら、「殺人」という最終手段に訴える前に、順に訴えていきたい手段があるはずです。
友人に訴える。
駄目なら家族に訴える。
駄目なら先生に訴える。…それでも駄目なら?
いいえ、まだまだ訴える手段はあるはずです。
あなたが「殺人」に訴え、人生全てを放棄する覚悟があるならば、まだまだやれる手段はある!
平成はいい世の中になりました。そういう悩みを訴えるホットラインは各自治体にいくつも設けられており、例えあなたが友人も親も持たなかったとしても、訴える先はいくらでも用意してあるのです。
ホットラインの向こうにいるのは素人ではありません。
ボランティアではありますが、保護司や青少年育成に長年関わられたベテランばかりです。
その方々は、あなたの両親よりも豊富な社会経験と熱意を持っていると断言できます。
無給でこんなことを引き受ける人に悪い人がいるはずがない!
もしあなたが、相手を「殺す」か、自分を「殺す」しかもう選択肢が残されていないと思ったなら、どうか最後にこういうところへ電話してみてください。
誰に相談しても仕方がないと思っている人ほど、誰にも打ち明けていないものです。
勇気を持って電話してみましょう。
電話の向こうには、信じられないくらいに頼もしい味方が待っていてくれるはずです。
『ひとりで悩まずに、誰かに相談しよう』
それだけのことが伝えたくて、こんなにも長い物語が描かれるなら、竜騎士07という人間にはよっぽど文才がないに違いないですね…。
そんなわけで竜騎士07も皆さんに相談を。
どうやったら、より面白いシナリオが描けますでしょうか…?(苦笑)
おまけ
スクロールの英文は実はローマ字で適当な事が書いてありますのでその抜粋
07th Expansion
雛見沢営林署人質篭城事件
hinamizawa chain murder case"When they cry..."cast list.
Act.6 Tumihorobosihen.Hinamizawa eirinsho hitojiti roujyoujiken.
Monoha tottemo inochiha toranai.Hitojichiha tottemo inochiha toranai.mousouiujidaideha nainodeshouka..
雛見沢連続殺人事件「ひぐらしのなく頃に」キャストリスト
第六弾「罪滅ぼし編」 雛見沢営林署人質篭城事件
物は取っても 命は取らない。人質は取っても 命は取らない。もうそういう時代ではないのでしょうか…
■発生
昭和58年6月25日正午頃
Korewo utteiru genzaiha koremade yori honnno sukosi yoyuuga arimasu.
demo yudann ha kinmotu desune.Hayaku master up sinaito.
これを打ってる現在は、これまでよりほんの少し余裕があります。
でも油断は禁物ですね。早くマスターアップしないと。
■場所
鹿骨市雛見沢×丁目 営林署雛見沢事務所内
Higurashi mo hayaimonode mou 6wamedesu.
rensai syuuryoumade ato 1 nenn.youyaku owariga mietekita to iukanjidesu.
koredake nagai sakuhinnwo tatta 1nende kanseisaseru kidatta toha.
touji no jibunnno amarini daitansugiru sukejuuruni bikkuri simasune.
「ひぐらし」も、早いものでもう六話目です。
連載終了まであと一年。ようやく終りが見えてきた、という感じです。
これだけ長い作品を、たった一年で完成させる気だったとは。
当時の自分の、あまりに大胆すぎるスケジュールに、ビックリしますね。
■概要
6月25日正午頃、犯人(竜宮礼奈)は、営林署雛見沢事務所に侵入。
同事務所内の雛見沢分校、教室に押し入り、生徒25名を人質に取った。
Ryuuguu toiu yomikata yori Tatsumiya toka Tatsunomiya to kanohouga yokattakanala.
naduketeoite nandesuga yominikui myouji nisitesimatta monodesu.
mosimo ryuuguusann toiu kataga jituzai sitara gomennnasai...
「リュウグウ」という読み方より、「タツミヤ」とか「タツノミヤ」とかの方が良かったかなぁ。
名付けておいてなんですが、読みにくい苗字にしてしまったものです。
もしも「リュウグウ」さんという方が実在したらゴメンナサイ…
その後、教室内に大量のガソリンを散布して7時間以上に渡り篭城した。
一時現場は膠着状態となったが、同日18時45分頃、人質数名が抵抗し逃走。
同時に大阪府警第2機動隊所属の特殊部隊が突入。人質24名を救出した。
imadekoso taitero tosakebare,keisatsuno jyuubusou nimo kannyouni narimasitaga.
shouwa no konojidaiha totemo sechigaraku keisatuga chottodemo busou suruto suguni keisatukokka toiu hihan woabitanodesita.
sonotame,konotoujinimo taiterobutaiha jituzai sitarasiidesuga kokuminnno hihann wo nogarerutame,
sono sonzaiwo hitokusareteitanoda soudesu.
今でこそ、対テロと叫ばれ、警察の重武装にも寛容になりましたが、
昭和のこの時代は、とても世知辛く、警察がちょっとでも武装すると「警察国家」という批判を浴びたのでした。
そのため、この当時にも対テロ部隊は実在したらしいですが、国民の批判を逃れる為、
その存在を秘匿されていたのだそうです。
犯人は、屋根へ逃れた人質1名を追い、一時格闘となったが、
同日 19時10分頃、武装解除に応じ最後の人質を解放。警官隊に投降した。
Yaneno uede tatakautoiu setteiha tomokaku Haikei ga junbidekirukaga huandesune.
Yatazakurasannkara igaini choutatuga muzukasii to no renrakuwo uketeimasunode.tasikani yanenoue tte amari minaidesu.
屋根の上で戦うという設定はともかく背景が準備できるかが不安です。
八咫桜さんから、意外に調達が難しいとの連絡を受けていますので。確かに屋根の上ってあまり見ないです。
Classmate 25nin no list toka areba kakkoyoka ttakana.Sasugani soredakeno namaewo youi suru kiryoku to tairyokugagaga.
So ieba jibunn,sitasii yuujinn no name haoboeteitemo.
クラスメイト二十五人のリストとかあればかっこよかったかな。流石にそれだけの名前を用意する気力と体力ががが。
そういえば自分、親しい友人の名前は覚えていても、
それ以外のクラスメイトの名前は結構覚えてないものだなぁ。
■負傷者4名(内軽症4名)
詳細は以下のとおり。
Saishoha kurasu 25nin zenninn list wo ageyoutosimasitaga.
namaewo kangaerunoga taihennnanode yamemasita.gomennnasai.
最初はクラス二十五人全員、リストをあげようとしましたが、
名前を考えるのが大変なので止めました。ゴメンナサイ。
■園崎魅音
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日18時45分頃に逃走、保護される。
犯人に暴行を受け負傷。軽症を負う。
Konkai ichiban kawaisouna hitokamodesune.Meakasi de ninkigadeta nowo renaga higandani tigainai.
Souan no dankaideha kanojoga korosaretesimau to iusetteimo kangaeteimasita.seizon saserarete yokattadesu.
Yodan desuga keishou noteigi toha zenchi 4 syuukanninai nokotodatoka.
今回一番かわいそうな人かもですね。目明しで人気が出たのを、レナが僻んだに違いない。
草案の段階では、彼女が殺されてしまうという設定も考えていました。生存させられて良かったです。
余談ですが、軽症の定義とは「全治四週間以内」の事だとか。
■古手梨花
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日18時45分頃に逃走、保護される。
犯人との格闘時に負傷。軽症を負う。
Kanojo nodeban wo sukosizutu huyasiteimasu.sukosiha sonzaikan detetadeshouka.
konkaiha iwayuru kurorikaga ippaidete kima sitane.kodomo no karadani otonano kokoro.
chinami ni otonano karadani kodomono kokoroha oozei imasune.bokumo death.
彼女の出番を少しずつ増やしています。少しは存在感出てたでしょうか。
今回は所謂「黒梨花」がいっぱい出てきましたね。子供のカラダに大人のココロ。
ちなみに、「大人のカラダに、子供のココロ」は大勢いますね。僕もdeath。
■北条沙都子
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日18時45分頃に逃走、保護される。
逃走時に転倒し負傷。軽症を負う。
Kanojyo hatokuni debann nakattadesune.nanode rasuto de sukosi debanwo moukemasita.
Satoko ha mionni nitatokoroga arimasune. hontouha yowainoni kyoseiwo hatteirutoiu tenndedesu.
satokoha nakitaitoki ooppirani nakutameka honshinwo itsuwatte inaidarou to iu arusyuno ansinkanwo kanjimasenka.
彼女は特に出番なかったですね。なので、ラストで少し出番を設けました。
沙都子は魅音に似たところがありますね。本当は弱いのに虚勢を張っているという点でです。
沙都子は泣きたい時、おおっぴらに泣くためか、「本心を偽っていないだろう」という、ある種の安心感を感じませんか。
■前原圭一
同日正午頃、犯人に身柄を拘束される。同日19時10分頃に犯人が身柄を解放。
犯人との格闘時に負傷。軽症を負う。
Tsuini seikanwo hatasita syujinkou.Kareno ranbouna kotobaga renani todoitanoha kiseki kamosiremasenn.
kihontekini paranoia nohitoniha atamagonasino hiteiha kinmotuto sareteimasu.
sarigenai gimonwo nagekake,aitega mizukara mousoudearukoto nikidukuyounisuru.korega tadasii taishoda soudesu.
ついに生還を果たした主人公。彼の乱暴な言葉がレナに届いたのは、奇蹟かもしれません。
基本的に、パラノイアの人には、頭ごなしの否定は禁物とされています。
さりげない疑問を投げかけ、相手が自ら妄想であることに気付くようにする。これが正しい対処だそうです。
Konkaino keiichikun ha ikagadattadeshouka.
sukosiha syujinkou rasiku mietanara iinodesuga.ganbare keiiti.ryuukisi mo ouenn siteiruzo.
hanasiha kawarimasuga konkaino sinariode keiichito renano hyoukga doukawarukaga kininarimasu.
shojojanaito yurusanai nihonjinno keppekishou ha karerano tumiwo yurusite kureruno deshouka?
shounenheno genbatuga sakebareru konogorodesuga,kousei mo mitomete agetaimonodesu.
今回の圭一君はいかがだったでしょうか。
少しは主人公らしく見えたならいいのですが。ガンバレ圭一。竜騎士も応援してるぞ。
話は変わりますが、今回のシナリオで圭一とレナの評価が同変わるかが気になります。
処女じゃないと許さない日本人の潔癖症は、彼らの罪を赦してくれるのでしょうか?
少年への厳罰が叫ばれるこの頃ですが、更生も認めてあげたいものです。
■逮捕者(竜宮礼奈)
同日19時10分頃、武装解除に応じ投降。同時刻、緊急逮捕。
同日、身柄を興宮署に移し事情聴取。犯行を大筋で認めた。
kihontekini shounenhou toiumonoha shounenga kousei surutoiu zentei ni motoduite imasu.
gyakuni keihouha mou hannninnha otonadakara kouseihanaidarouto iukangaekara,korasimerubatsu,tsumarichouekiga kaserareru wakedesune.
基本的に少年法というものは、少年が更生するという前提に基づいています。
逆に刑法は、もう犯人は大人だから更生は無いだろうという考えから、懲らしめる罰、つまり懲役が科せられるわけですね。
tasikani saikin shounenhouno hanninaideha toutei ryoukeiga hutekitouna kyouaku hanzaimo hueteimasu.
mohaya kousei suruka inakaha nenreide warikireru mondaideha nainokamo siremasenn.
sorekoso futeikikeitosi, kousei noyotiga arukadouka hakarubeki dato omoimasenka?
確かに最近、少年法の範囲内では到底量刑が不適当な凶悪犯罪も増えています。
最早更生するか否かは、年齢で割り切れるものではないのかもしれません。
それこそ不定期刑とし、構成の余地があるかどうかはかるべきだと思いませんか?
容疑者の責任能力を巡って激しい議論が行なわれたが、検察
は慎重に精神鑑定を行なった結果、犯行時に責任能力はあっ
たとして起訴に踏み切った。
Shounen hanzaino akkaha mukasikara mediaga karerani warui chisikiwo fukikomu karadato iwaretudukeraretemasu.
katsuteha manga,sosite game.imaya sonohokosakiha nettoni mukerareteimasu.
harukamukasi,watasitatino sosenha muchiha tsumi to osietekimasita.
sorega imaya shirukotoga tsumito narouto siteiruno desukara,rekisiha yahari tennbinn.yurimodosu youni dekiteirunokamo siremasennne.
少年犯罪の悪化は、昔から「メディアが彼らに悪い知識を吹き込むからだ」と、言われ続けられてます。
かつては漫画、そしてゲーム。今やその矛先はネットに向けられています。
はるか昔、私達の祖先は「無知は罪」と、教えてきました。
それがいまや、知る事が罪となろうとしているのですから。歴史はやはり天秤。ゆり戻すように出来ているのかもしれませんね。
demo,dakaratte kujikeruna.gendai no shounennshokunn.
imadokino wakaimonnha nante kotobaha kodai ro-manojidaikara iwareteru soujanaidesuka.
hisside ikite dondon iroiro sippaisite ironnna keikennwo tsunde kudasai.
sosite sono sippaiwo hokorukoto.taninnno sippaiwo tataerukoto.
shippaiga kakkowaruito iukangaega arayuru chousenkara shounentatiwo touzake,wakasawo rouhi saseteiru nodesukara.
でも、だからってくじけるな。現代の少年諸君。
今時の若いモンは、なんて言葉は、古代ローマの時代から言われてるそうじゃないですか。
必死で生きて、ドンドン、色々失敗して、いろんな経験を積んで下さい。
そしてその失敗を誇ること。他人の失敗を讃えること。
失敗がかっこ悪いという考えが、あらゆる挑戦から少年たちを遠ざけ、若さを浪費させているのですから。
弁護側はこれに真っ向から対立し、責任能力を否定する精神
鑑定書を提出した。
裁判所にて現在、審判中。
Erasouna naiyoude gomennnasai.fanreta-wo okuttekudasatta,wakai katagataheno ouennno kotobani nareba saiwaidesu.
imaichiban hosiimonoha jikann.mosikuha jibunn no bunshindesune.kansounadono mailwo okuttekureta,
minasannni ohenjiga kakitaidesu.ohenjiga dekinakute gomennnasai.
minasannno ouennni hagemasarete,kokomade rensaiwo tudukerukotoga dekimasita.hontou ni arigatougozaimasu.
えらそうな内容でゴメンナサイ。ファンレターを送ってくださった、若い方々への応援の言葉になれば幸いです。
今一番欲しい物は時間。もしくは、自分の分身ですね。感想などのメールを送ってくれた
皆さんにお返事が書きたいです。お返事が出来なくて御免なさい。
皆さんの応援に励まされて、ここまで連載を続けることが出来ました。本当に有難う御座います。
Hanashiha kawarimasuga,kokuminnsankano saibansystemga jojoni ugokihajimete imasune.
Kensatsu sinsakai no member suraiyagarunoni.saibankannante kareraha hikiukeru deshoukane.shokubano rikaiga erarenaitoka kityouna yasumiga
ubawarerutoka.naruhodo kimotiha wakarimasu.hutanbakaride housyuumo koutuuhi teido derukarane.
話は変わりますが、国民参加の裁判システムが徐々に動き始めていますね。
検察審査会のメンバーすら嫌がるのに。裁判官なんて、彼らは引き受けるでしょうかね。職場の理解が得られないとか、貴重な休みが
奪われるとか。成程、気持ちはわかります。負担ばっかりで報酬も交通費程度ですからね(出るからね?)。
Yodandesuga Kensatsu sinsakai de mottomo toriagerareru annkenha nanika gozonjidesuka?
"senkyo hanzai"desu.tairitu jinnei no ageasitoriga zentaino annkennno hotondowo simeteimasu.
ippoutekina higaiwo koumurinagara hoshougaukerarenai awarena giseishawo kyuusaisuruhazuno seidomo,kekkyokuha hourituwo
sirumonotachini oisiku riyousareteirundesune.
Kono tennni oite,sirumonokoso kenriwo kyoujyudekiru.sunawachi siranaihouga warui.Muchi to hatsumidearu,sou ierudeshou.
sonoippou,shttakara tsumininaruyouna yuugai jouhoumo ooidesu.
kokodeha gyakuni,sirukotoga tsumi dato iwareteimasusi.
daijinanoha sittajouhouno zennakuwo handannsuru chikara nanodeshoune.
matomarinonai metyakutya de gomennnasai...
余談ですが、検察審査会でもっともとりあげられる案件は何か、ご存知ですか?
”選挙犯罪”です。対立陣営の揚げ足取りが、全体の案件のほとんどを占めています。
一方的な被害を被りながら、補償が受けられない、哀れな犠牲者を救済するはずの制度も、結局は法律を
知るものたちに、おいしく利用されているんですね。
この点において、知るものこそ権利を享受できる。即ち、知らないほうが悪い。無知とは罪である。そう言えるでしょう。
その一方、知ったから罪になるような有害情報も多いです。
ここでは逆に、知ることが罪だといわれています。
大事なのは、知った情報の善悪を判断する力なのでしょうね。
まとまりの無い滅茶苦茶でゴメンナサイ…
『ひぐらしのなく頃に』
連続殺人ノベル第6弾 罪滅し編スタッフ
kokokaraha izennno ryuuyounanode omosiroi kotoha kaitearimasenn.
toujiha imaijouni seppatumatta joukyouka dattanode gutisika kaitenaidesuyone.
mittomonai kagiridesu.
ここからは以前の流用なので、面白い事は書いてありません。
当時は今以上に切羽詰まった状況下だったので、愚痴しか書いてないですよね。
みっともない限りです。