ひぐらしのなく頃に解 「目明し編」TIPS&おまけシナリオ
■考察メモ冒頭(1日目終了時)
昭和57年6月の某日。
綿流しの祭りの数日後に北条悟史は失踪する。
悟史くんが失踪する理由は常識的に考えて3つある。
1つは事故等によるもの。
車にはねられ、用水路等に落ちて、遺体が発見されたのが数ヵ月後なんて言う話も時にある。
だが、悟史くんの行動半径を中心に警察が十分に捜査した上で、未だ見つからないのだから、これは違うように思う。
もう1つは自発的失踪。
悟史くんの生活は、精神的に非常に追い詰められたものだった。
実際、彼は周囲に蒸発したいようなグチを漏らしたこともあるらしい。
警察は、叔母殺しは悟史くんが犯人で、逃亡したからではないかと見ていた。
それらを加味して考えると一番現実味がある。
だがその後、犯人は別にいることがわかったため、この説は否定された。
最後の1つは、雛見沢村連続怪死事件、
通称オヤシロさまの祟りの犠牲者となり、失踪したという考え方。
オヤシロさまというオカルト的な存在の立証ができない限り、この事件は間違いなく人の手で起こされている。
悟史くんは何者かの手によって、消されたと考えるのが一番妥当だ。
ならば一番の問題は、手を下したのは何者か、ということになる。
結論から言うと。
園崎本家か、その意向を汲んだ御三家筋、親戚筋の何者かが犯人であることはほぼ間違いない。
……いや、この程度までなら警察だってわかる。
本当に考えるべきはここからなのだ。
実際に、誰が、どのようにして、何のために?
なぜ悟史くんは犠牲にならなくてはならなかったのか。
動機は何なのか。
命令を下したのは誰なのか。
実行したのは誰なのか。
黒幕も、犯人も、そして真実も。
全ては私のすぐ近くにある。
ひょっとすると、それはすぐ背中辺りにあるのかもしれない。
だが、たとえ自分の背中であっても、満遍なく手が届くわけじゃない。
手が届きにくい場所、手で触れるには肩の関節を痛めて歯を食いしばって、やっと指先が触れる程度の場所もある。
私の求めるものは、そういう場所に隠されているのだ。
これより記す記録は。
私の考察を整理するためのメモであると同時に、私の悔悟を書き記したものでもある。
このメモが私以外の目に触れることはないだろうとは思う。
もしも私以外がこのメモを読むようなことがあるとすれば。
…私は真相を解き明かしこのメモが不要となったので廃棄したか、私が志半ばで「オヤシロさまの祟り」に遭い失踪してこのメモだけが残ったかのどちらかだ。
前者ならいい。
……だがもしも後者だったのなら。
どうかあなた。
私の力になって欲しい。
無力で、ただの小娘に過ぎない私のために。
■にじんだ日記(2日目終了時)
沙都子は、僕の背中に隠れて泣いていた。
しがみ付いて泣いていたので、涙と鼻水で僕の背中はすっかり濡れてしまっていた。
ヒステリックに叫び続ける叔母も、さすがにもう体力が続かないようだった。
……やがて、時計が深夜の午前1時を指していることに気付き、それでもなお、暴言にも等しい捨て台詞を吐き続け、…ようやく矛を収めてくれた。
沙都子はずいぶん前から泣き疲れ、朦朧とした表情で俯いていた。
叔母がいなくなっても、まだ自分が解放されたことに気がつけていないようだった。
だから僕は、そっと沙都子の頭を撫でながら、言ってやった。
「………終わったよ。…沙都子。」
ぴくんと、…沙都子のうなじが震える。
沙都子の瞳に、生気と涙が蘇る。
……そして、僕の顔を見上げた。
「……………………。」
何が終わったのか、わかっている。…でも、それをはっきりと僕の口から聞きたいと、沙都子の目が訴えていた。
……本音を言えば、…僕も精根尽き果てていた。
その程度のことを、わざわざ口に出させようとする妹に、ほんのわずかな煩わしさを感じた。
でも、僕は涙ぐむ妹を少しでも労ってやりたくて…。やさしく、沙都子の期待している言葉を口にしてやった。
「……もう、叔母さんの小言は終わったよ?……だから、ね。…寝よう?」
沙都子は…瞳からまた涙をぽろぽろと零しながら、僕にしがみ付く。
そして声を殺しながら、再び泣いた……。
かすかに震えるその背中が痛ましい。
……そんな背中を見る度に、…沙都子は僕が守らなければならない、僕以外に誰も守ってくれないということを思い出す…。
「さぁ。…歯を磨いて、それから布団を敷こ。…そしてぐっすり休も…。」
沙都子は弱々しいながらも、笑顔を見せて頷き返してくれた。
頭がくらくらする。
…全身の緊張が解けるに従い、深夜の1時に相応しい暴力的な睡魔が襲い掛かる。
沙都子が洗面台を使っている間、僕は用を足すために便所にいた。
じょぼじょぼじょぼ…と、…自分の小便が便器に注ぎ込まれるのを見て、…僕は放心していた。
気を許すと、小便が便器から外れそうになる。
…いや、自分自身が便器に吸い込まれるような錯覚さえ感じた。
……もう思いだすこともできない。
今日の叔母は、何がきっかけで怒鳴り出したんだっけ……?
■くしゃくしゃの日記(3日目終了時)
ようやく叔母のヒステリックな小言が終わった。
今日のそれもいつもと同じ。
きっかけがなんだったかは思い出せないし、どんなきっかけだったにせよ、内容は途中で二転三転する。どうだっていい。
またしても、24時を過ぎていた。
後頭部を殴りつけるような睡魔が襲い掛かる。
沙都子は緊張の糸が途切れると、……ストンと崩れ落ち、僕の裾をつかんだまま、眠りに落ちてしまったようだった。
僕は沙都子を背負って寝室に行き、…布団を敷く。
「ほら、沙都子。…布団が敷けたよ? 布団に入りな。」
沙都子はもごもごと、芋虫みたいに這って布団に潜り込むと、そのまま動かなくなった。
それを見て、僕も同じように布団に潜り込みたい欲求に駆られる。
でも、…まだ寝るわけには行かない。
叔母さんにさっき頼まれた買い物。
歯磨き粉のチューブを、明日の帰りに忘れないように買って来ないと。多分、メモして置いておかないと忘れてしまう…。
それから、電気釜に明日のお弁当用のお米をセットする。…タイマーも忘れずに。
そうだ、あと小言のきっかけになった洗濯場のタオルの山をちゃんと積み直しておかないと…。
叔母は指摘事項がすぐに直っていないととても怒る。
あぁ、あと何だっけ。
…そうだ、明日は八百屋さんの手伝いのバイトを入れてもらったんだっけ。
そうだ、エプロン持参って言われてる。
……うちにエプロンなんて…あったっけ……。見たことないや…。
叔母さんは登校の時間には寝ているから、もう聞く間がない。
どうしようどうしよう、せっかく魅音に紹介してもらったバイトなんだから先方を怒らせちゃいけないや。
エプロンはそうだ、明日登校したら魅音辺りに相談してみよう。きっと貸してくれる。
まだ他にもあったっけ…? んんんんんん…………。
寝床の沙都子が、…羨ましい。
そう思う自分が、悲しい。
■ノート21ページ(4日目終了)
ここで、あの奇怪な少女との雨の中の会話を考察してみよう。
竜宮レナ。
本名は竜宮礼奈(れいな)
この不思議な子の正体はよくわからない。
ひとつ確かなのは、園崎本家とは何のつながりもない人間、ということだ。
もちろん御三家の何れとも縁を持たない。
竜宮家は確かに昔、雛見沢に住んでいた。
その後、茨城へ引越したことについては、本人が言った通りだ。
小学校に上がる前に茨城へ引越し、……その後、雛見沢に戻ってきた。
竜宮レナ本人は、オヤシロさまの警告(祟り?)を受けて雛見沢へ帰ってきたと言っている。
これが何を指すかは不明。
本人は「オヤシロさまの祟り」を受けたことがあると自称している。
オヤシロさまが、常に自分を見張り、ヒタヒタと後をつけてくる、というのだ。
私は被害妄想か何かではないかと思っているのだが、…奇しくもその体験は、悟史くんの興味を大きく引くことになる。
彼女が言うには、悟史くんもこの時点で、オヤシロさまの祟りを受けつつある、というのだ。
悟史くんはこの子に、自分もまた得体の知れない存在に後を付けられていると告白したらしい。
そして、この子の「経験談」が自分と一致することに大いに驚いたらしい。
オヤシロさまの祟りとは…?
なぜレナと悟史くんは共通の体験を?
これは多分、村の何者かによる監視のことではないかと見ている。
その年の祟りの犠牲者の動向を監視しているに違いないのだ。
……オヤシロさまの祟りを妄信してしまった悟史くんたちには、それがオヤシロさまの気配に感じられるに違いない。
あとは被害妄想が重なれば、異常な体験をしているように感じてしまうのも無理ないはずだ。
つまりレナがもたらしてくれた情報から、悟史くんは綿流しのずっと前から監視下に置かれていたらしいことが窺えるのだ。
だとすると。ここでひとつの疑問が浮かぶ。
それはレナが受けた「監視」の意味だ。
私はこの監視は、その年の犠牲者に対して行なわれると仮定した。
だが、だとするならレナに対する監視の意味がわからない。
雛見沢と違い、遠い異郷の地に住まう彼女を、どういう意味があって監視したのか。
故郷を捨てた村人、という位置付けでなら、なるほど、彼女が祟りに遭うのもわからなくない。
だが、…彼女は結局、犠牲にならずに済んだ。
雛見沢へ引越しが決まったから免罪になったのかもしれない。
…彼女は、私の知らないことを、まだ何か知っているような気がする…。
■ノート24ページ(4日目終了)
この時点での悟史くんの様子は本当に気の毒なものだった。
家に帰れば叔母と沙都子の喧嘩・苛めに割って入って精神をすり切らせ。
にも関わらず、毎日バイトに出掛け、肉体までもすり切らせ…。
仲間との接触はほとんどなくなり、学校でも休み時間には、机の上に突っ伏して寝ているか、どこかに姿をくらましているかのどっちかだったらしい。
おっとりとしていた、在りし日の悟史くんを思うと、あまりに痛々しい。
そこにさらに「オヤシロさまの祟り」が降りかかってきたのだから、その心労は並大抵ではなかったろう。
オヤシロさまの祟りとは、つまり、悟史くんを今年の犠牲者にしようという連中の「監視」のことに他ならない。
ならば。この年の犠牲者となるもうひとり。
つまり北条の叔母についても監視があったということになる。
叔母もまた、監視の気配を感じていたのだろうか?
いや、叔母に限らない。
過去の犠牲者たちは皆、そういう監視の目があったのだろうか?
悟史くんの「祟り」が「監視」であったことを立証するためにも、調べた方がいい。
「監視」か、「被害妄想」か、……本当に「祟り」なのか。
■粉々の日記(5日目終了時)
僕は、背中の人に囁かれる。
僕が今年の祟りの犠牲になること。
だからもうすぐ、ここからいなくなってしまうこと。
そしたら、沙都子を誰も守ってくれなくなることに。
僕は、背中の人に囁かれる。
もうすぐ時間がなくなること。
僕が僕でいられなくなること。
だから、残された時間を大切にしなくてはならないことに。
沙都子のために僕が残せるもの。
欲しがってた、あの大きなぬいぐるみ。
誰にも虐められない平穏な生活。
僕は、背中の人に囁きかける。
あなたの乱暴さと、恐ろしさ、そして強靭さをどうか僕に。
あなたの、憎しみ以外考えなくていい、心の平穏を、僕に。
■ノート29ページ(6日目終了時)
悟史くんがよほど狡猾だったか、幸運に恵まれたか、…それとも本当に悟史くんではないのか、犯行現場には悟史くんが犯人であることを示す痕跡は残されていなかった。
それでも、この時点では、悟史くんが犯人ということでほぼ確定だった。
悟史くんの家庭の状況を見れば殺意は充分。
アリバイもない。
物証以外の外堀は全て埋まっていた。
大石があそこで勝負に出てきたのは至極当然だ。
私と言うジョーカーの登場までは予想できなかったろうが、それでも悟史くんの圧倒的に不利な状況を覆すほどではない。
大石は動物的嗅覚で、悟史くんに違いないともう当たりをつけている。
あとは悟史くんが揺れて、勝手に折れてくれるのを待つだけ……。
そう思っていた。私も。大石も。
後日、そのちゃぶ台がひっくり返されることになる。
それについてはここでは割愛するが、とにかく、大石の目論見は完全に崩れ、警察はノックアウトされることになるのだ。
そうすると、私が抱く疑問はひとつしかない。
誰が悟史くんを救ってくれたの? ということ。
この時点での私は、園崎本家が暗躍して犯人をでっちあげてくれた他に、何も思いつくことはできなかった。
■ノートの34ページ(6日目夜終了時)
悟史くんが東京へ行った、という怪情報の裏付けは全く取れない。
そもそも情報の発端はこうだ。
名古屋駅の遺失物窓口に若者が訪れて、自分の財布が届けられてないかと騒いだのだ。
それで駅の職員が、届け出がないか調べてきますからその間にこちらにお名前を書いてください、と用紙を渡した。
そうしたらその若者は、北条と書きかけてからその用紙をくしゃくしゃにして捨て、もう1枚の用紙に全然違う名前を書いた、というのだ。
別の職員は、その遺失物窓口を訪れた若者と、服装が酷似した若者が東京行きの新幹線に駆け込むのを見ていた。
更衣室で遺失物窓口にいた職員が、不審な人物が来たと特徴を話したら、ホームにいた職員が、あぁ見た見た、東京行きの新幹線に飛び乗ったぜ、と。そう言い合ったらしい。
……それだけのこと。
その北条を名乗った男の申告する特徴の財布は、遺失物窓口には届いていなかった。
■ノートの42ページ(6日目夜終了時)
大石の言う、沙都子の面倒を見るからと園崎家が言い含め、悟史くんを雛見沢から放逐した……というのは、最初、こじつけた話だなと思って聞いていた。
だが、後になって考え直して見ると、それは私が馬鹿にするほどズレた話でもない。
だって、北条沙都子は、ひとりになったあと、古手梨花と生活を共にしているのだ。
古手梨花はただの小娘じゃない。
御三家の一角、古手家の頭首でもあるのだ。
その古手梨花は、公由家頭首が保護者になっている。
さすがに北条家と対立してきた園崎家は表に出ることはできなかったんだろうが、事実上、北条沙都子は御三家の保護下に入っていた。
ダム戦争中、鬼ヶ淵死守同盟からあれほどまでに攻撃をされた北条家の生き残りが、御三家に保護されているなんて。
それはまるで北条家の罪から、沙都子だけが許されたような、そんな感じ。
どうして悟史くんは許してもらえなかったのに、沙都子だけ?
■ノートの50ページ(数週間後…終了時)
鷹野三四とは、その後しばらく交流があった。
彼女の本質は、猟奇趣味と、それに負けないくらいの偏執的な好奇心だった。
だから彼女の話は、常に話半分くらいに聞くよう心掛けなければならない。
……でないと、…悟史くんが本当に、祟りで消えてしまったと信じてしまいそうになるから。
彼女の話す雛見沢村の暗部の話は、興味深い話ばかりだった。
彼女にとっては推測や憶測でしかないはずの中には、園崎家に籍を置く自分だからこそ真実だと分かるものも時に含まれ、その考察の鋭さには舌を巻いた。
彼女はオヤシロさまの祟りを、古代の宗教的な儀式の延長と捉えていた。
つまり、オヤシロさま崇拝の狂信者による犯行だ。
彼女の独自の説によるならば、雛見沢村には信仰を中心とした一派があり、それを中心に御三家が組み上げられているという。
そして、明治以降に失われたという、鬼ヶ淵村の仙人たちの誇りを取り戻すために暗躍をしている、というのだ。
三四さんの話はスケールが大きく、全体で見ると、なるほどなと思う面もある。
だけど、悟史くんの失踪した理由に局所的にスポットを当てると、何の説明にもならない。
目の粗い説でしかなかった。
■ノートの64ページ(数週間後…終了時)
大石との情報交換は、たまに思い出した頃に行なわれた。
私も大石も、互いの新情報に期待したが、どちらにも新情報はなく、いつも茶飲み話に終わった。
もはや、新幹線で東京へなどという話は心の拠り所にさえならない。
デマであることは明白だった。
大石は心を許せないやつではあったけど、…公平な取引という意味での誠意はある男で。単身、根気強く調べてくれたと思う。
私も大石なら真偽を確かめてくれるに違いない怪情報やデマを仕入れてきては伝えた。
いつしか、そんな会合もだんだん、大石の新しい仕事に圧迫されるようになって。
……何かあったらいつでもお電話ください、と言う風になって、潰えた。
大石が調べなくなり、私の調べに限界が来し。
……悟史くんの失踪は『鬼隠し』という超常現象によるもの…という、とんでもない意見がまかり通るようになってくる。
雛見沢では、悟史くんの失踪は「転校」と称され、口にすることがはばかられるようになっていた。
…「転校」なんて言う言葉で、…悟史くんを消してしまうな…。
■ノートの85ページ(数週間後…終了時)
昭和57年のオヤシロさまの祟りの渦中にある時は、私は新しい情報に一喜一憂し、その度に自分の頭の中の仮説をひっくり返した。
でもそれはものすごく自分に負担になることで。……それだけのことでも私を十分に疲弊させていった。
疲労というのは残酷だけど、とてもやさしい包容力があって。
怒りや悲しみ、疑いなどの、抱くだけでも私を衰えさせていく感情を、少しずつ少しずつ、眠らせていく。
悟史くんのことを絶対に忘れない。
忘れて生きていこうなんて思わない。
そう常に心の中で念じ続けている。
念じ続けることで、…悟史くんの思い出を眠らせないように、ずっと、ずっと。
悟史くんとの楽しい思い出と一緒に、……恐ろしい感情も、悲しい感情も、ずっと、ずっと。
■ノートの172ページ(昭和58年終了時)
私が地下拷問室と呼んでいたあの場所は、正しくは地下祭具殿と呼ばれているらしい。
ということは、拷問室と祭具殿は同義語だということなのか。
鷹野さんの説では、明治以降も綿流しを始めとする血生臭い風習は、御三家に密かに引き継がれているという。
そして、許されるならばいつでもその儀式を執り行える準備があるのだとか。
祭具、つまり祭る(祀る)という言葉の対に拷問がある以上、雛見沢の源流に、人間を虐め殺す文化があることは否定できない。
鷹野さんの説は正しい。
そして象徴的な祭具殿と違い、園崎本家の地下祭具殿は確かに常時使用可能な状態で維持されていた。
ここにおいても鷹野さんの説は正しい。
公由家の倉は知らないが、園崎家、古手家がこうして「祭具」を祀るのだから、近い規模の物を秘蔵しているに違いない。
そう、現代の御三家にも脈々と、残酷な風習が受け継がれているのだ。
この呪われた村で、村ぐるみで今も奇怪な何かが行なわれている事実に備えろ…。
■ノートの173ページ(昭和58年終了時)
祭具殿の不可侵性は、オヤシロさま崇拝の中でも群を抜く。
もちろんそれは私も、雛見沢に縁のある人間として知ってはいた。
だが、実際は私が知る以上に、もっともっと偏執的なくらいの不可侵性があったのだ。
鷹野さんの研究によるなら、祭具殿の不可侵性の歴史は相当古いという。
それだけ祭具を使った奇祭「綿流し」が神聖視されていたことの証だろう。
だが、鷹野さんの研究では綿流しは純粋な宗教儀式でなく、御三家の支配体制をより磐石にするための、公開処刑的な意味があったという。
だとするなら、そもそも神聖視という呼び方が間違っている。
そんな状況下でなら、憎悪と恐怖の対象として疎まれた存在のはず。
恐怖は露見し過ぎればただの恐怖支配に過ぎない。だが、極力隠せば神聖さが宿る。
俗人が触れると穢れがつくとよく言う。
それは衆人環視に晒されたら威厳がなくなるので、もったいぶって隠した方が、箔がつく…という意味でしかないのだ。
つまり、祭具殿の不可侵性の正体は、…恐怖。この村を支配する真の感情の正体なのだ……。
■ノートの179ページ(昭和58年終了時)
この時の祭具殿侵入が、結局、鷹野さんたちの祟られる理由となった。
祭具殿侵入がどういう形で発覚したのかは分からない。
最初に思いつくのは、何者かに目撃されていたこと。
次に思いつくのは、侵入警報のようなものがあったこと。
何れにせよ、この祭具殿侵入はおそらくリアルタイムで祟りのシステムの上位者に通報されていた。
なぜなら、もっとも遠い地で遺体が見つかることになる鷹野さんの殺された時間などを考えると、祭具殿を出て私たちが分かれてすぐくらいに殺されてなければならないからだ。
この手際の良さは特筆に値する。
相当高度な暗殺部隊が組織されているのか、さもなければ「5年目の祟りの準備」がすでにされていたからなのか。
園崎家の暗部を担当する秘密の集団の存在も否定できないが、後者の説の方が信憑性がある。
しかし、だとすると、5年目の祟りは、祭具殿侵入がなかったら「本来」誰に下されていたのか、という疑問にぶつかる。
■ノートの183ページ(綿流し当日、深夜終了時)
鬼婆が即死していたのは、本当に計算外だった。
この時点での私は、いつか殺す相手だった問題ないと負け惜しみを言っているが、明らかに痛手だった。
園崎天皇とも呼ばれる園崎本家の命令中枢は、一般にはピラミッド型だと思われているが、実際はそうではない。
厳密には、省庁のような縦割り型で、それぞれの部門が小ピラミッドを形成してる。
縦割りゆえに横の連絡がない。
いや、それどころか自分のピラミッド以外がわからない秘密主義だと言えるだろう。
もちろん園崎家の重鎮たちは、いくつもあるピラミッドの頂点に位置する。
自分の下位のピラミッドについては精通している。
他の親類たちが管理しているピラミッドについても、多少の情報交換は出来ている。
だが、それでも全部のピラミッドについてはわかっていない。
陽のピラミッド、陰のピラミッド。その他にお魎直轄の秘密の小ピラミッドがいくつか。
そのほとんどを頭首代行である魅音は知っているようだが、だからと言って、全部知っているとは限らない。
現に、最高機密である「オヤシロさまの祟り」については知らなかった。
それを思うと、鬼婆が死して永遠に口を閉ざしたのは、暗部を暴く上で致命的な痛手と言えた……。
■ノートの185ページ(綿流し当日、深夜終了時)
5年目の祟り以降、もっとも電話が多かったのは、やはり側近の公由家頭首だった。
次いで多かったのがうちの父親だった。
うちの両親の序列は高いには高いが、うちの母親の昔の勘当騒ぎが尾を引いていて、表舞台にそうそう顔を出せない、やや日陰者っぽい扱いなのだと言う。
その父親からの電話が多いのは、対外的には距離を置いていても、実際には重用していた鬼婆の陽と陰の二面性の証拠でもある。
父親は、どうも情報面での操作が主な役割のようだった。
警察情報や裏情報、噂、そういったアンダーグランドな情報を収集しては的確に報告していた。
そして鬼婆の要請があれば、それらを黙らせたり、煽り立てたり、捻じ曲げたりできるようだった。
ちなみに私の忠臣、葛西は父親と旧知の間柄。
……なるほど、色々と情報に精通しているのも頷けた。
だが「情報」までのようだ。「執行」にまで至っていたかは掴みきれない。
父親は、今回の事件に対する、警察の捜査状況やその他の情報を貪欲に集め報告するばかりで、少なくとも今年の祟りについては、自身が関与したわけではなさそうだった。
…一般的には、父親と鬼婆がこんなにも密接なホットラインを持っていることは知られていない。
そのネットワークを利用はするが、やはり外様ということでそれほど近しくしていない…と思われているのが一般的だ。
ならこの例のように、一般に知られていない、鬼婆直轄の何か。
…祟りのシステムを管轄する暗黒部門の存在は、充分に疑える……。
■ノートの188ページ(綿流し2日目終了時)
その後、私は公由村長の行方を捜す青年団に合流した。
町会の連絡網にそって、訪ねていないか電話し、回覧板区分ごとに手分けして捜した。
誰もが、いくら捜しても見つからないだろうと、薄々気付いているようだった。
だが、薄々どころか、絶対見つからないと知っている私にはとにかく辛いものだった。
午前0時を回っても、まだあそこは見てない、一応あそこも行ってみようと皆、精力的だ。
私は大あくびをしながら耐えるしかなかった。
その内、誰かが噂した。
去年、……北条悟史くんがいなくなった時も、こんな風に青年団で捜したな、と。
…青年団での捜索なんて、今年が茶番であるように、…去年だって茶番。
私が、絶対に見つかることのない公由を知っていて、こうして欠伸交じりにせせら笑っているように。
去年の何者かも、絶対に見つかることのない悟史くんを知っていて、私のように欠伸交じりにせせら笑っていたのだ。
「……去年の捜索って、何時に終わりにしましたっけ?」
「ん? 北条んとこの悟史ん時かい? ありゃあ何時だったっけ?」
「午前の0時過ぎくらいには解散したような気がするなぁ。」
時計は、もう午前の2時を回ろうとしていた。
公由を捜すためにはこれだけの時間を割くのに、…悟史くんにはまったく割かない。
そう、絶対見つからないと知っているやつらが、居たからだ。
そいつらはきっと眠かった。
だからもう諦めて警察に任せよう、なんて言い出したに違いないのだ。
くそ…くそ…、その言ったやつを殺してやりたい……。
■ノートの195ページ(綿流し3日目終了時)
古手梨花。
古手家頭首だが、重要な会合に席を持ちながらも、多くの場合、出席していない。
出席しても、とくに発言が問われるわけでもないので、事実上、空席扱いを受けているポストだ。
古手家には、八代続けて第一子が女児ならば、その子はオヤシロさまの生まれ変わりであるとする言い伝えがあるらしく、鷹野さんの研究では、彼女がそれに当たる可能性が極めて高いという。
確かに宗教的なシンボルとしての彼女の求心力は異常なほど高く、オヤシロさま崇拝の妄信者であるほど彼女を神聖視している。
そんな宗教的象徴で、アイドル的な古手梨花が刺客だった事実は、あまりに衝撃的だ。
ありえない。
不自然すぎる。
刺客なんて真似事は下っ端がやることで、古手梨花のようなVIPがやることじゃない。
一番自然な想像は、…あれは古手梨花でなく、瓜二つな別の存在だったというもの。
あの刺客である彼女の動きは、相当の喧嘩慣れを感じた。
ずっと年上で体躯も全然違う私に、何の怯みもなく立ち向かうなんてこと自体、普通じゃ考えられない。
私がスタンガンを携帯していたから返り討ちにしただけであって。
もしスタンガンがなかったら、あの台所の立ち回りはどうなっていたかわからない。
そう。刺客は、見掛けよりずっと優秀だった。
古手梨花は、刺客としての訓練を受けていた??
それとも古手梨花の影武者がいて、それが刺客としてやってきた??
あの奇怪な注射器も含めて、謎だらけの存在。正体不明。理解不能。
存在自体が説明できない。…まるで、妖怪か何かのよう。
園崎お魎はこいつの「存在」を把握していたのか…?
この雛見沢という村には何が潜んでいるんだ。
私が底だと信じる雛見沢の暗部は、……私の想像を超えて深すぎる。
■ノートの196ページ(綿流し3日目終了時)
私の復讐劇は、この時点では、祟りシステムの破壊で成立すると考えられていた。
すなわち、システムの最上位者である御三家頭首3人と、頭首代行の詩音、この4人と、圭一に食いついてくる「執行者」の抹殺。
圭一はあれだけ無防備な生活を続けているにも関わらず、今日まで何の攻撃も受けていない。
私があれほど祭具殿侵入者の1人と喧伝したにも関わらずだ。
むしろ、古手梨花の襲撃を受けた私の方が攻撃を受けているくらい。
私が暴いたとおりなら、圭一という名の祭具殿侵犯者は非常に魅力的なエサのはず。
だがそのエサに誰も食いつかず、古手梨花とトラブルを起こした私の方が攻撃されている以上、“祭具殿を侵すことよりも、古手家と対立する方がタブー”という式が書けてしまう。
古手梨花は、祭具殿侵犯を大した罪だと思っていなかった。
圭一を見逃すつもりのようだった。
それを私が咎めたら、その日の夕方には「古手梨花」という刺客が襲ってきた。
勢力は、別系統で2派あるということ?
鷹野さんたち、祭具殿侵犯者を祟る「祟りシステム」と、古手家の教義による別系統での「祟りシステム」があるということ?
矛盾がある。
富竹さんの死に方は間違いなく古手家のあの注射によるもの。
梨花が自らその効能を示して見せた、「自ら首を掻き破る」注射によるもの。
でも古手家のシステムでは富竹さんは祟りの対象にはなっていない。
圭一がどうして襲われないのかもわからない。
鷹野さんと違って免罪される要因があるのか?
例えば北条沙都子だけが北条家の祟りから免罪されていたように?
確かに圭一も古手梨花の友人だ。
ということはつまり、…古手梨花の親しい人間は祟りの対象にならない?
古手梨花は「祟りシステム」より遥かに優先する上位者ということ??
そんなはずはない。
最上位者は鬼婆だ。その上に梨花がいたわけがない。
ぐしゃぐしゃぐしゃ
祟りの対象の定義が複数あるのか。
定義の数だけ祟りの執行機構があって、それぞれ独自に祟りを下しているのか。
ああもうめちゃくちゃだ。私の推理が噛み合わない。
私の推理がめちゃめちゃなら、私の復讐劇のターゲットにズレが生じる。
もはや、誰が仇なのか、どういう経緯で悟史くんが消されたのか、理解できない。
鬼婆は雛見沢の闇をどこまで知っていたのか。
初手のミスが痛すぎる。
あいつに今聞きたいことが山ほどある。
…それをショック死させてしまうとは…。痛恨の痛手だ。
私はどこかですでに、復讐劇に失敗している。
………雛見沢の闇は、深過ぎる。
ぐしゃぐしゃぐしゃ
(このページ全体がぐしゃぐしゃの斜線で消されている)
■ノートの199ページ(綿流し3日目〜4日目)
園崎詩音の、死の間際の告白の信憑性は不明。
園崎本家は何もやっていないと、鬼婆があっさり詩音を騙したのか。
本当に園崎本家は何もやっていないのか。
私自身が今日までの調査で、園崎本家の存在だけで祟りを説明できないことを証明してしまっている。
そう、だからこの私のノートは、1ページ目の冒頭から全部でたらめ。
私が200ページ近くも書き溜めてきたこのノートは、ただの狂人の世迷言。
ノートを破り捨てて焚き火に放り込もうかとも思った。
でもやめた。
このノートは私の罪の証。
私は罪を誤魔化さない。
だから灰にして消してしまったりなどしない。
私の人生は結局、ノート1冊で表せる程度だった。
このノートを誰かが読むことがあるだろうか。
読むことがあったならどうか、私の愚かしさから何かの教訓を。
雛見沢村連続怪死事件。
通称、オヤシロさまの祟り。
これを読んでいる私以外のあなた。
どうか真相を。
それだけが、私の望みです。
昭和58年6月※※日
園崎魅音
■ノート5ページ
満足に日の下を歩くこともかなわない自分が、
束の間の日向で出会ったひとりの男の子。
私のような斜な人間が、彼の純粋さに惹かれるなんて
どうして予想できたでしょうか。
■ノート19ページ
もちろん彼とは、笑い合う日もあればすれ違う日もありました。
曇らない晴天はないし、晴れない雨天もない。
私は悟史くんの欠席をそのくらいのものだと思っていました。
でも、この時にはもう、彼は完膚なきまでに追い詰められていたのです。
■ノート26ページ
自分の行為のあまりの幼稚さに慄きました。
私は自分の寂しさを埋めたいだけ。彼の気持ちなどお構いなし。
それを思えば、悟史くんは本当に紳士的に対処してくれていたと思います。
でも、…沙都子が許せるかどうかは別。
■ノート27ページ
自分が詩音であると名乗れば悟史くんを救える。
もちろん、詩音であることを名乗るリスクも気付いていました。
ここで名乗れば、自分は百%鬼婆に囚われる。
でも、その後どういう目に遭うかまでは至りませんでした。
■ノート43ページ
悟史くんは、消えた。
でも、消えたのは彼だけじゃない。彼が消される理由さえも、消えた。
ここは人間の世なのだ。人間が消したに、決まっている。
『鬼隠し』で消えてしまったなんて、認めない。
■ノート150ページ
このノートを、本当に久しぶりに開いた。
約150ページに渡り、ぎっしりと綴られている、想い。
このノートこそは、胸の奥の封印を開く鍵。
胸の奥に眠っていた去年の私が、ゆっくりと目を覚ます…。
■ノート159ページ
彼と一緒の日々に私が飽きることはありません。
だって彼はとてもおちゃめなんですよ?
いつもは私と足音を合わせて歩くのに、
私が急に立ち止まると、焦って一歩余計に歩いちゃうんです。
それがとにかく可愛くて可愛くて。きゅんきゅん☆
■ノート165ページ
私の内なるもう一人が教えてくれたのです。
自分が今、魔物の腹中にいることを。
その声がなければ、きっと起きられませんでした。
いや、二度と目を覚まさなかったかもしれません。
■ノート186ページ
誰も姉妹の入れ替わりを見抜けません。
それくらいに、私たちは魅音で詩音なのです。
■今回は珍しい。クリアの後に増えるTIPSがあるのです。
■幸せのノート(目明し編クリア)
「えぇ、葛西氏が踏み込んだ時には室内は無人でベランダへの窓が開きっぱなし。その時が飛び降り時刻です。それでその真下の5階エレベーターフロアの屋根に一度落ちて脳震盪。そのしばらく後に横に転がって再落下、死亡。
葛西氏が飛び降りを疑って、地上を調べたときに遺体が見つからなかったのは、この時点ではエレベーターフロアの屋根の上で昏倒中だったからです。」
「前原圭一が刺されたのは、ほぼ同じ頃。その頃には園崎詩音はすでに飛び降りていて、屋根の上で脳震盪中…? …違いますねぇ。ベランダから抜け出して圭一を刺して。ベランダへまた戻る時に誤って落下…、じゃないかなぁ? 悪いけど、周辺の部屋のベランダとかも調べ直してください。」
「大石さーーん、3番にお電話です。」
「ハイハイ、どちら様から?」
「佐藤と伝えれば分かるとか。合言葉はロンと言えと。」
「なっはっは! もしもし! あーサトさんですか。こっちへ電話ということは、いい知らせでしょうね?」
『もしもし…。例の件は旦那の読み通り。』
「ありがとうございます! 今度フラワーロードで一杯おごりますよ。」
「何です、今の電話。麻雀の誘いですか?」
「ビンゴ。園崎姉妹は逆なんです。魅音が詩音で、詩音が魅音。刺青入れる時に間違って逆にやっちゃって、取り返しがつかなくなったらしい。だからこのノートの魅音と詩音は逆に読むんです。それでなら、悟史くんと詩音さん、…いや魅音さん? ややこしいなぁ! …の関係が理解できる。」
「ノートって、先日のあの、大石さん宛てと書かれて郵便ポストに投函されてたって言う怪ノートのことですか? 中身はめちゃくちゃで捜査撹乱の恐れありって言いませんでしたっけ?」
「もちろん、名前の入れ替えがわかったところで、撹乱の域を出ませんがねぇ。……このノート、どこまで信じていいのやら。…もし本当なら、古手梨花の死の辺りが怪し過ぎるからなぁ…。」
「…狂人の日記ですよ。読んでるとこっちまで狂いそうになります。最後のページの、生まれてきてごめんなさいなんて、…読んでるとこっちまで飛び降りたくなりますよ…。」
「…………でも。幸せな日記じゃあないですか。」
「しあわせ、……ですか?」
「この日記だけで、悟史くんって名前、何回くらい出てくると思います? ………詩音さんは本当に悟史くんのことが好きだったんだなぁって。その好きというのがね、若さゆえの勘違いで、ずれちゃって。」
■大空でしばらくのんびりフェードアウトで余韻〜☆
■チャンバラで勘当(目明し編クリア)
「ねぇ、教えてよ母さん。鬼婆とどういう喧嘩をしたわけ? 勘当されるなんてよっぽどだったわけでしょ?」
「お前も下らないことに興味が尽きないね。……ま、そろそろ話してもわからない歳じゃないか。実はね、父さんと結婚したいって言ったらね、駄目だって言われちゃったのよ。」
「へ? 何それぇ?!」
「私も当時はだいぶ斜な生き方してて呆れられててね。その挙句、連れて来た男が任侠者だったわけでしょ。そりゃ大喧嘩よ。許婚は頭首が決める、なんて言われて、そんなの知ったこっかいこんの糞婆ァ! この場で斬り伏せたらあッて大立ち回りよ。互いに板の間の日本刀抜いて、チャンチャンバラバラ。あっはっはっは。」
「ひぇー…! 鬼婆と殺陣を演じたわけ?! 母さんやるねぇ…。」
「まぁねー。母さん、こう見えても若い頃は武闘派だしー。互いに剣道有段だからそりゃードハデだったわよ。周りはオロオロ、あー面白かった。」
「なるほどねぇ……。その騒ぎのせいで勘当されたわけ?」
「そうよ、勘当上等! 遠慮なく勘当もらって父さんと籍を入れたわよ。まぁけじめってことで爪を剥がされたけどねー。ほら、左手の爪だけ歪でしょ。」
「うわぁ……。それで鬼婆と母さんはずーっと仲が悪いわけだね…。」
「あははは、詩音、本当はね? そんなことないの。私と鬼婆さまはちゃんと仲がいいんだよ?」
「…えーーー!? うっそだぁ!」
「鬼婆さまには面倒な世間体があるからね。一度でも勘当した以上、甘くすると示しがつかないし。だから私も親類会議とかでは大人しく引っ込んでるけど。たまーに遊びに行ってのんびりお茶とか飲んでるよ。」
「うそだーーーー、信じらんないねぇ…!」
「実はね、内緒よ? 鬼婆さまもね、その昔、けじめで爪を剥いだことあるんだってよー? 今度、会ったら左手の爪をよく見てごらん。」
「ひぇー……! 鬼婆は何をやったわけ?」
「さーーーーねーーーーー! 母さんは知ぃらない☆」
「わ、その顔は知ってるなぁ?! 教えてよー!」
■スタッフルーム
皆さんは人殺しが、動機によっては許されるなんて、思いますか?
こんにちは、竜騎士07です。
この度は『ひぐらしのなく頃に解』目明し編をお楽しみいただき、誠にありがとうございます。
人の死を多く描く『ひぐらし』ですが、描きながら自問することがあります。
それは、許される殺人はありえるのか、ということです。
私たちの世の中では、殺人は裁かれ、その動機や事情によって罪の軽重が変わります。
命の対価が罪の重さなら、それは私たちが命の価値に個人差を認めていることになります。
『ひぐらし』の世界には、殺人を肯定するシーンが描かれる時があります。
そこでは、殺される人間の命の価値が薄められることにより、プレイヤーの皆さんの「同意」を得やすくされています。
同意は人によって異なります。
同意した方は一体感とカタルシスを感じ、同意できなかった方は狂気と不快感を感じたと思います。
「祟殺し編」における圭一の評価の二極化が、これを如実に物語るかと思います。
今回の「目明し編」でも、多くの殺人が描かれています。
今回の主人公、詩音は個々の殺人に、自分の同意を得ようとしていました。
皆さんはどうでしたか?
どこまで同意が出来ましたか?
ひとつも同意できなかった方は、どうか詩音を殺人鬼と罵ってください。
いくつか同意できた方は、どうか詩音を哀れんでください。
ほとんど同意できた方も、どうか詩音を哀れんでください。
全部、同意できた方は、詩音と一緒に殺人鬼と罵られてください(笑)
竜騎士07はですか?
………さて、それは内緒。
ところで質問の仕方を逆にしますが、…あなたは殺されるならどんな犯人になら納得できますか?
人の命など何とも思わない快楽犯?
これは悔しいですよね。
自分の価値を否定されて殺されるのはとても悲しい。
泣きながら許しを乞う悲劇の犯人?
これも悔しいですよね。
許しを乞うくらいなら殺したりするな(笑)
じゃあ、どんな犯人になら、殺されても納得できますか…?
結局、「同意」なんて、その殺人劇を、楽しめるか否かでしかないのかも。
同意できれば、楽しい。
同意できなければ、狂ってる。
命に元々重さなんてないんです。
それを測ろうとするのがヒトの罪。
殺人は殺人。
それ以上でも以下でもない。
だから、みんなで仲良く暮らしていけたらいいな、と。
いかがですか?
あなたはこの話に、同意できますか?
できなかったなら、………くすくすくすくす。
この度は『ひぐらしのなく頃に』、「目明し編」をお楽しみくださり、誠にありがとうございました。
皆さんの応援のお陰で、無事に第5話をお届けすることができました。
物語はいよいよ結末に向け加速して参ります。
どうか今後ともお付き合いいただければこれほど嬉しいことはありません。
次回シナリオは「罪滅し編」と題しまして、平成17年夏のコミックマーケット発表を目指しています。
どうか、ちょっぴりでも楽しみにしていただけたら幸いです。
この度は遊んでくださり、本当にありがとうございました。
退屈な時間の、ささやかな彩りになりましたら幸いです。
07th Expansion
竜騎士07
<おまけシナリオ「Kの素敵な毎日」>
「ところで前原さん。…あなたは通われてる学校の制服をどう思いますか?」
どうって、…別にどうとも思わないが。
「制服ってのは本来、所属する組織全員が着用することによって意味を成すものなんだ。……だが君の学校にはこれがない!」
うちの学校は特に制服とか決まってないからな。
…まぁいいんじゃないの?
生徒それぞれの個性があって。みんな同じだったらつまんないだろ?
「駄目です駄目です!! 集団教育は協調性を養う教育なんです! そのための第一歩が制服なんですよ? それを蔑ろにしてどうして教育機関が語れましょう…!」
…別に何だっていいだろ? 機能的で動きやすけりゃ何だって。
「む? 圭一くん、君は今とてもいい事を言ったね! そう! 機能的で動きやすければ素晴らしく理想的だ!!!」
「私とトミーからの贈り物。…それは人界の常識を歪める究極の秘法なんです! その力を使い、今こそその理想をかなえましょう!」
※グルグル、ガジャーーーーン!!!!
「全世界の学校よッ!!! 学校制服を機能的で動きやすい“あの衣装”に統一したまえッッ!!!!!!!」
※眩いド派手なエフェクトで全世界が包まれていく…!!!!
※そして本編スタート。…このノリの直後にあのオープニングってのはスゴイね(爆笑)
<おまけコーナー>
■おつかれさま会
■オマケイベント「Kの素敵な毎日」
「そういうわけで!!
本日のビリは前原圭一に決定〜〜!!!」
<魅音
「うおおおぉおぉおー!! まっまっ、また!!
また負けたああぁあぁあ!!」
<圭一
こうして、前原圭一の恥ずかしい罰ゲームが、今日も決定したのだった。
どんな恥ずかしい罰ゲームだったかは、取り合えず彼の名誉のために、内緒としよう…。
「のわああぁあぁああぁぁ!!
やめッ、許して!!
ひぃいいいぃい!
お婿に行けなくなるーー!!」
<圭一
「何でだ、何で俺は勝てないんだ…! 最近、明らかに勝ってない。というか罰ゲーム常連だよな。…お、俺はこのままみんなの着せ替え人形になってしまうのかあぁあぁッ!!」
<圭一
枕を涙で濡らすという言葉があることを、圭一は身をもって体験している最中だった……。
「あぁぁ…神さま仏さま、いらっしゃるならどうかお聞き届け下さい。部活に負けないようになりたい! どうか俺に不敗の力をーー!」
<圭一
その時!!
バァンと天井の板が跳ね飛び、そこから3人の人影が舞い降りてきたのである!!
「水臭いよKぇええぇええぇぇい!!
神さま仏さま聖母さま!! 祈る対象数あれど、その前に頼るべき頼もしい味方がいるじゃあないか!!」
<富竹
「トミーッ!!」
「クラウド!!」
「そしてイリーッ!!」
<それぞれ3人
「「「見参ッ!!!」」」
<3人
「おわぁッ!! み、みんな、こんな時間に何の用だよ?! 取り合えずどうして天井裏から現われたかは不問とするけどさぁ…。」
<圭一
「決まってるじゃないか。僕たちはソウルブラザー、
魂の兄弟だよ!!」
<富竹
「そうですよK! あなたの悩みは私たちの悩みです!! あなたはさっき泣いていましたね?! 最近部活に勝てない、と!!」
<入江
「んっふっふっふ! あなたの願い、私たちが見事聞き届けてあげますよぅ!! 勝たせてあげます!! 勝てる力をあなたにあたえてあげます!!」
<大石
「ぅ、うわあぁん、みんなぁ〜!! ありがとう〜〜!!!!」
<圭一
ひし! 堅く抱き合う男4人。
熱い友情にぐっと来る光景だった…。
「勝ちたいのにどうしても勝てないんだ。どうしてだろう…。」
<圭一
「K。あなたはどうして勝ちたいんですか?
負けたくないから勝ちたいんですか?」
<大石
「そりゃそうだよ…。最近、罰ゲームがどんどん恥ずかしいのにエスカレートするんだ。…だからビリだけは何とか回避したいし…。」
<圭一
「その消極的な姿勢に問題があるのです!
ビリを回避すれば罰ゲームにはならない。
そんな後ろ向きな闘志だから勝てないのですよ!!」
<入江
「う、……う、……た、確かに! 今の俺は、優勝狙いじゃない。罰ゲームさえ回避できればそれでいいっと考えている…。」
<圭一
「気付いたようだね。罰ゲームを恐れるがゆえに、君はいつの頃から優勝を目指す貪欲な牙を失ってしまったんだ。」
<富竹
「その牙を取り戻した時、Kは本当の力を開花させるのです!!!」
<入江
「さすが人生の先輩たちだぜ…。言われるとおりだ……。でも、どうやったら俺はその牙を取り戻せるんだろう…。」
<圭一
「あなたは罰ゲームが恐ろしくて、牙を失いました。
ですが、罰ゲームを思う時、再び牙を取り戻すこともできるのです!!」
<大石
「?! クラウド、そりゃ一体、どういう意味だい…?!」
<圭一
「だ、
か、
ら!!
罰ゲームですよおおおぉおぉ!!!」
<大石
「例えば、
魅音ちゃんだ。いつも君に恥ずかしい衣装を着せる張本人だね?! その魅音ちゃんに逆に恥ずかしい衣装を着せてやるのはどうだろう?!」
<富竹
「魅音に着せられて恥ずかしかったというと……あれだ!
スクール水着を着せられた時!! あの時の屈辱は一生忘れんんんん!!」
<圭一
「そう! その屈辱を復讐してやるのです!!
つまり魅音さんにスク水を!!」
<大石
「おおっと、ただ着せるだけじゃつまりませんからね。
そのまま一日授業を受けてもらうのはいかがでしょう〜!!」
<入江
「「「ななな、なんだってーーー?!?!」」」
<入江以外3人
「ば、罰ゲームってのは一瞬耐えればいいものだと思ってた。…そ、それを一日に引き伸ばすことで…何と苛烈な罰ゲームに!!!」
<圭一
イリーの妄想の中で魅音はスクール水着を着せられたまま、一日を過すことを強制されていた。
「このスク水に靴下、靴というあり得ない着合わせが素晴らしいじゃないですか〜!!」
<入江
「しかもそんな格好で、……顔を真っ赤にしながら授業を受けてる…?
ふぉおおおぉ!! それいい!! それはいい!!!」
<圭一
顔から火が吹きそうなくらい恥ずかしいのに、自らの部のルールなだけに部長自ら破ることもできず、辱めに耐えて授業を受ける魅音。
普段、自信満々の魅音のそんな表情からは、何にも勝る勝利の愉悦を感じられることができた。
「どうですK?! こんな罰ゲームなら勝ちに行きたくなるでしょう?!」
<入江
「行きたくなる!!
なる!! イリー、すげえよッ!!!」
<圭一
「さあさあ、まだまだ序の口だよK! 魅音ちゃんに勝つ意義を確認できたところで、この調子で他の部活メンバーにも勝つ意義を確認してくのだーー!!!」
<富竹
「「「おおぅ!!!!」」」
<富竹以外3人
「魅音の次となれば、やっぱりレナだなぁ。」
<圭一
「皆さん、スク水もいいですが、やはりメイド服は絶対に抑えておきたいですね〜!」
<入江
「うーーん、いいねぇいいねぇ、レナちゃんに似合いそうだなぁ!!」
<富竹
「んっふっふっふ!
皆さん、着せるだけじゃあ罰ゲームとしては成立しませんねぇ!」
<大石
「何だよクラウド。じゃあメイドレナにも授業を受けてもらうのか?」
<圭一
クラウドがチッチッチと言いながら指を振り、にやあっと笑う。
「ここはですねぇ、
ひとつ爽やかにヨーグルトを食べる手伝いでもしてもらうんです!」
<大石
「……はい? クラウド、そりゃあどういう罰ゲームなんだい?」
<富竹
クラウドの妄想の中で、メイドレナは短いスプーンを逆向きに咥えさせられていた。
そして、その咥えたスプーンでたどたどしくヨーグルトを掬うと、勝者であるKの口へふるふると運んでいく…。
手を使うわけじゃないから、ヨーグルトがぼたぼたとレナの胸元や口の周りを汚して、それはそれで何だかスゴイ光景だ。
それに、口で咥えたスプーンが顔の近くまで近付いてきて……レナの吐息すら感じるくらいの間近に…。
ヨーグルトを口に入れるとき、スプーン越しに二人の唇が触れ合っているわけで……わおおお!
「むっふっふ、女の子のいるお店なんかにあったりするお遊びなんですがね?
未成年の前原さんにはちょいと刺激的過ぎましたかねぇ〜〜!!」
<大石
「ク、クラウド〜!!!
そんなお遊びが出来る店なんて初めて知りましたよ〜〜!!!」
<入江
「むっふっふー!!
悪いお店のことならこのクラウドにお任せをーー!!!」
<大石
「「「イェアーーーーッ!!
クラウド最高ぉおおぉお!!!」」」
<大石以外3人
「よっしゃ、沙都子に梨花ちゃんはどうしてやろうかなぁ!! あのペアにも散々やられてきたからなぁ!!」
<圭一
「今度はエンジェルモートの衣装も使いたいですねぇ。Kも着せられてばかりで、たまには着せ返してやりたいでしょう!」
<入江
「はっはっはっは! もちろん着せるだけでは面白くないよねぇ!
そこで! 僕に名案があるんだ! それはねズバリ!!
掃除当番を代わってもらうんだ!!
例えばガラス拭きとかね。」
<富竹
「トミー、思いつきは面白いですが、今ひとつ萌えるものがありません。しかしなぜにガラス拭きなんです?」
<大石
トミーの瞳の中で、沙都子と梨花の二人はSサイズのエンジェルモート制服に着替えさせられていた。
こんなものを着るはめになるとは思わず、沙都子は真っ赤で照れ隠しに睨むような目つきをしている。
そして二人は机を窓際に運んで、その机の上によじ登る。
「そしてね、ここからが核心なんだ。
二人に窓を拭いてもらうんだよ、
お尻でねぇ!!!」
<富竹
ぶはッ!!
Kとクラウド、そしてイリーの鼻から赤い飛沫が飛び散る。
妄想の中の二人は、まさかこんな格好でこんなことをさせられるとは思わず、さすがの梨花ちゃんでさえ恥ずかしそうに俯いている。
…そして二人で揃って、お尻でのの字を描くように、きゅっ
きゅっ
きゅ。
トミーに言わせると、ガラスであることがポイントらしい。
つまり、ガラスの内外、
どちらからでも見ることができるということだ!!
さすがは野鳥専門カメラマン!! こだわりが違う!
「どうだい!!
これが僕の考えた罰ゲームだよ!!!」
<富竹
「「「トミー!!
トミー!!!
トミー!!!
最高だぜ、
ウヲヲオオオオオ!!!」」」
<富竹以外3人
「そうだそう言えば俺、詩音のヤツにも散々借りがあるんだよなぁ!!!」
<圭一
「よしよし! Kの恨みが癒えるような罰ゲームの復讐を考えようじゃないか!!」
<富竹
「むっふっふ〜!! 園崎姉妹はナイスバディですからねぇ! 力が入りますよぅ!」
<大石
「この辺で脱衣系を抑えておきたいですねぇ〜!! 前に竜宮さんにやってもらった、上下一枚ずつ脱衣の路線でひとつ!」
<入江
「……む! 閃いたぜみんな!! 今度はこのKのアイデアを聞いてくれッ!!! まずだな、詩音にはスクール水着を着てもらう。」
<圭一
「魅音ちゃんにも着せたね。そのままじゃ捻りがないよ?」
<富竹
「ちっちっち! トミー、答えを焦っちゃいけないぜぇ?! でだな、さらにその上に
体操服とブルマも履いてもらうわけだ。この状態で脱いでもらう!!
ブルマだけを半脱ぎで脱いでもらうわけだ!!!」
<圭一
「「「そそ、そのコラボレーションは一体ぃいぃいッ?!?!」」」
<圭一以外3人
Kの妄想の世界の中で、体操服姿の詩音は真っ赤になりながら膝立ちになっていた。
そして……勝者であるKの命令に逆らえず、ふるふるとブルマを半脱ぎする…。
脱げかけのブルマとそこからのぞくスクール水着の下腹部!!!
本来は露出していてもちっとも恥ずかしくないスク水が、体操服の内側から、脱げてのぞくことによって、スク水単品ではあり得ない萌えを生み出すッ!!
「これは何と言う組み合わせでしょうK!!! あり得ない、絶対にあり得なかった2つの衣装が互いの長所を活かし合いながら最高の魅力を引き出している!!」
<入江
「「み、見事だよKえええぇえい!!
わおおおおぉおおぉッ!!」」
<富竹、大石
「あーーオホン、皆さん。部活メンバーではないのですが、せっかくなのでうちの鷹野さんにも罰ゲームを考えてみませんか〜〜!!」
<入江
「むぅ〜〜ん!!
確かにあの悩ましいボディは罰ゲームものですなぁ!!」
<大石
「しかし…鷹野さんって、余裕ありそうっていうか、…並大抵の罰ゲームじゃ堪えそうにないよなぁ。」
<圭一
「ということはだよK!
これまで以上のスゴイ罰ゲームを考えないとダメってことさあ!!」
<富竹
「くぅおおおおぉぉ!! 何だか燃えて来るぜッ!! あぁくそう、鷹野さんにどんな罰ゲームをお見舞いしてやろうかなぁ!!」
<圭一
「ひとつ閃きました。
あの豊満なボディには何といってもバニースーツが似合うと思うのです。」
<入江
「ん〜〜〜、バニーさんのいるお店だと、
そうだあれだ、
胸の谷間にライター挟んでくれるヤツ! あれを抜きには語れませんねぇえぇぇ!!」
<大石
「でもクラウド、部活は学校でやるんだから、煙草の道具はちょっとまずいんじゃないかな。」
<富竹
「ん!!
トミー、それだよ!!! 学校にあるものを挟んでもらえばいいだッ!!
ほら、リコーダー笛ってあるだろ?!」
<圭一
「あーーー!! 縦笛のことですかぁあ!! あ、あれを、鷹野さんの反則級の胸で、
胸で、
挟んで!!!」
<入江
「縦笛は長いですからね、さすがに長さが余っちゃいます。
ですからね、胸で挟みながら、
こう、舌を絡めてですねぇえぇ〜〜!!」
<大石
「うっわ、それを鷹野さんにやらせようっていうのかいッ?!!?
………じ、実は僕、
縦笛を持っていてね。
今度、こっそり試してもらうよ…。」
<富竹
「ぬぬ、抜け駆けはいけませんよトミー!!
私たちはソウルブラザーじゃありませんかああ!! そう言えば、うちの婆さんも尺八持ってたなぁ、今度持ってきます!!」
<大石
「うーーーん! 私は横笛なら昔やってたんですが、OKでしょうか…。」
<入江
「「「OKぇえぇええいい!!!!」」」
<全員
「そうだ忘れちゃいけない。知恵先生がいました。規律を教える教育者として、やはり罰ゲームのルールには逆らってはいけないでしょうね!!」
<入江
「ち、知恵先生?! ……先生に罰ゲームかぁ…。全然考えたことなかったなぁ…。」
<圭一
「んっふっふ! Kは知恵先生が担任ということもあって、女性というフィルターが外れていたようですねぇ〜。知恵先生は素晴らしいですよ!!
均整の取れたボディは隙がなくッ!!
鷹野さんが悪魔的魅力だとしたら、その魅力は清楚で天使に通じます!!
サマードレスに隠されたボディを想像するのは、私たち中年に許された最後の知的想像パラダイスなんですよぅッ!!」
<大石
「…う、…そう言う風に吹き込まれると…なんか明日から恥ずかしくて、知恵先生の顔がまともに見られなくなりそうだな…。」
<圭一
「どうしたよK! さっき詩音ちゃんに恥辱の罰ゲームを与えた君が情けない! 担任だから女として見れないなんて、
君は少し勉強が足りなさ過ぎるぞ!!!」
<富竹
「知恵先生って、……お尻が魅力的ですよね。」
<入江
「む、…ごくり。確かに、こう、きゅっとした感じが、…いいですなぁ!!
イリーの観察眼も大したものです!! さぁすが校医〜〜!!」
<大石
「教師と言う聖域をまず崩すことが大事みたいだね!!
ならこういうのはどうだろう!! 全校生徒の前で、教壇の知恵先生にだね、
お尻を強要するというのはーーーッ!!!」
<富竹
「「「うっぎゃーーーー!!!!!
なんすかトミー、そのフラ○ス書院文庫の女教師シリーズみたいなシチュエーションはあああぁああああああぁ!!!」」」
<富竹以外3人
「あ、ごご、ごめん、お尻を強要じゃなくて、お尻で芸を強要だった。
……ほら、子供の頃やらなかった? 罰ゲームで、お尻でのの字を書くってやつ。」
<富竹
「なるほど! それを教師の身でありながら、全校生徒の前でやらせるわけですね!!
羞恥プレイ系とは〜〜!!! トミー、私はあなたとは趣味がますますに合いそうです!!」
<入江
「……くっくっくっく! トミーもイリーもそれで終わりってのはちょいと能がないんじゃないのかい?」
<圭一
「むむ、ではK。あなたはまだこれに何かオプションを追加しようと言うのですか?」
<大石
「くっくっく!! 知恵先生にはその恥ずかしいポーズのまま30分は居てもらって、
全校大写生大会のモデルになってもらうのだああぁああ!!!」
<圭一
「「「だだだだ、大!!
写生!?!
大会ぃいいぃい!!」」」
<圭一以外3人
「そそ、それはすごいよK!!! カメラは駄目だよね? 写生じゃないと駄目なんだよね?!」
<富竹
「うーーーん、無性に芸術の秋がしてみたくなりましたよぉおおおぉお!!!」
<大石
「やっぱり知恵先生はお尻ですよねぇえぇぇえぇぇ…。」
<入江
「見たか諸君、
これが罰ゲームだ!!
ここまでやってこそ罰なのだあああ!!!」
<圭一
「「「Kぇえい!
Kええぇい!
Kぇえぇえい!!!
わおおおお!!!」」」
<圭一以外3人
・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・−・
「ありがとうみんな!!! 俺、ようやく勝ちたくなったよ。勝つってことがどれだけ甘美なことか思い出したよッ!!」
<圭一
「私たちに協力できるのはここまでです!!
K、あとはあなたが勝利を掴み取るのです!!」
<大石
「そうさ、だが俺ひとりが掴むわけじゃない。俺たちでだ!!!!
俺たちのこの妄想パゥワァでなあぁああッツ!!!!」
<圭一
今や圭一は天に届くほどにパワーが高まるのを感じていた。
雨の中を歩けば雨粒が避け、海を歩こうとすれば海が割れて道を譲るくらいに圧倒的に!
かくしてその翌日。
Kは漆黒の魔王の呼び名に相応しい力を振るい、次々と妄想の罰ゲームを実現していった。
その圧倒的な力に、部活メンバーはかなうわけもない。
魅音のあらゆる策は打ち砕かれ、
レナのかぁいいモードさえも及ばない。
沙都子のトラップなど、すずめの罠を象に仕掛けるが如し。
梨花もただただ負けた仲間たちの頭を撫でることしかできなかった。
もうこの局面は部活メンバーでは打開できない!!
そう思った魅音は知恵先生に助けを求めたが、知恵先生相手にも充分に妄想パワーを充電していたKには、知恵先生すらも赤子の手を捻るようなものだったのであるッ!
「そ、そんな……! こんな罰ゲームってあんまりです! 前原くん、もう少し他の罰ゲームにはならないんですか!」
<知恵
「んんんん〜〜〜〜知恵先生ぃいぃ?
規律を教える立場であるあなたがルールを曲げるんですかぁ? んん〜〜〜?? ただね、ちょっとお尻を向けてもらって、のの字を書いてもらうだけでいいんです。
明日の図工の時間にねえぇえ〜!!
ちょっと写生のモデルになってもらうだけでいいです。」
<圭一
「で、でも…こんな…は、恥ずかしいこと…! ひ、ひどすぎます前原くん…!」
<知恵
罰ゲームに対して多少の覚悟がある部活メンバーに比べると、知恵先生は罰ゲームにかなりの抵抗があるようだった。
…だが、頑強に抗いながらも、この部活という世界の究極法則である勝者の絶対命令に逆らえず…その心は次第に屈しかけていた。
ガラリ!!
その時、教室の扉を開けて現れたのは校長だった。
誰もが、校内最強のジョーカーが助けにきてくれたと信じていた。
だが、校長の口からは思いもかけぬ厳しい言葉が零れるのだった…!
「ふむ。
両者合意の上でなら仕方あるまいのぅ。
知恵先生もここはひとつ教育者としてルールを守って罰ゲームをするしかありませんぞ。うむうむ。」
<校長
「くっくっくっく…、校長〜〜!!! あんたはやっぱり分かってくれると思ったぜええぇ!!」
<圭一
※部活メンバーはみんな罰ゲーム的な衣装でお願いします
「……そ、そんな〜。…校長先生なら、この状況を豪拳いっぱつで吹っ飛ばしてうやむやにしてくれると思ったのに…!」
<魅音
校長先生は、部活メンバー一同が壮絶な罰ゲーム衣装に身を包んでいる、この凄まじいな光景を見ても平常心を崩さなかった。…さすが校長だ。
「ふむ、それで竜宮くん。これはどんな罰ゲームになるのかね?」
<校長
「……えっと、…何だっけ?」
<レナ
レナは沙都子と梨花に振り返り、互いに首を傾げながら言った。
「え、…えっと! 確かその、お尻を向けて………何だっけ?」
<レナ
「違いますわよレナさん。確かシャセイがどうとかと言ってましたですわ。」
<沙都子
「……つまりは圭一が知恵のお尻を強要しているのです。」
<梨花
圭一は最後に聞いた音は、校長が3ゲージ技を使用した効果音だけであった………。
「教訓! 妄想はひとりで楽しみましょう! 人に押し付けたらダメです!」
<知恵
「……ううぅ、すみませんでした先生…。今後気をつけます…。」
<圭一
※後日の授業風景
で、その後の圭一はその言いつけを守り、妄想は1人で楽しむようになったという。
「…うぇへへへへへへへへ〜〜〜〜☆」
<圭一
「前原くん!! 授業中に変な笑いをしないようにー!! お願いだから先生をそーゆう目で見ないでー!」
<知恵
今日もKは、最高に幸せな一日でした☆
■アイキャッチ
「そんなわけで、オマケシナリオをお楽しみいただけましたでしょうか。
何だか、Hなシナリオでしたね…。こんなのでもよかったのかな…。」
<レナ
「それにしても今回のシナリオは、何だか圭ちゃんばっかりおいしい目を見てたような!」
<魅音
「なっはっはっは! オチはいつものように酷い目にあったけどさ、俺的には悪くなかったぜー! 罰ゲームも最高〜〜!」
<圭一
「お、男の方の不健全な願望に振り回されるこっちの身にもなってほしいものですわー!」
<沙都子
「こ、…今回は想像の中ということにはなってても……、ちょ、ちょっとHな罰ゲームが多過ぎだったかな、かな…。」
<レナ
「多いも何も、全部Hかったような気がしますけど。
スク水の上に体操着で半脱ぎなんて、露骨過ぎです。」
<詩音
「……ボクと沙都子は、2人まとめて慰みものだったのです。」
<梨花
「お尻で窓拭きなんて、みっともないったらありませんわーー!!」
<沙都子
「私、……口で…スプーン、…ヨーグルト…。どきどき、…はぅ〜…。」
<レナ
「ちぇー! みんなの罰ゲームは割りと短めでよかったじゃんよ! 私なんかスクール水着で丸一日だよ?! 明らかに私だけ不当だよー!」
<魅音
「な、何だよみんな。俺に当たるなよ…! 俺だって台本に従っただけだぜ!
いやしかし、本編でもぜひもう一回やりたいシチュエーションだったぜー!! わはははははは!」
<圭一
「本編では圭一くんがひどい目に遭うことが多いからね…。妄想イベントの中でくらい、たまにはいい思いをしてもいいのかな、かな…。」
<レナ
「……妄想の中でしかいい思いができないのです。かわいそかわいそです。」
<梨花
「妄想の中でも充分に迷惑でございましたわー!! 何か腹が立ちますわね!」
<沙都子
「ふむ。
じゃあこれは、妄想の中の恨みは妄想で晴らすしかないってことですね。」
<詩音
「わっはっはっは! そりゃ道理だなぁ! 妄想の中なら一向に構わないぞ。妄想の中の俺になら、好きな罰ゲームを与えるがいい! 俺には痛くも痒くもないからな〜!」
<圭一
「詩音さん、…妄想の中だけで仕返ししても、何だか面白くありませんわよ。」
<沙都子
「沙都子〜、違う違う、これはね。
今度圭ちゃんがボロ負けした時、何をさせてやろうかという作戦会議なんだからさぁ!」
<魅音
「あはははは、なるほどね。今回のシナリオの中で圭一くんたちがやっていたことを私たちもやってみようということだね!」
<レナ
「そういうことなら、何となく面白そうでございますわねぇ!
素敵な罰ゲームが思いつきましたら、より圭一さんを叩きのめす楽しみが増えますものねぇ。」
<沙都子
「そういうことです。妄想こそ我らの明日の糧。ではとりあえず、ちょっとトライしてみましょうか。」
<詩音
「……ふぁいと、おーです。」
<梨花
「私がやらされたのは
スクール水着で丸一日過せ!ってやつだったけど。これに見合うのは何がいいかなぁ!」
<魅音
「目には目を、歯に歯を、ってよく言うしね。
…じゃあ圭一くんにも
スクール水着を着せて一日過してもらうのかな…? かな……?」
<レナ
「ほっほっほっほ!! 圭一さんの惨めな様子が目に浮かぶようですわねー!!」
<沙都子
「真っ赤になりながら、中腰の俯き加減になって必死に下腹部の起立をぐっと隠して過す一日…。
くっくっく、まずまずの線です。」
<詩音
「……圭一くんが真っ赤でふらふら…。スクール水着でずーっと一緒…。
…おいなりさんかぁいい……はぅ〜〜!!! お持ち帰り〜〜ッ!!」
<レナ
「……ボクならやっぱり、メイド服を着せる方がいいと思いますです。」
<梨花
「いやいや梨花ちゃん、身体のラインが隠せないスク水の方が残酷だって!
男の子のやんごとなき事情も外部に丸分かりだからね〜〜!!」
<魅音
「やんごとなき事情がふるふるゆらゆら…、ぷわわ〜〜…。はぅ〜〜〜☆」
<レナ
「私も魅音さんに同じ意見ですわね。メイド服ではちょっと在り来たりでしてよ?」
<沙都子
「……メイド服を着て、監督の試合に出てもらうのですよ。」
<梨花
「雛見沢ファイターズの試合にですか?!
……これはまた、……さっすが梨花ちゃま。エグイというか残酷というか。」
<詩音
「か、監督の試合にメイド姿で参加させるなんて、サメの生け簀に足を縛った羊を投げ込むようなものですわよ…!!」
<沙都子
「監督がどういう反応を示すか、ちょっと興味はあるねぇ!
よぅし、シミュレートしてみようかね!! 妄想モード、スイッチオン!!」
<魅音
『ま、…前原さん…!!!! そそ、その格好は一体…ッ?!!?』
『『『ざわざわざわざわざわッ!!!』』』
『いやそのあの!! ここ、これはですね、…その、部活の罰ゲームでして…。すす、すみません、決して野球の試合を馬鹿にして着てきたわけじゃないんです!』
<圭一
『『『ざわざわざわ。あんな格好で、不真面目な。野球を馬鹿にしてる!』』』
『いや…その、決してそんなつもりは……。』
<圭一
『今日は不愉快ですよ雛見沢ファイターズさん! 今日の試合はお流れにしてもらいましょう!』
<相手チーム監督
『…………あ、…その、……。』
<圭一
畏縮する圭一の前に、毅然とした表情の監督が庇うように割り込んだ。
『……皆さん、お静かに!
野球のスポーツマン精神の中にはユニホームを着なければ野球をする資格はないとは一言も書かれていません。かつて日本野球が戦乱を潜り抜けた時、ユニホームが揃えられず軍服のまま参加した選手もいたと伝え聞きます。大切なのは精神です! それに野球の源流は18世紀の英国に遡ると言われています。英国と言えばもちろん、
メイド。メイドです。メイド文化は、
ナイル
・インダス
・ユーフラテス
に連なる四大文明であることは
今や小学生でも知っている常識です。
まさに野球文化の発祥国で生まれたこのメイド文化のメイド服は、ある意味、私たちが着ているこのユニホームよりもずっとずっと古式に則った、
野球の正装と言えるのです!!!』
<監督
『『『うおおおぉおぉおぉぉぉぉ!!! 監督! 監督!! 監督!!!』』』
『『『服装なんてどうでもいいじゃねぇかー!! 試合を開始しろー!!』』』
カキーーン、ワーワー。
ズシャー、ワーワーワー!
『この鉄火場で、前原さんの出番ですね。ご存知の通り、我が雛見沢ファイターズと興宮タイタンズの因縁は並々ならぬものがあります。
この打席をしくじるようなことがあれば、ただでは済まされませんよ。』
<監督
『……ぅ、…、せいぜい頑張りますけど…絶対打てる約束はできないですよ…。』
<圭一
『嘆かわしいですね。主人の命令には絶対服従のメイドが絶対に口にしてはならない言葉ですよ。もしこの打席を凡退するようなことがあれば。』
<監督
『…あ、…あれば……?』
<圭一
『あなたに罰を与えなければなりません。
……正装のメイド姿で臨み敗れることは即ち、野球とメイドの両文化に対し侮辱したも同然です。
その場合はもちろん、英国式であなたを罰することになります。』
<監督
「…英国式の罰って何ですか?!
びくびくしながら尋ねる圭ちゃんに、監督は冷えた爬虫類のような目でニヤリと笑うと、圭ちゃんの腰を撫でながら耳元で囁きかけます。」
<詩音
「なな、何だろ、英国式の罰って何だろ、何だろ……。はぅうぅ〜〜…。」
<レナ
「バッターボックスに立った圭ちゃんはバットを握ってハッとします。
しまった、このバットには細工がされている、打てるわけがない!
そう、監督にはめられたのです。このままでは圭ちゃんの純潔は監督に散らされてしまうことに…!!」
<詩音
「おいおいちょっと待てや詩音んんん!!!
黙って聞いてりゃとんでもない話ばかりしやがって!」
<圭一
「あーほらほら圭ちゃん、邪魔をしないー! これは妄想の中の話だからね? 現実の圭ちゃんには何の関係もないんだからさ!」
<魅音
「そうですわー!! 女性同士が集まって妄想話をしてるだけですのよ? 圭一さんたち男性が集まってしてたのとまったく同じではありませんですの〜。」
<沙都子
「そ、…そりゃあそうだけど、…例え妄想話でもやっぱり聞き捨てならんぞ。」
<圭一
「……圭一も聞きたいのなら、お椅子に座ってじっくり聞くといいですよ。…にぱ〜☆」
<梨花
「他の罰ゲームの話もしたいですわねぇ!
そうそう、圭一さんたらバニーガールさんの制服がいいなんて話もしてましたっけ?」
<沙都子
「あとお尻で窓拭きなんて話もしてたっけぇ…? 圭ちゃんもなかなかスゴイこと考えるじゃ〜ん?」
<魅音
「俺じゃない!!
しかも微妙に罰ゲームが混じってるよそれ! しかもそれ、富竹さんとか大石さんのアイデアだよ!!
まぁその、悪ノリしたのは認めるが…。」
<圭一
「はぅ〜!! 考えたのなんか別に誰でもいいよぅ! 圭一くんのバニーさん姿も、かぁいいねぇ…☆」
<レナ
「ではではこっちも行って見ましょう。妄想モード、スイッチオン!!」
<詩音
『……くそ…! ただでさえ恥ずかしい格好だってのによぅ! しかも…尻で窓拭きかよ!! くそ…、胸を押さえてないと、ペロンとめくれて恥ずかしいったりゃないぜ…。くそ、情けなくて涙が出るぜ。……よいしょよいしょ、……キュッキュ。』
<圭一
パシャパシャパシャ!!!
パシャパシャパシャパシャパシャパシャ!!!
『おわああぁあ!! こ、このフラッシュは?! 秒間数百枚の超連射撮影!!
と、富竹さん?! ぎゃーー、やめてください、こんな姿撮るのー!!!
大体あんた、野鳥専門のカメラマンじゃなかったんですかーーー!!
いつからバニー撮影家にー!!!』
<圭一
『け、圭一くん、誤解してもらっちゃ困るなぁ。
僕は野鳥専門のつもりだよ? もちろん、今この瞬間もね!
パシャパシャパシャ!!!』
<富竹
『一体、何の鳥を撮影してるか説明してくださいー!! その望遠レンズは一体、何を拡大して撮影してるんすかーー!!!』
<圭一
『圭一くんは山鯨というのを知っているかい? もちろん、山に鯨などいるわけがない。でも江戸時代の人たちはね、山に泳ぐ鯨がいると言って、その魚肉を珍重したんだ。
はっはっは、これは実はね、イノシシの肉のことだと言われてる。当時は、宗教的な理由により獣肉を食べることが禁じられていたからね。鯨だから魚肉、すなわち食べても問題はないっていう屁理屈だったわけさ。
パシャパシャパシャ!! ほら、手で隠さないで! お尻で窓を拭く拭く!』
<富竹
『な、何だかオチが読めて来ましたけど、とりあえずそのパシャパシャをやめてくれませんかー!!!』
<圭一
『そうさ、バニーは兎。
兎もまた江戸時代には鳥の仲間だと言われていたんだ。これも山鯨と同じ。兎肉を食べるために、これを鳥肉だと屁理屈を言ったわけだね!
そう、つまりバニーさんは鳥の仲間なわけなんだ!
だから僕が君をファインダー越しに捕らえたとしても、それはまったくの無問題というわけさ!! ほら、まだ拭き残しがあるよ!
パシャパシャ!!!』
<富竹
『兎鍋は江戸庶民の間で大流行したってのは俺だって知ってますけど…、でもそんな文化と俺の恥ずかしい姿の撮影には何の関係もないーーーー!!! それに兎鍋は料理人の領分じゃないんすか?! 富竹さんはカメラマンでしょ、詭弁ですよー!!』
<圭一
『わかってないな圭一くん!!
僕はカメラマンだが、同時にファインダー越しの料理人だと思うこともある! 熟れた兎たちの魅惑的な肉を前に、腕をまくらずしては料理人の名折れ!!
僕は今、君と言う最高の食材を得て最高の料理に腕を振るっているんだよ!!!』
<富竹
『ぎゃーーーー、
変態カメラマンやめてーー!!!
盗撮カッコワルイ!!
ローアングル撮影絶対反対!!』
<圭一
「どわあああぁーー!!
お前らいくらなんでも酷すぎるー!! こりゃもう罰ゲームの領域を超えてるぞー!!!」
<圭一
「をっほっほっほー! さっきからこれ、私たちの妄想だと申し上げてましてよー? 現実の圭一さんには何の実害もございませんわー!」
<沙都子
「実害はある!! お前らがニヤニヤ話しながら時折流してくる、怪しげな目線が舐めるようでくすぐったい!!」
<圭一
「目線が舐めるわけないでしょー? くっくっく! 妄想とは即ち考えること。思想言論の自由は戦後日本でもっとも保障された権利だからね〜〜!!」
<魅音
「…でもでも〜〜☆ 妄想だけで済むかどうかはわ〜かんな〜いね〜〜☆ 次の部活が楽しみ〜〜〜!!
はぅ〜〜〜!!! 圭一くんがお尻できゅきゅ。はぅ〜!! お持ち帰り〜〜!!!」
<レナ
「をっほっほ!! 私も今から壮絶なトラップワークが頭に浮かんで参りますわね! 絶対絶対絶ーッ対、これら罰ゲームを圭一さんにやらせてみせましてよー!」
<沙都子
「お姉、次の部活には絶対、私も呼んでくださいね。園崎家の総力を挙げて完全勝利を勝ち取りましょう!」
<詩音
「……園崎姉妹が手を組んだ日には、これほどはた迷惑なこともないのです。」
<梨花
「あと、大石とも絡ませないとね〜! レナはヨーグルトを食べさせるって罰ゲームだったっけ?」
<魅音
「あーあと、さっきから悟史くんの出番がないのがつまんないです。せっかくですから、悟史くんと圭ちゃんで、交代交代で、口に咥えたスプーンでヨーグルトの食べさせっことかしてくれると………
ぅぷ!! 鼻血出そう…。」
<詩音
『く、くっそーーお前ら、覚えてやがれーー!!!!』
<圭一
『む……むぅ、…仕方ないよ圭一。…負けちゃったし。』
<悟史
『くそくそー!! 負ける勝負じゃなかったのに! 中盤のあの凡ミスが痛かった…。あれさえなければ挽回は出来たのにーー!!』
<圭一
『むぅ…。…ご、ごめん。』
<悟史
『………あ、いや、…悟史だけが悪いわけじゃないよな。あの時、その場でミスに気付かなかった俺にも責任はある。…言い過ぎたよ。謝る。』
<圭一
『今日は僕たち、負けちゃったけど。
きっと勝てるよ、僕たちなら。』
<悟史
『…………………あ、………あぁ、そ、そうだな! 今日は潔く負けを認めて、次回を頑張るしかないもんな…! はははは……。』
<圭一
『じゃ、…罰ゲーム、とっとと済ましちゃお。
じゃ、僕から行くね。プーンを口で咥えて、ヨーグルトをすくって圭一に食べさせればいいんだよね。…………んむ、………んん〜〜〜〜〜〜〜〜…。』
<悟史
『……………………ぁぅ、………ぅ…。』
<圭一
『………どうしたの、…圭一? 早く食べてくれなくちゃ、顎がくたびれるよぅ…。』
<悟史
『…………いや、その、……………男同士でこんなことしなくちゃならないなんて、…その、………恥ずかしくて……。』
<圭一
『あははははは。圭一。罰ゲームの罰というのは、恥ずかしがらせるところにあるんだと思うんだ。だったらさ、恥ずかしがらずにやってしまえば、すっと終わらせられることじゃないのかな。』
<悟史
『…ま、……まぁそりゃ。……下手に恥ずかしがる方が、連中を面白がらせるだけだし……なぁ…。………でも、…いくらなんでも……。』
<圭一
『お互いに食べさせっこをすれば終わりだよ。ちゃちゃっと片付けて、おしまいにしちゃおうよ。』
<悟史
『………理屈じゃわかってるんだけど……なぁ…。……思い切りってヤツが、…その………恥ずかしくて……………。』
<圭一
『……僕だって、……………本当は圭一とこんなことするの、……恥ずかしいよ。』
<悟史
『……………え…? あ、………お前の手……。』
<圭一
『…ね? ……僕だってさっきからどきどきが止まらないんだ。だからさ、…ちゃちゃっと片付けちゃいたいんだよ。じゃないと僕、………………。』
<悟史
『…………悟史、…………俺………、』
<圭一
『僕のヨーグルトじゃ、………食べられないかな…。………僕は、…圭一のヨーグルトなら、……食べたい…よ…?』
<悟史
「うおおぉおおぉぉ、悟史ぃいぃ、ガバ!!
あぁそして2人は禁じられた愛への第一歩を踏み出すんです!」
<詩音
「むがーーー!!! にーにーを変な罰ゲームに巻き込まないで下さいでございますわー!!!
むが?! あうあうあうあ…!
ガクリ。」
<沙都子
「わー、梨花ちゃん何それ、クロロホルム?」
<レナ
「……み〜。
、いいところなのに、沙都子はちょっとおうるさいのです。」
<梨花
「梨花ちゃんの容赦なさって、たまにコワイね。…あははははは…。」
<魅音
「はう?! いつの間にか圭一くんがいないよ?! レナじゃない誰かがお持ち帰ったーー!!!
ずーるーーいーーーッ!!!」
<レナ
「大石さん、いますかー? 一般の方から外線でーす。」
「ど、どうしてロンしちゃダメなんすかぁ?! あ、待ってくださいよ大石さぁん!」
「ありゃ、こりゃどうも。
それじゃ、ちょいと失礼!」
大石の向かいの席の男が受話器を振っている。
「外線です。公衆から。」
「あーどうもすみません! ……お待たせしました、大石です。もしもし?」
『お、大石さんですか?! もしもし?!』
「前原さんじゃありませんか。どうもどうもこんにちは…!」
『……お、…俺、最初は普通のお疲れさま会だと思ってたんです。……でも、何か最初からずーっとおかしいんですよ!!』
「落ち着いて下さい前原さん! 今、警邏車を向かわせます! 3分でいいから何とかその場を持ちこたえてください!!」
『3分どころか、もう俺、囲まれて……、ぎゃぎゃ!!
やめてー!!! せめてやさしくしてーーーーッ!!!
ドタバタ!
大人しくしなって、男のクセに往生際が悪い!
助けてー!! お母さーーん!!
はぅあぅ、もがく圭一くんもかぁいいね〜〜、
お〜〜持ち帰り〜〜!!!
ドタバタ、この電話ボックスに逃げ込んだ時点で私のトラップに引っ掛かっていたわけですわね〜!
ギュム〜〜〜〜〜!! うぐぐぐぐ…がくり。
』
「もしもし?! もしもーし?! 聞こえてますか前原さん?!」
『……にぱ〜☆
ガチャン! ツーツーツーツーツー…。』
こうして1人の不幸な少年が、またしても雛見沢の闇に飲み込まれたのであった…。
■完