ひぐらしのなく頃に 「祟殺し編=沙都子編」TIPS&お疲れ様会
■タイトル: 沙都子のトラップ講座(初級)
「俺が保証する。沙都子ならこの山で篭城して、一個師団相手くらいなら充分にあしらえるに違いない。」
「私は知ってるよ。沙都子はソ連の軍事顧問団に混じって、某国でトラップの訓練教官をやってたんだ。」
「そんなヘンな話はいいから…誰か助けてぇえぇ〜〜!!」
……一体、…どういう仕掛けにどういう風に引っ掛かれば俺たちはこうなるんだろう。
魅音は脱出不可能のやたらと細い落し穴にはまり、首だけを地上にのぞかせていた。
レナは頭からすっぽりブリキのバケツを被り、それが脱げなくてもがいている。
…どちらも実に滑稽だが、それでもまだいいさ。足が地に着いてるだけマシだ。
「……圭ちゃんの方はどーおー? 抜けられそうー? 早く抜け出しておじさんを助けてよー。」
「ぬ、抜け出して助けるのは魅音の方だー! この簀巻き状態の俺に、何をしろと言うんだー!」
…俺の体はぐるぐるの簀巻き状態で、地上から2mくらいに吊り上げられていた。
あぁ、…どんなトラップを仕掛けたらこんな風になるんだよ? えぇ?! 沙都子!
そもそもの発端は、都会育ちの俺が自然に親しんでないとか何とかで、山へ散策に行こうなんて話からだった。
「うーん、でもレナもよく裏山は知らないよ?
レナじゃ迷子になっちゃう。はぅ。」
「裏山ねぇ。…小さい頃はよく遊んだけど、…ここ何年かはさっぱりだなぁ。あそこ、道を誤るとかなりデンジャラスに迷うんだよなぁ。」
「裏山なら私たちにお任せですわよー! 山が丸ごと、私と梨花の遊び場なんですもの。ねぇ梨花ぁ?」
「……みー!」
「おー。それは心強いな。じゃあここは二人の顔を立てて、二人の道案内でハイキングと行こうじゃねーか!」
「でも圭一くん…。裏山は迷うから遊びに行っちゃいけないって夏休みのしおりにも書いてあるよ。」
「……まだ夏休みではありませんですから、大丈夫なのですよ。ボクたちが道を知ってますからご安心なのです。」
「裏山は昔から私たちの遊び場でございますもの! 庭も同然! 抜け道、近道までばっちりでございましてよー!」
……確かに沙都子と梨花ちゃんはちゃんと道を知ってたさ。
お陰で、村の中じゃ絶対に味わえない大自然や眺望、新鮮な空気を満喫できたさ。
だが、途中からおかしくなり始めたんだ!!
「そうそう。皆さん。ここからは私が歩いた足跡の通りに歩くんですわよ。」
「はぁ…? 突然、何を言い出すんだ?」
「……大人しく沙都子の言うことを聞くほうが身のためなのです。」
「あれれ。ねー、魅ぃちゃん、ほらこれ。なんだろね。
引っ張るのかな? かな?」
ピン。
……びよよん。…グワッ!!!!
レナが凧糸のようなものを引っ張ると、レナのすぐ脇に頭上の木の枝に括り付けられていた竹槍の束がドカドカドカッ!! と降り注ぐ!!
「わーーー!! わーーー!! 何これ?!
何?!
何?!
ぎゃーー!!」
「……懐かしいのですよ。これは確か、2年生の2学期に沙都子が作ったトラップなのです。」
「危なかったですわねぇ。竹槍の先端には犬のフンが塗ってありますから、傷になるとあとで腐り出しますわよ。」
「こ、ここはいつからベトナムになったんだぁあああぁあぁあッ!!」
……沙都子と梨花ちゃんが言うには、
…小学校低学年の頃、トラップ作りが沙都子的に大ブレイクして、この山の至るところに仕掛けて回ったらしいのだ…。
「…圭一くん、ひょっとして……裏山が立入禁止なのは迷うからじゃなくて、…危ないからじゃないのかな…。」
俺も魅音もそのレナの仮説に全力で頷く。
「さ! 先を急ぎますわよ。早く戻らないと暗くなってしまいますわ。暗くなったら、私だって危ないでございますからね。」
そ、そんな危ない山に何で連れてきたぁあぁあああぁああ!!
何で健全で平均的な日本人男子の俺が、ブービートラップに命を脅かされなくちゃらならないんだぁッ!!
……そして、……沙都子たちの姿をちょっと見失った途端に、俺たちは3人まとめて仲良くトラップに絡め取られたというワケだ…。
「……誰か出して〜〜! 私、おトイレに行きたいの〜〜!!」
「そんなことより〜! 誰かこのバケツ取って〜!! 前が見えない〜! はぅ〜!!」
「…おいレナ、あんまり暴れるな。ぱ、ぱんつが見えるぞ…。」
「は、はぅーーー!!! 見た?! 見た?! 圭一くんが見た!! はぅ〜〜〜!!!」
スパパパパパ、スパパパパ、スパパパーンッ!!!
「み、見えてるだろ絶対…!! バケツ被ってても、見えてるだろ絶、
げは、
ごほ!!
ぐぼれッ!!」
バケツレナにサンドバックにされる俺と、わんわんと泣く魅音。
「……落し穴から抜けられなくて、かぁいそかぁいそなのです。」
「もー、皆さん、だから言いましたでしょう? 私から離れたらいけませんでしてよ、って!」
今になって悟る俺。
……妙に沙都子が裏山にみんなを連れて行きたがってたのは…、歴代の自慢のトラップを俺たちに見せたかったからに違いない。
……それなら見るだけにしてくれよ。…はまり心地まで味わいたくないー!!
梨花ちゃんは俺たち3人の頭を順々に撫で、これ以上ないくらいにご満悦な様子だった…。
■タイトル: 沙都子のトラップ講座(中級)
富田くんと岡村くんが体育倉庫へ歩いていくのが見える。
次の体育の授業でコートラインを引くのに使う石灰の袋を出すためだ。
今日は彼らがお当番だからな。
だが、…その倉庫には…恐るべきトラップが待ち受けているのだ……!!
「…トラップって、仕掛けた側から見ると…本当にハラハラするなぁ!」
「ほっほっほ! 圭一さんにもその醍醐味がわかるなら素質がありましてよー?」
富田くんたちが体育倉庫の錠前をガチャガチャやっている。
………お? なんだ?
岡村くんが扉の一部を指差しながら、ぼそぼそとしゃべっている。
そして何かに気付き、扉からバッと遠のいた。
「お、……沙都子、バレたみたいだぞ?! 失敗か?!」
「……あの二人が入口のトラップに気付くのは計算済みですわ。
そして次にどういう行動に出るかも、もちろん計算済みですのよ。ほっほっほ…。」
沙都子によると、…あの二人は扉の不審な仕掛けに気付いた後は、扉を迂回し、裏の窓を外して中に入ろうとするだろうと言う。
そして、沙都子の予告した通りに…裏の窓へ向かい、……沙都子が予告した通りの登り方で…窓を開けて忍び込もうとする…。
「…ぉぉ…すげぇ…。沙都子の読み通りだぞ…!! …………あ! かかった!!!」
バフ、
ボフーーーーーーーーーンン!!
窓から石灰の真っ白い粉が爆風のように吹き出す。
……しばらくしてからヨロヨロと窓から這い出してきた富田くんたちは…全身真っ白けだ。
「ほっほっほ! をーっほっほっほ!!! この瞬間がたまりませんわねぇ〜! 蜜の味でございましてよ〜!!」
「……いやしかし……、…よくかかったよなぁ…。……あんな器用なトラップ、富田くんが窓を登る時、どこに手を置いて、どこに足を置くかとか、どこへ飛び降りるとか、そういうのを全部読まなくちゃ絶対に掛からないぞ…?!」
「いいですこと、圭一さん。トラップの第一歩は相手の観察から始まりますのよ?
相手の行動パターンを読み、相手ならこの時、こう動く、というのを綿密に読みきるんですの! そうすれば必要最低限の仕掛けで最大の効果が狙えるトラップが仕掛けられますのよー。」
…そう言えば、土壇場の最後の一手を読むことに関しては、沙都子には天性の才能があるって、前に魅音がベタ褒めしてたような。
「トラップは読みが全てってわけか。…じゃあつまり、過去に俺が引っ掛かってきたトラップも、みーんな俺が読まれてるから引っ掛かってたってわけか?」
「えぇ。私なりに圭一さんの行動パターンを読みきっているから掛かるんですわよ? だから圭一さんが、ある日突然、いつもと違うクセやいつもと違うパターンになってしまったら、掛からなくなってしまうわけですわね。」
…俺を読みきっていると豪語されると……、…何だか面白くないよな。
「よぅし。じゃあさ、何かゲームをやってみろ。沙都子の読みが当たるかどうか、試してみろよ。」
「えぇ、いいですわよ。圭一さんは特に読みやすいですから朝飯前でしてよ? をーっほっほっほ!!」
教室へ戻ると、沙都子がノートを千切り、裏に何かを書いて、三枚のカードを作った。
もちろん、俺には裏に何が書いてあるのかわからない。
「この中の一枚を引いてごらんなさいませ。ハズレを引かなければ圭一さんの勝ちですわ。」
「よぅし、挑戦してやるぜ!! 部活で鍛え上げられた俺の感性で見事打ち破ってくれる!」
沙都子はにやりと笑いながら三枚を突き出す。
頭を冷静にしてフル回転させろ、前原圭一! …クールに勝負を見切るんだ!
………ハズレを引かなければ俺の勝ち。
…ということはハズレを引かせれば沙都子の勝ちということだ。
………つまり、沙都子は絶対に俺にハズレを引かせたいということ。
絶対にハズレを引かすには…どうすればいい?!
そんなのに読みなんかあるのか?!
統計学的に…俺は真ん中を選びやすいとか、右利きは右を選びやすいとか、…何か法則でもあるんだろうか?!
その時、……魅音ならきっとこうするだろうというひらめきが浮かぶ!
「さぁ、どれを取るか決まりまして?」
「決めたぜ。……それはな、………これだぁああぁぁああぁッ!!!」
「え? ああぁあ!! な、何をするでございますの!!」
沙都子の手から3枚をまとめて奪う!
沙都子の考えを逆に読んでやったのだ。
……沙都子は絶対に俺にハズレを引かせたい。
ということは……全部、3枚ともハズレということ!!
「というわけだ!! この3枚、検めさせてもらうぜぇえぇえ!!!」
カードを三枚、表にすると……そこにはカタカナが1文字ずつ書かれていた。
「ハ」「ズ」「レ」
「……何だこりゃ。…ハ、ズ、レ。…ハズレ。」
「つまりはそういうこと。…1枚しか取らなかったならハズレにはならなかったということですわ。」
「え、ええぇええぇ?! じゃ、じゃあ…俺が3枚まとめて引くのを…読んでいたってのかぁああぁあ?!
ぎゃーーーーー!!!」
頭を抱えて悶絶する俺と得意絶頂の沙都子!
甲高い笑い声が教室にこだまする。
その時、沙都子の頭に、ボフ!っと石灰の粉がかけられた。
見ると、真っ白けの富田くんと岡村くんが両手いっぱいに石灰の粉を盛って、沙都子に復讐に来ていた。
「……北条〜!! あんな罠を仕掛けるのは北条しかいないー!!!」
「失礼でございますわね!! どこに証拠がございますの?
それに罠なんて品のない言い方はやめてほしいですわね。
より優雅にト・ラ・ッ・プ♪と呼んでほしいですわー!」
「「天誅〜〜!!!」」
「ひいいいいぃいいいいぃい!!! けけ、圭一さん、たす、助けてー!!」
……教室でどたんばたんと、後輩諸君たちが石灰で真っ白になりながら乱闘をする。
…おい沙都子。…こういう結末になることまでは読めないのかよ。
この時点の俺には、その後に先生がやってきて、俺まで一緒にお説教をされることを読めてはいなかった…。
■タイトル: 沙都子のトラップ講座(上級)
のどかな昼休みだった。
ドン、
ガラン、
バッシャーーーーーン!!!
「わわ! な、何だぁ?!」
「今、廊下からすごいのが聞こえた! 何だろ! 何だろ!」
廊下に飛び出すと………、何とそこには水入りバケツを逆さに頭に被った監督の姿が!
「か、監督、大丈夫ぅ?!」
「たは、はははは…。いやぁ、…やられましたねぇ…。皆さん、こんにちは。」
監督はとても涼しそうに、スチャっと挨拶をする。
「どうしたんですか、監督。学校に来るなんて珍しい。」
「いやぁ、お仕事の絡みでして、私、毎週学校には来てるんですよ。ここしばらくは何事もなかったので…すっかり油断してました…。」
「あははは…。沙都子ちゃんの罠は忘れた頃に来ますからね…。大丈夫ですか、服。」
「いえいえ、ちょうど行水がしたいと思ってたところですからね、実に涼しくていいですよ。」
「さぁすが監督。ちょっとやそっとのことでは怒らない! その辺が大人〜って感じだよね。」
…確かに。
俺が監督だったら、被ったバケツもそのままにあいつを探して走り出してる。
いちいち子供のいたずらに腹を立てない大人っぷりには感服だ。
「いいですか前原さん。こういうのは考え方ひとつで腹立たしくも愉快にもなるんです。要は受け止め方ひとつなんですよ。」
「……水バケツをまるごと食らって、それだけクールにいられる秘訣があるなら、ぜひご教授を願いたいです。」
「例えば、…明治から続く古式ゆかしい旧家があるとします。」
「ふむふむ。」
「そこには大勢の使用人としてメイドさんが雇われているとします。もちろん大きな家ですから、ベテランのお局様と化したメイド長から、新米のぴちぴちしたメイドさんまでがたくさんいるのです!! ほら、想像できますか? ほらぁ…♪」
……ほらぁ…♪
監督を中心にフリルとカチューシャで彩られた桃色の夢メイド空間が広がっていく…。
「新米メイドたちはそのぴちぴちさと初々しさで、ご主人様の寵愛を一身に! でもそれが先輩メイドたちには許せないのです! ことあるごとに難癖を付け、いじめていじめていじめ抜いて!! ホラ、まだこんなに埃が残っていますよ! あぁ…すみません…。もう一度やり直し! バッシャ!! バケツを逆さにぶっかけられるメイドさん! びしょ濡れのメイドさんが…泣きそうになりながら、それでも健気に…、はぁはぁ!! メ・イ・ド〜〜〜〜♪♪♪!!」
「……はぅ〜〜〜☆ 何だか知んないけど楽しそう〜☆ レナもメイドさん、いいなぁ…♪」
「あーあー、もー! レナまで感化されてきたー。ほぅら圭ちゃんも! いつまでも監督の世界に浸っていない!」
「……これさえなければ監督も、決して悪い人じゃありませんのに。」
「む! 北条沙都子さん発見! …沙都子さん、これは何ザマス! まだ埃が残ってるザマスよ!! お、おお、お仕置き! お仕置きザマスー!!」
「んな!! にゃにゃ! にゃーー!!!」
監督が沙都子をヒョイと摘み上げると、沙都子のお尻をペチンペチンと叩き始める。
「あははははははは! 沙都子ちゃん、かぁいい! あっはははははは!」
「……天才的な読みでトラップを操る沙都子が、どーしてこの顛末までは読めないのか実に不思議だぞ。」
「そうかな。これは沙都子ちゃんの望んだ結末だと思うな。思うな!」
「この結末を沙都子が望んだー? そりゃどーゆう意味だよ。」
「人にこういうイタズラをしたら、絶対に相手は怒って追いかけてくるよね。そういうのもコミュニケーションだと思わない?」
「…そんなコミュニケーション、すごく嫌だぞ。普通に挨拶から入ってこんにちは〜ってことにはならんのか。」
「あれ、圭一くん、聞いたことない? イタズラばかりしてる人ってね、人にかまってもらいたくて仕方がない、寂しがり屋さんなんだって。」
レナが涼感を感じさせる笑顔で、ふっと笑いながら教えてくれた。
「だから。…沙都子ちゃんのワナに掛かったら、ちゃんと怒ったり笑ったりして、沙都子ちゃんを追いかけて欲しいの。そういう、猫の甘え噛みみたいなの…かわいいと思わないかなぁ…。」
「きっと、ここで驚いて飛びのきますわ。だからここに仕掛ければ絶対に掛かりますの!!」
沙都子はトラップ哲学を得意げに語りながら、さらに裏山を凶悪なトラップ地獄に改造していた。
レナの言うとおり、もしも沙都子のトラップが、人に構ってもらいたいという思いの裏返しなら。
……この裏山中に無数に仕掛けられたものは全部、…そういう思いの結晶だということになる。
梨花ちゃんと二人きりで、…いくつもいくつもたくさんのトラップを山中に仕掛け、………誰かが引っ掛かってくれるのをずっと待っていたに違いない。
……だけれど、こんな裏山に誰も来るはずはなくて。
……梨花ちゃんと二人で、引っ掛かった犠牲者がどう反応するかを想像し合って過したに違いない。
大好きなにーにーの悟史と生き別れた、沙都子。
…帰ってきて欲しいなんて一言も言わない意地っ張り。
でも、この山に眠る無数のトラップが、本当の沙都子の気持ちを教えてくれるのだ。
「……聞いてますの? 圭一さん!」
「あ、ごめんごめん。何だって?」
「このように、木の幹に釘を一本、打ちつけただけでも立派なトラップになるんですのよ? ちょうどあそこで転げて、ここに額を打ち付ければ…痛いですわよ〜!」
「く、釘の頭に人間トンカチってわけか…。そ、それは痛そうだな…。」
「このトラップはきっと、悪〜い悪人を誅する強力なトラップになりますわよ! どんな悪党がかかるか楽しみでございますわね!」
「…そこで何で俺をちらちら見るんだよ。…俺にこれに引っ掛かって欲しいと思ってんのか? …さ、さすがにこれは大怪我するぞ。このトラップはちょっとやめとけ。」
「…………そうですの? …まぁ確かに、愛がないトラップは駄目でございますからね。
……ではその悪党もちゃんと改心したら掛からないように、少し釘の位置を…、」
沙都子は釘を打つ場所の調整に没頭していた。
…トラップは愛、か。
監督の言うとおりかもしれない。…受け止め方ひとつで、…全然変わるのだ。
そう思えば、……沙都子のトラップに引っ掛かるのにも、面白みや、温かみが感じられるかもしれない。
「できましてよ!! この絶妙な位置でしたら完璧ですわ! いかがです圭一さん?」
「あ、…あぁ。完璧だな。このトラップに引っ掛かる悪党が現れるといいな。」
「ほっほっほっほ! 現れない方がいいに決まってますわ。」
……ちょっと痛そうだけど、今度ここへ来たら引っ掛かってやってもいいかなって思った。
■タイトル: サボりマネージャー
「詩音さんも少しは手伝ってくださいー。」
「女の子に重いものを運ばせようって言うんですか。そんなだからいい歳になっても相手が見つからないんですよ監督は。」
「えーとですね、そういうのを曰くこう言います。えー、余計なお世話です。」
「あっはははははははは。」
今日のバーベキュー大会に使った器材をワゴン車いっぱいに積む。
手伝ってくれた父兄たちもみんな帰り始めている。
「……さて。詩音さんはどうしますか。あなた、ここまでは何で来ました? 自転車でしたら積んで送って差し上げますよ。」
「バイクだからいいです。お心遣いだけでうれしいってことにしときます。」
「…………今日は来てくれてうれしかったですよ。やはりマネージャーさんがいないとパッとしませんからねぇ。」
「まだ私、マネージャーなんですか? 1年もまるまるサボってんだから、こんな無能マネージャー、いい加減に解雇するべきだと思いますよ。」
「えぇ。詩音さんが辞めたいって自分で言えたらいつでも解雇してあげますよ。」
「…ちぇ。ズルイなぁ。
………………早く解放してくださいよね。試合がある度に来ないかと電話が掛かってくるの、もうウザくてかなわないんですから。」
「詩音ちゃんももっともっと素直になれば、とってもキュートで可愛い女の子なのに。お父さんは悲しいですよ、一体どこで捻じ曲がってこんなにひねくれてしまったんだか! あぁ、お父さんの愛の抱擁で力強く包み込めば目が覚めますか?! でしたら遠慮なく!!
ほぅら〜〜〜♪♪♪」
…監督が精一杯ふざけてみせるが、詩音は遠くを見るような目で微笑むだけで、取り合わなかった。
「…………何も変わってない。監督がヘンな人で、みんなの賑わいも何も変わってないのに。」
「…悟史くんだけ、いない。…とおっしゃりたいのですか。」
「…………………。」
「帰ってきますよ。きっと。待っている人がいるんですから。」
「……………ふん。…勝手なこと言ってて下さい。」
「彼も罪作りな人ですよねぇ。こんな可愛い彼女を置き去りにして、どこへ行ってしまったんだか。」
「へ?! かか、彼女!! 誰が! 誰が!! ……へ?!」
「ぷ、…くっくっく、はっはっはっはっはっは!」
「……ちぇー、…もう! いつまで笑ってるんですか!! かぁんとーくー!!」
「はっはっは! わーっはっはっはっは!!」
しばらくの間、監督はおなかをよじりながら笑い転げていた…。
「では、またお会いしましょうね。試合にもたまには応援に来てくださいよ。」
「ま、気が向いたら。…私、マネージャーなんか全然、もぅやる気ないんですから。」
「…いいんですよ。あなたが嫌ならいつでもクビにしてあげますよ。嫌がるのを無理やりってのは私の性ではありませんからね。」
「…………………………ちぇ。あーはいはい! すみませんねすみませんね! 私の負けです。気が向いたらまた応援に来ますので、今日は堪忍して下さい。」
「ふっふっふ! おっと、もうこんな時間! 器材返す約束の時間が…! 先方をもうだいぶ待たせてますね! では、今日はこの辺で! また次の試合でお会いしましょう!」
「えぇ、気が向いたらね。さよなら、監督。」
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■タイトル: 検死初見コピー
検死の結果、被害者は以下に従い殺害されたと思われる。
(1)拘束具で全身を拘束
抵抗時に出来たと思われる傷痕から、ロープ等でなく、拘束を目的とした専用の拘束台に拘束したものと推定。
両手各指の関節への拘束が特に厳重であるのが特徴。
形状その他から推定して、特注品もしくは自家製である可能性が高い。
(2)両耳・鼻を鋭利な刃物で切断
拘束跡その他から推測して、切断する人間の他に少なくとも1人以上の、被害者の首を押さえつける人間がいたものと推定。
使用した刃物は複数の可能性があり、その内のひとつは鋏である可能性が高い。
(3)両手の指を五寸釘で貫通
両手の各指に対して、各関節毎に1本、計30本の五寸釘で打ち抜いている。
遺体の指は20センチ四方の板に打ち付けられており、この板は拘束台の一部である可能性が極めて高い。
またこの拘束台が、そもそもこの行為を行なうために用意されたものである可能性がある。
(4)腹部切開、及び内臓の切除
腹部の切開に当たっては、鋭利な刃物で医学的手法に基づき開腹した可能性がある。
この段階では被害者の生命にはまだ支障はなかったと推定。
その後、切開部より内臓各部位を分解、切除。その過程で被害者は死亡したものと推定される。
(5)遺体の投棄
被害者の首を市販のペット用首輪でダンベルに括り付けた後、王子川3号暗渠に投棄したものと推定。
ダンベルの総重量から、遺体の投棄に少なくとも成人男性が3人以上関与している可能性が高い。
大石さんへ。
頼まれてた、例の王子川惨殺死体の検死初見コピーです。
重春課長はS号じゃないかと見てるみたいです。大石さんはどう思います?
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■タイトル: 東三局
■雀荘で麻雀をしながら先のドブ川惨殺体の情報交換をする刑事たち。
メンバーは大石と熊谷、鑑識のじいさまとどっかの刑事。
「んっふっふっふ! 出ましたねぇ、ロン。中ドラ3、満千五です。」
「えー…! なんすかそれぇ…。何でドラが3つも入んすかぁ!」
「バカモンが。大石が聴牌しとんのわかっててカンドラ増やしおってからに! 自業自得じゃぞ。」
「中さらしたら、ドラを上乗せする位しかやることないじゃないですか。役牌さらしたらドラ側は切っちゃだめですよ。んっふっふっふ!」
得意げに笑う大石と悪態をつく仲間たちは、牌の山を崩してまた積み始める。
「……時に大石さん、どうですか。割れましたか。」
「なんじゃい。…あぁ、例のドブ川惨殺死体の話かの。何か手掛かりはあったのか。」
「えぇ、まぁ。裏はそっちで取って下さいよ。」
「さぁすがぁ。何者です、ホトケ?」
「間宮リナ。本名は律子。」
「鹿骨フラワーロードにある、ブルー・マーメイドってキャバクラに勤めてたみたいっす。」
「やれやれ、そりゃヤバイ店じゃな。確か園崎系の若頭の店じゃろ。」
「…園崎…おっと! S号関連かぁ。…難航しそうなヤマだなぁ。」
「噂じゃホトケさん、上納金とヤクに手を付けちゃったらしいっす。話じゃ、かなりシャレにならない規模らしいっす。」
「女が上納金に手を出した、か。裏に男がいそうじゃのう。女の単独犯なんてそうそうないぞ。」
「んっふっふ! どうせもう死んでますよ。死体がまだ出ないだけで。」
「そうそう…、大石さん。女のヒモ、生きてるみたいですよ。」
「生きてる? じゃあこれから死ぬんでしょうねぇ。害虫が害虫を駆除してくれるんだから、ホントに素敵な自浄機能だと思いますよ。」
「そのヒモなんですがね、
北条鉄平なんですよ…、あの。」
「……北条? 誰だい?」
「…北条鉄平。去年、雛見沢で起こった主婦撲殺事件のホトケのご主人ですよ。……事件のあと姿を消したって聞いてましたけど。…そうかぁ、愛人の所に転がり込んでたかぁ。」
「…………ますますに園崎の臭いがプンプンだの。」
「彼氏は今どこに?」
「女のアパートに同居してたんすがね。女が自分を捨てたと思ったみたいで、店や溜りのあちこちを探し回ってるらしいっす。」
■研究ノート
<北条家について>
オヤシロさまの祟りによって、毎年2人ずつの犠牲者が出ている。
すでに4年続き、犠牲者は8人になったわけだが、その半数の人間が北条姓を持つことは特筆に価する。
※2年目の祟りである転落事故ではダム推進派であった北条氏本人が死に、その妻が失踪した。(危難失踪扱いでその翌年に死亡宣告)
4年目の祟りでは北条兄妹の養母である叔母が死に、北条氏の長男が失踪した。
北条家は貧しい家庭で、北条氏の仕事も満帆とは言い難かった。
親類の縁での再就職をあてに、母方の故郷へ引越す計画があったと言う。
そんな北条氏にとって、雛見沢ダム計画による立ち退きと高額な補償金の給付は、まさに渡りに船だったと言えるだろう。
北条氏は建設省の交渉初期から積極的に応じ、ダム推進派の雛見沢のまとめ役として抜擢された。
その過程において、建設省から金銭による買収があったと囁かれるが、真偽はわからない。
だが、ダム推進派は極めて少数だった。
しかも、園崎家が強力に地盤を固め、反ダムへの結束を強化し始めると、北条氏を除く全てのダム推進派は反ダムへ鞍替えすることになる。
この時点で雛見沢は完全に反ダムで結束し、北条家はダム計画推進の手先として槍玉に挙げられることになった。
反ダム結束の為のスケープゴートにされたと言ってもいいだろう。
結局、ダム計画は初めてのオヤシロさまの祟りである「バラバラ殺人事件」を最後に瓦解する。
だが、ダム計画に加担した仇敵への報復は今日でも続けられているのだ…。
ダム計画に加担した、もしくは当時にネガティブな評価を持つ者は今日、ほとんど残っていない。
残る祟り候補がいるとすれば、昨年の主婦撲殺事件の被害者の夫である北条鉄平。北条氏の娘の北条沙都子。
奇しくも、残る候補者は2人だ。
今年の祟りは、この2人に対して下されるのか…?
この2人を観察する価値は、十二分にある……。
■タイトル:大石席のメモ
大石さんへ。
捜査四課の重春課長からお電話がありました。
例の王子川の惨殺死体の件は、やはりS号絡みだったらしいです。
ウラはまだ確認中ですが、ホトケがS号のカネを自分が用意した数十の架空口座に上限額いっぱいまで送金して、1億くらいはイったらしいです。
背後には元S号の筋で3〜4人の男が絡んでるようです。
数千万くらいを引き出して、すでに蒸発しています。
ホトケはその辺りを聞き出すために拷問され、以後の見せしめのために惨殺されたのはほぼ間違いないとのことです。
蒸発した連中は、スゴ腕何人かに追跡させているらしいです。
あと、親交のある周辺のマル暴に匿わないよう回状を回しています。
北条鉄平がその一味のひとりであるというウラは未だ取れていません。
重春課長の見たところでは、何も知らされていないみたいです。
ヒモのくせに信用されてなかったってことですかね。
北条鉄平は興宮のアパートを出て、雛見沢の元の家に戻った様子です。
■タイトル: 事例31
昭和56年12月 1日
XX県福祉部児童課資料
(閲覧不可・複写不可)
事例31(11月20日)
北条沙都子(X歳)
鹿骨市雛見沢村XXX番地在住
(1)相談の経路
匿名で子ども虐待SOSに電話相談有り。
(2)虐待の状況
女児が保護者である養父母に身体的虐待を受けているという訴え。
(3)家族構成(●虐待者)
●養父、●養母、兄、本児
※昭和55年6月に本児の両親が事故により死亡し、父方の叔父(父の弟)宅に引き取られた。
(4)児童相談所の対応
匿名の電話相談が入り、同日、学校に電話で、本児の状況を聞き取り。
翌日、担当児童福祉司が本児宅を訪問し、聞き取り。
養父母は相談所の指導を受けることに同意。
市の虐待防止ネットワークに連絡した。
助言指導とし、以後定期的に地域の民生委員が訪問指導することとなった。
(以下の走り書きのメモがホチキスで止められている)
前任のW氏より関連情報あり。
52年度のエ2−3の44号を参照すること。
市教育相談所のF主査が詳しいので助言を求めること。
■条文
第二条(児童虐待の定義)
「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ)が
その監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ)に対し、次に掲げる行為をすることをいう。
一 児童の身体に外傷を生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
二 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
三 児童の心身の正常な発育を妨げるような著しい減食又は長時間の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
四 児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
第三条(児童に対する虐待の禁止)
何人も、児童に対し、虐待をしてはならない。
平成十二年五月二十四日号外法律第八十二号
<法務・厚生大臣署名>
『児童虐待の防止等に関する法律』
第二条・第三条より
■厚生省統計
昭和XX年度
主たる虐待者(厚生省報告例)
総数 5,352件
実母
2,943件(55.0%)
実母以外の母
203件(3.8%)
実父
1,445件(27.0%)
実父以外の父
488件(9.1%)
昭和XX年度
虐待の内容別相談件数(厚生省報告例)
総数 5,352件
身体的暴力
2,780件(51.9%)
ネグレクト(育児放棄)
1,728件(32.3%)
心理的虐待
458件(8.6%)
登校禁止
75件(1.4%)
性的暴行
311件(5.8%)
■タイトル: 緊急
昭和58年6月18日
北条沙都子に関する虐待問題について(緊急)
標記の件につき、北条沙都子を緊急に保護すべきであると進言します。
1.家庭状況
先日、雛見沢に戻った養父との生活はすでに破綻しており、養父による虐待は肉体的にも精神的にも耐えがたいものとなっている模様です。
2.児童相談所の対応
昨日23日に県福祉部より児童保護司が派遣されましたが、52年度のケースにより、慎重策から継続指導の形となりました。
残念ながら相談所長は正しく状況を把握しているとは言えません。
3.当該児の状況
初見ではすでに鬱状態もしくはノイローゼに近い状態を発症していると思われます。
ストレスにより、思春期独特の不安定な状態が刺激されれば、健全な身体・精神の発育に憂慮すべき事態をもたらすでしょう。
人道的見地からも、このまま放置することは許されません。
4.家庭裁判所への申し立て
以上から、北条沙都子を緊急に保護すべきであると進言します。
家裁に緊急に法28条申し立てをし、一時保護を行うべきです。
緊急に、関係各機関への調整を求めるものであります。
■タイトル: エ2−3第44号
福児庶エ2−3第44号
昭和52年X月XX日
児童名:
北条沙都子(X歳)
鹿骨市雛見沢村XXX番地在住
(1)相談の経路
本児より子ども虐待SOSに電話相談有り。
(2)虐待の状況
本児が養父に身体的虐待を受けているという訴え。
(3)家族構成(●虐待者)
●養父、実母、兄、本児
※養父と実母は昭和XX年に入籍。
本児は離婚した前夫との子。
(4)児童相談所の対応
本児より電話相談が入り、同日、学校に電話で、本児の状況を聞き取り。
即日、担当児童福祉司が本児宅を訪問し、面談を行なった。
養父は真摯に指導を受け入れ、以後、市の育児ワークショップを受講することに同意した。
助言指導とし、経過を観察することとする。
(5)その他
市教育相談所で本児に対し数度のカウンセリングの結果、
本児の養父への過度の不信、コミュニケーション不足が原因である可能性が高いことがわかった。
当初訴えのあったような虐待は実際には行なわれておらず、本児が養父を遠ざけるため、虚実の訴えをした様子。
(以下は当時の担当者のえんぴつによる走り書き)
むしろ娘の方に問題があったようだ。
虐待話はほとんどが作り話の可能性があると市教育相談所のF主査。
今後は本児への指導を中心に行なうこととなった。
本児の話は真に受けすぎないように注意。
■タイトル: 主婦撲殺事件担当課御中
昭和57年7月XX日
興宮警察署捜査一課
高杉課長 殿
XX県警麻薬犯罪撲滅本部
鹿骨支部長 XXXX
秘匿捜査指定第X号事件について
標記秘匿捜査事件(興宮警察署第X号、雛見沢村主婦撲殺事件)について関連すると思われる部分が、
当本部担当事件の供述調書内に確認されたことを通達する。
X月X日に覚醒剤所持の現行犯で逮捕したXXXX容疑者への取調べ中、
標記事件の犯行をほのめかす供述があり、その中に、犯人しか知り得ない情報が含まれていることが明らかとなった。
よって、この供述調書(複写)を貴課に提供する用意がある。
この供述調書を信頼できるなら、XXXX容疑者は標記事件の実行犯である可能性が極めて高い。
なお、担当取調官はこの供述を受け、興宮警察署に事件の問い合わせをしたが、
7月1日県警本部長発令の秘匿捜査指定(昭和57年総総管イ1−12)を対応した興宮署担当者が誤解し、
担当取調官に対し、事件の存在を正しく説明しなかった。
その為、担当取調官は標記事件に関連する供述を重要なものと認識せず、
その結果、現場確認等を怠り、今日まで放置するに至ったことを謝罪する。
なお、XXXX容疑者は先日X月X日、留置場内にて死亡したことを追記する。
■タイトル: 地獄の業火
「はいもしもし。救急ですか、消防ですか。」
「え、っと…消防です!」
「火事ですか、事故ですか? 落ち着いて話してください。」
「た、多分、火事だと思います…。こちらはXX高速のXXサービスエリアなんですけどね、…裏の山から何だかすっごい火と煙が上がってるのが見えるんですよ。あんなところ、誰も立ち入らないから、何で火がついてるのかよくわかんないですけど…。とにかく、連絡した方がいいと思って…! 山火事にならないとも限らないし!」
「わかりました。すぐに現場を確認しますので、そちら様のお名前とすぐに連絡のつく電話番号、それから火災現場の詳細な場所をお願いします。」
「消防司令部より通達。XX山西側斜面にて不審火の通報あり。街道から離れてることから、カップルの焚き火か、不法投棄のゴミに放火したかの可能性があります。現場は深い森林地帯。周辺に民家はないが、延焼の可能性あり。直ちに現場を確認されたし。」
「消防署ですか。こちらはXX地区消防分団です。通報の現場にさっき到着。ドラム缶がひとつ山中に放棄され、炎上しているのを確認しました。火は鎮火しつつあり、延焼の可能性はなし。
………で、……その、………ドラム缶の中に、…多分、人じゃないかと思うんです。人らしきものが灯油か何かで焼かれた…という感じで。……その、……警察の人にも連絡した方がいいんじゃないかと思いまして…。」
「わ、…わ!! まま、間違いねぇよ!! これ、人だよ!! ひぇえぇええ……!!」
■タイトル:5年目の犠牲者
「………今年の祟り、ってことっすかね。」
「…そういうことになるんですかねぇ。……毎年いろんな殺し方を見せてくれますが、今年は特に際立っていますねぇ。」
「自分で自分の喉を掻き破るなんて…。…普通じゃないっす…。」
「あとは鑑識のじいさまに任せましょう。…きっと何かの怪しげな薬物を検出してくれるに違いありません。」
「お疲れさまです! お疲れさまでーす!!」
「あ、大石さん! 小宮山さんたちが到着しました!」
「大石さん、お疲れさまです! 今年は一等、キてるのが出たらしいじゃないですか。」
「えぇ。裏をかかれました。……私ゃてっきり、今夜死ぬのは北条鉄平だとばかり思ってたんですがね…。」
「ホトケは何者です?」
「富竹ジロウ。年に何回か雛見沢に来てる趣味の写真家さんです。……ノーマークだったなぁ…。」
「…どうなんでしょうね。北条宅にずっと張り付いてたのがバレて、ターゲットを変更したとか。」
「…………………かなぁ。………裏目ったなぁ……。」
「で、北条鉄平の方は何も問題なし?」
「えぇ。夕方頃に娘が祭りに出掛けて、その少し後にバイクで出掛けまして。…先に娘が帰ってきて、…あれ? まだ帰ってないかな? どこかで飲んだ暮れてるのかな…?」
「大石さん、いらっしゃますかぁ?! 高杉課長からです。1号車の無線にお願いします!!」
■タイトル: 照会要請
興宮警察署 指令センター通信記録
6月20日20時8分
「こちら興宮SP、感度良好でーす。」
「あー、車両ナンバー照会をお願いします。XX、XのXXXX。」
「復唱、XX、XのXXXX。少々お時間もらいますがよろしいですかー?」
「お願いします。」
ナンバー照会
XX XーXXXX
所有者 XXXX
(鹿骨市雛見沢村X丁目XXX番地在住)
車種: XXXXXXX
盗難届け:無
特記事項:特に無し
「興宮SPより大石車どうぞー。先ほどのナンバーが判明しましたー。……………………大石車どうぞー? ……………………………大石車、応答願います。………………あれ? …………電波、悪いのかな…………………。……大石車応答ねが………………。」
「出ませんね。」
「大石さんが車両照会? 誰の車だよ。」
「村人の車ですね。……至って平凡な。」
「…何者だよ。大石さんが聞いてくるからには、只者じゃないんだろ?」
「特記事項欄は完全に空欄ですね。S号指定もなし。減点もなしだし。」
「…ははは、パッシングでもされて腹が立ったんじゃないの? あの人、根に持つとなかなか忘れないタイプなんだよ。」
<><><><><><><><><><><><><><><><><><><>
■タイトル: 恨み帳?
くさいと言われた。
ご飯がくさいと言われた。
くさいのは私がくさいからだと言われた。
くさいのはお風呂に入ってないからだと言われた。
お前はくさい人間だから、毎日3回お風呂に入れと言われた。
1回のお風呂も、いっぱいいっぱい入らなければならないと言われた。
きっとこいつも何かに乗り移られている。
だってこれは、死んだあの男が言っていたのと同じこと。
あの男が言ったことを、どうしてこいつが知っているのか。
それは決まってる。
あの男に乗り移っていたものと同じものが、こいつにも乗り移っているからだ。
私の家の前に、突然の地震で大きな裂け目でもできないだろうか。
できたならきっと、あいつはそれを覗き込むに違いない。
そうしたら、あとはドンと突き落とすのみ。
そのチャンスが訪れるまで、私は負けたりなんかしない。
負けるもんか泣くもんか。
負けるもんか泣くもんか。
あぁ、また誰かが謝りだす…。
■タイトル: 研究ノートU
<オヤシロさまについて>
オヤシロさまだが、どういう字で書くのかはあまり知られていない。
と言うのも、時代によって様々な修飾詞が付き、微妙に名称が変わったり、当て字が変わったりするため、@本来の正確な名称が何なのか、知る事が大変難しいからだ。
全ての時代に共通するのは、名称の読みに必ず「オヤシロ」の4文字が入るということだけ。@
オヤシロさまを祀る「社(やしろ)」が、そのまま礼拝対象になり、@「御社さま」と呼ばれるに至ったと言う説があるが、実にセンスの欠片もない。
これに関連するかわからないが、オヤシロさまを祀る高貴な血筋である古手家の人間には、オヤシロさまの血が流れているという。
そして古手家に伝えられる伝説では、八代続いて第一子が女子ならば、八代目のその娘はオヤシロさまの生まれ変わりである…というのだ。
この伝説に従うなら、オヤシロさまは「御八代さま」と書くのが正しいように思う。@(この当て字はあくまでも私の思いつきなので、真偽は確かめようもないが)
だとするなら、御八代さまは再び降臨することを前提にした名称ということになる。
崇拝対象の再臨は、いくつかの宗教でも見受けられるので、そんなに珍しいものではない。
だが、さらにその中のいくつかでは、崇拝対象の再臨を、「審判の日」等と呼び、世界の終末を意味するものであることも忘れてはならないだろう。
村中の年寄り連中に、目に入れても痛くないくらいに甘やかされている少女、古手梨花。
……彼女が、その八代目、「御八代さま」であるという噂がある。
古手家の家系図はわからないが、少なくとも、過去2代の間、第一子が女子であることは私も確認している。
雛見沢を見守る少女、古手梨花。
彼女の加護を村が失ったなら、どうなるのか?
人と鬼は和を失い、どうなるのか?
再び、人食い鬼たちが跋扈する地獄が再現されるのか?
泣き、叫び、逃げ惑うしかできないひ弱な人間どもと、それらがいかに美味であったかを思い出した鬼たちの、凄惨な宴。
……それはどんな光景だろう。
想像するだけでも…胸が、躍る。
**************************************************
:*祟殺し編お疲れさま会
:**************************************************
「この度も、ひぐらしのなく頃に〜祟殺し編〜を最後までお楽しみいただき、誠にありがとうございました。これまでのシナリオとは少し違う雰囲気でお送りしましたが、いかがだったでしょうか。お楽しみいただけたなら幸いです☆」
<レナ
「くすくす! 今回も胸の好くようなバッドエンドだったわねぇ☆
私個人としては、ガスに包まれて、ひとり、またひとりと村人が痙攣して泡を吹きながら息絶えていくシーンの描写も欲しかったところだけど、みんなの感想も同じかしら?」
<鷹野
「そんなわけありませんでしてよーッ!! またしても! またしても!!」
<沙都子
「大々々バッドエーンド!! くっくっく!
あっはっは!!」
<魅音
「あれれ…? バッドエンドって割には、魅ぃちゃんは楽しそうだね。」
<レナ
「ってゆーか、もう笑うしかないってのが本音でしょうねー。」
<詩音
「なっはっは。毎回、嫌ぁな終わり方がエスカレートすると思ったら、とうとうここまで行き着いちゃったわけですからねぇ。」
<大石
「……みんな仲良しで死んじゃったのですよ。仲良しなのです、にぱ〜☆」
<梨花
「う〜ん、そういう見方もあるのかなぁ! 毎回死んでる僕はもうごめんだなぁ! たまには死なずにエンドを迎えたいねぇ。」
<富竹
「富竹さんって、時報みたいな役割なんですよねー。富竹さんが死んだら、あ!後半戦突入だー! みたいな〜!」
<魅音
「「「わっはっはっはっはっは!!」」」
「さて! ではここで、今回のシナリオから立ち絵新登場の皆さんです。拍手でお迎え下さい〜!! まずは監督こと、入江京介さん〜〜!」
「ご紹介に預かりまして光栄です。どうもどうも。脇役だったわけですが、トータルで見てみるとかなりおいしい役だったなぁなんて思ってます。」
「本当ですわねぇ。今回限りの脇役にしては出番もセリフも多過ぎでしてよ。」
<沙都子
「はははは☆ 次回のシナリオでも出番があるかはわかりませんが、その節は応援よろしくお願いしますね〜。」
<監督
「ありがとうございました! では次に、第1回から登場していたにも関わらず、ずっと立ち絵がなかった、知恵先生〜!!」
「皆さん、どうもこんにちは! 第1回からずーっと学校シーンで登場させてもらってたんですけど、どういうわけか立ち絵がいただけなくて。…どうしてなんでしょうねぇ。」
<知恵
「……あ、はは、はははははは! ど、どうしてなんでしょうね! あ、知恵先生に席を空けてあげてください〜!」
<レナ
「さて! これでとりあえず全員揃ったね!  レナ! また乾杯をよろしくね!」
<魅音
「では皆さん〜! 各卓のコップをお持ちになって下さい〜! お飲み物はいろいろありますよ〜!」
<レナ
「本当にお疲れさま会もにぎやかになりましたねぇ。今、何人くらいいるんです?」
<大石
「私たちを加えて、多分10人くらいはいると思います。」
<知恵
「未成年陣と成年陣の人数比がこれでやっと互角かな! これで胸を張ってアルコールが飲めるね!」
<富竹
「ビールって、何で冷えてるとあんなにおいしいのに、ぬるくなるとあんなに不味くなるのかしら。七不思議のひとつよね。」
<鷹野
「くすくすくす! 何ででしょうね!」
<知恵
<監督
「……み〜♪ ボクも泡麦茶がいいのです。」
<梨花
「梨花ちゃんは、お酒は、だぁめ!!」
<レナ
「ではレナさん、そろそろお願いします。」
<詩音
「ハイハイ! 皆さん、ご清聴ですわよ〜〜!!」
<沙都子
「では皆さん! 『ひぐらしのなく頃に〜祟殺し編〜』、本当にお疲れさまでした!! 乾杯〜〜!!!」
「「「乾杯〜〜〜!!!!」」」
わ〜〜〜!!! ぱちぱちぱちぱちぱち!!
「さぁて。では毎回恒例の今回のシナリオ議論でもやってみますかね!」
<大石
「とは言ったものの…、今回のシナリオも煙に巻かれっぱなし。…うーん、意見のある方は挙手をお願いしますね!」
<レナ
「……………………お、みんな慎重。挙手ないね。」
<魅音
「……じゃあ私が先陣を切ろうかしら?
あの、申し訳ないんだけど、音楽を変えてもらってもいいかしら?
もう少しミステリアスな感じの。
………あぁ、これがいいわね。」
<鷹野
「……ムードが出まくりなのです。」
<梨花
「では…鷹野さん、お願いします!」
<レナ
「多分ね、「祟殺し編」のシナリオだけを吟味しても、謎は解けないんじゃないかと思うの。」
<鷹野
「……それは同感だね。ここまで物語が重なれば、そういう仕掛けがあることは明白だし、ね。」
<富竹
「………そんな仕掛け、ありましたかしら?」
<沙都子
「これが正しい例かはわからないけど…。…鬼隠し編で、前原くんが大石さんとレストランで食事をして、それが園崎さんに知られていて不思議だった、って行がありますよね?」
<知恵
「鬼隠し編だけだと、実に不思議な出来事ですけど、綿流し編を読めば別に不思議でも何でもないことがわかります。」
<詩音
「劇中の私が、制服の可愛いレストランと言っているのは、きっとエンジェルモートのことに違いありません。で、エンジェルモートってのは園崎一族が持つお店ですから…。」
<大石
「圭ちゃんの顔を知る者があの店にいて、それを私に伝えた…と考えれば、比較的筋は通るでしょ。そういうことよ。」
<魅音
「『ひぐらし』の物語は、微細に異なる場所もありますけど、大筋の設定においては、多分、3つのシナリオは共通していると思います。例えば、キャラクター設定。」
<監督
「……鬼隠し編の私はコワイ人だけど、それは鬼隠し編だけの設定、ということじゃなくて。…私は私で、3つのシナリオに、まったく変わらない設定で出演している、ということですね?」
<レナ
「まったく変わらない設定、というのは同感。
…僕がどのシナリオでも、常に同じ場所で同じ死に方をするのはその最たるものだね。」
<富竹
「……どんな物語になっても、必ず同じ日に死にますです。」
<梨花
「綿流し編で、お祭りの最中に鷹野さんと富竹さんが祭具殿に忍び込む、というシーンがありますけど。…あのシーンも、他のシナリオでは描かれなかっただけで、起こったことになってるのかもしれませんね。」
<知恵
「なっているそうです。……綿流し当日のお天気や、部活の内容、沙都子ちゃんの叔父さんの帰宅など、いくつかのイベントを除けば、ほとんどが共通するそうです。」
<レナ
「……だとすると、…………新しい疑問がいくつか湧きますね。まったく同じ環境で語られる物語なのに、なぜああも違う物語に派生するのか。」
<大石
「一般的なサウンドノベル的に考えると…物語が派生する分岐点が存在したってことになりますね。」
<監督
「綿流し編で言うと、…お姉に人形を渡さなかった、という辺り?」
<詩音
「……あんな序盤の選択肢一個でバッド確定とは…恐ろしい選択肢だねぇ!」
<魅音
「では……うーん。祟殺し編の場合ですと、…叔父を殺そうと決意する辺りですかしら。」
<沙都子
「私はずっとそれ以前。…愛人がトラブルで失踪して、叔父が雛見沢に帰ってくることになった辺りから、もう分岐しちゃってると思うわね。」
<鷹野
「……では一番最初の、鬼隠し編の分岐はどこなのですか。」
「やはり、…劇中の私が登場して、オヤシロさまの祟りに関する連続怪死事件のことを話す辺りからだと思いますね。」
<大石
「………今、思ったんですけれど。…ちゃんと圭一さんが魅音さんにお人形をあげて。それで大石さんも私の叔父さんも現れなかったら、……何も起こらずに平和に過せるってことなんじゃありませんの?」
<沙都子
「…へぇ……。沙都子にしちゃ本質ズバリじゃないのよ。確かに! 言えてる!」
<魅音
「じゃあ、この暗ぁい物語は、大石さんと叔父さんが現れないことを祈りつつ、園崎さんのご機嫌を損ねないようにすれば、みんな幸せになれるということなのかしら。」
<鷹野
「や〜〜い、お姉、バッドエンド要員〜!! みんな気をつけてね〜! お姉の機嫌を損ねるとバッドエンド確定ですよ〜!!」
<詩音
「な、何よそれぇえぇえ!! 詩音んんん!! あんたにゃ次は容赦なく釘を打つからね!! もうガシガシにー!!! 待てこらぁあああぁあ!!」
<魅音
「あははははははは。…これまでの物語の謎は全然解けないけど、どうやったらこの物語が大団円で終わるかの、グッドエンドの推理はできちゃいましたね。」
<レナ
「………本当に、…それで幸せになれるんでしょうか。大石さんと北条鉄平さんの不登場。魅音さんのお人形の件。…本当にそれさえ気を付ければいいんですかね。」
<監督
「そうそう。…みんなはひとつ大きな最後を忘れてるよ。雛見沢大災害という天災を忘れたかい?」
<富竹
「天災は…防ぎようがないですわよ?! 村のみんなにガスマスクを配って引越しでもしますの?!」
<沙都子
「……あれはきっとオヤシロさまの祟りなのです。だからオヤシロさまを怒らせないようにしなければならないのですよ。」
<梨花
「なっはっは! ややこしい話になってきましたね。つまり、オヤシロさまも怒らせてはダメ、と。オヤシロさまを怒らせないにはどうすればいいでしたっけ。」
<大石
「ダムの計画そのものがきっと駄目なんでしょうね…。ダム計画がそもそもなければよかったんじゃないでしょうか。」
<知恵
「それは…難しいわよね。…だとしたら、お怒りになったオヤシロさまを鎮める儀式が必要ね。」
<鷹野
「鬼ヶ淵の沼に生贄を沈める…生贄の儀式、ですね!」
<詩音
「…い、生贄って、…誰を生贄にするんですか?」
<レナ
「そりゃー決まってるでしょ。どんな分岐にも関係なく死亡が確定している人だよ!
どうせ死ぬなら、雛見沢の為の人柱になってもらわなくちゃね!」
<魅音
「……あー…、…その死亡が確定している人って、…やっぱり僕のことかな。」
<富竹
「やっぱりジロウさんは…この物語に欠かせない重要な役割の人だと信じてたわ。お役目を立派に果たしてちょうだいね☆」
<鷹野
「これで…今度こそ、グッドエンドの大団円シナリオの青写真ができましたね。せっかくだからちょっとやってみましょうか。役者は全員そろってることですしね!」
<監督
まずは…愛人に逃げられた北条叔父が、雛見沢へ戻るのを阻止!
「やぁ、私が北条叔父ですよ〜。(立ち絵がないので代役です☆)、愛人に逃げられてロンリーブル〜♪ 早く雛見沢に帰って、沙都子ちゃんを拉致監禁してハァハァに調教してご奉仕メイドですよ〜〜♪
では雛見沢にバイクで帰りますか。キーを入れて、カチっと。
……カチ?」
<監督
「成・敗ッ!!
灰塵に帰せでございますわよー!!!」
<沙都子
「さ、沙都子ちゃん、火薬の量、多過ぎじゃないかな…。」(監督、大丈夫かな…(汗))
<レナ
次に大石の登場を阻止!!
「今度は私ですか。んっふっふ! 私の名前はクラウド・大石☆
ジャジーでブルースな感じがだいぶイケてるナイスミドルですよ。
むっふっふ!」
<大石
「……み〜! 成敗なのです。」
<梨花
「そして忘れちゃいけないのがお姉へのアフターフォロー!
ささ、お姉! かわいらしいお人形さんですよ〜☆ よかったでちゅね〜!」
<詩音
「ぅぅ、何だか納得いかないぃいぃ!!!」
<魅音
「で、………最後にオヤシロさまの怒りを鎮めなくちゃならないと。」
<富竹
「では、…最後のお役目、よろしくね。」
<鷹野
「ふん縛って、簀巻きにして、吊るして! 3日かけて沈めるんでしたっけ?」
<大石
「面倒くさいですから、ここは一気にいっちゃいましょう〜!」
<監督
「がぼがぼがぼがぼーー!!!!」
<富竹
<ひぐらしのなく頃に〜完〜>
>>スパパパパパパパパパパパン ドガガガーン!! とレナがフリッカーでその場の全員を成敗するというエフェクト
「あははははは…、何でかなぁ☆ 突然、私の腕が光って唸って、大変なことに☆」
<レナ
「……屍累々で大変なことになってますのです。」
<梨花
「あれ? 電話だ。
………もしもし? あ、圭一くん?! お疲れさまですー!」
<レナ
「おうおう、相変わらず大盛り上がりみたいじゃねーか。こっちは次回の台本読みで相変わらず忙しいってのにー!! まぁいいや。今日の俺は機嫌がいいから嫌味はなしにしてやるぜ。……詩音はいるか? 出してくれ。」
「あれ? 今ここで発表しちゃうんですか? もう少し秘密にしたかったけど、まぁいいか。」
<詩音
「詩音さんと圭一さんの二人っきりの秘密ですってぇ?!」
<沙都子
「なななな、何よそれぇえぇええぇえ?! 聞いてない聞いてない聞いてなぁああぁいッ!!」
<魅音
「じゃあ圭ちゃん、私と一緒に言いましょうね。せーの!」
<詩音
「「「え、えぇええ゛ぇえぇえー?!?!」」」
「…まぁつまりはそういうことです。初登場以来、断トツの人気ナンバーワン。
双子姉妹の遅れ登場妹は絶対に人気が出るってのは、東鳩の時代から決められたお約束ですしー♪」
『ワケわかんねーことはどうでもいいよ。とにかく俺は次回に限り、主人公のお役御免! 風の噂じゃ、とうとう俺にも立ち絵が実装とか?! ひゃっほ〜い!!』
「まー、圭ちゃんの立ち絵なんてディスク容量の無駄遣いもいいとこですからね。ディスク1枚に納まらなくなったら、バッサリ没になる可能性激大ですけど。」
<詩音
「……でもいいんですの詩音さん? 主人公は毎回、ろくでもない最期を迎えると決まってましてよ?」
<沙都子
「くっくっく! まぁ、これまではね。でもね、次回からは必ずしもそうはならないんですよねー。」
<詩音
「『ひぐらしのなく頃に』も、今回の祟殺し編で3作目。ミステリアスな謎を次々と提示してきた前半部はここで折り返しになり、
次回からはこれまでの謎を解決していく後半部、究明編(仮称)のスタートとなります。」
<レナ
「つまり、私が名探偵になって、理不尽な謎をバスバス解決していく痛快ストーリーなわけです。今のうちから決め台詞を考えておかないとねー! あなたを、犯人です。みたいな〜☆」
<詩音
「納得行かない納得行かない!! 御三家の秘密に近付きすぎて、監禁されて拷問されて! 非業の最期を遂げる役に決まってるー!!」
<魅音
「お姉こそ、私に全ての謎と秘密を看破されて、謝罪の言葉を口にしながら自害なされる心の準備はOKですー?」
<詩音
「……オヤシロさまの祟りの可能性はナシなのですか?」
<梨花
「さて。その後半部の新シナリオ、仮称「目明し編」は現在鋭意製作中です。近い将来、皆さんに公開できると思いますので、どうか楽しみにしていただければ幸いです。」
「………「鬼隠し編」「綿流し編」そして「祟殺し編」。この3つのシナリオを重ね透かし、皆さんにはどんな真実が見えてくるでしょうか。……推理はまとまるどころか、ますます煙に巻かれていくだけ? う〜〜ん、あははは。レナも全然わからないです。あははは…。」
「この3つの謎に挑み、どんなに辛くとも挫けることなく戦い続けてくれた全ての方に。……その熱意に感謝するために、本来お送りする予定でなかった最後のシナリオをお送りします。どうかお楽しみ下さい。」