ひぐらしのなく頃に 「綿流し編」TIPS&お疲れ様会
1■魅音のバイトって?
(学校での日常会話の雰囲気で)
「うん。ごめん。今日はさ、急に叔父さんの店のバイトが入っちゃってさ。」
「なんだなんだ。じゃあ今日の部活はお流れってわけか。」
「いやぁ、あっはっは、申し訳ない…!」
魅音は拝むように両手を合わせると、にやっと笑ってみせる。
「そんなに部活がやりたかったら、おじさん抜きでやってもいいけど? 部活ロッカーにゲームがいっぱい入ってるからさ。どれか適当に選んで。」
部活ロッカーってのは、いつも部活の時に魅音がゲームを引っ張り出してくるあの四次元ロッカーのことだ。
あの、清掃用具入れよりもさらに一回り小さいロッカーの中に、どうしてあれだけのたくさんのゲームが詰め込めるのだろう…。
のみならず、罰ゲーム用の怪しげなアイテム(衣装?)までたくさんたくさん…!
整理するために床に並べたら、きっと教室の床中が埋まるに違いない。
「……やめとく。俺がいじったら、ロッカーの中身がドサドサーッて溢れてきそうな気がするよ。」
「あっはっはっは! う〜ん、そうだねぇ。素人は手を出さない方が無難かもしれない。くっくっく!」
魅音は、それが出来るのが部長の所以だとでも言わんばかりに大笑いした。
「……魅ぃ。先生が体育倉庫のカギを探してますですよ。心当たりはありませんですか?」
「はれ? …私、職員室に返さなかったっけ?」
そう言いながらごそごそとポケットをまさぐる魅音。
……表情から察するに、職員室に返したつもりでいるものは、どうやらそこに納まっているらしい。
「ほぅらやっぱり魅音さんですのよ〜! 私、絶対絶対ぜーったいそうだと確信してたでございますわー!」
「……ボクも大正解なのですよ。沙都子と一緒に大正解なのです。」
きゃっきゃと手を打ち合わせて沙都子と梨花ちゃんが喜び合っている。
「やかましい!」
ガスン! ゴスン!
沙都子と梨花ちゃんの頭に肘を叩き込むと、魅音は職員室へ向かっていった。
「あ、そうだ。二人とも聞いたか? 今日は魅音、バイトがあるから部活はお休みだとさ。」
「あら、そうなんですの?! それはつまらないでございますわね。」
「……みぃ。」
<笑顔でないデフォ顔です
二人ともつまらなさそうな顔をする。
…何だかんだ言っても、魅音の部活は学校に来る一番の楽しみなんだよな。
それがお流れになるとわかったら、そりゃー憂鬱になるのも頷ける。
「魅音ってバイトをやってるんだよな。…あいつ、一体何のバイトをしてるんだ?」
魅音が部活を中止する時は大抵、バイトが理由だ。
だが、毎日通っているにようには見えないよな。
2〜3日、連続で行く時もあれば、全然行かない時もある。
…そんないい加減なアルバイトなんてあるんだろうか?
「……別に、決まったお店でお勤めをしてるわけではないのです。」
「決まってないってことは…、じゃあ日雇いってことなのか?」
魅音が足袋にヘルメットで、工事現場で汗だくになって……。…想像がつかん。
「魅音さんは叔父さんの店にお休みが出たりすると応援に駆けつける、便利屋さんなんだそうですわ。」
「あー…、なるほどな。そう言えば、叔父さんのとこでバイトなんて話。前にも聞いたことがあるような気がする。」
「……お店を持ってる叔父さんがいっぱいいるので、魅ぃは引っ張り凧なのです。」
お店を持ってる叔父さんがいっぱい? いっぱいいるのか?
「あら、圭一さんはご存知ありませんの? 興宮には魅音さんの親戚の方がやってるお店って結構いっぱいありますのよ?」
「へー…。そりゃ知らなかった。…そんなにいろいろあるのか?」
「えぇ。パン屋さんとか八百屋さんとかラーメン屋さんとか。他にもまだまだ。あの部活をやったおもちゃ屋さんもそうなんですのよ。」
ちょっと絶句。……それは…すごいな!
「…魅音の一族って何気に商才があるんじゃないのか? それだけいろいろあるってのも何だかすごいよな!」
「……他にも、サラ金屋さんとか、地上げ屋さんとか、イメクラ屋さんとか、ソープランド屋さんとか。いろいろやってると言ってますです。」
何だか妙なのも飛び出してきたが、まぁとにかく! 手広いのはよくわかった。
「あいつに小銭を借りると、妙に返却期限にうるさいのは、サラ金屋の血が流れてるからかー。納得納得!」
「……魅ぃにお買い物代を借りたことをコロリと忘れてしまったら、耳を揃えて返さんと身売りして風呂に沈めたるどーと凄まれましたのです。」
………梨花ちゃんが借金のかたに特殊な風俗業界に身売り…。
……あ、やべ、…鼻血〜☆
「お風呂に沈められて溺れ死ぬなんて、おマヌケにもほどがありますわね〜!」
……は?
…こいつ、よく意味がわかってないな…?
今どきなかなか初々しいヤツ。
俺と梨花ちゃんが沙都子の頭をなでなでしてやる。
「…?! …な、なぜ撫でられるんですの?! …?!」
「……沙都子はいい子さんですから、なでなでなのです。」
沙都子は意味がわからずうろたえていたが、馬鹿にされたことだけは理解しているようだった。
2■詩音って本当にいるの?
「は? 魅音さんの家族?」
「あぁ。もっと平たく言えば、あいつに兄弟とかいないのかなーって思ってさ。」
詩音という双子の妹は実在するのかなと思い、…好奇心に負け、こっそり沙都子に聞いてみた。
「…う〜ん。…どうなんでございましょうねぇ…。いるやらいないやら…。」
何だか歯切れが悪い。
…沙都子は魅音の家に何度か遊びに行ったことはないのかな?
「その反応からすると、…会ったことがないみたいだな。」
「えぇ。お婆さん以外にはありませんですわ。」
この反応を見る限り、…詩音実在説には早くも暗雲だな。
「そういうのは梨花が詳しいですわよ。梨花に聞いて御覧なさいですわ。」
沙都子が日向ぼっこをしている梨花ちゃんに手を振る。
「梨花ぁ。魅音さんのご家族のことをご存知ですの?」
突然な質問に梨花ちゃんはきょとんとする。
「……魅ぃには家族や親戚がいっぱいいますですから、全部はなかなかわからないのですよ。」
「そんなにたくさんいるのか…。例えばさ、…うーん、園崎詩音ってヤツはいるのか? えーと、その、…聞き間違いかもしれないから、ひょっとすると実在しないかもしれないんだけど…。」
「……詩ぃですか? 詩音はいますですよ。」
え?
これは意外だ。実在したのか…!
「ふ〜ん? よく似た名前ですのね。間違えて舌を噛んじゃいそうですわ。」
「……魅ぃの双子の妹さんだと聞いたことがありますですが、あまり会ったことはないのです。」
梨花ちゃんも知ってはいるが、あまり会ったことはないという。
「……何年か前に、法事の集まりがあった時に会ったような気がしますですよ。」
「このクラスにいないってことは、学校は興宮の方に通っているってわけかな。」
「お家も興宮なのかもしれませんわよ。だって、魅音さん自身、家族とは別でお婆さんと暮らしてるわけですから。」
両親と別居してるのか? それは何だか変わってるな。事情でもあるのかな?
「……とてもややこしいお家なのです。」
「親類の数が多いらしいですから。きっといろいろと都合があるに違いないのですわ。」
とりあえず詩音という双子の妹がいることだけはわかったが、その家族構成は、本人同様、なんともミステリアスなようだな…。
「お、3人揃って何の話だい? おじさんも混ぜてよー。」
「あら、魅音さん、いいところへ〜! 魅音さんに双子の妹さんがいるってのは本当でございますのー?」
あ、…魅音、…まずい…。
「…い、…妹…?!
え、と………、う、うん。いるよ…。」
魅音が柄にもなく赤面しながらうろたえる。
…何となく俺の様子を伺っているような……。
「あら〜! それは知らなかったですわ〜! どんな方なのかしら。ぜひ一度お顔を見てみたいですわねー!!」
「会わない方がいいよ! ぜ、全然可愛くないし! 生意気だし! たまに電話で話すくらいで…私もしばらく会ってないし…!」
……どうしてこんなに狼狽しながら話すんだか…。
こんな様子じゃ、昨日の詩音は実は偽者でしたーって公言してるようなもんだぞ…。
とりあえず面白いのでしばらく放って置くことにする。
…詩音という名のもうひとりの魅音。
…またあの店に行けば会えるのだろうか?
魅音と同一人物であると知りながら、まるで新しい友人と知り合ったような、そんな不思議な感覚があった。
2■エンジェルモート紹介記事
闘撮必勝ガイド4月号「征服徹底解析(ファミレス編)」より転載
そしていよいよ、激アツの3日目。
××県鹿骨市という辺境にありながら、マニア垂涎の超有名店がこのエンジェルモートだ。
なぜにも名店はこうも人里を嫌うものなのか…。闘撮の神の試練としか思えない。
地元では美味しいデザートで知られるレストランだが、我々には知ったことじゃない!
高いデザートが食いたければ不○家系にでも行けばいい!
我々の目指す甘いデザートは食べるものではなく……制服の方なのだー!!
芳しき汗の芳香を漂わせ、その着用を強要されたウェイトレスの制服は、もはや公然の拘束具と言ってもいい!
こんな羞恥プレーが全国の制服のかわいいお店で堂々と行なわれているなんて?!
出撃せよ!
闘撮ハンタァアァアァアー!!
★喫煙席こそMAXポジション? タコ粘りでチャンスを狙え!
竜「昨日は席取りで失敗しましたからね。
今日こそ究極の黄金席、喫煙席の角ボックスを狙います!
一般にヲタクは禁煙席が圧倒的に多いんですよ。ですから喫煙席の方がゆとりを持って射界が取れるんです。」
さすがはハンター竜。
勝負は座る席の時点で決するとでも言わんばかりだ。
実際に竜は、初日の秋葉原の××××××でも同様の戦略で高設定席のゲットに成功している。
この日もランチタイムを外した昼下がりに、狙い席の空きを確認の上、楽々ゲット。
メニューを小出しに頼むなどの小技で確実にエンゲージの機会を増やしながら闘撮のチャンスを伺う…。
だが…やはり前日のアレ(※1)がたたったのか、闘撮の神は微笑まない!!
3時に一度、手堅い連チャンを取りこぼして以降、チャンスはまるで訪れない。
4時過ぎからはオーダーも男が取りに来るようになり、完全に見抜かれた様子…。
マークされたら潔く撤退が暗黙のハンタールール……。
竜「狙いは完璧だったんですが…、あの2時半にやったフォーク技が裏目ったようです。
…ボックスシートでバッグ床置きはやはり警戒されたかなー…。もうボストンバッグに隠しカメラは化石技かも…。
半日粘って2桁EGなら充分な高遭遇率なんですが。…無念です。」
それでも何とかお宝ショットを数枚ゲット。
…さすがはハンター。
不調をぼやきながらもこのナイスアングル。
職人である。
しかし驚くべきは、今回の制服大征服日本縦断(ファミレス編)、何とまだ検挙者なし!
全国の都道府県警の約半分にお世話になったと豪語するハンターには幸先のいいスタート?!
※1 前日のアレ
前日にハンターが挑んだ、名古屋の巫女割烹××。
なんとハンターは意気込み過ぎて入店と同時に店側に看破され、初めからボックス配置の宮司待遇。
半日粘るも、とうとう巫女さんは1stオーダー時にしか現れなかったのである…!
ハンターにあるまじき大ポカ!!
というわけで毎度激好評のハンター生写真のプレゼントコーナー!!
ハンター直選の、エンジェルモート制服をローアングルから食べ放題生写真3枚セットを、熱い読者1名にプレゼントだ!!
激アツ写真で君も今日から闘撮者!!
3■ごちそうさま
「おい、魅音。これ。」
「わ、な、何よ圭ちゃん…!」
魅音の鼻先に、昨日、差し入れてもらった弁当箱を突き出す。
「昨日、差し入れてもらった弁当箱だよ。ごちそうさま。うまかったぜ。」
「…ふぇ、…………あ、……、」
…魅音の顔がぱーーっと薄く赤くなっていく。
……おいおい、弁当を持ってきてくれたのは詩音ってことになってるんだろ…。
魅音状態の魅音が赤くなってどうすんだよ…。
このままじゃ、勝手に墓穴を掘って自爆しかねないので、一応フォローしてやることにする。
「あのな。俺、昨日、腹を空かせてたらさ。詩音がわざわざ家まで来て弁当を差し入れてくれたんだよ。で、これはその弁当箱。ちゃんと洗ってあるからな!」
「あ、……あはは、そ、そうなんだ! 詩音は気が利くね〜!」
白々しい仕草だなぁ。
…魅音ってこんなにも嘘の下手くそなヤツだったっけ。
…だがそんないつもとは違う表情がなんだか、…不思議とかわいらしく見えた。
「で、ど、どうだった?」
「…魅音に瓜二つなヤツだと思うぞ。だって双子なんだろ? 似てて当然だよ。」
「えっと、……じゃ……じゃなくて…えぇと……。」
魅音がなんだかぽー…っとした表情で、何かの答えを待っている。
…どうだった?って聞いたのは、詩音の容姿じゃなくて、弁当の出来についてかな…?
「あぁ、もちろん! うまかったぜ。」
「…え、……あ、…本当に?」
「俺は食い物の感想には嘘はつかないぞ。俺がうまかったって言ったら、誰が食ったってうまい! 万人にお薦めできる評価だと思っていいぞ。詩音に実に美味しかったって伝えておいてくれ。」
「あ、……う、うん! 詩音にね! 伝えておくよ! きっと喜ぶと思うよ…! あはははははは…!」
魅音でなく、詩音にもらった弁当ということになってるのに。本当に…心の底から気持ち良さそうに笑った。
…こいつも、こんな見てるだけでこっちも気持ちよくなれるような笑い方ができるんだな。そんな嫌みが口を突いたが、そのまま飲み込むことにする。
魅音が弁当箱をカバンに入れようとして、カラカラと音がするのに気付いた。
「……圭ちゃん、何か入ってるよ? あれ?
……………………わぁ……。」
げ、…こいつ、この場で開けやがった…!
その中身はちょっと恥ずかしいので、ここでは開けてほしくなかった。
慌ててそれを隠すように手で覆う!
「えーと…えーとな! これはだな、うちのお袋がお礼に入れとけって言ったんだ! 別に俺のセンスじゃないんだからな! 誤解すんなよ!!」
「……きれい…。飴だ…。」
ピカピカの弁当箱の中にはきれいな包み紙で包まれた飴が一握り入れられている。
…昨日、流しで弁当箱を洗っていたら、お袋に「詰問」され、誰の差し入れかを白状させられたわけだ。
そしたらお袋が、こういうのはお礼を入れて返すもんなんだって言い出して。…俺は恥ずかしいのは嫌だし、こんなのはセンスじゃないしって抵抗したんだけど…。
「……と、…いうわけなんだ。…まぁその、…ぅぅ……。」
顔から火が出るほど恥ずかしい。
…いっそ、いつもの魅音に笑い飛ばされた方がマシなのだが、…なぜか魅音は陶酔した表情で弁当箱の中の飴玉を見入っている。
「……あ、…ありがとう。」
「お、俺に言うな。入れたお袋に言ってくれ! そそ、それに魅音がお礼を言う必要なんかないんだぞ?! それは詩音にあげるものなんだからな?!」
「…………あ、…ぅん。そうだよね…。…うん。詩音に伝えておくね! きっと詩音もうれしがると思うよ。」
魅音がちょっぴり残念そうな顔をしながら弁当箱のふたを閉じる。…結果的に、少し意地悪なことを言ってしまったようだった。
(時間経過のコマ)
「今日は何だか魅ぃちゃん、ほんわかな感じだね。いい事でもあったのかな。かな!」
「…風邪でも引いたんではありませんの? お顔が赤いのはきっと微熱のせいでしてよ。
………って、梨花。なんで私の頭をなでますの。」
「……沙都子もきっとその内、お風邪を引けるようになりますですよ。」
…なでなで。
4■三人組の顛末
「ンで俺たちが逮捕されなきゃなんねぇんだらぁあぁッ!!!」
「すッとらってンじゃぇえよ!! 離さんかいごらあッ!!!」
「熊ちゃん、腕を放してあげていいですよ。さささ、どうぞおかけになって。」
熊谷くんたちがが相当キツく腕を締め上げていたらしく、3人は痛そうに腕をさすっている。
「なっはっはっは…。お兄さんたち、誤解しないで下さいよ? 別に逮捕したわけじゃないんだから。熊ちゃん。冷蔵庫から冷たいの出してあげて下さい。お兄さんたちは泡の出る麦茶と出ない麦茶、どっちがいいです? んん?」
応接用のソファーにどっかりと座り、怒鳴りこそしないものの、相変わらずの険しい表情だ。…う〜ん、若さが羨ましい。
「飲まないなら私、勝手に飲んじゃいますよ? 失礼して、プシッと。……ん〜〜〜!!! 勤務中に飲むビールが一番おいしいですねぇ〜!」
ビールをうまそうに飲んでみせると、顔を見合わせ、ようやく缶に手を伸ばしてくれた。
…警戒は解かないが、さしあたって断る理由も見当たらないという感じだ。
3人がそれぞれ缶を開け、中身を口にし始める。
「お兄さんたちはどっから来たんです? ここいらの人じゃないでしょ。んっふっふっふ!」
顔を見合わせ、言うべきかどうか訝しそうな顔をする。
「お兄さんたち、大学生? お友達同士? バイクか何かで旅行中だったんでしょうかねぇ。羨ましいなぁ!」
「……………………………。」
「家は近くってわけじゃないんでしょ。どこから来たの。大阪ですかな?」
「ンなの、どこでもいいだろ。」
「まぁまぁ、そう凄まないで。あのままいたら、お兄さん方だってヤバかったでしょ?」
先ほどの、刺激の強かった出来事をめいめいに思い出しているようだ。
…学生とか不良グループとか、そういうのに囲まれるなら理解もできるだろうが。
…老若男女取り混ぜての、地域の人間たちに囲まれるって経験はなかなかないはず。
それはきっと、かなり怖かったことだろうと容易に想像がつく。
「ここいらの人間なら、どんな間違いがあっても雛見沢の人間には手出ししないですよ。……あそこの連中は特殊なんです。子供の喧嘩に親は出てくるな、なんてモンじゃない。……1人をいじめたら、それこそ村中が総出でやってきますよ。いやホント、脅しでもなんでもなく。」
反論はない。
…実際に目にし、囲まれたのだから疑いようはない。
「ここいらじゃあね。雛見沢の人間に睨まれたら、あっさり「鬼隠し」にあって消えちまうんです。もう跡形もなく忽然と。…兄さん方、行方不明になったら誰か捜索願いを出してくれるご家族はいます? いないならまずいな。蒸発扱いですよ。んっふっふっふ!」
さっきだって、私たちがいいタイミングで来たから事無きを得たが、もうちょっと遅れてたらまずかったかもしれない。
路地裏なんかに引き込まれてたら、…今頃このお兄さんたちはソファーじゃなく、検死室にいたかもしれないですしね。…んっふっふ! なんちゃって…。
まぁ何しろ。…死体が見つかる内は、まだかわいいかもしれないなぁ。
「…お兄さん方、興宮へは何で来たの? 電車? バイク?」
「……バイク。」
「そりゃまずいな。さっきのとこにまだ停めっぱなしなんでしょ? あんたら、ノコノコとバイクを取りに戻ったら、今度こそ袋叩きにあいますよ。」
「な、……何だよそれ!! 上等じゃねぇかよぉおおぉッ!!!」
落ち着いて落ち着いて…。
何ですぐ叫ぶんですかね、最近の若者は…。
「あんたらももう面倒ごとはごめんでしょ。バイクのナンバー教えて下さい。ここまで持ってきてあげますから。…熊ちゃん、交通禍対策にゲート車を借りてきて下さい。」
「うっす!」
「べ、別にいいよ…! 自分たちで取りに行くからいいって!」
「あんたら、本気で囲まれたいんですか? 今度は警察、間に合わないかもしれませんよ?」
「………………………。」
「大丈夫だッつってんだらぁ?! 囲み上等だよ!!」
「おい。お兄さん方。あんたら、今、泡の出る麦茶飲んだろ。…エンジン掛けてみろ。その場で飲酒取るぞコラ。」
「…き、…汚ぇえぇえぇ…!!」
「警察が税金使って、兄さん方のバイクをお運びして進ぜようって言ってんだよ。ごちゃごちゃ言わねぇで、ナンバー言えってんだこの糞馬鹿野郎。」
3人はナンバーを伝えるのを渋る。
…買ったばかりだから、ナンバーをよく覚えてないとか何とか、ごちゃごちゃ言っている。
………まー、そんなことだろうと思った。は〜〜…。
「熊ちゃん。ゲート車に同行してバイク持ってきてあげて。ヤマハのごつい赤いヤツと、テールランプの右側が割れたヤツ。あとシートにガムテ貼ってあった白いヤツ。それだろ? 兄さんたちのバイク。」
返事なしだが、正解ってとこかな。
「大石さん、ゲート車来ましたんで、行ってきます。」
「ハイハイ、よろしくお願いします。あと熊ちゃん、ちょっとちょっと。」
「なんすか。」
「ナンバー照会しといて下さい。間違ったバイクを持ってきちゃうと悪いから。」
3人の顔色が変わる。
…わかりやすい連中だなぁ本当に…。
「バイク戻ってくるまでのんびりしてましょうよ。ビールもっとありますよ? 乾き物だってありますし。テレビ見ます? ろくなのやってませんけどね。」
「いいよ、俺たちもう行くから。こんなとこにいつまでもいたくねぇよ!」
いつの間にか、大柄な署員たちが5〜6人も集まってきている。
明らかに威圧の目で彼らをソファーに釘付けにする。
「…な、…なんだよ!! 俺たちが何かしたかよッ!!」
盗難バイクで恐喝行脚か。…暇な学生さんだ。
5■初めましてじゃないです
「…だから初めましてじゃないですって! 昨日まで毎日、お会いしてたじゃないですか。」
「……もういい。お前がそうだって言うならそういうことでいい。」
詩音の家の人がワゴン車で迎えに来てくれた。
俺は一応は断ったのだが、詩音に押し切られる形で、自転車ごと押し込まれたのだった。
車は今、一路、雛見沢へのでこぼこした道を走っている最中だ。
詩音ってヤツは…どうやら魅音と同じか、もしくはそれ以上の役者らしく、どう問い詰めてものらりくらりとかわす。
「しかし……そっくりだなぁ。魅音みたいに髪を後ろで結んだら、やっぱり魅音そっくりになるのか?」
「さぁ。試せばそうなるんじゃないですか? 私たち、筋金入りの一卵性ですから。昔は服を取替えっこしただけで、誰も見破れなかったものです。お姉と一緒にことあるごとに入れ替わって、いろいろと騙したりしましたっけ。あははは!」
運転していた初老で黒スーツという、まるで執事とでも言わんばかりの男が深くため息を吐く。
「なぁに、葛西。そのふかーいため息は。」
「失礼しました。……昔から変わられないなぁと思っただけですよ。」
バックミラー越しに、運転手の男のふかーい積年の苦労が見て取れる。
「それより、圭ちゃんの家ってこっちでいいんですか? 葛西は園崎本家への道以外は雛見沢をよく知らないから。任せておくと谷河内辺りまで走ってっちゃいますよ。」
「そ、そりゃ困る! …すみません、次の右に入る細い道のところで停めてください。そこまでで結構です。」
望みどおりの場所で車を停まる。
葛西さんと呼ばれた運転手が荷台から自転車を下ろしてくれた。
「あ、…どうもすみません。今日は送ってもらってありがとうございます…。」
「圭一さんでしたか、お名前。」
「え、あ、はい。」
「……いろいろと災難はあると思いますが、そのうち飽きると思いますので、どうかそれまでご辛抱下さい。」
深いふかーい同情の顔。
……このおっさん、きっと園崎姉妹が幼かった頃からいろいろと苦労してきたに違いない。
「ですが、魅音さんと同じで、根はやさしい方なんですよ。」
「…それはつまり、魅音並に迷惑をかけるヤツだ、ということですか。」
おっさんは笑顔を凍りつかせたまま、二の句を失っている。…おい、少しはフォローしろ。
「じゃあね圭ちゃん! また会いましょうね。姉にもよろしくお伝え下さい。私も明日から雛見沢の学校に通おうかな。」
「絶対に来るな。詩音が転校して来たら、俺が興宮の学校に転校するから。」
「わ、それはすごくひどいことですよ、圭ちゃん…!」
短くクラクションが1回。おっさんが運転席から小さく手を振る。
車は砂塵を残しながら、暗い夜道を引き返していった…。
…………もう本当に、…わけのわからん一日だった。
…俺が詩音といるところにばったり出くわした魅音の、豆鉄砲を食らったハトのような顔が、今さらだが何だか印象深かった。
7■スクラップ帳よりT
<オヤシロさまの祟りについて>
古代鬼ヶ淵村では、オヤシロさまの怒り(祟り)は何よりも恐れられていた。
だが、オヤシロさまが怒ると最終的にどのような神罰(祟り)が下されるのかは記述が少ない。
伝聞から調べる限りでは、「地獄の釜が開く」「鬼が溢れ出す」「地獄の瘴気が溢れ出し、村人たちことごとく逃れることも叶わず、息絶えるなり」といった、村の全滅を想起させる物騒なものが目立つ。
これらの恐ろしい神罰は、その他多くの宗教の終末(地獄)表現とほぼ同じで、これを回避するために教義に従わせようとする方便だと容易に想像できる。
オヤシロさまの怒りに触れる条件が、イコール鬼ヶ淵村における禁忌(タブー)と言えるだろう。
この禁忌を犯す行為が行なわれた時、オヤシロさまは「怒った」と称され、その怒りを鎮めるために、前述の「生贄の儀式」が行なわれたと考えられる。
7■スクラップ帳よりU
<生贄の儀式について>
生贄の儀式は、最もシンプルな溺死型で、神聖な沼である鬼ヶ淵沼に犠牲者を沈めることで成立した。
鬼ヶ淵村における儀式で特徴的なのは、犠牲者を三日三晩もの長い時間をかけてゆっくりと沈める点にある。
犠牲者を沈めて「殺す」ことよりも、「沈める(鎮める)」行為に重きが置かれていたと考えられる。
その為、放って置けばあっという間に沈んでしまう犠牲者をいかに緩慢に沈めるかに、様々な工夫が凝らされたはずである。
残念だが、その方法は知る限りの文献には載せられていない。
私の想像では、丸太等で巨大なイカダを組み、そこに処刑台を設え、縄で犠牲者を吊り上げ、時の刻みに合わせて少しずつ沼へ沈めていったのではないかと思う。
だがそうだとするのならば、その儀式に使った「祭具」は神聖なものとして崇められ、どこかに祀られていてもおかしくない。
7■スクラップ帳よりV
<儀式の祭具について>
古代の宗教儀式に用いられた儀式道具は「祭具」と呼ばれ、その一部が今日も古手神社や御三家の蔵に祀られている。
だが、それらの確認できる「祭具」はいずれも装飾的なものばかりで、鬼ヶ淵村の暗部を司る儀式に使用されたと思われるものは何一つない。
幕末から明治にかけ、数々の伝統儀式が喪失した際にそれらも紛失、もしくは闇に葬られてしまったのだろうか?
私はそうは思わない。
鬼隠しの夜の宴に使った「祭具」も、生贄の儀式に使った「祭具」も、人知れずそれらは祀られ、現存しているに違いない。
それは紛れもなくこの雛見沢に、今日この瞬間にも実在しているのだ。
それがどこに祀られているか、九分見当はついている。
これまでは堅牢だった施錠が、今年からどういうわけか低廉な安っぽい南京錠に変わったのだ。あの程度の錠前なら、彼なら何とかできるかもしれない。
だが、集会所が遠くないということもあり、常に人の気配の絶えない場所でもある。
だが私は諦めない。
…雛見沢中の全ての村人の死角となる夜が、もうすぐやって来る。
もうすぐ、綿流し。
7■いよいよお祭り
ざわざわざわざわ…。
「おいおい、今日のうちからへばっててどうすんだよ。本番は明日だぞー? 明日は最後の最後、ばっちり深夜まで燃え上がっていくんだからなー?!」
「ぅおっす! 気合い入れてきまっす!」
「わっはっは! よぉーし! 若さが一番だ!」
「みんな、お疲れさん! 綿流しはいよいよ明日だからなぁ。今夜は早めに眠って体力を蓄えておいてくれよ!」
明日がいよいよ綿流し。
祭りってのは楽しむ側とそれを提供する側の2つがある。
前者に必要なのは心の準備だけだが、後者の場合は、心と体だけでなく、入念な打ち合わせや下準備が必要になる。
多くの一般参加者が能天気に祭りを楽しんでいる間、俺たちは緊張を維持し続けるわけだ。…何のために?
「そりゃあ決まってるだろ! 全部終わった後のビールがうまいからだよ。」
「わっはっはっはっはっは!!」
こういう時は体育会系のノリが一番!
打ち上げを楽しみに頑張らなきゃ張り合いがない!
「あ、来ました…!」
大石さんが入ってくる。みんなシャキっとして立ち上がった。
「はいはい、皆さん、お疲れさまですねぇ。あぁ、そのままで結構ですよ。」
「「「お疲れさまです!!」」」
普段威張っている先輩たちも、大石さんには頭が上がらない。
まるで一昔前の応援団員のような雰囲気で一礼する。
大石蔵人さんか。
内規などほとんど無視し、これといった働きもせず、日々をダラダラと過ごすいい加減な、退職待ち刑事。
下ネタの好きな下品オヤジというイメージのある人だが、先輩たちが言うには、若い頃は相当の武闘派で、かなりの武勇伝を持つとか持たないとか…。
…とにかく。一緒に入ってきた課長よりも貫禄も存在感も遥かに上だということは確かだ。
「皆さん、明日の綿流しの準備、本当にお疲れさんです。」
全員、直立で課長の訓示に耳を傾ける。
「昨年発生したように、連続事件を期待する愉快犯の出現が濃厚に危惧されます。各員、一層気を引き締め、犯罪の抑止のために任務を全うして下さい。」
「「「ぅおっす!」」」
「何も起こらなければ一番いいんですがねぇ。…ですが皆さん。必ず事件は起こると考えてくださいよ。抑止が一番ですが、まぁ多分無理でしょ。今年も誰かが死んで誰かが消えます。もー間違いなく。…んっふっふっふっふ!」
課長以外は皆、苦笑する。
「大石さん、…そんなんじゃ困るよ! もっと真剣にやってくれなきゃ…、」
「肝心なのは祭りの夜を越すことじゃないんです。…明日の夜、起こった何かに迅速かつ徹底的にどこまでも食いついていくこと。気合い入れてくよ?! ケツの穴、引き締めてけッ!! オヤシロさまの祟りのバケの皮を完璧に引っぺがしてやるぞぉおぉッ!!!」
「「「うおぉぉおおぉおぉすッッ!!!」」」
8■スクラップ帳よりW
<綿流しについて>
綿流しの儀は今でこそ、毎年6月に行なわれる村祭りだが、その原点を紐解くと、実に血生臭い儀式にたどり着く。
本来、綿流しは、一定周期に基づき、オヤシロさまの信託を得て「犠牲者」を選び出し、それを村ぐるみで誘拐(鬼隠し)し、儀式めいた方法で解体して食す人食いの宴であった。
(周期の法則には謎が多い。儀式の間隔が非常に不定期だからだ。天体を元にした吉凶によって決めているという説もあるが、説得力に乏しい。)
古代の鬼ヶ淵村の住人たちは自分たちが半人半鬼の仙人で、人間よりも高貴な存在であると固く信じ、それを内外に認めさせていた。
人間をさらい、それを食す行為は、食物連鎖における優位を示すために行なわれたのではないだろうか。
以下は仮説だが、綿流しの儀は、閉鎖環境である鬼ヶ淵村の内側に何らかの不満が募った場合のはけ口や、目を逸らすための目的で開かれた、政治的なイベントとも考えられないだろうか。
こうした目的で主に開催されていたとするならば、儀式の不定期性にも説明が付き易い。
8■スクラップ帳よりX
<なぜ祭具はこれほどまでに必要なのか>
「祭具」の具体的な形状についての記述はほとんど見つからない。
だが実在し、それも多種多様のさまざまな種類が存在していたことは間違いない。
一部の文献では、綿流しの儀に用いた祭具だけでも二百を数えると記されている。
ここでぶつかる疑問は、なぜ多種多様なものが必要だったかという点だ。
綿流しの儀は、鬼隠しによって誘拐した人間を解体して食すものだ。
そのための解体道具や拘束道具が考えられるが、それでも二百を超えるとは多過ぎる。
基本的に道具の進化は、ある到達点への模索である。
一定以上の効率に行き着いたなら、それ以上の進化は求められないのが普通だ。
にも関わらず、これほどまで多くの種が生み出されるのはなぜなのか。
時代と共に多様化する文化のひとつに娯楽がある。
娯楽に使用する道具は時間と共に進化し、多様化する。
一般的な道具と違い、到達点に至ることはすなわち行き詰まり(マンネリ)であり、次なる到達点を求め、いくつもの亜種にも分裂する。
では二百を超えると伝えられる「祭具」にも、娯楽性が宿っているとは考えられないか。
もちろんこれも仮説だが、人間を解体する過程が一種の娯楽(見世物)として扱われていたのではないだろうか。
観客を飽きさせないため、様々な、斬新で興味を惹く「祭具(解体道具)」が歴代の御三家当主たちによって、次々開発されていった…。そう考えられなくもない。
あの祭具殿の中に、それらが全て祀られているのは間違いない。
綿流しの夜まであと少し。
本来の意味が失われたとは言え、古式ゆかしい儀式の夜に祭具殿の神秘を解き明かせるのだ。
…胸の高まりが押えられない。
綿流しが、待ち遠しい。
8■後夜祭
緊張感の張り詰めた深夜の署内。
シンとした中、幾人もの署員たちが時計と電話を交互に見比べながら、息の詰まるような時間を過ごしている。
熊谷くんが若いのを連れて飛び込んできた。
「大石さん、こっちは検死入りました! じい様もさっき到着です!! 俺もスタンバイOKしました!! このまま岐阜へ直行します!!」
「熊ちゃん、ちょっと話がややこしくなりました。向こうは身元の判別が非常に困難な状態だそうです。」
「まさか、バラバラっすか…?!」
「いぃえぇ。
こんがりといい感じだそうで。」
ふざけた口調だが、意味するところは重い。
…署員たちのため息がもれる。
「頭のてっぺんからまるまる…?」
「ばっちり黒焦げだそうで。あぁ言う臭いってこもるんですよねぇ。岐阜さん、可哀想だなぁ。」
所持品ゼロでこんがり。しかも県外に捨てるとは…。
下手をしていたら1週間は身元確認が遅れていたかもしれない。
…それを今晩の内に嗅ぎ付けれたのは大きい。
「今、小宮山くんたちが興宮の歯科医を根こそぎ夜襲してます。カルテで歯型照合するしかないでしょ。…ごめん! 誰かウルトラマイルド、2箱くらい買ってきてくれません?」
若手が返事をし廊下へ飛び出して行った。
「……今年は見事、見つけましたね。…ひょっとすると、過去の失踪者もこんな感じで県外でバラされてたんすかね。」
「なら埋めればいいじゃないですか。重り付けて日本海でも琵琶湖でもいいですねぇ。」
「…でもどうして。…1人死んで1人消えるのがこれまでのパターンじゃないすか。」
「熊ちゃん。仏は拘束なしでドラム缶の中でこんがりでしょ。多分、シメられた後にわざわざ焼いたんじゃないかと思うんですよ。見つかることを覚悟の上でです。」
「じゃあつまり…、今年は消す気は初めからなかったってことすか?」
「消す気がないってよりは、これはそれとはまったく別のものでしょうねぇ。消すどころか、主張しているようにすら感じられますよ。」
「つまり…見せしめの意味があるってことすか?」
腕を組み、…そこで溜めに溜めていた大きなため息を、ぶは〜〜〜…っと吐く。
「それを市内でやってくれりゃあ、その線もあるんですがねぇ。
…こんな遠くまで運んで焼いちゃったら、下手したらわかんないでしょ。見せしめにするなら雛見沢の近くでやるべきなんですよ。……殺したことを主張したいのに、場所は演出効果の確実じゃない遠方。主張したいのか隠したいのか。………今年はなぁに考えてるのかなぁ、オヤシロさまは〜。」
重い沈黙を裂く電話音。近くの署員が受話器をひったくる。
「大石さん! 小宮山さんです!! 出ました! 興宮のデンタルクリニックで3年前に親知らずの治療をしてます!!」
「カルテは?!」
「レントゲン付きでばっちりと!」
「いやぁ…、こんな明け方前に歯医者さんには申し訳ないなぁ。熊ちゃん、小宮山くんからカルテ受け取ったらすぐに出発して下さい。」
「了解っすッ!!」
「あ、課長です!! 夜分、お疲れさまです!」
「大石さん、遅くなって申し訳ない。状況は?!」
「う〜ん、…やっと面白くなって来たってとこですかねぇ。燃えてきたぞぅ! わぁ〜お♪!!」
9■スクラップ帳よりY
<綿流しの意義について>
犠牲者を狩り、それを食す宴、綿流し。
それ自体は異常なものでありながらも、同時に娯楽性を伴うものだと考えられてきた。
(異常な行為に娯楽性を感じるという「無理」によって、自分たちが人間を超越した存在だと信じこもうとしたのかもしれない。)
だが、その説に一石を投じる興味深い文献を見つけた。
口伝らしく、鵜呑みにできるものではなさそうだが、その内容は少し興味を惹く。
それによると、鬼ヶ淵村の住人にも、この儀式を「恐れる」感情があったと言うのだ。
女子供は蒼白になりながら震え、血に弱い者は嘔吐しながらも、それでもなお、宴(解体作業)を見ることを強要されたのだと言う。
これは非常に面白い異聞だ。
私はこれまで、鬼ヶ淵村の住人は綿流しの儀式にある種の陶酔を得ていると考えてきた。
自分たちが見下す「卑しい人間風情」を魚を下ろすように解体し、それを食すことによって自分たちの神聖性を確認してきた、…そう考えてきた。
だが、この儀式によって村人が得ていたものが陶酔でなく恐怖だったとすると、儀式の意味するところは大きく変わってしまう。
つまり、有力者たちが自分たちの都合のいいように組み上げた戒律を厳守させるために催した、見せしめ処刑だった可能性が出てくる。
鬼ヶ淵村を実効支配してきたのは御三家と呼ばれる3つの旧家だ。
この御三家の研究なくして、鬼ヶ淵村の真実には迫れまい。
9■スクラップ帳よりZ
<御三家について>
御三家は鬼ヶ淵村を実効支配してきた3つの旧家を指す。
内訳は公由家、古手家、園崎家で、いずれも現存している。
(古代ほどの支配力はないにせよ、今日でも強い影響力を堅持しているようである。)
御三家は、鬼ヶ淵沼より現れた鬼の血を最も濃く残すと伝えられている。
<公由(キミヨシ)家>
公由家は御三家の筆頭家として大きな力を持っていたらしいが、今日にあっては御三家をリードするほどではない。
現村長(公由喜一郎)はこの家の出身である。
公選制が導入されるまで、自動的に公由家が代々村長に就任してきたのは、古い体制の名残だと思われる。
もっとも対抗馬が出ないため、戦後の公選制導入後も公由家が村長に就くことは変わっていない。
<古手(フルデ)家>
古代から信仰の中心となり、オヤシロさまを祀る唯一の神社を守ってきた一族である。
オヤシロさまの声を代弁する唯一の存在として、長く崇められてきたが、戦争で分家筋がほとんど絶え、今では本家のみとなっている。
その本家も、現在では一人娘(古手梨花)を残すのみなので、この代で潰えるかもしれない。
古手家の女子を尊ぶ古い習慣があるらしく、一人娘の梨花は、年寄り連中に崇められている様子だ。
<園崎(ソノザキ)家>
鬼ヶ淵村の戒律を守るある種の警察官的な役割を担ったと伝えられている。
御三家の中では比較的、弱い立場であったことが、御三家の末番に数えられることから見てとれる。
もっとも、今日の園崎家は隆盛を極め、御三家内における立場は完全に逆転している。
今や雛見沢を牛耳っているとまで言えるだろう。
御三家で合議することが名残となっているだけで、村内の取り決めは事実上、現当主の園崎お魎がひとりで決めていると言っていい。
9■深夜の電話
「夜分遅くに失礼いたします…。公由と申しますが、ご主人でいらっしゃいますか? ……はい! いえいえ、その節は本当にありがとうございます。えぇ。…………それでですね、…こんな時間に大変恐縮なのですが、…ウチのお爺ちゃんがお邪魔してないかと思いまして。………ですよねぇ! はい! こんな時間に申し訳ありませんでした。それでは失礼いたします。ごめんください……。」
チン。
「どうだい? ダメ?」
「参ったなぁ…。…どんなに熱中しても、電話くらいはしてくれる人なんだけれどなぁ!」
「囲碁の人の家は全部、電話したんでしょ?」
ジリリリリリリ…ン!!
「はい! 公由です。」
「園崎です。どうです? 村長さんは見つかりましたか?」
「あぁ、魅音ちゃんか。…片っ端から電話をかけてみたけど、だめだよ。見つからないんだ…。参ったなぁ…! どこで油を売ってるのかなぁ…!」
「こっちでも心当たりにいろいろと問い合わせましたけど、…全然。」
「……………………………。」
「婆っちゃにも相談したんですが、青年団を召集して探し回った方がいいだろうということです。」
「こ、こんな時間にかい…? それに、別に行方不明になったと決まったわけでもないし…、」
「綿流しの直後ですから。少し慎重に扱った方がいいとのことです。それでも見つからないなら、明朝、警察に通報しましょう。見つかる見つからないは別にして、痛くない腹を探られない方がいいでしょうから。」
「…お魎さんがそう言ったのかい?」
「はい。直接、声を聞かないと信用できないなら、電話先に出させますよ?」
「い、いえ…! わかりました。青年団を集めて探しましょう。それで見つからなければ…翌朝に警察に通報します。」
「青年団の連絡網、よろしくお願いしますね。私も婆っちゃの代行ということでそちらに参ります。」
「あ、ありがとう。すぐにみんなを集めます…。」
「えぇ。では。」
10■スクラップ帳より[
<現代の御三家について>
前述したように、今日では御三家の合議は形骸化し、事実上、園崎家の独裁となっている。
公由家にしても古手家にしても、過去の威光とは程遠く、古式ゆかしい伝統を維持しているとは到底思えない。
その中にあって園崎家だけは古代からの威光を維持し、鬼ヶ淵村と呼ばれた時代からの数々の伝統を色濃く受け継いでいる。
確認されている中でもっとも新しい「綿流し」だと思われる明治末期の事件も、園崎家主導で行なわれたと考えられる。(明治末期の御三家の家系図参照)
明治以降、園崎家は雛見沢村を牽引すべく、強いリーダーシップを発揮している。
数年前のダム闘争では、反対同盟の会長職に公由家が就いたが、これはあくまでも名目上で、実際には園崎家が影のリーダーとして君臨していた。
公に出来る抵抗運動は公由家主導で行い、公に出来ない抵抗運動を園崎家が行なったのではないかと囁かれている。
ダム騒動中に報じられた不穏な事件の数々(有名な建設省幹部の子息誘拐事件他)も園崎家が行なったと、雛見沢ですら囁かれているくらいだ。
加えて、近年続発している連続怪死事件についても、園崎家の暗躍があったのではないかと言われている。
連続怪死事件は、紛れもなく、古式ゆかしい「綿流し」の再来である。
本来の「綿流し」を、ただの村祭りに落ちぶれた「綿流し」の当日に行なうことで、村人たちに、鬼ヶ淵村の戒律を思い出させようとでもしているに違いない。
園崎家を探ることが、今日における研究の一番の近道であると断言できるだろう。
古手神社の祭具殿を暴くことが出来たなら、次は園崎家に研究対象を絞ろうと思う。
園崎家周辺は監視カメラで守られるほどの厳重ぶりだが、幸い、私は当主跡継ぎの魅音・詩音の姉妹とは面識がある。
次なる研究への突破口として繋げていきたい。
10■4人だけの罪に終わらない?
(おでん屋の屋台で情報屋と接触してた感じで)
「いえいえ、気にしないで下さいよ。この店でおでんを食べるとですね。なぜか、年契のガソリンスタンドの請求書に化けちゃうんですよ。だから遠慮しないでもう一杯飲んでいけばいいのに。」
男は、これでもう充分と赤ら顔で手を振り、駅前の華やかなネオンの中に消えていった。
「……熊ちゃんも勉強しといて下さいよ。謙虚な人が結局、一番長生きするんです。んっふっふっふ!」
「さっきの話、…本当っすかね。」
「さぁて、それはわからないですけどね。真偽はともかく、そういう話がまことしやかに流れてるということには意味があると思いますよ。」
「…そんなのが村長を狙う動機になりうるんすかね…?」
「熊ちゃん、いつも言ってるでしょ。動機ってのは、その本人に充分でありさえすれば足りるんです。価値観の違いをよく考えなくちゃ。…お母さん、もう一杯ください。」
情報を伏せているにも関わらず、すでに雛見沢中で知られている、富竹と鷹野の死。
その死は、禁断の神殿「祭具殿」に踏み入ったためにオヤシロさまの怒りに触れた、というのがもっぱらの噂だ。
その噂によれば、踏み入った人間はまだ2人いる。…園崎詩音と、前原圭一。
この2人にも「オヤシロさまの祟り」があるかもしれないと、影で囁く声があるという。
だが、責任は祭具殿に踏み入った4人だけに留まらないらしいのだ。
昨年までは厳重な施錠だったのだが、今年からは簡単な施錠になったため、簡単に賊の侵入を許してしまったのではないか。
…そういう噂が流れているのだ。
「熊ちゃんは見たことありませんか? 私はずいぶん前に何かの用で行った時に見たことをよく覚えてますよ。」
「すみません、ちょっと思い出せないっす。」
「それはもう、おっかないくらいに厳重に施錠してありましてね。重そうなカンヌキでどっかりと塞がれていて。まるで大金庫みたいに厳重な蔵だったんですよ。」
それが今年から、本当に簡単な、安っぽい南京錠ひとつだけになった。
……神社を守る一人娘、古手梨花が重い施錠を嫌い、村長に相談。…簡単な南京錠に付け替えたというのだ。
「…だから、村長と古手梨花も同罪、ってことなんすか…? だとしたら、…村長に続いて、古手梨花もまずいじゃないっすか?!」
「その可能性は大ですねぇ。……熊ちゃん。雛見沢を巡回してる覆面車に至急連絡。古手神社近辺に張り付かせてください。」
「りょ、了解っす!!!」
10深■スクラップ帳より\
<園崎家について>
戦後、急激に勢力を広げたのが園崎家である。
その時の当主が、今日でもその座にある園崎お魎(おりょう)である。
園崎お魎も高齢で、今日では当時の片鱗を見ることもかなわない。
だが、伝え聞く話では歴代当主の中で最高と讃えられる名当主だったらしい。
すでに高齢で、週に何回かの習い事に出掛ける以外は自宅で静かに過ごしており、セレモニー的なものは跡継ぎである魅音に委ねることが多いようである。
(なぜ当主の跡継ぎが娘でなく、孫娘である魅音なのかは諸説があるが、娘夫婦の勘当騒ぎが絡んでいると噂されている。)
園崎魅音という奔放な娘に、まだ次代当主としての貫禄は見られない。
だが、園崎家の血を引き、鬼の名を許される以上、恐らくは巧みに爪と牙を隠す、(過去の当主たちと同様)油断ならぬ人物であるに違いあるまい。
10深■園崎家の老当主は?
(深夜の車中のイメージ)
「はい。郵便局員も目撃してないそうです。…園崎本家は、郵便受けにハンコが吊るしてあるそうで、書留も宅急便も勝手にハンコを押して投函していい事になってるんだそうっす。」
「なっはっは、そりゃ無用心ですねぇ。…ってことは、最後の目撃はいつになるんです?」
「綿流しの開会式でした挨拶が最後です。その後すぐに帰宅したらしいっすから。」
「高齢ですからねぇ。…話じゃ、週に何回かお稽古事で外出してるそうじゃないですか。そっちはどうです?」
「毎週月曜に集会所で大正琴を習ってるんですが、今週は休んだそうです。」
「欠席の電話とかは? それを誰かが確認したとかは?」
「いえ、誰も。ただ、たまに休むことがあったらしいので誰も不審には思わなかったようです。」
「明日さ、10時くらいになったら市役所のふりして電話してみましょうかね。在宅を確認してみて下さい。」
「10時ですね。了解っす!」
雛見沢の古い因習が関わっている気配が濃厚になった頃から、御三家をこっそりと監視していた。
今日までに御三家の公由家の当主と、古手家の当主が消えた。
残る当主は1人。
園崎家当主の園崎お魎。(そのざきおりょう)
高齢の婆さまらしい。
威厳は衰えないものの、人前に姿を現すことは稀だそうで、確認がなかなか取れなかった。
…その最後の当主も、綿流しの日に目撃されたのを最後に、誰からも目撃されていない。
園崎本家の中にいて今も健在なのか? …それとも……もう?
「園崎魅音が言うには、体調を崩して寝込んでるんだそうです。」
「本当に寝込んでるのかなぁ。顔と脈を見てみたいですねぇ…。」
「………………まったくっす。」
2人してタバコの煙を大きく吐き出す…。
「大石さん、…園崎本家と古手神社の捜査令状。申請、通ると思います?」
大石は特に答えず、再び紫煙を吐き出して、文字通り煙に巻いていた…。
10深■スクラップ帳より]
<秘められた「鬼」ついて>
自らに鬼の血が流れると信じている雛見沢において、「鬼」という字はとても神聖に扱われている。
例えば、名前に「鬼」の字を使うことは、公由家と園崎家の当主だけに許された特権だったらしい。
例えば園崎家の現当主、園崎お魎の名の「魎」の字にも「鬼」が加えられていることが見て取れる。
これこそが正当な園崎家の当主であることの証なのである。
これは跡継ぎである園崎魅音についても同じで、「魅」の字に「鬼」の混入が見て取れる。
後を継げなかったお魎の実の娘で、魅音の実母である園崎茜(あかね)も、勘当前は「蒐(あかね)」という名であったことが知られている。
ちなみに村長の名の「喜一郎」だが、この「キ」も、本来は「鬼(キ)」を意味するものであると考えられる。
ちなみに、「鬼」を使った名は、園崎家の跡継ぎの名だけに留まらない。
御三家の苗字にも、「鬼」をこめたものが見つかる。
例えば、公由家の「公由」は、「鬼」の一字を分解して作ったものだろう。由・公の順に書き出せば、見事「鬼」の字を書き出すことができる。
続く古手家は、代々神職で、吉凶を占う「占い師(占い手)」だったことから「占手」の名に、鬼の角を加え「占」→「古」として「古手」としたと考えられる。
園崎家には、名前に鬼がこめられているせいか、苗字には鬼の字が見つからない。
綿流しの儀式を取り仕切る一族だったので、儀式の内容をそのまま苗字にしたものと思われる。
「崎」は「裂き」の読み替えで、「園」は、その形状から複雑な内容(内臓)を四角で包んだもの、「人体」の暗示であろう。
つまり「腹を裂く者」」→「園崎」となったのではないかと考えられる。
10深■請求却下
(早朝のイメージで)
「あ、お疲れさまです!!」
「どうです? 何か手掛かりはありました?」
…署員たちが残念そうに首を振る。
皆、疲労が色濃く出ている。
無理もない。綿流しの日から一睡もしていない者ばかりだ。
「課長。若い子から交替で仮眠取らせてあげて下さい。ここからは長丁場になりますからねぇ。無理せず、体を休めながらのんびり行きましょ。」
「みんなには交代で休めって言ってるんだけどね。みんな遠慮してなかなか休んでくれないんだよ。…大石さんからも言ってくれないか。」
「ありゃありゃ。みんな、遠慮しないでいいんですよ? 小宮山くん。若い子から順に交代で休ませてあげて下さい。」
「小宮山さん。そうしてあげてください。」
課長に重ねて言われ、小宮山くんは席を立った。
「で、課長。例の請求なんですけど、まだ駄目そうです?」
「…第一、村人の噂だけなんでしょう? もっと具体的な証拠がなければ難しいよ。」
「その証拠があの中に詰まってるかも知れないんですよ?」
「その証拠が中に詰まっているという証拠が必要なんだよ…!」
「課長〜。ナゾナゾやってるんじゃないですよ? 死んだ2人を含む4人が綿流しの晩に祭具殿と呼ばれる禁断の蔵に無断で入り込み、それを何者かが見ていた! ここまでは信頼できる情報なんです。」
「情報と言ったって、あくまでも噂だよ。証拠があるわけじゃない。」
「そりゃまぁ、4人が頬かむりして忍び込む写真はありませんがねぇ。
とにかく、4人は祭具殿の中で何かを見たんです! 消されるくらいの何かを!」
「消されるくらいの何か? それは何だい。」
…だから〜…それを調べるために令状を請求してるんじゃあないですか…!
「園崎家絡みの暴力団関係が有力候補ですなぁ。トカレフの山か、ケシの密造工場か。園崎家の隠し資産ってのも捨てがたい辺りです。」
「…大石さん、気持ちはわかるけど! あの祭具殿ってのは古手神社にある神聖な建物で、地元の人間への相当の配慮が必要な建物なんだよ。」
園崎議員から署長に延々1時間に及ぶ電話があったって聞いたけど。…課長、ひょっとして署長に釘を刺されたかな?
「とにかく! 相当の証拠がない限り、祭具殿の捜査令状は取れないよ。園崎本家への令状も同じだ! 特に園崎本家への捜査は四課と県警の暴対が絡んでる。入念な事前調整がいるんだ!」
「……調整がいるってんなら、私、直接乗り込んで付けてきてもいいですよ? 四課長はシゲちゃんでしょ? 暴対は山海さん。隣の雀荘で話した方が早そうな面子ですねぇ。」
「か、課長にお客様です…! えっと、…ぅわ!」
案内してきた署員を弾き飛ばして、紋付袴でヤクザの親分みたいな格好のジジイが入ってきた。……電話だけじゃ飽き足らなくなったかな?
「わしは議員の園崎じゃ!! 責任者を出さんかッ!!! 早ぅせいッ!!」
「ど、どうも…! 私が課長の高杉でございます!!」
「お前の名刺なぞ要らんわ!! お前なんぞ、いつだって閑職に飛ばせるんじゃぞ! それにお前だけでは足らん! 大石とか言う男も呼ばんか!! 神聖な古手神社に捜査令状なんぞを請求しおったバチ当たり者じゃッ!!!」
「も、申し訳ございません…! お、大石はただいま捜査に出ておりまして、なかなか連絡が付き難く…私が代わって承りますので…! ど、どうぞ、おかけください!」
課長が今のうちに消えろと目で合図する。
…ここはひとつ、厚意をありがたく頂戴しますかね…。仮眠室でちょっと横になるかなぁ。
「良いかッ?! 古手神社はそもそも皇暦2600年に継ぐ2500年の歴史を有する、神聖にして侵すべからずの聖地なのじゃ!! 八百万の神々とオヤシロさまと先祖の霊を祀り、日が昇りてから沈むまで。月が昇りてから沈むまで雛見沢を見守る尊い神社なのじゃ。それを土足で踏みにじろうという馬鹿がいるッッ!!!
そもそも信仰の自由は憲法で定められた国民の最も尊い権利であろうが!!! それを自らの捜査の怠慢を口実に汚そうという魂胆ッ!!! こんなものは断じて許せんぞッ!!! 聞いておるのか大虚けがッ!!! わしを怒らせてただで済むと思わん方がいいぞぉおおぉッ!!!」
11■スクラップ帳より]T
<双子の忌避について>
雛見沢に限ったことではないのだろうが、とりわけ、鬼ヶ淵村の御三家は当主跡継ぎに双子が生まれることを嫌った。
御三家の微妙なバランスの上に成り立った長期独裁体制が、お家騒動などの内紛で瓦解することを恐れたのだろう。
文献には、双子が生まれたなら直ちに間引くべしとまで記されている。
それを思うと、園崎家の当主跡継ぎである園崎魅音と詩音の双子がこの世に生を受けていること自体、興味深いと言わざるを得ない。(現当主お魎の情けだろうか?)
もっとも、この双子は公平には扱われず、跡継ぎの魅音は別格の扱いを受けているそうだ。
(聞くところでは、魅音と詩音は酷似した外見を持ちながらも、才能のほとんどは魅音が持つと聞く。…私の知る両者のイメージではそんな偏りは感じられない。)
伝承では、園崎家の当主は「鬼を継ぐ」と称して、背中に立派な鬼の刺青を彫るという。しきたりに従い、魅音にはこの刺青が入れられている可能性が極めて高い。
伝え聞く話では、現当主お魎の背中にも、それはそれは立派な鬼の刺青が入れられているそうである。
では…跡継ぎの魅音には一体、どんな刺青が彫られているのだろう。
……魅音の背中に興味が湧く。
11■雀荘「鈴」
『本日は貸切です。〜雀荘「鈴」〜』
カランカラ〜ン。
「あんりゃ、蔵ちゃん。あんたが一番遅いよ〜? 若い人はみんな揃ってる。」
「なっはっはっは…。じゃあお母さん、すみませんね。」
大石が、タバコが1カートン入ったコンビニの袋を渡すと、雀荘の主である婆さんは要領よく姿を消した。…もう慣れっこなのだ。
「大石さん! お疲れさまっす!!」
「なんだ、みんな真面目に待ってたんですか? サンマでもやってりゃ良かったのに。」
狭い店内に並べられた雀卓には皆、大石の部下たちが座っているが、どの卓にも麻雀牌は出ていない。
「皆さん、連日の不眠不休の捜査、本当にお疲れさまです。」
「「「ぅおおっす!!」」」
威勢のいい返事が雀荘を満たす。…そこはすでに娯楽場の雰囲気ではない。
「状況は芳しくありません。署長が園崎系議員の恫喝に屈したそうです。
近日中に鷹野殺しは岐阜県警に譲り、村長たちの失踪は行方不明扱いで生活課に委ねるようです。」
…あの若造署長が。ベテランたちが吐き捨てる。
「請求した令状も全て却下されました。課長からは園崎家界隈には近付くなとまで言われてます。…いやいや、困ったモンです。
ちなみに、私には来週から警視庁への研修命令が出るそうです。その後は余った有給を伊豆で消化しろとまで言われてます。…いやぁ、そういうのも悪くないですねぇ〜。」
苦笑が漏れる。…笑い事ではないが、笑うしかなかった。
「いつもそうですが、事件と車のキーの閉じ込めはよく似てます。開けるためのカギはいつもその中に閉じ込められているんです。車ならJAFを呼んで扉をこじ開ける。事件なら? 熊ちゃん、図面を。」
熊谷がホワイトボードをひっくり返す。裏には磁石で邸内の図面が貼られていた。
「私もずーーっとこの商売をやってます。勘には自信があるつもりですがね、今回ばかりはハズレるかもしれませんよ? 退職金が惜しい方は私が10数える間に席を外してください。」
大石が10を数え始めると、皆も同じように数え始める。
……大石たちの名物、覚悟の10カウントだ。
「9、10!! あ〜あ〜、誰も出てかないよ。皆さん、ご家族はもっと大切にして下さいよ? んっふっふっふ!」
「「「わっはっはっはっはっは…!!」」」
一同も豪快に笑って景気付けをする。
「各自、手元の資料を確認。監視カメラの所在と死角を叩き込んでください。熊ちゃんは指揮車で待機。非常時は私に代わって指揮をお願いしますよ。小宮山くんは突入A班。敦くんは突入B班を指揮。監視班は1から8まで所定の位置で監視を。盆地くんはタイムテーブルを厳守。署に怪しまれないようローテを管理して下さい。さて、待機中の班が一番大仕事ですよ? 課長に私の所在を聞かれたらとぼけて下さい。」
「「「わっはっはっはっはっは!!」」」
「ゲストのエスコート役は私がやります。きっと会場へ連れて行きますので皆さん、気長に待ってください。」
「………落ちるっすかね。前原圭一は。」
「私の見たとこじゃあ、明日明後日にはイケそうですよ。もうコロっとね。んっふっふっふ!」
■お疲れさま会2
「ひぐらしのなく頃に〜綿流し編〜を、最後までお楽しみいただき、誠にありがとうございました! この度のシナリオはいかがだったでしょうか? ちょっぴりでもお楽しみいただければ幸いです。」
<レナ
「ちょっぴりも何もー! また! 大々バッドエンドですわー?! ぷんぷんでございますのことよー?!」
「……ぷんぷんなのです。」
「いやぁ〜、みんなお疲れ〜!! まぁその、何? 終わり方こそアレだったけど、今回のシナリオは事実上「魅音編」みたいなモンだったんじゃない? 私、大活躍で大満足! にゃっはっはっは!!」
<魅音
「あ、あ、あんなの大活躍とは言いませんですわー!! 私も梨花も殺されちゃったですのよーッ?!」
「……しかも沙都子はただのとばっちりなのですよ。」
「わぁああぁあぁああああぁああぁあんッ!!! あんな死に方、嫌なのですの〜!!」
「ほーら、泣かないで! 魅ぃちゃんメインのお話だったように、きっと沙都子ちゃんメインのお話もあるよ。今から楽しみだね!」
「きっと、沙都子がおかしな人たちによってたかって襲われて、虐め殺されちゃう話に違いないね〜。」
「わぁああぁあぁあぁあぁあぁあん!! そんなの嫌ぁあぁあぁあ〜!!! わあぁあぁああぁあぁぁあん!!」」
>>>ブォン、…ドグシャッ!!!の効果音
「魅ぃ〜ちゃん。悪ふざけが過ぎると私も怒るよ〜?」
<レナ笑顔☆
「……魅ぃがぺったんこなのです。…なでなでしたくても頭がわからないのです。」
「あ、膨らんできましたわ。
…無節操な体ですのね…。」
「やぁ、みんな! お疲れさん!」
「また遅れて申し訳ありませんね。んっふっふっふ!」
「富竹さんに大石さん! どうもお疲れさまでした。あれ? 鷹野さんと詩音ちゃんはまだですか?」
<レナ
「もちろん来てますよ。今日はお招きいただき、ありがとうございますね。…ここ、座ってもいい?」
<詩音
「えぇ、どうぞですわよー!」
「これだけ一同に集まると圧巻ね。どうかお手柔らかに。」
<鷹野
「じゃ、始めても大丈夫かな? これで全員かな?」
<レナ
「……圭一を除けば全員なのです。」
<梨花
「ってことは…前原くんは相変わらず立ち絵がなくて、早々に次回シナリオの台本読みなんですか…?」
<大石
「気の毒な話ねぇ。私たちだけで盛り上がっちゃ悪い気がするわ。」
<鷹野・悪笑
「三四さん、そんなの気にしなくていいんですよ。こういう時は思いっきり盛り上がった方がかえって気を遣わせないもんなんです。」
<詩音
「それもそうですわね〜!! せっかくこれだけ集まったのに、お通夜じゃつまらないですわ〜!!」
<沙都子
「たははは…。じゃあ…圭一くんには悪いけど、…僕たちでやらせてもらおうか!」
<富竹
「と、なれば決まりだね!! じゃあみんな、コップコップ! 炭酸が嫌いな人いる〜?」
<魅音
「アダルトな方々にはアルコールもありますよ。んっふっふっふ!」
<大石
「梨花ちゃんは何を飲むかい? コーラ? ジュース?」
<富竹
「……みぃー。富竹のと同じ泡麦茶がいいのです。」
「こぉら! 梨花ちゃんはお酒は、だぁめ!」
<レナ
「みんなコップ持ちましたですの〜? 早く乾杯しないとジュースがぬるくなってしまいますわ〜!」
<沙都子
「お姉、音頭は誰が取るの?」
<詩音
「レナでいいでしょ。じゃあレナ、よろしく!」
<魅音
「では…こほん! みんな、『綿流し編』終了、お疲れさまでした〜!!」
<レナ
「「「お疲れさまでした〜〜〜ッ!!!!」」」
わ〜〜〜〜!!! ぱちぱちぱちぱち!!!!
「じゃあ、みんな揃ったんだしね! また、今回のシナリオを議論してみないかい?」
<富竹
「そうですね。じゃあ自由意見で行きましょうか。誰か意見のある人はいますか〜?!」
<レナ
「意見も何も…、今回のシナリオで解明編なのではありませんことー? 犯人は魅音さん! 諸悪の根源はぜ〜んぶ園崎家! それで決着でございませんの。」
<沙都子
「う〜ん…、そうだね。魅ぃちゃんは犯人じゃないって…信じてたんだけどなぁ…。」
<レナ
「大甘ですよー! こんなのは前回の「鬼隠し編」から充分、予想できたことじゃないですか。むしろ、予想通り過ぎて呆れちゃうくらいですよ?」
<詩音
「そうですねぇ。前回のシナリオをプレイされた方の予想の、大多数と合致するんじゃないでしょうかねぇ。」
<大石
「……みんなの期待通りの展開になったみたいなのです。」
<梨花
「じゃあ…、…これで『ひぐらしのなく頃に』のメインシナリオはほとんど終わり…なのかな…? 全ての元凶は魅ぃちゃんの園崎家で…決まり…?」
<レナ
「そうかしら? 私はむしろ、…これで『園崎家犯人説』はなくなったと思ってるくらいだけれど?」
<鷹野
「あ、三四さんと意見が合いましたね。私も同じ意見。…私は祟りなんか信じないけど。でも少なくとも、園崎家が真犯人である確率は薄くなったと思ってるね。」
<魅音
「え? どうしてなの? …だって魅ぃちゃんがみんなを殺したって、自供したじゃない…?」
<レナ
「そうですわ。私と梨花を殺しておいて、今さら犯人じゃないなんて、どういう意味なんですの??」
<沙都子
「別に煙に巻くつもりはないよ。たださ、私、魅音が全ての犯人だとするにはいろいろと無理が多いんだよ。ちょっと考えればすぐわかるよ。」
<魅音
「へぇ。僕は園崎家犯人説の近からず遠からずに真相があると確信してるんだけど…。…ぜひ魅音ちゃんの説が聞きたいね!」
<富竹
「ではご拝聴を。
…ラストで私がさ、過去の事件に自分は全て関与しているって白状するでしょ。あそこで感じた大きな違和感が根拠かな。だって考えてみなよ。過去の事件が園崎家の起こしたものなら、すごいことだよ?! だってどれもほぼ完全犯罪でしょ? 園崎家以外の犯人や事故で決着するという究極の犯罪だもの。」
<魅音
「そりゃそうでしょ。だって、大きな力を持つ園崎家が暗躍してるんだもの。完全犯罪なんてお茶の子さいさいでしょ?」
<詩音
「そこそこ。そこが違和感なんだよ! 過去4年間、園崎本家の気配をまったく感じさせずに、あれだけ上手に人を殺したり消したりしてきたんだよ?
そこへ行くと5年目の事件はすごくチープなんだよ。手当たり次第に片っ端から消して、殺して。しかも園崎家とのつながりは簡単に看破できちゃうしさ。」
<魅音
「そう言われてみればそうね。過去の事件は祟りとも犯罪ともつかない、不思議な連続事件だったけど。…今回の5年目の事件だけはすごく乱暴だったもんね。」
<レナ
「何を言ってるのかよくわかりませんわ。…梨花にはわかります?」
<沙都子
「……つまり、園崎家が本当に犯人なら、5年目の事件ももっともっと上手にやったと言ってるのですよ。」
<梨花
「じゃあ…つまり何ですの? 私と梨花を殺したのは魅音さんではなく、魅音さんに取り憑いた鬼の仕業だったってことですの?
ほらほら!! やっぱり前回の私の予想通り、魅音さんは悪い人じゃなかったのですわ〜!!」
<沙都子
「そうそう。私も沙都子ちゃんも、何かが取り憑いて悪いことをしてるって意見だったもんね。じゃあ…やっぱり私たちの説は正しかったのかな?!」
<レナ
「私も前回から引き続き祟り説ですが、今回のシナリオでさらに確信を深めましたよ。……ラストのラストで私が明かす、目撃されていたにも関わらずその数日前に死んでいたという、鷹野さんや魅音さんの情報はまさにそれを裏付けると思います。」
<大石
「あらあら…。前回は弱かった祟り派が今回はずいぶん強気ね。人間犯人説のみなさんには反論はないのかしら?」
<鷹野
「前回、人間犯人説だったのは確か、魅ぃちゃんに梨花ちゃん。それから富竹さんでしたよね。でははりきって反論をお願いします!」
<レナ
「う〜ん、まいったな。うまい言葉が思いつかないなぁ…。」
<富竹
「祟り派の根拠のひとつが、合わない死亡時刻なんですよね。じゃあ、そのトリックを崩せれば人間犯人説は立証できるわけですね?」
<詩音
「お、詩音には何かいい反論があるの?」
<魅音
「まぁ一応。でも私、人間犯人説ではお姉と同じ意見ですけど…、園崎家が主犯だと思ってる点ではお姉とは違いますよ。それでもよければ反論してみせますけど?」
<詩音
「をっほっほっほ! 何でも結構ですわ! これが祟りじゃないと言うなら、その証拠を示してごらんなさいませ〜!!」
<沙都子
「じゃあ詩音ちゃん。さっきから話題になってる、ラストのトリック。魅音ちゃんは事件当日に井戸に落ちて死んでいたにも関わらず、数日後に現れて圭一くんとあなたを殺したのはどうやってなのかしら?」
<鷹野
「ずばり、園崎姉妹共犯説です。理由は簡単。だってお姉はあの時点でもう死んでるんですから、圭ちゃんを刺せるのは私しかいないんです。私がお姉の変装をして圭ちゃんを刺す! そして自室へ戻り幽霊との取っ組み合いの狂言をして飛び降り自殺。」
<詩音
「強いて言えば、この場合の魅音ちゃんは泥を被る役だね。村長さんたちに直接手を下し、詩音ちゃんはただの被害者の形にする。そして、井戸の中に姿を隠していれば、変装した詩音ちゃんが神出鬼没にいくらでも殺人を犯せるって寸法さ。」
<富竹
「なるほどね。…だとすると、魅音さんにとっての誤算は2つ。
自分(死体)が見つかってしまったことと、隠れているだけのつもりが死んでしまったこと。ってことになるわけですね。」
<大石
「…あれれれ……。……確かに…何となくつじつまが合うような…。」
<レナ
「でも…やっぱり納得できないでしょ! 過去の完全犯罪の華麗さと違いすぎるもの。…その計画、例えうまく行っても「魅音」は悪役でしょ? 一生隠れて、あるいは詩音のフリをしたりして生きていかなきゃならないんでしょ? 窮屈過ぎ! こんなの完全犯罪とは言わないって!」
<魅音
「……つまり、死ぬにせよ消えるにせよ、魅ぃはいなくなってしまうわけなのです。」
<梨花
「梨花ちゃん、それいい意見。つまり、園崎魅音が表舞台からいなくなるのは彼女らのシナリオの一部だと思うわけです。だからラストで、魅音はポンポンと過去の事件の罪を被るんですよ。全部の事件の責任を一身に引き受けて退場!」
<詩音
「そうすることで、過去の事件の真犯人を隠蔽できる。…つまり、今年の事件は、チープなんじゃなく、…過去の事件を丸ごと「完全犯罪」にするための締めくくりの事件。…そういう位置づけになるのかな…?」
<魅音
「一番疑われてる園崎家の若き当主が全てを自白して失踪。……彼女、もしくは園崎家以外の真犯人にとってこれほどおいしい結末はないってことになるのかしらね。」
<鷹野
「……………話がぜーんぜん、わかりませんのよ。魅音さんが罪を被るってどういう意味ですの? 犯人なんじゃないんですの…??」
<沙都子
「つまりね。連続怪死事件の真犯人が別にいるの。その人を守るために、魅ぃちゃんが「過去の事件も全て、自分が起こした」とウソの告白をした…ってみんなは言ってるの。」
<レナ
「これはこれは……、劇中のセリフになりますが…とんだ名探偵さんがいたもんです! 確かに…ちょっと説得力を感じますよ!」
<大石
「真の犯人を誤魔化すために起こした事件。それが私の推理。さらに言えば、その真の犯人は園崎家以外の存在だと思ってるんだけどね。」
<魅音
「4年連続で完全犯罪に成功した謎の人物を、さらに守るために魅音ちゃんが起こした「捜査撹乱の事件」ということかしら?」
<鷹野
「そういうことです。前回のシナリオに名前だけ登場した「監督」ってのがかなり怪しいかな!」
<魅音
「……すごいです。実につじつまが合いますですよ。」ぱちぱちぱち。
<梨花
「私はそれでも園崎家+姉妹が犯人だと思ってますけどね。御三家による古いしがらみを断ち切るために姉妹が起こした「過去の清算のための事件」。それが私の推理です。」
<詩音
「過去の清算ってのはつまり…、暗躍の歴史に終止符を打つため、御三家の罪を最後の当主の魅音が全て被り、姉妹そろって退場したってことだね。」
<富竹
「そういうことです。私たち姉妹が悩みに悩みぬいた末に選んだ、悲しい物語だったというわけです。
あは、出来すぎですね!」
<詩音
「……すごいです。実につじつまが合いますですよ。」ぱちぱちぱち。
<梨花
「あれあれ? 何だか梨花ちゃんにも意見がありそうね。梨花ちゃんもどうぞ!」
<レナ
「……では皆さんに質問なのです。…圭一はどうして刺されなければいけないなのですか?」
「…梨花、そんなのは決まってますわよ。入っちゃいけない祭具殿に勝手に入ったからに決まってますわ。」
<沙都子
「こうして思い返すと、前回のシナリオでも死んだ富竹くんと鷹野さんの死も、きっと祭具殿に忍び込んだせいなんでしょうなぁ。…………………ありゃ?」
<大石
「……くすくす。おかしなことになってきたわねぇ。」
<鷹野
「え? おかしなことって…何がですか?」
<レナ
「…あッ!! レナさん、そうですわ! 思い出して下さいませ?!」
<沙都子
「……そうなのです。…前回のシナリオでは、圭一は祭具殿には忍び込んでいないのに命を狙われているのです。」
<梨花
…ざわざわざわざわ!
「それはきっと……、ほら! 雛見沢はよそ者を嫌うんだろ? だから圭一くんも命を狙われたんだよ…!」
<富竹
「それはおかしいでしょ。…だったら圭ちゃんの両親だって襲われていいはず。どう見ても、両親に危機が迫っていたようには見えないね。今回も前回も。」
<魅音
「さぁさぁ人間犯人説の皆さま方〜?! 圭一さんが狙われる理由がちゃんと説明できませんと、人間が犯人とは立証できませんでしてよ〜?!?!」
<沙都子
「なっはっはっは。でも、祟り説だとしても、やはり前原さんが前回も今回も襲われる理由がわかりませんけどねぇ。」
<大石
「もう一息で解明できそうだったけど…、やっぱり謎はたくさん残ってるみたいね…。」
<レナ
「くすくす……。圭一くん以外の人の死には何かしら理由が見つけられるんだけど、…圭一くんだけなぜかいつも曖昧。…前回と今回。祭具殿に踏み入るのとは無関係に狙われてる。」
<鷹野
「……では、前回も今回も、殺されるようなことをしちゃってるんじゃありませんこと…?」
<沙都子
「…なるほど…。前回と今回の前原くんの行動に共通項が見つけられれば…それが全体の事件の謎を解くカギになりそうですねぇ…。」
<大石
「ざっとシナリオを読み比べたけど…、圭一くんなりに日々を送ってると思うよ。…祭具殿の一件さえ除けば、圭一くんの日々の暮らしに不審な点は見当たらないけどなぁ!」
<富竹
「う〜ん…。…圭一くん、…前回や今回に何をやったのかな…? 殺されるような悪いこと!」
<レナ
「……迷った時には本人に聞いてみるのが一番なのですよ。」
<梨花
「……ほほぅ。…俺がひとり寂しく次回の台本読みをしている間に、みんなはそーゆう話題で盛り上がっていたわけか。ほー…。」
<圭一
「と、言うわけなの。だからね、圭一くんの自分の胸に聞いてみてほしいんだけど……。」
<レナ
「圭ちゃん、殺されるような、どんな悪いことをやったわけぇ?」
<魅音
「私にいつも働いている狼藉のせいに違いないですわ〜!!」
<沙都子
「ボクのお胸をぎゅーっとやったのが犯罪に違いないのです。」
<梨花
「そうそう! 年頃の女の子たちに囲まれて毎日幸せってのが、そもそもの罪のような気がするなぁ。」
<富竹
「なっはっはっはっは!! それは確かに重罪ですねぇ! 前原さん、実にうらやましい主人公役ですよぅ? たまには代わって下さい。」
<大石
「くっくっく…! まぁ確かに、あれだけ役得がいろいろあれば、最後にちょっと刺されるくらい、お安い御用よねぇ。」
<鷹野
「というわけで圭一さん。あなたの犯した罪を思い出しましてー?」
<沙都子
「むがーーーーーッ!!!!
今回も前回も!! 清く正しく生きてる俺がいつもラストは酷い目にー!! その上さらに自分の胸に聞いてみろだとー?!
聞きたいのは俺の方だぞ、これはイジメだーーーーーーッ!!!!」
<圭一
「………かわいそかわいそです。今度、頭をなでなでしてあげますですよ。」
<梨花
「今回のシナリオを読んだ上で、改めて「鬼隠し編」を読むべきかな…?」
<詩音
「私は、魅音の立場になって「綿流し編」を読み返してみるよ。圭ちゃんの立場で読んだ時とは違う発見があるかもね。」
<魅音
「私は『鬼』の仕業だとずーっと思ってますのよ!! 全ての現象とトリックは、全て『鬼』で説明がつきますのよー!!!」
<沙都子
「……何だかプラズマみたいなのです。」
<梨花
「プレイしてくださった皆さんはどうお感じになりましたか? ぜひ皆さんのご意見ご感想を聞かせてくださいね!」
「ご感想はメールで? アドレスとかはあるの?」
<魅音
「はい! 竜騎士7のメールアドレスへ直接どうぞ!
fujix@acn.ne.jp になります。」
<レナ
「……サークル、07th ExpansionのHPへもどうぞなのです。
http://www.tk3.speed.co.jp/foryou/ …なのですよ。」
<梨花
「『ひぐらしのなく頃に』のジャケットの裏側にも書いてありますわね。」
<沙都子
「皆さんのご意見、お待ちしてま〜す!!!」
<魅音
「それでは引き続き、『ひぐらしのなく頃に〜祟殺し編〜』をお楽しみ下さい。」