きぬ
「おおっ、トンネルを越えると……何だっけ」
新一
「そこはススキノだった」
レオ
「雪国だよ」
レオ
「おい、フカヒレ。今度のホテルは大丈夫だろうな」
きぬ
「去年は予算けちりやがって
引き出しからデケェ虫が出てきた時は
ほんっとどうしようかと思ったね」
新一
「任せろ。今年はいいホテルを選んだぜ」
レオ
「またゲレンデでナンパすんの?」
新一
「そりゃ当然! 何しに行くかわかんねーだろ」
スバル
「何しにって、そりゃスノボだろうが」
スバル
「金持ってそうなねーちゃんが
引っ掛かったら、教えてくれ」
レオ&きぬ  きぬ
「ないって、ないって」
新一
「お前たち声をハモらせるなよ!」
レオ
「しっかし何だな、ナンパで思い出したが」
レオ
「今年も誰1人恋人できなかったよな」
ガタン、ガタン、と電車が揺れる。
この電車は現在、東北地方をさらに
北へ北へと進んでいた。
新一
「おかしいなぁ、血が滲む努力してんだけどな
気になる娘をつけて住所突き止めたりとか」
スバル
「それは世間一般にストーカーと言うんだぜ」
きぬ
「だから、オメーは下心見え見えなのが
いけないんだってばよ」
新一
「まずい。そろそろ焦りを感じてきた」
きぬ
「その焦りがさらなる敗北を生むのだ」
新一
「いちいちうるせーな」
新一
「そーいうカニは、言い寄ってくる
告白をガンガン断ってるじゃねーか」
きぬ
「ボクはいーんだよ、気楽な1人身が
性にあってるもんね」
きぬ
「それに理想の男は全然違うんだもん」
レオ
「つーか、お前は世話が大変だからな」
レオ
「ある意味、断られたほうは幸運だよ」
きぬ
「ボクを小動物みたいに言うんじゃねーよ!」
きぬ
「へっ、大変だって言うならこれからも
ずっとオメーに迷惑かけてやる。ざまーみろ」
レオ
「ちっ」
スバル  無音
「……」
スバル
「ま、確かに誰も恋人できてねーけどさ。
これはこれでいいんじゃねーの?」
スバル
「誰か欠けたら寂しいじゃない」
新一
「ちっ、余裕こいてる意見だなぁ」
新一
「……二次元には肉がないから温かくないんだもん」
きぬ
「あれ、それでも心は温かいから
いーんじゃねーの?」
新一
「それも限界が出てきたね。人肌恋しい」
スバル
「リンゴむけたぜ。いるやつー」
きぬ
「うぃーす」
新一
「はぁーい」
レオ
「はーい」
スバル
「オレの分が無ぇ……」
きぬ
「次は車でいこーぜ
休憩所で各地の名物を食うんだ!」
スバル
「それだとカニの大好きな駅弁買えねーぞ」
きぬ
「う。それはちょっちキツイかも」
新一
「でも便利でいいかもな。
運転はスバルでヨロシク」
スバル
「頼まれなくてもオレがやってやんよ。
オマエ達じゃ危なっかしくてかなわねぇ」
レオ
「車そのものはどーすんだ」
新一
「レンタカーか、はたまた安いの買うか」
きぬ
「フカヒレ、臓器売って。心臓でいいや」
新一
「お前、仮にも友人にそんな事言うなよ!」
スバル
「ははっ……元気だなお前ら」
フカヒレときぬが喧嘩しているのを見て
スバルは何故か嬉しそうにその様子を見守っていた。
そう、こいつらとは幼馴染 兼 友人だ。
腐ってる所あるけど、それでもマジで
いい奴等だと思う。
昔からずーーっとつるんできた。
そして今も。
これからも、なのだろうか。
正直、それは嬉しい。
そんなに山のような友人はいらない、
理解してくれるこいつらさえいれば。
だから、俺は幸せだ。
レールを走っていく電車。
目的地は同じ。
だが、俺達はいつか散り散りに
なるかもしれない。
だから、このバカをやれる一時を大切に。
幼馴染のまま、少年少女のようにはしゃいで。
俺達の旅は続いていく。